JPH083534Y2 - 電波吸収壁 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、ＶＨＦ、ＵＨＦ帯等の
不要反射電波を防止する電波吸収壁に関し、特に建物等
の外壁の幅広い壁厚に対応でき、作製時の作業性が改善
された電波吸収壁に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】最近、高層建築物による不要反射電波が
テレビ放送の障害となり、テレビ画面にゴーストを生じ
させる等の電波公害が問題となっている。この対策とし
て、高層建築物の外壁にフェライト板を埋め込んだ電波
吸収壁が種々提案されている。

【０００３】特公平1-45238 号は、化粧板の背面に複数
の脚片が突設され、かつ相隣る脚片間にフェライト系成
形体が嵌着された化粧ブロックの背面に、コンクリート
を一体に装着してなる電波吸収壁を開示している。図８
は、この電波吸収壁の一例を示す断面図である。この電
波吸収壁は、２つの脚部63を有する化粧ブロック61にフ
ェライト板62を配置し、その脚部63の先端が鉄筋メッシ
ュ64に当接するようにして、コンクリート65を打設した
ものである。

【０００４】また特公平1-45239 号は、水平部片と垂直
部片とよりなるＬ型表面材が壁版コンクリート内に、前
記水平部片が壁版コンクリート外表面と同一面上に一す
るように並列、埋設され、前記各水平部片上にフェライ
ト系成形体が担持されるとともに、同水平部片が前記各
垂直部片上に支持された鉄筋メッシュに繋止部材を介し
て繋着されたことを特徴とする電波吸収壁を開示してい
る。図９は、この電波吸収壁の一例を示す断面図であ
る。この電波吸収壁は、一方に脚部68を有する表面材66
にフェライト板67を配置し、その脚部68の先端を鉄筋メ
ッシュ70に当接させて配置し、他方は細紐条片69を鉄筋
メッシュ70に繋着させて、コンクリート71を打設したも
のである。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】このような従来の電波
吸収壁では、コンクリート層との定着を図るためのアン
カー用としての脚部をある程度長くする必要があった。
そのため、外装材の重量が大きくなったり、電波吸収壁
が厚くなってしまうという問題がある。また図９に示さ
れるように細紐条片を鉄筋メッシュにつないで固定する
場合には、外装ブロックの数に応じて細紐条片を鉄筋メ
ッシュに繋ぐことになり、工数がかかり過ぎるという問
題がある。

【０００６】本考案は、上記の事情を鑑みて、長いアン
カー用脚部を不要とし、かつ細紐条片を鉄筋メッシュに
繋ぐ必要がない構造を有し、製造工程の繁雑さの改善さ
れた電波吸収壁を提供することを目的とするものであ
る。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記目的に鑑み鋭意研究
の結果、本考案者等は、外装タイルの裏面にフェライト
板を固着し、鉄筋メッシュとともにコンクリートで一体
に成形してなる電波吸収壁において、前記外装タイルの
両端に鉄筋メッシュに至らない大きさの突起部を形成
し、前記突起部の係止部にクリップを係止させ、コンク
リートを打設すると、外装タイル及びフェライト板がコ
ンクリートにしっかりと固着され、かつ細紐条片等によ
り鉄筋メッシュに繋ぐ必要がないので、製造工程が簡便
であることを見出し、本考案に想到した。

【０００８】すなわち、外装タイルの裏面にフェライト
板を固着し、鉄筋メッシュとともにコンクリートで一体
に成形してなる本考案の電波吸収壁は、前記外装タイル
の両端に突起部が前記鉄筋メッシュに至らない大きさで
形成されており、前記突起部に設けられた係止部にクリ
ップを係止させ、前記クリップがコンクリートに固着さ
れることにより、前記外装タイルが固定されていること
を特徴とする。

【０００９】

【実施例】本考案を添付図面を参照して以下詳細に説明
する。図１は本考案の一実施例による電波吸収壁を示す
断面図である。図１に示すように、本考案の電波吸収壁
は、両端に突起部２が設けられており、その突起部２に
挟まれた平坦な面にフェライト板３が固着された外装タ
イル１と、突起部２に係止されたクリップ４と、これら
を一体的に固着するように打設されたコンクリート５と
からなる。このコンクリート層の中には、鉄筋メッシュ
６が配設されている。

【００１０】このような電波吸収壁の外装タイル１の突
起部周辺の拡大断面図を図２に示す。外装タイル１の突
起部２に形成されたクリップ４の係止部７は、本実施例
においては一対の対向する溝部により形成されている。
もちろん、この係止部の構造は溝に限定されるものでは
なく、クリップ４をほぼ直立した状態で係止しうる形状
であれば、種々のものとすることが可能であり、例えば
凹部状等とすることができる。本実施例では、このクリ
ップ４は溝状係止部７にある程度の挟圧力をもって係合
しているので、コンクリート５の打設時にもほぼ直立状
態を維持することができる。このクリップ４は打設され
たコンクリート５に埋設されることにより、外装タイル
１が離脱しないように作用する。このような外装タイル
１の突起部２の突出長は、クリップの係止部を形成でき
る長さであればよく、例えば100mm ×100mm ×９mmのフ
ェライト板３が固着された外装タイル１（120mm ×120m
m)の場合、４〜８mm程度、好ましくは５〜６mm程度であ
る。

【００１１】電波吸収壁をこのような構造とすることに
より、外装タイル１からアンカー用の脚部を延ばす必要
がなく、壁厚がアンカー用脚部の長さに影響されること
がない。また細紐条片を鉄筋メッシュに繋がなくとも、
十分な外装タイル１の固着強度を得ることができる。

【００１２】図３は、本考案の別の実施例による電波吸
収壁を示す斜視図である。本実施例においては、隣接す
る外装タイル11、12をそれぞれの突起部で、１つのクリ
ップ13により止めたものである。なお図中14は凹部状の
係止部を示す。本実施例のように、隣接する外装タイル
の突起部どうしをクリップで止めることにより、外装タ
イルの固着をより強固なものとすることができるととも
に、クリップを掛ける工数を削減することができる。

【００１３】図４は、本考案のさらに別の実施例による
電波吸収壁を示す断面図である。この実施例では、外装
タイル１を大型化し、１つの外装タイル１に２枚のフェ
ライト板31,31 を固着してある。このように外装タイル
１を大型化し、１つの外装タイル１に２枚のフェライト
板31,31 を設置すれば、クリップ止めの工数及び外装タ
イル１の配置工数を削減することができる。またフェラ
イト板を１枚装着した小型の外装タイル（図１に示すよ
うなもの）と組み合わせて使用する場合には、本実施例
のように外装タイル１の外表面に溝部38を設ければ、目
地をそろえることができ、美観を損なうことがない。な
お、フェライト板の設置枚数は２枚に限られず３枚以上
でもよく、その枚数は外装タイルの大きさと、フェライ
ト板の大きさとに応じて適宜設定すればよい。また図３
に示されるような隣接する外装タイルを１つのクリップ
により止めた電波吸収壁において、２枚以上のフェライ
ト板を設置することももちろん可能である。

【００１４】通常フェライト板は、100mm ×100mm 程度
の大きさのものが使用されているが、本実施例のように
外装タイルを大型化し、１つの外装タイルに複数のフェ
ライト板を配置すれば、電波吸収壁の施工が容易とな
る。

【００１５】図５乃至図７は、上述したような本考案の
電波吸収壁に用いることのできるクリップの種々の形状
を示す正面図である。これらのクリップはバネ弾性を有
し、かつさび防止の目的でステンレス等により形成した
ものが好ましい。いずれのクリップも、外装タイルの突
起部に係止させたときにバネ圧によりほぼ直立状態が維
持されるような形状である必要がある。このためには、
各クリップ4a,4b,4cの開放端部の間隔Ｄは、外装タイル
の突起部に設けられた一対の係止部の間隔より小さいこ
とが必要である。このような条件が満たされる限り、ク
リップの形状は図５乃至図７に示されるものに限定され
ず、係止部に係止可能なものであればよい。

【００１６】またクリップは外装タイルに係止したとき
鉄筋メッシュまで至らない程度の大きさのものが好まし
いが、鉄筋メッシュを間に入れるようにして外装タイル
に係止させる場合には大きなクリップとすることもでき
る。この場合には、施工工数は増加せず、しかも、外装
タイルの脱落が完全に防止される。

【００１７】以上本考案を添付図面を参照して説明して
きたが、本考案はこれに限定されることなく、本考案の
思想を逸脱しないかぎり種々の変更を施すたことができ
る。

【００１８】

【考案の効果】本考案によれば、長いアンカー用脚部を
必要とせず、かつ外装タイルを固定するクリップを簡単
に装着できるものであり、壁厚に自由度が増し、壁作製
の作業性が向上する。またクリップの係止部を一対の溝
により形成すれば、クリップの数を適宜変更することが
でき、かつ取付け作業も容易となる。

【００１９】さらに、本考案の電波吸収壁において、外
装タイルとして大きなものを使用し、複数のフェライト
板を１つの外装タイルに設置すれば、使用する外装タイ
ルの枚数を削減することができ、それによって施工を簡
略化することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案に係る一実施例による電波吸収壁を示す
断面図である。

【図２】図１の突起部周辺の拡大断面図である。

【図３】本考案に係る別の実施例による電波吸収壁を示
す斜視図である。

【図４】本考案に係るさらに別の実施例による電波吸収
壁を示す断面図である。

【図５】本考案に使用し得るクリップの一例を示す正面
図である。

【図６】本考案に使用し得るクリップの別の例を示す正
面図である。

【図７】本考案に使用し得るクリップのさらに別の例を
示す正面図である。

【図８】従来の電波吸収壁の一例を示す断面図である。

【図９】従来の電波吸収壁の別の例を示す断面図であ
る。

【符号の説明】

１,11,12・・・外装タイル ２・・・突起部 ３・・・フェライト板 ４,4a,4b,4c,13・・・クリップ ５・・・コンクリート ６・・・鉄筋メッシュ ７,14 ・・・係止部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 内藤 忠雄 神奈川県横浜市中込太田町４−51 鹿島建 設株式会社横浜支店内 (72)考案者 内藤 龍夫 東京都港区元赤坂１丁目２番７号 鹿島建 設株式会社内

Claims (3)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 外装タイルの裏面にフェライト板を固着
   し、鉄筋メッシュとともにコンクリートで一体に成形し
   てなる電波吸収壁において、前記外装タイルの両端に、
   突起部が前記鉄筋メッシュに至らない大きさで形成され
   ており、前記突起部に設けられた係止部にクリップを係
   止させ、前記クリップがコンクリートに固着されること
   により、前記外装タイルが固定されていることを特徴と
   する電波吸収壁。
2. 【請求項２】 請求項１に記載の電波吸収壁において、
   隣接する前記外装タイルの突起部を１つのクリップによ
   り係止し、固定していることを特徴とする電波吸収壁。
3. 【請求項３】 請求項１又は２に記載の電波吸収壁にお
   いて、１つの外装タイルに２枚以上のフエライト板が固
   着されていることを特徴とする電波吸収壁。