JP2003239038A - 快削鋼 - Google Patents

快削鋼

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JP2003239038A
JP2003239038A JP2002041391A JP2002041391A JP2003239038A JP 2003239038 A JP2003239038 A JP 2003239038A JP 2002041391 A JP2002041391 A JP 2002041391A JP 2002041391 A JP2002041391 A JP 2002041391A JP 2003239038 A JP2003239038 A JP 2003239038A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は切削工具寿命と切削仕上げ面の表面
粗さを改善した快削鋼を提供する。 【解決手段】 質量%で、C:0.8超〜2.0%、S
i:0.5〜2.0%、Mn:0.1〜2.0%、P:
0.5%以下(0%含む)、S:0.05〜0.5%、
Cu:0.01〜1.0%、Zr:0.0005〜0.
005%、N:0.0001〜0.02%を含有し、Z
rを含む酸化物を103個/mm2以上含有し、質量%で
0.1%以上の黒鉛を含有することを特徴とする快削
鋼。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は切削加工で成形し、
自動車や産業機械などの部品として使用する機械構造用
鋼に関わり、特にセメンタイトを黒鉛化することで被削
性が向上した黒鉛鋼に関わるものである。
【0002】
【従来の技術】中炭素鋼の組織をフェライトと黒鉛の組
織にすることにより切削性が向上することは従来から知
られており、黒鉛による切削性の向上は、層間結合力が
弱い結晶構造をもつことから潤滑性に優れること、ある
いは黒鉛がチップブレーカーとして機能するためと考え
られ、その技術は特開昭49−67816号公報に開示
されている。しかしながら、この方法では切削工具寿命
はPb快削鋼並に向上するものの、工具と被削材の間に
形成される構成刃先が大きく成長することにより切削面
の表面粗さが粗くなる問題が残されている。
【0003】切削面粗さを改善する手段として特開平6
−212352号公報では工具と被削材の界面に潤滑性
に優れたPb、Bi、MnS、MnTe、MnSeなど
の被膜を形成させることで工具とフェライトの凝着を防
止し、構成刃先の生成を抑制できることが開示されてい
る。しかし、PbやBi、Sの多量添加は著しく黒鉛化
を阻害し、黒鉛化のための焼鈍時間を延長しなくてはな
らず、製造コストが増加する問題が残されている。
【0004】一方、黒鉛の析出を促進する手段として特
開平2−111842号公報では、BNを黒鉛の析出核
として利用することが有効であり、この結果、黒鉛粒径
は約5〜10μm程度に微細化することが開示されてい
る。しかし、本発明者らの調査によると、この方法では
黒鉛粒径は微細化されているものの黒鉛間の最大距離は
100μm程度あり黒鉛分散は不均一である。この原因
は、BNはγ粒界やMnS上に析出するため、熱間圧延
方向に伸長化したMnS上にBNが列状に析出したり、
旧γ粒界に沿って編み目状にBNが析出した結果、黒鉛
も列状や網目状に析出し不均一分散になる。更に、BN
を黒鉛析出核に利用するにはBN析出のための熱処理が
必要となり熱処理工程が増加し製造コストが上昇する。
制御圧延によりBNの析出処理を圧延中に行うことも想
定できるが、精密な温度管理が必要となる等、製造工程
が制約される課題が残されている。また、BNの利用で
は黒鉛の不均一分散が原因で切削面粗さが改善しない問
題が残されている。
【0005】また、特開平7−3390号公報では、Z
rの添加によりZrNが黒鉛化を阻害する固溶Nを低減
し、黒鉛化を促進することが開示されている。更に、特
開平10−140281号公報ではCaとZrの複合添
加によりこれらの複合硫化物を生成し、BNの析出核と
して機能した結果、5〜10hの焼鈍で黒鉛化率が70
%になることが開示されている。しかし、これらの従来
方法ではZrの炭窒化物あるいはZrの硫化物を生成す
るために、約0.01〜0.2mass.%のZrの多
量添加が必要である。このため10μmを超える粗大な
Zr(CN)やZrS等の析出物が生成し、疲労強度や
靭性などの機械的特性を劣化したり、硬質なZr(C
N)が工具の摩耗を促進し工具寿命が劣化する問題が残
されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は切削工具寿命
に優れると共に、切削表面粗さも優れた黒鉛快削鋼を提
供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは黒鉛快削鋼
の炭素含有量を0.8%超とし、かつS量を0.05%
以上として、Zrを微量添加することで、切削工具寿命
と切削面粗さの両立が可能となることを見出した。被削
性の改善機構は、黒鉛とフェライトの二相構造により適
度に構成刃先が成長し工具摩耗を抑制すると共に、高
C、高S化により潤滑性が向上したことに加えて黒鉛の
均一微細分散化により、構成刃先の成長が適度に抑制さ
れた結果、工具と被削材の間の過剰な隙間を防止し切削
表面粗さが改善したと考えられる。
【0008】炭素含有量が0.8%を超える鋼では、セ
メンタイトを黒鉛化した際に黒鉛粒径が粗大化し、不均
一分散となり切削面粗さが劣化する。黒鉛の粗大不均一
分散の原因は、黒鉛体積率が多いことに加え、高炭素化
により溶鋼中の酸素濃度が低下し、黒鉛の析出核となる
Al23等の酸化物が減少したことによると考えられ
る。
【0009】一方、S含有量が0.05%を超える鋼は
黒鉛化時間を著しく長時間化する。MnSなどの硫化物
として析出していないSが黒鉛化を著しく阻害している
と考えられる。
【0010】本発明者らは、鋼にZrを微量添加するこ
とにより、0.8%を超える高炭素鋼で、かつSを0.
05%以上含有しても酸化物が微細分散し、それらを析
出核にして黒鉛が均一微細に分散し、切削面の粗さを改
善すると共に、黒鉛化時間も著しく短縮化することを見
出した。
【0011】Zrの添加による酸化物の微細分散化効果
はとりわけCaOやTi23等の酸化物で顕著に認めら
れ、またこれらの酸化物を核に析出するMnSも顕著な
微細分散化が認められる。CaOやTi23、あるいは
MnSなどは黒鉛の析出サイトとして機能するため、Z
r添加によりこれらの酸化物や硫化物を微細分散させた
鋼材は、焼鈍処理を行うことでこれらの酸化物や硫化物
を核として黒鉛が析出する。また酸化物や硫化物はBN
などの炭窒化物と異なり溶鋼中あるいはγ単相域で析出
するため組織の影響を受けずに均一分散させることがで
きる。更に黒鉛の析出サイトが多量分散することにより
黒鉛化速度が増加し黒鉛化に要する焼鈍時間も短縮化で
きる。
【0012】従来からZrを含有した黒鉛鋼は知られて
いたが、本発明はZrの添加量を0.005%以下にす
ることでZrS、ZrN、ZrCの生成を抑制したこと
がポイントである。従来技術によるZrを利用した硫化
物の形態制御は硫化物の組成をMnSから変形能が小さ
い(Zr、X)Sとしたことによる。このためZrの添
加量は0.01mass.%以上とする必要があった。
しかし、Zrの多量添加は粗大な(Zr、X)Sあるい
は硬質なZr(NC)を生成し、機械的特性が劣化す
る。本発明では、逆にZrの添加量を0.0005〜
0.005%の範囲にすることで、(Zr、X)S及び
Zr(CN)の析出を抑制し、即ち含有Zrの内、Zr
SあるいはZr(CN)として析出するZr量を約50
%以下に抑制し機械的特性を劣化させる粗大な介在物や
硬質なZr(CN)の生成を防止した。この際、添加Z
rは酸化物Ti23やCaOに固溶することで、酸化物
のサイズが均一微細化し、更に酸化物を核に析出するM
nSの均一微細分散をなし得た。この結果、酸化物やM
nSを核に析出する黒鉛の析出制御を達成するに至っ
た。
【0013】更に、黒鉛の析出サイトが多量分散するこ
とにより黒鉛化速度が増加し黒鉛化に要する焼鈍時間も
短縮化できる。本発明者は以上のような知見に基づき従
来困難であった高Cかつ高Sの鋼でも短時間で黒鉛化が
可能であり、切削面の粗さに優れた黒鉛快削鋼を得るに
至った。
【0014】本発明の要旨は以下の通りである。
【0015】(1) 質量%で、C:0.8超〜2.0
%、Si:0.5〜2.0%、Mn:0.1〜2.0
%、P:0.5%以下(0%含む)、S:0.05〜
0.5%、Cu:0.01〜1.0%、Zr:0.00
05〜0.005%、N:0.0001〜0.02%を
含有し、Zrを含む酸化物を103個/mm2以上含有
し、質量%で0.1%以上の黒鉛を含有することを特徴
とする快削鋼である。
【0016】(2) 更に、質量%で、Al:0.00
1〜0.04%、Ti:0.005〜0.05%、C
a:0.0005〜0.005%、Mg:0.0005
〜0.005%の1種または2種以上を含有することを
特徴とする上記(1)記載の快削鋼である。
【0017】(3) 更に、質量%で、Mo:0.01
〜0.5%、Cr:0.01〜0.7%、Ni:0.0
5〜3%、Co:0.05〜3%、B :0.0001
〜0.01%の1種または2種以上を含有することを特
徴とする上記(1)または(2)記載の快削鋼である。
【0018】(4) 更に、質量%でNb:0.005
〜0.08%、V :0.005〜0.2%、の1種ま
たは2種以上を含有することを特徴とする上記(1)乃
至(3)の内のいずれかに記載の快削鋼である。
【0019】(5) 更に、質量%でPb:0.05%
以下、Bi:0.05%以下、Sn:0.05〜0.2
%、Te:0.002〜0.02%、Se:0.002
〜0.02%の1種または2種以上を含有することを特
徴とする上記(1)乃至(4)の内のいずれかに記載の
快削鋼である。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明の化学成分の請求範囲を上
記のように定めた理由を以下に示す。
【0021】Cは黒鉛を生成し切削工具寿命を向上させ
る。工具寿命改善に必要な黒鉛量を十分確保するためそ
の下限値を0.8%超とした。2.0%を超えると熱間
延性が劣化し連続鋳造性の際、割れが発生しやすくなる
ため上限を2.0%とした。
【0022】Siは黒鉛化を促進する有力な元素の一つ
である。短時間の焼鈍処理により十分な黒鉛を析出させ
て高い黒鉛化率とするためにはSiを添加することが必
要であり、その下限値は0.5%である。ただしSi含
有量が増大するとフェライト相が固溶硬化し切削工具寿
命の劣化を招くので、上限値を2.0%とした。
【0023】MnはSと結合してMnS、あるいはマト
リックス中に固溶Mnとして存在する。MnSは単独あ
るいは複合介在物を形成し黒鉛の生成サイトとなると共
に、潤滑性を向上し切削面粗さを改善する。十分なMn
S量を確保するしためその下限値を0.1%とした。た
だし固溶Mn量が大きくなると黒鉛化を著しく阻害する
ので上限値は2.0%とした。
【0024】Pは鋼中で粒界偏析や中心偏析を起こし靭
性劣化の原因となるので少ないほど望ましいが、一方で
切削面の粗さを改善するため、その上限値を0.5%
(0%を含む)とした。SはMn、CuあるいはMg等
の合金元素と反応して硫化物として存在する。これらの
硫化物は黒鉛の核生成サイトとして機能すると共に、潤
滑性が向上し切削面粗さを改善する。ただし0.05%
未満では十分な量の硫化物が確保できず、またS量が多
すぎると熱間延性を劣化させるため上限値を0.5%と
した。
【0025】Cuはセメンタイトを不安定化させると共
に硫化物を生成し黒鉛化を促進する。0.01%未満で
は効果が不十分であり、また1%を超えて添加しても効
果は飽和する。
【0026】ZrはCaOやTi23などの酸化物やM
nSなどの硫化物を微細分散化させる。これらの酸化物
や硫化物は黒鉛の析出サイトとして有効に機能し黒鉛の
均一分散化及び短時間黒鉛化に有効である。ただし、Z
rの添加量が0.0005%未満ではこれらの効果が認
められず、0.005%を超えて添加すると粗大な(Z
r、X)Sや硬質なZr(CN)を形成し、Zrによる
酸化物の微細化効果が減少するだけでなく破壊特性や被
削性を劣化させる。
【0027】NはAlやTiと結合してAlNやTiN
を生成し、結晶粒の細粒化に有効であり、変形能を向上
させる。0.0001%未満では効果がなく、0.02
%を超えて添加しても効果が飽和するばかりでなく黒鉛
化を著しく阻害する。
【0028】AlはOと結合して酸化物、あるいはNと
結合してAlNを形成する。AlNは結晶粒の細粒化に
有効であり、焼入れ焼戻し後の靭性を向上させる。0.
001%未満ではAlNの量が不十分で細粒化効果が現
れず、0.04%を超えるとAl脱酸が支配的になりZ
rの効果が飽和する。
【0029】Tiは酸化物Ti23や炭窒化物TiNあ
るいはTiCを形成する。Zrとの複合析出した酸化物
は単独あるいはMnSとの複合体を形成し黒鉛の析出サ
イトとして機能する。一方、炭窒化物はピンニング粒子
として機能しγ粒の成長を抑制する効果があり破壊靭性
値を向上させる。0.005%未満では黒鉛の析出促進
効果あるいは結晶粒細粒化の効果は小さく、また0.0
5%を超えて添加すると逆に靭性が劣化すると共に被削
性も劣化する。
【0030】Caは酸化物CaOを形成する。Zrと複
合析出したCaOは単独あるいはMnSとの複合体を形
成し黒鉛の析出サイトとして機能する。0.0005%
未満では効果は少なく、0.005%を超えて添加する
とCa脱酸が支配的となり粗大なCaOが形成され破壊
特性が劣化する。Mgは酸化物MgOやMgAl24
形成し、これらの単独あるいはZrとの複合介在物は黒
鉛の析出サイトとして機能する。0.0005%未満で
は効果が少なく、0.005%以上含有するには製鋼コ
ストが増加する。
【0031】Moは焼入性を確保するために添加する。
焼入性の効果を十分得るために、添加量の下限値を0.
01%とした。また0.5%を超えて添加するとフェラ
イト地の硬さが上昇し被削性が劣化すると共に黒鉛化を
阻害する。
【0032】Crは焼入性を確保するために添加する。
焼入性の効果を十分得るために添加量の下限値を0.0
1%とした。また0.7%を超えて添加すると著しく黒
鉛化を阻害する。
【0033】Ni、Coはセメンタイトを不安定化させ
黒鉛化を促進させると共に、焼入性を高め強度を確保す
るのに効果的である。0.05%未満では効果が不十分
であり、また3%を超えて添加しても効果は飽和する共
に経済的に極めて不利となる。
【0034】Bは焼入れ性の向上を目的に添加する。効
果を得るには0.0001%以上を添加しなければなら
ない。ただし0.01%以上添加すると黒鉛化を阻害す
ると共に、B化合物が粒界に析出し破壊靭性を劣化させ
る。
【0035】NbはNbCあるいはNbNを形成し、ピ
ンニング粒子として機能しγ粒の成長を抑制する効果が
あり破壊靭性値を向上させる。0.005%未満では結
晶粒細粒化の効果は小さく、また0.08%を超えて添
加すると逆に靭性が劣化すると共に被削性も劣化する。
【0036】VはVCあるいはVNを形成し、ピンニン
グ粒子として機能しγ粒の成長を抑制する効果があり破
壊靭性値を向上させる。0.005%未満では結晶粒細
粒化の効果は小さく、また0.2%を超えて添加すると
逆に靭性が劣化すると共に被削性も劣化する。
【0037】Pb、Biは工具と被削材の界面において
凝着を抑制する作用があるので、切削仕上げ面粗さを顕
著に改善するが、0.05%を超えると黒鉛化を著しく
阻害するため上限をそれぞれ0.05%とした。
【0038】SnもPb、Biと同様に仕上げ面粗さを
改善する効果がある。両者共に0.05%未満では効果
が少なく、0.2%を超えると効果が飽和する。
【0039】Te、Seも同様に切削仕上げ面を改善す
る効果がある。0.002%未満では効果が小さく、
0.02%を超えると熱間加工性が低下する。
【0040】本発明ではZrを含有する酸化物を特定の
個数含有する。Zrを含有する酸化物とはTi23やC
aOなどの酸化物中にZrを含有した酸化物である。こ
のようにZrが酸化物中に固溶することで酸化物のサイ
ズは微細化し、個数が増加する。これらの酸化物は直接
あるいはMnSを媒介にして黒鉛の析出サイトとして機
能し、黒鉛を均一分散化させる。Zrを含む酸化物の個
数が103個/mm2未満であれば析出サイトが不足し黒
鉛は均一に分散することなく、切削面の粗さが劣化す
る。
【0041】更に、本発明では含有炭素の一部を黒鉛化
させる。黒鉛の質量%が0.1%未満では黒鉛のもつ潤
滑性を確保できず被削性が劣化するため、黒鉛量の下限
を0.1%とした。
【0042】熱間圧延あるいは熱間鍛造における加工温
度、冷却速度を制御するか、焼鈍時間等を制御すること
によって、鋼中炭素の一部を黒鉛の形態で析出させて
0.1%以上の黒鉛を含有させることができる。
【0043】
【実施例】表1に示す成分の鋼を溶製鋳造し、分塊圧延
によりビレットを製造した。次いでビレットを再加熱し
てφ20のサイズに熱間圧延した。表2に次式で表され
る硫化物または炭窒化物として析出するZrの分率、
(ZrS中のZr量+Zr(CN)中のZr量)/鋼の
全Zr含有量×100及び、主たる酸化物の種類、Zr
を含有する酸化物の個数、粗大Zr介在物の有無を示
す。更に、黒鉛化率90%までの焼鈍時間を示す。Zr
の分率の測定は化学分析により求めた。ここで鋼中Zr
の分析方法であるが、JIS G 1237−1997
付属書3と同様の方法でサンプルを処理した後、鋼中N
b量の分析と同様に鋼中Zr量をICP(誘導結合プラ
ズマ発光分光分析法)によって測定した。ただし、本発
明での実施例の測定に供したサンプルは2g/鋼種で、
ICPにおける検量線も微量Zrに適するように設定し
て測定した。即ち、Zr濃度が1〜200ppmとなる
ようにZr標準液を希釈して異なるZr濃度の溶液を作
成し、そのZr量を測定することで検量線を作成した。
なおこれらのICPに関する共通的な方法についてはJ
IS K 0116−1995(発光分光分析方法通
則)及びJIS Z 8002−1991 (分析、試
験の許容差通則)による。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】主たる酸化物の組成とZrを含有する酸化
物の個数は、熱間圧延後の棒鋼を1200℃に60分間
加熱し水焼入れしたサンプルの1/2R部より抽出レプ
リカ試料を作製し、TEM(透過型電子顕微鏡)を用い
て50000倍の倍率で1000μm2の面積を観察す
ることで評価した。介在物の同定はエネルギー分散型X
線検出器(EDS)と、TEM電子線回折で行った。
【0047】粗大Zr介在物は黒鉛化焼鈍後の棒鋼の1
/2R部より採取したサンプルを用いSEM(走査型電
子顕微鏡)により総視野1mm2を観察することで評価
した。10μmを超えるZrを含有する介在物を粗大Z
r介在物とした。視野中に観察されたZr系介在物がい
ずれも10以下の場合、無しとした。
【0048】黒鉛化率90%までの焼鈍時間は、熱間圧
延材を700℃の焼鈍炉に種々の時間保持し次式で示さ
れる黒鉛化率を求め、黒鉛化率が90%に達する焼鈍時
間とした。 黒鉛化率(%)=(鋼中黒鉛含有量/鋼の炭素含有量)
×100 ここで、炭素含有量及び黒鉛含有量は化学分析により定
量した。
【0049】表2に示したように本発明鋼の請求範囲を
満足する鋼1〜21は含有Zrの内ZrSあるいはZr
(CN)の形態で析出している割合はいずれも24%以
下である。また主な酸化物はZrを含有したAl23
Ti23やCaOあるいはMgAl24などである。機
械的特性や被削性を劣化させる粗大Zr系介在物の生成
が顕著に抑制されている。更に、黒鉛化率90%までの
焼鈍時間は本発明鋼はいずれも11h以下である。Zr
を含有しない鋼種31、Cuを含有しない鋼29は、そ
れぞれ26h、24hで黒鉛化が遅延する。Zrの含有
量が本発明範囲を超える鋼種は、19μm以上の粗大な
Zr系介在物を生成する。
【0050】被削性試験結果は表3に示す。被削性試験
に用いた供試材は表1の鋼種1〜34である。表3に示
す、熱間圧延後の棒鋼の焼鈍条件を制御した黒鉛化処
理、あるいは熱間鍛造または熱間圧延の条件を制御した
黒鉛化処理を行った。鋼種18、19は1250℃で熱
間鍛造し、空冷した材料を用いた。鋼種20、21は圧
延温度を制御して黒鉛含有量を調整した熱間圧延ままの
棒鋼を用いた。鋼中の黒鉛含有量は化学分析により定量
した。被削性の評価にはドリル寿命(VL1000)と
切削面粗さ(Rz)で評価した。
【0051】
【表3】
【0052】ここでドリル寿命を示す指標VL1000
とは累積穴深さ1000mmまで穿孔可能な最大のドリ
ル周速のことで、この値が大きいほど高速で切削可能で
あり、被削性に優れることを意味する。被削性の評価に
は黒鉛化焼鈍後のサンプルを用いた。なお、鋼16は熱
間圧延ままサンプルで評価した。切削試験は講義寿命を
示す指標であるVL1000で評価した。φ5mmのス
トレートドリルを用い送り0.33mm/revで水溶
性切削油を用いて、ドリル周速を変化させてドリル折損
までの累積穿孔深さを測定し、それをもとにVL100
0を求めた。
【0053】切削面粗さはプランジ切削したときの切削
表面を蝕針式粗さ計で測定しJISB0601に準拠し
た十点平均粗さRzで評価した。切削条件はプランジ切
削用高速度工具SKH57を用いて、切削速度80m/
min、送り0.05m/revで表面粗さRzを評価
した。
【0054】硫黄快削鋼SUM23のVL1000は9
0m/minであり、黒鉛の含有量が0.1%を超える
鋼のVL1000はいずれの鋼種でも硫黄快削鋼より優
れた工具寿命である。図1に黒鉛量と工具寿命VL10
00との関係を示す。図2にZr含有量と工具寿命VL
1000の関係を示す。Zr量が0.005%を超える
鋼ではVL1000が劣化する。
【0055】一方切削面粗さは、図3に示すようにS量
の増加に伴い減少する。硫黄快削鋼SUM23の切削面
粗さは26μmであり、S量が0.05〜0.5%の範
囲とすることでRzはSUM23より小さくなり切削面
粗さに優れる。S量が0.05%〜0.5%の範囲でも
C量が本発明の範囲を外れる鋼種は切削面粗さが劣化す
る。図4にC量とRzの関係を示す。C量の増加に伴
い、Rzが低下し、C量が0.8超〜2.0%の範囲で
はSUM23より小さくなり切削面粗さに優れる。本発
明の範囲を満たす鋼種は硫黄快削鋼SUM23より優れ
た切削面粗さである。
【0056】本請求範囲を満たす鋼は切削工具寿命と切
削面粗さの両面において硫黄快削鋼より優れた特性を示
し、被削性が優れている。
【0057】
【発明の効果】以上の実施例からも明らかなように本発
明によれば、黒鉛が微細分散し、切削工具寿命と切削仕
上げ面粗さに優れた黒鉛鋼を低コストで提供することが
可能であり、産業上の効果は極めて顕著なるものがあ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】工具寿命に及ぼす黒鉛量の影響を示す図であ
る。
【図2】工具寿命に及ぼすZr含有量の影響を示す図で
ある。
【図3】切削表面粗さに及ぼすS含有量の影響を示す図
である。
【図4】切削表面粗さに及ぼすC含有量の影響を示す図
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 蟹澤 秀雄 室蘭市仲町12番地 新日本製鐵株式会社室 蘭製鐵所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、C:0.8超〜2.0%、S
    i:0.5〜2.0%、Mn:0.1〜2.0%、P:
    0.5%以下(0%含む)、S:0.05〜0.5%、
    Cu:0.01〜1.0%、Zr:0.0005〜0.
    005%、N:0.0001〜0.02%を含有し、Z
    rを含む酸化物を103個/mm2以上含有し、質量%で
    0.1%以上の黒鉛を含有することを特徴とする快削
    鋼。
  2. 【請求項2】 更に、質量%で、Al:0.001〜
    0.04%、Ti:0.005〜0.05%、Ca:
    0.0005〜0.005%、Mg:0.0005〜
    0.005%の1種または2種以上を含有することを特
    徴とする請求項1記載の快削鋼。
  3. 【請求項3】 更に、質量%で、Mo:0.01〜0.
    5%、Cr:0.01〜0.7%、Ni:0.05〜3
    %、Co:0.05〜3%、B :0.0001〜0.
    01%の1種または2種以上を含有することを特徴とす
    る請求項1または2記載の快削鋼。
  4. 【請求項4】 更に、質量%でNb:0.005〜0.
    08%、V :0.005〜0.2%の1種または2種
    以上を含有することを特徴とする請求項1乃至3の内の
    いずれかに記載の快削鋼。
  5. 【請求項5】 更に、質量%でPb:0.05%以下、
    Bi:0.05%以下、Sn:0.05〜0.2%、T
    e:0.002〜0.02%、Se:0.002〜0.
    02%の1種または2種以上を含有することを特徴とす
    る請求項1乃至4の内のいずれかに記載の快削鋼。
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