JPH08502887A - ホップ酸による食品病原体の阻害 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 食品中にホップから抽出されたベータ酸６〜50ppm、好ましくは６〜15ppmを導入することによる、食品病原体とくにリステリア・モノシトゲネシスによる汚染からの食品の保護。

Description

【発明の詳細な説明】 発明の名称 ホップ酸による食品病原体の阻害発明の背景 本発明は、人での消費が意図された食品中におけるリステリアおよび他の食品 病原体の制御のための、ホップから抽出されるベータ酸の使用に関する。 最近の研究から、リステリア種（Listeria）とくにリステリア・モノシトゲネ シス（Listeria monocytogenes）によって起こされるヒトでのリステリア症は、 様々な種類の食品、とくにソフトチーズおよびパテならびにハムおよび他のプレ パッケージ食用獣肉および鳥肉製品の摂取に関連することが明らかにされた。PH LS食品チェーンの16の公衆衛生研究所での調査、“Listeria Monocytogenes inP repacked Ready-To-Eat Sliced Meat”，S．VelaniおよびR．J．Gilbert，PHLS Microbiology Digest，７巻（1977）参照。 ホップ酸およびそれらの関連酸は以前から細菌阻害剤として認識されてきた。 さらに詳しくは、ホップ酸および樹脂が、グラム陽性細菌、たとえばバシラス属 （Bacilli）、コリネバクテリウム属（Corynebacteria）、ジプロコッカス属（D iplococci）、マイコバクテリウム属（Mycobacteria）、ストレプトコッカス属 （Streptococci）、ラクトバシラス属（Lactobacilli）、ストレプトミセス属（ Strepto-myces）に対し主として活性を示すことが明らかにされている。グラム 陰性菌に対する活性ははるかに弱い。TeuberおよびSchmalrek（Arch．Mikrobiol ．94，159−171頁，1973）、ならびにSimpsonおよびHammond（European Brewery Convention，1991）は、その効果が グラム陽性菌における細胞膜の透過性の誘導によること、しかしグラム陰性菌で は血清リン脂質によって不活性化されることを示唆している。発明の要約 本発明は、ホップに含まれる苦味酸の中でベータ酸が、ベータ酸からの顕著な フレーバーが検知される濃度以下で、危険な食品病原体（リステリア）に対して 殺菌剤（bacteriocido）として有用であることの発見に関する。詳細な説明 ビールの製造におけるホップの歴史的な役割の一つすなわち静菌機能は、無菌 発酵および充填によるビールの近代的製造においては、も早意味のないものとな っている。ホップの苦味酸成分、とくにベータ酸に、食用製品における殺菌剤と して予期せぬ有用性が見出されたのである。ホップの成分として見出されている 苦味酸中で最も含量の高い群はアルファ酸およびベータ酸であり、それぞれフム ロンおよびルプロンとも呼ばれている。両者ともビールに苦味を付与するが、そ の強度ではアルファ酸がベータ酸よりはるかにまさっている。したがって、ホッ プエキスの製造業者は、最近、超臨界条件下に液体二酸化炭素番用いる２つの酸 分画の分離技術を開発している。この操作の副生成物は約61重量％のベータ酸を 含有し残部は主としてホップ樹脂の製品である。 ホップ中に含まれるアルファ酸は以下の構造を有する。 アルファ酸は酢酸鉛で沈殿を形成する。 ホップ中に含まれるベータ酸は以下の構造を有する。 ベータ酸は酢酸鉛で沈殿を形成しない。 本発明で使用されるベータ酸はpH5.2またはそれ未満の水溶液には事実上不溶 性であるが、pH7を越えると易溶性である。したがって、ベータ酸は通常、処理 する食品にpH７〜9.5の水溶液として適用される。一般的に、水溶液には６〜100 ppmのベータ酸を含有させ、15〜50ppmが好ましい範囲である。ベータ酸の水溶液 は処理する食品にスプレーとして適用するか、または保存前に食品をベータ酸の 水溶液中に浸漬することもできる。 ホップは醸造過程で、用いられる発酵方法およびホップの品種によって、１〜 ８ｇ／Ｌの割合で麦芽浸出液に添加される。ホップは一般に２〜12重量％のアル ファ酸および１〜10重量％のベータ酸を含有する。したがって、麦芽浸出液のベ ータ酸含量は0.001〜0.08重量％（10〜100ppm）である。本発明に使用するため には一般的に、ベータ酸を抽出して50〜80重量％のベータ酸を含む製品を得て、 これを所望の水溶液を与えるように希釈または濃縮する。 本発明は、ベータ酸に富んだ二酸化炭素抽出分画が食品保存剤として有用であ ることの発見に関する。本発明は食品病原菌のリステリア・モノシトゲネシスを 標的とする。この病原菌は年間約70例の死亡の原因となっていて、これは他の食 品病原菌の場合の数字の２倍を越えている。リステリアの主たる汚染源は食品製 造者であると一般に考えられている。これらの事実が、リステリアの検出および 阻害の新技術の集中的な研究を導くことになったのである。 リステリア・モノシトゲネシスの増殖は、ベータ酸濃度６パーツパーミリオン （ppm）の液体培養液中で完全に阻止される。本発明者らの実験ではこの効果は 静菌的であることが指示されている。本発明者らは、腸炎菌（Salmonella enter itidis）、黄色ブドウ球菌（Staphylococcus aureus）およびクロストリジウム ・パーフリンジェンス（Clostridium perfringens）についても、ベータ酸によ る増殖阻止を認めている。カンピロバクター・スピュトルム・ブブルス（Campyl obactu sputorum bubulus）、サッカロミセス・セルビシア（Saccharomyces cer evisieac）、アスペルギルス・ニジェール（Aspergillus niger）、カンジダ・ トロピカリス（Candida tropi- calis）、ジオトリクム（Geotrichum sp．）、ペニシリウム・グリセオフルバム （Penicillium griseofulvum）、およびフサリウム・トリシンタム（Fusarium t ricintum）にはベータ酸による増殖阻止は見られなかった。 味覚評価によれば、精製されたベータ酸は、15ppmを越えると顕著な風味を、5 0ppmを越えると不快な風味を与える。したがって、ベータ酸は一般に、ステリア ・モノシトゲネシスによる汚染から保護する食品に、食品の重量を基準として６ ppm〜50ppmのレベルで適用され、６ppm〜15ppmが好まし範囲である。 ステリアの汚染を最も受けやすい食品は、チーズとくにソフトチーズ、海産食 品、加工肉類たとえばホットドッグ、ソーセージ、ハム、七面鳥および鶏肉を含 む固体食品である。実施例 実施例１ ベータ酸分画のサンプル1.0ｇを秤量し、大きな試験管に取る。ベータ酸分画 はRohm and Haas & Companyから入手した市販製品で、ホップの超臨界条件下に おける液体二酸化炭素抽出によって得られたものと考えられた。ベータ酸分画は 61％のベータ酸を含有し、残部はほとんどホップ樹脂である。試験管に５mlのヘ キサンを添加し、内容物をベータ酸が溶解するまで撹拌する。 試験管に１Ｍ−NaOH水溶液15mlを加え、試験管の内容物を十分に撹拌する。ア ルカリ性の水相を傾瀉によって分離して保存する。さらに15ml部の１Ｍ−NaOH水 溶液を試験管に加え、試験管の内容物を十分に撹拌した。アルカリ性の水相を傾 瀉によって分離し、上に保存しておいたアルカリ性の水相と合わせる。合わせた アルカリ性水 相を濃塩酸でpH約１の酸性とする。酸性水溶液をついで、分液ろ斗を用い、各12 5mlの石油エーテルで３回抽出する。ベータ酸の溶液を硫酸マグネシウム上23〜2 4℃で乾燥し、ついで45℃で実験室用の させる。油状物をフリーザ一中で−20℃に冷却する。結晶が生成し、これをろ過 して単離し、ついでエーテルから−20℃で再結晶する。ベータ酸は使用時までフ リーザー中に保存する。実施例２ 複数個の試験管に５mlのブレイン−ハート培地（B-H培地）を充填する。ブレ イン−ハート培地中で一夜増殖させたリステリアの培養液100μｌを試験管に接 種する。例１において調製されたベータ酸の溶液を各試験管に添加して、以下の 表Ｉに記載のベータ酸濃度となるようにする。ブレイン−ハート培地と先に調製 した濃度に相当するベータ酸を含有する試験管をもう１セット準備する。後者の 試験管にはリステリアを接種しない。すべての試験管を一緒に35℃で24時間イン キュベートする。 以上から明らかなように、ベータ酸は約5ppmまたはそれ以上のレベルで、リス テリアに有効な静菌作用を有する。 表Ｉにおける“NG/Growth”の列は、プレート計数もしくは培地１mlあたりの 生存コロニー数を示す。“lawn”または“TNTC”は、１mlあたり300を越えるコ ロニーを指示する。実施例３ 100ppmのベータ酸を含有する溶液を以下のように調製する。 実施例１からのベータ酸溶液10mgを45mlの滅菌試験管に充填する。95％エチル アルコール10mlを試験管に加えてベータ酸を溶解させる。得られた溶液を100ml の容量フラスコに添加する。フラスコの内容物をpH8.5のミューラー・ヒントン 培地によって総容量100mlとする。得られた溶液を孔径0.45Uのフィルターを用い て滅菌条件下にろ過する。ろ過したベータ酸溶液38.4mlおよびミューラー・ヒン トン培地1.6mlを、滅菌した撹拌棒装着125ml振盪フラスコに加える。20mlのミュ ーラー・ヒントン培地を18個の50ml試験管それぞれに加え、同時に上に調製した ベータ酸溶液をベータ酸レベルが表IIに記載したレベルになるように添加する。 すべての試験管が充填されたならば、各試験管から2.5mlを採取してpHを記録す る。９個の試験管には25Ulのリステリウム／ミューラー・ヒントン培地（６Ｎ） を接種する。18個のすべての試験管を一緒に35℃で24時間インキュベートする。 24時間のインキュベーション期間後にO．D．（600nm）を記録する。結果は表II に示す。 実施例４ 100ppmのベータ酸を含有する溶液を以下のように調製する。 例１からのベータ酸溶液10mgを45mlの滅菌試験管に充填する。95％エチルアル コール10mlを試験管に加えて、ベータ酸を溶解させる。得られた溶液を100mlの 容量フラスコに添加する。フラスコの内容物をpH8.5のミューラー・ヒントン培 地によって総容量100mlとする。得られた溶液を孔径0.45Umのフィルターを用い て滅菌条件下にろ過する。ろ過したベータ酸溶液38.4mlおよびブレイン−ハート 培地1.6mlを、滅菌した撹拌棒装着125ml振盪フラスコに加える。20mlのブレイン −ハート培地を18個の50ml試験管それぞれに加え、同時に上に調製したベータ酸 溶液をベータ酸レベルが表IIIに記載したレベルになるように添加する。すべて の試験管が充填されたならば、各試験管から2.5mlを採取してpHを記録する。９ 個の試験管には25Ulのリステリウム／ブレイン−ハート培地（６Ｎ）を接種する 。18個のすべての試験管を一緒に35℃で24時間インキュベートする。24時間のイ ンキュベーション期間後にO．D．（600nm）を記録する。結果は表IIIに示す。 上記実施例においては、O．D．は、使い捨てキューベット中、十分混合した培 地2.5mlを用いて600nmで測定する。 結果は、ベータ酸が、ミューラー・ヒントンおよびブレイン−アート培地の両 者について、６ppmまではリステリアの増殖を防止することを示している。 pHはベータ酸の濃度によって影響されるが、リステリアの増殖範囲に入ってい る。したがって、これは本実験で認められたリステリアの増殖阻止の原因ではな い。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 ＥＰ(ＡＴ，ＢＥ，ＣＨ，ＤＥ， ＤＫ，ＥＳ，ＦＲ，ＧＢ，ＧＲ，ＩＥ，ＩＴ，ＬＵ，Ｍ Ｃ，ＮＬ，ＰＴ，ＳＥ)，ＯＡ(ＢＦ，ＢＪ，ＣＦ，ＣＧ ，ＣＩ，ＣＭ，ＧＡ，ＧＮ，ＭＬ，ＭＲ，ＮＥ，ＳＮ， ＴＤ，ＴＧ)，ＡＵ，ＢＢ，ＢＧ，ＢＲ，ＢＹ，ＣＡ， ＣＺ，ＦＩ，ＨＵ，ＪＰ，ＫＰ，ＫＲ，ＫＺ，ＬＫ，Ｌ Ｖ，ＭＧ，ＭＮ，ＭＷ，ＮＯ，ＮＺ，ＲＯ，ＲＵ，ＳＤ ，ＳＫ，ＵＡ，ＵＺ，ＶＮ

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １．固体食品中におけるリステリアの増殖を防止するために、ホップから抽出さ れたベータ酸６〜100ppmを含有する溶液を固体食品に適用して上記食品中に６〜 50ppmのベータ酸を導入させる方法。 ２．ベータ酸の溶液は食品をベータ酸の溶液中に浸漬することによって食品に適 用される請求項１の方法。 ３．６〜15ppmのベータ酸を食品中に導入させる請求項２の方法。 ４．ベータ酸の溶液は食品にベータ酸の溶液をスプレーすることによって食品に 適用される請求項１の方法。 ５．６〜15ppmのベータ酸を食品中に導入させる請求項４の方法。 ６．リステリアの増殖を防止するために、ホップから抽出されたベータ酸６〜50 ppmを含有させた包装固体食品。 ７．食品は６〜15ppmのベータ酸を含有する請求項６の食品。