JPH08319973A - 圧縮機およびその吐出弁装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】吐出ポート部のすき間容積をほぼ零にでき、か
つ吐出弁の密封性，追従性の良好な圧縮機の吐出弁装置
およびこれを備えた高性能圧縮機の提供。 【構成】弁体１６と弁シート１７を各々異なる回転曲面
形状にして線接触密封を保ちながら吐出ポート１３のす
き間容積をほぼ零にし、弁体１６を金属の薄肉板やプラ
スチックで形成して軽量化を図り弁体１６を弁シート１
７に付勢するコイルばね１８をばね変位の増加とともに
ばね定数が増加する非線形ばね特性をもつようにした。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は主に冷凍・空調装置に用
いられる圧縮機に係り、特に圧縮機の吐出弁装置に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】従来、冷凍・空調装置に用いられている
ロータリ圧縮機は、密閉容器内に固定子及び回転子を有
する電動要素と、この電動要素によって駆動される圧縮
要素が収納され、圧縮要素はクランク軸の偏心部に自転
自在に嵌合されたローラが、クランク軸の回転によって
シリンダ内を偏心回転運動し、このローラに押圧された
ベーンによりシリンダ内を吸入室と圧縮室に区画され、
吸入パイプより吸入された作動流体（冷媒ガス）を圧縮
し、圧縮されたガスはこの圧縮要素に配設された吐出弁
装置を通って密閉容器内に吐き出され、吐出パイプより
外部の冷凍サイクルに吐出される。ここで、吐出弁装置
としては平板形状のリード弁形式の吐出弁が一般的に使
用されており、圧縮された作動流体が流出する吐出ポー
トの上端部をこの吐出弁の一端が閉塞するように配設さ
れ、この吐出弁の他端は弁変位を規制するストッパを介
して圧縮要素に固定されており、弁の開閉は吐出ポート
内外の圧力差によって自動的に行われるようになってい
る。

【０００３】このように構成されたロータリ圧縮機の吐
出弁装置において、圧縮機の性能上問題となるのが吐出
ポート部の容積、すなわち、すき間容積で、この部分に
存在する作動流体は圧縮機の吐出工程終了時にも排出さ
れずに残るため死容積となる。ここに残った高温高圧の
冷媒ガスはやがて低圧の吸入室内に膨張し、ロータリ圧
縮機の場合はこの膨張のエネルギは有効に回収されない
ため動力損失（以後、再膨張損失と略称する）となり、
圧縮機の性能低下を引き起こしていた。この再膨張損失
は圧縮機の工程容積に占めるすき間容積の比率が大きい
程、また、吸入圧力と吐出圧力の比で表される圧縮機の
運転圧力比が高い程大きくなる。例えば、家庭用冷蔵庫
に用いられているロータリ圧縮機の場合には、この再膨
張損失によって約５％断熱効率が低下していた。

【０００４】この問題点に対して、リード弁形式の吐出
弁でロータリ圧縮機のすき間容積縮小を図った公知技術
として、特開昭59−180097号，実開昭60−21590 号があ
る。また、すき間容積を零にする吐出弁装置としてはUS
P5346373号がある。

【０００５】特開昭59−180097号および実開昭60−2159
0 号公報に開示されたロータリ圧縮機の吐出弁装置は、
いずれも吐出ポート部の厚みを薄肉化しすき間容積を縮
小するもので、強度上あるいは圧縮機の信頼性上から薄
肉化には限界があり、大幅なすき間容積縮小はできなか
った。

【０００６】また、USP5346373号に開示された圧縮機の
吐出弁装置は、球面形状の弁体とし、吐出ポートの弁シ
ートもこの弁体と同一の球面形状にしてすき間容積を零
にするものだが、弁体と弁シートは面接触密封となり弁
体の作動室側有効受圧面積の減少および圧縮機に使用さ
れている潤滑油の粘性等により弁体の押し上げ力が増加
し、過圧縮損失が増加する問題があった。また、圧縮機
の高速運転時には吐出工程終了時における弁体の閉じ遅
れ等の吐出弁の追従性が重要になってくるが、この点に
ついて十分な考慮がなされていなかった。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、吐出
ポート部のすき間容積をほぼ零にでき、かつ吐出弁の密
封性，追従性の良好な圧縮機の吐出弁装置およびこれを
備えた圧縮機を提供することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の圧縮機の吐出弁装置は、弁体と弁シートを
各々異なる回転曲面形状にして線接触密封を保ちながら
吐出ポート部のすき間容積をほぼ零にし、弁体の軽量化
を図るとともに弁体を弁シートに付勢するばねをばね変
位の増加とともにばね定数が増加する非線形ばね特性を
有するようにしたことを特徴とする。

【０００９】

【作用】第１に、例えば弁体を球面形状，弁シートを円
錐台形状というように弁体と弁シートを各々異なる回転
曲面形状にすることにより両者の接触は円になり、線接
触密封を保ちながら吐出ポート部のすき間容積をほぼ零
にすることができ、弁体の作動室側有効受圧面積も拡大
するため弁体の押し上げ力も小さくなり過圧縮損失が軽
減される。

【００１０】第２に、弁体を金属材料の薄肉板塑性加工
または耐熱プラスチック材料あるいは両者の複合材によ
り形成することにより、軽量化を図って弁体の応答性を
良くするとともに、弁体を弁シートに付勢するばねをば
ね変位の増加とともにばね定数が増加する非線形ばね特
性を有するようにしたため、吐出工程開始時には小さな
力で弁体を押し上げることができ過圧縮損失が軽減さ
れ、かつ吐出工程終了時には大きなばね力が働くため弁
体の弁シートへの戻りを迅速にでき弁体の閉じ遅れおよ
びこれに伴う漏れ損失を防止できる。

【００１１】以上により、吐出ポート部のすき間容積に
よる再膨張損失をほぼ零にしてかつ密封性，追従性の良
好な圧縮機の吐出弁装置およびこれを備えた圧縮機を提
供することができる。

【００１２】

【実施例】以下、本発明を図に示す実施例によって詳細
に説明する。

【００１３】図１は本発明の吐出弁装置を備えたロータ
リ圧縮機の一部の縦断面図、図２及び図３は図１の吐出
弁装置の拡大図で、図２は吐出弁閉状態、図３は吐出弁
開状態である。図４は図２のＡ−Ａ断面図、図５は本発
明の吐出弁装置に用いられているコイルばねの特性図で
ある。図１ないし図４において、１は密閉容器で、固定
子２及び回転子３からなる電動要素と、この電動要素に
よって駆動される圧縮要素が収納されている。圧縮要素
は、シリンダ４，シリンダ４の両端開口を閉塞する主軸
受５と副軸受６，クランク軸８，クランク軸８の偏心部
８ａに自転自在に嵌合されたローラ９、およびローラ９
に押圧されシリンダ４内に形成される作動室７を吸入室
と圧縮室に区画するベーン（図示せず）からなる。１０
は密閉容器１の底部に貯溜されている潤滑油、１１は吸
入パイプ、１２は主軸受５の端板に配設された本発明の
吐出弁装置、１３は吐出ポート、１４は吐出室１５を形
成する吐出カバーである。また、吐出弁装置１２は、弁
体１６，弁シート１７，弁体１６を弁シート１７に付勢
するコイルばね１８，弁体１６の運動を案内する弁ガイ
ド１９及び弁体１６の変位を規制するストッパ２０から
構成されている。２１は弁ガイド１９の周囲に形成され
た吐出ガス流路、２２は吐出ガス流路２１へのガスの流
れを均一化する逃げ溝である。弁体１６は金属薄肉板材
の塑性加工等により形成され、吐出ポート１３内に入り
込みこれを閉塞する円錐台形状のシール部１６ａと弁ガ
イド１９に案内されるガイド部１６ｂを有している。弁
シート１７は吐出ポート１３の周囲に一体的に形成され
ており、その断面形状は半径Ｒの円弧でこの円弧を吐出
ポート１３の中心軸の周りに回転させた回転曲面形状に
なっている。また、コイルばね１８は同一素線径でピッ
チをｐ１，ｐ２に変化させている（ｐ１＞ｐ２）。

【００１４】ロータリ圧縮機の圧縮動作は以下のように
行われる。電動要素に通電されると、回転子３の回転は
クランク軸８を駆動し、偏心部８ａに嵌合されたローラ
９がシリンダ４内を偏心回転運動する。ローラ９に押圧
されたベーン（図示せず）によってシリンダ４内の作動
室７が吸入室と圧縮室に仕切られ、吸入パイプ１１より
吸入室内に吸入された作動流体（冷媒ガス）は圧縮室で
圧縮され、圧縮されたガスは吐出ポート１３から吐出弁
装置１２を通って吐出室１５に入り、その後密閉容器１
内に吐き出され、ここから外部の冷凍サイクル（図示せ
ず）に吐出される。

【００１５】次に、本発明の吐出弁装置１２の動作につ
いて説明する。図２は、吐出弁閉状態、すなわち、吸
入，圧縮工程における吐出弁の状態を表している。この
とき弁体１６の上部は吐出ガスの雰囲気になっており高
圧の吐出圧力がかかっている。一方、弁体１６の下部の
吐出ポート１３内は吸入，圧縮工程にある作動室７に連
通しているため吐出圧力よりも低い圧力になっている。
したがって弁体１６には両者の圧力差によって下方に押
しつける力が作用している。この力により弁体１６の円
錐台形状のシール部１６ａは弁シート１７に押しつけら
れ接触部が円の線接触密封が保たれている。圧縮工程が
進み作動室７内の圧力が上昇し吐出圧力よりも大きな圧
力になると、今度は、弁体１６には圧力差によって上方
に押し上げる力が作用する。この流体力により弁体１６
は図３のように押し上げられ、作動室７で圧縮された冷
媒ガスは吐出ポート１３，吐出ガス流路２１を通って吐
出される。吐出工程が終了すると、弁体１６はコイルば
ね１８のばね力によって押し戻され、再び図２の吐出弁
閉状態になる。以上の動作が一定速圧縮機では通常１６
〜２０ｍｓに１回といった高速で繰り返されている。イ
ンバータを搭載した可変速圧縮機ではこれが約７ｍｓに
１回とさらに高速となる。

【００１６】ここで、本発明の吐出弁装置は弁体１６と
弁シート１７を各々異なる回転曲面形状にすることによ
り両者の接触は円になり、線接触密封を保ちながら吐出
ポート部のすき間容積をほぼ零にすることができ再膨張
損失をほぼ零にできる。また、弁体１６の作動室側有効
受圧面積も吐出ポート１３の入口断面積より大きくなる
ため弁体１６の押し上げに必要な差圧も小さくなり過圧
縮損失が軽減される。また、弁体１６を金属材料の薄肉
板で成形しているため、軽量となり弁体の応答性が良く
なる。さらに、弁体１６を弁シート１７に付勢するコイ
ルばね１８を同一素線径でピッチを変化させること等に
より、図５に示すような非線形ばね特性を有するように
したため、吐出工程開始時には小さな力Ｆ１で弁体１６
を押し上げることができ過圧縮損失が軽減され、かつ吐
出工程終了時には大きなばね力Ｆ２が働くため弁体１６
の弁シート１７への戻りを迅速にでき弁体１６の閉じ遅
れおよびこれに伴う漏れ損失を防止することができる。

【００１７】以上により、吐出ポート部のすき間容積に
よる再膨張損失をほぼ零にしてかつ密封性，追従性の良
好な圧縮機の吐出弁装置およびこれを備えたロータリ圧
縮機を提供することができる。なお、実施例では主軸受
５の端板に吐出弁装置１２を配設したが、副軸受６の端
板あるいはシリンダ４の側壁に吐出弁装置１２を配設し
ても、本発明と同様の効果を奏することができる。ま
た、実施例ではロータリ圧縮機として一つのシリンダの
圧縮機を例に挙げて説明したが、本発明はこれ以外に二
つ以上のシリンダをもつロータリ圧縮機にも適用するこ
とができる。

【００１８】図６は本発明の吐出弁装置の他の実施形態
を示す弁体の縦断面図である。この実施例では、金属薄
肉板材の塑性加工等により形成された弁体１６の表面に
ポリテトラフルオロエチレン樹脂等のプラスチック材料
の薄い被膜１６ｃを形成している。これにより、弁体１
６のシール部１６ａの密封性が向上でき、弁体１６のガ
イド部１６ｂと弁ガイド１９との摺動特性が改善され、
密封性，追従性のより良好な圧縮機の吐出弁装置を提供
できる。

【００１９】図７は本発明の吐出弁装置の他の実施例を
示す拡大縦断面図である。本発明の吐出弁装置の動作
は、図２，図３で示した吐出弁装置の場合と同様だが、
吐出弁の形状及び材質が異なっている。図７において、
弁体２２は軽量の耐熱プラスチック材料で形成され、吐
出ポート１３内に入り込みこれを閉塞する球面形状のシ
ール部２２ａと弁ガイド２４に案内されるガイド部２２
ｂを有している。ここで弁ガイド２４は弁体２２の変位
を規制するストッパの機能も兼ねている。また弁シート
２３は円錐台形状になっている。このような吐出弁形状
でも弁体２２と弁シート２３との接触は円になり、線接
触密封を保ちながら吐出ポート部のすき間容積をほぼ零
にすることができ、図２，図３で示した吐出弁装置の場
合と同様に再膨張損失をほぼ零にでき、密封性，追従性
の良好な圧縮機の吐出弁装置を提供することができる。

【００２０】図８は図７で示した吐出弁装置の他の実施
形態を示す弁体縦断面図である。この実施例では、耐熱
プラスチック材料で形成された弁体２２の表面に金属薄
肉板材の塑性加工等により形成されたシール部品２２ｃ
を固着している。このように金属材料とプラスチック材
料の複合材にすることにより、弁体２２のシール部２２
ａの強度を向上でき、軽量でかつ耐久性に優れた圧縮機
の吐出弁装置を提供できる。

【００２１】図９は本発明の吐出弁装置を備えたスクロ
ール圧縮機の一部の縦断面図である。スクロール圧縮要
素は、固定スクロール２５，旋回スクロール２６，旋回
スクロール２６を駆動するクランク軸２７，旋回スクロ
ール２６の自転防止機構であるオルダムリング２７，ク
ランク軸２７を軸支するフレーム２８からなる。固定ス
クロール２５に形成された吐出ポート２９の上部に本発
明の吐出弁装置１２が配設されている。スクロール圧縮
機の圧縮動作は以下のように行われる。電動要素に通電
されると、回転子３の回転はクランク軸８を駆動し、オ
ルダムリング２７の作用で自転を拘束された旋回スクロ
ール２６は固定スクロールに対して公転旋回運動し、両
者のラップ（渦巻体）が噛み合って複数の作動室７を形
成し、吸入パイプ１１から吸入された冷媒ガスはこの作
動室７内で圧縮され、圧縮されたガスは吐出ポート２９
から吐出弁装置１２を通って吐出室１５に入り、その後
密閉容器１内に吐き出され、吐出パイプ３０から外部の
冷凍サイクル(図示せず)に吐出される。

【００２２】スクロール圧縮機はラップ内部で圧縮され
る圧力比が一定の、定圧力比タイプの圧縮機だが、本発
明の吐出弁装置１２を備えることにより運転圧力比より
もラップの設計圧力比（ラップ巻き数に比例）を小さく
しても不足圧縮損失が無く、吐出ポートに起因する再膨
張損失を無くすことができる。したがって、ラップ巻き
数の大幅な縮小が可能となり、例えば、圧力比が４程度
の空調用のスクロールを２倍以上の圧力比となる冷凍用
のスクロールとして高効率で使用することが可能とな
り、両者の部品共用化が図れ、大幅なコスト低減が実現
できる。

【００２３】

【発明の効果】本発明によれば、吐出ポート部のすき間
容積をほぼ零にでき、かつ吐出弁の密封性，追従性の良
好な圧縮機の吐出弁装置およびこれを備えたロータリ圧
縮機ならびにスクロール圧縮機を提供することができる
ので、ロータリ圧縮機の高性能化，スクロール圧縮機の
高性能・低コスト化が達成される。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の吐出弁装置を備えたロータリ圧縮機の
一部の縦断面図。

【図２】本発明の吐出弁装置の吐出弁閉状態の説明図。

【図３】本発明の吐出弁装置の吐出弁開状態の説明図。

【図４】図２のＡ−Ａ断面図。

【図５】本発明の吐出弁装置に用いられているコイルば
ねの特性図。

【図６】本発明の吐出弁装置の他の実施形態を示す弁体
の縦断面図。

【図７】本発明の吐出弁装置の他の実施例を示す縦断面
図。

【図８】本発明の吐出弁装置の他の実施形態を示す弁体
の縦断面図。

【図９】本発明の吐出弁装置を備えたスクロール圧縮機
の一部の縦断面図。

【符号の説明】

１２…吐出弁装置、１３…吐出ポート、１６…弁体、１
７…弁シート、１８…コイルばね、１９…弁ガイド、２
０…ストッパ、２１…吐出ガス流路。

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】圧縮要素の吐出ポートを開閉する回転曲面
   形状の弁体と、前記弁体が当接して線接触密封をなす回
   転曲面形状の弁シートと、前記弁体を前記弁シートに付
   勢するばねと、前記弁体の傾きを規制する弁ガイドと、
   前記弁体の変位を規制するストッパを備えたことを特徴
   とする圧縮機の吐出弁装置。
2. 【請求項２】前記弁体が金属材料またはプラスチック材
   料あるいは金属とプラスチックの複合材料により形成さ
   れた請求項１に記載の圧縮機の吐出弁装置。
3. 【請求項３】前記弁体を前記弁シートに付勢するばねが
   非線形ばね特性を有するように形成された請求項１に記
   載の圧縮機の吐出弁装置。
4. 【請求項４】請求項１に記載の前記圧縮機の吐出弁装置
   を軸受端板あるいはシリンダ側壁に設けたロータリ圧縮
   機。
5. 【請求項５】請求項１に記載の前記圧縮機の吐出弁装置
   を固定スクロール部材に設けたスクロール圧縮機。