JPH0868454A - 合成樹脂製の腕時計用歯車 - Google Patents

合成樹脂製の腕時計用歯車

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JPH0868454A
JPH0868454A JP16017795A JP16017795A JPH0868454A JP H0868454 A JPH0868454 A JP H0868454A JP 16017795 A JP16017795 A JP 16017795A JP 16017795 A JP16017795 A JP 16017795A JP H0868454 A JPH0868454 A JP H0868454A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 合成樹脂製歯車の吸水性を改善して、湿度に
よる寸法の変化を防止し、寸法精度が安定する合成樹脂
製の腕時計用歯車を提供することにある。 【構成】 中間車8及び三番車10を、250℃以上の
耐熱性をもったシリコン系オイルを数パーセント混合し
たチタン酸カリウムウィスカ入りポリアセタール樹脂ペ
レットにより射出成形した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は合成樹脂製の腕時計用
歯車に関する。
【0002】
【従来の技術】最近、腕時計において金属製歯車の代り
に、ポリアミド(ナイロン)、ポリアセタール等の樹脂
で成形された合成樹脂製歯車が用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】合成樹脂は、吸水性が
高く湿度によって寸法が変化するという欠点があり、小
型で精度が要求される腕時計用歯車にとっては、このこ
とが大きな問題となっていた。
【0004】この発明は、上述した問題に鑑みてなされ
たもので、合成樹脂製歯車の吸水性を改善して、湿度に
よる寸法の変化を防止し、寸法精度が安定する合成樹脂
製の腕時計用歯車を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成するために、合成樹脂製の腕時計用歯車を、強化繊維
入り結晶性樹脂の樹脂ペレットに250℃以上の耐熱性
をもったシリコン系の油を数パーセント混合して射出成
形したことを特徴とする。
【0006】
【実施例】以下、図1から図4を参照して、この発明の
一実施例につき説明する。図1および図2は電子腕時計
のアナログムーブメントを示す。このアナログムーブメ
ントはステップモータ1の回転を輪列機構2に伝え、こ
の輪列機構2で時針3a、分針3b、秒針3c等の指針
を運針させて時刻を指示表示し、時刻修正機構4で指針
の針合わせを行なうようになっている。
【0007】ステップモータ1は指針を運針させるため
の駆動源であり、ロータ5、図示しないステータ、コイ
ル等からなり、コイルに一定周期の反転パルスが与えら
れる毎に、ロータ5が180度ずつステップ回転するよ
うになっている。この場合、ロータ5は図1に示すよう
に、ロータ部5a、ロータカナ5b、ロータ軸5c等よ
りなり、これらをチタン酸カリウムウィスカ入りポリア
セタール樹脂で一体に形成するとともに、ロータ部5a
にマグネットリング5dを装着した構成となっていて、
上記ロータ部5a、ロータカナ5b、ロータ軸5cは2
50℃以上の耐熱性のあるシリコン系オイルを数%混合
したチタン酸カリウムウィスカ入りポリアセタール樹脂
の樹脂ペレットで射出成形されている。そして、ロータ
軸5cが地板6と輪列受7との間に回転可能に取り付け
られている。なお、ロータ5の樹脂注入用ゲートGはロ
ータ軸5cの上端面に設けられている。
【0008】輪列機構2はステップモータ1の回転を指
針に伝達して指針を運針させるものであり、中間車8、
四番車9、三番車10、二番車11、日ノ裏車12、筒
車13等よりなり、地板6と輪列受7との間に中間車
8、四番車9、三番車10が、また地板6の上に二番車
11、日ノ裏車12、筒車13がそれぞれ取り付けられ
ている。この場合、地板6および輪列受7はガラスファ
イバを入れたポリフェニレンサルファイド樹脂(以下、
「PPS樹脂」と言う)からなり、地板6の上部には文
字板14が設けられている。
【0009】以下、各車について順に説明する。中間車
8はステップモータ1のロータカナ5bに噛み合って回
転するものであり、チタン酸カリウムウィスカ入りポリ
アセタール樹脂からなり、軸部8aおよび中間カナ8b
と一体に成形されている。この中間車8はロータ5と同
様に250℃以上の耐熱性のあるシリコン系オイルを数
%混合したチタン酸カリウムウィスカ入りポリアセター
ル樹脂の樹脂ペレットにより射出成形され、その樹脂注
入用ゲートGは軸部8aの下端面に設けられている。
【0010】四番車9は中間車8の中間カナ8bに噛み
合って回転し、秒針3cを運針させるものであり、その
軸部9aが秒針軸をなし、地板6の軸受部6aおよび文
字板14を通して上方へ突出し、この突出した部分が針
取付部9cになっており、この針取付部9cに秒針3c
が取り付けられている。この四番車9はチタン酸カリウ
ムウィスカ入り液晶ポリマー樹脂からなり、軸部9aお
よび四番カナ9bと一体に形成されている。そして、こ
の四番車9も250℃以上の耐熱性のあるシリコン系オ
イルを数%混合したチタン酸カリウムウィスカ入り液晶
ポリマー樹脂の樹脂ペレットを用いて射出成形され、そ
の樹脂注入用ゲートGは軸部9aの下端面に設けられて
いる。
【0011】三番車10は四番車9の四番カナ9bに噛
み合って回転するものであり、チタン酸カリウムウィス
カ入りポリアセタール樹脂からなり、軸部10aおよび
三番カナ10bと一体に形成されている。この場合、三
番カナ10bは地板6を貫通してその上方へ突出してい
る。この三番車10もシリコン系オイルを数%混合した
樹脂ペレットで射出成形されており、樹脂成形用ゲート
Gは軸部10aの下端面に設けられている。
【0012】二番車11は三番車10の三番カナ10b
に噛み合って回転し、分針3bを運針させるものであ
り、軸部11aが分針軸をなし、地板6の軸受部6aの
外周に回転可能に取り付けられており、軸部11aの上
端が文字板14を通して上方へ突出し、この突出した部
分に分針3bが取り付けられている。この二番車11は
筒カナ部11bを有する軸部11aと歯車部11cとを
スリップ回転可能に一体的に二色成形したものであり、
軸部11aは耐摩耗性および強度が高く、歯車部11c
より溶融温度が高いチタン酸カリウムウィスカ入りPP
S樹脂からなり、歯車部11cは収縮率の小さく、軸部
11aより溶融温度が低いチタン酸カリウムウィスカ入
り12ナイロン樹脂からなっている。
【0013】この二番車11は図3に示すように構成さ
れている。即ち、軸部11aは筒状をなし、その下部に
筒カナ部11bが形成され、この筒カナ部11bの内部
が大径部aになっており、その外周にはカナb、突出部
c、延出部dが形成されている。また、軸部11aの上
部側は内部が小径部eになっており、その外周には逃げ
部f、針取付部gが形成されている。筒カナ部11bは
大径部aが地板6の軸受部6aの外周に回転可能に嵌合
するようになっており、その下端の延出部dが下側へ突
出し、地板6の軸受部6aの周辺に形成された環状の凹
溝6b内に回転可能な状態で挿入され、これにより軸部
11aが芯振れしないように十分長く保持されている。
また、外周に設けられたカナbは日ノ裏車12の歯12
cが噛み合うものであり、その歯の形状はインボリュー
ト歯形になっている。突出部cは歯車部11cが一体的
に形成される部分であり、カナbの下側に鍔状に形成さ
れ、その外周部が先端側へ向うに従って細くなる形状に
形成されている。この場合、突出部cの先端の外径c1
は約2.1mmで、鍔状部分の厚さc2は約0.3mmで、先端の
角度c3は約120°になっている。そして、突出部c
に一体的に成形される歯車部11cは外径が約3.4mm
で、突出部cの下側に突出する厚さt1が約0.15mmで、
鍔状部分に食い込む量t2が約0.1mm程度になっている。
これにより、二番車11は適度なスリップトルク(3〜
6g・cm)をもち、これ以上のトルク(負荷)が加わっ
た際に筒カナ部11b(軸部11a)と歯車部11cと
の間で相互にスリップ回転する。さらに、軸部11aの
上側の小径部eはその内部に四番車9の軸部9aが接触
しないように挿通するようになっている。軸部11aの
外周に形成された逃げ部fは後述する筒車13の針取付
部13bと対応する部分に位置し、その部分に所定のク
リアランスLをもち、時針3aの取り付け時に針取付部
13bが変形しても二番車11の軸部11aに接触しな
いようになっている。なお、その上端の針取付部gは分
針3bが嵌着する部分である。
【0014】このような二番車11を成形する場合に
は、図4(A)(B)に示すような金型15、16を用
いて行なうが、この金型15、16はターンテーブル型
の自動インサート成形装置に組込まれている。したがっ
て、図4(A)に示すように、まず、上下一対の1次成
形用金型15、15で筒カナ部11bを有する軸部11
aを射出成形する。このとき用いる樹脂ペレットは25
0℃以上の耐熱性のあるシリコン系のオイルを数%混合
した結晶性のチタン酸カリウムウィスカ入りPPS樹脂
であり、その樹脂注入用ゲートGは軸部11aの上端面
に形成された2つの凹部(図示せず)内に設けられてい
る。このようにして成形された軸部11aは、1次成形
用金型15、15内から取り出した後、図4(B)に示
すような上下一対の2次成形用金型16、16内に配置
し、2次成形用の樹脂を下側の金型16に設けられた樹
脂注入用ゲートGから注入し、1次成形品である軸部1
1aに歯車部11cを一体的に成形する。この場合に用
いる樹脂ペレットは上述と同様に、250℃以上の耐熱
性のあるシリコン系のオイルを数%混合した結晶性のチ
タン酸カリウムウィスカ入り12ナイロン樹脂である。
このようにして成形された成形品(二番車11)は、約
100℃の高温の鉱物油中に約3時間漬けてオイルアニー
ル処理する。この場合、鉱物油の温度が熱変形温度の約
80%で、1時間以上であれば良い。すると、図3に示
すような二番車11が得られる。
【0015】日ノ裏車12は二番車11の筒カナ部11
bに形成されたカナbに噛み合って回転するものであ
り、チタン酸カリウムウイスカを入れたポリアセタール
樹脂からなり、日ノ裏カナ12bと一体に形成され、地
板6の上面に突出形成された軸部6cに回転可能に取り
付けられている。この場合、日ノ裏車12の歯12cは
二番車11のカナbと噛み合うため、その歯形はカナb
と同じインボリュート歯形になっている。
【0016】筒車13は日ノ裏車12のカナ12bに噛
み合って回転し、時針3aを運針するものであり、チタ
ン酸カリウムウィスカ入りポリアセタール樹脂からな
り、その軸部13aは筒状をなし、二番車11の軸部1
1aの外周に回転可能に装着され、その上端が文字板1
4の上方へ突出し、この突出した部分が針取付部13b
になっており、この針取付部13bに時針3aが圧入に
より取り付けられている。この筒車13と日ノ裏車12
も250℃以上の耐熱性をもったシリコン系オイルを数
%混合したチタン酸カリウムウィスカ入りポリアセター
ル樹脂の樹脂ペレットで成形されている。
【0017】なお、二番車11のカナbおよび日ノ裏車
12の歯12cを除く、輪列機構2の他の歯車は総てサ
イクロイド歯形に形成されている。一方、針合わせを行
なう時刻修正機構4は、図2に示すように、巻真17、
ツヅミ車18、小鉄車19、オシドリ20、カンヌキ2
1等からなり、地板6に設けられている。
【0018】即ち、巻真17は地板6にスライドおよび
回転可能に設けられ、腕時計ケースの外部へ突出したリ
ューズ(図示せず)の操作に応じてスライドおよび回転
を行なうものであり、金属等からなり、内側の先端にガ
イド部17aが、その右隣にスプライン部17bが、さ
らにその右隣に段差凹部17cが順に設けられている。
ガイド部17aは地板6のガイド孔6d内にスライドお
よび回転可能に挿入されている。スプライン部17bは
ツヅミ車18がスライド可能に取り付けられる部分であ
り、外周面に複数のスプライン溝が形成されている。段
差凹部17cはオシドリ20が配置され、このオシドリ
20により巻真17の引き出し位置を規制すようになっ
ている。
【0019】ツヅミ車18は巻真17の引き出し操作に
応じて小鉄車19に噛み合うとともに、巻真17の回転
操作に応じて回転するものであり、カーボンファイバ入
りPPS樹脂からなり、ほぼ筒状をなし、その左端面に
はクラウン歯18aが設けられ、外周面には凹部状の溝
部18bが設けられている。この場合、クラウン歯18
aはインボリュート歯に形成されている。溝部18bに
はカンヌキ21が配置され、このカンヌキ21により巻
真17の引き出し操作に応じてツヅミ車18をスライド
させるようになっている。
【0020】小鉄車19はツヅミ車18の回転を上述し
た輪列機構2の日ノ裏車12に伝達するものであり、ツ
ヅミ車18および日ノ裏車12よりも硬度が柔らかいポ
リアセタール樹脂からなり、地板6の上面に突出して形
成された軸部6eに回転可能に取り付けられ、地板6の
上部に取り付けられた金属製の押え板22で押え付けら
れている。この場合、小鉄車19はツヅミ車18と日ノ
裏車12の歯12cとに噛み合うため、その歯形はイン
ボリュート歯になっている。
【0021】次に、上記のように構成されたアナログム
ーブメントの動作について説明する。通常はステップモ
ータ1により指針が運針して時刻を指示表示する。即
ち、図1に示すように、ステップモータ1のロータ5が
回転すると、その回転が中間車8を介して四番車9に伝
達され、四番車9が回転して、四番車9の軸部9aの上
端に取り付けられた秒針3cを運針する。また、このよ
うに四番車9が回転すると、その回転が三番車10を介
して二番車11に伝達され、二番車11が回転する。こ
の場合、二番車11は軸部11aと歯車部11cとがス
リップ回転可能に一体的に形成されているが、この状態
では二番車11に一定以上の負荷が加わらないため、軸
部11aと歯車部11cとが一体的に回転する。そのた
め、二番車11の軸部11aに取り付けられた分針3b
が運針する。このように二番車11が回転すると、その
回転が日ノ裏車12を介して筒車13に伝達され、筒車
13が回転して時針3aを運針する。このように時針3
a、分針3b、秒針3cが文字板14の上方を運針する
ので、時刻が指示表示される。
【0022】また、時刻修正を行なう場合には、図2に
示す時刻修正機構4の巻真17を引き出して所定量回わ
せば良い。即ち、巻真17を矢印X方向へ引き出すと、
巻真17の段差凹部17c内に配置されたオシドリ20
が巻真17と共に移動して巻真17を所定位置にセット
する。すると、オシドリ20の移動に伴ってカンヌキ2
1が矢印Y方向へ移動し、ツヅミ車18を巻真17のス
プライン部17bに沿って同じ方向へ移動させ、ツヅミ
車18のクラウン歯18aを小鉄車19に噛み合わせ
る。この状態で、巻真17を回すと、その回転がツヅミ
車18を介して小鉄車19に伝達され、この小鉄車19
の回転が日ノ裏車12を介して二番車11と筒車13と
に伝達される。これにより、二番車11と筒車13とが
回転し、時針3aと分針3bとを回転して針合わせが行
なわれる。このとき、二番車11には巻真17からトル
ク(回転力)が与えられるが、巻真17からのトルク
(回転力)が、二番車11のスリップトルク(3〜6g
・cm)以上になると、二番車11の軸部11aと歯車部
11cとの間でスリップし、軸部11aがスリップ回転
する。しかも、このように軸部11aがスリップ回転す
る際に、軸部11aと歯車部11cとの接触面にシリコ
ン系のオイルの薄い皮膜ができ、この皮膜が潤滑剤とし
て作用し、軸部11aと歯車部11cとを安定したスリ
ップトルクで円滑に回転する。そのため、秒針、ステッ
プモータ1が回転することなく、分針、時針の針合わせ
を行なうことができる。
【0023】しかるに、上記のようなアナログムーブメ
ントの輪列機構によればロータ5、中間車8、三番車1
0、二番車11、日ノ裏車12、筒車13の合成樹脂製
歯車を250℃以上の耐熱性をもったシリコン系オイル
を混合した結晶性の樹脂ペレットで成形したので、樹脂
の吸水性を防ぎ、湿度による寸法変化を防止でき寸法の
安定化が計れる。
【0024】更に、二番車11は、軸部11aと歯車部
11cとを250℃以上の耐熱性をもったシリコン系の
オイルを数%混合した樹脂ペレットで成形したので、樹
脂の吸水性を小さくでき、吸水性による成形品の寸法変
化を防ぎ、精度の良いものを得ることができるととも
に、一定以上のトルクが加わって軸部11aと歯車部1
1cとが相互に回転する際に、その接触面にシリコン系
のオイルの薄い皮膜ができ、この皮膜が潤滑剤として作
用し、常に安定したスリップトルクを得ることができ、
軸部11aと歯車部11cとを円滑に回転させることが
できる。また、成形後には約100℃の高温の鉱物油中
に約3時間漬けてアニール処理したので、樹脂内部の応
力を均一に分散することができる。この場合、二番車1
1の軸部11aにチタン酸カリウムウィスカ入りPPS
樹脂を用い、歯車部11cにチタン酸カリウムウィスカ
入り12ナイロン樹脂を用いて、軸部11aに歯車11
cをスリップ回転可能に一体的に成形したので、3〜6
g・cm程度の適度で安定したスリップトルクを得ること
ができる。そのため、通常はステップモータ1の回転が
分針3bおよび時針3a等の指針に伝達され、正確に時
刻を指示表示でき、時刻修正等の針合わせの際には軸部
11aと歯車部11cとの間でスリップして針合わせを
行なうことができる。特に、軸部11aに用いたチタン
酸カリウムウィスカ入りPPS樹脂は耐摩耗性および強
度が高く、また歯車部11cよりも溶融温度が高く、歯
車部11cに用いたチタン酸カリウムウィスカ入り12
ナイロン樹脂は収縮率が小さく、軸部11aよりも溶融
温度が低いので、軸部11aを1次成形した後、この軸
部11aに歯車部11cを一体的に2次成形するとき、
軸部11aが変形することがなく、歯車部11cを良好
に成形することができ、精度の高い二番車11を成形す
ることができる。このような二番車11を成形する場合
にはターンテーブル型の成形装置を用いて自動的に二色
成形できるので、生産性に優れ、極めて容易に製作する
ことができる。
【0025】また、二番車11の軸部11aに先端側へ
向うに従って細くなる突出部cを形成し、この突出部c
に歯車部11cを一体的に成形したので、簡単な構造
で、安定したスリップトルクをもった状態で、軸部11
aに歯車部11cを確実かつ強固に取り付けることがで
きる。また、二番車11は下端に延出部dを形成し、こ
の延出部dを地板6の軸受部6aの外周近傍に形成され
た環状の凹溝6b内に回転可能な状態で挿入したので、
地板6を合成樹脂で形成する際、十分な強度を得るため
にその厚さを厚くしても、アナログムーブメント全体が
厚くならず、二番車11を軸受部6bで良好に保持で
き、芯振れ等を起すことがない。さらに、二番車11は
軸部11aの外周に逃げ部fを筒車13の針取付部13
bと対応して設けたので、筒車13の針取付部13bに
時針3aを取り付ける際に、筒車13の軸部13aが変
形しても、二番車11の軸部11aに接触することがな
く、二番車11と筒車13とを円滑に回転させることが
できる。
【0026】なお、上述した実施例では二番車11の軸
部11aおよび歯車部11cに用いられた樹脂の強化材
としてチタン酸カリウムウィスカを用いたが、この発明
はこらに限らず、例えば、ガラスファイバ、カーボンフ
ァイバ、還元チタン酸カリウムウィスカ等を用いても良
い。
【0027】また、上述した実施例では軸部11aにチ
タン酸カリウムウィスカ入りPPS樹脂を用い、歯車部
11cにチタン酸カリウムウィスカ入り12ナイロン樹
脂を用いて、スリップトルクを約3〜6g・cmに設定し
たが、これらの材質を変えれば2〜10g・cmのスリッ
プトルクを得ることが可能である。
【0028】また、上述した実施例の二番車11は軸部
11aと歯車部11cとの両方にシリコン系のオイルを
数パーセント混合した樹脂ペレットを用いて成形した
が、いずれか一方のみをシリコン系のオイルを数パーセ
ント混合した樹脂ペレットで成形しただけでも良い。し
かも、シリコン系のオイルを数パーセント混合した樹脂
ペレットで成形した場合には、必ずしもアニール処理を
行なう必要はない。
【0029】また、上述した実施例の2番車11は軸部
11aと歯車部11cとを合成樹脂で成形したが、この
発明はこれに限らず、いずれか一方を金属で形成しても
良い。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように、この発明に係わる
合成樹脂製の腕時計用歯車によれば、強化繊維入り結晶
性樹脂の樹脂ペレットに250℃以上の耐熱性をもった
シリコン系の油を数パーセント混合して射出成形したの
で、樹脂の吸水性を防ぎ、湿度による寸法の変化を防止
でき、寸法の安定化を図ることができるという利点があ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例に係わる合成樹脂製の腕時
計用歯車を採用したアナログムーブメントの要部断面図
である。
【図2】図1のアナログムーブメントの他の部分の断面
図である。
【図3】図1のアナログムーブメント二番車の断面図で
ある。
【図4】(A)(B)は、図1のアナログムーブメント
二番車の製造方法を示す図である。
【符号の説明】
8 中間車 10 三番車 11 二番車 11a 軸部 11b 筒カナ部 11c 歯車部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B29L 15:00

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 強化繊維入り結晶性樹脂の樹脂ペレット
    に250℃以上の耐熱性をもったシリコン系の油を数パ
    ーセント混合して射出成形したことを特徴とする合成樹
    脂製の腕時計用歯車。
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