JPH0859964A - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物

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JPH0859964A
JPH0859964A JP20068094A JP20068094A JPH0859964A JP H0859964 A JPH0859964 A JP H0859964A JP 20068094 A JP20068094 A JP 20068094A JP 20068094 A JP20068094 A JP 20068094A JP H0859964 A JPH0859964 A JP H0859964A
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元信 古田
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】成形品の成形収縮率を小さくし、剛性を向上さ
せ、しかも安価な樹脂組成物の提供。 【構成】(A)液晶ポリエステル、(B)芳香族ポリカ
ーボネート、(C)数平均繊維径が5〜25μm、数平
均繊維長が30〜1000μm、かつ数平均繊維長/数
平均繊維径が2〜150で、表面無処理のガラス繊維お
よび(D)数平均粒子径が0.05〜10μmの無機充
填材を配合し、(A)の、(a)p−ヒドロキシカルボ
ン酸残基が30〜80モル%、(b)イソフタル酸残基
が0〜10モル%、(c)テレフタル酸残基が10〜2
5モル%、(d)芳香族ジオール単位が10〜35モル
%、(e)6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸残基が0〜
40モル%からなり、(B)の、Fe含量が1ppm以
下、Cl含量が50ppm以下、(A)1〜30重量
%、(B)99〜70重量%、(A)と(B)の合計量
100重量部に対し(C)が1〜50重量部、(D)が
1〜100重量部である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、液晶ポリエステルと芳
香族ポリカーボネート、特定のガラス繊維および無機充
填材を主成分とする熱可塑性樹脂組成物に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】芳香族ポリカーボネートは耐衝撃性など
が優れた樹脂であるが、非晶性樹脂でありガラス転移温
度(150℃)付近で樹脂の変形が大きいという問題点
があった。
【0003】一方、液晶ポリエステルは、ポリエチレン
テレフタレートやポリブチレンテレフタレートのような
結晶性ポリエステルとは異なり、分子が剛直なため溶融
状態でも絡み合いを起こさず、液晶状態を有するポリド
メインを形成し、低剪断により分子鎖が流れ方向に著し
く配向する挙動を示し、一般に溶融型液晶(サーモトロ
ピック液晶)ポリマーと呼ばれている。この特異的な挙
動のため、溶融流動性が極めて優れ、0.2〜0.5m
m程度の薄肉成形品を容易に得ることができ、しかもこ
の成形品は高強度、高剛性を示すという長所を有してい
る。
【0004】しかし、異方性が極めて大きく、ウェルド
強度が著しく低いという欠点がある。さらに、成形加工
温度が高いため用途が限られていた。また、液晶ポリエ
ステルは一般に高価であることも問題であった。
【0005】従来、芳香族ポリカーボネートと液晶ポリ
エステルそれぞれのこのような欠点を解消する試みとし
て、芳香族ポリカーボネートと液晶ポリエステルを溶融
混練して得られた組成物により両者の物性を相補う試み
があり、たとえば、特公平1−60057号公報、特開
平4−225054号公報、特開平2−102257号
公報などに開示されているが、いずれの組成物も十分な
物性を発現するには至っていない。
【0006】また、特開平5−86266号公報、特開
平5−86267号公報には液晶ポリエステル、熱可塑
性樹脂にエポキシ化合物を添加してなる組成物が開示さ
れているが、該組成物の物性は不充分であり、また樹脂
に化合物を添加してなる組成物を得ることは、反応に寄
与しない化合物が組成物中に残存して組成物の物性を低
下させる場合があり必ずしも容易ではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、芳香族ポリ
カーボネートの優れた耐衝撃性を保持し、液晶ポリエス
テルの高い剛性、耐熱性などを生かした上で、少量のガ
ラス繊維および無機充填材を加えることにより成形品の
成形収縮率を小さくし、剛性を向上させ、しかも安価な
樹脂組成物を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、これらの
問題点を解決するため鋭意検討の結果、本発明に至った
ものである。すなわち本発明は、次に記す発明である。
【0009】(1)(A)液晶ポリエステル、(B)芳
香族ポリカーボネート、(C)数平均繊維径が5〜25
μm、数平均繊維長が30〜1000μm、かつ数平均
繊維長/数平均繊維径が2〜150で、表面無処理のガ
ラス繊維および(D)数平均粒子径が0.05〜10μ
mの無機充填材を配合したものであり、成分(A)の液
晶ポリエステルが、下記の繰り返し単位(a)が30〜
80モル%、繰り返し単位(b)が0〜10モル%、繰
り返し単位(c)が10〜25モル%、繰り返し単位
(d)が10〜35モル%、繰り返し単位(e)が0〜
40モル%からなり、成分(B)の芳香族ポリカーボネ
ートが、Fe含量が1ppm以下、Cl含量が50pp
m以下であり、成分(A)と成分(B)との組成比率
が、成分(A)が1〜30重量%であり、成分(B)が
99〜70重量%であり、成分(A)と成分(B)の合
計量100重量部に対し、成分(C)が1〜50重量部
であり、成分(D)が1〜100重量部である熱可塑性
樹脂組成物。
【化2】 (式中、Arは2価の芳香族基である。)
【0010】(2)成分(D)の無機充填材がタルクお
よび/または炭酸カルシウムであることを特徴とする
(1)記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0011】(3)成分(A)の液晶ポリエステルの下
記に定義された流動温度が240〜360℃の範囲であ
る(1)記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。流動温
度:4℃/分の昇温速度で加熱された樹脂を荷重100
kgf/cm2のもとで、内径1mm、長さ10mmの
ノズルから押し出す方法で測定したときに、溶融粘度が
48000ポイズを示す温度。 (4)成分(B)のマトリックス中に成分(A)および
成分(C)が主に連続状に分散していることを特徴とす
る(1)記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0012】以下、本発明について詳細に説明する。本
発明における成分(A)の液晶ポリエステルは、前記の
繰り返し構造単位(a)30〜80モル%、(b)0〜
10モル%、(c)10〜25モル%、(d)10〜3
5モル%、(e)0〜40モル%からなる芳香族ポリエ
ステルである。繰り返し構造単位(d)は、2価の芳香
族ジオールに由来するものであり、具体的には下記に示
す繰り返し構造単位が挙げられる。
【0013】
【化3】
【0014】
【化4】 これらの中では、(C1 )、(C2 )、(C3 )が好ま
しく、(C1 )が特に好ましい。
【0015】本発明における成分(A)の液晶ポリエス
テルは、流動温度(4℃/分の昇温速度で加熱された樹
脂を荷重100kgf/cm2 のもとで、内径1mm、
長さ10mmのノズルから押し出す方法で測定したとき
に、溶融粘度が48000ポイズを示す温度)が240
〜360℃の範囲のものが好ましく用いられる。さらに
好ましくは250〜340℃の範囲のものである。成分
(A)の液晶ポリエステルの流動温度が360℃を超え
ると組成物を溶融混練する際の設定温度を高くする必要
があるため、その際成分(B)の芳香族ポリカーボネー
トが分解する場合があり好ましくない。また、成分
(A)の流動温度が240℃未満であると組成物の耐熱
性が著しく低下するため好ましくない。
【0016】本発明の熱可塑性樹脂組成物の成分(B)
の芳香族ポリカーボネートは、二価フェノールとフォス
ゲン、ハロホルメート、炭酸エステルのようなカーボネ
ート前駆体とを反応させて得られる一般式(VI)で示
される繰り返し構造単位を有する芳香族ポリカーボネー
トであり、芳香族ポリカーボネート中のFe含量が1p
pm以下、Cl含量が50ppm以下、好ましくは10
ppm以下のものである。
【0017】Fe含量およびCl含量が上記のどちらか
の範囲外であると、加熱時に樹脂の分解、発泡などが生
じる場合があり好ましくない。樹脂中のFe含量、Cl
含量は原子吸光法、ケイ光X線法など通常の分析手法に
より求めることができる。
【化5】 (式中、Aは二価フェノールに由来する二価の芳香族基
である。)
【0018】ここで、用いられる二価フェノールとは、
単環式、あるいは多環式芳香族化合物であり、芳香環中
の炭素に直接結合する2個の水酸基を有する。これら二
価フェノールの具体例としては、2,2−ビス(4−ヒ
ドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ヒ
ドロキノン、レゾルシン、2,2─ビス(ヒドロキシフ
ェニル)ペンタン、2,4’─ジヒドロキシ─ジフェニ
ルメタン、ビス(2─ヒドロキシフェニル)メタン、ビ
ス(4─ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4─ヒド
ロキシ─5─ニトロフェニル)メタン、1,1─ビス
(4─ヒドロキシフェニル)エタン、3,3─ビス(4
─ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2─ジヒドロキ
シジフェニル、2,6─ジヒドロキシ─ナフタレン、ビ
ス(4─ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’─ジ
ヒドロキシジフェニルスルホン、5─クロロ─2,4’
─ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4─ヒドロ
キシフェニル)ジフェニルジスルホン、4,4─ジヒド
ロキシジフェニルエーテル、4,4’─ジヒドロキシ─
3,3’─ジクロロジフェニルエーテル、4,4’─ジ
ヒドロキシ─2,5─ジエトキシジフェニルエーテル等
である。好ましくは、ビスフェノールAおよびその核置
換誘導体が挙げられる。これらの二価フェノールは単独
あるいは混合して用いられる。
【0019】本発明の樹脂組成物に用いられる芳香族ポ
リカーボネートは上記の二価フェノールを原料として公
知の方法、すなわち、エステル交換法、溶液法、界面重
縮合法等により製造され、好ましくは粘度平均分子量1
5000以上、さらに好ましくは25000以上のもの
である。これらの具体的な重合方法は、例えば“ENC
YCLOPEDIA OF POLYMER SCIE
NCE AND TECHNOLOGY”第10巻(J
hon Wiley & Sons,Inc.,196
9年)710〜764ページに示される「ポリカーボネ
ート」の項に記載されている。また、これらのポリカー
ボネートには特公昭48─25076号公報に示される
ポリカーボネート─スチレンブロック共重合体に例示さ
れるような共重合体も用いることができる。
【0020】本発明の熱可塑性樹脂組成物の成分(C)
のガラス繊維は、数平均繊維径が5〜25μm、好まし
くは5〜20μm、数平均繊維長が30〜1000μ
m、好ましくは30〜300μmのものを用いる。数平
均繊維径または数平均繊維長が、この範囲外であるとガ
ラス繊維の補強効果が小さくなり、充分な剛性、寸法安
定性または加工性などが得られず好ましくない。
【0021】また、ガラス繊維の数平均繊維長/数平均
繊維径、すなわちガラス繊維の数平均繊維長と数平均繊
維径との比で示される形態比(以下、アスペクト比とい
うことがある)の数平均が、2〜150、好ましくは3
〜20であるガラス繊維を用いる。数平均アスペクト比
がこの範囲外であると、組成物の成形品外観が悪かった
り、成形加工性が不良であったりして好ましくない。ま
た本発明における成分(C)のガラス繊維は、表面無処
理のものである。これ以外のガラス繊維を使用すると組
成物の機械的性質、耐熱性が低下して好ましいない。
【0022】本発明における成分(D)の無機充填材と
は、ガラス繊維を除く通常よく用いられる炭酸カルシウ
ム、タルク、クレー、シリカ、炭酸マグネシウム、硫酸
バリウム、酸化チタン、アルミナ、石膏などであり、タ
ルク、炭酸カルシウムが好ましく使用され、なかでもタ
ルクがより好ましく使用される。該無機充填材の数平均
粒子径は、0.05〜10μmが好ましい。数平均粒子
径が、0.05μm未満では成形品の収縮率、剛性の改
良効果が小さくなり、10μmを越えると成形品の表面
光沢を著しく損なうため好ましくない。
【0023】本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、
成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)
の組成比が特定の範囲内の値をとることによって、目的
とする熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。本発明
における成分(A)と成分(B)の組成比率は成分
(A)が1〜30重量%、成分(B)が99〜70重量
%であり、好ましくは成分(A)が2〜25重量%、成
分(B)が98〜75重量%である。成分(A)が1重
量%未満であると、該組成物からなる成形品の耐熱性、
機械的性質が不充分であり、また30重量%を超えると
組成物の寸法安定性が不充分となり、コスト的にも利点
が少なく好ましくない。
【0024】本発明において成分(A)と成分(B)の
合計量100重量部に対し、成分(C)は1〜50重量
部であり、好ましくは2〜40重量部であり、成分
(D)は1〜100重量部であり、好ましくは2〜40
重量部である。成分(C)が1重量部未満または成分
(D)が1重量部未満であると本発明の熱可塑性樹脂組
成物の機械的強度、収縮率を向上させる効果が少なく、
また、成分(C)が50重量部を越えるまたは成分
(D)が100重量部を越えると該組成物の成形加工性
が低下し、射出成形品の外観も不良となり好ましくな
い。
【0025】本発明の熱可塑性樹脂組成物における好ま
しい形態は、成分(B)の芳香族ポリカーボネートのマ
トリックス中に成分(A)の液晶ポリエステルと成分
(C)の特定のガラス繊維とが主に連続状に分散し、成
分(D)が微細分散している場合である。このような形
態の場合、特に該組成物の機械的性質が優れたものにな
る。
【0026】本発明における熱可塑性樹脂組成物を製造
する方法に特に制限はなく、周知の方法を用いることが
できる。たとえば、溶液状態の樹脂成分とガラス繊維お
よび無機充填材とを混合し、溶剤を蒸発させるか、溶剤
中に樹脂成分とガラス繊維および無機充填材を沈澱させ
る方法が挙げられる。工業的見地からみると溶融状態で
各成分を混練する方法が好ましい。溶融混練には一般に
使用されている一軸または二軸の押出機、各種のニーダ
ー等の混練装置を用いることができる。特に二軸の高混
練機が好ましい。溶融混練に際しては、混練装置のシリ
ンダー設定温度は200〜360℃の範囲が好ましく、
さらに好ましくは250〜340℃である。
【0027】混練に際しては、各成分は予めタンブラー
もしくはヘンシェルミキサーのような装置で各成分を均
一に混合してもよいし、必要な場合には混合を省き、混
練装置にそれぞれ別個に定量供給する方法も用いること
ができる。
【0028】例えば、液晶ポリエステルと芳香族ポリカ
ーボネートをあらかじめ溶液ブレンド、または溶融混練
して混合物を得て、ついでこれとガラス繊維および無機
充填材とを溶融混練して熱可塑性樹脂組成物を得ること
もできる。また、芳香族ポリカーボネート、液晶ポリエ
ステルを混練機の第一投入口から投入し、第二投入口か
ら液晶ポリエステルまたは芳香族ポリカーボネート、ガ
ラス繊維および無機充填材を投入して一回の混練で熱可
塑性樹脂組成物を得ることもできる。
【0029】また、液晶ポリエステル、芳香族ポリカー
ボネートを溶融混練し、その混練物を液晶ポリエステ
ル、芳香族ポリカーボネート、ガラス繊維および無機充
填材に配合して、さらに溶融混練して、熱可塑性樹脂組
成物を得ることもできる。
【0030】混練された該樹脂組成物は、射出成形、押
出成形、その他各種の成形法によって成形されるが、予
め混練の過程を経ず、射出成形や押出成形時にドライブ
レンドして溶融加工操作中に混練して、本発明の樹脂組
成物とし、直接成形加工品を得ることもできる。
【0031】本発明の熱可塑性樹脂組成物に、必要に応
じて、さらに、有機充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、光
安定剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、無機または有機系
着色剤、防錆剤、架橋剤、発泡剤、蛍光剤、表面平滑
剤、表面光沢改良剤、フッ素樹脂などの離型改良剤など
の各種の添加剤を製造工程中またはその後の加工工程に
おいて添加することができる。
【0032】
【実施例】以下、実施例により本発明を説明するが、こ
れらは単なる例示であり、本発明はこれらに限定される
ことはない。 (1)成分(A)の液晶ポリエステル 成分(A)として使用した液晶ポリエステルは以下のも
のである。
【0033】(i)p−アセトキシ安息香酸10.8k
g(60モル)、テレフタル酸2.49kg(15モ
ル)、イソフタル酸0.83kg(5モル)および4,
4’−ジアセトキシジフェニル5.45kg(20.2
モル)を櫛型撹拌翼をもつ重合槽に仕込み、窒素ガス雰
囲気下で撹拌しながら昇温し330℃で1時間重合させ
た。この間に副生する酢酸を除去しながら、強力な撹拌
下で重合させた。その後、系を徐々に冷却し、200℃
で得られたポリマーを系外へ取出した。この得られたポ
リマーを細川ミクロン(株)製のハンマーミルで粉砕
し、2.5mm径以下の粒子とした。これを更にロータ
リーキルン中で窒素ガス雰囲気下に280℃で3時間処
理することによって、流動温度が324℃の粒子状の下
記の繰り返し構造単位からなる全芳香族ポリエステルを
得た。以下該液晶ポリエステルをA−1と略記する。こ
のポリマーは加圧下で341℃で光学異方性を示した。
液晶ポリエステルA−1の繰り返し構造単位は、次の通
りである。
【0034】
【化6】
【0035】(ii)p−ヒドロキシ安息香酸16.6
kg(12.1モル)と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ
酸8.4kg(4.5モル)および無水酢酸18.6k
g(18.2モル)を櫛型攪拌翼付きの重合槽に仕込
み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら昇温し、320℃
で1時間、そしてさらに2.0torrの減圧下に32
0℃で1時間重合させた。この間に、副生する酢酸を系
外へ留出し続けた。その後、系を徐々に冷却し、180
℃で得られたポリマーを系外へ取出した。この得られた
ポリマーを前記の(i)と同様に粉砕したあと、ロータ
リーキルン中で窒素ガス雰囲気下に240℃で5時間処
理することによって、流動温度が270℃の粒子状の下
記の繰り返し単位からなる全芳香族ポリエステルを得
た。以下該液晶ポリエステルをA−2と略記する。この
ポリマーは加圧下で280℃以上で光学異方性を示し
た。液晶ポリエステルA−2の繰り返し構造単位の比率
は次の通りである。
【0036】
【化7】
【0037】(2)成分(B)の芳香族ポリカーボネー
ト 成分(B)として使用した芳香族ポリカーボネートは以
下のものである。 b−1(略称):住友ダウ(株)製 CALIBRE
(登録商標)200−3〔Fe含量<1ppm、Cl含
量=1ppm、MFR(300℃、1.2kg荷重)=
3〕。 b−2(略称):住友ダウ(株)製 CALIBRE
(登録商標)300−10〔Fe含量<1ppm、Cl
含量=2ppm、MFR(300℃、1.2kg荷重)
=10〕。
【0038】(3)成分(C)のガラス繊維 本発明の熱可塑性樹脂組成物における成分(C)として
使用したガラス繊維は以下のものである。成分(C)と
して使用したジアミンは以下のものである。 C−1(略称):セントラル硝子(株)製 EFH75
−01(商品名)、数平均繊維径13μm、数平均繊維
長50μm、アスペクト比3.8、表面無処理。 C−2(略称):日本板硝子(株)製 REV8(商品
名)、数平均繊維径13μm、数平均繊維長70μm、
アスペクト比5.4、アミノシラン処理。
【0039】(4)成分(D)の無機充填材 成分(D)として使用した無機充填材の種類、数平均粒
子径、略称を表1に示す。なお、数平均粒子径は、無機
充填材に金蒸着を施した後、走査型電子顕微鏡観察を行
なって、数百個の粒子径を測定して求めた。また、同様
にしてタルクの数平均厚みを求めた。
【表1】
【0040】(物性測定) 曲げ弾性率:試験片(3.2mm厚)についてASTM
D790にしたがい、測定した。 引張物性:ASTM4号ダンベル試験片を成形し、AS
TM D638に準じて、伸び率、破断点強度を測定し
た。 成形収縮率:射出成形品の流れ方向(MD)と流れに垂
直な方向(TD)の寸法を測定し、金型原寸に対する比
として求めた。また、成形収縮率の異方性比はTD方向
の収縮率とMD方向の収縮率の比(TD/MD)として
求めた。
【0041】(形態観察)成形品小片を四塩化炭素中に
入れ、室温で1晩放置したのち、攪拌した際の四塩化炭
素中の浮遊分を取り出して乾燥し、次に該浮遊分に金蒸
着を施した上で走査電子顕微鏡観察を行なった。形態は
以下の様に行なった。 A:成分(A)および成分(C)が主に連続状である。 B:成分(A)が主に連続状である。
【0042】実施例1〜3、比較例1〜6 表1の組成で各成分を安定剤とともにヘンシェルミキサ
ーで混合したのち、池貝鉄工(株)製PCM−30型二
軸押出機を用いてシリンダー設定温度290〜334℃
で組成物を脱揮しながら混練し、日精樹脂工業(株)製
PS40E5ASE型射出成形機を用いて、成形温度2
90〜334℃、金型温度80〜100℃で射出成形し
た成形品について前記の要領で物性測定および形態観察
を行なった。得られた結果を表2、表3に示す。本発明
における熱可塑性樹脂組成物が機械的性質、特に曲げ弾
性率に優れ、成形収縮率も良好でしかも安価なものであ
ることがわかる。
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【発明の効果】本発明の熱可塑性樹脂組成物は、芳香族
ポリカーボネートの優れた耐衝撃性を保持し、液晶ポリ
エステルの高い剛性、耐熱性なども保持した上で、少量
のガラス繊維と無機充填材が加えられたことにより成形
品の成形収縮率が小さくなり、剛性が向上し、かつ安価
な樹脂組成物である。該熱可塑性樹脂組成物は、このよ
うな特性を生かして射出成形や押出成形により成形品、
シート、チューブ、繊維、積層物、コーティング材等に
用いられる。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(A)液晶ポリエステル、(B)芳香族ポ
    リカーボネート、(C)数平均繊維径が5〜25μm、
    数平均繊維長が30〜1000μm、かつ数平均繊維長
    /数平均繊維径が2〜150で、表面無処理のガラス繊
    維および(D)数平均粒子径が0.05〜10μmの無
    機充填材を配合したものであり、成分(A)の液晶ポリ
    エステルが、下記の繰り返し単位(a)が30〜80モ
    ル%、繰り返し単位(b)が0〜10モル%、繰り返し
    単位(c)が10〜25モル%、繰り返し単位(d)が
    10〜35モル%、繰り返し単位(e)が0〜40モル
    %からなり、成分(B)の芳香族ポリカーボネートが、
    Fe含量が1ppm以下、Cl含量が50ppm以下で
    あり、成分(A)と成分(B)との組成比率が、成分
    (A)が1〜30重量%であり、成分(B)が99〜7
    0重量%であり、成分(A)と成分(B)の合計量10
    0重量部に対し、成分(C)が1〜50重量部であり、
    成分(D)が1〜100重量部である熱可塑性樹脂組成
    物。 【化1】 (式中、Arは2価の芳香族基である。)
  2. 【請求項2】成分(D)の無機充填材がタルクおよび/
    または炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1
    記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 【請求項3】成分(A)の液晶ポリエステルの下記に定
    義された流動温度が240〜360℃の範囲である請求
    項1記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。 流動温度:4℃/分の昇温速度で加熱された樹脂を荷重
    100kgf/cm2のもとで、内径1mm、長さ10
    mmのノズルから押し出す方法で測定したときに、溶融
    粘度が48000ポイズを示す温度。
  4. 【請求項4】成分(B)のマトリックス中に成分(A)
    および成分(C)が主に連続状に分散していることを特
    徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPH09176377A (ja) * 1995-12-27 1997-07-08 Polyplastics Co 液晶性ポリマー組成物および成形体
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