JPH0236277B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明はミシンの分野に関し、特にミシンの下
糸を担持するボビンの回転を、下糸の需要がある
時以外は阻止し、下糸があふれるのを阻止するよ
うになつたボビンケース装置に関する。

（従来の技術） 自由に回転する下糸を担持するボビンは、ボビ
ンからの糸を釈放し、それによつて縫目形成を妨
げるようになつてしまうことが屡々ある。

このボビンの自由回転はミシンの高速作業が急
に停止した場合、ボビン糸がベツドの下のトリマ
ーによつて急に引かれた場合または単に、針糸お
よびボビン糸が切断される前に加工材料をミシン
から取出す場合に起こる。

従来技術において、下糸を担持するボビンに十
分な抑制力を加え、ボビンの過大回転およびボビ
ンから糸があふれるのを阻止するようになすこと
は知られていた。このような装置は昭和26年６月
５日付、Ritterの米国特許第2555658号明細書に
記載されており、この装置においては板ばねが設
けられ該板ばねがボビンのフランジに衡当するこ
とによつてボビンフランジの回転を制止するよう
になつている。

また、ボビンケースの中に枢動レバーを設け、
この枢動レバーが板ばねによつてボビンの周囲と
係合せしめられ、該ボビンの回転を抑制するよう
になつているものも存在し、このレバーは糸の需
要に起因するボビン糸の運動に応答して、ボビン
のフランジの周囲から離れるように枢動し、糸が
自由に出るようになつている。このような装置は
昭和44年12月30日付、米国特許第3486473号明細
書および昭和36年３月21日付、米国特許第
2975738号明細書に記載されている。

（発明が解決しようとする課題） 前記米国特許第2555658号明細書に開示されて
いる装置は、下糸の需要がある時も、下糸の需要
が無い時も、常に作動するようになつており、ボ
ビンは自由回転することに対して常に制動がかけ
られている状態となつているから、下糸はいつも
相当な力で引張られていて、ミシンの縫目形成に
好ましからざる影響を及ぼしていた。また、前記
米国特許第3486473号明細書及び前記米国特許第
2975738号明細書に開示されている装置は、レバ
ー、枢動軸及びばね負荷装置といつた小さな部品
を多く備えなければならず、必然的に高価なもの
となつてしまい、また、極めて精密な調整を必要
とし、保守が困難であつた。

本発明は通常のミシンに簡単に装架することが
できる簡単な構成で且つ安価なミシンの下糸あふ
れ止めボビンケース装置を提供することを目的と
するものである。

（課題を解決するための手段） 本発明は、ミシンのかま用の下糸あふれ止めボ
ビンケース装置であつて、ハブと該ハブとは反対
側の外面を有する少なくとも１つの円形フランジ
とを備えた糸を担持するボビンを受け入れるよう
になつたケーシングを有し、このケーシングには
その第１端部が連結された板ばねが支持されてお
り、また、前記ケーシング上に備えられていて、
糸に張力を加えるための引張り装置から、前記円
形フランジの外面から隔置された前記ボビンケー
ス装置を横切つて延びている直接ボビン糸通路を
確定するための装置を有し、前記板ばねの第２端
部はこの直接ボビン糸通路に近接して配置される
とともに前記円形フランジの外面に圧接されてお
り、前記直接ボビン糸通路を確定するための装置
は前記円形フランジの外面から隔置されるととも
に相互に隔置された、前記ケーシング上に備えら
れた２つの隆起表面を含み、これら隆起表面の間
には前記板ばねが位置しており、更に、前記板ば
ねの第２端部に担持されていて前記ボビン糸を受
けるための装置を備え、このボビン糸を受けるた
めの装置は前記板ばねの第２端部を折り返えして
形成されたフツクを含み、且つ前記直接ボビン糸
通路を確定するための装置と協働して、ボビン糸
の需要に応動して前記板ばねの第２端部と前記円
形フランジの外面との圧接を除去して間接ボビン
糸通路を形成し、もつて、ボビンの回転が妨げら
れないようになし、前記ボビン糸を受けるための
装置は、ボビン糸の需要が無いことに応動して前
記板ばねの第２端部を解放してこの第２端部を前
記円形フランジの外面に圧接させ、もつて、ボビ
ンの回転を阻止するようになつていることを特徴
とする。

上述した構成において、「糸に張力を加えるた
めの引張り装置」は、後に説明する実施例の『下
糸調子ばね６７』が対応する。また、「２つの隆
起表面を含む、直接ボビン糸通路を確定するため
の装置」は、後に説明する実施例の『ボス７７及
び切欠９２』が対応する。また、「ボビン糸を受
けるための装置」は、後に説明する実施例の『フ
ツク８９』が対応する。

（発明の作用及び効果） 前述した「間接ボビン糸通路」とは、２つの隆
起表面であるところのボス７７と切欠９２との間
にボビン糸がほぼ直線的に延びている状態にある
ことを意味するのであるが（後述する第３図参
照）、本発明においては、ボビン糸の需要がある
時には、ボビン糸がこの「間接ボビン糸通路」に
位置するような状態となつて板ばねの第２端部が
ボビン糸によつて引かれ、この第２端部がボビン
の円形フランジの外面から離れて、ボビンが自由
に回転することを許容する。前述した「直接ボビ
ン糸通路」とは、２つの隆起表面であるところの
ボス７７と切欠９２との間にボビン糸が直線的に
延びておらずに、ボス７７からフツク８９のとこ
ろまでボビン糸が延びており、フツク８９のとこ
ろでボビン糸が折り曲がつた状態となり、次にフ
ツク８９から切欠９２のところまでボビン糸が延
びている状態、すなわち、ボビン糸がぴんと張つ
ていないでたるんだ状態にあることを意味するの
であるが（後述する第１図参照）、本発明におい
ては、ボビン糸の需要が無い時には、ボビン糸が
この「直接ボビン糸通路」に位置するような状態
となつて板ばねの第２端部が解放され、この第２
端部がボビンの円形フランジの外面に圧接され、
これによつて、ボビンの回転を阻止するようにな
つている。

本発明によれば、極めて簡単な構成をもつて、
ミシンの下糸あふれ止めボビンケース装置を安価
に提供することができ、また、保持のために格別
の配慮を必要とすることのないボビンケース装置
となすことができる。本発明によれば、また、通
常のミシンに簡単に装置することのできるミシン
の下糸あふれ止めボビンケース装置を提供するこ
とができる。

（実施例） 本発明のその他の目的および利点は次に添付図
面によつて説明する実施例により明らかとなる。

従来の普通のミシンは縫針およびかまを含む普
通の縫目形成機構を有し、この機構は同じく周知
の駆動機構によつて駆動される。前記駆動機構は
ミシンの枠（図示せず）の中に位置し、この枠は
縫針の縦方向往復運動を行わせる周知の機構（図
示せず）を支持し、この機構は場合によつてはジ
グザグ縫目を形成するために縫針に横方向運動を
与えるようになつている。かまは周知のいくつか
の型の一つとなすことができ、本実施例の場合は
水平軸線のまわりを回転する形式のかまとされて
いる。しかしながら本発明はこの特定の形式のか
まに制限されるものではない。その理由は熟練技
術者の容易に理解し得る如く、本発明は周知の任
意のかまに適用し得るからである。

第１図および第３図に示された縫目形成機構３
２は垂直に往復動し得る針６０と天秤６２とを有
し、天秤はかま３６と共働して上糸６４と下糸
（ボビン糸）６６とを互にからませて、図におい
て６８により線図的に示される如く、一連の本縫
い縫目を形成するようになつている。針６０はか
ま３６の上方において支持された針板２６内の孔
を通つて往復運動を行う。かま３６はベツド軸７
２に装着された回転フツク７０を有し、ベツド軸
７２はミシンのベツド内に支持され、この形式の
ミシンにおいて普通に行われる如く、針６０が１
回垂直往復運動を行う毎に回転フツク７０を２回
転させるようになつている。回転フツク７０の中
にはボビンケースホルダ７３が軸持され、該ホル
ダの中にはボビンケース７４が支持されている。
この組立体全体は回転抑制指片７６によつて回転
が阻止され、回転抑制指片７６はミシンのベツド
に装着されかつボビンケースホルダ７３内の回転
抑制切欠き７８の中に挿入されている。前記回転
フツク７０は剣先７１を有し、該剣先７１は針６
０が垂直往復運動を１回行うたびに２回転し、針
６０から出た上糸のループを捕捉し、かつ捕捉し
た上糸のループをボビンケース７４のまわりを通
らせて本縫い縫目を形成するようになつている。
円形フランジ８１を有するボビン８０は下糸６６
の供給源を担持し、かつボビン８０のハブの回転
軸線がベツド軸７２の回転軸線と一致するように
ボビンケース７４内に配置されている。ミシンの
技術分野において周知の如く、回転フツク７０の
剣先７１が最初上糸のループとほぼ係合した時
に、針６０がその下死点位置を丁度通過するよう
になつている。剣先７１が回転するにつれて、上
糸のループは剣先７１によつてボビンケース７４
のまわりに、したがつて、ボビン８０のまわり
に、引かれる。下糸６６は下糸調子ばね６７（第
６図）からボビンケース７４上のボス７７と、ボ
ビンケース７３内の切欠９２に延びる。ボス７７
および切欠９２は円形フランジ８１から隔置され
ている。次に下糸６６は上方に向つて一連の本縫
い縫目の中の最後の縫目へ延びる。

ボビンケースホルダ７３内の切欠９２の端部と
ボス７７との間には板ばね８４が挿置されてい
る。板ばね８４はその本体に対して90度曲げられ
た端部８５を有するように形成され、端部８５は
ねじ８３によつてボビンケース７４のボス７５に
固定されている。端部８５のわずか内方において
板ばね８４には孔８６が形成され、この孔８６は
ボビンケース７４から隔置され、かつボビンケー
ス７４に螺着された調節ねじ９０を受入れていて
後述の如く調節を行い得るようになつている。孔
８６を越えたところで板ばね８４はボビン８０の
円形フランジ８１の方に向つて内向きに弯曲し、
かつ隆起部分８７を有するように形成され、隆起
部分８７は円形フランジ８１に対して摩擦する制
動パツド８８を受入れるようになつている。板ば
ね８４の端部はフツク８９となるように形成さ
れ、このフツク８９はボス７７およびボビンケー
スホルダ７３（第１図）内の切欠９２の間に延び
る下糸を受入れるためのものである。このフツク
８９は第１図においてはボス７７および切欠９２
のレベルよりもベツド軸７２の軸線方向で右方に
位置している。第３図にはループが剣先７１によ
つて外され、かつミシンの天秤６２がゆるんだ上
糸６４を引締めて下糸６６を引下げはじめ、該下
糸６６をボビン８０から所要の如く釈放するよう
になつた時における下糸６６に対する上糸６４の
配置状態が示されている。第４図は第３図に示さ
れたかま３６の断面を示す図で、この図にはたと
えば天秤６２の作用を受けた上糸６４によつて下
糸６６が引上げられるようになつた時の板ばね８
４の配置が示されており、この図に見られるよう
に、板ばね８４はボビン８０からのボス７７およ
び切欠９２のレベルに起因して、下糸６６の引張
力により偏倚せしめられ、板ばね８４に装着され
た制動パツド８８がボビン８０の円形フランジ８
１から引離されるようになつている。したがつて
ボビン８０は自由に回転し、連続する本縫い縫目
６８に対して下糸６６を釈放するようになるが、
下糸６６に対する需要が停止するや否や、板ばね
８４は制動パツド８８をボビンの円形フランジ８
１と圧接せしめてその回転を制動させて下糸６６
の滑りを発生させる過大な回転を阻止するように
なる。板ばね８４の隆起部分８７に取付けられた
制動パツド８８の材料はボビン８０の円形フラン
ジ８１との摩擦係数を大にしボビン８０の過大な
回転を阻止する力を大とするためのものである。
板ばね８４の中央部分に取り付けられた調節ねじ
９０はこれを内方にねじ込むことにより、中央部
分における板ばね８４とボビンケース７４との間
の隙間を減少せしめ、それによつて制動パツド８
８とボビン８０の円形フランジ８１との間の係合
圧力を増加せしめ、または下糸６６の需要が生じ
た時にこの係合圧力を減少させ、もつて、ボビン
８０に対して所要の制動力が作用するようにし、
または、円形フランジ８１から制動パツド８８を
完全に離し得るようになつている。下糸６６があ
ふれ出るのを阻止するための調節は、下糸６６の
張力に小さな影響をおよぼすだけで容易に行うこ
とができる。

ボビン８０の円形フランジ８１に半径方向の溝
を多数形成し、かつ板ばね８４の隆起部分８７に
対応する“Ｖ”字形切欠きを設けて前記溝と順次
係合するようになすことによつてさらに確実な摩
擦効果が容易に得られる。なお、ボビンの円形フ
ランジ８１に所定の直径を有する小さな孔を設
け、板ばねの隆起部分８７に備えたくぼみと順次
係合するようになすこともできる。ボビン８０の
回転をおくらせるための板ばね８４は、下糸６６
に張力を加えるために使用される下糸調子ばね６
７とは別個のものであるから、この板ばね８４
は、下糸調子ばねは有しているが下糸のあふれ出
るのを阻止する装置を有していない従来の多くの
ミシンに適用することができる。

本発明は以上に説明した実施例に制限されるも
のではなく特許請求の範囲内において種々の変形
を行い得るものと解すべきである。

【図面の簡単な説明】

第１図は上糸のループがかまによつて拡大さ
れ、ボビンのまわりに投下されるようになつた時
のかまと、針と天秤とを示す一部欠切せる斜視
図、第２図は実質的に第１図の線２−２に沿つて
取られた断面図で、板ばねがボビンの円形フラン
ジと接触する状態を示す図、第３図は第１図と同
様にかまと、針と天秤とを示す一部欠切せる斜視
図で、上糸のループがボビンのまわりに投下さ
れ、かつ上糸の引締め動作が下糸の引上げを開始
するようになつた時の状態を示す図、第４図は実
質的に第３図の線４−４に沿つて取られた断面図
で、板ばねが下糸の引上げに応答してボビンの円
形フランジから偏倚してその回転を自由に行わせ
るようになつた状態を示す図、第５図はボビンケ
ースの正面図で、該ボビンケースに板ばねを装着
しかつ調節ねじを取付けた状態を示す図、第６図
は第５図に示されたボビンケースの側面図で、ボ
ビンケースに取付けられた下糸調子ばねを示す図
である。 図において３６はかま、７１は剣先、７４はボ
ビンケース、７６は回転抑制指片、７７はボス、
８０はボビン、８１は円形フランジ、８４は板ば
ね、８７は隆起部分、８８は制動パツド、８９は
フツク、９０は調節ねじ、９２は切欠である。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ ミシンのかま用の下糸あふれ止めボビンケー
   ス装置であつて、ハブと該ハブとは反対側の外面
   を有する少なくとも１つの円形フランジとを備え
   た糸を担持するボビンを受け入れるようになつた
   ケーシングを有し、このケーシングにはその第１
   端部が連結された板ばねが支持されており、ま
   た、前記ケーシング上に備えられていて、糸に張
   力を加えるための引張り装置から、前記円形フラ
   ンジの外面から隔置された前記ボビンケース装置
   を横切つて延びている直接ボビン糸通路を確定す
   るための装置を有し、前記板ばねの第２端部はこ
   の直接ボビン糸通路に近接して配置されるととも
   に前記円形フランジの外面に圧接されており、前
   記直接ボビン糸通路を確定するための装置は前記
   円形フランジの外面から隔置されるとともに相互
   に隔置された、前記ケーシング上に備えられた２
   つの隆起表面を含み、これら隆起表面の間には前
   記板ばねが位置しており、更に、前記板ばねの第
   ２端部に担持されていて前記ボビン糸を受けるた
   めの装置を備え、このボビン糸を受けるための装
   置は前記板ばねの第２端部を折り返えして形成さ
   れたフツクを含み、且つ前記直接ボビン糸通路を
   確定するための装置と協働して、ボビン糸の需要
   に応動して前記板ばねの第２端部と前記円形フラ
   ンジの外面との圧接を除去して間接ボビン糸通路
   を形成し、もつて、ボビンの回転が妨げられない
   ようになし、前記ボビン糸を受けるための装置
   は、ボビン糸の需要が無いことに応動して前記板
   ばねの第２端部を解放してこの第２端部を前記円
   形フランジの外面に圧接させ、もつて、ボビンの
   回転を阻止するようになつていることを特徴とす
   るミシンの下糸あふれ止めボビンケース装置。 ２ 特許請求の範囲第１項記載のボビンケース装
   置において、さらに前記ケーシングによつて担持
   された装置にして、前記板ばねの前記第２端部と
   前記円形フランジの外面との係合圧力を変えるた
   めの装置を有しているボビンケース装置。 ３ 特許請求の範囲第２項記載のボビンケース装
   置において、前記板ばねが前記ケーシングから隔
   置された前記第１端部および前記第２端部との間
   に中央部分を有し、前記係合圧力を変えるための
   装置が前記中央部分内の前記板ばねの中の孔に挿
   入された調節ねじを含み、この調節ねじが前記孔
   を通り前記ケーシングに達し、それによつて前記
   ケーシングからの前記中央部分の間隔を変化せし
   め、前記板ばねの前記第２端部と前記円形フラン
   ジの外面との圧接状態を変えるようになつている
   ボビンケース装置。