JPH0860274A - Ti焼結体及びその製造方法 - Google Patents

Ti焼結体及びその製造方法

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JPH0860274A
JPH0860274A JP19325194A JP19325194A JPH0860274A JP H0860274 A JPH0860274 A JP H0860274A JP 19325194 A JP19325194 A JP 19325194A JP 19325194 A JP19325194 A JP 19325194A JP H0860274 A JPH0860274 A JP H0860274A
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富夫 河野
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 十分なる延性を有するTi焼結体の提供。 【構成】 【表1】 表1の大径粉と小径粉とを、重量比で8:2〜5:5の
割合で混合し、バインダーを12wt%混練し、MIM
用射出成形機にて成形し、脱脂後、真空中で昇温し、A
r雰囲気中で最終焼結することにより、酸素含有量が
0.25〜0.50wt%、焼結体密度95%以上、伸
び10%以上のTi焼結体を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、Ti焼結体及びその製
造方法に係り、特に、金属粉末射出成形法(Metal
Injection Molding;以下、MIM
という。)によるTi焼結体の製造技術に関する。
【0002】
【従来の技術】MIMは、1960年代に米国のNAS
Aで開発された技術であり、その後、エレクトロニク
ス、精密機械、医療、自動車など幅広い分野で活用され
ている。例えば、精密機械分野では、ステンレス鋼(S
US),Fe−Niによる時計のケースやバンド、カメ
ラのレバーやギヤなどに、民生用機器では、SUSによ
る眼鏡やボタンなどに、エレクトロニクス分野では、F
e−Co,SUS,Fe−Niによる複写機のギヤー,
プリンターのヨーク,コンパクトディスクのピックアッ
プ,ハードディスク,光ファイバーコネクターなどに、
医療分野では、SUS,Ni−Tiによる歯科用彫刻刀
や手術用ピンセットなどに、自動車分野では、耐熱鋼,
SUS,低合金鋼によるキー,燃料噴射装置,制御装置
などに、一般機械分野では、低合金鋼,ハイスによるミ
シンのルーパー,NC工作機,工具類などに応用されて
いる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】この様に、従来は、S
USや低合金鋼などを中心にMIM焼結品が製造されて
きたが、最近では、特に軽量・高強度で人体とも馴染み
がよいTi粉末を用いたMIM焼結品が望まれるように
なってきた。
【0004】しかし、Ti粉末を用いたMIM焼結品
は、延性が不十分で、脆く割れ易いという問題があっ
た。そこで、本発明は、十分なる延性を有するTi焼結
体及びその製造方法の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】かかる目
的を達成するためになされた本発明のTi焼結体は、C
≦0.20wt%、N≦0.08wt%、O≦0.50
wt%とすることにより10%以上の伸びを確保した。
C,N,Oを抑制することにより、焼結体中での炭化
物,窒化物,酸化物の生成を抑え、十分な延性(靱性)
を確保することができる。
【0006】特に、焼結体密度95%以上に焼結する
と、靱性及び強度が共に向上する。なお、より望ましく
は、C≦0.15wt%、N≦0.03wt%、O≦
0.50wt%を満足するように、C,N,Oを抑制す
るのがよい。また、本発明のTi焼結体の製造方法は、
大径のTi粉末と小径のTi粉末とを、焼結体密度95
%以上、かつ、焼結体におけるC,N,Oの含有量をC
≦0.20wt%、N≦0.08wt%、0.25wt
%≦O≦0.50wt%とし、かつ、伸びを10%以上
確保できる範囲内で混合し、バインダーを混練して射出
成形し、脱脂後焼結することを特徴とする。この場合
も、より望ましくは、C≦0.15wt%、N≦0.0
3wt%、0.25wt%≦O≦0.50wt%を満足
するように、C,N,Oを抑制するのがよい。
【0007】ここで、前記大径の粉末として平均粒径2
5μm以上のTi粉末を、小径の粉末として平均粒径1
5μm以下のTi粉末を用いることが望ましい。また、
バインダーとしては、ポリプロピレン、ポリオレフィ
ン、ポリエチレン、ポリスチレンなどの各種熱可塑性樹
脂とパラフィン、マイクロワックス、カルナバなどのワ
ックス類とを混合したものを用いるとよく、Ti粉末に
対する混練割合は10〜20wt%が望ましい。
【0008】一方、平均粒径25μm以上の大径のTi
粉末と、平均粒径15μm以下の小径のTi粉末とを、
8:2〜5:5の重量比で混合し、バインダーを混練し
て射出成形し、脱脂後焼結することとしてもよい。この
様な割合で大径粉と小径扮とを混合することで、射出成
形後に焼結したときの焼結体密度を95%以上とし、か
つ10%以上の伸び(十分なる延性)を確保することが
可能になる。言い換えれば、平均粒径15μm以下の小
径粉を単独で使用すれば焼結体密度を向上して高強度焼
結体を得ることができるのであるが、これに平均粒径2
5μm以上の大径のTi粉末を所定の割合で混合するこ
とにより、焼結体密度を95%以上確保しつつ(高強度
を確保しつつ)、延性をも確保することができるのであ
る。
【0009】なお、これら本発明のTi焼結体の製造方
法においては、より望ましくは、大径粉としてO含有量
が0.2wt%以下のTi粉末を用いることが推奨され
る。これは、大径粉は、小径粉を用いることによるO含
有量の増大を抑え、それによって伸びを十分に確保する
役割を果たしているからである。なお、大径粉であれ
ば、O含有量が0.2wt%以下のものも比較的安価に
製造することができる。
【0010】大径のTi粉末のみでは焼結体密度を95
%以上に上げるのが困難であるが、小径のTi粉末をも
混合することで焼結体密度を向上することが可能にな
る。また、小径のTi粉末は表面積が相対的に大きくな
って酸化され易いためにO含有量が多く、小径粉単独で
は焼結体のO含有量を上記条件の範囲内に抑えるのが困
難であるが、O含有量の少ない大径のTi粉末と混合し
て用いることにより焼結体全体として上記O含有量の範
囲内にすることができる。この結果、上記本発明方法に
より出来上がったTi焼結体は、十分な延性を有するも
のとなる。
【0011】また、本発明のTi焼結体の製造方法にお
いては、真空中で880〜1200℃まで加熱した後、
Ar雰囲気中で最終焼結を行うことが望ましい。Tiの
速度が大きくなる880℃以上で、真空中で加熱するこ
とにより、射出成形した成形体の隙間の気泡がよく抜
け、Ar雰囲気で最終焼結を行うことにより、焼結体か
らのTiの蒸発を防止することができるからである。こ
れにより、高強度・高延性のTi焼結体を製造すること
ができるようになる。
【0012】この様に、本発明によれば、十分なる延性
を有するTi焼結体を提供することができるので、例え
ば、時計バンドや時計ケースとしたときに器物に時計を
ぶつけても衝撃により破損したりすることがない。ま
た、焼結後にサイジング、コイニング等の寸法調整処理
を行っても、最終製品に変形や破損が生じることはな
い。
【0013】
【実施例】次に、本発明を一層明らかにするために、好
適な実施例を比較例と比べながら説明する。実施例とし
ては、下記表1の組成のTi粉末を用いる。
【0014】
【表1】
【0015】表1の大径粉と小径粉とを、重量比で1
0:0、8:2、7:3、5:5、3:7、0:10の
それぞれの割合で混合し、バインダーを加えて混練し、
MIM用射出成形機にて引張試験片を成形し、脱脂後、
焼結をした。詳細については以下の通りである。 (1)最初の混合には、Vブレンダーを使用した。 (2)バインダーとしては、ポリプロピレンにワックス
を50:50の重量比で混合したものを用いた。なお、
Ti粉末:バインダーの重量比は、88:12とした。 (3)射出成形は、150〜170℃に加熱した状態で
実行した。 (4)引張試験片は、図1に示すように、全長110mm
×厚さ4mmで、チャック部の幅が12mm、本体部の幅が
7.5mmの板状のもの(成形体)とした。 (5)脱脂工程としては、有機溶剤にてバインダーの一
部を除去した後、430℃に加熱し、1時間保持を行っ
た。 (6)焼結は、まず、真空中で室温から1200℃まで
昇温し、その後Ar雰囲気中(圧力5Torr)で1250
℃に2時間保持して最終焼結をした。
【0016】以上の処理の結果得られた引張試験片の、
焼結体密度、焼結体酸素量、伸び及び引張強さを調べた
結果を図2に示す。図示の様に、小径粉の混合量を増す
に従って、焼結体密度、焼結体酸素量及び引張強さが上
昇することが分かる。一方、伸びについて見ると小径粉
の混合割合が20〜50%では10%以上の伸びとな
り、十分な延性が得られるものの、大径粉100%の場
合や小径粉70%以上の場合には伸びが10%を下回
り、延性が不十分であることが分かる。
【0017】また、焼結体のC含有量及びN含有量を計
測したところ、下の表の様になった。表には図2のO含
有量も併せて記入した。
【0018】
【表2】
【0019】この様に、大径粉:小径粉の混合割合を重
量比で8:2〜5:5にして射出成形、脱脂、焼結した
ものでは、焼結体酸素含有量を0.50wt%以下とす
ることができ、焼結体密度は95%以上とすることがで
き、十分な延性が得られた。実施例から分かることは、
特に、酸素含有量が0.25wt%以上となっているこ
とで、強度的にも引張強さ500MPaが確保できてい
る。また、十分な延性を確保するには、酸素含有量が低
いだけでは不十分で、焼結体密度を95%以上にするこ
とも必要であるということが分かる。
【0020】次に、焼結条件についての実験結果を説明
する。粉末の組成及び平均粒径は表1の通りであり、混
合比は、大径粉:小径粉=70:30としたものを用い
て、以下、上述の実施例とほぼ同様に11wt%のバイ
ンダーと混練し、MIM射出成形機にて成形し、有機溶
剤浸漬及び加熱により脱脂を行った。その後、下記表3
の様な条件で昇温と最終焼結とを実行し、焼結体密度及
び重量減少量を測定した。なお、昇温条件とは、室温か
ら880℃〜1200℃までの加熱条件をいう。
【0021】
【表3】
【0022】表3中、二重線の上が実施例に相当し、い
ずれも目標とする焼結体密度が得られている。また、重
量減少量は約11%であり、これは、丁度、混練したバ
インダーの量に相当する。このことから、焼結時のTi
蒸発はほとんどないということが分かる。
【0023】一方、二重線の下の比較例を見ると、真空
中で最終焼結した場合には、Ti蒸発が1〜2%程度あ
ることが分かる。また、昇温をAr雰囲気中でやった場
合には、十分な焼結体密度が得られないことが分かる。
以上より、十分な焼結体密度を得ることができ、かつ、
Ti蒸発が抑制できる焼結条件として、真空中で880
〜1200℃まで加熱した後、Ar雰囲気中で最終焼結
を行うことが望ましいことが分かる。
【0024】以上本発明の実施例を説明したが、本発明
はこれら実施例に限定されるものではなく、その要旨を
逸脱しない範囲内で種々なる態様にて実現することがで
きることはいうまでもない。例えば、射出成形前に混練
するバインダーとしては、ポリプロピレンの他に、ポリ
オレフィン、ポリエチレン、ポリスチレンなどの各種熱
可塑性樹脂を用いることができるし、ワックスの他に、
パラフィン、カルナバなどを用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例で製造した試験片の平面図である。
【図2】 実施例及び比較例の計測結果のグラフであ
る。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C≦0.20wt%、N≦0.08wt
    %、O≦0.50wt%とすることにより10%以上の
    伸びを確保したTi焼結体。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のTi焼結体であって、焼
    結体密度95%以上に焼結されていることを特徴とする
    Ti焼結体。
  3. 【請求項3】 大径のTi粉末と小径のTi粉末とを、
    焼結体密度95%以上、かつ、焼結体におけるC,N,
    Oの含有量をC≦0.20wt%、N≦0.08wt
    %、0.25wt%≦O≦0.50wt%とし、かつ、
    伸びを10%以上確保できる範囲内で混合し、バインダ
    ーを混練して射出成形し、脱脂後焼結することを特徴と
    するTi焼結体の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項3記載のTi焼結体の製造方法に
    おいて、前記大径の粉末として平均粒径25μm以上の
    Ti粉末を、小径の粉末として平均粒径15μm以下の
    Ti粉末を用いることを特徴とするTi焼結体の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 平均粒径25μm以上の大径のTi粉末
    と、平均流径15μm以下の小径のTi粉末とを、8:
    2〜5:5の重量比で混合し、バインダーを混練して射
    出成形し、脱脂後焼結することを特徴とするTi焼結体
    の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項3〜請求項5のいずれか記載のT
    i焼結体の製造方法において、大径粉としてO含有量が
    0.2wt%以下のTi粉末を用いることを特徴とする
    Ti焼結体の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項3〜請求項6のいずれか記載のT
    i焼結体の製造方法において、真空中で880〜120
    0℃まで加熱した後、Ar雰囲気中で最終焼結を行うこ
    とを特徴とするTi焼結体の製造方法。
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