JP2000273580A - 冷間加工性に優れた冷間圧造用鋼およびその製造方法 - Google Patents
冷間加工性に優れた冷間圧造用鋼およびその製造方法Info
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Abstract
ができる冷間加工性に優れた冷間圧造用鋼およびその製
造方法を提供する。 【解決手段】 鋼中のCをセメンタイト生成温度よりも
高温でVC炭化物として析出させることにより、鋼中の
固溶C量を実質的に低減させ、初析フェライト量を大幅
に増加させ、冷間加工性を著しく向上させたものであ
る。すなわち、本発明の冷間圧造用鋼は、化学成分がma
ss%で、C:0.06〜0.50%、Si:0.05%
以下、Mn:0.5〜1.0%以下、V:0.10〜
0.60%を含み、初析フェライトとパーライトとの合
計量が面積率で90%以上であり、かつ前記初析フェラ
イト量が下記式(1) で示されるf値以上の面積%を有す
る。 f=100−125[C] +22.5[V] ……(1) 但し、[C] ,[V] はC,Vの含有%であり、f>100
でf=100である。
Description
ことなく簡単な軟化焼鈍を施すことにより、あるいは圧
延のままで冷間加工に供することができる冷間圧造用鋼
およびその製造方法に関する。
間圧延後の線材、棒材等に対して、通常、冷間加工性を
向上させるために球状化焼鈍が施された鋼材が使用さ
れ、冷間圧造後には調質熱処理が施される。
製造コスト高を招来し、特に球状化焼鈍は加熱時間が一
昼夜にも及び、また多量のエネルギーを消費する。この
ため、球状化焼鈍を行うことなく、冷間圧造に適する鋼
材の開発が望まれていた。
イト量を増大させることにより、球状化焼鈍を行うこと
なく冷間加工が可能な鋼材が種々提案されている。例え
ば、特開平9−78181号公報にはMn/Cを増大さ
せることにより、鋼のフェライト分率を高める技術が提
案されている。また、特開平10−72619号公報に
は、鋼中にVの窒化物を形成させてオーステナイトから
フェライトへの変態を促進してフェライト生成量を増大
させる技術が提案されている。
9−78181号公報や特開平10−72619号公報
に記載された技術では、C含有量に応じて定まるフェラ
イトの平衡生成量を越えてまでフェライト量を増加させ
ることはできない。このため、十分な冷間加工性を備え
ているとは言えないものである。
で、球状化焼鈍を施すことなく、冷間加工に供すること
ができる冷間加工性に優れた冷間圧造用鋼およびその製
造方法を提供することを目的とするものである。
メンタイト生成温度よりも高温で炭化物として析出させ
ることにより、鋼中の固溶C量を実質的に低減させ、変
形抵抗、変形能を阻害するセメンタイトひいてはセメン
タイトとフェライトとの層状組織であるパーライトの生
成を抑制する一方、初析フェライト量を大幅に増加さ
せ、冷間加工性を著しく向上させたものである。すなわ
ち、本発明の冷間圧造用鋼は、化学成分がmass%で、C
:0.06〜0.50%、Si:0.05%以下、M
n:0.5〜1.0%以下、V :0.10〜0.60
%を含み、初析フェライトとパーライトとの合計量が面
積率で90%以上であり、かつ前記初析フェライト量が
下記式(1) で示されるf値以上の面積%とされ、前記初
析フェライト中にVCが析出したものである。 f=100−125[C] +22.5[V] ……(1) 但し、[C] ,[V] はC,Vの含有%であり、f>100
のときはf=100とする。
りである。なお、単位はすべてmass%である。 C:0.06〜0.50% Cは強度を確保するために添加される必須の元素であ
る。0.06%未満では強度不足となり、一方0.50
%を越えると適量のVの添加によってもセメンタイトの
生成を抑制することが困難になる。このため、下限を
0.06%、好ましくは0.10%とし、一方上限を
0.50%、好ましくは0.45%、より好ましくは
0.30%とする。
よく、0.05%以下に止める。なお、Siは脱酸、固
溶強化作用があるので、かかる作用を期待する場合は
0.005%以上の添加が好ましい。
させる作用を有する。0.5%未満ではかかる作用が過
少であり、一方1.0%を越えると焼入性が過大とな
り、圧延材中にベイナイト、マルテンサイトなどの過冷
組織を生成して、変形抵抗を高めるようになるため好ま
しくない。このため、下限を0.5%、好ましくは0.
55%とし、一方上限を1.0%、好ましくは0.75
%とする。
温度より高温域でCをVCとして析出させることで、固
溶C量を減少させ、これによりセメンタイトの生成を抑
制するとともに初析セメンタイトの生成を促進させる効
果を有する。かかる効果を奏するようにするには、VC
析出温度をA3 点より高温側にする必要がある。このた
め、C含有量を考慮して、V含有量の下限を0.10
%、好ましくは0.15%とし、その上限を0.60
%、好ましくは0.50%とする。
し、残部Feおよび不可避的不純物からなるが、本発明
の効果を損なうことなく、種々の特性を向上させる元素
を含有することができる。かかる元素の一例として、請
求項2に記載したように、下記のB、Mo、Ni、Ti
の1種以上を含有することができる。 B:0.0010〜0.0030% Mo:0.05〜1.0%、Ni:0.05〜1.0
%、Ti:0.001〜0.05% これらの元素は焼入性を向上させる作用を有しており、
各元素の下限値未満ではかかる作用が過少であり、一方
各元素の上限値を越えると冷間加工性が劣化するように
なる。
に割れを助長するものであり、少ないほどよく、0.0
30%以下、好ましくは0.010%以下に止めるのが
よい。また、Crはセメンタイトを硬質化して冷間加工
性を劣化させるので、本発明では有害な不純物であり、
少ないほどよい。
本発明では、初析フェライトとパーライトとの合計量を
面積率で90%以上とする。この合計量が90%未満で
は、低温変態生成物であるマルテンサイトやベイナイト
が多くなり、変形抵抗が著しく高くなり、冷間加工性の
劣化が著しくなる。このため、初析フェライトとパーラ
イトとの合計量の下限を90%、好ましくは95%、よ
り好ましくは100%とする。
を前記式(1) で示されるf値以上の面積%とする。f値
はVを含まない場合にC含有量によって定まるフェライ
トの平衡生成量を越え、Vの添加によりCをVCとして
析出固定した結果、実質的に減少した固溶C量に応じて
生成し、かつ十分な冷間加工性を確保し得る初析フェラ
イト量を意味するものである。本発明では、鋼の初析フ
ェライト量(面積%)をf値以上とすることで、C量と
V量とで定まる十分な量の初析フェライトを確保するこ
とができ、冷間加工性を著しく向上させることができ
る。
実験について説明する。 C:0.1〜0.35%、Si:0.01%、Mn:
0.74%、V:0.5%を含有し、残部実質的にFe
からなるA鋼と、Vを含有しない点を除き他は同成分の
B鋼とを溶製し、その鋳造片を熱間圧延(鋼片加熱温度
1050℃、仕上圧延温度820℃、圧延後の冷却速度
0.8℃/s)して10mmφの棒材を得て、得られた圧
延材のフェライト面積%を測定し、C含有量とフェライ
ト面積率との関係を調べた。その結果を図1に示す。図
1より、フェライト面積%は、V無添加のB鋼ではC含
有量に対して(100−125[C] )%得られ、一方V
添加鋼のA鋼では少なくとも(100−125[C] +2
2.5[V])% 得られることがわかった。そして、A鋼
を用いて熱間圧延した棒材について、後述する割れ発生
限界加工率を調べたところ、75%以上であることが確
認された。
(100−125[C] )%を越え、冷間加工性に著しい
改善効果を与えることができる初析フェライト量の境界
を示すことがわかる。もっとも、Vを添加しても、後述
するように、VをVCとして析出させるような適切な加
工熱処理が施されなければ、フェライト面積%がf値以
上とはならず、冷間加工性の著しい向上、ひいては簡単
な軟化焼鈍あるいは圧延のままでの冷間加工が困難とな
る。なお、fは面積%を示す指標であるため、100%
を越えることはない。また、VCはオーステナイト中に
析出するため、初析フェライトのみならず、オーステナ
イトから変態するすべての組織に微細分散した形態をと
る。
鋼の硬度を150Hv以下とすることで、冷間加工性が
より一層向上し、球状化焼鈍のみならず、短時間の加熱
を行う簡単な軟化焼鈍をも行うことなく、圧延のままで
十分に冷間加工を行うことができるようになる。なお、
鋼の硬度を低下させるには、後述のように、熱延後の冷
却速度を十分遅くすればよい。これによって、析出VC
が粗くなり、転位密度が減少して、フェライト相が軟質
になる。
請求項1又は2に記載した化学成分を有する鋼片を10
00〜1250℃に加熱し、仕上温度をAr3 点以上か
つ下記式(2) で示された仕上温度上限FDTL℃以下の
温度で熱間圧延を行い、圧延終了後、冷却速度1℃/s
以下で冷却することによって製造される。 FDTL(℃)=800+190×([C] +0.5[V] ) ……(2) 但し、[C] ,[V] はC,Vの含有%である。
させるために1000℃以上、好ましくは1050℃以
上とする。一方、過度に高温に加熱すると、鋼片の酸
化、加熱コストの上昇を招くので、上限を1250℃、
好ましくは1220℃とする。
つ前記式(2) で定まるFDTL℃以下のオーステナイト
低温域で仕上圧延してVCを歪誘起析出させるが、前記
FDTL℃を越えるとVCの析出が生じず、フェライト
面積率を増大させることができないようになる。
のVC析出量を増大させつつ粒成長させることが重要で
あり、このため冷却速度の上限を1.0℃/s、好まし
くは0.6℃/sとする。これにより、鋼硬度は200
Hvを下回るようになり、球状化焼鈍を行うことなく冷
間加工が可能となる。より好ましくは0.3℃/s以下
とすることで、鋼硬度を150Hv以下にすることがで
き、圧延のままで十分な冷間加工性を備えたものとな
る。
製し、その鋼片を表3、表4に記載したとおり、下記の
圧延条件A〜Dに従って熱間圧延し、直径10mmの棒材
を得た。 圧延条件A:ST=1050℃、FDT=820℃、C
R=0.8℃/s 圧延条件B:ST=1050℃、FDT=825℃、C
R=0.3℃/s 圧延条件C:ST=1170℃、FDT=1000℃、
CR=0.9℃/s 圧延条件D:ST=1050℃、FDT=810℃、C
R=0.5℃/s 但し、STは鋼片加熱温度、FDTは仕上温度、CRは
圧延後の冷却速度を意味する。
て求めたf値(%)のほか、下記式(3) により算出した
目標割れ発生限界加工率(目標WR、単位%)、下記式
(4)により算出した目標引張強さ(目標TS、単位N/m
m2 )、前記式(2) によって算出した目標仕上温度上限
(目標FDTL、単位℃)を併せて記載した。なお、式
(3) および式(4) は炭素鋼の球状化焼鈍材の冷間鍛造性
の評価から得られた式であり、割れ発生限界加工率は以
下の要領により測定されたものである。棒材から高さ1
5mmの円柱状試験片を切り出し、室温にて端面拘束圧縮
試験を行った。この際、圧縮率を1%きざみで変化さ
せ、各圧縮率で試験片数(n数)5について試験を行
い、5個とも側面に割れが認められなかった場合の最大
圧縮率を割れ発生限界加工率とした。 目標割れ発生限界加工率(%)=[C ]×(−25.9)+87.5 …(3) 目標引張強さ(N/mm2 )=144×[C ]+388 …(4) 但し、[C ]は炭素含有量(mass%)である。
クロ組織を観察し、初析フェライト、パーライトの面積
%を求めた。各試料の外周面から直径の1/4の位置の
ミクロ組織を光学顕微鏡(倍率400倍)にて観察し、
3視野における初析フェライトとパーライトの面積率
(%)を測定し、その平均値を各組織の面積%とした。
なお、残部の組織はベイナイト組織あるいはマルテンサ
イト組織であった。
の5点にて、荷重5kgf で硬度(Hv)を測定し、その
平均値を組織の硬度とした。また、前記測定要領にて割
れ発生限界加工率を求めた。また、試料より引張試験片
を採取し、引張強さを測定した。これらの測定結果を表
3、表4に併せて示す。但し、試料No. 1〜14、No.
41〜54は680℃×3hr保持後、空冷する軟化焼
鈍を施してから、一方試料No. 21〜34、No. 61〜
74は徐冷の効果を確認するため圧延のままで割れ発生
限界加工率、引張強さを測定した。
発明条件の下で製造した発明例であり、フェライト+パ
ーライト量が90%以上であり、しかもフェライト量が
式(1) で規定されたf値以上を有しており、全ての発明
例において、簡単な軟化焼鈍を施すだけで、球状化焼鈍
を施すことによって達成される目標割れ発生限界加工率
を上回っており、優れた冷間加工性を有することがわか
る。
分の鋼を熱延後の冷却速度を0.3℃/sで徐冷した発
明条件の下で製造した発明例であり、試料No. 1〜14
に比して硬度が150Hv以下となっており、軟化焼鈍
を全く行うことなく、熱延のままで冷間加工性に優れる
ことがわかる。なお、組織の一例として、試料No. 25
の組織写真を図2に示す。同図は、フェライト中のVC
の析出を確認するために電子顕微鏡(1000倍)によ
り観察したものであり、一部にパーライトが観察される
が、大部分がフェライトとなっており、フェライト中に
は無数のVCの析出が認められる。
分の鋼を用いた例であるが、仕上温度が1000℃と、
式(2) で定まる仕上温度の上限を越えているため、VC
の析出が起こらず、初析フェライト量が本発明条件を満
たさないようになり、割れが発生しやすくなって冷間加
工性に劣ることがわかる。
件が本発明を満足するものの、鋼成分が本発明の基本成
分範囲外のものではフェライト量がf値未満であり、十
分な量のフェライトの析出が起こっておらず、冷間加工
性が劣っている。また、特性向上元素を過度に添加した
試料No.70〜72では、フェライト量は増加している
ものの、強度の上昇が著しく、やはり良好な冷間加工性
が得られていない。
0.10〜0.60%を含有する所定の化学成分の下、
フェライト+パーライトの合計量を90面積%以上と
し、VCの析出による固溶C量の減少に基づき、式(1)
で示されるf値以上の初析フェライト量が生成している
ので、優れた冷間加工性を備えたものとなり、従来、冷
間加工に際して必要とされた球状化焼鈍を簡略ないし省
略することができるようになる。また、本発明の製造方
法によれば、熱延段階でVCの析出を促進して、固溶C
量を減少させることができ、多量の初析フェライトが析
出した前記冷間圧造用鋼を容易に製造することができ、
生産性に優れる。
おけるC含有量とフェライト面積率との関係を示すグラ
フである。
(1000倍)による金属組織写真を示す。
Claims (4)
- 【請求項1】 化学成分がmass%で、C :0.06〜
0.50%、Si:0.05%以下、Mn:0.5〜
1.0%以下、V :0.10〜0.60%を含み、初
析フェライトとパーライトとの合計量が面積率で90%
以上であり、かつ前記初析フェライト量が下記式(1) で
示されるf値以上の面積%であり、前記初析フェライト
中にVCが析出した冷間加工性に優れた冷間圧造用鋼。 f=100−125[C] +22.5[V] ……(1) 但し、[C] ,[V] はC,Vの含有%であり、f>100
のときはf=100とする。 - 【請求項2】 化学成分としてさらに、 B:0.0010〜0.0030% Mo:0.05〜1.0%、 Ni:0.05〜1.0%、 Ti:0.001〜0.05%の内から1種以上を含有
する請求項1に記載した冷間圧造用鋼。 - 【請求項3】 硬度が150Hv以下である請求項1又
は2に記載した冷間圧造用鋼。 - 【請求項4】 請求項1又は2に記載した化学成分を有
する鋼片を1000〜1250℃に加熱し、仕上温度を
Ar3 点以上かつ下記式(2) で示された仕上温度上限F
DTL℃以下の温度で熱間圧延を行い、圧延終了後、冷
却速度1℃/s以下で冷却する冷間加工性に優れた冷間
圧造用鋼の製造方法。 FDTL(℃)=800+190×([C] +0.5[V] ) ……(2) 但し、[C] ,[V] はC,Vの含有%である。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP11082694A JP2000273580A (ja) | 1999-03-26 | 1999-03-26 | 冷間加工性に優れた冷間圧造用鋼およびその製造方法 |
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JP11082694A JP2000273580A (ja) | 1999-03-26 | 1999-03-26 | 冷間加工性に優れた冷間圧造用鋼およびその製造方法 |
Publications (1)
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JP11082694A Pending JP2000273580A (ja) | 1999-03-26 | 1999-03-26 | 冷間加工性に優れた冷間圧造用鋼およびその製造方法 |
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JP (1) | JP2000273580A (ja) |
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-
1999
- 1999-03-26 JP JP11082694A patent/JP2000273580A/ja active Pending
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