JPH083844A - 横編機におけるテンション装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】休止状態にある編糸が引き出されるのを防止す
ることのできるテンション装置を提供する。 【構成】糸パッケージと給糸口間の編糸の供給経路上に
設けられ、アーム先端の糸ガイドに挿通した編糸に対し
テンションを付与する複数のテンションアームと、該テ
ンションアームの上流側に設けられ、テンションアーム
先端の糸ガイドに挿通した編糸が引き出されるのを防止
する制動手段からなるテンション装置において、前記制
動手段は複数のテンションアーム８先端の糸ガイド１１
に挿通された編糸３に対し共通に作用するシート状制動
部材１５を、テンションアーム８先端の糸ガイド１１に
保持された編糸３の走行方向と直交する状態で支持部材
１６により保持したことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は休止状態にある編糸が引
き出されるのを防ぐテンション装置に関する。

【０００２】

【従来技術】横編機では、編糸はコーン台上に配置され
た糸パッケージから引き出され、編機上部に配置された
テンションアーム・ノットキャッチャー・テンションデ
ィスクからなる天バネ装置を通過した後、編機左側また
は右側に配置されたテンション装置を経てニードルベッ
ド上の編針へ給糸する給糸口へと送られる。上記したテ
ンション装置により編糸は適度なテンションが掛かった
状態で編針へ供給され編成が行われる。

【０００３】糸パッケージから送られる編糸は左右何れ
かのテンション装置を経て給糸口へ送られる。給糸口は
編幅より少し外側まで往復動するキャリッジにより連行
されるため折り返し後の編み始めに掛かる編糸のテンシ
ョンは編成方向により条件が異なる。例えば、編機左側
のテンション装置から引き出される編糸の場合は、右方
向へ編成する場合には給糸口がテンション装置から遠ざ
かる方向に移動され、給糸口は編幅より外側まで移動さ
れるのに対し、次のコースで左方向に編成する場合には
給糸口がテンション装置に近づく方向に移動されるた
め、右方向編成よりも左方向編成の方が折り返し後の編
糸に掛かるテンションは小さい。そのため折り返しの左
方向への編成の際には編始めの部分で編糸に弛みが生じ
る。その結果、糸の弛みをとるためにテンションアーム
が揺動するが、同時にテンションアームの上流から編糸
が引き出されてしまうとテンションアームで糸の弛みを
吸収しきれなくなり、テンション装置に設けたセンサか
ら編機に停止信号が送られ運転が停止される。

【０００４】また編糸が休止状態にある時、編成時の振
動等によりテンションアームの上流から編糸が引き出さ
れ、テンションアームにより糸の弛みを吸収できなくな
り編機の運転が停止されるという問題があった。このよ
うにテンションアームの上流から必要以上に編糸が引き
出され編機の運転が停止されると編機の稼働率が低下し
てしまう。

【０００５】そのためテンション装置の上流に編糸の制
動手段として一対のディスク間に編糸を通過させるとと
もに、該一対のディスクをスプリングにより互いに押圧
する方向に付勢するように構成したテンションディスク
を設けて編糸が引き出されるのを防止している。

【０００６】上記したテンション装置では、複数設けら
れるテンションアームに対し個々にテンションディスク
を設ける必要があるため、装置の組立に手間がかかるう
えに、テンションディスクの押圧力は標準的な糸に合わ
せて設定されているので、細い糸や滑りの良い糸を使用
した場合には糸に十分な制動力を掛けることができず、
テンションアームの揺動により必要以上に糸が引き出さ
れてしまうという問題がある。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】本発明のテンション装
置は上記した問題に鑑み発明されたもので、編糸に対応
でき、構造が簡単な上に組立が容易であり、給糸口が反
転する場合や編糸が不使用状態にあるときに、編糸が引
き出されるのを防止し、編糸に適度なテンションを掛け
た状態で糸を給糸口へと案内するテンション装置を提供
することを目的とするものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記した問題を解決する
ために本発明のテンション装置は、糸パッケージと給糸
口間の編糸の供給経路上に設けられ、アーム先端の糸ガ
イドに挿通した編糸に対し張力を付与する複数のテンシ
ョンアームと、該テンションアームの上流側に設けら
れ、テンションアーム先端の糸ガイドに挿通した編糸が
引き出されるのを防止する制動手段からなるテンション
装置において、前記制動手段は複数のテンションアーム
先端の糸ガイドに挿通された編糸に対し共通に作用する
シート状制動部材を、テンションアーム先端の糸ガイド
に挿通した編糸の走行方向と直交する状態で支持部材に
より保持したことを特徴とする。

【０００９】また、支持部材に形成した嵌合溝によりシ
ート状制動部材を保持することを特徴とする。

【００１０】また、シート状制動部材が表面に凹凸面ま
たは立毛面を形成した高摩擦性を有する部材からなるこ
とを特徴とする。

【００１１】

【作用】本発明のテンション装置では編糸に掛かるテン
ションが減少すると、テンションアームが編糸にテンシ
ョンを付与する方向に揺動し、テンションアーム先端の
糸ガイドにより保持された編糸をシート状制動部材に接
触させるため、シート状制動部材の上流からの糸の供給
が停止され、テンションアームにより編糸に対し適度な
テンションを掛けた状態で編成が行われる。シート状制
動部材と接触している編糸に掛かるテンションが増加し
た場合には、編糸を保持するテンションアームが編糸を
シート状制動部材から離脱させるため、編糸が制動部材
と接触しない状態で編糸が引き出される。

【００１２】

【実施例】本発明のテンション装置を図面とともに説明
する。図１は本発明のテンション装置が設けられる横編
機の概略正面図、図２は概略側面図である。コーン台１
上に配置された糸パッケージ２から引き出された糸３は
編機上部に配置された天バネ装置４を通過した後、編機
側方に配置されたテンション装置５を経由し、キャリッ
ジ６により左右摺動される給糸口７に送られ編地が編成
される。

【００１３】図３に示すように編機の側方に設けられる
テンション装置５は、テンションアーム８と制動部材保
持部９からなる。編糸３はテンション装置５の直前に設
けられる糸ガイド１０を経由した後、テンションアーム
８の先端に取り付けられた糸ガイド１１を経由し、テン
ション装置５の糸ガイド１２を通過して給糸口７へと送
られる。一端に糸ガイド１１が設けられるテンションア
ーム８の他端は編機基台上に取り付けられたアーム取り
付け台１３上に編糸に対し適度なテンションが付与でき
るように調整可能に取り付けられる。また、テンション
アーム８には揺動を感知するセンサを設け、テンション
アーム８が一定量以上揺動した場合に、センサがこれを
感知し編機の運転を停止させる。

【００１４】図４はテンションアーム８とシート状制動
部材１５の関係を示す概略斜視図である。図４において
は説明の便宜上、８本設けられるテンションアーム８の
内１本だけを示す。制動部材保持部９は編機基台に取り
付けられるブラケット１４と制動部材１５を装着するた
めの支持部材１６、およびテンションアーム８に渡る編
糸３の振れを防止するガイド板１７からなる。ブラケッ
ト１５の一端には編機基台に固定するためのネジ孔１８
が設けられ、編機基台に対しネジ止めされる。

【００１５】ブラケット１４の他端に設けられる支持部
材１６は、複数設けられるテンションアーム８に保持さ
れる編糸３に対し共通して作用させるため、テンション
アーム８が設けられる領域に対応した長さの板材を湾曲
させ、その突出面がテンションアーム８先端の糸ガイド
１１に保持される編糸の走行方向に直交する状態で取り
付けられている。ブラケット１４には、テンションアー
ム８の揺動により変位される編糸３の振れを防止するた
めのガイド溝１９を形成したガイド板１７が取り付けら
れている。ガイド溝１９は編糸３の挿通を容易にするた
め、開口部が広い溝として形成されている。ガイド板１
７の下部にはテンションアーム８から給糸口７に渡る編
糸３を案内するための糸ガイド１２が設けられる。

【００１６】支持部材１６はその上下両端をＵ字状に屈
曲し、シート状制動部材１５を装着するための嵌合溝２
０, ２１を形成し、該溝２０, ２１にシート状制動部材
１５の両端を装着することにより保持する。シート状制
動部材１５としては、例えばサンドペーパーが用いられ
る。サンドペーパーの番手は使用する編糸の太さに応じ
て交換するようにしてもよいが、標準的には６０番また
は１００番程度のものが適当である。

【００１７】シート状制動部材は図４に示すように、シ
ート状制動部材１５の装着面が突出した状態に形成され
た支持部材１６の形状に合わせて湾曲させ、その上端と
下端をそれぞれ嵌合溝２０, ２１に装着する。装着され
たシート状制動部材１５は支持部材１６により編糸３と
の接触面が突出した状態で保持される。

【００１８】次に本実施例のテンション装置の作用を説
明する。図５に示すように今仮に給糸口７が右方向に１
コースの編成を完了し、編成領域２２を越えてＡで示す
位置に移動されたとする。この時、給糸口７が編成領域
２２を越えて移動した距離に相当する長さの編糸２３が
編地と給糸口７の間に渡っており、テンションアーム８
はＡで示す位置にあり編糸３には適度なテンションが掛
けられている。

【００１９】つぎに次コースの編成を行うため、給糸口
７を反転させ左方向に連行する。編糸２３は給糸口７が
左方向に移動しても給糸口７がＢの位置に達するまで編
み込まれることがないので、給糸口７とテンションアー
ム８との間に渡っている編糸は給糸口７の移動に従って
左方向に移動する。給糸口７とテンションアーム８間に
渡っている編糸が左方向に移動するのに従いテンション
アーム８は図５のＡで示す位置からＢで示す位置に揺動
し、アーム先端の糸ガイド１１に挿通された編糸３は支
持部材１６に装着されたシート状制動部材１５と接触す
る。編糸３がシート制動部材１５と接触した状態では、
テンションアーム８が揺動してもシート状制動部材１５
の上流から糸が引き出されることがなく、給糸口７が左
方向に移動してもテンションアーム８が揺動することで
糸３が弛むのを防止される。

【００２０】次に給糸口７が図５のＢの位置に達する
と、前コースの編成の際に引き出された編糸２３が編み
込まれるのに従い、テンションアーム８と給糸口７間に
渡る編糸は右方向へ移動する。テンションアーム７と給
糸口８間に渡っている編糸が右方向に移動するのに従い
テンションアーム７はＢの位置からＡの位置へと揺動
し、編糸３はシート状制動部材１５から離脱する。編糸
３がシート状制動部材１５から離脱した状態で給糸口７
が移動されると、テンションアーム８の上流から新たに
編糸３が引き出され、編糸３に適度なテンションが掛け
られた状態で編成が行われる。

【００２１】上記実施例では給糸口７が反転する場合の
テンション装置５の作用を説明したが、本発明のテンシ
ョン装置５は給糸口７が反転する時に限られることな
く、例えば編成に使用されず休止状態にある編糸が、編
機の振動または何らかの原因によりテンションアーム８
の上流から必要以上に引き出された場合にも、テンショ
ンアーム８が揺動し編糸３をシート状制動部材１５と接
触させることによりそれ以上編糸が引き出されることが
ない。

【００２２】上記したように本発明のテンション装置５
では編糸３がシート状制動部材１５と接触した状態で
は、テンションアーム８の上流から糸３が引き出される
ことがない。糸３が引き出されるのはテンションアーム
８が揺動し、編糸３がシート制動部材１５から離脱した
状態であるため、編糸３がシート状制動部材１５に接触
しても切断されたり毛羽立ったりすることがない。

【００２３】なお、本実施例ではシート状制動部材１５
としてサンドペーパーを使用した場合を例に説明した
が、制動部材はサンドペーパーに限られるものではな
く、ラバーを使用してその表面に凹凸加工を施してもよ
いのであって、表面に凹凸面または立毛面を形成した部
材等の高摩擦性を有するシート状部材であれば制動部材
として使用することが可能である。

【００２４】また、本実施例は本発明について好適な例
を説明したが、本発明は上記の実施例に限られることな
く、本発明の主旨を逸脱しない範囲において適宜変更可
能である。

【００２５】

【発明の効果】上記したように本発明のテンション装置
では糸の制動手段を、複数のテンションアーム先端の糸
ガイドに挿通された編糸に対し共通に作用するシート状
制動部材を、テンションアーム先端の糸ガイドに保持さ
れた編糸の走行方向と直交する状態で支持部材により保
持する構成としたので、編糸が細い場合や滑りの良い糸
の場合にも制動部材により確実に保持することができ、
編糸が引き出されることがない。また、複数の編糸に対
し共通に作用する制動部材により保持する構成としたの
で、複数の編糸に対し個々に設ける必要がなく組立が容
易であり装置自体の構成を簡素化することができコスト
ダウンを図ることができる。

【００２６】また、シート状制動部材の両端を支持部材
に形成した嵌合溝に装着する構成とした場合には、制動
部材の脱着を容易にすることができる。

【００２７】また、シート状制動部材を編成に使用する
糸の性質に応じて交換することにより最適な条件で編成
を行うことが可能となる。

【図面の簡単な説明】

図１ テンション装置が設けられる編機の概略正面図で
ある。 図２ テンション装置が設けられる編機の概略側面図で
ある。 図３ 図１のテンション装置の概略部分拡大図である。 図４ 制動部材保持部および制動部材の装着方法を示す
斜視図である。 図５ 給糸口の移動に対応したテンション装置の作用を
示す概略図である。

【符号の説明】

４ 天バネ装置 ５ テンション装置 ８ テンションアーム ９ 制動部材保持部 １５ シート状制動部材 １６ 支持部材 １７ ガイド板

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】糸パッケージと給糸口間の編糸の供給経路
   上に設けられ、アーム先端の糸ガイドに挿通した編糸に
   対しテンションを付与する複数のテンションアームと、
   該テンションアームの上流側に設けられ、テンションア
   ーム先端の糸ガイドに挿通した編糸が引き出されるのを
   防止する制動手段からなるテンション装置において、前
   記制動手段は複数のテンションアーム先端の糸ガイドに
   挿通された編糸に対し共通に作用するシート状制動部材
   を、テンションアーム先端の糸ガイドに挿通した編糸の
   走行方向と直交する状態で支持部材により保持したこと
   を特徴とする横編機におけるテンション装置。
2. 【請求項２】支持部材に形成した嵌合溝によりシート状
   制動部材を保持することを特徴とする請求項１に記載の
   横編機におけるテンション装置。
3. 【請求項３】シート状制動部材が表面に凹凸面または立
   毛面を形成した高摩擦性を有する部材からなることを特
   徴とする請求項２に記載の横編機におけるテンション装
   置。