JP3296101B2 - 熱可塑性樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物の製造方法

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JP3296101B2 JP18938594A JP18938594A JP3296101B2 JP 3296101 B2 JP3296101 B2 JP 3296101B2 JP 18938594 A JP18938594 A JP 18938594A JP 18938594 A JP18938594 A JP 18938594A JP 3296101 B2 JP3296101 B2 JP 3296101B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、熱可塑性樹脂組成物の
製造方法に関する。さらに詳しくは、劈開性層状化合物
が、従来にない微細な劈開状態で分散しており、成形品
したときに優れた靱性と面光沢を発揮し、成形品が
フィルムの場合には、透明性、易滑性、耐ブロッキング
性などを発揮する熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、成形用樹脂材料の物性を改質する
目的で、樹脂にフィラーを添加することは広く行われて
いる。例えば、最終的に得られる製品を強化したり、製
品フィルムの滑り性を改良する目的でタルク、雲母、ガ
ラスフレーク等の層状化合物が添加されている。しか
し、こうした従来技術によると、製品の比重が増加す
る、成形品表面平滑性が低下する、成形品の靱性が低下
する、等の欠点があった。また、タルクやカオリナイト
等は、ポリプロピレン系樹脂や、ポリアミド系樹脂の結
晶核剤としても配合利用されてきたが、成形品の靱性を
損なう場合があった。こうした欠点の改良策として、フ
ィラーのアスペクト比の向上、または微分散化により改
善され、特にフィルムの滑り性改良や結晶核剤としての
利用においては、分散粒系およびその分布の制御が極め
て重要である。このような制御の試みとして、例えば種
々の粉砕技術を駆使した微粉タルクの開発とその配合が
行われているが、必ずしも満足できる結果は得られてい
ない。
【0003】例えば、特開昭48−103653号公報
には、ポリアミド成形品製造の任意の段階に有機ベント
ナイトを添加分散する方法が、特開昭51−10999
8号公報、特開昭62−74957号公報などにポリア
ミドとこれにイオン結合した陽イオン交換性層状珪酸塩
からなる組成物とその製造方法が、それぞれ開示されて
いる。これらに刊行物に開示されている方法により、例
えばナイロン6樹脂への分散性を大幅に向上させること
はできるが、フィルムとした場合の滑り性や、結晶核剤
効果の改善には有効な方法とは言えず、更に特殊な製造
工程を有する技術である。
【0004】一方、本発明者らは、特願平5−2451
99号、特願平5−245200号、特願平6−406
9号、特願平6−22832号などにおいて、有機オニ
ウムイオンをインターカションした陽イオン交換性層状
珪酸塩を、各種熱可塑性樹脂に対し主に溶融混合した樹
脂組成物を提案した。ここで提案した技術は、溶融混合
というは汎用的な手段を適用できるが、層状珪酸塩の分
散の程度を制御することは必ずしも容易ではない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
の熱可塑性樹脂マトリックスへの層状化合物の分散技術
の現状に鑑み、各種のマトリックス樹脂に適用できる汎
用的な分散技術、すなわち、層状珪酸塩の分散の程度を
制御しながら分散する技術であり、新規かつ有用な熱可
塑性樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の諸
問題を解消すべく鋭意検討した結果、特定の微分散技術
を用いることにより、層状化合物が従来にない微細な劈
開状態で分散され、成形品したときに優れた靱性と表
面光沢を発揮し、成形品がフィルムの場合には、透明
性、易滑性、耐ブロッキング性などを発揮する熱可塑性
樹脂組成物得られることを見い出し、本発明を完成す
るに至った。本発明は上記課題を解決するために、粉
状の熱可塑性樹脂と粉体状の層状珪酸塩との粉体混合物
に、熱可塑性樹脂の軟化温度未満の温度条件下で、剪断
速度500sec-1以上の剪断および圧縮力を同時に印
加して粉体複合体となした後、該粉体複合体を溶融混合
するという手段を講じているものである
【0007】以下、本発明を詳細に説明する。本発明に
係る熱可塑性樹脂組成物は、(a) 熱可塑性樹脂と(b) 層
状化合物との2成分を必須成分として含んでいる。本発
明において、(a) 成分としての熱可塑性樹脂は、(b) 成
分としての層状化合物を微分散させるマトリックスとし
ての機能を果たす。熱可塑性樹脂の種類には特に制限は
なく、(b)成分の層状化合物を微分散させ、好ましい効
果が特に期待される(a) 成分としては、ポリプロピレン
系樹脂、ポリアミド系樹脂、芳香族ポリカーボネート樹
脂、芳香族ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹
脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアリーレンス
ルフィド系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂等が
挙げられる。
【0008】ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンを
遷移金属触媒の存在下、付加重合して得られる重合体で
ある。かかる重合体は、メチレン鎖炭素の一つおきにメ
チル基が結合した構造であって、このメチル基の結合し
た炭素元素は不斉中心であるため、その連鎖の立体規則
性により、シンジオタクチック、アイソタクチック、ア
タクチック等の分類が可能である。これらいずれの立体
規則構造のもでもよく、複数を併用することもできる。
またポリプロピレン系樹脂は、分岐構造を有するものを
含んでいてもよい。ポリプロピレン系樹脂は、その製造
方法は特に制限されるものではない。また、これらのポ
リプロピレン系樹脂の分子量には特に制限はなく、メル
トインデックスが0.1〜50の通常範囲のものが好ま
しく用いられ、特に0.5〜30の範囲のものが好まし
い。
【0009】ポリアミド系樹脂とは、主鎖中にアミド結
合(−NHCO−)を含重合体であり、脂肪族ポリアミ
ド類と(半)芳香族ポリアミド類とがある。脂肪族ポリ
アミド類の具体例としては、ポリテトラメチレンアジパ
ミド(ナイロン46)、ポリカプロラクタム(ナイロン
6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6
6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン61
0)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン61
2)、ポリウンデカノラクタム(ナイロン11)、ポリ
ドデカノラクタム(ナイロン12)等が挙げられる。
(半)芳香族ポリアミド類の具体例としては、テレフタ
ル酸および/またはイソフタル酸とヘキサメチレンジア
ミンとから得られるポリアミド、アジピン酸とメタキシ
リレンジアミンとから得られるポリアミド、テレフタル
酸および/またはイソフタル酸とアジピン酸とヘキサメ
チレンジアミンとから得られるポリアミド、テレフタル
酸および/またはイソフタル酸とアジピン酸とメタキシ
レンジアミンとから得られるポリアミド、共重合成分と
して1,3−フェニレンジオキシジ酢酸を含む共重合ポ
リアミド共重合成分として二量体化脂肪酸を含む共重合
ポリアミドなどが挙げられる。ポリアミド系樹脂は、単
独でも同種類および/または異種類の混合物であっても
よい。
【0010】これらの中で、ナイロン6とナイロン66
は、それ自身が靱性と剛性のバランスの点で優れている
ため好適である。また、テレフタル酸および/またはイ
ソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとから得られるポ
リアミド、アジピン酸とメタキシリレンジアミンとから
得られるポリアミド、テレフタル酸とアジピン酸とヘキ
サメチレンジアミンとから得られるポリアミド、および
共重合成分として1,3−フェニレンジオキシジ酢酸を
含む共重合ポリアミドなどは、ガスバリヤー性が優れて
いる点で好適である。ポリアミド系樹脂の分子量には特
に制限はなく、25℃の濃硫酸中で測定した相対粘度が
0.5〜5.0の通常の範囲のものが好ましく用いら
れ、靱性および成形性の点からさら好ましいのは0.8
〜4.0の範囲のものである。
【0011】芳香族ポリカーボネート系樹脂とは、多価
フェノール類を共重合成分として含有しても良い1種以
上のビスフェノール類と、ビスアルキルカーボネート、
ビスアリールカーボネート、ホスゲン等の炭酸エステル
類との反応により製造される重合体である。本発明に使
用される芳香族ポリカーボネート系樹脂は、その製造方
法に制限はない。例えば、(1) ビスフェノール類のアル
カリ金属塩と求核攻撃に活性な炭酸エステル誘導体とを
原料とし、生成ポリマーを溶解する有機溶剤とアルカリ
水との界面にて重縮合反応させる界面重合法、(2) ビス
フェノール類と求核攻撃に活性な炭酸エステル誘導体と
を原料とし、ピリジン等の有機塩基中で重縮合反応させ
るピリジン法、(3) ビスフェノール類とビスアルキルカ
ーボネートやビスアリールカーボネート等の炭酸エステ
ルとを原料とし、溶融重縮合させる溶融重合法、などの
従来から知られているいずれの方法によって製造された
ものでもよい。芳香族ポリカーボネート系樹脂は、単独
でも複数種の併用であってもよい。
【0012】本発明で用いられる芳香族ポリカーボネー
ト系樹脂の分子量には特に制限はなく、通常は40℃の
テトラヒドロフラン(THF)溶媒によるゲルパーミエ
ーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定し、
単分子量分散ポリスチレンを対照としての重量平均分子
量Mwが15,000以上、靱性や成形容易性を考慮す
ると20,000〜80,000の範囲で選ぶのが好ま
しく、最も好ましいのは35,000〜65,000の
範囲のものである。
【0013】芳香族ポリエステル系樹脂とは、ジカルボ
ン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオール、ある
いはそのエステル形成性誘導体との縮合反応により得ら
れる芳香族環を分子鎖中に有するポリエステルである。
芳香族ポリエステル系樹脂の具体例としては、ポリエチ
レンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポ
リプロピレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレ
フタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレ
ート等のポリアルキレンテレフタレート、ポリ(エチレ
ンテレフタレート/エチレンイソフタレート)共重合
体、ポリ(ブチレンテレフタレート/ブチレンイソフタ
レート)共重合体等のポリアルキレンフタレート、ポリ
エチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等の
ポリアルキレンナフタレート、ポリ(ブチレンテレフタ
レート/ブチレンドデカジオエート)共重合体等の脂肪
族ジカルボン酸を含むポリアルキレンテレフタレート等
が挙げられる。これらは単独でも複数種の併用であって
もよい。
【0014】このうち好適なのは、ポリエチレンテレフ
タレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘ
キサンジメチレンテレフタレート等のポリアルキレンテ
レフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレ
ンナフタレート等のポリアルキレンナフタレートであ
り、最も好適なのは、ポリエチレンテレフタレートとポ
リブチレンテレフタレートである。本発明で用いられる
芳香族ポリエステルの分子量には特に制限はなく、好ま
しくは、フェノールとテトラクロロエタンとの重量比
1:1の混合溶媒を使用し、濃度1g/dlとし30℃
で測定した極限粘度[η]が、0.5〜3.0dl/g
の範囲ものである。極限粘度がこの範囲よりも小さい場
合には、靱性が極端に低下し、逆にこの範囲よりも大き
い場合には、溶融粘度が大きすぎて成形に支障を来すた
め好ましくない。
【0015】ポリアセタール系樹脂とは、次式、すなわ
ち、−(−O−CHR−)n −、[式中、Rは水素原
子、または炭素数1〜5の炭化水素基であり、nは自然
数である。]で示されるオキシアルキレン構造の繰り返
し単位を主体とする重合体である。その製造方法には制
限はなく、代表的な構造としてポリオキシメチレンが挙
げられ、通常トリオキサンの開環重合により製造され
る。また、主鎖の大部分がオキシメチレン連鎖で構成さ
れるポリアセタールコポリマーも使用でき、公知の方法
で架橋またはグラフト変性したものも、熱可塑性をであ
れば使用可能であり、複数種を併用することもできる。
本発明で用いられるポリアセタール系樹脂の分子量には
特に制限はなく、メルトインデックスが1〜25の範囲
で選ぶことができ、更に好ましくは5〜25の範囲のも
のである。
【0016】ポリフェニレンエーテ系樹脂とは、ベンゼ
ン環残基がエーテル結合を介して結ばれた重合体であ
り、加熱溶融できるものである。これらはフェノール類
またはその反応性誘導体を原料として、公知の方法、例
えば酸化カップリング触媒を用いた酸素、または酸素含
有ガスによる酸化カップリング重合等で製造される重合
体である。このフェノール類および重合触媒等の具体例
は、例えば特開平4−239029号等に詳述されてい
るが、代表的なフェノール類としてはフェノール、o−
クレゾール、2,6−キシレノール、2,5−キシレノ
ール、2,3,6−トリメチルフェノール等のメチルフ
ェノール類等が挙げられ、これらフェノール類は単独ま
たは2種以上を組み合わせて用いることもできる。最も
一般的なポリフェニレンエーテル樹脂としては、ポリ
(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、
またはこれを主構造とする共重合体が挙げられる。ポリ
フェニレンエーテ系樹脂は、単独でも複数種の併用であ
ってもよい。本発明に用いられるポリフェニレンエーテ
ル樹脂の分子量には特に制限はなく、通常は0.6g/
dl濃度のクロロホルム溶液の25℃での極限粘度
[η]が0.2〜0.6dl/gの範囲内で選ばれ、靱
性および成形性の点から0.35〜0.55dl/gの
範囲で選ぶのが好ましい。
【0017】ポリアリーレンスルフィド系樹脂とは、芳
香族残基がチオエーテル結合を介して結ばれた重合体で
あり加熱溶融できるものである。こうした重合体構造の
具体例と製造方法は、例えば特開平5−194851号
公報に詳述されているが、本発明において好適に用いら
れる主鎖構造は、次式、すなわち、−(−S−Φ−9)
n −、[式中、Φはフェニレン基を、nは各構造の繰り
返しを意味する自然数である。]の繰り返し単位をもつ
ポリフェニレンスルフィドと、次式、すなわち、−(−
S−Φ−)m −(−SO2 −Φ−)n −、[式中、Φは
フェニレン基を、mとnは各構造の繰り返しを意味する
自然数であり、mとnで表される各繰り返し単位はラン
ダム配列、またはブロックを構成する配列いずれであっ
ても良い。]の繰り返し単位をもつポリフェニレンスル
フィドスルフォンである。これらは、単独でも複数種の
併用であってもよい。
【0018】本発明に用いられるポリアリーレンスルフ
ィド系樹脂の分子量は、特に制限はなく、重量平均分子
量にして10,000〜500,000の範囲で選ぶの
が通常である。靱性および成形性の観点から好ましいの
は、30,000〜300,000の範囲である。この
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラ
フィ(GPC)により測定することができ、例えばポリ
フェニレンスルフィドの場合には、1−クロロナフタレ
ンを展開溶媒として用いることができる。
【0019】アクリル系樹脂とは、アクリル酸またはそ
のエステル類、メタクリル酸またはそのエステル類、ア
クリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、
メタクリロニトリル等のアクリル酸誘導体の単独重合体
または共重合体である。かかるアクリル酸誘導体として
は、例えば日刊工業新聞社刊の「プラスチック材料講
座」第16巻等に記載されている。代表的なものとし
て、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸
ブチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メ
タクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸
ヒドロキシエチル、メタクリル酸フェニル、アクリルア
ミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリ
ロニトリル等が挙げられる。アクリル系樹脂の製造方法
には特に制限はなく、従来から知られている塊状重合、
懸濁重合、乳化重合等の任意の重合法によるラジカル重
合により製造することができる。代表的なアクリル系樹
脂としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂
が挙げられ、単独でも複数種の併用であってもよい。本
発明に用いられるアクリル系樹脂の分子量に特に制限は
ないが、通常はメルトインデックスが1〜20の範囲で
選ばれ、特に好ましいのは5〜15の範囲である。
【0020】スチレン系樹脂とは、スチレン誘導体の単
独重合体およびスチレン誘導体を主成分としこれと共重
合可能なビニル化合物との共重合体を言う。スチレン誘
導体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−ク
ロロスチレン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレ
ン、等の芳香族ビニル化合物を挙げることができる。上
記芳香族ビニル化合物を重合させる際に、ゴム成分を共
存させることもできる。スチレン系樹脂の製造方法には
特に制限はなく、従来から知られている塊状重合、懸濁
重合、塊状−懸濁重合、乳化重合等の任意の重合法によ
るラジカル重合により製造することができる。代表的な
スチレン樹脂としては、一般用ポリスチレン(PS樹
脂)、ゴム強化ポリスチレン(HIPS)、アクリロニ
トリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニト
リル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、
アクリロニトリ−アクリル系ゴム−スチレン共重合体
(AAS樹脂)、アクリロニトリ−EPDM−スチレン
共重合体(AES樹脂)などが例示でき、これらは単独
でも複数種の併用であってもよい。本発明に用いられる
スチレン樹脂の分子量に特に制限はないが、通常はメル
トインデックスが0.5〜25の範囲で選ばれ、特に好
ましいのは5〜20の範囲である。
【0021】上記(a) 成分としての熱可塑性樹脂は、ビ
ーズ、クラム、粉末などの粉粒体であり、平均粒子径が
0.5〜1,000μmの範囲が好ましい。中でも0.
5〜500μmの範囲、更に好ましいのは0.5〜10
0μmの範囲、最も好ましいのは0.5〜10μmの範
囲である。上記(a) 成分としての熱可塑性樹脂は、単独
でも複数種を併用することもできる。また、(a) 成分は
上に例示したものに制限されるもにではなく、本発明の
主旨を損なわない限り、例示しなかった他の熱可塑性樹
脂を併用することも可能である。
【0022】本発明において(b) 成分としての層状化合
物は、上記(a) 成分のマトリックス樹脂に、従来にない
微細な劈開状態で分散され、成形品としたときに優れた
靱性と表面光沢を維持し、成形品がフィルムの場合に
は、易滑性、耐ブロッキング性などを付与する機能を果
たす。
【0023】(b) 成分としての層状化合物は、劈開性を
有する層状珪酸塩であれば良く、その種類に制限はな
い。ここで「劈開性」とは、層状化合物が、剪断等の外
部応力によって、新たに10nm以下の厚さの層状構造
を形成する性質のことを意味する。従って、本発明の熱
可塑性樹脂組成物に用いられる層状珪酸塩、周期構造の
繰り返し単位長が10nm以下であることが望ましい。
更に、かかる周期構造が比較的小さな解離エネルギーを
有する相互作用、例えばvan der Waals
力、イオン結合、水素結合等により維持されていること
が最も望ましい。
【0024】使用できる層状珪酸塩としては、以下のも
のが挙げられる。これらは単独でも、複数種の併用であ
っても良い。 (1) 1:1型粘土鉱物 カオリナイト、ディッカイト、ハロイサイト、アントゴ
ナイト、クリソタイト、等 (2) 2:1型粘土鉱物 モンモリロナイト、ヘクトライト、フッ素ヘクトライ
ト、サポナイト、バイデライト、スチブンサイト、バー
ミキュライト等のスメクタイト類、白雲母、金雲母等の
雲母類、フッ素白雲母、フッ素金雲母、K型フッ素テニ
オライト、K型四珪素雲母等の非潤滑性合成雲母類、L
i型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、
Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母等の
潤滑性合成雲母類、マーガライト、パイロフィライト、
タルク、緑泥石、等 (3) 層状ポリ珪酸塩 α−Na2 Si25 、KHSi25 、K2 Si2
5 、NaHSi25・3水塩(カネマイト)、Na2
Si817の水和物、Na2 Si1429の水和物(マガ
ディアイト)、Na2 Si2041の水和物(ケニヤイ
ト)等
【0025】上に例示した層状珪酸塩のうち、劈開性の
観点からモンモリロナイト、ヘクトライト、Na型フッ
素テニオライトなどの陽イオン交換性を有するもの、タ
ルク、カオリナイトなどが好ましい。また、(a) 成分の
マトリックスが結晶性樹脂の場合には、タルク、カオリ
ナイトなどが優れた核剤効果を発揮するので好ましい。
中でも、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト、合
成雲母などが特に好適である。なお、上に例示した層状
珪酸塩は、その層間へ他の物質、例えば尿素、有機オニ
ウムイオン塩、アミン塩、アルコール類などを含んでい
てもよい。
【0026】(b) 成分としての層状珪酸塩は、劈開構造
が生成しやすい粒子径であるのが好ましく、この観点か
らその平均粒子径が0.5〜100μmの範囲が好まし
い。中でも0.5〜10の範囲、更に好ましいのは0.
5〜2μmの範囲である。層状化合物の粒子径は、熱可
塑性樹脂の粒子径より小さいことが好ましい。
【0027】本発明の熱可塑性樹脂組成物は、マトリッ
クスの樹脂に分散される劈開性層状珪酸塩の微分散の程
度が高くなるほど、目的が効果的に達成されることが分
かっている。上記の劈開性層状珪酸塩の含量は、本発明
者らの実験によると、灰分量として0.01〜40重量
%の範囲で選ぶ必要があることが分かった。ここで、層
状珪酸塩の「灰分量」とは、試料を約1.5グラム精秤
し、窒素雰囲気下、650℃の温度で2時間加熱、分解
させて、残渣の重量より算出したものである。ただし、
同じ条件下で予め測定した純粋な熱可塑性樹脂の分解残
渣により、補正した値である。
【0028】層状珪酸塩が、灰分量として0.01重量
%未満であると、成形品したときに優れた靱性と表面光
沢を付与し、成形品がフィルムの場合には、透明性、易
滑性、耐ブロッキング性などを付与するという本発明の
目的を効果的に発揮することができず、また、40重量
%を超えると比重が大きくなったり、成形品の靱性が低
下する場合があるので、いずれも好ましくない。上記範
囲で好ましい灰分量は、0.02〜30重量%の範囲で
あり、最も好ましくは0.02〜20重量%の範囲であ
る。
【0029】本発明の熱可塑性樹脂組成物において、層
状珪酸塩を灰分量として0.01〜40重量%の範囲と
するには、全熱可塑性樹脂組成物に占める層状珪酸塩の
量を0.01〜80重量%の範囲で選べばよい。この範
囲で好ましいのは、0.05〜50重量%の範囲、更に
好ましいのは0.05〜30重量%の範囲、最も好まし
いのは0.05〜20重量%の範囲である。なお、粉体
複合体を希釈用マスターバッチとして用いる場合は、全
熱可塑性樹脂組成物に占める層状珪酸塩の量を10〜8
0重量%、更に好ましくは20〜8重量%の範囲、最も
好ましくは30〜80重量%の範囲で選べばよい。
【0030】本発明の目的を効果的に達成するには、本
発明者らの実験によると、上記層状珪酸塩はその平均厚
さが5〜500nmの範囲であり、かつ、この層状珪酸
塩の平均層間距離が1nm以上、3nm未満で分散され
ている必要があることが分かった。ここで「平均層間距
離」とは、最近房傍の層との層同士の重心距離を意味す
る。樹脂に分散された層状珪酸塩の平均層間距離の測定
は、成形品からミクロトームなどにより厚さ0.1μm
程度の超薄片を切り出し、透過型電子顕微鏡で観察する
ことにより可能である。得られる顕微鏡画像を計算機に
より処理することにより、客観的に定量化することがで
きる。
【0031】層状珪酸塩の平均厚さが500nm以下で
あると、添加された層状珪酸塩が微細に分散することで
成形品の靱性および表面平滑性が低下しない。他方、5
00nmを超えると、このような成形品の靱性および表
面平滑性が低下するため好ましくない。層状珪酸塩の平
均層間距離が3nmを越えると、溶融加工工程において
過度の分散が促進され易く、平均厚さが5nm未満とな
り、好ましくない。平均厚さの好ましい範囲は10〜4
50nm、より好ましくは50〜400nm、最も好ま
しくは100〜400nmである。
【0032】本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造するに
は、粉体状の熱可塑性樹脂と粉体状の層状珪酸塩との混
合物に、熱可塑性樹脂の軟化温度未満の温度条件下で、
剪断速度500sec-1以上の剪断および圧縮力を同時
に印加する必要がある。ここで、熱可塑性樹脂の軟化温
度とは、結晶性樹脂の場合には融点を、非晶性樹脂の場
合にはガラス転移温度を、それぞれ意味する。熱可塑性
樹脂は、前記の通り、単独でも複数種類の混合物でもよ
いが、後者の場合には軟化温度の最も低い樹脂の軟化温
度を採用しなければならない。また、熱可塑性樹脂とし
て、ポリフェニレンエーテルとポリアミド、ポリオレフ
ィンとポリアミド、芳香族ポリエステルと芳香族ポリカ
ーボネート、芳香族ポリエステルとポリオレフィン、ポ
リフェニレンエーテルとポリスチレン等の場合の軟化温
度は、通常連続相を形成している成分の軟化温度を意味
する。
【0033】熱可塑性樹脂の軟化温度未満の温度条件を
選択するのは、原料の熱可塑性樹脂を溶融させない範囲
で加熱し、この加熱された粉体状の熱可塑性樹脂の表面
ないし表層部に、高度に劈開した層状珪酸塩を付着させ
ることにある。ただし、粉体複合体は、熱可塑性樹脂粉
体の表面ないし表層部に、劈開した層状珪酸塩の全量が
付着している必要はない。
【0034】粉体状の原料熱可塑性樹脂と粉体状の層状
珪酸塩とを、それぞれ所定量秤量し、両者を良く混合す
る。次いで、加熱・攪拌下、剪断と圧縮力を同時に印加
しながら、混合して粉体複合体とする。この操作に好適
な装置例として、特開平3−42054号公報に開示さ
れているものが挙げられる。なお、粉体複合体を製造す
る際に、本発明の目的を損なわない範囲で、各種の樹脂
添加剤、例えば、無機充填材、金属粉体、熱硬化性樹脂
等の非熱可塑性成分や、熱安定剤、紫外線吸収剤、顔
料、酸化防止剤、可塑剤、帯電防止剤等を配合すること
ができる。
【0035】粉体複合体を製造する際の、剪断・圧縮す
る際の好ましい強度および印加時間は、原料熱可塑性樹
脂の種類、形状、層状珪酸塩の劈開性、平均粒子径、両
者の混合割合、温度条件などにより変動するが、本発明
者らの実験によれば、剪断速度500sec-1以上の剪
断および圧縮力が必要であることが分かった。剪断速度
500sec-1未満であると、層状珪酸塩が好ましく劈
開せず、熱可塑性樹脂の粉粒体表面ないし表層部に均一
に分散付着した粉体複合体が得られないので、好ましく
ない。500sec-1以上の剪断速度範囲で好ましいの
は、1,000〜50,000sec-1の範囲であり、
更に好ましいのは5,000〜40,000sec-1
範囲、最も好ましいのは8,000〜35,000se
-1の範囲である。ただし、過度の剪断および圧縮力の
印加は、層状珪酸塩の相構造を過度に破壊し、ガスバリ
ヤー性等の本発明の目的を効果的に達成することができ
ない場合があり、好ましくない。
【0036】上記方法で得られた粉体複合体は、そのま
ま目的とする成形品製造用に使用できるが、粉体複合体
に更に熱可塑性樹脂を混合・溶融して、目的とする成形
品製造用の熱可塑性樹脂組成物とすることができる。後
者の場合、本発明の目的を損なわない範囲で、上記した
各種の樹脂添加剤を配合することができる。この混合工
程は、粉体複合体に既に含まれている劈開した層状珪酸
塩を、熱可塑性樹脂マトリックスに分散するのが目的で
あり、強力な剪断混合により更なる劈開を推進するのが
目的ではないからである。但し、より良い混合分散は本
発明の主旨に合致するので、二軸押出機、ブラベンダー
等の比較的強い剪断を伴う方法を採用するのが望まし
い。
【0037】本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(a) 熱可
塑性樹脂と、(b) 特定の状態で分散する層状珪酸塩と、
場合により他の樹脂添加剤などを含み、従来から知られ
いる成形技術によって成形品とした場合、靱性、弾性率
などに優れ、表面外観にも優れた製品が得られる。特
に、(a) 熱可塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂、ポリア
ミド系樹脂などの結晶性樹脂の場合には、射出成形時に
固化速度が速いので、タイムサイクルを短縮し生産性を
高めることができる。これは、製品に微細に分散した層
状珪酸塩が核剤効果を発揮するためと推定される。製品
がフィルムの場合には、優れた滑り性と耐ブロッキング
性を発揮する。これは、微細に分散した層状珪酸塩が製
品フィルムの表面に多数露出して、フィルム面同士がブ
ロッキングするのを阻害するためと推定される。
【0038】本発明において、マトリックスの樹脂とし
てポリアミド系樹脂またはポリスルフェンスルフィド系
樹脂を主体とするものを選んだ場合には、ガスバリヤー
に優れたフィルム製品が得られる。これらは、マトリッ
クスの樹脂自身の優れたガスバリヤー性によるものであ
るが、この特性は層状珪酸塩を配合しても阻害されるこ
とがない。マトリックスの樹脂としてポリアミド系樹脂
を選んだ場合には、その優れた靱性が生かされ、かつ、
優れたガスバリヤーフィルムが発揮される。これは、層
状珪酸塩が製品フィルムの表面に露出するが、樹脂と微
細に分散した層状珪酸塩との界面が強固に接着されてい
るためと推定される。
【0039】本発明に係る熱可塑性樹脂組成物から、目
的とする成形品を製造するには、圧縮成形、射出成形、
押出成形、吹込成形、カレンダー成形などの、熱可塑性
樹脂の成形技術として従来から知られいる成形技術によ
ることができる。本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、
機械部品用資材、自動車部品用資材(バンド、コネクタ
ー、チューブ、インスツルメンタルパネル、バンパーな
ど)、電気機器ハウジング用資材(パーソナルコンピュ
ータ、ファクシミリ、TV、VTR、ポータブル電話機
など)、フィルム用資材、包装用資材、液体容器用資
材、光学機器用資材など、幅広い用途があり、各種の成
形品を製造することができ有用である。
【0040】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
るが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の記載
例に限定されるものではない。なお、各種の評価試験は
以下に記載の方法によったものである。
【0041】(1) 層状珪酸塩の灰分量 精秤した約1.5グラムの試料を、窒素雰囲気下、65
0℃の温度で2時間加熱分解し、残渣の重量により算出
した。ただし、予め同条件で純粋な熱可塑性樹脂の分解
残渣を測定し、補正した。 (2) 引張試験 JIS−K7311またはASTM−D638に準拠
し、300mm/分の速度で引張試験を行い降伏強度Y
S(kg/cm2 )と破断伸びUE(%) を測定した。 (3) 層状珪酸塩の分散状態の観察 層状珪酸塩の平均厚さ、層間距離の観察・測定は、透過
型電子顕微鏡((株)日立製作所製、H7000型)を
使用し、倍率4万倍〜15万倍の画像の電子計算機によ
る画像解析(パブリックドメインソフトのNIH Im
age)によった。 (4) 結晶開始温度 デュポン社製DSCにより熱プレスシートを200℃で
5分間溶融した後、16℃/分で冷却した時の結晶開始
温度を測定した。 (5) 静止摩擦係数 ASTMに準拠し、23℃の温度、相対湿度65%の条
件下で測定した。 (6) ヘーズ測定 日本電色工業(株)製濁度計によって測定した。
【0042】[実施例1]平均粒径が250μm以下の
ポリプロピレン(ASTM、D1238におけるメルト
インデックス=1.9)と、タルク(重量累積50%平
均粒度D50=2.8μm)とを、それぞれ97/3
(重量%)の割合でドライブレンドし、混合粉体を得
た。この混合粉体をホソカワミクロン(株)製メカノフ
ュージョンシステムAM−15Fにより剪断および圧縮
を同時に印加する処理(以下、MF処理と称する)を行
い、粉体複合物を得た。MF処理条件は、最高温度10
0℃、処理時間20分、剪断速度17,200sec-1
とした。次いで、この粉体複合物に対して熱安定剤とし
てチバガイギー(株)製イルガノックス1010とイル
ガフォス168(イルガノックスとイルガフォスは登録
商標)とをそれぞれ0.1%混合したあと、東洋精機
(株)製ラボプラストミル二軸押出機によりスクリュ回
転30rpmで190℃の溶融押出し、ペレット化し
た。
【0043】得られたペレットを用い、熱プレス(20
0℃×3分、圧:50kg/cm2)によって、厚さ1mmシ
ートとし、次いでこのシートから、JIS−K7311
規格の引張試験用ダンベル片を打ち抜いた。この試験片
につき、前記(2) に記載の方法で引張試験を行った。ま
た、このシートからミクロトームにより約0.1μm厚
の超薄切片を切り出し、前記(3) に記載の方法でタルク
の分散状態を観察した。更に、前記(4) に記載の方法で
結晶開始温度を測定した。これらの測定結果を、表−1
に示す。分散された層状珪酸塩の層間距離は、1nmで
あった。
【0044】[実施例2]平均粒径が250μm以下の
ナイロン6(25℃濃硫酸における相対粘度=3.5)
と、実施例1で使用したのと同種のタルクとを、それぞ
れ99/1(重量%)でドライブレンドし、同例におけ
ると同様の手順で、混合粉体、粉体複合物、MF処理を
行った。但し、MF処理の最高温度は180℃、剪断速
度25,600sec-1とした。次いで実施例1におけ
ると同様に溶融押出を行い、ペレットを得た。溶融押出
する際のシリンダー温度は、280℃とした。得られた
ペレットについての機械的物性は、射出成形機(日本製
鋼所(株)製J28SA)により成形したダンベル片に
よりASTM−D638規格による引張試験により評価
した。この際の成形バレル温度は280℃、金型温度は
90℃とした。また、分散状態の観察、結晶開始温度の
測定なども行った。これらの測定結果を、表−1に示
す。分散された層状珪酸塩の層間距離は、1nmであっ
た。
【0045】[比較例1]実施例1に記載の例におい
て、2種の粉体状の原料をドライブレンド後、MF処理
しなかった外は、同例におけると同様の手順で、混合粉
体、粉体複合物、ペレット化し、フィルムと試験片の作
成を行った。得られた試験片、フィルムにつき、同例に
おけると同様に各種の試験を行った。これらの測定結果
を、表−1に示す。分散された層状珪酸塩の層間距離
は、1nmであった。
【0046】[比較例2]実施例2に記載の例におい
て、2種の粉体状の原料をドライブレンド後、MF処理
しなかった外は、同例におけると同様の手順で、混合粉
体、粉体複合物、ペレット化し、フィルムと試験片の作
成を行った。得られた試験片、フィルムにつき、同例に
おけると同様に各種の試験を行った。これらの測定結果
を、表−1に示す。分散された層状珪酸塩の層間距離
は、1nmであった。
【0047】[比較例3]実施例1に記載の例におい
て、タルクを使用せず粉体状のポリプロピレン系樹脂の
みを使用し、溶融押出してペレット化し、フィルムと試
験片作成した。得られた試験片、フィルムにつき、同例
におけると同様に各種の試験を行った。これらの測定結
果を、表−1に示す。分散された層状珪酸塩の層間距離
は、1nmであった。
【0048】[比較例4]実施例2に記載の例におい
て、タルクを使用せず粉体状のナイロン6樹脂のみを使
用し、溶融押出してペレット化し、フィルムと試験片作
成した。得られた試験片、フィルムにつき、同例におけ
ると同様に各種の試験を行った。これらの測定結果を、
表−1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】表−1より、次のことが明らかである。 (1) 本発明の樹脂組成物は、優れた引張強度(YS、U
E)を有している(実施例1、2)のに対して、比較例
の樹脂組成物はUEにおいて劣っている。 (2) 本発明方法で製造した樹脂組成物は層状珪酸塩の平
均厚さが小さい(実施例1、2)のに対し、比較例の樹
脂組成物は層状珪酸塩の平均厚さが大きい(比較例1〜
2)。 (3) 本発明方法で製造した樹脂組成物は、MF処理を行
なわず従来の方法で製造した樹脂組成物と同様の結晶開
始温度を有し、成形時のタイムサイクルが長くなること
はない。
【0051】[実施例3]実施例2に記載の例におい
て、粉体状のナイロン6樹脂に対し、高純度Naモンモ
リロナイト(クニミネ工業(株)製クニピアF(登録商
標))1.2重量%をドライブレンドし、同例における
と同様の手順で、混合粉体、粉体複合物、MF処理を行
った。次いで、実施例2におけると同様に溶融押出を行
った。得られたペレットを単軸スクリュの押出機で混練
し(直径40mm、回転数30rpm)、先端に装着し
たTーダイにより厚さ25μmのフィルムを作成した。
但し、バレル及びダイス温度は250℃、樹脂温度24
0℃、巻き取りロール温度120℃とした。得られたフ
ィルムにつき、前記に記載の方法で静止摩擦係数を測定
するとともに、同様の電子顕微鏡による分散状態観察、
目視観察による成形品(フィルム)表面平滑性を観察、
濁度計によりヘーズ測定も行った。これらの測定結果
を、表−2に示す。分散された層状珪酸塩の層間距離
は、1nmであった。
【0052】[実施例4]実施例3に記載の例おいて、
Naモンモリロナイトの代わりに焼成カオリン(平均粒
径1μm、粒径5μm以下のものが99%)1重量%を
使用して、同例におけると同様に各種の評価実験を行っ
た。これらの測定結果を、表−2に示す。分散された層
状珪酸塩の層間距離は、1nmであった。
【0053】[比較例5]実施例3に記載の例おいて、
2種の粉体状の原料をドライブレンド後、MF処理しな
かった外は、同例におけると同様の手順で、混合粉体、
粉体複合物、ペレット化し、フィルムと試験片の作成を
行った。得られた試験片、フィルムにつき、同例におけ
ると同様に各種の試験を行った。これらの測定結果を、
表−2に示す。分散された層状珪酸塩の層間距離は、1
nmであった。
【0054】[比較例6]実施例3に記載の例おいて、
タルクを使用せず、粉体状のナイロン6樹脂のみを使用
し、溶融押出してペレット化し、フィルムと試験片作成
した。得られた試験片、フィルムにつき、同例における
と同様に各種の試験を行った。これらの測定結果を、表
−2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】表−2より、次のことが明らかである。 (1) 本発明方法で製造した樹脂組成物は層状珪酸塩の平
均厚さが小さい(実施例3、4)のに対し、比較例の樹
脂組成物は層状珪酸塩の平均厚さが大きい(比較例
5)。 (2) 本発明の樹脂組成物から得られた成形品は、優れた
静止摩擦係数を持ち、目視観察による成形品の表面平滑
性も異常なく、ヘーズも少ない(実施例3、4)のに対
し、比較例の場合はこれらの性質において劣る(比較例
5、6)。
【0057】
【発明の効果】本発明は、次のような特別に有利な効果
を奏し、その工業的利用価値は極めて大である。 1.本発明の熱可塑性樹脂組成物は、特定の粒径に劈開
分散をした層状珪酸塩を含み、靱性および弾性率などの
機械的物性に優れ、得られる成形品は表面平滑性、光沢
に優れたものとなる。 2.本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、剪断と
圧縮という物理的作用の利用により特に好適になされる
ため、マトリックス樹脂中への層状珪酸塩の微分散を達
成できる。この、方法は分散させる層状珪酸塩の化学構
造に制限がなく、汎用的で利用価値のある技術である 3.結晶性樹脂を原料として射出成形法によって成形品
を製造するときは、樹脂の固化速度が速いので、タイム
サイクルを短縮し生産性を高めることができる。 4.成形品がフィルムの場合には、優れた透明性、易滑
性および耐ブロッキング性を発揮する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−301750(JP,A) 特開 平2−29458(JP,A) 特開 平2−208358(JP,A) 特開 平3−215555(JP,A) 特開 平3−215556(JP,A) 特開 平3−215557(JP,A) 特開 平3−215558(JP,A) 特開 平6−80873(JP,A) 特開 平3−62846(JP,A) 特開 平2−305828(JP,A) 特開 平7−102124(JP,A) 特表 平6−504810(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 1/00 - 101/16 C08K 3/00 - 13/08 C08J 3/20

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粉体状の熱可塑性樹脂と粉体状の層状珪
    酸塩との粉体混合物に、熱可塑性樹脂の軟化温度未満の
    温度条件下で、剪断速度500sec-1以上の剪断およ
    び圧縮力を同時に印加して粉体複合体となした後、該粉
    体複合体を溶融混合することを特徴とする熱可塑性樹脂
    組成物の製造方法。
  2. 【請求項2】 熱可塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂ま
    たはポリアミド系樹脂であることを特徴とする請求項1
    に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  3. 【請求項3】 層状珪酸塩が、タルク、カオリナイト、
    モンモリロナイト、および合成雲母からなる群から選択
    される一種または複数種であることを特徴とする請求項
    1または請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 熱可塑性樹脂組成物に占める層状珪酸塩
    の量を0.01〜80重量%とする請求項1ないし請求
    項3いずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方
    法。
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