JPH0881393A - コーティング剤用組成物 - Google Patents

コーティング剤用組成物

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JPH0881393A
JPH0881393A JP21454394A JP21454394A JPH0881393A JP H0881393 A JPH0881393 A JP H0881393A JP 21454394 A JP21454394 A JP 21454394A JP 21454394 A JP21454394 A JP 21454394A JP H0881393 A JPH0881393 A JP H0881393A
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JP21454394A
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Yoshitomo Sakamoto
美朝 坂本
Shigeki Masuda
茂樹 増田
Takehiro Nishimoto
岳弘 西本
Nobutaka Tani
敍孝 谷
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Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 大腸で分解または資化される糖類を含み、胃
および小腸内での化学的および酵素的分解に対して抵抗
性である共重合体を溶剤に溶解または分散させた、薬効
成分またはほかの生物活性物質の大腸送達システムのた
めに用いられる、コーティング剤用組成物を提供する。 【構成】 一般式(I): 【化9】 で示される少なくとも1種類の構造単位および一般式
(II): 【化10】 で示される少なくとも1種類の構造単位からなる共重合
体を溶剤に溶解または分散した組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、経口投与後、薬理作用
を有する薬効成分を大腸で放出させるためのコーティン
グ剤用組成物に関する。さらに詳しくは、大腸内で糖分
解酵素などによって分解または資化される高分子物質を
溶剤に溶解または分散させた組成物に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】イン
スリンやバソプレシンなどのタンパク・ペプチド性薬剤
の投与方法としては、現在静脈注射による方法が行なわ
れているが、これらのタンパク・ペプチド性薬剤が普及
するにつれ、より簡便な投与方法が求められてきてお
り、経口、経皮、経鼻、座剤などによる方法が検討され
ている。なかでも経口による投与方法はもっとも一般的
な方法として種々検討されている。しかし、経口投与さ
れたタンパク・ペプチド性薬剤は、小腸に存在する酵素
により容易に分解され、失活するため、生物学的利用率
が極端に低いという欠点を有する。
【0003】そこでこれらのタンパク・ペプチド性薬剤
を、消化酵素のほとんど存在しない大腸で選択的に放出
させる製剤とすることにより、生物学的利用率を向上さ
せようとする試みがなされている。
【0004】タンパク・ペプチド性薬剤の生物学的利用
率を向上させる一つの方法として、pHの上昇で皮膜が
溶けて大腸内で製剤中の薬効成分が放出されるように設
計された腸溶性製剤があるが、生体側の消化管のpHの
日内変動や食事による影響が大きいため、その製剤が小
腸上部で崩壊したり、反対に崩壊せずに排泄されたりす
ることが問題となっている。
【0005】また、別の大腸選択的放出製剤として、大
腸内に存在する細菌の分泌する酵素により大腸内で特異
的に分解されるポリマーを利用する製剤が検討されてい
る。大腸内には、多種類の細菌が存在しており、ヒトの
消化酵素にはない種々の酵素を分泌している。そのよう
な酵素の一つとして、アゾ基をアミノ基に還元する酵素
があり、このアゾ還元酵素により切断される芳香族アゾ
基を分子内に含んだポリマーについての報告がなされて
いる(米国特許第4663308号明細書、特開平3ー
7718号公報)。しかし、これらの方法は、用いるポ
リマーの皮膜形成性または溶剤溶解性が悪かったり、発
ガン性のあるアゾ基を使用しているという欠点がある。
【0006】また、大腸内で特異的に分解される糖と二
塩基酸とからえられるポリエステルは大腸特異的分解性
を示すことが知られているが、これらのポリマーは、ジ
メチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホ
ルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド
(DMAc)などの不揮発性非プロトン性極性溶媒にし
か溶解せず、薬剤へのコーティングに使用できるアセト
ン、エタノール、ジクロロメタンなどの揮発性の溶媒に
は懸濁するのみであったため、薬剤へのコーティングな
どの際、操作が煩雑であり、しかも均一な皮膜の形成が
困難であった。
【0007】また、溶剤の種類が限定されるため、溶剤
に溶解する高分子物質の濃度が低く、しかもえられた溶
液の粘度が非常に高いことからコーティング用組成物の
流動性が悪く、皮膜形成時に凹凸が生じ、膜厚の微調整
が困難であることが知られている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、溶剤溶解
性および(または)分散性ならびに皮膜形成性に優れ
た、かつ大腸で特異的に分解または資化される安全性に
優れた高分子物質を見出すため、さらに該高分子物質を
用いた簡便な操作での製剤の調製および均一な皮膜の形
成を可能にするコーティング剤用組成物を見出すため、
鋭意検討を重ねた結果、前記共重合体を適当な種類およ
び混合比の溶剤に溶解または分散させることにより本発
明のコーティング剤用組成物を完成するにいたった。
【0009】すなわち、本発明は、一般式(I):
【0010】
【化3】
【0011】(式中、Rは2価の有機基を表わし、R1
は大腸内で分解または資化される糖残基を表わす)で示
される少なくとも1種類の構造単位および一般式(I
I):
【0012】
【化4】
【0013】(式中、Rは2価の有機基を表わし、X1
およびX2 は独立に酸素原子、イミノ基または硫黄原子
を表わし、R2 は飽和または不飽和の炭化水素基、ポリ
アルキレン基、ポリアルキレングリコール基、ポリアリ
ーレンオキサイド基、ポリエステル基またはポリアミド
基を表わす)で示される少なくとも1種類の構造単位か
らなる共重合体を溶剤に溶解または分散した組成物に関
する。
【0014】
【実施例】本発明は、大腸で分解または資化される糖類
を含み、胃および小腸内での化学的および酵素的分解に
対して抵抗性である共重合体を溶剤に溶解または分散さ
せた、薬効成分またはほかの生物活性物質の大腸送達シ
ステムのために用いられる、コーティング剤用組成物を
提供するものである。
【0015】本発明で使用される共重合体は溶剤溶解性
および(または)分散性に優れていることから製剤製造
時の操作が簡便であり、かつ安定的に均一な皮膜を形成
でき、さらに製造上のロスも極めて少ない。また各種溶
剤の混合系を用いることにより、同じ濃度でも異なる揮
発性および粘度を有する組成物を製造することができ、
さらに溶剤の種類、混合比を変化させることで、溶解濃
度または分散濃度を自由に制御することができる。した
がって、本発明の組成物は大腸選択的放出性製剤を製造
するためにコーティング剤として用いられ、前記共重合
体を0.1〜50%(重量%、以下同様)の濃度で溶剤
に溶解または分散させることを特徴とする組成物であ
る。
【0016】つぎに本発明で用いられる共重合体につい
て説明する。
【0017】本発明で用いられる共重合体は、一般式
(I):
【0018】
【化5】
【0019】(式中、Rは2価の有機基を表わし、R1
は大腸内で分解または資化される糖残基を表わす)で示
される少なくとも1種類の構造単位および一般式(I
I):
【0020】
【化6】
【0021】(式中、Rは2価の有機基を表わし、X1
およびX2 は独立に酸素原子、イミノ基または硫黄原子
を表わし、R2 は飽和または不飽和の炭化水素基、ポリ
アルキレン基、ポリアルキレングリコール基、ポリアリ
ーレンオキサイド基、ポリエステル基またはポリアミド
基を表わす)で示される少なくとも1種類の構造単位か
らなる共重合体である。
【0022】共重合体の分子量はとくに限定されない
が、好ましくは2,000 〜1,000,000 、より好ましくは5,
000 〜500,000 、最も好ましくは10,000〜300,000 であ
る。
【0023】2つの構造単位(I)と(II)との共重
合割合は、好ましくは1:99〜99:1、より好まし
くは5:95〜80:20、最も好ましくは10:90
〜70:30である。構造単位(I)と(II)との結
合方向は決まっていない。
【0024】一般式(I)で示される構造単位は、HO
OC−R−COOHで表わされる二塩基酸とHO−R1
−OHで表わされる糖とをエステル結合させてえられ
る。
【0025】大腸内には多種類の細菌が存在しており、
最近の研究からこれらの細菌が、人体で消化・吸収でき
ないまたはできにくい難消化性糖類を、醗酵により利用
しており、そのためこれまで人体では利用されないとさ
れていた糖類も、この過程を通って吸収されることがわ
かってきた。また、人体内での発ガン性物質生成の研究
において、大腸内の特異的な糖加水分解酵素の存在がク
ローズアップされてきている。これらの加水分解酵素と
しては、β−グルコシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、
β−グルクロニダーゼなどのほか、キシラナーゼ、β−
グルカナーゼ、ガラクトマンナーゼ、ポリガラクチュロ
ナーゼ、ムチナーゼ、コンドロイチンリアーゼ、カルボ
キシメチルセルラーゼ、セルラーゼ、ポリガラクチュロ
ネイトリアーゼなどの糖分解酵素があげられる。
【0026】HO−R1 −OHで表わされる糖は、大腸
内で分解または資化される難消化性の糖であって、糖残
基2つ以上、かつ好ましくは100以下、より好ましく
は50以下、さらに好ましくは10以下で構成される糖
である。R1 はかかる糖の糖残基を表わしている。難消
化性の糖とは、ヒトの小腸内で消化・吸収を受けにく
い、または消化を受けない糖のことをいう。
【0027】かかる糖としてはたとえば、前記酵素によ
り加水分解される糖があげられる。具体例としては、
6′−ガラクトシルラクトースおよび4′−ガラクトシ
ルラクトースなどのラクトースのガラクトース残基にガ
ラクトースがβ−1,4またはβ−1,6で数分子結合
したガラクトオリゴ糖;1−ケストースおよびニストー
スなどのスクロースのフラクトース残基にフラクトース
がα−1、β−2で数分子結合したフラクトオリゴ糖;
ラフィノースおよびスタキオースなどのスクロースのグ
ルコース残基にガラクトースがβ−1,6で数分子結合
した大豆オリゴ糖;キシロビオースおよびキシロトリオ
ースなどのキシロースがβ−1,4で数分子結合したキ
シロオリゴ糖;イソマルトース、イソマルトトリオース
およびパノースなどのイソマルトースの非還元性グルコ
ースにグルコースがα−1,4またはα−1,6で数分
子結合したイソマルトオリゴ糖;セロビオースおよびセ
ロトリオースなどのグルコースがβ−1,4で数分子結
合したオリゴセルロース;ラクトース、ラクトスクロー
ス、ラクチュロース、パラチノース、メレチトース、ツ
ラノース、メリビオース;マルチトール、ラクチトー
ル、イソマルチトールおよびグルコピラノシル−α−
1,6−マンニトールなどの二糖類アルコール;および
カルボキシメチルセルロース、グアガム、トラガントガ
ム、キシランなどがあげられるが、これらに限定される
ものではない。これらのうち、β−グルコシダーゼ、β
−ガラクトシダーゼまたはβ−グルクロニダーゼにより
加水分解される糖、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ
糖もしくは大豆オリゴ糖、またはセロビオースが好まし
い。
【0028】さらに、これらの糖は、アセチル基、ベン
ゾイル基などのアシル基、メチル基、エチル基などのア
ルキル基、またはヒドロキシルエチル基、ヒドロキシプ
ロピル基などのヒドロキシアルキル基などで修飾されて
いてもよい。これらの修飾基は、糖1分子中に未修飾の
水酸基が2つ以上残っていれば何分子結合していてもよ
く、また1種類または2種類以上の修飾基で修飾されて
いてもよい。
【0029】本発明の共重合体中には、前記糖HO−R
1 −OHは2種類以上含まれていてもよいが、1種類で
あることが望ましい。
【0030】HOOC−R−COOHで表わされる二塩
基酸中、Rは2価の有機基を表わすが、このような有機
基としては、たとえば芳香族炭化水素およびその誘導
体、脂肪族炭化水素およびその誘導体、脂環式炭化水素
およびその誘導体があげられる。芳香族炭化水素として
は、たとえばベンゼン環、ナフタレン環および1,2−
ビスフェノキシエタンなどがあげられ、脂肪族炭化水素
としては、たとえばメチレン基、エチレン基、プロピレ
ン基およびブチレン基などがあげられ、脂環式炭化水素
としてはシクロヘキサンなどがあげられる。かかる二塩
基酸の具体例としては、好ましくはテレフタル酸、イソ
フタル酸、4,4′−ジカルボキシビフェニル、2,6
−ジカルボキシナフタレン、1,2−ビス(フェノキ
シ)エタン−4,4′−ジカルボン酸、1,2−ビス
(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボ
ン酸などの芳香族系二塩基酸;アジピン酸、1,10−
デカンジカルボン酸、ジエチルマロン酸、フマル酸、マ
レイン酸、シュウ酸などの脂肪族二塩基酸;およびシク
ロヘキサン二酸などの脂環式化合物の二塩基酸など、よ
り好ましくはテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸
およびシュウ酸などがあげられ、最も好ましくはテレフ
タル酸、イソフタル酸があげられるが、これらに限られ
るものではない。
【0031】本発明の共重合体中にはこれら二塩基酸は
2種類以上含まれていてもよいが、1種類であることが
望ましい。
【0032】一方、一般式(II)で示される構造単位
は、前記のHOOC−R−COOHで表わされる二塩基
酸とH−X1 −R2 −X2 −Hで表わされる化合物とを
結合させてえられる。
【0033】R2 は飽和または不飽和の炭化水素基、ポ
リアルキレン基、ポリアルキレングリコール基、ポリア
リーレンオキサイド基、ポリエステル基またはポリアミ
ド基を表わす。以下に具体的に、H−X1 −R2 −X2
−Hについて4種(一般式(III)〜(VIII))
に大別し、例をあげて説明する。
【0034】(1)一般式(III): H−X1 −R3 −X2 −H (III) (式中、X1 ,X2 はそれぞれ独立に酸素原子、イミノ
基または硫黄原子を表わし、R3 は飽和または不飽和の
炭化水素基を表わす)で示される化合物。すなわち、両
端に独立に水酸基、アミノ基またはチオール基を有する
飽和または不飽和の炭化水素化合物である。具体的に
は、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコー
ル、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオー
ル、1,4−ブタンジオールなどのアルキレングリコー
ル;ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、テト
ラメチレンジアミンなどのアルキレンジアミン;1,4
−ブタンジチオール、エタンジチオールなどのアルカン
ジチオール;1,4−ハイドロキノン、1,3−ハイド
ロキノン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、カテコー
ル、1,3−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼンなどの芳
香族ジオール、1,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジ
アミノトルエンなどの芳香族ジアミンがあげられる。
【0035】(2)一般式(IV): H−X1 −(R4 O)−R5 −X2 −H (IV) (式中、X1 、X2 は前記と同じ。R4 、R5 はそれぞ
れ独立に炭素数1〜10のアルキレン基またはアリール
基を表わし、nは1〜100の整数を表わす)で示され
る化合物。すなわち、両末端に水酸基、アミノ基または
チオール基を有するポリアルキレングリコールまたはポ
リアリーレンオキサイドである。具体的には、たとえば
両末端に水酸基、アミノ基またはチオール基を有する、
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、
ポリテトラメチレングリコール、ポリフェニレンオキサ
イドなどがあげられる。
【0036】(3)一般式(V)または(VI):
【0037】
【化7】
【0038】(式中、X1 、X2 は前記と同じ。X3
6 はそれぞれ独立に酸素原子またはイミノ基を、
4 、X5 はそれぞれ独立に酸素原子、硫黄原子または
イミノ基を表わし、R6 は炭素数1〜20のアルキレン
基、芳香族化合物の2価基またはアルキレングリコール
基を表わし、mおよびLはそれぞれ独立に0〜100の
整数を表わし、pは1〜12の整数を表わす)または一
般式(VII):
【0039】
【化8】
【0040】(式中、X1 、X2 、X3 、X4 、X5
6 は前記と同じ。R7 、R9 、R10はそれぞれ独立に
炭素数1〜20のアルキレン基または芳香族化合物の2
価基を表わし、R8 は2価の有機基を表わし、qは1〜
100の整数を表わす)で示される化合物。すなわち、
3 、X6 が酸素原子のばあいは、両末端に独立に水酸
基、アミノ基またはチオール基を有するポリエステルで
あり、具体的には、ポリε−カプロラクトン、ポリグリ
コール酸、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレートまた
はポリエチレンアジペートなどの両末端に水酸基、アミ
ノ基またはチオール基を有する化合物であり、X3 、X
6 がイミノ基のばあいは、両末端に独立に水酸基、アミ
ノ基またはチオール基を有するポリアミドであり、具体
的にはポリε−カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミ
ン−アジピン酸共重合体などの両末端に水酸基、アミノ
基またはチオール基を有する化合物があげられる。
【0041】(4)一般式(VIII): H−X1 −(CH2 CR1112−X2 −H (VIII) (式中、X1 、X2 は前記と同じ。R11、R12はそれぞ
れ独立に水素原子、アルキル基、アセチル基、フェニル
基、1〜4個のアルキル基またはニトロ基で置換された
フェニル基、カルボキシル基、カルボキシメチル基、カ
ルボキシエチル基、カルボキシイソプロピル基、カルボ
キシ−2−ヒドロキシプロピル基、メトキシカルボニル
基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル
基、1−ヒドロキシエトキシカルボニル基または2−ヒ
ドロキシプロポキシカルボニル基を、rは1〜1000
の整数を表わす)で示される化合物。すなわち、両末端
に独立に水酸基、アミノ基またはチオール基を有するポ
リアルキレンである。具体的には、ポリスチレン、ポリ
酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル
酸ヒドロキシエチルなどの両末端に水酸基、アミノ基ま
たはチオール基を有する化合物があげられる。
【0042】以上の具体的な化合物は例示であって、H
−X1 −R2 −X2 −Hで示される化合物はこれらに限
定されるものではないが、溶媒への溶解性が改善され
た、しかも安全性の高い化合物としては、両末端水酸基
のポリプロピレングリコールまたはポリテトラメチレン
グリコールのようなポリエーテルや両末端水酸基のポリ
ε−カプロラクトンまたはポリグリコール酸のようなポ
リエステルが最も好ましい。
【0043】本発明の組成物としては、前記共重合体の
構造単位(I)がHOOC−R−COOHで表わされる
二塩基酸とHO−R1 −OHで表わされる糖とをエステ
ル結合させてえられる構造単位であり、構造単位(I
I)がHOOC−R−COOHで表わされる二塩基酸と
HO−R2 −OHで表わされるポリアルキレングリコー
ルとをエステル結合させてえられる構造単位であるも
の、さらには前記共重合体の構造単位(I)を構成する
HOOC−R−COOHで表わされる二塩基酸がテレフ
タル酸またはイソフタル酸であり、HO−R1 −OHで
表わされる糖がセロビオースであって、構造単位(I
I)を構成するHOOC−R−COOHで表わされる二
塩基酸がテレフタル酸またはイソフタル酸であり、HO
−R2 −OHで表わされるポリアルキレングリコールが
ポリテトラメチレングリコールまたはポリプロピレング
リコールであるものが好ましい。
【0044】以上のような構造単位をもつ本発明に使用
される共重合体の合成は、公知の方法により行われる
(クリタ(Kurita, K.)ら;ジャーナル オブ ポリマー
ケミストリー エディション(J. Polymer Chem. E
d.),18,365,(1980))。すなわち、糖と共重合する化合
物と二塩基酸の塩化物とをジメチルスルホキシド(DM
SO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、
N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)などの不揮
発性非プロトン性極性溶媒中で、ピリジンまたはトリエ
チルアミンなどの三級アミン類を脱プロトン剤として使
用し、約17℃で反応させることにより行なう。
【0045】本発明の組成物に用いる溶剤は、コーティ
ングを施すばあいの所望の濃度(0.1〜50%(重量
%))、揮発性および皮膜形成性から判断して適当なも
のを選ぶことができ、とくに限定されないが、たとえば
水、炭素数1〜5のアルコール、芳香族炭化水素、エス
テル、ケトン、エーテル、ハロゲン化物、アミド、オキ
シドおよびグリコールから選ばれる1種または2種以上
の混合溶剤、好ましくは、エチレングリコール、ジクロ
ロメタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、1
−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、
2−ブタノール、tert−ブチルアルコール、1−ペ
ンタノール、トルエン、キシレン、酢酸メチル、酢酸エ
チル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、
酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、ア
セトン、ジイソブチルケトン、メチルエチルケトン、テ
トラヒドロフランから選ばれる1種または2種以上の混
合溶剤であり、さらに好ましくはテトラヒドロフランま
たはメチルエチルケトンから選ばれる溶剤、メタノー
ル、エタノールまたは2−プロパノールとトルエンとの
混合溶剤、メタノール、エタノールまたは2−プロパノ
ールと酢酸エチルとの混合溶剤、メタノール、エタノー
ルまたは2−プロパノールとメチルエチルケトンとの混
合溶剤、メタノール、エタノールまたは2−プロパノー
ルとアセトンとの混合溶剤、ジクロロメタンまたはクロ
ロホルムとエタノールとの混合溶剤、ジクロロメタンま
たはクロロホルムとメタノールとの混合溶剤である。
【0046】本発明のコーティング剤用組成物における
共重合体の濃度は、共重合体の組成および(または)溶
剤の組成により変化するが、溶剤に対する共重合体の溶
解性または分散性、コーティング剤としての加工性を考
慮すると好ましくは0.1〜50%、さらに好ましくは
1〜30%であるが、これらに限定されるものではな
い。共重合体の濃度が0.1%未満のばあい、多量の溶
剤が必要となる、また溶剤の量が増えるため皮膜にピン
ホールが生じやすくなる、さらに必要な皮膜を形成させ
るまでの繰り返し操作が増えるなどの欠点が生じる。5
0%をこえると、粘度が上昇し、コーティング剤用組成
物の流動性が悪くなることから操作性が低下し、さらに
皮膜の均一性も低下する。
【0047】本発明の組成物は、前記重合体を溶剤に加
えて、攪拌し、溶解または分散させることによりえられ
る。必要ならば適当な温度に加温する、または前記共重
合体を細かく粉砕するなどして、溶解時間を短縮するこ
とができる。
【0048】また、本発明の組成物には、前記共重合体
および溶剤のほか、薬効成分、賦形剤、結合剤、滑沢
剤、凝集防止剤、崩壊剤、発泡剤、吸収促進剤、安定化
剤、薬効成分の溶解補助剤、可塑剤および所望により前
記共重合体以外の高分子物質など、通常この分野で常用
される種々の配合剤が配合されていてもよい。
【0049】賦形剤としては、たとえば白糖、乳糖、マ
ンニトール、グルコース、デンプン、結晶セルロースな
どの糖類、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、乳酸カ
ルシウムなどがあげられる。結合剤としては、たとえば
ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリ
ル酸、ポリビニルピロリドン、グルコース、白糖、乳
糖、麦芽糖、ソルビトール、マンニトール、ヒドロキシ
エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロー
ス、ヒドロキシプロピルセルロース、マクロゴール類、
アラビアゴム、ゼラチン、寒天、デンプンなどがあげら
れる。滑沢剤としては、たとえばステアリン酸、タルク
などがあげられる。凝集防止剤としては、たとえばステ
アリン酸、タルクなどの前記滑沢剤が好適に用いられる
ほか、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素などがあげら
れる。崩壊剤としては、たとえば結晶セルロース、カル
ボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース
塩、デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキ
シメチルスターチナトリウム、トラガントガムなどがあ
げられる。発泡剤としては、たとえば炭酸水素ナトリウ
ム、酒石酸などがあげられる。吸収促進剤としては、た
とえば高級アルコール類、高級脂肪酸類、グリセリン脂
肪酸エステルなどの界面活性剤などがあげられる。安定
化剤としては、たとえば安息香酸、安息香酸ナトリウ
ム、パラオキシ安息香酸エチルなどがあげられる。薬効
成分の溶解補助剤としては、たとえばフマル酸、コハク
酸、リンゴ酸などの有機酸などがあげられる。可塑剤と
しては、たとえばポリエチレングリコール、ポリプロピ
レングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコー
ルなどがあげられる。前記共重合体以外の高分子物質と
しては、たとえばエチルセルロース、メタクリル酸共重
合体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコ
ールなどがあげられる。
【0050】本発明の組成物を用いてえられる皮膜は所
望の厚さに調製できるが、大腸内で特異的に、かつ確実
に崩壊させるために必要な膜厚は、好ましくは5〜30
0μm、より好ましくは10〜200μm、最も好まし
くは20〜150μmである。
【0051】本発明の組成物は前記共重合体を適当な溶
剤に溶解または分散させたコーティング剤用組成物であ
る。本発明における共重合体は大腸内で特異的に分解ま
たは資化されるので、本発明の組成物を用いた製剤のば
あい、薬効成分を選択的に大腸内で放出させることによ
り消化酵素による分解を防ぐことができ、大腸内に高濃
度に存在させることにより大腸での吸収を促進するの
で、薬効成分の生物学的利用率を向上させることを目的
とした製剤用コーティング剤として利用することができ
る。ここでいう製剤用コーティング剤には、経口投与用
固形製剤(たとえば錠剤、顆粒剤、丸剤およびカプセル
剤など)に対する外皮用皮膜形成剤、および薬剤を包埋
したシート状製剤などが含まれる。
【0052】本発明の組成物を外皮用皮膜形成剤として
用いるばあい、前記組成物を別途製造した経口投与用固
形製剤にパンコーティング法または流動コーティング法
を用いてコーティングすることにより行なわれる。所望
により前記共重合体だけでなくほかの高分子物質(たと
えば、エチルセルロース、メタクリル酸共重合体など)
1種類以上および(または)可塑剤(たとえば、ポリエ
チレングリコールなど)を混合してもよい。
【0053】また、本発明の組成物をシート状製剤とし
て用いるばあいには、前記組成物を用いて、フィルム成
形器で常法にしたがいフィルムを作成する。たとえば前
記共重合体を含む基剤、薬効成分、可塑剤、安定化剤、
および吸収促進剤などと酢酸エチルとエタノールの1:
1(重量比)に溶解または分散させた後、フィルム成型
器に注入、塗膜を形成させ、乾燥することによりフィル
ムシートをえる。このようなフィルムシートを微粉砕
し、カプセルなどに充填することにより行なわれる。所
望により前記共重合体だけでなくほかの高分子物質(た
とえば、エチルセルロース、メタクリル酸共重合体な
ど)1種類以上および(または)可塑剤(たとえば、ポ
リエチレングリコールなど)を混合してもよい。
【0054】本発明のコーティング剤用組成物を用いて
製剤化される薬効成分またはそのほかの生物活性物質
は、大腸のターゲティングを目的とするものであれば、
とくに制限されることなく、いずれの薬物も使用でき
る。たとえばプレドニゾロンなどの大腸潰瘍の治療薬、
ブレオマイシンなどの大腸癌に著効を示す制癌剤、イン
スリン、バソプレシン、カルシトニン、ヒト顆粒球増殖
因子(G−CSF)、エリスロポエチン、各種インター
ロイキンなどのタンパク・ペプチド性薬物、メシル酸ガ
ベキサート、メシル酸カモスタット、メシル酸ナファモ
スタットなどのグアニジノ安息香酸誘導体、アスピリン
などの抗炎症剤などがあげられる。
【0055】つぎに本発明のコーティング剤用組成物を
実施例に基づいて説明するが、本発明はもとよりかかる
実施例のみに限定されるものではない。
【0056】参考例1 セロビオース342mg(1.0mmol)、ポリテト
ラメチレングリコール(PTMG、平均分子量100
0)2.0g(2.0mmol)およびピリジン0.4
8ml(6.0mmol)をN,N−ジメチルアセトア
ミド(DMAc)15ml中で、17℃で攪拌してお
き、そこにテレフタル酸二塩化物609mg(3.0m
mol)を加え、24時間反応させた。ゲル化物および
未反応のセロビオースを濾過によって取り除き、反応溶
液を水に注ぎ込み沈澱させた。これを水で洗浄、減圧乾
燥し、再びDMAcに溶解し、水で再沈殿、水洗浄、乾
燥することにより生成物2.06g(収率75%)(以
下、共重合体1という)をえた。その分子量は14,0
00であった。
【0057】参考例2 セロビオース684mg(2.0mmol)、ポリテト
ラメチレングリコール(PTMG、平均分子量100
0)2.0g(2.0mmol)およびピリジン0.6
4ml(8.0mmol)をN,N−ジメチルアセトア
ミド(DMAc)20ml中で、17℃で攪拌してお
き、そこにテレフタル酸二塩化物812mg(4.0m
mol)を加え、24時間反応させた。ゲル化物および
未反応のセロビオースを濾過によって取り除き、反応溶
液を水に注ぎ込み沈澱させた。これを水で洗浄、減圧乾
燥し、再びDMAcに溶解し、水で再沈殿、水洗浄、乾
燥することにより生成物2.61g(収率81%)(以
下、共重合体2という)をえた。その分子量は20,0
00であった。
【0058】実施例1 参考例1または2でえられた共重合体を表1に示す各種
溶剤に1〜30%(重量%)の濃度になるように添加
し、スターラにて24時間以上攪拌した。その後溶剤に
対する溶解性を下記に示す判定基準にて評価した。
【0059】溶解性判定基準 A:完全に溶解しており、溶液は透明である。 B:ほとんど溶解しており、溶液はわずかにくもってい
る。または均一に分散しており、共重合体の沈降はみら
れない。 C:不溶である。または共重合体が膨潤している。
【0060】さらに、共重合体を各種溶剤に添加してえ
られた、前記溶液をフィルム成型器で常法にしたがいフ
ィルムを作成し、その性状を下記に示す判定基準にて評
価した。
【0061】
【数1】
【0062】結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】 表1より本発明の組成物においては共重合体が溶剤に優
れた溶解性または分散性を示すことがわかる。さらに、
共重合体がこれら溶剤に溶解または分散しているコーテ
ィング組成物は優れたフィルム形成能を有することがわ
かる。
【0065】比較例 参考例2でえられた共重合体2を表2に示す各種溶剤に
表2に示す濃度になるように添加し、スターラにて24
時間以上攪拌した。その後、実施例1と同様にして溶剤
に対する溶解性およびフィルム性状を評価した。
【0066】
【表2】
【0067】
【発明の効果】本発明の大腸特異的分解性を示す共重合
体を含むコーティング剤用組成物は溶剤の種類、混合
比、共重合体の濃度を必要に応じて制御でき、皮膜形成
性も良好であるため、これを利用することにより、高濃
度でのコーティング、膜厚の制御が可能であり、さらに
簡単な操作で、しかも均一な薬剤へのコーティングが可
能となる。

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(I): 【化1】 (式中、Rは2価の有機基を表わし、R1 は大腸内で分
    解または資化される糖残基を表わす)で示される少なく
    とも1種類の構造単位および一般式(II): 【化2】 (式中、Rは2価の有機基を表わし、X1 およびX2
    独立に酸素原子、イミノ基または硫黄原子を表わし、R
    2 は飽和または不飽和の炭化水素基、ポリアルキレン
    基、ポリアルキレングリコール基、ポリアリーレンオキ
    サイド基、ポリエステル基またはポリアミド基を表わ
    す)で示される少なくとも1種類の構造単位からなる共
    重合体を溶剤に溶解または分散した組成物。
  2. 【請求項2】 前記共重合体を0.1〜50%(重量
    %)の濃度で溶剤に溶解または分散した請求項1記載の
    組成物。
  3. 【請求項3】 前記共重合体のR1 がβ−グルコシダー
    ゼ、β−ガラクトシダーゼまたはβ−グルクロニダーゼ
    により加水分解される糖残基である請求項1記載の組成
    物。
  4. 【請求項4】 前記共重合体のR1 がガラクトオリゴ糖
    残基、フラクトオリゴ糖残基または大豆オリゴ糖残基で
    ある請求項1記載の組成物。
  5. 【請求項5】 前記共重合体の構造単位(I)がHOO
    C−R−COOHで表わされる二塩基酸とHO−R1
    OHで表わされる糖とをエステル結合させてえられる構
    造単位であり、構造単位(II)がHOOC−R−CO
    OHで表わされる二塩基酸とHO−R2 −OHで表わさ
    れるポリアルキレングリコールとをエステル結合させて
    えられる構造単位である請求項1記載の組成物。
  6. 【請求項6】 前記共重合体の構造単位(I)を構成す
    るHOOC−R−COOHで表わされる二塩基酸がテレ
    フタル酸またはイソフタル酸であり、HO−R1 −OH
    で表わされる糖がセロビオースであって、構造単位(I
    I)を構成するHOOC−R−COOHで表わされる二
    塩基酸がテレフタル酸またはイソフタル酸であり、HO
    −R2 −OHで表わされるポリアルキレングリコールが
    ポリテトラメチレングリコールまたはポリプロピレング
    リコールである請求項5記載の組成物。
  7. 【請求項7】 前記共重合体を溶解または分散させる溶
    剤が水、炭素数1〜5のアルコール、芳香族炭化水素、
    エステル、ケトン、エーテル、ハロゲン化物およびグリ
    コールから選ばれる1種または2種以上の混合溶剤であ
    る請求項1記載の組成物。
  8. 【請求項8】 前記溶剤がエーテルのばあい、テトラヒ
    ドロフランである請求項7記載の組成物。
  9. 【請求項9】 前記溶剤がメタノール、エタノールまた
    は2−プロパノールとトルエンとの混合溶剤である請求
    項7記載の組成物。
  10. 【請求項10】 前記溶剤がメタノール、エタノールま
    たは2−プロパノールと酢酸エチルとの混合溶剤である
    請求項7記載の組成物。
  11. 【請求項11】 前記溶剤がメタノール、エタノールま
    たは2−プロパノールとメチルエチルケトンとの混合溶
    剤である請求項7記載の組成物。
  12. 【請求項12】 前記溶剤がジクロロメタンまたはクロ
    ロホルムとメタノールとの混合溶剤である請求項7記載
    の組成物。
  13. 【請求項13】 前記溶剤がジクロロメタンまたはクロ
    ロホルムとエタノールとの混合溶剤である請求項7記載
    の組成物。
  14. 【請求項14】 前記溶剤が水である請求項7記載の組
    成物。
  15. 【請求項15】 前記溶剤が炭素数1〜5のアルコール
    から選ばれる請求項7記載の組成物。
  16. 【請求項16】 前記溶剤がケトンのばあい、メチルエ
    チルケトンである請求項7記載の組成物。
  17. 【請求項17】 前記溶剤がメタノール、エタノールま
    たは2−プロパノールとアセトンとの混合溶剤である請
    求項7記載の組成物。
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