JPH08306529A - 軟磁性薄膜、それを用いた磁気ヘッドおよび磁気記録装置 - Google Patents

軟磁性薄膜、それを用いた磁気ヘッドおよび磁気記録装置

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JPH08306529A
JPH08306529A JP10748795A JP10748795A JPH08306529A JP H08306529 A JPH08306529 A JP H08306529A JP 10748795 A JP10748795 A JP 10748795A JP 10748795 A JP10748795 A JP 10748795A JP H08306529 A JPH08306529 A JP H08306529A
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JP
Japan
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thin film
soft magnetic
phase
magnetic
magnetic thin
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JP10748795A
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Fumiyoshi Kirino
文良 桐野
Moichi Otomo
茂一 大友
Yoshitsugu Koiso
良嗣 小礒
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Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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Publication date
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    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01FMAGNETS; INDUCTANCES; TRANSFORMERS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR MAGNETIC PROPERTIES
    • H01F10/00Thin magnetic films, e.g. of one-domain structure
    • H01F10/08Thin magnetic films, e.g. of one-domain structure characterised by magnetic layers
    • H01F10/10Thin magnetic films, e.g. of one-domain structure characterised by magnetic layers characterised by the composition
    • H01F10/12Thin magnetic films, e.g. of one-domain structure characterised by magnetic layers characterised by the composition being metals or alloys
    • H01F10/13Amorphous metallic alloys, e.g. glassy metals
    • H01F10/132Amorphous metallic alloys, e.g. glassy metals containing cobalt
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01FMAGNETS; INDUCTANCES; TRANSFORMERS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR MAGNETIC PROPERTIES
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    • H01F10/13Amorphous metallic alloys, e.g. glassy metals
    • H01F10/131Amorphous metallic alloys, e.g. glassy metals containing iron or nickel

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  • Power Engineering (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 FeまたはCoを主体とする軟磁性薄膜にお
いて、良好な軟磁気特性を維持しながら耐食性および耐
熱性を改善する。 【構成】 FeおよびCoより選ばれる少なくとも1種
の磁性元素と、Ta,Nb,Hf,Cr,Ru,Rh,
Ti,Ni,ZrおよびAlよりなる第1群より選ばれ
る少なくとも1種の第1元素と、C,N,BおよびSi
よりなる第2群より選ばれる少なくとも1種の第2元素
とを含んでなる軟磁性薄膜において、その組織中に非導
電性の無機化合物粒子を分散させ、前記磁性元素の結晶
相の成長を抑制する。前記非導電性の無機化合物粒子
は、Ta,Nb,Cr,Ti,Ni,ZrおよびSiよ
りなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物、
窒化物あるいは硼素化物の粒子とするのが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、軟磁性薄膜、それを
用いた磁気ヘッドおよび磁気記録装置に関し、さらに言
えば、磁性元素としてFeまたはTaを含む軟磁性薄膜
と、その軟磁性薄膜を用いて作製した磁気ヘッドおよび
磁気記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、高度情報化社会の進展に伴い、小
型で高密度な情報記録装置へのニーズが高まっている。
このような状況下、磁気記録装置は高密度記録、ダウン
サイジングへの研究が急速に進められている。
【0003】高密度記録を実現するには、生成した微小
磁区が安定に存在するように高い保磁力を有する情報記
録媒体と共に、このような情報記録媒体に記録できるよ
うに高い飽和磁束密度を有する磁気ヘッドが必要とな
る。
【0004】この種磁気ヘッドに用いる材料として現在
知られているものには、Fe−C系、Fe−N系などが
ある。これらの材料は通常、スパッタリング法などによ
り非晶質の薄膜を成膜後、その薄膜を一定の温度で熱処
理して微結晶化し、軟磁気特性を発現させている。この
場合の熱処理温度は、軟磁気特性を発現させるために必
要な最低温度に設定すればよいが、これらの材料を用い
てメタル・イン・ギャップ(MIG)型磁気ヘッドを作
製する場合には、ヘッド作製工程にガラス・ボンディン
グ工程を含むため、熱処理温度は軟磁気特性の発現温度
より高いボンディング温度にならざるを得ない。よっ
て、この種磁気ヘッド材料には、少なくともそのボンデ
ィング温度に耐えるだけの熱安定性の確保が必要とな
る。
【0005】また、これら磁気ヘッド材料の軟磁気特性
は、熱処理によって析出する微結晶粒子のサイズに依存
することから、良好な軟磁気特性を持つ薄膜を得るため
には、この微結晶粒子のサイズを制御する必要がある。
【0006】さらに、これらの磁気ヘッド材料はFeを
主体として構成されているため、大気中の酸素や水と反
応して水酸化物や酸化物を生成し、その結果、磁気特性
(特に保磁力や飽和磁束密度)の変動を生じて磁気ヘッ
ドとしての性能が低下することがある。そこで、これら
の材料を用いた磁気ヘッドの実用化には、大気中の酸素
などに起因する磁気特性の変動を抑制することが必要で
ある。すなわち、耐食性を向上することが必要である。
【0007】この種磁気ヘッド材料の耐食性を図ったも
のとしては、磁性元素以外の特定の元素を軟磁性薄膜に
添加することにより、その軟磁気特性を保持しながら耐
食性を向上させるという方法が提案されている。(例え
ば特開平3−20444号公報参照)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、特開平3−2
0444号公報に開示されているような、耐食性向上の
ための元素を添加する従来技術では、軟磁気特性と耐食
性とをバランスよく両立することができない、換言すれ
ば、軟磁気特性と耐食性の双方を向上させるように添加
元素の濃度を最適化するのが困難であるという問題があ
る。例えば、耐食性を優先して確保すると、磁気特性
(特に飽和磁束密度と保磁力)が低下し、Fe−C系や
Fe−N系材料が有する本来の磁気特性が得られない。
逆に、磁気特性を優先して確保すると、十分な耐食性が
得られず磁気ヘッドの信頼性が低下する。
【0009】この問題を解決するため、各種元素を軟磁
性薄膜に添加する方法が提案されているが、この場合に
も、それら元素の添加により飽和磁束密度の低下や磁歪
定数の増大が生じ、情報の記録が良好にできなかった
り、再生時に出力波形が歪んだりするという問題があ
る。
【0010】そこで、この発明の目的は、FeまたはC
oを主体とする軟磁性薄膜において、良好な軟磁気特性
の維持と耐食性の改善とをバランス良く実現することに
ある。
【0011】この発明の他の目的は、FeまたはCoを
主体とする軟磁性薄膜において、耐熱性を改善すること
にある。
【0012】この発明のさらに他の目的は、従来より信
頼性の高い磁気ヘッドおよび磁気記録装置を提供するこ
とにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
(1) この発明の第1の軟磁性薄膜は、FeおよびC
oより選ばれる少なくとも1種の磁性元素と、Ta,N
b,Hf,Cr,Ru,Rh,Ti,Ni,Zrおよび
Alよりなる第1群より選ばれる少なくとも1種の第1
元素と、C,N,BおよびSiよりなる第2群より選ば
れる少なくとも1種の第2元素とを含んでなる軟磁性薄
膜において、前記薄膜の組織中に非導電性の無機化合物
粒子が分散されていることを特徴とする。
【0014】前記非導電性の無機化合物粒子は、Ta,
Nb,Cr,Ti,Ni,ZrおよびSiよりなる第3
群より選ばれる少なくとも1種の第3元素の酸化物、窒
化物あるいは硼素化物の粒子であるのが好ましい。これ
らの化合物は結晶成長が生じにくい化合物であり、かつ
Fe(あるいはCo)粒子、およびTaCに代表される
化合物粒子の結晶成長を抑制しやすいためである。
【0015】前記非導電性の無機化合物粒子は、前記薄
膜の組織中に均一にほぼ分散しているのが好ましい。非
導電性であると、Fe(あるいはCo)と局部電池を形
成せず、しかもこれらの粒子が微細化しているので腐食
を生じにくいためである。
【0016】この発明の第1の軟磁性薄膜では、薄膜の
組織が微小な結晶相を含んでおり、その微小な結晶相
が、前記磁性元素の相と、前記第1元素の炭化物、窒化
物、珪素化物あるいは硼素化物の相と、前記非導電性無
機化合物の相とを含んでいるのが好ましい。この場合
に、この発明の効果が有効に発揮されるからである。
【0017】このような結晶相は、前記合金膜をその結
晶化温度あるいはそれ以上の温度に加熱して軟磁気特性
を発現させる際に得られる。また、X線回折により各結
晶相に対応したいくつかのピークを示す。
【0018】前記非導電性無機化合物の結晶相の平均サ
イズは、前記第1元素の炭化物、窒化物、珪素化物ある
いは硼素化物の結晶相の平均サイズよりも小さいのが好
ましい。この場合、これらの結晶相は、炭化物、窒化
物、珪素化物あるいは硼素化物の結晶相の成長を抑制す
る作用を有するからである。
【0019】前記磁性元素の相の結晶粒の平均サイズは
10nm以下であり、前記第1元素の炭化物、窒化物、
珪素化物あるいは硼素化物の相の結晶粒の平均サイズは
5nm以下であるのが好ましい。前記磁性元素の相の結
晶粒の平均サイズが10nmを越えていると、保磁力が
増大する等の軟磁気特性の劣化をきたすためであり、前
記第1元素の炭化物、窒化物、珪素化物あるいは硼素化
物の相の結晶粒の平均サイズが5nmを越えていると、
Fe(あるいはCo)との間に局部電池を形成して軟磁
性薄膜の耐食性が劣化するためである。
【0020】この軟磁性薄膜の保磁力は1エルステッド
以下、透磁率は1000以上、飽和磁束密度は1.5テ
スラ以上であるのが好ましい。磁気ヘッドに好適な軟磁
気特性が得られるからである。保磁力が1エルステッド
より小さかったり、透磁率が1000未満であると、磁
気ヘッドを構成した場合の性能が著しく劣化するためで
あり、飽和磁束密度が1.5テスラ未満であると、高保
磁力を有する磁気記録媒体へ安定した記録ができないか
らである。
【0021】好ましい実施例では、前記薄膜の組織が微
小な結晶相を含んでおり、その微小な結晶相が、Fe相
と、Ta,Nb,Hf,Ti,NiおよびZrよりなる
第4群より選ばれる少なくとも1種の第4元素の炭化
物、窒化物、珪素化物あるいは硼素化物の相と、前記非
導電性無機化合物の相とを含む。高い性能を維持しつ
つ、熱安定性を向上させるためである。
【0022】前記非導電性の無機化合物粒子は、前記磁
性元素の結晶相の成長を抑制する作用を有しているのが
好ましい。これにより、磁性元素の結晶相が微小とな
り、耐食性および耐熱性の向上が図れるからである。
【0023】(2) この発明の第2の軟磁性薄膜は、
(a)FeおよびCoより選ばれる少なくとも1種の磁
性元素の第1微結晶相と、(b)Ta,Nb,Hf,C
r,Ru,Rh,Ti,Ni,ZrおよびAlよりなる
第1群より選ばれる少なくとも1種の第1元素と、C,
N,BおよびSiよりなる第2群より選ばれる少なくと
も1種の第2元素の化合物の第2微結晶相と、(c)非
導電性の無機化合物の第3微結晶相とを備えていること
を特徴とする。
【0024】前記非導電性の無機化合物は、Ta,N
b,Cr,Ti,Ni,ZrおよびSiよりなる第3群
より選ばれる少なくとも1種の第3元素の酸化物、窒化
物あるいは硼素化物であるのが好ましい。
【0025】前記非導電性の無機化合物の第3微結晶相
は、前記薄膜の組織中に均一にほぼ分散しているのが好
ましい。
【0026】前記第3微結晶相の平均サイズは、前記第
2微結晶相の平均サイズよりも小さいのが好ましい。
【0027】前記第1微結晶相の平均サイズが10nm
以下であり、前記第2微結晶相の平均サイズが5nm以
下であるのが好ましい。
【0028】保磁力が1エルステッド以下、透磁率が1
000以上、飽和磁束密度が1.5テスラ以上であるの
が好ましい。
【0029】好ましい実施例では、前記第1微結晶相が
Fe相とされ、前記第2微結晶相が、Ta,Nb,H
f,Ti,Ni,ZrおよびAlよりなる第4群より選
ばれる少なくとも1種の第4元素と前記第2元素の化合
物の相とされる。
【0030】前記非導電性の無機化合物の第3微結晶相
は、前記磁性元素の結晶相の成長を抑制する作用を有し
ているのが好ましい。
【0031】これらの理由は上記(1)で述べたのと同
じである。
【0032】(3) この発明の第1および第2の軟磁
性薄膜において好適に使用できる、前記第3元素の酸化
物、窒化物あるいは硼素化物の具体例を挙げれば、次の
通りである。
【0033】(酸化物)SiOx,ZrOx,TiOX
NbOX(またはNb25-X),Ta25-X,HfOX
NiOX,Al23-X (窒化物)SiNx,BN,TaNx,TiNx,Al
x,NbN (硼素化物)Hf−Bx,Nb−Bx,TiBx,Zr
x,CrBx (4) この発明の磁気ヘッドは、上記(1)または
(2)の軟磁性薄膜を備えたことを特徴とする。この磁
気ヘッドは、メタル・イン・ギャップ型として構成され
ているのが好ましい。上記(1)または(2)の軟磁性
薄膜の効果を有効に発揮できるからである。
【0034】この軟磁性薄膜は、磁気ヘッドのコアの全
体に用いてもよいし、コアの一部に用いてもよい。
【0035】(5) この発明の磁気記録装置は、上記
(3)の磁気ヘッドを備えたことを特徴とする。
【0036】この磁気記録装置は、磁気テープ装置や磁
気ディスク装置など、任意の構成を採ることができる。
【0037】
【作用】この発明の第1の軟磁性薄膜では、Feおよび
Coより選ばれる少なくとも1種の磁性元素と、Ta,
Nb,Hf,Cr,Ru,Rh,Ti,Ni,Zrおよ
びAlよりなる第1群より選ばれる少なくとも1種の第
1元素と、C,N,BおよびSiよりなる第2群より選
ばれる少なくとも1種の第2元素とを含んでなる軟磁性
薄膜において、前記薄膜の組織中に結晶成長しにくい非
導電性の無機化合物粒子が分散されているため、磁性元
素の相が微小(例えば10nm以下)となる。よって、
良好な軟磁気特性が安定して得られると共に、その軟磁
性薄膜の耐熱性も改善される。
【0038】磁性元素相が微小になることにより当該軟
磁性薄膜が不動態化するため、また、非導電性の無機化
合物粒子により導電性が低下するため、その耐食性を大
きく向上させることができる。
【0039】この発明の第2の軟磁性薄膜では、(a)
FeおよびCoより選ばれる少なくとも1種の磁性元素
の第1微結晶相と、(b)Ta,Nb,Hf,Cr,R
u,Rh,Ti,Ni,ZrおよびAlよりなる第1群
より選ばれる少なくとも1種の第1元素と、C,N,B
およびSiよりなる第2群より選ばれる少なくとも1種
の第2元素の化合物の第2微結晶相と、(c)非導電性
の無機化合物の第3微結晶相とを備えているので、第3
微結晶相により、磁性元素の第1微結晶相の結晶成長さ
らには第2微結晶相の結晶成長も抑制される。
【0040】その結果、第1微結晶相が微小となり、良
好な軟磁気特性が安定して得られると共に、その軟磁性
薄膜の耐熱性も改善される。
【0041】磁性元素相が微小になることにより当該軟
磁性薄膜が不動態化するため、また、第3微結晶相は非
導電性であるため、その耐食性を大きく向上させること
ができる。
【0042】この発明の磁気ヘッドおよび磁気記録装置
は、以上のような耐食性、耐熱性および軟磁気特性に優
れた軟磁性薄膜を用いて構成しているので、従来より高
い信頼性が選られる。
【0043】
【実施例】以下、この発明を実施例に基づいて詳細に説
明する。 [実施例1]この実施例の軟磁性薄膜は、磁性元素とし
てFeを、第1元素としてTa、CrおよびRuを、第
2元素としてCをそれぞれ含むFeTaCCrRu合金
の薄膜である。非導電性の無機化合物としては窒化シリ
コン(Si34)を用いた。
【0044】(軟磁性薄膜の製法)このFeTaCCr
Ru軟磁性薄膜は、次のようにして作製した。まず、F
e,Ta,C,CrおよびRu の各元素の粉体を熱間
静圧プレス法(HIP法)により一体に成型したFeT
aCCrRu合金ターゲットと、Si34の焼結体ター
ゲットとを用い、放電ガスにArガスを用いて両ターゲ
ットを同時にスパッタして、フェライト基板上に膜厚5
μmのFeTaCCrRu合金の薄膜を得た。この工程
において、放電ガスArの圧力は5mTorr、投入R
F電力は400Wとした。
【0045】HIP法により作製したターゲットを用い
ると、ターゲット製造時にターゲット中へ混入する酸素
濃度を抑制できるため、形成した軟磁性薄膜中の酸素濃
度を低減することができる利点がある。
【0046】FeTaCCrRu合金ターゲットの組成
は(Fe75Ta9161-x(Cr60Ru40xで、x=
0.05,0.07,0.125の3種類とした。
【0047】これらのスパッタ条件は、使用するスパッ
タ装置に応じて適宜変更が可能であり、これらの値に限
定されるものではない。
【0048】こうして得られた合金薄膜(試料1〜1
0)の組成は以下の通りであり、使用したFeTaCC
rRu合金ターゲットの組成とほぼ同じであった。
【0049】(実施例) 試料1 :(Fe75Ta9160.95(Cr60Ru400.05 (Si34含有) 試料2 :(Fe75Ta9160.93(Cr60Ru400.07 (Si34含有) 試料3 :(Fe75Ta9160.875(Cr60Ru400.125 (Si34含有) 試料4 :(Fe75Ta9160.95(Cr70Ru300.05 (Si34含有) 試料5 :(Fe75Ta9160.93(Cr70Ru300.07 (Si34含有) 試料6 :(Fe75Ta9160.875(Cr70Ru300.125 (Si34含有) 試料7 :(Fe78Ta8140.95(Cr70Ru300.05 (Si34含有) 試料8 :(Fe78Ta8140.93(Cr70Ru300.07 (Si34含有) 試料9 :(Fe78Ta8140.875(Cr70Ru300.125 (Si34含有) 試料10:(Fe75Ta9160.93(Cr70Ru300.07 (Si34含有) また、比較例として、Si34を同時スパッタしないこ
とを除いて上記と同じ方法で、FeTaCCrRu合金
よりなる薄膜(試料11)を作製した。さらに、他の比
較例として、Si34を同時スパッタせず、しかも、C
rを除いたFeTaCRu合金よりなる薄膜(試料1
2)と、Ruを除いたFeTaCCr合金よりなる薄膜
(試料13)とを、同じ方法で作製した。こうして得ら
れた合金薄膜(試料11〜13)の組成は以下の通りで
ある。
【0050】(比較例) 試料11:(Fe75Ta9160.93(Cr70Ru300.07 (Si34なし) 試料12:(Fe75Ta9160.93Ru0.07 (Si34なし) 試料13:(Fe75Ta9160.93Cr0.07 (Si34なし) 次に、こうして得たFeTaCCrRu合金の薄膜を5
90°Cで30分間、Ar気流中で熱処理して軟磁気特
性を発現させ、FeTaCCrRu合金よりなる軟磁性
薄膜(試料1〜10)を得た。これらの軟磁気特性を表
1に示す。
【0051】比較例についても、同様の熱処理により軟
磁気特性を発現させ、FeTaCCrRu合金よりなる
軟磁性薄膜(試料11)、FeTaCRu合金よりなる
軟磁性薄膜(試料12)、FeTaCCr合金よりなる
軟磁性薄膜(試料13)を得た。これらの軟磁気特性も
表1に併せて示す。
【0052】熱処理の雰囲気はAr雰囲気に限らず、H
eやN2などの雰囲気でもよく、真空雰囲気でもよい。
熱処理温度(ここでは590°C)において軟磁性薄膜
やフェライト基板などの磁気ヘッドを構成する材料が反
応しない雰囲気であればよい。 この実施例1に属する
試料1〜10では、いずれもHc≦0.1エルステッド
(Oe),Bs≧1.5T,μ≧1000,λ≦1×1
-6であり、磁気ヘッドに好適な軟磁気特性を有してい
ることが分かる。
【0053】比較例としての試料11〜13の磁気特性
は、試料1〜10に比べて飽和磁束密度Bsが増加する
傾向があり、また、Hc≧0.33エルステッド(O
e)と、試料1〜10に比べて保磁力Hcが増加した以
外は、磁気特性に大きな違いは見られない。
【0054】(Si34微粒子の効果)ここで、Bsと
Hcが増加した原因を把握するため、透過型電子顕微鏡
により軟磁性薄膜の組織を観察した。その結果、試料1
〜10におけるα−Feの結晶粒子のサイズが試料11
〜13のそれに比べて小さいことが確認された。これ
は、試料11〜13では非導電性無機化合物であるSi
34の微結晶が存在しないため、熱処理によってα−F
eの結晶が大きく成長したためであることが分かった。
換言すれば、Si34の微結晶が、α−Feの結晶粒子
の成長を抑制する効果(ピン止め効果)を有しているこ
とが分かった。
【0055】そこで、Si34微粒子の効果を調べるた
めに、X=0.1として、Si34の微粒子を含むFe
TaCCrRu軟磁性薄膜とSi34の微粒子を含まな
いFeTaCCrRu軟磁性薄膜とを作製し、熱処理温
度を変化させながら得られる保磁力の変化を調べた。そ
の結果を図1に示す。なお、ここで「保磁力」を取り上
げたのは、保磁力は軟磁性薄膜の組織を反映して敏感に
変化し、組織の相違を効果的に反映するからである。
【0056】図1から、熱処理温度700°Cまでは両
磁性膜ともにHcの差はあまり見られないが、700°
Cを越えると、Si34の微粒子を含まない軟磁性薄膜
では、急激にHcが増大している。これに対し、Si3
4の微粒子を分散させた軟磁性薄膜では、Hcの増加
は非常にわずかである。よって、Si34微粒子が軟磁
性薄膜の耐熱性向上に大きな効果があることが確認され
た。
【0057】(結晶粒サイズ)次に、このSi34微粒
子を分散させた軟磁性薄膜(試料1〜10)の組織を透
過型電子顕微鏡により観察し、各相の結晶粒子のサイズ
を求めた。その結果、α−Fe相が約 9nm〜12n
m程度(平均9nm)、TaC相が約3〜5nm(平均
4nm)であり、Si34相が2〜4nm(平均2.5
nm)であった。
【0058】よって、Si34相の結晶粒子の平均サイ
ズは、TaC相の結晶粒子の平均サイズよりも小さいこ
とが分かった。
【0059】(耐熱温度)図1と同様の方法により耐熱
温度を調べた。その結果を表1に「耐熱温度」として示
す。表1より、試料1〜10の軟磁性薄膜では800°
Cを越えているが、比較例である試料11〜13ではほ
ぼ700°Cに制限されることが分かる。 (耐食性試験1)常温における耐食性を調べるため、S
34微粒子を組織中に分散させた軟磁性薄膜(試料1
〜10)と、Si34微粒子を分散させない軟磁性薄膜
(試料11〜13)とを、常温で塩化ナトリウム水溶液
(濃度:0.5規定)中に500時間浸漬させ、孔食の
発生の有無を目視で観察した。また、試験終了後の飽和
磁束密度Bs(t)が試験開始時の飽和磁束密度Bs
(0)に対してどれだけ変化したかを知るため、Bs
(t)のBs(0)に対する比Bs(t)/Bs(0)
を算出した。その結果を表1に「耐食性」として示す。
【0060】表1から、Si34微粒子を含む試料1〜
10の軟磁性薄膜では、孔食の発生はまったく見られな
かった。また、試験の前後で飽和磁束密度Bsにはなん
ら変化は見られなかった。
【0061】これに対し、比較例である試料11〜13
では、孔食による軟磁性薄膜の溶解が見られ、またそれ
によって、試験後には飽和磁束密度Bsが減少してい
た。
【0062】よって、試料1〜10の軟磁性薄膜は、比
較例である試料11〜13の軟磁性薄膜に比べて、常温
において優れた耐食性を持つことが分かった。
【0063】(耐食性試験2)高温高湿環境における耐
食性を調べるため、Si34微粒子を組織中に分散させ
た軟磁性薄膜(試料1〜10)と、Si34微粒子を分
散させない軟磁性薄膜(試料11〜13)とを、温度8
0°C、相対湿度95%の環境中に2000時間以上放
置し、耐食性試験1の場合と同様に、孔食の発生の有無
の目視観察とBs(t)/Bs(0)値の算出を行なっ
た。
【0064】Si34微粒子を含む試料1〜10の軟磁
性薄膜では、この場合も孔食の発生、飽和磁束密度Bs
の変化は共に見られなかった。
【0065】(磁気ヘッド)試料1の(Fe75Ta9
160.95(Cr60Ru400.05の組成を持つ軟磁性薄膜
を用いて、VTR用のMIG(メタル・イン・ギャッ
プ)型磁気ヘッドを作製した。その構造の概略を図2に
示す。
【0066】図2において、この磁気ヘッドは、互いに
対向して配置された2個の単結晶フェライト基板2を備
えている。各フェライト基板2の断面略V字状の対向面
には、試料1の軟磁性薄膜1が形成されている。両フェ
ライト基板2は、それら軟磁性薄膜1を対向させて、鉛
低融点ガラス4により互いに接合・一体化されている。
2枚の軟磁性薄膜1は、両フェライト基板2により形成
されるギャップ部3に位置している。低融点ガラス4に
は透孔が形成されている。
【0067】以上の構成を持つ磁気ヘッドは次のように
して作製した。試料1の軟磁性薄膜1を単結晶フェライ
ト基板2の一面に形成した後、その軟磁性薄膜1上にS
iO2膜(厚さ200nm)と、Cr膜(厚さ100n
m)とを順に形成した。その後、これを窒素気流中にて
600°Cで1時間熱処理し、磁気ヘッド基板を得た。
その後、同一構成の磁気ヘッド基板を2個、低融点ガラ
ス4によりボンディングし一体化した。こうして、図2
に示す磁気ヘッドを得た。
【0068】ここでは、熱処理温度を600°Cに設定
しているが、これに限定されない。この熱処理温度は、
このガラスボンディング工程においてボンディングに必
要な温度によって適宜変更される。
【0069】フェライト基板2と軟磁性薄膜1の間に、
両者の接着性を向上させるために、接合層を設けてもよ
い。
【0070】次に、この磁気ヘッドを用いてVTR装置
を作製し、磁気テープを走行させてハイビジョンのディ
ジタル画像情報を記録したところ、40dB以上のS/
Nが得られた。なお、磁気テープと磁気ヘッドの相対速
度は36m/s、データレートは46.1Mbps、ト
ラック幅は40μm とした。
【0071】この磁気ヘッドの耐食性を、塩化ナトリウ
ム水溶液(濃度:0.5規定)中への浸漬試験法および
高温高湿度環境(温度:60°C、相対湿度:95%)
中での結露試験法により評価した。
【0072】まず、この磁気ヘッドを塩化ナトリウム水
溶液(濃度:0.5規定)中に500時間浸漬した後、
この磁気ヘッドを再びVTR装置にセットして記録/再
生特性を測定した。その結果、浸漬前後において記録/
再生特性に違いは見られなかった。
【0073】次に、この磁気ヘッドをペルチェ素子上に
固定して10°Cに保ち、この磁気ヘッドをペルチエ素
子と共に温度60°C、相対湿度95%の環境に放置し
た。その結果、ヘッド全体に結露が生じた。この状態で
2000時間以上放置したが、腐食の発生や記録/再生
信号の劣化は見られなかった。
【0074】(変形例)以上の説明では、軟磁性薄膜と
してFeTaCCrRu合金膜を使用し、非導電性の無
機化合物としてSi34を使用しているが、この発明は
これらに限定されるものではない。例えば、添加元素と
して、Ruに代えてRhを用いても同様の効果が得られ
た。この他、TaをZrに変えたFeZrCCrRu、
TaをHfに変えたFeHfCCrRu、TaをTiに
変えたFeTiCCrRuを用いても、同様の効果が得
られた。
【0075】また、Crの代わりに、Ta,Nb,C
r,Ti,Ni,ZrまたはAlで母組成に含まれてい
ない元素を用いても、同様の効果が得られた。
【0076】Ta,Nb,Hf,Cr,Ru,Rh,T
i,Ni,Zr,Alなどの添加元素は、Feに固溶し
て金属間化合物などの合金を形成するため、軟磁気特性
発現のための熱処理時にFeの結晶成長が抑制される。
また、この結晶成長抑制効果に加えて、SiNxの結晶
粒子によっても熱処理時のFeの結晶成長が抑制される
ため、TaCの結晶粒子の作用とあいまって、そのFe
の結晶成長抑制の効果は増幅される。この効果は、Si
x以外の非導電性の無機化合物(例えば、SiOx,B
N,TaNx,TiNxなど)を用いても得られる。
【0077】SiNxなどの非導電性の無機化合物は、
このような耐熱性向上効果の外に、耐食性向上の効果も
有している。SiNxなどの非導電性の無機化合物は、
導電率が著しく低いために、その無機化合物とα−Fe
との間で局部電池を形成しにくいからである。
【0078】
【表1】
【0079】[実施例2]この実施例の軟磁性薄膜は、
磁性元素としてFeを、第1元素としてNb,Alおよ
びRuを、第2元素としてNをそれぞれ含むFeNbN
AlRu合金の薄膜である。非導電性の無機化合物とし
ては酸化ジルコニウム(ZrO2)を用いた。
【0080】(軟磁性薄膜の製法)このFeNbNAl
Ru軟磁性薄膜は、次のようにして作製した。まず、F
e,Nb,AlおよびRu の各元素の粉体をHIP法
により一体に成型したFeNbAlRu合金ターゲット
と、ZrO2の焼結体ターゲットとを用い、放電ガスに
ArとN2の混合ガス(体積混合比:Ar/N2=85/
15)を用いて両ターゲットを同時にスパッタして、フ
ェライト基板上に、膜厚5μmのFeNbNAlRu合
金の薄膜を得た。この工程において、放電ガス(Ar/
2)の圧力は5mTorr、投入RF電力は400W
とした。
【0081】FeNbAlRu合金ターゲットの組成
は、(Fe85Nb151-x(Al80Ru20xで、x=
0.05, 0.07,0.10の3種類とした。
【0082】これらのスパッタ条件は、使用するスパッ
タ装置に応じて適宜変更が可能であり、これらの値に限
定されるものではない。
【0083】こうして得られた合金薄膜(試料1〜1
0)の組成は以下の通りであり、使用したFeNbAl
Ru合金ターゲットの組成にNを添加したものとほぼ同
じであった。
【0084】(実施例) 試料1 :(Fe75Nb9160.95(Al80Ru200.05 (ZrO2含有) 試料2 :(Fe75Nb9160.93(Al80Ru200.07 (ZrO2含有) 試料3 :(Fe75Nb9160.90(Al80Ru200.10 (ZrO2含有) 試料4 :(Fe78Nb7150.95(Al70Ru300.05 (ZrO2含有) 試料5 :(Fe78Nb7150.93(Al70Ru300.07 (ZrO2含有) 試料6 :(Fe78Nb7150.90(Al70Ru300.10 (ZrO2含有) 試料7 :(Fe75Nb9160.95(Al80Ru200.05 (ZrO2含有) 試料8 :(Fe75Nb9160.93(Al80Ru200.07 (ZrO2含有) 試料9 :(Fe75Nb9160.90(Al80Ru200.10 (ZrO2含有) 試料10:(Fe75Nb9160.90(Al80Ru200.10 (ZrO2含有) また、比較例として、ZrO2を同時スパッタしないこ
とを除いて上記と同じ方法で、FeNbNAlRu合金
よりなる薄膜(試料11)を作製した。さらに、他の比
較例として、ZrO2を同時スパッタせず、しかも、R
uを除いたFeNbNAl合金よりなる薄膜(試料1
2)と、Alを除いたFeNbNRu合金よりなる薄膜
(試料13)とを、同じ方法で作製した。こうして得ら
れた合金薄膜(試料11〜13)の組成は以下の通りで
ある。
【0085】(比較例) 試料11:(Fe75Nb9160.90(Al80Ru200.10 (ZrO2なし) 試料12:(Fe75Nb9160.92Al0.08 (ZrO2なし) 試料13:(Fe75Nb9160.95Ru0.05 (ZrO2なし) 次に、こうして得たFeNbNAlRu合金の薄膜を5
90°Cで30分間、Ar気流中で熱処理して軟磁気特
性を発現させ、FeNbNAlRu合金よりなる軟磁性
薄膜(試料1〜10)を得た。これらの軟磁気特性を表
2に示す。
【0086】比較例についても、同様の熱処理により軟
磁気特性を発現させ、FeNbNAlRu合金よりなる
軟磁性薄膜(試料11)、FeNbNAl合金よりなる
軟磁性薄膜(試料12)、FeNbNRu合金よりなる
軟磁性薄膜(試料13)を得た。これらの軟磁気特性も
表2に併せて示す。
【0087】熱処理の雰囲気はAr雰囲気に限らず、H
eやN2などの雰囲気でもよく、真空雰囲気でもよい。
熱処理温度(ここでは590°C)において軟磁性薄膜
やフェライト基板などの磁気ヘッドを構成する材料が反
応しない雰囲気であればよい。 この実施例2に属する
試料1〜10では、いずれもHc≦0.1エルステッド
(Oe),Bs≧1.4T,μ≧1000,λ≦1×1
-6であり、実施例1と同様に、磁気ヘッドに好適な軟
磁気特性を有していることが分かる。
【0088】比較例としての試料11〜13の磁気特性
は、試料1〜10に比べて飽和磁束密度Bsが増加する
傾向があり、また、Hc≧0.30エルステッド(O
e)と、試料1〜10に比べて保磁力Hcが増加した以
外は、磁気特性に大きな違いは見られない。
【0089】(ZrO2微粒子の効果)ここで、Bsと
Hcが増加した原因を把握するため、透過型電子顕微鏡
により軟磁性薄膜の組織を観察した。その結果、試料1
〜10におけるα−Feの結晶粒子のサイズが試料11
〜13のそれに比べて小さいことが確認された。これ
は、試料11〜13では非導電性無機化合物であるZr
2の微結晶が存在しないため、熱処理によってα−F
eの結晶が大きく成長したためであることが分かった。
【0090】そこで、ZrO2微粒子の効果を調べるた
めに、X=0.1として、ZrO2の微粒子を含むFe
NbNAlRu軟磁性薄膜とZrO2の微粒子を含まな
いFeNbNAlRu軟磁性薄膜とを作製し、熱処理温
度を変化させながら得られる保磁力の変化を調べた。そ
の結果を図3に示す。
【0091】図3から、熱処理温度700°Cまでは両
磁性膜ともにHcの差はあまり見られないが、700°
Cを越えると、ZrO2の微粒子を含まない軟磁性薄膜
では、急激にHcが増大している。これに対し、ZrO
2の微粒子を分散させた軟磁性薄膜では、Hcの増加は
非常にわずかである。よって、ZrO2微粒子が軟磁性
薄膜の耐熱性向上に大きな効果があることが確認され
た。
【0092】(結晶粒サイズ)次に、このZrO2微粒
子を分散させた軟磁性薄膜(試料1〜10)の組織を透
過型電子顕微鏡により観察し、各相の結晶粒子のサイズ
を求めた。その結果、α−Fe相が約 9nm〜12n
m程度(平均9nm)、NbC相が約3〜5nm(平均
4nm)であり、ZrO2相が2〜4nm(平均2.5
nm)であった。
【0093】よって、ZrO24相の結晶粒子の平均サイ
ズは、NbC相の結晶粒子の平均サイズよりも小さいこ
とが分かった。
【0094】(耐熱温度)このZrO2微粒子を分散さ
せた軟磁性薄膜(試料1〜10)の組織を透過型電子顕
微鏡により観察し、各相の結晶粒子のサイズを求めた。
その結果、α−Fe相が約 9nm〜12nm程度(平
均9nm)、NbC相が約3〜5nm(平均3.5n
m)であり、ZrO2相が2〜4nm(平均2.2n
m)であった。
【0095】よって、ZrO2相の結晶粒子の平均サイ
ズは、NbC相の結晶粒子の平均サイズよりも小さいこ
とが分かった。
【0096】(耐熱温度)図3と同様の方法により耐熱
温度を調べた。その結果を表2に「耐熱温度」として示
す。表2より、試料1〜10の軟磁性薄膜では800°
Cを越えているが、比較例である試料11〜13ではほ
ぼ700°Cに制限されることが分かる。 (耐食性試験1)常温における耐食性を調べるため、Z
rO2微粒子を組織中に分散させた軟磁性薄膜(試料1
〜10)と、ZrO2微粒子を分散させない軟磁性薄膜
(試料11〜13)とを、常温で塩化ナトリウム水溶液
(濃度:0.5規定)中に500時間浸漬させ、孔食の
発生の有無を目視で観察した。また、試験終了後の飽和
磁束密度Bs(t)が試験開始時の飽和磁束密度Bs
(0)に対してどれかけ変化したかを知るため、Bs
(t)のBs(0)に対する比Bs(t)/Bs(0)
を算出した。その結果を、表2に「耐食性」として示
す。
【0097】表2から、ZrO2微粒子を含む試料1〜
10の軟磁性薄膜では、孔食の発生はまったく見られな
かった。また、試験の前後で飽和磁束密度Bsにはなん
ら変化は見られなかった。
【0098】これに対し、比較例である試料11〜13
では、孔食による軟磁性薄膜の溶解が見られ、またそれ
によって、試験後には飽和磁束密度Bsが減少してい
た。
【0099】よって、試料1〜10の軟磁性薄膜は、比
較例である試料11〜13の軟磁性薄膜に比べて、常温
において優れた耐食性を持つことが分かった。
【0100】(耐食性試験2)高温高湿環境における耐
食性を調べるため、ZrO2微粒子を組織中に分散させ
た軟磁性薄膜(試料1〜10)と、ZrO2微粒子を分
散させない軟磁性薄膜(試料11〜13)とを、温度8
0°C、相対湿度95%の環境中に2000時間以上放
置し、耐食性試験1の場合と同様に、孔食の発生の有無
の目視観察とBs(t)/Bs(0)値の算出を行なっ
た。
【0101】ZrO2微粒子を含む試料1〜10の軟磁
性薄膜では、この場合も孔食の発生、飽和磁束密度Bs
の変化は共に見られなかった。
【0102】(磁気ヘッド)試料5の(Fe78Nb7
150.93(Al70Ru300.07の組成を持つ軟磁性薄膜
を用いて、VTR用のMIG(メタル・イン・ギャッ
プ)型磁気ヘッドを作製した。その構造は実施例1と同
じである。
【0103】以上の構成を持つ磁気ヘッドは次のように
して作製した。試料5の軟磁性薄膜1を単結晶フェライ
ト基板2の一面に形成した後、その軟磁性薄膜1上にS
iO2膜(厚さ200nm)と、Cr膜(厚さ100n
m)とを順に形成した。その後、これを窒素気流中にて
590°Cで1時間熱処理し、磁気ヘッド基板を得た。
その後、同一構成の磁気ヘッド基板を2個、低融点ガラ
ス4によりボンディングし一体化した。こうして、図2
に示す磁気ヘッドを得た。
【0104】ここでは、熱処理温度を590°Cに設定
しているが、これに限定されない。この熱処理温度は、
このガラスボンディング工程においてボンディングに必
要な温度によって適宜変更される。
【0105】次に、この磁気ヘッドを用いてVTR装置
を作製し、磁気テープを走行させてハイビジョンのディ
ジタル画像情報を記録したところ、40dB以上のS/
Nが得られた。ここで、磁気テープと磁気ヘッドの相対
速度、データレート、トラック幅は実施例1と同じであ
る。
【0106】この磁気ヘッドの耐食性を、実施例1と同
じ浸漬試験法および高温高湿度環境中での結露試験法に
より評価した。その結果、浸漬前後において記録/再生
特性に違いは見られなかった。
【0107】また、実施例1と同様に、この磁気ヘッド
をペルチェ素子上に固定して2000時間以上放置した
が、腐食の発生や記録/再生信号の劣化は見られなかっ
た。
【0108】(変形例)以上の説明では、軟磁性薄膜と
してFeNbNAlRu合金膜を使用し、非導電性の無
機化合物としてZrO2を使用しているが、この発明は
これらに限定されない。例えば、Ruに代えてRhを用
いても同様の効果が得られた。この他、NbをZrに代
えたFeZrNAlRu、NbをHfに代えたFeHf
NAlRu、NbをTiに代えたFeTiNAlRuで
も同様の効果が得られた。Alに代えて、Ta,Nb,
Cr,Ti,NiまたはZrで母組成に含まれていない
元素を用いても、同様の効果が得られた。
【0109】実施例1と同様に、Ta,Nb,Hf,C
r,Ru,Rh,Ti,Ni,Zr,Alなどの添加元
素の持つFeの結晶成長抑制効果に加えて、ZrOx
結晶粒子によっても熱処理時のFeの結晶成長が抑制さ
れるため、NbNの結晶粒子の作用とあいまって、その
Feの結晶成長抑制の効果は増幅される。この効果は、
ZrOx以外の非導電性の無機化合物(例えば、Si
x,BN,TaNx,TiNxなど)を用いても得られ
る。
【0110】ZrOxなどの非導電性の無機化合物は、
このような耐熱性向上効果の外に、耐食性向上の効果も
有している。ZrOxなどの非導電性の無機化合物は、
導電率が著しく低いために、その無機化合物とα−Fe
との間で局部電池を形成しにくいからである。この点も
実施例1と同様である。
【0111】
【表2】
【0112】(その他)上記両実施例では、いずれもV
TR用の磁気ヘッドについて説明したが、この発明はこ
れに限定されず、磁気ディスクやヘリカルスキャンを用
いた磁気テープ装置など、任意の磁気記録装置に対して
も適用できる。上記両実施例の持つ高い飽和磁束密度B
sは、高密度の磁気記録にとって重要な特性であり、高
画質のディジタルVTR用の磁気ヘッド材料として有効
である。しかし、磁気ディスクなどの他の磁気記録用の
磁気ヘッドとして用いても高密度記録が可能であること
はいうまでもない。
【0113】また、上記両実施例では、いずれも磁性元
素としてFeを用いているが、Feに代えてCoを用い
ても同様の効果が得られる。
【0114】
【発明の効果】この発明の軟磁性薄膜によれば、Feま
たはCoを主体とする軟磁性薄膜において、良好な軟磁
気特性の維持と耐食性の改善とをバランス良く実現する
ことができる。また、耐熱性も改善することができる。
【0115】この発明の磁気ヘッドおよび磁気記録装置
によれば、従来より信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例の軟磁性薄膜と従来の軟磁
性薄膜の熱処理温度と保磁力の関係を示すグラフであ
る。
【図2】この発明の実施例の磁気ヘッドの概略構造を示
す図である。
【図3】この発明の他の実施例の軟磁性薄膜と従来の軟
磁性薄膜の熱処理温度と保磁力の関係を示すグラフであ
る。
【符号の説明】
1 軟磁性薄膜 2 フェライト基板 3 ギャップ部 4 低融点ガラス

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 FeおよびCoより選ばれる少なくとも
    1種の磁性元素と、Ta,Nb,Hf,Cr,Ru,R
    h,Ti,Ni,ZrおよびAlよりなる第1群より選
    ばれる少なくとも1種の第1元素と、C,N,Bおよび
    Siよりなる第2群より選ばれる少なくとも1種の第2
    元素とを含んでなる軟磁性薄膜において、 前記薄膜の組織中に非導電性の無機化合物粒子が分散さ
    れていることを特徴とする軟磁性薄膜。
  2. 【請求項2】 前記無機化合物粒子が、Ta,Nb,C
    r,Ti,Ni,ZrおよびSiよりなる第3群より選
    ばれる少なくとも1種の第3元素の酸化物、窒化物ある
    いは硼素化物の粒子である請求項1に記載の軟磁性薄
    膜。
  3. 【請求項3】 前記薄膜の組織が微小な結晶相を含んで
    おり、その微小な結晶相が、前記磁性元素の相と、前記
    第1元素の炭化物、窒化物、珪素化物あるいは硼素化物
    の相と、前記非導電性無機化合物の相とを含んでいる請
    求項1または2に記載の軟磁性薄膜。
  4. 【請求項4】 前記非導電性無機化合物の結晶相の平均
    サイズが、前記第1元素の炭化物、窒化物、珪素化物あ
    るいは硼素化物の結晶相の平均サイズよりも小さい請求
    項2または3に記載の軟磁性薄膜。
  5. 【請求項5】 前記磁性元素の相の結晶粒の平均サイズ
    が10nm以下であり、前記第1元素の炭化物、窒化
    物、珪素化物あるいは硼素化物の相の結晶粒の平均サイ
    ズが5nm以下である請求項3または4に記載の軟磁性
    薄膜。
  6. 【請求項6】 保磁力が1エルステッド以下、透磁率が
    1000以上、飽和磁束密度が1.5テスラ以上である
    請求項1〜5のいずれかに記載の軟磁性薄膜。
  7. 【請求項7】 前記薄膜の組織が微小な結晶相を含んで
    おり、その微小な結晶相が、Fe相と、Ta,Nb,H
    f,Ti,Ni,ZrおよびAlよりなる第4群より選
    ばれる少なくとも1種の第4元素の炭化物、窒化物、珪
    素化物あるいは硼素化物の相と、前記非導電性無機化合
    物の相とを含んでいる請求項3〜6のいずれかに記載の
    軟磁性薄膜。
  8. 【請求項8】 前記非導電性の無機化合物粒子が、前記
    磁性元素の結晶相の成長を抑制する作用を有している請
    求項3〜7のいずれかに記載の軟磁性薄膜。
  9. 【請求項9】 (a)FeおよびCoより選ばれる少な
    くとも1種の磁性元素の第1微結晶相と、 (b)Ta,Nb,Hf,Cr,Ru,Rh,Ti,N
    i,ZrおよびAlよりなる第1群より選ばれる少なく
    とも1種の第1元素と、C,N,BおよびSiよりなる
    第2群より選ばれる少なくとも1種の第2元素の化合物
    の第2微結晶相と、 (c)非導電性の無機化合物の第3微結晶相とを備えて
    いることを特徴とする軟磁性薄膜。
  10. 【請求項10】 前記無機化合物が、Ta,Nb,C
    r,Ti,Ni,ZrおよびSiよりなる第3群より選
    ばれる少なくとも1種の第3元素の酸化物、窒化物ある
    いは硼素化物である請求項9に記載の軟磁性薄膜。
  11. 【請求項11】 前記第3微結晶相の平均サイズが、前
    記第2微結晶相の平均サイズよりも小さい請求項9また
    は10に記載の軟磁性薄膜。
  12. 【請求項12】 前記第1微結晶相の平均サイズが10
    nm以下であり、前記第2微結晶相の平均サイズが5n
    m以下である請求項9〜11のいずれかに記載の軟磁性
    薄膜。
  13. 【請求項13】 保磁力が1エルステッド以下、透磁率
    が1000以上、飽和磁束密度が1.5テスラ以上であ
    る請求項9〜12のいずれかに記載の軟磁性薄膜。
  14. 【請求項14】 前記第1微結晶相がFe相であり、前
    記第2微結晶相が、Ta,Nb,Hf,Ti,Ni,Z
    rおよびAlよりなる第4群より選ばれる少なくとも1
    種の第4元素と前記第2元素の化合物の相である請求項
    9〜13のいずれかに記載の軟磁性薄膜。
  15. 【請求項15】 前記非導電性の無機化合物粒子が、前
    記磁性元素の結晶相の成長を抑制する作用を有している
    請求項9〜14のいずれかに記載の軟磁性薄膜。
  16. 【請求項16】 請求項1〜15いずれかに記載の軟磁
    性薄膜を備えたことを特徴とする磁気ヘッド。
  17. 【請求項17】 メタル・イン・ギャップ型として構成
    されている請求項16に記載の磁気ヘッド。
  18. 【請求項18】 請求項16または17に記載の磁気ヘ
    ッドを備えたことを特徴とする磁気記録装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6134079A (en) * 1997-09-17 2000-10-17 Fujitsu Limited Magnetic head including a pole piece with soft magnetic particles dispersed therein and manufacturing method therefor
KR100394993B1 (ko) * 2001-02-20 2003-08-19 한국과학기술연구원 FeCoNiN계 연자성 박막합금 조성물

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