JPH08291366A - 靱性に優れる冷間加工用微細黒鉛均一分散鋼 - Google Patents

靱性に優れる冷間加工用微細黒鉛均一分散鋼

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JPH08291366A
JPH08291366A JP9387895A JP9387895A JPH08291366A JP H08291366 A JPH08291366 A JP H08291366A JP 9387895 A JP9387895 A JP 9387895A JP 9387895 A JP9387895 A JP 9387895A JP H08291366 A JPH08291366 A JP H08291366A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 冷間加工(鍛造、切削)後に焼入れ・焼戻し
して使用される靱性に優れた冷間加工用微細黒鉛均一分
散鋼を提供する。 【構成】 重量%で、C:0.30〜1.0%、Si:
0.60〜2.0%、Mn:0.20〜1.0%、P:
0.02%以下、S:0.10%以下、Al:0.00
5%以下を含有し、必要に応じて、B,N,Mo,Ni
のうち一種または二種を必要に応じて含有し、さらに、
Ti,Zr,Hf,Y,La,Ce,Ca,Mgのうち
一種または二種以上を含有し、かつ粒子径が0.1〜
4.0μmである酸化物または酸化物とMnSの複合体
の粒子を103 〜106 個/mm3 含有し、残部がFeお
よび不可避的不純物からなり、平均粒径4.0μm以下
の黒鉛0.30〜1.0%を有する冷間加工用微細黒鉛
均一分散鋼。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は冷間加工(鍛造、切削)
後に焼入れ・焼戻しして使用される鋼材に係わり、特に
黒鉛を微細かつ均一に分散させることにより焼入れ・焼
戻し後の靱性に優れた微細黒鉛均一分散鋼に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】中炭素鋼中のフェライト+パーライト組
織をフェライト+黒鉛の2相組織にするとその硬さはH
v160からHv110程度までに減少する。そのため
に黒鉛率を上げると冷間鍛造性は硫黄快削鋼のそれを上
回ることが、例えば日本金属学会誌、Vol.53(198
9)、p.206の研究論文に報告されている。工業的
にも特公昭63−9580号公報に見られるようにミク
ロ組織をフェライト+黒鉛の2相組織にすると冷間鍛造
性は著しく向上することが紹介されている。
【0003】一方、黒鉛分散鋼は冷間鍛造性は優れてい
るものの、特開平2−111842号公報によると、焼
入れ加熱時に黒鉛の分散速度が遅く十分にオーステナイ
ト中に溶解しないために焼入れ硬さが不足する欠点があ
るとされている。この欠点を解決するためには、黒鉛を
微細化すればよいこと、その具体的な方法としてBNを
黒鉛の析出核として利用することが有効であることが同
じく特開平2−111842号公報に開示されている。
【0004】また、黒鉛分散鋼を得るための製造方法と
して、炭素過飽和状態(マルテンサイト組織)とマルテ
ンサイト変態歪を利用する方法が有効であることが特開
昭49−67817号公報に開示されている。これによ
ると、特定の化学成分を有する鋼を、750〜950℃
に加熱して焼入れしてマルテンサイト変態させ、これを
再度加熱して600〜750℃で焼鈍することにより黒
鉛分散鋼が得られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、よく知
られているように、BNは結晶粒界に偏析するために、
BNを核生成サイトとする黒鉛も同様にフェライト粒界
あるいは旧オーステナイト粒界に偏析して不均一に分散
する。またマルテンサイト変態させた場合も黒鉛の生成
サイトは変態歪の集中する旧オーステナイト粒界あるい
はマルテンサイトブロック境界に限られており、黒鉛は
不均一に分散する。
【0006】粒界に黒鉛が不均一分散していると黒鉛間
距離の変動が大きくなりその最大値も大きくなる。一
方、黒鉛は周囲の炭素原子を吸収しながら成長する。従
って、黒鉛間距離が大きな場所では、その分黒鉛粒子一
個あたりが周囲の炭素を吸収しうる範囲も大きくなり、
最終的に得られる黒鉛粒径が大きくなるものと考えられ
る。このために、現状技術で得られている黒鉛寸法は、
微細化はされてはいるものの5〜10μm程度で、焼入
れ加熱の際に黒鉛すなわち炭素が拡散して黒鉛の存在し
ていた箇所が、5〜10μm程度の空孔となって残存す
る。この空孔が原因で破壊靱性値(衝撃値)が低いとい
う欠点を有しており、未だ十分な靱性を保証するには至
っていないのが現状である。
【0007】本発明は結晶粒界に留まらずフェライト粒
内にも黒鉛を均一に分散させ、かつ、黒鉛の平均粒径
(焼入れ後の空孔の平均寸法)を小さくして靱性を高め
た冷間加工用微細黒鉛均一分散鋼を提供しようとするも
のである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは種々検討を
重ねた結果、Ti,Zr等の酸化物生成元素を特定の範
囲添加し、かつ、特定の範囲の大きさの酸化物または酸
化物とMnSの複合体の粒子を特定の範囲の個数含有さ
せることにより、これらを核生成サイトとしてフェライ
ト結晶粒内に黒鉛が生成し微細黒鉛の均一分散が実現可
能であり、さらにB,Nを多量添加することにより黒鉛
生成サイトであるBNがフェライト粒内に均一に析出し
た結果、微細黒鉛の均一分散化が実現可能であることを
見出した。結晶粒界あるいはBNとは異なり、酸化物ま
たは酸化物とMnSの複合体は鋼中に均一に分散してお
り、また地鉄との間には熱収縮差に伴う歪を有している
ため、黒鉛あるいは黒鉛生成サイトとなるBNの粒内に
おけるの優先析出サイトとして機能したものと考えられ
る。
【0009】本発明者らはこのような知見に基づいて、
従来困難であった黒鉛の平均粒径(焼入れ後の空孔の平
均寸法)の微細化を実現し、靱性を高めた冷間加工用微
細黒鉛均一分散鋼を開発するに至った。 (1)すなわち第一の本発明は、重量%で、C:0.3
0〜1.0%、Si:0.60〜2.0%、Mn:0.
20〜1.0%、P:0.02%以下、S:0.10%
以下、Al:0.005%以下を含有し、さらに、T
i:0.001〜0.10%、Zr:0.001〜0.
10%、Hf:0.001〜0.10%、Y:0.00
1〜0.10%、La:0.001〜0.10%、C
e:0.001〜0.10%、Ca:0.001〜0.
05%、Mg:0.001〜0.05%のうち一種また
は二種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物
からなり、かつ粒子径が0.1〜4.0μmである酸化
物または酸化物とMnSの複合体の粒子を103 〜10
6 個/mm3 含有し、平均粒径4.0μm以下の黒鉛0.
30〜1.0%を有することを特徴とする靱性に優れる
冷間加工用微細黒鉛均一分散鋼である。 (2)鋼材の成分が、さらに、B:0.001〜0.0
04%、N:0.002〜0.008%を含有すること
を特徴とする(1)項記載の靱性に優れる冷間加工用微
細黒鉛均一分散鋼である。 (3)鋼材の成分が、さらに、Mo:0.05〜0.2
0%、Ni:0.05〜2.00%のうち一種または二
種を含有することを特徴とする(1)項または(2)項
記載の靱性に優れる冷間加工用微細黒鉛均一分散鋼であ
る。
【0010】
【作用】次に本発明における鋼材化学成分、酸化物の粒
径と個数、黒鉛の粒径と含有率の限定理由を詳細に説明
する。Cは焼入後の強度を確保するために、その下限値
を0.30%とした。上限は冷間加工後の熱処理におけ
る焼割れを防止するために1.0%とした。
【0011】Siは黒鉛化を促進する有力な元素である
ことから、その下限値を0.60%とした。ただしSi
量が多くなるとフェライト相が固溶硬化し冷間加工性の
劣化を招くので、上限値を2.0%とした。MnはSと
結合してMnS介在物として存在し、酸化物との複合体
を形成し、黒鉛あるいはBNの生成サイトとなることか
ら必要な元素である。また焼入れ性を増加させ強度を確
保する上でも必要な元素でもあることから、その下限値
を0.20%とした。ただしMn量が大きくなると黒鉛
化を著しく阻害するので上限値は1.0%とした。
【0012】Pは鋼中で粒界偏析や中心偏析を起こし靱
性劣化の原因となるので、その上限を0.02%とし
た。SはMnと結合してMnS介在物として存在する。
酸化物の複合体を形成し、黒鉛あるいはBNの生成サイ
トとして有効である。ただし多すぎると冷間加工性を劣
化させるためSの上限値を0.10%とした。
【0013】AlはSiと同様黒鉛化を促進する元素で
あるが、一方で鋼中で粗大な酸化物を形成し靱性劣化の
原因となるため、上限値を0.005%とした。次に、
本発明鋼では、Ti,Zr,Hf,Y,La,Ce,C
a,Mgのうち一種または二種以上を必須元素として特
定の成分範囲で含有させ、かつ特定の範囲の大きさの酸
化物または酸化物とMnSの複合体の粒子を特定の範囲
の個数含有する。なお、ここでいう酸化物とは、Ti,
Zr,Hf,Y,La,Ce,Ca,Mgのうち一種ま
たは二種以上からなる酸化物を指す。これらの酸化物ま
たは酸化物とMnSの複合体の粒子は鋼中に均一に分散
し、黒鉛あるいはBNの核生成サイトを与え、黒鉛を微
細化する。しかしながら、これら酸化物形成元素の含有
量が0.001%未満であるか、または粒子径が0.1
〜4.0μmの酸化物または酸化物とMnSの複合体の
粒子の個数が103 個/mm3 未満であれば、粒径4.0
μmを越える黒鉛が生成する。なお、ここで、酸化物ま
たは酸化物とMnSの複合体の粒子径を0.1〜4.0
μmと限定したのは、0.1μm未満では核生成サイト
として無効であり、4.0μm超では酸化物自体が破壊
の起点となり靱性の劣下を招くためである。一方、T
i,Zr,Hf,Y,La,Ceをそれぞれ0.1%
超、Ca,Mgをそれぞれ0.05%超を添加するか、
または粒子径が0.1〜4.0μmの酸化物または酸化
物とMnSの複合体の粒子の個数が106 個/mm3 超で
あれば、黒鉛粒子の微細化は飽和し、むしろ靱性を劣化
させる。以上の理由により、Ti,Zr,Hf,Y,L
a,Ceの添加量はそれぞれ0.001〜0.10%と
し、また、Ca,Mgの添加量はそれぞれ0.001〜
0.05%とし、粒子径が0.1〜4.0μmの酸化物
または酸化物とMnSの複合体の個数を103 〜106
個/mm3 の範囲に限定した。
【0014】B,Nは必要に応じて添加され、BNを形
成して黒鉛の生成サイトを与えることにより黒鉛化を促
進する。十分な黒鉛化促進効果を得るには0.001%
以上のBを添加しなければならない。Bが0.004%
を越えると黒鉛化促進効果は飽和するので、その上限値
を0.004%とした。Nは0.001〜0.004%
BをBNとするために必要な量、すなわち0.002〜
0.008%である。
【0015】Mo,Niは焼入れ性を確保するために必
要に応じて1種または2種添加される。焼入れ性増加の
効果を十分に得るために、Mo,Ni下限値をそれぞれ
0.05%、0.05%とした。また多量添加は経済性
の点で好ましくないためMo,Niの上限をそれぞれ
0.20%、2.0%とした。黒鉛の平均粒径は靱性
(衝撃特性)の点からその上限を4.0μmとしなけれ
ばならない。4.0μmを越えると、焼入れ加熱の際に
黒鉛のあった箇所が4.0μm超の粗大な空孔となって
残存し、衝撃値を低下させる。
【0016】鋼中Cはそのほぼ全量が黒鉛化するので、
黒鉛の量はC含有量にほぼ等しい。従って、黒鉛の限定
理由はCの限定理由で述べた場合と全く同じである。
【0017】
【実施例】以下に、本発明の効果を実施例によりさらに
具体的に記す。表1に供試鋼の化学成分を示した。
【0018】
【表1】
【0019】表2には、前記供試鋼に存在する直径0.
1〜4.0μmの複合体粒子数を示した。
【0020】
【表2】
【0021】これらの鋼よりなる直径20mmφの棒鋼を
一旦850℃加熱後に水焼入れし、さらにこれらの棒鋼
に700℃×12時間の黒鉛化焼鈍を付与することによ
り黒鉛分散鋼を得た。黒鉛化率は、以下の式より算出し
た。 (鋼中黒鉛含有量/鋼の炭素含有量)×100(%) ここで鋼の炭素含有量は化学分析により定量した。また
黒鉛含有率は平均黒鉛粒子径、密度、および黒鉛粒子数
より算出した。本発明の成分範囲を満足する鋼1〜8、
および鋼11,12は全て黒鉛化率100%を示したの
に対し、Si量が本発明の範囲を下回る比較例9では黒
鉛化率20%、Mn量が本発明の範囲を上回る比較例1
0では黒鉛化率55%を示す程度に留まっている。
【0022】表3には、黒鉛粒径、黒鉛間の最大距離お
よび衝撃吸収エネルギーを示す。
【0023】
【表3】
【0024】黒鉛粒径は次の方法によった。黒鉛粒子に
電子線を照射し反射電子線の強度を二値化することによ
りSEM画面上に黒鉛を結像させて解析システムを利用
して粒径を測定・解析した。一視野の面積は100μm
×100μmで、視野数は25であり、測定総面積は
0.25mm2 である。黒鉛間の最大距離は倍率200倍
の光学顕微鏡写真上で測定した。写真上に黒鉛の存在し
ない箇所のみを含む円弧を描きその直径の最大値を黒鉛
間の最大距離とした。本発明鋼1〜8の黒鉛平均粒径お
よび黒鉛間の最大距離は比較鋼9〜12のそれよりいず
れも小さい。特に本発明の成分範囲および複合体粒子数
を満足する鋼1〜8の黒鉛平均粒径はいずれも4.0μ
m以下を示すのに対し、Si量が本発明の範囲を下回る
比較例9、Mn量が本発明の範囲を上回る比較例10、
複合体粒子数が本発明の範囲を下回る比較例11,12
の黒鉛平均粒径はいずれも4.0μmより大きい。
【0025】表3において、衝撃吸収エネルギーは以下
のようにして求めた。すなわち、黒鉛析出状態の直径2
0mmφの棒鋼を用い、焼入れ(850℃×30分→水
冷)、および焼戻し(600℃×60min →水冷)を行
った後、2mmUノッチシャルピー衝撃試験片(JIS
Z2202 No. 3)を採取した。シャルピー衝撃試験
の試験温度は20℃である。本発明の成分範囲および複
合体粒子数を満足する鋼1〜8のシャルピー衝撃吸収エ
ネルギーは比較例9〜12のそれに対して著しく高く、
このことは本発明に従う鋼の靱性が高いことを示してい
る。
【0026】
【発明の効果】以上の実施例からも明らかなように本発
明によれば、靱性の優れた微細黒鉛均一分散鋼を提供す
ることが可能であり、産業上の効果は極めて顕著なるも
のがある。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C :0.30〜1.0%、Si:0.60〜2.0
    %、 Mn:0.20〜1.0%、P :0.02%以下、 S :0.10%以下、 Al:0.005%以下を
    含有し、さらに、 Ti:0.001〜0.10%、Zr:0.001〜
    0.10%、 Hf:0.001〜0.10%、Y :0.001〜
    0.10%、 La:0.001〜0.10%、Ce:0.001〜
    0.10%、 Ca:0.001〜0.05%、Mg:0.001〜
    0.05%、のうち一種または二種以上を含有し、残部
    がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ粒子径が
    0.1〜4.0μmである酸化物または酸化物とMnS
    の複合体の粒子を103 〜106 個/mm3 含有し、平均
    粒径4.0μm以下の黒鉛0.30〜1.0%を有する
    ことを特徴とする靱性に優れる冷間加工用微細黒鉛均一
    分散鋼。
  2. 【請求項2】 鋼材の成分として、さらに、 B:0.001〜0.004%、N:0.002〜0.
    008%を含有することを特徴とする請求項1記載の靱
    性に優れる冷間加工用微細黒鉛均一分散鋼。
  3. 【請求項3】 鋼材の成分として、さらに、 Mo:0.05〜0.20%、Ni:0.05〜2.0
    %のうち一種または二種を含有することを特徴とする請
    求項1または請求項2記載の靱性に優れる冷間加工用微
    細黒鉛均一分散鋼。
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