【発明の詳細な説明】
染料拡散熱転写印刷 序
本明細書は、染料拡散熱転写印刷DDTTP又はD2T2印刷、特に染料又は
染料混合物を保持する、特に耐光堅牢性に関して向上したプリント安定性を有す
る転写シート、熱をかけることにより染料又は染料混合物をその転写シートから
受像シートに転写する転写印刷方法、及び一定の新規な染料に関する発明を記載
するものである。
織ったか又は編んだ織物用材料を熱転写印刷(TTP)法により印刷すること
は公知である。そのような方法では、昇華性染料を(通常は印刷に必要とされる
までその染料を支持体に結合させておくための樹脂性又はポリマー性バインダー
も含有するインキとして)紙製支持体に図柄の形に塗布して、織物に転写するこ
とが望まれる図柄を印刷した紙製支持体を含む転写シートを製造する。次いで、
その転写シートの図柄の付いた面を織物用材料と接触させ、そして180〜22
0℃の温度に加熱したプレートで30〜120秒間軽く圧力をかけてそのサンド
イッチ体を加熱することにより、実質的に全ての染料をその転写シートから織物
用材料に写して、同一の図柄をその織物用材料上に形成する。
織物支持体の表面は繊維状で平らではないので、それは、転写シート上に印刷
された図柄とはその図柄領域の全体にわたっては接触しないであろう。従って、
染料が転写シートから織物支持体までその図柄領域の全体にわたって転写される
ためには、転写シートから織物支持体まで移行する間、染料は昇華性であること
及び蒸気化することが必要である。
平衡になるのに十分に長い時間、そのサンドイッチ体の全領域にわたって熱が
一様にかけられるため、条件は実質的に等温性となるので、この方法は非選択的
でありかつ染料は織物用材料の繊維内に深く浸透する。
DDTTPでは、転写シートは、滑らかで平らな表面を有する連続的な切れ目
のないフィルムの形態にある薄い支持体(通常は<20ミクロン)にその転写シ
ートの全印刷領域にわたって熱転写可能な染料(通常は染料を支持体に結合させ
るためのポリマー性又は樹脂性バインダーも含有する脂質中の溶液又は分散液の
形態にある)を塗布することによって形成される。次いで、それを染料に対して
親和性のある滑らかな表面を有する材料(以下、受像シートと呼ぶ)と接触させ
、そして図柄情報信号(pattern information Signal)に従ってその転写シート
の裏面の不連続の領域を約1〜20ミリ秒(msec)の間300℃までの温度で選
択的に加熱することにより、染料をその転写シートから選択的に転写し、それに
よって転写シートの選択的加熱領域からの染料が転写シートから受像シートに拡
散しそして転写シートに熱をかけた図柄に応じてその上に図柄が形成される。図
柄の形状は加熱される不連続の領域の数及び位置により定まり、不連続の領域に
おける濃淡の度合いはそれを加熱する時間及び到達温度により定まる。
加熱は、必ずしもそうではないが、一般的には発熱素子のラインによりもたら
され、受像シートと転写シートがその上を一緒に通過する。各素子の全体形状は
概ね正方形であるが、この素子は場合によってはその中央部が裂かれ、隣接する
回路からそれを通る電流により抵抗で加熱されてもよい。各素子は普通は画像情
報の素成分に対応しており、これを通常は図柄情報信号に応答して電気パルスに
より300〜400℃に20msec未満、好ましくは10msec未満で別々に加熱す
ることができる。この加熱時間の間に、素子の温度は約5〜8msecかけて約30
0〜400℃に上がることになる。温度及び時間が増加すると、より多くの染料
が転写シートから受像シートに拡散するので、その受像シート上の不連続の領域
上に転写される染料の量及び濃淡の度合いは、転写シートの裏面と接触させなが
ら素子を加熱する時間に依存することになる。
熱は個別に電圧を加えられる素子を介して非常に短時間だけかけられるので、
この方法は転写される染料の位置及び量の点で選択的であり、転写された染料は
受像シートの表面に密接したままである。
電子的図柄情報信号に応答して光源の焦点を加熱すべき転写シートの各領域上
に合わせることができる光誘導熱転写(LITT又はL2T2印刷)印刷機内の
光源を用いて、別の方法で加熱を行うことができる。転写シートからの染料の移
行を行わせる熱は、この誘導光のための吸収剤を有する染料シート内で発生する
。この吸収剤は、用いられる光源に応じて選択されるものであって、光が照射さ
れ
る箇所で、光を受像シート上の対応する位置に染料を転写するのに十分な熱エネ
ルギーに転換する。誘導光は通常は狭い波長バンドを有し、可視域であっても赤
外域であっても紫外域であってもよいが、赤外発光レーザーが特に適している。
合成繊維用材料上へのTTPと滑らかなポリマー性表面上へのDDTTPの間
には有意な区別があるので、前者の方法に適する染料は後者には必ずしも適して
いないことは明白である。
DDTTPでは、転写シートの印刷表面と受像シートの受像表面の間で全印刷
領域にわたって良好な接触が達成されるように、転写シートと受像シートの表面
が平らであることが重要である。というのは、染料は、実質的には、溶融状態で
濃厚相内で拡散することにより転写されると考えられるからである。かくして、
印刷領域のあらゆる部分にわる良好な接触を妨げる塵でできた疵又は点は、転写
を阻害して受像シート上の良好な接触が妨げられた領域上に未印刷部分をもたら
すことになる。この領域は塵でできた疵又は点よりもかなり大きくなり得る。転
写シート及び受像シートの支持体の表面は、通常は、染料に対してかなりの親和
性を有する滑らかなポリマー性の、特にポリエステル性のフィルムである。
DDTTP用の染料の選択において重要な規準は、その熱的性質、耐光堅牢性
の如き堅牢性、及びDDTTP法における支持体内への拡散による転写の容易性
である。好適に行うために、染料又は染料混合物が転写シートにかけられた熱に
比例して一様かつ速やかに転写する結果、受像シートに転写される量がかけられ
る熱に比例するようにすべきである。転写後は、その染料は好ましくは移染又は
結晶化すべきではなく、かつ、印刷された受像シートの正常な取り扱いで遭遇し
そうな光、熱、摩擦、特に油ぎった又は脂ぎった物体、例えば、ヒトの指での摩
擦に対して優れた堅牢性を有するべきである。染料は、用いられる温度で、つま
り100〜400℃で、短い時間内、一般的には<20msecで、転写シートから
受像シートに移れるように十分に移動性であるべきであるので、好ましくは、イ
オン性及び/又は水溶性基を含まず、従って水及びエタノールの如き水性媒質又
は水混和性媒質に易溶性ではない。多くの潜在的に適する染料は、印刷工業で普
通に用いられ、従って印刷工業に許容できる溶媒、例えば、イソプロパノールの
如きアルコール;メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(M
IBK)及びシクロヘキサノンの如きケトン;テトラヒドロフランの如きエーテ
ル;及びトルエンの如き芳香族炭化水素にも易溶性ではない。染料を適する媒質
中の分散液として塗布しても支持体に適する溶媒中の溶液として溶液から塗布し
てもよい。受像シート上への高い光学濃度(OD)の可能性を達成するには、染
料がインキ媒質中に易溶性であるか又は易分散性であるのが望ましい。溶液から
転写シートに塗布された染料が、かなりの時間転写シート上に非晶質層のままで
あるように、結晶化に抵抗性であることも重要である。結晶化は転写シートと受
像シートの間の良好な接触を妨げる疵を作るだけでなく、むらのあるプリントの
原因にもなる。
次の特性の組み合わせが、DDTTPに用いる染料に強く望まれている。
理想的なスペクトル特性(狭い吸収曲線)及び高い吸光係数。
適当な熱化学的特性(高い熱安定性及び熱での効率的転写性)。
印刷に際しての高い光学濃度。
印刷工業に許容できる溶媒中での良好な溶解性:これは、溶液でコーティン
グされた染料シートを製造するのに望ましく、一方、許容できる媒質中での良好
な分散性は、分散液でコーティングされた染料シートを製造するのに望ましい。
安定な染料シート(染料の移染及び結晶化に抵抗性であること)。
受像シート上での安定な印刷画像(熱、移染、結晶化、脂、摩擦及び光に抵
抗性であること)。
DDTTPは、適当な支持体上に画像を印刷するのに用いられる。DDTTP
において良好な耐光堅牢性を達成することは、ポリエステル受像シートの表面に
密着しているという染料の好ましくない環境の故に極めて難しい。ポリエステル
繊維用の多くの既知染料は、TTPにより適用する場合には繊維内への染料浸透
性が良好であるので、ポリエステル繊維上で高い耐光堅牢性(1〜8の国際等級
で>6)を有するが、DDTTPにより適用する場合には支持体内への乏しい浸
透性の故に、同じ染料が、ポリエステル受像シート上には非常に乏しい耐光堅牢
性しか示さない。慣用的な染色技術で用いるために、電子吸引性基を染料分子内
に導入することにより、染料の耐光堅牢性を向上させることが知られているが、
これは、一般的には、望ましくないといえる低色素シフトにより達成される。本
発明は、染料の吸収極大を実質的に変化させるという不利益なしに、DDTTP
において染料の耐光堅牢性を向上させる便利な手段を提供することにより、この
問題を解決するものである。
本発明によれば、下式(1)の染料を含むコーティングを有する支持体を含む
熱転写シートが提供される。
〔式中、
Yは、−H、アルキル、アルコキシ、−NHCOアルキル、−NHCOアリ
ール、−NHSO2アルキル又は−NHSO2アリールであり;
環Aは、−N=N−、−Y及び−N<基の他には置換されていないか又は1
〜3の置換基により置換されていてもよく;
R1及びR2は、それぞれ独立にアルキルであり;
R3は、−H、アルキル、アリール、−SO2アルキル、−Sアルキル、−S
アリール、ハロゲン、ピリジル又はR6O(CH2)n−(R6はアルキル、アシル
、アリールであり、nは1〜10である)であり;
R4は、−CN、−NO2、−SCN又は−COOアルキルであり;そして
R5は、式(2):
(式中、
Zは、−H、アルキル、アルコキシ、−NHCOアルキル、−NHCOアリ
ール、−NHS02アルキル又は−NHSO2アリールであり;
環Bは、−N=N−、−Z及び−N<基の他には置換されていないか又は1
〜3の置換基により置換されていてもよく;
R7及びR8は、それぞれ独立に−H又は場合により置換されたアルキルであ
り;
R9は、独立にR4で定義したいずれかの基であり;
RI0は、独立にR3で定義したいずれかの基であり;
Lは、結合基である。)
の基であるか、又はR5はアルキルである。但し、R5がアルキルであるときは
R3はピリジル又はR6O(CH2)n−である。〕
R1〜R10、Z又はYにより表されるいずれか1つの基がアルキル基であるか
又はアルキル基を含有する場合は、そのアルキル基は、好ましくはC1-10アルキ
ル、より好ましくはCl-6アルキル、特にC1-4アルキルであって、かかるアルキ
ル基は直鎖状であっても分枝状であってもよいアルキル基である。
R3、R6、R10、Y又はZがアリール基であるか又はアリール基を含有する場
合は、そのアリール基は、好ましくはフェニル又はナフチル、より好ましくはフ
ェニルである。
R3又はR10がハロゲンである場合は、それは、好ましくは−F、−C1又は
−Brである。
R3又はR10がピリジルである場合は、それは2−ピリジルであっても3−ピ
リジルであっても4−ピリジルであってもよい。
R6がアシルである場合は、それは、好ましくはC1-10アルキルCO−又はフ
ェニルCO−であり、より好ましくはC1-4アルキルCO−又はフェニルCO−
である。nは好ましくは1〜2である。
Y又はZがアルコキシである場合は、それは、好ましくはC1-6アルコキシ、
より好ましくはC1-4アルコキシである。
Lにより表される結合基は、好ましくはアルキレン、フェニレン、又は下式(
3)のエステル基である。
〔式中、
mは1〜6であり;
pは0〜4であり;
qは1〜6である。〕
mは、好ましくは2〜4である。qは、好ましくは2〜4である。
Lがアルキレン基である場合は、それは、好ましくはC1-12アルキレン、より
好ましくはC1-10アルキレン、特にC2-10アルキレンであって、かかるアルキル
基は分枝状であっても直鎖状であってもよいアルキレン基である。アルキレン基
が分枝状であるときは、その分岐は、好ましくはLが結合している窒素原子に対
してα位である。
R1〜R10、Y、Z、L、環A又は環Bにより表される基は、場合により置換
されていてもよく、その場合による置換基は、好ましくは−CN、−SCN、−
NO2、−F、−Cl、−Br、−SC1-4アルキル、−Sフェニル、C1-4アル
コキシ及び−COOC1-4アルキルから選ばれる。
式(1)の化合物における少なくとも1のα分岐アルキル基の存在は、その化
合物の耐光堅牢性を向上させる。
式(1)の染料の好ましい下位グループでは、R1はC1-4アルキル、特にメチ
ル又はエチルであり、R2はC1-6アルキルであり、R3はC1-4アルキル、ピリジ
ル又はR6O(CH2)n−(R6はC1-4アルキル、C1-4アルキルCO−、フェニル
CO−又はフェニルであり、nは1〜2である)であり、R4は−CNであり、
R5は、LがC1-10アルキレンであり、R7及びR8がそれぞれ独立に−H又はC1 -6
アルキルであり、R9が−CNであり、R10がC1-4アルキル、ピリジル又はR6
O(CH2)n(R6及びnは上で定義した通りである)である式(2)の基であり
、Y及びZはそれぞれ独立に−H、C1-4アルキル、−NHCOC1-4アルキル又
は−NHSO2C1-4アルキル、特に−H、−CH3、−NHCOCH3又は−NH
SO2CH3であり、そして環A及びBは更なる
置換基を有さない。
式(1)の染料の更に好ましい下位グループでは、R1はC1-4アルキル、特に
メチル又はエチルであり、R2はC1-6アルキルであり、R3はピリジル又はR6O
(CH2)n(R6はC1-4アルキル、C1-4アルキルCO−、フェニルCO−又はフ
ェニルであり、nは1〜2である)であり、R4は−CNであり、R5はC1-6ア
ルキルであり、Yは−H、C1-4アルキル、−NHCOC1-4アルキル又は−NH
SO2C1-4アルキル、好ましくは−H、−CH3、−NHCOCH3又は−NHS
O2CH3、特に−CH3であり、そして環Aは更なる置換基を有さない。
式(1)の染料の特に好ましい下位グループは、R1がメチル又はエチルであ
り、R2がC1-4アルキルであり、R3がピリジル又はC1-4アルキルOCH2−で
あり、R4が−CNであり、R5がC1-4アルキルであり、そしてYがC1-4アルキ
ルであるグループである。
式(1)の染料は新規であるので、本発明の更なる特徴を形成する。
本発明の染料は、アゾ染料を調製するための慣用的な方法により、例えば、米
国特許第4960873号に開示された方法により調製することができる。
D2T2印刷においで上記した使用に加えて、式(1)の本染料は、種々の用
途のための、特にインキジェット印刷に用いるインキにおける着色剤として、電
子複写に用いるトナーとして、及びポリエステルやそのブレンド物の如き織物用
材料を染色及び印刷するための染料として有用である。コーティング
コーティングは、好適には、式(1)の染料又はその混合物と共にバインダー
を含む。バインダーの染料に対する比率は、染料と支持体を良好に接着させそし
て保存中の染料の移染を防ぐには、好ましくは少なくとも0.7:1、より好ま
しくは1:1〜4:1、特に好ましくは1:1〜2:1である。
このコーティングは、硬化剤、保存剤等の如き他の添加剤も含有することがで
き、これら及びその他の成分はEP133011A、EP133012A及びE
P111004Aにより十分に記載されている。バインダー
バインダーは、染料を支持体に結合させるのに適し、インキ媒質、即ち染料と
バインダーを転写シートに塗布する際の媒質中で許容できる溶解性を有するどの
ような樹脂性又はポリマー性材料であってもよい。しかしながら、転写シート上
で染料がバインダー中の固体溶液として存在できるように、染料がバインダー中
で可溶性であるのが好ましい。この形態では、それは一般に保存中の移染及び結
晶化に対してより抵抗性である。バインダーの例には、エチルヒドロキシエチル
セルロース(EHEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、エチルセ
ルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース及び酢酪酸セルロースの如きセル
ロース誘導体;澱粉の如き炭水化物誘導体;アルギン酸誘導体;アルキッド樹脂
;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニル
アセトアセタール及びポリビニルピロリドンの如きビニル樹脂及びビニル誘導体
;三菱ガス化学からのAL−71及びBayerからのMAKROLON 2040(MAKROLONは商
標である)の如きポリカーボネート;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル
及びスチレン−アクリレートコポリマーの如きアクリレート及びアクリレート誘
導体から誘導されるポリマー及びコポリマー、ポリスチレンの如きスチレン誘導
体、ポリエステル樹脂、メラミンの如きポリアミド樹脂;ポリ尿素及びポリウレ
タン樹脂;ポリシロキサンの如きオルガノシリコーン、エポキシ樹脂、及びトラ
ガカントゴムやアラビアゴムの如き天然樹脂が含まれる。上の樹脂の2又は3以
上の混合物も用いることができ、これら混合物は、好ましくは、ビニル樹脂又は
ビニル誘導体及びセルロース誘導体を含み、より好ましくは、この混合物は、ポ
リビニルブチラール及びエチルセルロースを含む。上に挙げた市販の許容できる
有機溶媒のうちの1種に可溶性であるバインダー又はバインダーの混合物を用い
るのも好ましい。
式(1)の染料又はその混合物は、その濃淡の度合いがかけられた熱の量に正
確に比例する一様なプリントを受像シート上にもたらす良好な熱的性質を有する
ので、真のグレースケールの着色を得ることができる。
式(1)の染料又はその混合物は、強い吸収特性も有するので広い範囲の溶媒
、特に印刷工業で広く用いられそして許容される溶媒、例えば、イソプロパノー
ル及びブタノールの如きアルカノール;トルエンの如き芳香族炭化水素;テトラ
ヒ
ドロフランの如きエーテル;及びMEK、MIBK及びシクロヘキサノンの如き
ケトンに可溶性である。また、染料の混合物を高剪断混合により水の如き適当な
媒質中に分散剤の存在下で分散させることができる。こうすると、安定でありか
つ溶液又は分散液でコーティングされた染料シートの製造を可能にするインキ(
溶媒+染料混合物+バインダー)が生成する。後者は安定であるので、長期保存
中も染料結晶化又は移染に対して抵抗性である。
好ましい溶媒中での強い吸収特性及び良好な溶解性の組み合わせで、受像シー
ト上での式(1)の染料又はその混合物の良好なODを達成できる。本発明の転
写シートは、良好な安定性を有するので良好なODを有しそして光及び熱の両方
に堅牢な受像シートをもたらす。支持体
支持体は、好ましくは少なくとも1の滑らかで平らな表面を有し、かつDDT
TPで用いられる温度、即ち400℃までの温度に20msecまでの間耐えること
ができ、更に一方の面に加えられた熱を他方の面の染料に伝えてかかる短時間内
に受像シート上に染料を転写するのに十分な薄さの如何なるシート材料であって
もよい。適する材料の例は、ポリマー、特にポリエステル、ポリアクリレート、
ポリアミド、セルロース及びポリアルキレンフィルム、その金属被覆体であって
、これらにはコポリマーが含まれ、そして積層フィルム、特に染料が堆積される
滑らかで平らなポリエステル受容層が組み入れられている積層体である。コンデ
ンサー紙の如き、一様な厚さであり滑らかなコーティングされた表面を有する薄
い(<20ミクロン)高品質紙も適している。好ましくは、積層支持体は、ポリ
エステルから熱源を離してDDTTP操作の間のそれの溶融を防ぐために、その
積層体の受容層とは反対面に、印刷工程の間に熱硬化性樹脂、例えばシリコーン
、アクリレート又はポリウレタン樹脂の如き溶融塊を一緒に保持する裏面コーテ
ィングを含む。支持体の厚さはある程度までその熱伝導率に依存するが、好まし
くは20μm未満、より好ましくは10μm未満である。DDTTP操作
本発明の更なる特徴によれば、式(1)の染料又はその混合物を含むコーティ
ングを含む転写シートを受像シートと接触させてそのコーティングがその受像シ
ートに接触するようにし、そしてその転写シートの裏面の不連続の領域に選択的
に熱をかけることにより、そのシートの加熱された領域に対して反対の面の染料
を受像シートに転写することを含む染料拡散熱転写印刷法が提供される。
選択した領域での加熱は、2〜10msecで200〜450℃、好ましくは20
0〜400℃に加熱できる発熱素子と接触させることにより行うことができ、そ
れにより、曝す時間に依存して染料混合物を150〜300℃に加熱することが
できる。そして、それによって実質的に拡散により転写シートから受像シートへ
の転写を起こすことができる。適用箇所でのコーティングと受像シートの間の良
好な接触は、転写を行うのに必須である。印刷された画像の濃さは、転写シート
を加熱する時間に連関する。受像シート
受像シートは、ポリエステルシート材料、特に白色ポリエステルフィルム、好
ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)のシート材料を含むのが好都合
である。式(1)の幾つかの染料はPET製の織物用材料を着色することで知ら
れているが、染色又は印刷による織物用材料の着色は、染料がPETの中に浸透
してその中で固定されるような時間及び温度条件下で行われる。熱転写印刷では
、時間が短くてPETの浸透はあまり効果がないので、その支持体に、好ましく
は染料が適用される面に、染料混合物がその中により容易に拡散して安定な画像
を形成する受容層を備える。同時押出コーティング法によっても溶液コーティン
グ法によっても適用され得るそのような受容層は、PET支持体よりも染料に対
してより透過性である変性ポリエステル又は別のポリマー材料の薄層を含むこと
ができる。受容層の性質は、得られるプリントの濃淡の度合い及び質にある程度
まで影響を及ぼすが、式(1)の染料は、あらゆる具体的な転写シート又は受像
シートに、特に強くて質(例えば、堅牢性及び保存性)の良いプリントを与える
と共に、熱転写印刷法のために提案された類似の構造の他の染料と比較して向上
した耐光堅牢性を有することが分かった。受像シート及び転写シートのデザイン
は、EP133011及びEP133,012に更に議論されている。
以下の実施例及び比較例により本発明を更に説明する。この際、全ての部及び
パーセンテージは重量基準である。インキの調製
テトラヒドロフラン中のエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)の6
%w/w溶液5gと4.85gテトラヒドロフラン(THF)を含有する溶液中に
0.15gの染料を溶解させることによりインキを調製した。転写シート TS1
インキ1を6μmポリエステルフィルム(支持体)に線巻金属Meyer棒(K棒N
o.3)を用いて塗布してこのシートの表面上にインキの未乾燥塗膜を作ることに
よりこれを調製した。次いで、このインキを熱風で乾燥してこの支持体の表面上
に乾燥塗膜を得た。印刷された受像シート RS1
TS1のサンプルを受像シートと接触させた。この受像シートは、TS1の印
刷表面と接触する面に受容コーティング層を有する白色ポリエステルベースを基
板とする複合構造を含む。この受像シートと転写シートを転写印刷機のドラム上
に一緒に置いて、0.37W/絵素の一定電力を用いて2〜10msecの時間選択
的に加熱された近接した素子のマトリックス上を通過させ、それによって、加熱
時間に比例した量の染料を、転写シート上の熱い素子と接触している位置におい
て、転写シートから受像シートに転写した。素子の配列上を通過させた後、転写
シートを受像シートから離した。インキ、転写シート及び印刷された受像シートの評価
インキの安定性を目視検査によって評価した。インキは、周囲温度で2週間析
出物がなければ安定であるとみなした。
受像シートの耐光堅牢性は、キセノン光に露光する前及び後の受像シートの色
差を次のようにして計算することにより評価した。
受像シートの半面をカバーで覆ってから、Atlas Ci35ウェザロメーターで0.
8W/m2のキセノンアーク光に45℃のブラックパネル温度及び約50%の相
対湿度で24時間露光した。受像シート上の露光領域と未露光領域の間の10ms
ecのプリント時間に対応する色差(ΔE)を、次の方程式を用いるミノルタ彩度
メーターを用いて測定した。
式中、L*1、a*1及びb*1はキセノン光への露光前の値であり、L*2、a*2及び
b*2は露光後の値である。ΔEの値が小さければ小さいほど、受像シート上の染
料はより耐光堅牢性である。
以下の実施例1と2及び比較例AとBにより、本発明を更に説明する。
インキ及び転写シートを調製するために及び受像シート上への印刷のために用
いた染料は、置換基が表1に示した通りである式(1)の染料である。
上記の染料1及び2及びA及びBのそれぞれについて色差(ΔE)を測定した
。その結果を表2に示す。
分枝鎖N−アルキル置換基を有する実施例1及び2における染料は、比較例A
及びBにおける類似の直鎖N−アルキル置換染料よりも低いΔE値を有する。従
って、本発明の染料はより耐光堅牢性である。