【発明の詳細な説明】
メタノール及びアンモニアをモノメチルアミン
及びジメチルアミンに変換するための改良された
ゼオライトZK−5触媒
発明の背景
本発明はメタノール及び/又はジメチルエーテル及びアンモニアをゼオライト
触媒の存在下で接触させるアミン、特にモノメチルアミン及びジメチルアミンの
製造方法に関する。
メチルアミンは一般に工業的にはメタノール及びアンモニアのシリカーアルミ
ナ触媒の存在下における連続反応により製造される。反応体は典型的には蒸気相
で、300℃から500℃の範囲の温度で、そして高圧下で一緒にされる。トリ
メチルアミンが得られる生成物流れの主要成分であり、それより少ない量のモノ
メチルアミンとジメチルアミンとがこれに伴っている。工業的な観点に立てば、
最も価値のある反応生成物は化学中間体としてその広範な工業的用途の点からジ
メチルアミンである。従って、この方法の工業的効率を向上させるのに追求され
た主要な目的はトリメチルアミンに対してジメチルアミン及びモノメチルアミン
の全収率を改善することであった。この目的に対処するため取られた方法にはト
リメチルアミンの再循環、メタノール対アンモニアの反応体比率の調節及び脱水
又はアミノ化反応の触媒種の選択的な使用である。この方法の工業的な重要性か
ら、極めて数多くの特許及び文献への技術的寄稿がなされている。本発明に最も
関連する文献を下記に要約する。
Gier等の米国特許第4,602,112号はメタノール及び/又はジメチルエーテル及
びアンモニアを約0.2から約1.5までのC/N比を与え
るに十分な量で、約250℃から約450℃までの温度で、K,Cs−ZK−5
触媒から得られる触媒量の酸性H−ZK−5ゼオライトの存在下で反応させるこ
とからなるジメチルアミンの製造方法を開示している。
Gier等の米国特許第4,806,689号は触媒量の酸性ゼオライトロー(zeolite rho
)の存在下における上述のジメチルアミンの製造方法を開示している。
Abrams等の米国特許第4,814,503号は水蒸気及び/又はアンモニアの存在下で
加熱し、ジメチルアミンへの触媒選択度及び触媒活性が改良された触媒ゼオライ
トロー、ゼオライトZK−5又はそれらの組み合わせを使用する上述のGierの’
689法の改良を開示している。
Kerrの米国特許第3,247,195号は、酸化物Na2O、Al2O3、〔(CH3)2(CH2CH2
)3N2〕O、SiO2及びH2Oの混合物から作られ、そのX線回折パターンにより
確認されたゼオライトZK−5の組成及び製造方法を初めて開示している。
Robsonの米国特許第3,720,753号はK及びCsから作られるゼオライトZK−
5の製造を開示している。Robsonの米国特許第3,904,738号はゼオライトローの
製造を開示している。
Shannon等のJourna1 of Catalysis 115(1989)は深床及び浅床か焼法で製造
したZK−5触媒の物理的及び触媒的性質及び選択性への影響を記述している。
Verduijnの米国特許第4,994,249号は合成ゲル中でカリウム及びストロンチウ
ムを使用して作られる10までのSiO2/Al2O3比を持つZK−5の製造を開示し
ており、この物は水素化分解、改質及び分離用触媒として有用であることが認め
られている。
上述の議論が示唆するように、トリメチルアミンの生成を抑え、ジメチルアミ
ン及びモノメチルアミンの収率を最適にする新規な方法の改良は化学工業に重大
な関心を呼ぶものである。
発明の要旨
本発明はメタノール及び/又はジメチルエーテル及びアンモニアを約0.2か
ら約1.5までの炭素/窒素(C/N)比を与えるに十分な量でそして約250
℃から約450℃までの反応温度で、触媒量の酸性ゼオライトZK−5の存在下
で接触させることからなるジメチルアミン(DMA)及びモノメチルアミン(MMA)
の製造方法を提供するものであり、ここでこの酸性ゼオライトZK−5はより伝
統的なK,Cs−ZK−5からよりむしろK,Sr−ZK−5から製造され、そ
してK,Cs−ZK−5に比べて一層減少したトリメチルアミン(TMA)への選
択率及び増加したDMA及びMMAへの選択率をもたらした。K,Sr−ZK−
5から誘導される触媒は約400℃から約700℃までの温度でか焼してH−ZK−5
を得ることができ、好ましいか焼条件は500℃〜600℃である。好ましいメ
チルアミン反応条件は0.5から1.2までのC/N比、300℃から400℃
までの反応温度、10〜500psi(70〜3000kPa)の反応圧力及び0.1〜1.
5時間の空間時間である。
メチルアミン合成に使用する触媒の酸性形体、H−ZK−5は酢酸アンモニウ
ム又は硝酸アンモニウムのようなアンモニウム塩を用いるイオン交換と引き続く
か焼により得られる。触媒の製造において、イオン交換の容易さ、すなわち最も
完全にイオンを除去するために必要な交換の回数は伝統的なK,Cs−ZK−5
よりK,Sr−ZK−5を使用することにより大きく向上した。NH4NO3を用
いる6回の
NH4 +交換でK,Sr系中に0.2K/単位セルのみの残存が得られ、これは1
2回の同様な交換の後2.7(K+Cs)/単位セルが得られたK,Cs−ZK−
5より大幅に改良された。
発明の詳述
ゼオライトはイオン及び水分子により占有された空隙を囲う三次元の骨格構造
を特徴とする複雑なアルミノシリケートであって、前記イオン及び水分子のすべ
てはゼオライトマトリックスの中で有意な自由度をもって動くことができると包
括的に説明することができる。工業的に有用なゼオライトで、水分子は骨格構造
を破壊することなく骨格から除かれるか又はその中で置換することが可能であり
、ゼオライトは下記の式
M2/nO.Al2O3.x SiO2.y H2O
(式中、Mは原子価nのカチオンであり、X≧2及びyはゼオライトの水和状態
の細孔率により決定される数であり、一般に約2から8までである)により表す
ことができる。天然に存在するゼオライトにおいては、Mは主として、通常それ
らの地球化学的豊富さを反映する割合でNa、Ca、K、Mg及びBaを表す。
カチオンMは構造にゆるく結合しており、そして慣用的なイオン交換によりしば
しば他のカチオンにより完全に又は一部分が置換されうる。
ゼオライト構造は角が結合した四面体をなし、四面体の中心にAl又はSi原
子があり、角に酸素原子がある。そのような四面体は4員、5員、6員、8員、
10員及び12員環の種々の組み合わせからなる明確な反復する構造に結合して
いる。生じる骨格は規則正しいチャンネル及びケージ(cage)を構成し、これが
有用な多孔質構造接触作用を付与する。細孔の寸法はゼオライト通路又はケージ
を形成するアル
ミノシリケート四面体の形状により決定され、公称の開口部は6員環では0.2
6nm、8員環では0.40nm、そして10員環では0.55nmである。細孔寸法
は触媒性能にとって決定的であり、なぜならこの特徴が反応体分子がゼオライト
骨格の中に入ることができ、そして出ることができるか否かを決定するからであ
る。実際に、環寸法における極めて僅かな減少がゼオライト構造の中における特
定の反応体又は生成物の動きを有効に妨害し又は阻止しうることが認められてい
る。
ゼオライトの内部への接近を制御する細孔寸法は細孔開口部を形成する四面体
によってのみならず、細孔の中又は近傍におけるイオンの存在又は不存在によっ
ても決定される。ゼオライトAの場合、例えば接近は8員環開口部ならびに6員
環開口部の中又は近傍に位置するNa+又はK+のような1価イオンによって制限
されることがありうるのである。接近は6員環の中又は近傍にのみ位置するCa2+
のような2価イオンにより促進される。従ってK−A及びNa−Aはそれぞれ
約0.3nm及び0.4nmの有効細孔開口部を示すが、これに対してCa−Aは0
.5nmの有効細孔開口部をもつ。
概括的にゼオライトの構造及び特徴把握に関する有用な文献は下記の通りであ
る。
Meier等のAtlas of Zeolite Structure Types(International Zeolite Assn
.1978);Mumption,“Natural Zeolites”(Reviews in Mineralogy 14:1(19
77)に記載);Smith,“0riginand Structure of Zeolites”(Zeolite Chemis
try and Catalysis,ACS Monograph 171(American Chemical Society,1976)
に記載)。ZK−5の一般的特徴
ゼオライトK,Cs−ZK−5はRobsonの米国特許第3,720,753号に
より最初に記述された合成ゼオライトである。この特許の開示はZK−5ゼオラ
イトの合成に関して詳細に述べており、参照により本明細書に組み入れる。ZK
−5の構造は六片形プリズムにより連結された欠稜立方八面体及び0.39nmの
開口部をもつ拡大された二重8員環からなる。ZK−5ゼオライトは下記の式に
より特性を表すことができる。
(K,CS)30Al30Si66O192
本発明ではカリウム及びストロンチウムを使用するゼオライトの製造について
Verduijnの米国特許第4,994,249号により開示された方法を使用しており、この
特許明細書は参照により本明細書に組み入れる。このゼオライトは下記の式によ
り無水状態における特性を表すことができる。
K18Sr1Al20Si76O192
Robson ZK−5に存在するカチオンのK+及びCs+並びにVerduijn ZK−5
にあるK+及びSr2+はH+で交換することができ、またはアンモニウム交換され
た形体(NH4−ZK−5)に変換し、これをその後に高温でか焼して酸形体に変換
することができる。
ゼオライトの酸形体はアンモニウム交換と引き続くか焼、鉱酸又はイオン交換
剤を使用するプロトンによるアルカリイオンの直接交換、そして多価イオンの導
入を含む種々の方法により製造することができる(ゼオライトにおける酸部位の
論議についてはJ.Dwyer,“Zeolite Structure Composition and Catalysis”
(Chemistry and Industry,Apr.2,1984に記載)を参照されたい)。生じる酸
部位は一般にブレンステッド型(プロトン供与性)又はルイス型(電子対受容性
)であると信じられている。ルイス部位はH−ゼオライトの脱ヒドロキシル
化又は多価イオンの存在により現れると信じられている。本発明の酸性ゼオライ
ト触媒には、ブレンステッド及び/又はルイス部位が存在することができる。触媒の製造
本発明はカリウム及びストロンチウムを使用するゼオライトの製造についてVe
rduijnの米国特許第4,994,249号により開示された方法を使用しており、この文
献は参照により本明細書に組み入れる。このZK−5触媒はハイドロクラッキン
グ触媒、リホーミング触媒び分離のための用途に開発された。驚くべきことにこ
の物をメチルアミンの製造に使用するとMMA及びDMAへの大きく向上した選
択率が得られた。触媒をテトラメトキシシランのような物質による被覆を含む方
法(Fetting等の「テトラメトキシシランで処理したZK−5ゼオライト上にお
けるメチルアミンの製造」、Chemical Engineering and Techno1ogy,15(1992
))のみがかかる比較しうるTMAへの低い選択率及び付随してDMA及びMM
Aへの増加した選択率を示した。
ゼオライトZK−5は実質的にRobsonの米国特許第3,720,753号に開示された
方法によりK,Cs形体に合成されるもので、この文献は参照により本明細書に
組み入れる。
ゼオライトローは実質的にRobsonの米国特許第3,904,738号の方法によりNa
,Cs形体に合成され、この文献の関連する開示は参照により本明細書に組み入
れる。
本発明の方法に使用する各々の触媒のH−形体を製造する一つの方法は、K+
とSr2+、K+とCs+、又は(Na+とCs+)イオンをNH4 +イオンに交換し、生成
するNH4 +形体を400℃〜700℃でか焼して脱アンモニアする。ZK−5の
K,Cs形体において、より極度の
交換を行うとより低いCs含量を生じ、これは結果としてより高いDMA選択性
となる。ZK−5におけるアンモニウムのK+,Sr2+及び各種イオンによるイ
オン交換が任意の所定の実験において不完全であっても(典型的には、K,Sr
形体では単位セル当たり0.1〜0.5Kイオン、そしてK,Cs形体では単位セル当
たり1〜5Csイオンが残存する)、イオン交換の生成物は本明細書ではNH4−
ZK−5又はアンモニア化ZK−5と称する。同様に、NH4−ZK−5の脱ア
ンモニアの結果、すべてのNH4 +部位のH+又は他の部位への完全な変換になり
得ない特に試料を低温でか焼した場合でも、得られる生成物は本明細書において
ゼオライトH−ZK−5と称する。同様にゼオライトローはアンモニア化後NH4 +
−ローと称し、そしてか焼後H−ローと称する。イオン交換の容易さは、か焼
前K+とSr2+又はK+とCs+イオンの最大の交換に必要な交換の回数を測る相
対的比較である。
ZK−5及びローの2つの形体の確認は一般にX線粉末回折により行う。観察
したX線ピークの積分された強度はゼオライトの結晶度の指標として使用するこ
とができる。高い強度は高度に結晶性の生成物を示し、一方低い強度は結晶性の
不十分な物質を示す。しかしながら、結晶の大きさが約50nm以下に落ち込むと
、X線回折ピークは巾広くなる(H.P.K1ug及びL.E.Alexander,X-Ray Diffr
action Techniques,Wi1ey-Interscience,New York,1974)。結晶の大きさが
約2〜6nm以下に落ち込むと、ピークは広くなり過ぎて慣用的なアナログ記録式
分光計で検出することは困難になる。
しかしながら、「X線非晶質」ゼオライト結晶子のような測定可能なX線ピー
ク強度を欠くにもかかわらず、形状選択的触媒作用は可能
である(Jacobs等のJ.Chemical Society,Chemical Communications,p.591(1
981))。そのような結晶子の場合、ゼオライトの結晶度は赤外スペクトル、吸
収測定及び触媒形状選択度から明らかである。本発明の酸性ZK−5ゼオライト
は高度に結晶性、不十分な結晶性又はX線非晶質結晶子であることができる。
一般に、か焼温度は実質的にすべてのNH4 +部位がH+又は他の酸部位に変換
されるように十分高くなければならないが、それでも非晶質ゼオライトが著量に
なるに十分な高さであってはならない。所定の試料中のNH4 +の存在は赤外測定に
より決定することができる。過度のか焼はゼオライト結晶構造の崩壊及び非晶質
状態を生じるが、これは上述の「X線非晶質」ゼオライト性物質と区別されるべ
きである。「X線非晶質」ゼオライトは極めて小さなゼオライト結晶子が生じる
ように結晶時間を制限することにより得られる。これらの結晶子は特長的なゼオ
ライト選択性を示すが、一方その大きさの小さいことにより反応体分子の速やか
な進入及び生成物の出て行くことを許容する。工程条件
前に述べたように、本発明の方法はメタノール及び/又はジメチルエーテル(
DME)及びアンモニアを約0.2から約1.5までの炭素/窒素(C/N)比を
与えるに十分な量で、酸性ゼオライトZK−5(K,Srから製造)の存在下で
、約250℃から約450℃までの温度で反応させることを含む。反応圧力は0
.01〜80時間のメタノール/DME空間時間と共に1〜1000psi(7〜7
000kPa)の間で変化することができる。この結果得られるメタノール及び/又は
DMEのメチルアミンへの変換率は一般に85%(モル基準で)を超
え、そしてジメチルアミンへは一般に40%より大きい。その上、トリメチルア
ミンへの選択率と収率は抑制される。かくして本発明の工程条件下でジメチルア
ミンのモル収率は一般に40%を超え、そしてトリメチルアミンのモル収率は3
0%より少ない。
本発明の方法を実施する場合監視すべき工程の変数はC/N比、温度、圧力及
びメタノール/DME空間時間を含む。後者の変数は工程反応装置に導入される
触媒の質量をメタノール及びDMEの質量流量で割って算出する(触媒質量/時
間当たり供給されるメタノール+DME質量)。
一般に、工程温度が低すぎると、反応体のジメチルアミン及びモノメチルアミ
ンへの変換率が低くなる。工程温度の上昇は通常触媒活性を高めるが、温度が過
度に高いと平衡変換及び触媒の失活が起こりうる。好ましくは、反応温度を30
0℃から400℃の間に維持し、この範囲内でより低い温度に保つのが触媒失活
を最小にするために好ましい。比較的低い圧力においては、生成物はさらに精製
するためそれらを凝縮するために冷却する必要があり、工程全体に対して費用を
付加する。しかしながら、過度に高い圧力は費用のかかる壁の厚い反応容器を必
要とする。圧力は10〜500psi(70〜3000kPa)に維持するのが好ましい。短
いメタノール/DME空間時間は低い変換率を生じ、そしてモノメチルアミンの
生産に好都合になる傾向がある。長いメタノール空間時間は効率の悪い触媒の使
用か又は極めて高いメタノール/DME変換における生成物の平衡分布の生産か
のいずれかの結果になる。一般に0.01〜80時間のメタノール/DME空間
時間が良好であり、0.10〜1.5時間のメタノール/DME空間時間が好ま
しい(0.013〜100gのメタノール+DME/触媒のg/時間のメタ
ノール/DME空間時間に相当し、好ましくは0.67〜10gのメタノール+DME/触媒
のg/時間である)。
メタノール及び/又はジメチルエーテルのアンモニアに対する反応体モル比は
本明細書ではC/N比(Cのg原子/Nのg原子)として表すが、これは本発明
の方法にとって決定的に重要である。C/N比が減少するとモノメチルアミンの
生産は増加する。C/N比が増加するとトリメチルアミンの生産が増加する。高
いC/N比においては、触媒失活も大きい。従って、最良の結果を得るためには
、本発明を実施する場合C/N比は0.2〜1.5、そして好ましくは0.5〜
1.2に維持すべきであろう。
本発明の方法の効率はメタノール及び/又はDMEのメチルアミンへの全変換
率及びジメチルアミン生産の選択率によって測定される。例えば、メタノールを
単一の反応物として使用する場合、全変換率は変換されなかったと考えられる生
成物混合物中のメタノールの量(モルで)を供給反応物中の量と比較することに
より求められる。従ってパーセントで表す全変換率は下式により与えられる。
パーセントで表すメタノールのメチルアミンへの変換率は下式により与えられ
る。
パーセントで表すメタノールのモノメチルアミン(MMA)への変換率は下式
により与えられる。
同様に、パーセントで表すメタノールのジメチルアミン(DMA)への変化率
は下式により与えられる。
そして、パーセントで表すメタノールのトリメチルアミン(TMA)への変化
率は下式により与えられる。
最後に、DMAへの選択率は生成物組成の分析により計算される。従って、パ
ーセントで表すDMAへの選択率は下記の式により与えられる。
効率的な操作のためには、触媒は高い変換率(87〜98%)及び0.5〜1.2
のC/N比において選択的でなければならない。
本発明の方法を実施する場合、ゼオライト触媒は温度及びこの方法に使用する
他の条件に対して抵抗性であるその他の物質を併用することができる。そのよう
な母材物質には粘土、シリカ及び金属酸化物のような合成又は天然物質が含まれ
る。
異なる試料の選択率の比較は同様の変換率で行うべきであり、なぜなら選択率
は変換率と共に変化するからである。低い変換率ではMMAの生産に好都合であ
り、極めて高い変換率では平衡分布に接近し、従ってTMA生産が増加する結果
となる。
当初議論したように、選択率触媒をコーティングにより改質することによりさ
らに改良することができ、その例はBergna等の米国特許第4,683,334号及び4,752
,596号に記述されており、この文献は参
照により本明細書に組み入れる。とりわけ、選択率を改良するため、K,Srか
ら製造されたH−ZK−5のコーティングを次の方法により行なうことができる
。(1)触媒の試料を周囲雰囲気にさらし、そしてテトラエチルオルソシリケー
ト(TE0S)に2時間浸漬する:(2)試料を濾過し、そして23℃で一晩乾燥す
る;(3)その後試料を窒素気流中、550℃で3時間加熱する。先行する処理
はケイ素、アルミニウム、ホウ素及びリンから選ばれる少なくとも1つの元素を
含む1つ以上の化合物を用いて実行し、実質的に元素の少なくとも0.05重量
%をH−ZK−5の外面に付着させることができる。
要約すると、本発明は、K,Sr−ZK−5に比較してDMA及びMMAへの
改良された選択率、及びTMA及びDMEへの減少した選択率をもたらすK,S
r−ZK−5を使用するメチルアミンの製造方法を提供する。下の表1に示すよ
うに、K,Sr−ZK−5については、より望ましくない成分TMAへの選択率
は1%であり、あるいはK,Cs−ZK−5から製造した比較試料Aの最良の性
能に対して6分の1の低さである。これは市場環境がTMAをほとんどあるいは
全く要求しない場合、著しい商業的利点となるものである。このTMAの減少は
工程中でメチルアミン製品を分離する分離用カラムへの負荷を大幅に減少させる
。さらに、触媒の製造におけるイオン交換の容易さが大幅に向上し、か焼前イオ
ンの最大交換に必要な交換回数がより少なくなる。K,Sr−ZK−5の付加的
な利点には改善された経済性が含まれ、K,Sr−ZK−5の費用はK,Cs−
ZK−5のそれの約1/8である。
本発明の方法は、次の実施例を参照してさらによく理解することができ、ここ
では別記しない限りすべての温度は摂氏(℃)で表され、そ
してすべての百分率は重量による。組成を決定する場合、単位セル当たり192
の酸素原子が存在すると仮定した。分析により存在する種々のカチオンの相対的
量を決定し、そして残りの正に荷電する化学種は水素とみなした。
実施例 1
K,Sr−ZK−5の製造及びメチルアミン反応におけるその使用
ゼオライトH−ZK−5を概略Verduijnの米国特許第4,994,249号の方法によ
り製造した。製造の第一段階は18gの熱KOHにAl(0H)3 9.7gを溶解する
ことであった。次にSr(0H)2・8H2O 1.7gを溶解し、次いで2つの混合物を合
一した。SiO2を添加すると堅いゲルを生じ、これをテフロン(R)瓶に移した。
次いで混合物を自生圧下、150℃で91時間加熱した。その後、生成物を濾過
し、水で洗浄し乾燥した。この物質について得られたX線回折パターンはVerdui
jnの米国特許第4,994,249号に開示の知見と一致した。
生成物は10%NH4NO3溶液をゼオライトg当たり溶液10ml使用し、90℃、
1時間で6回交換した。生成物は各々の交換後溶液から分離し、各々の交換の都
度新しいNH4NO3を使用した。次いで結晶を100℃で一晩乾燥した。分析の結果K0. 2
(NH4)19.8Si76.0Al20.0O192の単位セルが得られた。か焼は炉の中の深さ1イン
チ(2.5cm)の床で、500℃で8時間行った。その結果酸性ゼオライトH−Z
K−5が得られた。
反応装置で使用する前、ゼオライトを20000psiでピレットに圧縮し、粉砕し、
そしてASTM標準20番ふるいを通過するがASTM標準40番ふるいを通過
しない画分を得た。得られた触媒1gを直径0.25インチ(0.64cm)、長さ18〜
20インチ(45.7〜50.8cm)のステン
レス鋼U字管反応装置に入れた。最初に、反応装置を流動砂浴中で反応温度に加
熱した。反応圧力を工業的製造条件と平行する200psiに維持した。反応物の
メタノール及びアンモニアを予熱器に約1のモル比で供給し、蒸発させ、次いで
反応装置に通し、触媒試料と接触させた。空間時間〔触媒のg/(1供給される
メタノール+DMEC7)g/時間)〕は42.2ないし5.3分の間で変化し
た。反応装置流出液をガスクロマトグラフィーによりアンモニア、ジメチルエー
テル(DME)、メタノール、水、並びにモノ、ジ及びトリメチルアミンにつき分
析した。メタノール変換率90%における各メチルアミン化学種、並びにDME
への変換の選択度百分率を下の表1に示す。
比較実施例A
K,Cs−ZK−5の製造及びメチルアミン反応におけるその使用
ゼオライトK,Cs−ZK−5を実質的にRobsonの米国特許第3,720,753号の
実施例3に記述の方法により製造した。KOH 53g、Cs0H 36g及び水90g
の混合物を100℃に加熱し、この時Al(0H)3 39gを添加した。ポリプロピレン
容器中で混合物を室温に冷却し、そしてコロイド状シリカ(LudoxR HS-40)29
5gを添加して500mlにした。次いで試料を5日間加熱し、水1000mlで4回洗
浄し、そして
110℃で乾燥した。
生成物は実施例1に記述と同じ方法で交換したが、但し10%NH4NO3を用
いて6回交換の代わりに12回の交換を行った。分析の結果、K0.6CS2.1(NH4)19 .3
Si73.9Al22.1O192の単位セルが得られた。か焼は炉の中の深さ1インチ(2.5c
m)の床で、500℃で8時間行った。その結果酸性ゼオライトH−ZK−5が
得られた。得られた製品のX線回折パターンはK,Cs−ZK−5について特許
に示されたそれと同じであった。
次いで、試料を実質的に実施例1の記述と同様の手順で、300℃及び325
℃の反応温度で触媒性能を評価した。表1に示す結果は比較触媒の選択率を例示
する。
比較実施例B
ゼオライトローのメチルアミン反応における使用
ゼオライトローを実質的にRobsonの米国特許第3,904,738号に記述の手順に従
って製造した。触媒は深さ1/2インチ(1.3cm)の床で600℃でか焼した。次い
で試料を実施例1に記述と実質的に同様の手順で触媒性能を評価した。表1に示
す結果は比較触媒の選択率を例示する。