JPH0853572A - 熱可塑性樹脂組成物、その製造方法およびこの樹脂組成物よりなるガスバリヤー性フィルム - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物、その製造方法およびこの樹脂組成物よりなるガスバリヤー性フィルム

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JPH0853572A
JPH0853572A JP18938494A JP18938494A JPH0853572A JP H0853572 A JPH0853572 A JP H0853572A JP 18938494 A JP18938494 A JP 18938494A JP 18938494 A JP18938494 A JP 18938494A JP H0853572 A JPH0853572 A JP H0853572A
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道生 川井
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 層状珪酸塩または層状りん酸塩が、微細劈開
状態で分散している熱可塑性樹脂組成物を提供する。 【構成】 (a) 熱可塑性樹脂と、(b) 層状化合物とから
なる熱可塑性樹脂組成物において、(b) 成分が層間に実
質的に非反応性の化合物を有する層状珪酸塩または層状
りん酸塩から選ばれたものであり、灰分量として特定量
含み、かつ、特定の範囲で微細劈開状態で分散している
熱可塑性樹脂組成物の発明である。 【構成】 この熱可塑性樹脂組成物からは、機械的物性
のバランス、耐熱変形性、ガスバリヤー性、表面平滑性
に優れた成形品が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、熱可塑性樹脂組成物、
その製造方法およびこの樹脂組成物よりなるガスバリヤ
ーフィルムに関する。さらに詳しくは、層状珪酸塩また
は層状りん酸塩が、マトリックスの樹脂に微細な劈開状
態で分散した熱可塑性樹脂組成物、その製造方法および
その用途に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、成形用樹脂材料の物性を改質する
目的で、原料樹脂にフィラーを添加することは広く行れ
ている。例えば、最終的に得られる製品を強化したり、
製品フィルムの滑り性を改良する目的でタルク、雲母、
ガラスフレーク等の層状化合物が添加されている。しか
し、こうした従来技術によると、製品の比重が増加す
る、成形表面の平滑性が低下する、製品の靱性が低下す
る、等の欠点があった。こうした欠点の改良策として、
フィラーのアスペクト比の向上、または微分散化、即
ち、層状化合物の場合にはその薄層化により、改善する
ことができると考えられている。
【0003】こうした層状化合物の薄層化の試みとし
て、特開昭48−103653号公報にポリアミド成形
品製造の任意の段階に有機ベントナイトを添加分散する
方法が、特開昭51−109998号公報、特開昭62
−74957号公報などにポリアミドとこれにイオン結
合した陽イオン交換性層状珪酸塩からなる組成物とその
製造方法が、それぞれ開示されている。これらの刊行物
に開示されている方法により、例えばナイロン6樹脂へ
の分散性を大幅に向上させることができるが、特定の変
性処理を行った層状珪酸塩をε−カプロラクタムの溶融
重合系へ添加するという、限られたプロセスに適合する
技術であり、また柔軟性の低下をきたし、例えばフィル
ム用途でのヒートシール性、取扱性に問題を生ずる場合
もあった。
【0004】また、特開平3−62846号公報には、
熱可塑性芳香族ポリエステルに、有機オニウムイオンを
結合した陽イオン交換性層状珪酸塩と相溶化剤とを混合
した組成物が開示されているが、この珪酸塩のマトリッ
クス樹脂への分散は必ずしも十分ではなく、また分散を
向上させるために相溶化剤を添加することがあり、この
相溶化剤の添加により、剛性が低下することがあった。
さらに、特開平5−306370号公報には、マトリッ
クスとなるポリアミド樹脂中に、層状りん酸塩を単位層
レベルで分散させた組成物が開示されているが、成形性
の点で十分とは言えなかった。
【0005】一方、本発明者らは、特願平5−2451
99、特願平5−245200、特願平6−4069、
特願平6−22832において、有機オニウムイオンを
インターカレーションした陽イオン交換性層状珪酸塩
を、マトリックスとなる各種熱可塑性樹脂に溶融混合し
た樹脂組成物が提案されている。これらで提案されてい
る技術は、溶融混練という汎用的な手段の適用が可能な
ものであるが、マトリックス樹脂中での珪酸塩の分散は
必ずしも十分ではなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
熱可塑性樹脂マトリックスへの層状化合物の分散技術の
現状に鑑み、マトリックスとなる各種の熱可塑性樹脂に
層状珪酸塩または層状りん酸塩を微細な劈開状態で分散
した、熱可塑性樹脂組成物を提供すること、その製造方
法、およびその用途を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の諸
問題を解消すべく鋭意検討した結果、特定の微分散技術
を用いることにより、層状化合物が従来にない微細な劈
開状態でマトリックスに分散され、弾性率や靱性などの
機械的強度に優れるほか、ガスバリヤー性にも優れた成
形品が得られる新規な熱可塑性樹脂組成物が得られるこ
とを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】本発明は上記課題を解決するために、請求
項第1項に記載の発明においては、熱可塑性樹脂と層状
化合物とからなる熱可塑性樹脂組成物において、この層
状化合物は層間に実質的に非反応性の化合物を有する層
状珪酸塩または層状りん酸塩から選ばれたものであり、
かつ、灰分として0.01〜40重量%の範囲で含んだ
ものであり、マトリックスの熱可塑性樹脂に前記層状化
合物の40重量%以上が厚さ0.05〜10nmの範囲
で分散されてなるという手段を講じているものである。
また、請求項第7項に記載の発明においては、熱可塑性
樹脂と層状化合物との粉体混合物に、熱可塑性樹脂の軟
化温度未満の温度条件下で、剪断速度500sec-1
上の剪断および圧縮力を同時に印加して粉体複合体、ま
たはこの粉体複合体にさらに熱可塑性樹脂を溶融混合す
るという手段を講じているものである。さらに、請求項
第8項に記載の発明においては、請求項1に記載の熱可
塑性樹脂組成物より成形されてなるガスバリヤーフィル
ムという手段を講じているものである。
【0009】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の
熱可塑性樹脂組成物は、必須成分として、(a) 熱可塑性
樹脂と(b) 層状化合物との2成分を含んでいる。本発明
において、(a) 成分としての熱可塑性樹脂は、(b) 成分
としての層状化合物を微分散させるマトリックスとして
の機能を果たす。熱可塑性樹脂の種類には特に制限はな
く、(b) 成分としての層状化合物を微分散させ、好まし
い効果が特に期待されるものとして、ポリプロピレン系
樹脂、ポリアミド系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹
脂、芳香族ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹
脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアリーレンス
ルフィド系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂など
が挙げられる。
【0010】ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンを
遷移金属触媒の存在下、付加重合して得られる重合体で
ある。かかる重合体はメチレン鎖炭素の一つおきにメチ
ル基が結合した構造であるが、該メチル基の結合した炭
素元素は不斉中心であるためその連鎖の立体規則性によ
り、シンジオタクチック、アイソタクチック、アタクチ
ック等の分類が可能である。これらいずれの立体規則構
造のものでもよく、複数種を併用することもできる。ま
たポリプロピレン系樹脂は、分岐構造を有するものであ
ってもよい。
【0011】ポリプロピレン系樹脂は、その製造や使用
する触媒に特に制限はなく、ツィーグラー・ナッタ系触
媒、メタロセン系触媒等、公知の任意のものが使用でき
る。なお、これらのポリプロピレン系樹脂の分子量には
特に制限はなく、メルトインデックスが0.1〜50の
通常範囲のものが好ましく用いられ、特に0.5〜30
の範囲のものが好ましい。
【0012】ポリアミド系樹脂とは、主鎖中にアミド結
合(−NHCO−)を含み加熱溶融できる重合体であ
り、脂肪族ポリアミド類と芳香族ポリアミド類とがあ
る。脂肪族ポリアミド類の具体例としては、ポリテトラ
メチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリカプロラク
タム(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド
(ナイロン66)、共重合成分として二量体化脂肪酸を
含む共重合ポリアミド、ポリヘキサメチレンセバカミド
(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド
(ナイロン612)、ポリウンデカノラクタム(ナイロ
ン11)、ポリドデカノラクタム(ナイロン12)等が
挙げられる。
【0013】芳香族ポリアミド類の具体例としては、テ
レフタル酸および/またはイソフタル酸とヘキサメチレ
ンジアミンとから得られるポリアミド、アジピン酸とメ
タキシリレンジアミンとから得られるポリアミド、テレ
フタル酸および/またはイソフタル酸とアジピン酸とヘ
キサメチレンジアミンとから得られるポリアミド、テレ
フタル酸および/またはイソフタル酸とアジピン酸とメ
タキシレンジアミンとから得られるポリアミド、共重合
成分として1,3−フェニレンジオキシジ酢酸を含む共
重合ポリアミド等が挙げられる。これらは単独でも複数
種を併用することもできる。
【0014】脂肪族ポリアミド類の中では、ナイロン
6、ナイロン66は、それ自身が靱性と剛性のバランス
の点で優れているため好適である。また、芳香族ポリア
ミド類の中では、テレフタル酸および/またはイソフタ
ル酸とヘキサメチレンジアミンとから得られるポリアミ
ド、アジピン酸とメタキシリレンジアミンとから得られ
るポリアミド、テレフタル酸および/またはイソフタル
酸とアジピン酸とヘキサメチレンジアミンとから得られ
るポリアミド、および共重合成分として1,3−フェニ
レンジオキシジ酢酸を含む共重合ポリアミド、などはガ
スバリヤー性が優れている点で好適である。
【0015】ポリアミド系樹脂の分子量には特に制限は
なく、通常は、25℃の濃硫酸中で測定した相対粘度が
0.5〜5.0の範囲で選ぶことができ、靱性および成
形性の観点から選ぶと0.8〜4.0の範囲のものが特
に好ましい。
【0016】芳香族ポリカーボネート系樹脂とは、多価
フェノール類を共重合成分として含有しても良い1種以
上のビスフェノール類と、ビスアルキルカーボネート、
ビスアリールカーボネート、ホスゲン等の炭酸エステル
類との反応により製造される重合体である。芳香族ポリ
カーボネート系樹脂は、その製造方法に制限はない。例
えば、(1)ビスフェノール類のアルカリ金属塩と求核攻
撃に活性な炭酸エステル誘導体とを原料とし、生成ポリ
マーを溶解する有機溶剤とアルカリ水との界面で重縮合
反応させる界面重合法、(2) ビスフェノール類と求核攻
撃に活性な炭酸エステル誘導体(ホスゲンなど)とを原
料とし、ピリジン等の有機塩基中で重縮合反応させるピ
リジン法、(3) ビスフェノール類とビスアルキルカーボ
ネートやビスアリールカーボネート等の炭酸エステルと
を原料とし、溶融重縮合させる溶融重合法、などの従来
から知られているいずれの方法によって製造されたもの
でもよい。
【0017】芳香族ポリカーボネート系樹脂の分子量に
は特に制限はなく、通常は40℃のテトラヒドロフラン
(THF)溶媒とし、ゲルパーミエーションクロマトグ
ラフィ(GPC)によって測定し、単分子量分散ポリス
チレンを対照としての重量平均分子量Mwが15,00
0以上がよい。靱性や成形容易性を考慮すると、20,
000〜80,000の範囲で選ぶのが好ましく、最も
好ましくは35,000〜65,000の範囲のものが
適当である。上記芳香族ポリカーボネート系樹脂は、単
独でも複数を併用しても良い。
【0018】芳香族ポリエステル系樹脂とは、ジカルボ
ン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまた
はそのエステル形成性誘導体との縮合反応により得られ
る芳香族環を分子鎖中に有するポリエステルである。芳
香族ポリエステル系樹脂の具体例としては、ポリエチレ
ンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ
プロピレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフ
タレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレー
ト等のポリアルキレンテレフタレート、ポリ(エチレン
テレフタレート/エチレンイソフタレート)共重合体、
ポリ(ブチレンテレフタレート/ブチレンイソフタレー
ト)共重合体等のポリアルキレンフタレート、ポリエチ
レンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリ
アルキレンナフタレート、ポリ(ブチレンテレフタレー
ト/ブチレンドデカジオエート)共重合体等の脂肪族ジ
カルボン酸を含むポリアルキレンテレフタレート等が挙
げられる。これらは単独でも複数種を併用することもで
きる。
【0019】これらのうち本発明において好適に用いら
れるの、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテ
レフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタ
レート等のポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレ
ンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリア
ルキレンナフタレートであり、最も好適なのは、ポリエ
チレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートで
ある。本発明で用いられる芳香族ポリエステルの分子量
には特に制限はなく、好ましくは、フェノールとテトラ
クロロエタンとの重量比1:1の混合溶媒を使用し、濃
度1g/dlとし30℃で測定した極限粘度[η]が
0.5〜3.0dl/gの範囲のものである。極限粘度
がこの範囲よりも小さいと靱性が極端に低下し、逆にこ
の範囲よりも大きい場合には溶融粘度が大きすぎて成形
に支障を来すため好ましくない。
【0020】ポリアセタール系樹脂とは、次式、すなわ
ち、−(−O−CHR−)n −、[式中、Rは水素原子
または炭素数1〜5の炭化水素基、nは自然数であ
る。]で示されるオキシアルキレン構造の繰り返し単位
を主体とする重合体である。その製造方法には制限はな
く、代表的な構造としてポリオキシメチレンが挙げら
れ、通常トリオキサンの開環重合により製造される。ま
た、主鎖の大部分がオキシメチレン連鎖で構成されるポ
リアセタールコポリマーも使用でき、公知の方法で架橋
またはグラフト変性したものも熱可塑性を有する限り、
使用可能である。ポリアセタール系樹脂は、単独でも複
数種の併用であってもよい。本発明で用いられるポリア
セタール樹脂の分子量には特に制限はなく、好ましくは
メルトインデックスが1〜25の範囲で選ぶことがで
き、更に好ましくは5〜25の範囲のものである。
【0021】ポリフェニレンエーテル系樹脂とは、ベン
ゼン環残基がエーテル結合を介して結ばれた重合体であ
り加熱溶融できるものである。これらはフェノール類ま
たはその反応性誘導体を原料として、公知の方法、例え
ば酸化カップリング触媒を用いた酸素または酸素含有ガ
スによる酸化カップリング重合等で製造される重合体で
ある。このフェノール類および重合触媒等の具体例は、
例えば特開平4−239029号等に詳述されている
が、代表的なフェノール類としてはフェノール、o−ク
レゾール、2,6−キシレノール、2,5−キシレノー
ル、2,3,6−トリメチルフェノール等のメチルフェ
ノール類等が挙げられ、これらフェノール類は単独ある
いは2種以上の組み合わせとして用いても良い。最も一
般的なポリフェニレンエーテル樹脂としてはポリ(2,
6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、または
これを主構造とする共重合体が挙げられる。ポリフェニ
レンエーテル系樹脂も、単独でも複数種を併用すること
もできる。
【0022】本発明に用いられるポリフェニレンエーテ
ル樹脂の分子量には、特に制限はなく、通常0.6g/
dl濃度のクロロホルム溶液の25℃での極限粘度
[η]が0.2〜0.6dl/gの範囲内で選ばれ、靱
性および成形性の点から0.35〜0.55dl/gの
範囲内で選ぶのがより好ましい。
【0023】ポリアリーレンスルフィド系樹脂とは、芳
香族残基がチオエーテル結合を介して結ばれた重合体で
あり、加熱溶融できるものである。こうした重合体構造
の具体例と製造方法は、例えば特開平5−194851
号公報に詳述されている。本発明において好適に用いら
れる主鎖構造は、次式、すなわち、−(−S−Φ−) n
−、[式中、Φはフェニレン基を、nは各構造の繰り返
しを意味する自然数である。]で表されるポリフェニレ
ンスルフィドと、次式、すなわち、−(−S−Φ−)m
−(−SO2 −Φ−)n −、[式中、Φはフェニレン基
を、mとnは各構造の繰り返しを意味する自然数であ
り、mとnで表される各繰り返し単位はランダム配列あ
るいはブロックを構成する配列いずれであっても良
い。]で表されるポリフェニレンスルフィドスルホンで
ある。これらは単独でも複数種を併用することもでき
る。
【0024】ポリアリーレンスルフィド系樹脂の分子量
は、特に制限はなく、通常は重量平均分子量にして1
0,000〜500,000の範囲で選ぶことができ
る。靱性および成形性の観点から、より好ましくは3
0,000〜300,000の範囲のものである。この
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラ
フィ(GPC)により求めることができ、例えばポリフ
ェニレンスルフィドの場合には、1−クロロナフタレン
を展開溶媒として用いることができる。
【0025】アクリル系樹脂とは、アクリル酸またはそ
のエステル類、メタクリル酸またはそのエステル類、ア
クリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、
メタクリロニトリル等のアクリル酸誘導体の単独重合体
または共重合体である。アクリル酸誘導体としては、例
えば日刊工業新聞社刊の「プラスチック材料講座」第1
6巻等に記載されている。代表的なものとして、アクリ
ル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、ア
クリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸
エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヒドロキシ
エチル、メタクリル酸フェニル、アクリルアミド、メタ
クリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル
等が挙げられる。
【0026】アクリル系樹脂の製造方法には特に制限は
なく、塊状重合、懸濁重合、乳化重合等の任意の形態に
よるラジカル重合により製造される。代表的なアクリル
系樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)
樹脂が挙げられる。アクリル系樹脂は、単独でも複数種
の併用であってもよい。本発明に用いられるアクリル系
樹脂の分子量に特に制限はなく、通常はメルトインデッ
クスが1〜20の範囲のものが好ましく、5〜15の範
囲のものが更に好ましい。
【0027】スチレン系樹脂とは、スチレン誘導体の単
独重合体およびスチレン誘導体を主成分としこれと共重
合可能なビニル化合物との共重合体樹脂を言う。かかる
スチレン誘導体としては、スチレン、α−メチルスチレ
ン、ビニルナフタレン、p−クロロスチレン等の芳香族
ビニル化合物を挙げることがきる。共重合可能なビニル
化合物としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチ
ル、アクリル酸ブチル、アクリル酸フェニル、メタクリ
ル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチ
ル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸フェ
ニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニ
トリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。上記芳
香族ビニル化合物などを重合させる際に、ゴム成分を共
存させることもできる。
【0028】スチレン系樹脂の製造法には、特に制限は
なく、従来から知られている塊状重合、懸濁重合、塊状
ー懸濁重合、乳化重合、乳化ー塊状重合等の任意の形態
によるラジカル重合により製造される。代表的なスチレ
ン樹脂としては、ポリスチレン(PS)、ゴム強化ポリ
スチレン(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共
重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−
スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−
アクリルゴム−スチレン共重合体(AAS樹脂)、アク
リロニトリル−EPDM−スチレン共重合体(AES樹
脂)などが例示でき、これらは単独でも複数種の併用で
あってもよい。スチレン系樹脂の分子量に特に制限はな
く、メルトインデックスが0.5〜25の範囲のものが
好ましく、特に5〜20の範囲のものが好ましい。
【0029】上記(a) 成分としての熱可塑性樹脂は、ビ
ーズ、クラム、粉末などの粉粒体であり、平均粒子径が
0.5〜1,000μmの範囲が好ましい。中でも、
0.5〜500μmの範囲のものが好ましく、更に好ま
しいのは0.5〜100μmの範囲、最も好ましいのは
0.5〜10μmの範囲のものである。(a) 成分として
の熱可塑性樹脂は、単独でも異種のものを複数種併用す
ることもできる。また(a) 成分は上に例示したものに限
定されるものではなく、本発明の主旨を損なわない限
り、例示しなかった他の熱可塑性樹脂を併用することも
できる。
【0030】本発明において、(b) 成分としての層状化
合物は、本発明の熱可塑性樹脂組成物に微分散し、組成
物の機械的強度、耐熱性を向上させ、かつ、この組成物
からフィルムに加工したときに、フィルムのヒートシー
ル性、フィルムの表面平滑性を悪化させず、フィルムの
ガスバリヤー性を向上させる機能を果たす。(b) 成分と
しての層状化合物は、層状珪酸塩または層状りん酸塩の
いずれかであり、劈開性を有するものである。ここで劈
開性とは、層状化合物が剪断等の外部応力により10n
m以下の厚さの層状構造を新たに形成しうる性質のこと
である。従って本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いられ
る層状化合物は、周期構造の繰り返し単位長が10nm
以下であることが望ましく、更に、かかる周期構造が比
較的小さな解離エネルギーを有する相互作用、例えばv
an der Waals力、イオン結合、水素結合等
により維持されていることが最も望ましく、天然品、合
成品のいずれでも良い。
【0031】(1)層状珪酸塩としては以下のものが挙
げられる。 (a) 1:1型粘土鉱物、即ち、カオリナイト、ディッカ
イト、ハロイサイト、アンチゴナイト、クリソタイル等 (b) 2:1型粘土鉱物、即ち、モンモリロナイト、ヘク
トライト、フッ素ヘクトライト、サポナイト、バイデラ
イト、スチブンサイト、バーミキュライト、等のスメク
タイト類、白雲母、金雲母等の雲母類、フッ素金雲母、
フッ素白雲母、K型フッ素テニオライト、K型四珪素雲
母等の非膨潤性合成雲母類、Li型フッ素テニオライ
ト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲
母、Li型四珪素フッ素雲母等の膨潤性合成雲母類、マ
ーガライト、パイロフィライト、タルク、緑泥石等 (c) 層状ポリ珪酸塩、即ち、α−Na2 Si25 、β
−Na2 Si25 、KHSi25 、K2 Si2
5 、NaHSi25 ・3水塩(カネマイト)、Na2
Si49 ・5水塩(マカタイト)、Na2 Si817
の水和物、Na2 Si1429の水和物(マガディアイ
ト)、Na2 Si2041の水和物(ケニヤイト)等
【0032】(2)層状りん酸塩としては以下のものが
挙げられる。 (a) α−化合物、即ち、α−Zr(HPO42 、α−
Zr(HPO42 ・1水塩、α−Zr(KPO42
・3水塩等のジルコニウム塩、α−Ti(HPO 4
2 、α−Ti(HPO42 ・1水塩等のチタン塩、α
−Sn(HPO4 2 ・1水塩等の錫塩等 (b) γ−化合物、即ち、γ−Zr(HPO42 、γ−
Zr(HPO42 ・2水塩、γ−Ti(HPO4
2 、γ−Ti(HPO42 ・2水塩、γ−Ti(NH
4 PO42 ・1水塩等 (c) 非対称層構造をもつもの、即ち、Zr(HPO4
0.7 (HPO31.3 ・0.5水塩等。
【0033】上記層状化合物は、単独でも複数種を混合
して用いることもできる。これらの層状化合物のうち、
機械的強度、弾性率、耐熱変形性の向上の目的では、ス
メクタイト類、非膨潤性合成雲母類、膨潤性合成雲母類
等の陽イオン交換能を有する層状珪酸塩、またはタルク
が、効果、経済性、入手容易性の点で優れており、中で
もモンモリロナイト、Na型フッ素テニオライトが最適
である。また、マトリックスが結晶性樹脂の場合、タル
ク、カオリナイト等が優れた核剤効果を発現する点で好
ましい。ガスバリヤー性の向上の目的では、スメクタイ
ト類、膨潤性合成雲母類等の陽イオン交換能を有する層
状珪酸塩、層状りん酸塩、層状砒酸塩が好適であり、中
でもモンモリロナイト、Na型フッ素テニオライト等の
層状珪酸塩、りん酸ジルコニウム等の層状りん酸塩が最
適である。
【0034】本発明で用いる層状化合物は、層間に実質
的に非反応性の化合物を含む。「実質的に非反応性」と
は、層間に含まれる化合物(以下、ゲストと称する)
が、マトリックスとなる熱可塑性樹脂との反応性を有す
る官能基を持たないか、またはこのような反応性の官能
基を持つが立体障害等の理由で、本組成物の加工条件下
では実質的にマトリックス樹脂と反応し得ないものであ
ることを意味する。具体的には、有機化合物または分子
性化合物を意味する。ここで、有機化合物とは炭素原子
を含有する化合物を、分子性化合物とは炭素原子を含有
しないが分子を形成することのできる化合物を、それぞ
れ意味する。
【0035】上記のゲストは、層の劈開を阻害する作
用、例えば層同士の強固な化学結合による架橋作用等を
有さない限り、その種類に制限はない。何故ならば、こ
のゲストの主たる役割は、層の劈開に抵抗する層間の
力、例えば層間のイオン結合、水素結合、配位結合、パ
イ電子相互作用、van der Waals力等を減
衰、または実質的に消失させることにあるからである。
【0036】このようなゲストの具体例としては、
(a)層状珪酸塩に対しては、アミン類、アルコール
類、尿素、有機オニウムイオン等の有機化合物、または
水酸化ニッケル、水酸化アルミニウム、水酸化クロム、
水酸化ジルコニウム等の分子性を有する水酸化物、
(b)層状りん酸塩に対しては、アミン類、アルコール
類等のインターカレーション可能な化合物、エチレンオ
キシド、プロピレンオキシド等のオキシラン類等の層間
のりん酸基または亜りん酸基による開環反応可能な化合
物、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸等の有機
ホスホン酸類等の層のりん酸基や亜りん酸基と交換反応
の可能な化合物が挙げられる。
【0037】これらのゲストのうち、樹脂組成物の靱性
保持と溶融加工時の熱安定性の観点から、好ましいゲス
トの化学構造としては、一官能性のイオン結合または共
有結合のような強固な化学結合により層に固定されるも
のが挙げられる。より具体的には、イオン結合によるも
のとしては、陽イオン交換性を有する層状珪酸塩、層状
りん酸塩に対する有機オニウムイオン等、および、共有
結合性によるものとしては、層状りん酸塩に対するオキ
シラン類や有機ホスホン酸などが挙げられる。中でも、
イオン結合により固定されるものが好ましい。さらに好
ましくは、疎水性構造を多く含むもの、例えば、炭素数
12以上のアルキル基を有する有機オニウムイオンが挙
げられる。
【0038】本発明の樹脂組成物が、靱性保持と溶融加
工時の熱安定性に優れるのは、層間に固定されたゲスト
が、マトリックス樹脂との界面の濡れ性を改善すること
により、応力印加時の界面での応力集中を緩和し、樹脂
組成物の靱性を改善する効果、およびゲストが層に固定
されることにより、樹脂組成物の加熱溶融時にも遊離し
にくくなることによるものと推測される。すなわち、本
発明の熱可塑性樹脂組成物においては、ゲストがマトリ
ックス樹脂と実質的に非反応性であるため、ゲストが層
に固定されている場合には、ゲストがマトリックス樹脂
と反応すると、分散層を介した架橋構造が形成され著し
い増粘やゲル形成といった問題が生ずる場合があるが、
これを避けることが可能となったものである。
【0039】本発明の樹脂組成物が、食品包装用の高バ
リヤー性フィルムの用途に使用されるときは、安全性が
要求される場合がある。安全性が要求される場合には有
機オニウムイオンとして、アラニン、バリン、ロイシ
ン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トレ
オニン、セリン、プロリン、トリプトファン、システイ
ン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グル
タミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン等のα−ア
ミノ酸のアンモニウムイオンを使用するのが好適であ
る。このような有機オニウムイオンは、単独でも複数種
を併用して使用することもできる。
【0040】本発明の熱可塑性樹脂組成物は、マトリッ
クスの樹脂に分散される層状化合物の微分散の程度が高
くなるほど、本発明の目的が効果的に達成することがで
きる。マトリックスの樹脂に含有・分散させる場合に
は、本発明者らの実験によれば、含有量を灰分量として
0.01〜40重量%の範囲で選び、かつ、分散状態は
含有量させた層状化合物の40重量%以上が厚さ0.0
5〜10nmに分散させる必要があることが分かった。
ここで、層状化合物の灰分量とは、試料を約1.5g精
秤し、窒素雰囲気下、650℃の温度で2時間加熱、分
解させ、残渣の重量より算出したものである。ただし、
この条件で予め測定した純粋な熱可塑性樹脂の分解残渣
により、補正した値である。
【0041】灰分量が0.01重量%未満であると、本
発明の目的が効果的に達成することができず、40重量
%を超えると比重が大きくなりすぎ、かつ、成形品の靱
性が低下する場合があるので、いずれも好ましくない。
この灰分量は、機械的強度・剛性の向上およびガスバリ
ヤー性の発現と、組成物の靱性のバランスの点で、好ま
しくは0.1〜30重量%の範囲、更に好ましくは0.
5〜20重量%の範囲、最も好ましくは1〜10重量%
の範囲である。
【0042】本発明の熱可塑性樹脂組成物において、層
状化合物の含量を灰分量として0.01〜40重量%の
範囲とするには、全熱可塑性樹脂組成物に占める層状化
合物の量を0.01〜80重量%の範囲で選べばよい。
この範囲の中で好ましいのは、0.5〜50重量%の範
囲、更に好ましいのは0.5〜30重量%の範囲、最も
好ましいのは0.5〜20重量%の範囲である。なお、
粉体複合体を希釈用マスターバッチとして用いる場合に
は、全熱可塑性樹脂組成物に占める層状化合物の量を1
0〜80重量%、更に好ましくは20〜80重量%、最
も好ましくは30〜80重量%の範囲とする。
【0043】本発明の目的を効果的に達成するために
は、本発明者らの実験によると、上記層状化合物の分散
は、含有させた層状化合物の40重量%以上を平均厚さ
0.05〜10nmの範囲とする必要があることが分か
った。平均厚さ0.05〜10nmの範囲のものが40
重量%未満であると、成形品がフィルムの場合はガスバ
リヤー性が不十分であり、好ましくは60重量%以上、
最も好ましく合は70重量%以上である。
【0044】本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造するに
は、粉体状の熱可塑性樹脂と粉体状の層状化合物との混
合物に、熱可塑性樹脂の軟化温度未満の温度条件下で、
剪断速度500sec-1以上の剪断および圧縮力を同時
に印加する必要がある。ここで、熱可塑性樹脂の軟化温
度とは、結晶性樹脂の場合には融点を、非晶性樹脂の場
合にはガラス転移温度をそれぞれ意味する。熱可塑性樹
脂は、前記の通り、単独でも複数種類の混合物でもよい
が、後者の場合には軟化温度の最も低い樹脂の軟化温度
を採用しなければならない。また、熱可塑性樹脂とし
て、ポリフェニレンエーテルとポリアミド、ポリオレフ
ィンとポリアミド、芳香族ポリエステルと芳香族ポリカ
ーボネート、芳香族ポリエステルとポリオレフィン、ポ
リフェニレンエーテルとポリスチレンなどの場合の軟化
温度は、通常連続層を形成している軟化温度を意味す
る。
【0045】熱可塑性樹脂の軟化温度未満の温度条件を
必須とするのは、原料の熱可塑性樹脂を溶融させない範
囲で加熱し、この加熱された粉体状の熱可塑性樹脂の表
面ないし表層部に、高度に劈開した層状化合物を付着さ
せることにある。ただし、粉体複合体は、熱可塑性樹脂
粉体の表面に、劈開した層状化合物の全量が付着してい
る必要はない。剪断および圧縮の印加により、熱可塑性
樹脂粉体の表面ないし表層部に、層状化合物が高度に劈
開し付着した粉体複合体が生成する。この粉体複合体
は、比較的弱い混合効果を持つ熱可塑性樹脂の溶融装
置、例えば単軸押出機による溶融混合処理においても、
極めて優れた劈開分散状態を与えることから、かかる劈
開構造は粉体複合体において実質的に生成しているもの
と推定される。
【0046】粉体複合体を製造するには、まず、粉体状
の熱可塑性樹脂と粉体状の層状化合物とを、それぞれ所
定量秤量したあと、良く混合する。次いで、加熱・攪拌
下、剪断と圧縮力を印加しながら、混合する。この操作
に好適な装置の例として、特開平3−42054合公報
に記載されているものが挙げられる。なお、粉体状の熱
可塑性樹脂には、本発明の主旨を損なわない限り、各種
の樹脂添加剤、例えば、無機充填材、金属粉体、熱硬化
性樹脂等の公知の非熱可塑性成分や、熱安定剤、紫外線
吸収剤、顔料、酸化防止剤、可塑剤、帯電防止剤等を配
合することができる。
【0047】粉体複合体を製造する際の、剪断・圧縮す
る際の好ましい強度および印加時間は、原料熱可塑性樹
脂の種類・形状・粒径、層状化合物の種類・形状・粒径
・劈開性、両者の混合割合、温度条件などにより変動す
るが、本発明者らの実験によれば、剪断速度500se
-1以上の剪断および圧縮が必要であることが分かっ
た。剪断速度500sec-1未満であると、層状化合物
が好ましく劈開せず、熱可塑性樹脂の粉体表面ないし表
層部に均一に分散付着した粉体複合体が得られない。剪
断速度500sec-1以上の範囲で好ましいのは、1,
000〜50,000sec-1の範囲であり、更に好ま
しいのは5,000〜40,000sec -1の範囲、最
も好ましいのは8,000〜35,000sec-1の範
囲である。ただし、過度の剪断および圧縮の印加は、層
状化合物の相構造を過度に破壊し、ガスバリヤー性等の
本発明の目的を効果的に達成できないの場合があり、好
ましくない。
【0048】本発明の熱可塑性樹脂組成物において、マ
トリックス樹脂がポリアミド系樹脂を主体とする場合に
は、前記ゲスト由来の靱性、弾性率と、特に優れたガス
バリヤーフィルム用の樹脂組成物が得られる。これは、
ポリアミド系樹脂自身の優れたガスバリヤー性と、層状
珪酸塩または層状りん酸塩が比較的高い結晶性を持ち、
面積の広い層構造を有することによるものと推定され
る。また、ポリアミド系樹脂が芳香族ポリアミド樹脂の
場合には、さらに優れたガスバリヤー性、特に高湿条件
で優れたガスバリヤー性を発揮する。
【0049】粉体複合体と熱可塑性樹脂との混合、さら
に上記各種の樹脂添加剤を加えて成形品製造用熱可塑性
樹脂組成物とする場合、その混合方法は特に制限される
ものではなく、従来から知られている各種方法を採用す
ることができる。この工程は、粉体複合体に既に含まれ
ている劈開した層状化合物を、熱可塑性樹脂マトリック
スに分散するのが目的であり、強力な剪断混合により更
なる劈開を推進するのが目的ではないからである。ただ
し、より良い混合分散は本発明の主旨に合致するので、
二軸押出機、ブラベンダー等の比較的強い剪断を伴う方
法が望ましい。
【0050】本発明の熱可塑性樹脂組成物から、目的と
する成形品を製造するには、圧縮成形、射出成形、押出
成形、吹込み成形、カレンダー成形などの、熱可塑性樹
脂の成形技術として従来から知られている成形技術によ
って製造することができる。フィルムを製造する場合に
は、粉体複合体または粉体複合体と熱可塑性樹脂との混
合物を、押出機で溶融混練し、Tーダイまたはインフレ
ーションダイからフィルム状に押出し、二軸方向に延伸
して目的の製品フィルムが得られる。
【0051】本発明の熱可塑性樹脂組成物からは、機械
部品;ガソリンタンク、ガソリンホース、インストルメ
ンタルパネルなどの自動車部品用資材;パソコンハウジ
ング、ファクシミリハウジング、TVハウジング、VT
Rハウジングなどの電気機器ハウジング用資材;ポータ
ブル電話機、OA機器、自動車計器ハウジングなどの電
磁波シールド用資材;レトルト処理用食品などの包装用
資材;電磁波シールドフィルムなどの電子部品包装用資
材;医療用輸液バッグなどの液体包装用資材;CD包装
用フィルムなどの光学機器用資材など、極めて幅広い用
途において有用である。
【0052】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
るが、本発明は、その要旨を越えない限り、これらの記
載例に限定されるものではない。なお、以下の例におい
て各種の評価試験は、次に記載の方法によった。 (1) 灰分量の測定 精秤した約1.5gの試料を、窒素雰囲気下、650℃
の温度で、2時間加熱分解し、残渣の重量より算出し
た。ただし、同条件で予め純粋な熱可塑性樹脂の分解残
渣量を測定し、補正した。 (2) 引張試験 ASTM−D638に準拠し、降伏強度YS(kg/cm2
と破断伸びUE(%)とを測定した。 (3) 光線透過率 ASTM−D1003に準拠して測定した。 (4) 層状化合物の平均厚さ 日立製作所(株)製H7000透過型電子顕微鏡により
超薄切片(約0.1μm厚)中の層の分散状態を観察し
た。層状化合物の平均厚さの定量は、4万倍〜15万倍
の画像の電子計算機による画像解析(パブリックドメイ
ンソフトのNIH Image)によって算出した。
【0053】[実施例1〜11]表−1に示した粉体状
の熱可塑性樹脂に対し、粉体状の有機ベントナイト(豊
順鉱業(株)製、エスベン74;ジメチルジステアリル
アンモニウムをゲストとするモンモリロナイト、無機含
量は約60重量%)3重量%加え、両者を混合して混合
粉体を得た。この混合粉体を、ホソカワミクロン(株)
製メカノフュージョンシステムAM−15Fにより、表
−2に示した条件で剪断および圧縮力を同時に印加する
処理(以下、この処理をMF処理と略称する)を行い、
粉体複合物を得た。MF処理の条件の詳細は、表−2に
示した通りである。得られた粉体複合物を、ラボプラス
トミル二軸押出機(東洋精機(株)製、直径25mm、
異方向回転スクリュ、回転数150rpm)を用い、表
−2に示した溶融温度で溶融押出し、ペレット化した。
得られたペレットを用い、スクリュ型射出成形機(日本
製鋼所(株)製J28SA)を用い(スクリュ回転数:
150rpm)、表−2に示したバレル温度、金型温度
条件で、ASTM−D638規格の引張試験用の試験片
を成形した。各種評価試験結果を、表−3に示す。
【0054】[比較例1〜11]実施例1〜11に使用
した粉体状の熱可塑性樹脂と粉体状の有機ベントナイト
とを、MF処理をせずに実施例1〜11における同様の
手順で混合粉体、粉体複合物、ペレット、試験片を得
て、各種評価試験を行った。結果を表−3に示す。
【0055】[比較例12〜22]実施例1〜11に使
用した粉体状の熱可塑性樹脂に層状化合物を配合せず
に、ペレット、試験片を成形し、各種評価試験を行っ
た。結果を、表−3に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】表−3より次のことが明らかである。 (1) MF処理を行った樹脂組成物は(実施例1〜1
1)、対応するMF処理を行なわなかった樹脂組成物
(比較例1〜11)に比較して、引張試験による降伏強
度YS(kg/cm2 )と破断伸びUE(%)共に優れてい
る。 (2) また、樹脂マトリックスが透明なものの場合、MF
処理を行った樹脂組成物は(実施例4、5、10および
11)、対応するMF処理を行なわなかった樹脂組成物
(比較例4、5、10および111〜11)に比較し
て、優れた透明性を維持している。
【0060】[実施例12]実施例2に記載した粉体状
のナイロン6と、粉体状の有機ベントナイトとを、それ
ぞれ75/25(重量%)でドライブレンドして混合粉
体を得た。この混合粉体につき最高温度140℃、時間
20分、剪断速度34,300sec-1なる条件でMF
処理を行った。次いで、この粉体複合物(MF処理粉
体)4重量%、ナイロン6ペレット66重量%、および
実施例4において使用した非晶性ナイロンペレット30
重量%をドライブレンドし、押出機(単軸スクリュ:直
径40mm、回転数30rpm)を用いて溶融し、Tダ
イからフィルム状に押出し、厚さ25μmのフィルムを
作成した。この際のフィルム化条件は、バレル温度25
0℃、ダイス温度250℃、樹脂温度240℃、巻き取
りロール温度120℃とした。
【0061】得られたフィルムの酸素透過速度を、米国
モダンコントロール社製の酸素透過率測定装置(OXT
RAN−10/50H)を用いて、温度23℃、相対湿
度90%、1気圧の条件で測定した。また、フィルムの
ヘーズ(濁度)を日本電色工業(株)製濁度計NDH−
300Aにより測定した。結果を、他の評価項目の結果
とともに、表−4に示す。なお、フィルム中の灰分量
は、0.59重量%であった。
【0062】[実施例13]実施例4に記載の例におけ
る粉体状の非晶性ナイロンと、粉体状の有機ベントナイ
トとを、それぞれ85/15(重量%)でドライブレン
ドし混合粉体を得た。この混合粉体につき、最高温度1
10℃、時間40分、剪断速度33、600sec-1
る条件でMF処理を行った。次いで、この粉体複合物
(MF処理粉体)7重量%と上記の非晶性ナイロンペレ
ット93重量%をドライブレンドして、実施例12にお
けると同様の手順でフィルム化し、各種の評価試験を行
った。結果を、表−4に示す。
【0063】[実施例14]攪拌機、温度計、圧力計、
ヒーター、ガス注入口、助剤添加口、還流冷却器を装備
した容量2リットルのオートクレーブに、メタキシリレ
ンジアミン1386g、イソフタル酸1014g、アジ
ピン酸595g、酢酸6.10g、水2897gからな
るナイロン塩水溶液を仕込み、オートクレーブ内を窒素
置換した後昇温を開始した。内圧が2.5kg/cm2
に達した時点で、オートクレーブのバルブを開き、この
内圧を保持しながら水を留出させ濃縮した。濃縮中も、
昇温を続け、内温が190℃に達した時点で、オートク
レーブのバルブを閉じて更に昇温を継続した。次に、内
圧が14kg/cm2 に達したところで再びバルブを開
き、この内圧を保持しながら水を留出させ濃縮した。こ
の濃縮中も昇温は継続し、内温が230℃に達したとこ
ろで放圧して大気圧にもどした後、更にこの温度で1時
間重合反応を継続した。
【0064】反応終了後オートクレーブより取り出した
芳香族ポリアミドにつき、表1のナイロン6の場合と同
じ条件で測定した相対粘度は2.0で、非晶性であっ
た。この非晶性芳香族ポリアミドをチップ化後、温度1
10℃で32時間真空乾燥を行い、粉体粒径が250μ
m未満の粒度に粉砕した。この粉体状の非晶性ナイロン
と粉体状の有機ベントナイトとを、それぞれ85/15
(重量%)でドライブレンドし、実施例13の場合と同
様の条件でMF処理を行い、次いでこの粉体複合物(M
F処理粉体)7重量%と、非晶性ナイロンペレット93
重量%をドライブレンドして、実施例12の場合と同様
の手順でフィルム化、および各種の評価試験を行った。
結果を、表−4に示す。
【0065】[実施例15]容量2リットルの容器に、
りん酸60gを2N塩酸500mlに溶解したものを入
れ、モーターで激しく攪拌しながら、塩化酸化ジルコニ
ウム8水塩(ZrOCl2 ・8H2 O)80gを2N塩
酸250mlに溶解したものを、約60秒かけて加え
た。生成したゲルを直ちに濾別し、塩化物イオンが硝酸
銀試験で検出されなくなるまで洗浄した。次いで、この
ゲル全量を10モル/リットル濃度のりん酸水溶液10
00ml中に攪拌分散しながら、150℃のオイルバス
上で、80時間加熱還流を継続した。生成した白色固体
を濾別し、十分に水洗した後、乾燥し、広角X線散乱ス
ペクトルを測定したところ、このものの層間距離は7.
5オングストロームであり、他の散乱ピーク位置からも
α−りん酸ジルコニウムであることが分かった。
【0066】次いで、乾燥したα−りん酸ジルコニウム
20gとフェニルアラニン40gとを、2000mlの
脱塩水に分散し、60℃で5時間攪拌した。これを室温
で一昼夜静置し、沈降した固体を濾別し、十分に水洗し
た。このものの乾燥品は、熱重量分析において窒素気流
中550℃まで昇温した場合、30重量%程度の重量減
少が認められ、有機成分としてフェニルアラニンがイン
ターカレーションしているものと考えられた。このフェ
ニルアラニン変性りん酸ジルコニウム10重量%と、実
施例14で得られた粉体状の非晶性ナイロン90重量%
とをドライブレンド混合粉体を得た。この混合粉体につ
き、実施例13の場合と同様の条件でMF処理を行い、
次いでこの粉体複合物(MF処理粉体)10重量%、非
晶性ナイロンペレット90重量%をドライブレンドし
て、実施例12の場合と同様の手順でフィルム化、およ
び各種の評価試験を行った。結果を、表−4に示す。
【0067】[比較例23]実施例2に記載の例におい
て、粉体状のナイロン6と粉体状の有機ベントナイト粉
体とを、それぞれ95/5(重量%)に変更してドライ
ブレンドし混合粉体を得た。この混合粉体につき、二軸
押出機(東芝機械(株)製TEM35B、直径35m
m、同方向回転スクリュ、回転数150rpm)を用い
て、280℃の温度で溶融押出し、ペレットを得た。次
いで、このペレット20重量%、実施例12で用いたナ
イロン6ペレット50重量%、非晶性ナイロンペレット
30重量%をドライブレンドし、以下実施例12におけ
ると同様にフィルム化と各種評価を行った。結果を、表
−4に示す。このフィルムの灰分量は、0.60重量%
であった。
【0068】[比較例24]容量30リットルの容器
に、25リットルの水(30℃)を入れ、これに高純度
Naモンモリロナイト(クニミネ工業(株)製、クニピ
アF(登録商標)、メチレンブルー吸着法により測定し
た陽イオン交換容量は120meq/100g、層間距
離は12.5オングストローム)270gを加え、攪拌
懸濁させた。これに、12−アミノドデカン酸84gと
等モルのHClに相当する量の濃塩酸を添加して、6時
間攪拌を継続した。攪拌を停止し、室温で1日静置後、
固体を濾別した。得られた固体は、硝酸銀試験で塩化物
イオンが検出されなくなるまで大量の水で洗浄した後、
40℃の温風オーブンで乾燥して粉体とした。こうして
得た固体は、層間距離が17.2オングストロームに拡
大していた。このモンモリロナイトの層間に12−アミ
ノドデカン酸を挿入した固体130g、ε−カプロラク
タム3021g、および6−アミノヘキサン酸320g
を混合し、容量20リットルの攪拌機付きオートクレー
ブに封入し、内部を窒素置換した後、100℃で2時間
攪拌した。次いで250℃まで昇温し、系内の水を除去
しながら重合反応を進行させ、更に減圧(最高減圧度1
00Torr)下250℃で反応を続け、延べ6時間重
合反応を行った。窒素で復圧後、生成した組成物を抜き
出しチップ化し、沸騰水抽出により水溶性低分子量物を
除去した。120℃で真空乾燥したこの組成物チップ2
7重量%、ナイロン6チップ43重量%、および実施例
12で使用した非晶性ナイロンチップ30重量%をドラ
イブレンド後、実施例12におけると同様にフィルム化
と各種評価を行った。結果を、表−4に示す。
【0069】[比較例25]実施例12で用いたナイロ
ン6ペレット70重量%、非晶性ナイロンペレット30
重量%をドライブレンドし、以下実施例12におけると
同様にフィルム化と各種評価を行った。結果を、表−4
に示す。
【0070】
【表4】
【0071】表−4より、次のことが明らかになる。 (1) 実施例12と比較例23とは、同じ樹脂、添加物の
組成物であり、前者がMF処理マスターバッチとしたも
のである。ガスバリヤー性は前者が優れている。 (2) 粘土鉱物をナイロン6の重合系中に分散する方法を
採った比較例24は、ガスバリヤー性は優れているが、
靱性(引張伸び)は、ゲスト構造の差により実施例12
よりも劣っている。 (3) MF処理によるガスバリヤー性付与効果は、実施例
13〜15の酸素透過速度が低レベルにあることで明白
である。また、マトリックス樹脂が芳香族ポリアミドの
場合や、粘土鉱物以外の無機物を用いた場合も(実施例
15:りん酸ジルコニウム)、同様である。
【0072】
【発明の効果】本発明は、次のような特別に有利な効果
を奏し、その工業的利用価値は極めて大である。 1.本発明の熱可塑性樹脂組成物は、従来にないナノメ
ートルオーダーの劈開分散をした層状珪酸塩または層状
りん酸塩を含み、この組成物から得られる成形品は、機
械的物性のバランス、耐熱変形性、ガスバリヤー性、成
形表面平滑性に優れている。特にマトリックス樹脂に分
散している層状塩が、有機化合物または分子性化合物の
ような層間のゲストを含んだ状態で分散しているので、
優れた靱性を発揮する。 2.本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造方法は、層状珪
酸塩または層状りん酸塩が、剪断と圧縮力という物理的
作用の利用により好適になされるため、マトリックス樹
脂の種類に制限なく各種の樹脂に、汎用的に利用できる
技術である。 3.熱可塑性樹脂としてポリアミド系樹脂、特に芳香族
ポリアミ類を使用してフィルムとしたときは、製品フィ
ルムはガスバリヤー性に優れている。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱可塑性樹脂と層状化合物とからなる熱
    可塑性樹脂組成物において、この層状化合物は層間に実
    質的に非反応性の化合物を有する層状珪酸塩または層状
    りん酸塩から選ばれたものであり、かつ、灰分として
    0.01〜40重量%の範囲で含んだものであり、マト
    リックスの熱可塑性樹脂に前記層状化合物の40重量%
    以上が厚さ0.05〜10nmの範囲で分散されてなる
    ことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 層状化合物の層間に有する非反応性の化
    合物が、有機オニウムイオンであることを特徴とする請
    求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 有機オニウムイオンが、炭素数12以上
    のアルキル基を有するものであることを特徴とする請求
    項2記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン系樹
    脂、ポリアミド系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹
    脂、芳香族ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹
    脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアリーレンス
    ルフィド系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂のい
    ずれかから選ばれたものであることを特徴とする、請求
    項1ないし請求項3いずれか1項に記載の熱可塑性樹脂
    組成物。
  5. 【請求項5】 熱可塑性樹脂が、ポリアミド系樹脂であ
    ることを特徴とする、請求項1ないし請求項3いずれか
    1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 【請求項6】 ポリアミド系樹脂が、芳香族ポリアミド
    類であることを特徴とする請求項5記載の熱可塑性樹脂
    組成物。
  7. 【請求項7】 熱可塑性樹脂と層状化合物との粉体混合
    物に、熱可塑性樹脂の軟化温度未満の温度条件下で、剪
    断速度500sec-1以上の剪断および圧縮力を同時に
    印加して粉体複合体、またはこの粉体複合体にさらに熱
    可塑性樹脂を溶融混合することを特徴とする熱可塑性樹
    脂組成物の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物よ
    り成形されてなることを特徴とするガスバリヤーフィル
    ム。
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