JPH08339916A - 永久磁石磁気回路 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【目的】 永久磁石磁気回路において、着磁された高特
性大型磁石を、安全にかつ容易に、大型のヨーク構造物
に組み込むことを可能にする。 【構成】 永久磁石と磁性または非磁性ヨークとにより
構成される永久磁石磁気回路において、永久磁石をヨー
ク板に固着し磁石とヨーク板とが一体となった磁石構造
物が、有り溝に挿入されて固定され、より大きな磁石構
造物を形成してなることを特徴とする永久磁石磁気回
路。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、永久磁石磁気回路に関
するものであり、特にＭＲＩ装置や大型同期モータのロ
ータ構造物に有用とされる、永久磁石磁気回路に関する
ものである。

【０００２】

【従来の技術】永久磁石とヨーク構造物よりなる永久磁
石磁気回路において、従来は永久磁石はバックヨークに
直接固着されていた。固着の方法としては、接着剤によ
る接着や物理的固定、もしくは可能な場合はタップ穴を
立ててネジで固定していた。普通、ヨークは鉄材の場合
が多く、鉄ヨークと磁石との吸引力も加わるため、永久
磁石とヨークの固定には問題が生じなかった。従来、多
く用いられているフェライト磁石は、磁気特性がたかだ
か４MGOeであり、例えば自動車電装用モータに用いられ
る相対的に大きなフェライト磁石のロータヨークへの組
み付けも、吸引力・反発力が余り大きくないため、ロー
タヨークに直接固着すれば良く、問題は生じなかった。
また、フェライト磁石の１０倍以上のエネルギー積を有
する高特性の希土類永久磁石もよく用いられるようにな
ったが、７０Ｗ以下の小型モータ用途がほとんどなの
で、ヨークに磁石を直接接着してもまったく問題は生じ
なかった。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかるに、最近は高特
性希土類永久磁石を用いた大型磁気回路が作製・量産化
されるようになってきた。典型的な例は、医療用のＭＲ
Ｉ装置に用いる大型マグネットで、一台あたりの希土類
永久磁石使用重量が１ｔを超える大型永久磁石磁気回路
である。直径で１ｍ強の大型磁石を、粉末冶金法により
一体で作製することは、現状では不可能である。また仮
に１ｍ強の磁石を作製することが可能であったとして
も、一度に着磁を行うことができないし、着磁されたも
のを鉄ヨークに組み付けることも実質上不可能である。
従って、１０cm角程度の磁石を多数個組み合わせて、大
型磁石を構成している。個々の磁石の大きさは、最終的
に磁気回路として必要な大きさに比較すると小さいが、
従来使用されていた小型モータ用磁石形状などよりも、
非常に大型化している。このような大きさ（１０cm角）
の磁石と鉄ヨークの間の吸引力は非常に大きく、また隣
接磁石間との反発力でさえも400 〜500kgf以上になる。
それぞれ必要な永久磁石形状は異なるが、電気自動車用
や輸送用の大型同期モータ、搬送用リニア同期モータな
どにも、大型の高特性永久磁石が用いられ始めている。

【０００４】大型希土類永久磁石を鉄ヨーク構造物に組
み付けるために、いくつかの方法が考えられる。一つ
は、着磁された大型磁石を組み付け治具に保持し、鉄バ
ックヨークに直接取り付けて、接着剤または物理的な押
さえで固定を行う。この時、鉄バックヨークと磁石間に
働く吸引力に抗して、磁石を鉄バックヨークに接近させ
る必要がある。吸引力は数百 kgfから１ｔを超える力な
ので、組み付け治具は非常に堅牢で剛性の高いものにし
なければならない。従って、非常に大型の組み付け装置
となる。また、別の方法として、着磁していない磁石を
鉄バックヨークに組み付け、組み付け後に着磁する方法
がある。着磁していない磁石の鉄バックヨークへの組み
付けは、組み付け時の吸引・反発がないため、作業は非
常に容易である。しかし、組み付け後に磁石全体を一度
に着磁せねばならず、非常に大型の着磁装置を必要とす
る。特にＭＲＩ装置用マグネットのような、１ｍを超え
る磁石を一度に着磁することは、電磁石であれパルス着
磁器であれ実質的に不可能である。また、鉄バックヨー
クに組み付けたモータ用のＣ形状大型磁石を、通常の電
磁石で着磁することは困難であり、パルス着磁器で着磁
する場合でも非常に大型の電源を必要とする。

【０００５】粉末冶金法により一体で製造可能な大型磁
石の大きさは、現状では１０ｃｍ角程度である。しか
し、該磁石ブロックの重量は７〜８ｋｇ以上になり、鉄
バックヨークと磁石との吸引力は１ｔを超える。また、
焼結希土類磁石の機械的性質はセラミック材料に類似し
ており、旋盤やフライス盤による削り・切断加工や穴開
け加工は容易ではなく、タップを立てたり、有り溝加工
などを行うことは非常に難しい。したがって、磁石単体
を如何に保持するかも難しい課題である。

【０００６】非磁性バックヨークに磁石を組み付ける場
合は、バックヨークと磁石間の吸引力がないため、組み
込みが容易になるが、磁石・磁石間の反発力はあるた
め、鉄ヨークに組み付ける場合と同じ問題がある。

【０００７】したがって、高特性希土類永久磁石を使用
して大型磁気回路を構成する場合、大型着磁磁石をヨー
ク構造物にどのような構造で、いかにして組み付けるか
が、大きな問題であった。本発明が解決しようとする課
題は、着磁された高特性大型磁石を鉄バックヨークに組
み込む構造とその擦り込み方法に関するもので、本発明
者等は安全にかつ容易に着磁された大型磁石を組み込む
ことを可能にしたものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明は、高特性大型磁
石を鉄バックヨークに組み込んでなる永久磁石磁気回路
にかかわるもので、大型磁石の組み込み構造と着磁され
た磁石を擦り込む方法について、上記課題を解決するも
のである。すなわち、本発明は、永久磁石と磁性または
非磁性ヨークとにより構成される永久磁石磁気回路にお
いて、永久磁石をヨーク板に固着し磁石とヨーク板とが
一体となった磁石構造物が、有り溝に挿入されて固定さ
れ、より大きな磁石構造物を形成してなることを特徴と
する永久磁石磁気回路を要旨とするものである。

【０００９】本発明は、作製可能な大型磁石と、該磁石
と略同等な断面幅を有し、有り溝加工をした鉄プレート
とを一体化させて磁石構造物を作製し、該磁石構造物を
着磁後に、有り溝によって大型ヨーク構造物に取りつけ
るものである。以下、図３の永久磁石型ＭＲＩマグネッ
トに適用した場合において、本発明の実施態様の一例を
述べる。

【００１０】本発明における一体化させた永久磁石と鉄
プレートとは、図１（ａ）に示すように、着磁していな
い磁石１をオス有り溝４加工をしたオス鉄プレート２に
固着し一体化させたものであり、以下、磁石構造物１１
と称する。この鉄プレートは磁石と略同等な断面幅を有
し、磁石との固着の方法は金属部材などで物理的に固定
してもよいし、接着剤で固着してもよい。該磁石構造物
１１は、電磁石による静磁場またはパルス磁場により、
着磁を行う。該磁石構造物は大型とは言え、略１０ｃｍ
角程度なので、これを着磁する事は容易である。

【００１１】次いで、図３に示すように、メス有り溝３
加工を施したバックヨーク板１０、１５と継鉄柱８、９
をボルト１７、１８などで固定し、ヨーク構造物を組み
立てる。ここで、バックヨーク板の材質は磁性、非磁性
のいずれでも良い。前記着磁された磁石構造物を、図２
に示すようにメス有り溝３加工を施したバックヨーク１
０、１５板に擦り込み治具６で必要個数擦り込み、オス
有り溝鉄プレート２に立てたタップ（図示せず）によ
り、ねじでバックヨーク１０、１５と固定する。その
後、整磁板１２、１３を擦り込み・組み込んで図３に示
す大型の磁気回路構造物、ＭＲＩマグネットを完成す
る。

【００１２】本発明の鉄プレートとバックヨーク板に有
り溝構造をとる利点を、以下に述べる。磁石と鉄プレー
トとが一体化されているため、鉄プレートに機械処理を
施せば、擦り込み治具に磁石構造物を保持することが容
易である。着磁された磁石を単体で組み付ける時、磁石
をねじで保持することは既に述べたように困難なので、
磁石保持機構は大型かつ複雑にならざるを得ない。本発
明では、磁石構造物を有り溝に沿って横方向から擦り込
んで組み付けるため、組み付け治具は一方向に押し込み
動作を有する比較的簡便なもので良い。しかも、摩擦力
や吸着力と直角方向に力をかけるため、押し込みに必要
な力は吸着力などの数分の一以下で良い。また、複数の
磁石構造物を擦り込む時、磁石間の同極反発による磁石
構造物間の反発も、有り溝により拘束されているため、
反発力に抗して一方向に押し込むだけで良い。有り溝構
造でなければ、磁石間の反発力に抗して組み込むために
は、組み込み以外の二方向を何らかの方法で拘束してお
かなければならないため、組み付け治具が大型かつ複雑
になる。有り溝ではなく単なる溝加工の方が加工が簡単
で、同等な効果が得られるように考えられる。しかし、
磁石間の反発に対して一方向は拘束されているが、浮き
上がり方向に拘束されていないので、同じ問題が生じ
る。以上述べたように、有り溝加工を施した鉄プレート
とバックヨーク板とを有する大型磁気回路は、組み付け
が容易でかつ作製の寸法に基本的に制限がない。

【００１３】図１（ａ）に示すように、磁石１とオス有
り溝４を有するオス鉄プレート２とが一体となった磁石
構造物１１は、接着剤による固定か物理的な止めによる
固定が行われる。接着剤による固定は最も簡便であり、
接着強度も充分である。特にエポキシ系接着剤やアクリ
ル系接着剤は、単位面積あたりの接着強度が大きいので
好ましい。しかし、該接着剤の接着強度の耐候性や信頼
性は問題がある。一般的には、高温（例えば１００℃以
上）で、接着強度は大幅に低下する。高温かつ高湿の環
境では、接着強度は容易に劣化し、回復しない。また、
エポキシ系接着剤は接着強度が高い代わりに脆性がある
ので、振動などに対して信頼性が乏しい。一方、シリコ
ーン系接着剤の接着強度はエポキシ系に比較し低いが、
耐候性があり、弾性もあるため振動に対して強い。した
がって、用途や使用磁石の大きさ、使用環境などによ
り、接着剤を使い分けする必要がある。接着剤のみの固
定の場合、磁石間の隙間を樹脂で埋めてしまうことも有
効である。

【００１４】物理的な固定は、図１（ｂ）のような押さ
え治具５１による固定が最も簡単である。また、図１
（ｃ）のように押さえ筒５２または押さえ缶で、磁石１
全体を覆うことも可能である。磁石のギャップ側にヨー
クを用いることが可能な場合、図１（ｄ）のように押さ
え板５３により固定は容易になる。この他にも物理的な
固定方法は考えられ、上記三つの例に限定されるもので
はない。なお図１（ｂ）のような押さえ治具５１による
押さえは、磁石同士をできるだけ隙間なく並べる時に
は、適当でない。固定には、接着剤と物理的な押さえを
併用することが望ましい。接着剤による固定と物理的な
押さえの併用により、もし万一接着が剥れて磁石がはず
れても、磁石の飛び出しを物理的な固定で防止すること
ができる。

【００１５】有り溝を有する磁石構造物のバックヨーク
への組み付け方法は、基本的に擦り込みによる。擦り込
みの治具は、例えばボールネジにより擦り込む図２の擦
り込み治具６のようなもので良く、磁石１とオス有り溝
鉄プレート２とが一体となった磁石構造物１１を、バッ
クヨーク板１０のメス有り溝３に擦り込む。擦り込み治
具６は、手動、駆動モータ７や油圧駆動などにより駆動
され、目的に応じて必要な駆動力の得られるものを使用
する。

【００１６】バックヨーク板が鉄の場合、磁石構造物を
直接オス有り溝にはめ込むのは、吸引力が働き容易では
ない。この場合はまずバックヨーク板に、同一寸法のメ
ス有り溝加工を施した非磁性の補助ヨーク（図示せず）
を取りつける。次に磁石構造物を、この非磁性の補助ヨ
ークのメス有り溝に挿入し、擦り込んで、鉄のバックヨ
ーク板の所定位置に設置・固定する。この一連の動作を
必要個数分反復することにより、より大きな永久磁石磁
気回路を構成すれば良い。

【００１７】また、以上に述べた鉄プレート・バックヨ
ーク板は、有り溝のオス・メスを逆に加工してもよいこ
とは言うまでもない。

【００１８】本発明の有り溝構造を有する永久磁石磁気
回路は、ＭＲＩマグネットに限定されるものではなく、
大型ＤＣブラシレスモータやリニア同期モータなどの大
型モータ、アクチュエータなどにも適用できる。この場
合、メス有り溝をローターに施し、固定すれば良い。ま
た、他にもプラズマ発生用の大型磁気回路や電子軌道を
制御する例えば挿入光源などの大型装置にも適用でき
る。

【００１９】

【発明の効果】本発明によれば、有り溝を使用した磁気
回路構造により、ヨーク構造物を組みあげた後、磁石組
み付けを行う事が可能となり、大型の永久磁石磁気回路
を容易に作製できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明における、磁石と有り溝加工をした鉄プ
レートとの固定方法の例を示す模式図であり、（ａ）は
接着剤による固定、（ｂ）は押さえ治具による固定、
（ｃ）は押さえ筒による固定、（ｄ）は押さえ板による
固定を示す図である。

【図２】本発明における磁石構造物を有り溝バックヨー
ク板へ擦り込む方法の一例を示す模式図であり、（ａ）
は側面模式図、（ｂ）は（ａ）のａ−ａ′面の断面模式
図である。

【図３】本発明に用いる磁石対向型永久磁石磁気回路の
模式図であり、（ａ）は上面模式図、（ｂ）は正面模式
図、（ｃ）は側面模式図である。

【符号の説明】

１、１４ ‥‥ 磁石 １０、１５‥‥
バックヨーク板 １１ ‥‥‥ 磁石構造物 ２ ‥‥‥
オス有り溝鉄プレート ３ ‥‥‥ メス有り溝 ４ ‥‥‥
オス有り溝 ５１ ‥‥‥ 押さえ治具 ５２ ‥‥‥
押さえ筒 ５３ ‥‥‥ 押さえ板 ６ ‥‥‥
擦り込み治具 ７ ‥‥‥ 駆動モータ ８、９ ‥‥‥
継鉄柱 １２、１３‥‥ 整磁板 １７、１８‥‥
ネジ

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 永久磁石と磁性または非磁性ヨークとに
   より構成される永久磁石磁気回路において、永久磁石を
   ヨーク板に固着し磁石とヨーク板とが一体となった磁石
   構造物が、有り溝に挿入されて固定され、より大きな磁
   石構造物を形成してなることを特徴とする永久磁石磁気
   回路。
2. 【請求項２】 希土類永久磁石を対向させその空隙側表
   面に磁石整磁板を配置し、更に空隙と反対側に永久磁石
   を保持するためのバックヨークを設け、これらを継鉄で
   磁気的に結合してなる永久磁石磁気回路において、永久
   磁石を鉄プレートに固着して一体化し、これを該バック
   ヨークの有り溝に擦り込ませて固定させてなる、請求項
   １記載の永久磁石磁気回路。