JPH08311598A - 溶接熱影響部靱性に優れた鋼材の製造方法 - Google Patents
溶接熱影響部靱性に優れた鋼材の製造方法Info
- Publication number
- JPH08311598A JPH08311598A JP11828095A JP11828095A JPH08311598A JP H08311598 A JPH08311598 A JP H08311598A JP 11828095 A JP11828095 A JP 11828095A JP 11828095 A JP11828095 A JP 11828095A JP H08311598 A JPH08311598 A JP H08311598A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- steel
- less
- oxide
- toughness
- mass
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
Abstract
i:0.05〜0.6%、Mn:0.3〜3.0%、P:
0.03%以下、S:0.01%以下、Al:0.000
1〜0.01%、Ti:0.005〜0.03%、O:
0.0010〜0.0070%を含有し、さらに、Cr:
1.0%以下、Mo:0.7%以下、Cu:2.0%以下、
Ni:2.0%以下、Nb:0.08%以下、V:0.1%
以下、B:0.002%以下のうちの一種以上を含有
し、残部がFe及び不可避的不純物からなる炭素鋼を製造
する方法である。予めSiとMnを添加して予備脱酸を行
い、溶存酸素濃度を20〜100ppm に制御した後Tiを
添加し、0.5<[Ti mass%]/[O mass%] <4.0の関
係を満たす組成の鋼とする。 【効果】 高いHAZ靱性が得られるAl-Mn 酸化物相を
有する酸化物を分散した鋼を安定して製造することがで
きる。
Description
のように溶接熱影響部における靱性が要求される鋼を製
造する方法に関するものである。
大入熱化が行われているが、一般に鋼材の溶接時には母
材側熱影響部(以下、「HAZ部」という)の結晶粒が
粗大化して靱性が低下することが知られている。これに
対して、適当な酸化物、窒化物等の微細な粒子を分散さ
せれば組織が微細化してHAZ部の靱性向上に効果があ
る。
する一連の特許では鋼中のAl量を減じ、Tiを添加するこ
とにより微細なTi系酸化物を析出,分散させ、HAZ部
の組織を微細化して靱性を向上させる方法が提案されて
いる。さらに析出粒子を微細化するために特公平3−6
7467号では凝固時の冷却速度を制御する方法が、ま
た特開平4−6243号ではTi添加後出鋼までの時間を
規定する方法が提案されている。また、特開平4−27
13号、特開平3−177535号等ではさらにZr,Y
等を添加することが析出粒子を微細,分散化を図るため
に効果的であることが述べられている。
HAZ靱性を改善する方法は公知であり、微細分散粒子
としてTi系酸化物が適当であることは多くの開示がなさ
れている。しかしながら、これらのTi系酸化物を分散さ
せた鋼では年々高まる材料の要求性能に対して十分応え
ることができないのが実情であり、さらに安定してHA
Z靱性を向上できる材料及びその製造方法が求められる
ようになってきている。
めには鋼中にMnS を分散させることが重要であると考
え、析出の核となりやすい酸化物を規定した方法が特開
平5−271864号及び特開平5−255801号に
開示されている。これらには具体的な酸化物として、Si
O2-MnOあるいはAl2O3-MnO が提案されている。
号において、Al-Mn 酸化物相及び不可避的に共存する酸
化物相を有する粒子を分散した鋼を提案している。この
鋼は0.2〜20μmの直径の分散粒子が鋼材断面の1
mm2 当たり4〜1000個分散しており、かつ分散粒
子を構成する酸化物相として原子割合で(Al+Mn)が4
0%以上、Al:Mnの比率が1:1〜5:1という特徴を
有するAl-Mn 酸化物相を構成要素として有する酸化物分
散鋼であり、従来の鋼と比較して飛躍的に高い靱性が得
られる。この鋼は酸化物そのものが粒内フェライト相の
生成核となることを意図しており、前述のような酸化物
をMnS の析出核とすることを意図する酸化物分散鋼とは
本質的に異なるものである。
要素として有する酸化物分散鋼を製造する方法として、
本出願人は特願平6−141960号の明細書及び図面
において、Alを含有する合金を添加する方法を、また、
特願平6−141961号の明細書及び図面において、
酸素ポテンシャルを制御しうる酸化物を添加する方法を
提案している。これらの方法はAl-Mn 酸化物相を構成要
素として有する酸化物が安定して得られるという点で優
れた方法であるが、Ti添加量が適切に規定されていない
ので、Ti添加量によっては目的とする酸化物が生成しな
いという問題があった。
御するために成分含有量を規定するものとしては、特開
平2−175815号に記載された方法がある。この方
法は、化学量論的見地からTi,N,O量がバランスする
ように所定の範囲に規定し、さらに凝固時、凝固後の冷
却速度を規定することにより分散粒子を微細化しようと
いうものであった。しかしながら、この方法は酸化物の
形態を制御しようというものではなく、また良好な靱性
の確保のためにはTiN の生成が必須である。
来の問題点に鑑みてなされたものであり、鋼中の酸化物
の形態を制御することにより高いHAZ靱性が得られる
ような酸化物を分散した鋼材を安定して製造する方法を
提供することを目的としている。
件及び溶存酸素量、脱酸元素添加量を種々変化させて微
細分散粒子の形態とHAZ靱性との相関についての一連
の研究を行い、より適切な形態の微細分散粒子を鋼中に
分散させればHAZ靱性が飛躍的に向上することを知見
した。さらに、微細分散粒子をこの形態となすためには
鋼の化学成分及び溶製過程における微細分散粒子の形態
を適切に規定することが重要であることを知見した。
ものであり、第1の本発明の溶接熱影響部靱性に優れた
鋼材の製造方法は、重量%で、 C:0.01〜0.25% Si:0.05〜0.6% Mn:0.3〜3.0% P:0.03%以下 S:0.01%以下 Al:0.0001〜0.01% Ti:0.005〜0.03% O:0.0010〜0.0070% を含有し、さらに、Cr:1.0%以下、Mo:0.7%以
下、Cu:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Nb:0.0
8%以下、V:0.1%以下、B:0.002%以下の
うちの一種以上を含有し、残部がFe及び不可避的不純物
からなる炭素鋼を製造するにあたり、予めSiとMnを添加
して予備脱酸を行い、溶存酸素濃度を20〜100ppm
に制御した後Tiを添加し、 0.5<[Ti mass%]/[O mass%] <4.0 の関係を満たす組成の鋼としているのである。
優れた鋼材の製造方法は、重量%で、 C:0.01〜0.25% Si:0.05〜0.6% Mn:0.3〜3.0% P:0.03%以下 S:0.01%以下 Ti:0.005〜0.03% O:0.0010〜0.0070% を含有し、さらに、Cr:1.0%以下、Mo:0.7%以
下、Cu:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Nb:0.0
8%以下、V:0.1%以下、B:0.002%以下の
うちの一種以上を含有し、残部がFe及び不可避的不純物
からなる炭素鋼を製造するにあたり、予めSiとMnを添加
して予備脱酸を行い、溶存酸素濃度を20〜100ppm
とし、かつ溶鋼中のAl濃度を0.0001〜0.003
0%に制御した後Tiを添加し、 0.5<[Ti mass%]/[O mass%] <4.0 の関係を満たす組成の鋼とし、分散粒子としてAl−Mn酸
化物相及びTi酸化物相を含有する粒子を鋼中に分散させ
ているのである。
は、予備脱酸条件及び溶存酸素量、脱酸元素添加量を種
々変化させた鋼を溶製し、鋼中の微細分散粒子の分散状
況及び形態、さらには実継ぎ手性能を調査する一連の実
験を行った。その結果、実継ぎ手性能は鋼中の微細分散
粒子の分散状況及び形態と相関があり、鋼中の微細分散
粒子の分散状況及び形態は鋼成分を制御することにより
変化することを知見した。さらに、適切な形態の酸化物
を微細分散させると著しく実継ぎ手性能の良い鋼材が得
られ、この酸化物はTi添加前の溶鋼成分及びTi添加量を
適切に制御することにより安定して得られることを知見
した。本発明はこれらの知見に基づいてなされたもので
ある。
ために適切な形態の粒子を鋼中に分散することが有効で
あることは前述の通りであり、微細分散粒子としてTi系
酸化物が有効であることは良く知られている。さらに、
前述のように特開平3−162592号には、Al-Mn 酸
化物相及び不可避的に共存する酸化物相を有する粒子を
分散した鋼はTi系酸化物が分散した鋼の性能を飛躍的に
上回る良好な靱性がえられることが開示されている。こ
の酸化物粒子は、具体的には直径が0.2〜20μmで
あり、金属元素のモル分率として(Al+Mn)が40%以
上であり、かつAl:Mnの比率が1:1〜5:1という特
徴を有するAl-Mn 酸化物相を構成要素として含むものを
いい、このような粒子が鋼材断面の1mm2 当たり4〜
1000個分散していることが必要である。
化物相及び不可避的に共存する酸化物相を有する粒子を
鋼中に微細分散させるためには、溶製の初期より溶鋼中
に溶存する酸化物の形態を制御することが重要であるこ
とを知見した。すなわち、溶製の初期においては、Mn,
Siを添加して予備脱酸を行うことで全酸素濃度を調整す
るとともに、脱酸生成物としてMnO-SiO2を生成する必要
がある。このMnO-SiO2の一部は浮上分離するが、微細な
ものは溶鋼中に残存する。その後、より強い脱酸元素の
適量の添加によりこの酸化物の形態が変化する。適切な
脱酸元素を適量添加することによりAl-Mn 酸化物相及び
不可避的に共存する酸化物相を有する粒子を鋼中に微細
分散させることができる。
及びMnの濃度は脱酸生成物形態の制御及び得られた鋼の
性能の観点から次のように規定する必要がある。すなわ
ち、Siは過剰に添加するとHAZ部での島状マルテンサ
イトの生成を助長するために0.6%が上限である。一
方、Mnは母材及びHAZ部の強度を確保するために必要
な元素であることから0.3%を下限とするが、過剰な
添加はHAZ部の靱性を低下させるので、3.0%を上
限とする。さらに、溶存酸素濃度を20〜100ppm と
し、酸化物の形態を効率的な予備脱酸が可能でAl-Mn 酸
化物相形成の核とするために有利なMnO-SiO2とするため
に、Si及びMnの添加量については重量割合にてSi:0.
05〜0.6%及びMn:0.3〜3.0%が必要であ
る。また、予備脱酸後の溶存酸素濃度については20pp
m 未満では分散させる酸化物の核の量が不十分となり、
100ppm を超えてしまった場合には溶鋼の清浄性が不
十分となる。
SiO2などではなく確実にMnを含有させてMnO-SiO2とし、
かつ確実に溶存酸素濃度を20〜100ppm とするため
には0.8〜2%に制御することがより望ましい。Siに
ついては鋼中のSi濃度が0.2%を超えると低温靱性の
悪化を招くことから0.2%以下とすることが望まし
い。
強い脱酸元素を添加すると脱酸生成物中のMn,Si が脱酸
元素に置換されて鋼中に微細に分散する粒子となる。
子を得るためには、脱酸元素を添加した段階で全ての脱
酸生成物中のMnが置換されてはならず、脱酸生成物中に
Mnを残すことが必要である。すなわち、溶鋼中のOがTi
量に対して過剰に存在すればよいことになる。そこで、
後述のように溶存酸素量、脱酸元素添加量と脱酸生成物
の組成を検討した結果、[Ti mass%]/[O mass%] の値で
4.0未満であれば脱酸生成物中にMnが含有されること
が判明した。化学量論的にはTiの酸化物が鋼中でTi2O3
であると仮定すると、Ti量に対してOが過剰となるため
には[Ti mass%]/[O mass%] 2.0以下であることが必
要であるが、実際には各成分がそれぞれに固溶限があ
り、相互作用があるために4.0未満であれば脱酸生成
物中にMnが含有されるものと考えられる。一方、下限に
ついてはTi添加量が少ない場合には予備脱酸時に生成し
たMnO-SiO2のSiが十分Tiに置換されず、鋼塊中の分散粒
子中にもSiが残存する。このような粒子では十分な靱性
が得られないとともに、溶鋼の脱酸不足となる。従っ
て、0.5より大きければ適切な形態の分散粒子が得ら
れることが判明した。
的に脱酸生成物中に含有されAl2O3となる。従って、分
析下限の0.0001%程度であっても酸化物中にはAl
が含有されている。一方、Alが0.01%以上であれば
Al2O3 が生成し、通常のアルミキルド鋼と同様の酸化物
形態となる。すなわち、Alは0.0001〜0.01%
と規定することにより、Al2O3 以外の酸化物が鋼中に生
成する。さらに、Al濃度を重量割合にて0.0001〜
0.0030%と規定することにより、微細粒子のうち
のAl2O3 が主体のもの、Ti2O3 が主体のものの割合が減
少し、Al-Mn 酸化物相及び不可避的に共存する酸化物相
を有する粒子が安定して生成するので、よりよい靱性が
得られる。このように、Alも鋼中で酸化物を形成するの
で、本来はAl含有量についてもTi/Oの比を規定した関係
式の中で考慮するべきであるが、今回の実験ではAl=
0.01%未満の成分領域では考慮しなくても差し支え
ないことが判った。
ラグ、各種の耐火物等から溶鋼中に移行するため、特に
添加しなくても少量は不可避的に溶鋼中に含有される
が、含有量を精度良く制御するために、特願平6−14
1960号の明細書及び図面、或いは特願平6−141
961号の明細書及び図面において、Alを含有する合金
や酸化物等を意図的に添加することが有効であることを
開示している。
にMnS が存在する時には良好な靱性が得られることが数
多く述べられているが、本発明の方法では微細に分散し
た形態による寄与が圧倒的に大きく、酸化物に付着した
MnS は必ずしも必要ではない。
る他の元素含有量の限定理由について説明する。Cは、
母材及びHAZ部の強度を確保するために必要な元素で
あり、NbやVの添加時にこれらの効果を得るためにも
0.01%程度は必要であるのでこれを下限とした。し
かしながら、過剰に存在すると靱性に悪影響を及ぼすの
で、0.25%を上限とした。
あり、粒界に偏析して割れ発生の一因となる元素である
ので、0.03%を上限とした。Sも鋼中に不可避的に
含有される不純物であり、過剰に存在すると溶接割れの
原因となるので、上限を0.01%とした。
るいは二種以上を添加することで良好な強度,靱性を得
ることができる元素であるが、いずれも過剰に添加した
場合にはHAZ部の靱性を悪化させるので、Crは1.0
%以下、Moは0.7%以下、Cuは2.0%以下、Niは
2.0%以下、Nbは0.08%以下,Vは0.1%以下
と上限を定めた。これらの元素は靱性に影響する微細粒
子の分散には影響を与えないので、材料特性上の要求に
あわせて適宜添加する。
な元素であるが、HAZ部の靱性には悪影響を及ぼす。
しかしながら、本発明のような酸化物を分散した鋼の場
合には少量の添加によってHAZ部の靱性を改善でき
る。この目的から適当な添加量は0.00005〜0.
0004%であるが、加えて母材の強度を確保すること
も目的とする場合には、0.0004〜0.002%が
適当である。
変更しても、これらの元素は靱性の向上に寄与する酸化
物の形態には影響を与えず、本発明の方法が有効である
ことは言うまでもない。
s%] の値を制御することにより、鋼中に存在する酸化物
の形態を制御しようとするものであり、製造の装置及び
規模が変わっても有効であることは言うまでもない。ま
た、鋼の凝固時の冷却速度により粒子径が変化し、冷却
速度が速いほど微細になることは明らかであるが、本発
明の方法の場合は低温靱性には酸化物の形態による寄与
が大きく、通常の製造工程である連続鋳造でも静止鋳造
であっても、他の製造工程であってもいずれも良好な結
果が得られることは言うまでもない。
例及び比較例に基づいて説明する。本発明者らは150
kgの高周波真空溶解炉を使用して種々の組成の鋼を溶製
し、予備脱酸条件、溶存酸素量、脱酸元素量と脱酸生成
物の組成の検討を行った。また、初期酸素濃度0.04
〜0.07%の溶鋼を1550〜1650℃で溶解し、
Mn,Siを添加して予備脱酸を行い、溶鋼中の全酸素濃度
を確認した後、Tiを所定量添加した。溶鋼中の全酸素濃
度を調整するために必要に応じて真空脱ガス或いは酸化
物粉末の添加を行った。また、Al含有量の制御のために
必要に応じて少量のAlの添加、酸化物粉末の添加、或い
はAlを含有する合金元素の添加を行った。これらの鋼の
溶製時には適宜試料を採取し、溶鋼中に存在する酸化物
の形態、大きさ等を調査した。
Z試験を行い、JIS 4号シャルピー試験片を作成して衝
撃試験を行った。種々の入熱及び試験温度で試験を実施
したが、SAW=20kJ/cm 相当の入熱で再現HAZ試
験、−30℃で衝撃試験を行ったときの吸収エネルギー
は代表性のある値が得られたので、この条件における吸
収エネルギーで評価した。
るとともに、組成をエネルギー分散型X線マイクロアナ
ライザーで調査した。組成の分析では酸化物中に含有さ
れる金属元素の分析値から母材の影響と考えられるFeの
分を引き、他の金属元素は酸化物として存在するものと
して換算した。
び鋼塊の成分分析値から求めた[Timass%]/[O mass%]
を表1に、また酸化物の形態、衝撃試験結果等を表2に
示す。また、比較例における予備脱酸条件及び鋼塊の成
分分析値から求めた[Ti mass%]/[O mass%] を表3に、
また酸化物の形態、衝撃試験結果等を表4に示す。
溶製を行った。実施例1では鋼中の微細酸化物はTi-Mn
酸化物であり、実施例2ではAl2O3 主体のものが多く存
在したが、いずれもTi含有量を制御することにより酸化
物相中にはMnが含有されていた。一方、[Ti mass%]/[O
mass%] を4.0以上とした比較例1,2では酸化物中
にMnがほとんど含有されておらず、比較例1ではAl-Ti
系酸化物が中心であり、比較例2ではTi系酸化物が中心
であった。さらに、[Ti mass%]/[O mass%] を0.5以
下とした比較例3では酸化物中にSiも存在していた。こ
の実施例1,2と比較例1〜3を比べると、実継ぎ手の
靱性は本発明鋼の方が明らかに良好な性能となる。
-Mn 酸化物相及びTi酸化物相を含有する粒子を鋼中に分
散させた実施例3,4では、目的とする形態の酸化物が
鋼中に分散しており、継ぎ手靱性の点でも極めて良好な
性能が得られた。
等しい条件の鋼の継ぎ手靱性調査結果を図1に示す。
0.5<[Ti mass%]/[O mass%] <4.0の場合には靱
性が著しく向上することが明らかである。鋼中の酸化物
の形態は明らかに[Ti mass%]/[O mass%] と相関があ
り、0.5以下の場合には酸化物中にSiが存在してお
り、また、4.0以上の場合には酸化物中にMnが存在せ
ず、Tiの酸化物あるいはTi-Al と不可避的に含有される
金属元素の酸化物となる。さらに、図1より明らかなよ
うに、1.5<[Ti mass%]/[O mass%] <3.5の範囲
では際立って高い性能が得られている。
態は、Siのみで予備脱酸を行った場合、Mnのみで行った
場合を除いていずれもMnO-SiO2が存在していた。予備脱
酸をSiのみで行った比較例4では、Ti添加前にはMnO-Si
O2ではなくSiO2のみが生成しており、また、Ti添加後も
Ti,Al,Siの酸化物が生成しているので、十分な性能が得
られなかった。一方、Mnのみで予備脱酸を行った比較例
5では脱酸不足となり、鋼塊に気泡が存在しており良好
な性能を得ることはできなかった。従って、本発明の方
法においてはSiとMnを両者共添加して予備脱酸を行うこ
とが必須となる。
吸収エネルギーが得られたものの、その値はやや低めで
あった。Mnを0.52%とした実施例9では鋼中に微細
な酸化物中のMnの存在割合がやや低く、これに対応して
吸収エネルギーの値もやや低かった。
酸素量が20ppm 未満であった比較例6では鋼中に酸化
物がほとんど見当たらず、一方、100ppm を超えた比
較例7では溶鋼の清浄性が不十分となり、10μm以上
の粗大な介在物が大量に鋼中に存在した。従って、鋼の
清浄度を保ち、かつ微細な酸化物を分散させるために
は、本発明のように溶存酸素濃度を20〜100ppm と
する必要があることが明らかとなった。
適当な酸化物を微細分散させる方法も知られている。そ
こで、S濃度を変化させて酸化物上のMnS の析出割合を
変化させた鋼を意図的に製造し、同様の調査を行った。
他の実施例及び比較例ではS=0.001〜0.005
%であるのに対してSを0.0005%に低減した実施
例10では酸化物上にほとんどMnS は析出していなかっ
たが、他の実施例と同等の靱性を得ることができた。従
って、本発明の方法においてはMnS の粒子数は鋼材の性
能にほとんど影響しないことが判明した。
予備脱酸条件、及び[Ti mass%]/[Omass%] を所定の範
囲内に制御したにもかかわらず鋼中の微細な酸化物の多
くはAl2O3 であり、靱性も十分な値が得られなかった。
響することが知られており、Nの影響を調査した。実施
例11では他の鋼材についてはいずれもN=20〜40
ppmであるのに対して55ppm と高くしたが、他の実施
例と同等の性能が得られており、本発明の方法において
はN含有量は靱性に影響していないことが判明した。
造方法では、所定の含有率等に規定された鋼材を製造す
るにあたり、予めSiとMnを添加して予備脱酸を行い、溶
存酸素濃度を20〜100ppm に制御した後、或いは溶
存酸素濃度を20〜100ppmとし、かつ溶鋼中のAl濃
度を0.0001〜0.0030%に制御した後Tiを添
加し、 0.5<[Ti mass%]/[O mass%] <4.0 の関係を満たす組成の鋼としたり、或いはさらに分散粒
子としてAl−Mn酸化物相及びTi酸化物相を含有する粒子
を鋼中に分散させるので、高いHAZ靱性が得られるAl
-Mn 酸化物相を有する酸化物を分散した鋼を安定して製
造することができる。
/[O mass%] と継ぎ手靱性(吸収エネルギー)の関係を
調査した結果を示す図である。
Claims (2)
- 【請求項1】 重量%で、 C:0.01〜0.25% Si:0.05〜0.6% Mn:0.3〜3.0% P:0.03%以下 S:0.01%以下 Al:0.0001〜0.01% Ti:0.005〜0.03% O:0.0010〜0.0070% を含有し、さらに、Cr:1.0%以下、Mo:0.7%以
下、Cu:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Nb:0.0
8%以下、V:0.1%以下、B:0.002%以下の
うちの一種以上を含有し、残部がFe及び不可避的不純物
からなる炭素鋼を製造するにあたり、 予めSiとMnを添加して予備脱酸を行い、溶存酸素濃度を
20〜100ppm に制御した後Tiを添加し、 0.5<[Ti mass%]/[O mass%] <4.0 の関係を満たす組成の鋼とすることを特徴とする溶接熱
影響部靱性に優れた鋼材の製造方法。 - 【請求項2】 重量%で、 C:0.01〜0.25% Si:0.05〜0.6% Mn:0.3〜3.0% P:0.03%以下 S:0.01%以下 Ti:0.005〜0.03% O:0.0010〜0.0070% を含有し、さらに、Cr:1.0%以下、Mo:0.7%以
下、Cu:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Nb:0.0
8%以下、V:0.1%以下、B:0.002%以下の
うちの一種以上を含有し、残部がFe及び不可避的不純物
からなる炭素鋼を製造するにあたり、 予めSiとMnを添加して予備脱酸を行い、溶存酸素濃度を
20〜100ppm とし、かつ溶鋼中のAl濃度を0.00
01〜0.0030%に制御した後Tiを添加し、 0.5<[Ti mass%]/[O mass%] <4.0 の関係を満たす組成の鋼とし、分散粒子としてAl−Mn酸
化物相及びTi酸化物相を含有する粒子を鋼中に分散させ
ることを特徴とする溶接熱影響部靱性に優れた鋼材の製
造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP11828095A JP3225788B2 (ja) | 1995-05-17 | 1995-05-17 | 溶接熱影響部靱性に優れた鋼材の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP11828095A JP3225788B2 (ja) | 1995-05-17 | 1995-05-17 | 溶接熱影響部靱性に優れた鋼材の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08311598A true JPH08311598A (ja) | 1996-11-26 |
JP3225788B2 JP3225788B2 (ja) | 2001-11-05 |
Family
ID=14732761
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP11828095A Expired - Lifetime JP3225788B2 (ja) | 1995-05-17 | 1995-05-17 | 溶接熱影響部靱性に優れた鋼材の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3225788B2 (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN101899607A (zh) * | 2009-05-26 | 2010-12-01 | 宁波市鄞州商业精密铸造有限公司 | 耐磨合金铸钢的熔炼工艺及其设备系统 |
JP2018083963A (ja) * | 2016-11-22 | 2018-05-31 | 新日鐵住金株式会社 | 鋼矢板 |
-
1995
- 1995-05-17 JP JP11828095A patent/JP3225788B2/ja not_active Expired - Lifetime
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN101899607A (zh) * | 2009-05-26 | 2010-12-01 | 宁波市鄞州商业精密铸造有限公司 | 耐磨合金铸钢的熔炼工艺及其设备系统 |
JP2018083963A (ja) * | 2016-11-22 | 2018-05-31 | 新日鐵住金株式会社 | 鋼矢板 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP3225788B2 (ja) | 2001-11-05 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3408385B2 (ja) | 溶接熱影響部靭性の優れた鋼 | |
JP6245417B1 (ja) | 鋼材 | |
WO2022220242A1 (ja) | 耐溶接高温割れ性に優れた高Ni合金 | |
JP4074536B2 (ja) | 母材および溶接熱影響部の靱性に優れた鋼材 | |
JP3502822B2 (ja) | 溶接熱影響部靭性の優れた鋼材およびその製造方法 | |
JPH0642979B2 (ja) | チタン酸化物を含有する溶接・低温用高張力鋼の製造法 | |
JP6665658B2 (ja) | 高強度厚鋼板 | |
JP3733898B2 (ja) | 大入熱溶接部靱性に優れた厚肉高張力鋼材の製造方法 | |
WO2017183720A1 (ja) | 厚鋼板 | |
WO2022210651A1 (ja) | 二相ステンレス鋼線材および二相ステンレス鋼線 | |
JP2001089825A (ja) | 溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材およびその製造方法 | |
JP3852118B2 (ja) | 溶接熱影響部靱性の優れた鋼材 | |
CN116529396A (zh) | 耐焊接高温开裂性优异的高Ni合金 | |
JP3225788B2 (ja) | 溶接熱影響部靱性に優れた鋼材の製造方法 | |
JPH09310147A (ja) | 溶接熱影響部靭性の優れた鋼板 | |
JP3215296B2 (ja) | 溶接熱影響部靱性の優れた溶接構造用鋼材の製造方法 | |
JP3403293B2 (ja) | 溶接熱影響部靭性の優れた鋼板 | |
JP2002371338A (ja) | レーザー溶接部の靭性に優れた鋼 | |
JP7027858B2 (ja) | 炭素鋼鋳片及び炭素鋼鋳片の製造方法 | |
JP3520241B2 (ja) | Mgを含有する超大入熱溶接用鋼 | |
JP5213517B2 (ja) | 溶接熱影響部靭性に優れた鋼材 | |
JP2000226633A (ja) | 靭性に優れた電子ビーム溶接用鋼 | |
JP3481417B2 (ja) | 溶接熱影響部靭性の優れた厚鋼板 | |
JP4357080B2 (ja) | 凝固結晶粒微細化鋼及び凝固結晶粒微細化オーステナイト系ステンレス鋼並びにそれらの溶接継ぎ手 | |
JP3036361B2 (ja) | Al−Mn系酸化物分散鋼の製造法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20070831 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080831 Year of fee payment: 7 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080831 Year of fee payment: 7 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090831 Year of fee payment: 8 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090831 Year of fee payment: 8 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100831 Year of fee payment: 9 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110831 Year of fee payment: 10 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110831 Year of fee payment: 10 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120831 Year of fee payment: 11 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120831 Year of fee payment: 11 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130831 Year of fee payment: 12 |
|
S111 | Request for change of ownership or part of ownership |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130831 Year of fee payment: 12 |
|
R371 | Transfer withdrawn |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R371 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130831 Year of fee payment: 12 |
|
S111 | Request for change of ownership or part of ownership |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130831 Year of fee payment: 12 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
EXPY | Cancellation because of completion of term |