JP6207408B2 - 優れた被削性、硬さ、耐摩耗性および耐食性を有するステンレス鋼 - Google Patents

優れた被削性、硬さ、耐摩耗性および耐食性を有するステンレス鋼 Download PDF

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Description

本発明は、精密機器部品および産業用機械構造部品などの部材に用いられる、優れた被削性、硬さ、耐摩耗性および耐食性を有するステンレス鋼に関する。
精密機器部品および産業用機械構造部品などの部材においては、ある程度の耐食性や優れた硬さおよび耐摩耗性が要求されるため、マルテンサイト系ステンレス鋼としてJIS G4303に規定されているSUS440C(C:0.95〜1.20%、Si:1.00%以下、Mn:1.00%以下、P:0.040%以下、S:0.030%以下、Cr:16.00〜18.00%を含有し、残部が実質的にFe)が使用されてきた。ところが、このマルテンサイト系ステンレス鋼であるSUS440Cは被削性に乏しく、焼入焼戻し処理を行っていない状態であっても、精密部品を作製する際の微細な穴加工等が困難である。そこで、被削性向上のために快削元素であるSを添加したマルテンサイト系ステンレス鋼であるSUS440F(C:0.95〜1.20%、Si:1.00%以下、Mn:1.25%以下、P:0.060%以下、S:0.15%以上、Cr:16.00〜18.00%を含有し、残部がFeおよび不可避的な不純物からなる)がJIS G4303に登録されている。
従来のマルテンサイト系ステンレス鋼であるSUS440Fは、快削元素であるSを添加することでステンレス鋼中にMnSを分散させ、機械加工時にそのMnSが応力集中源として亀裂の発生・伝播を助けることで被削性を向上させている。しかし、このMnSは耐食性が悪く、被削性向上のためにステンレス鋼中の分散量を増大すると、そのステンレス鋼の耐食性が悪化してしまうこととなる。
また、マルテンサイト系ステンレス鋼にSとCaを合わせて添加することで、通常の硫化物であるMnSの一部のMnがCaと入れ替わり、(Mn,Ca)Sが生成して被削性の向上に加え切削工具の摩耗量を低減させるとともに、高周波焼入れを施すことで必要な表面硬さを得るというものもある(例えば、特許文献1参照)。ところが、この提案の方法ではマルテンサイト系ステンレス鋼であるSUS440Cと同等の硬さを維持しつつ被削性の向上および切削工具摩耗量の低減をはかることは出来るが、耐食性の向上という点で改良が求められている。これは、ステンレス鋼中に介在物として分散している(Mn,Ca)SはMnSと同様に耐食性に乏しく、その介在物自体が強く腐食されるため、高耐食性を維持できないからである。
耐食性、耐久性および切削加工性に関して、硫化物系介在物組成を制御し、かつ材料の表面性状を保つための介在物制御にかかるものもある(例えば、特許文献2参照)。これは硫化物中に高Cr相と低Cr相が共存する複合硫化物を形成し、高Cr相が硬質であるために加工時の外力による変形や複合硫化物の脱落を低減し、材料加工時に材料表面の凹凸の状態を良好に保つことに着目したものである。ところが、この特許文献2は以下に記載するような硫化物および炭化物の分布制御については触れていない。
特開2000−282185号公報 特開2013−104075号公報
マルテンサイト系ステンレス鋼であるSUS440Cと同程度の硬さおよび耐摩耗性を維持しつつ、被削性および耐食性の向上が両立可能な材料が必要であるという課題が提起されている。本発明は、焼入焼戻し処理後の硬さをSUS440Cと同程度(HRC58以上)にすることができるとともに、耐摩耗性および耐食性にも優れ、かつ優れた被削性を有する高硬度ステンレス鋼を提供することを課題とする。
上記の課題を達成するため、本発明者は、HRC58以上の硬さと、充分な耐摩耗性および耐食性を有するとともに優れた被削性を有するマルテンサイト系ステンレス鋼について鋭意研究した結果、前記の精密機器部品および産業用機械構造部品などの部材において、耐食性および被削性が低下する原因となる巨大な炭化物の析出を抑えるためにC含有率を低下させること、硫化物自体の耐食性を向上させるためにMnおよびS含有率を調整すること、また硬さと耐食性を両立させるために、炭化物および硫化物の分布を制御する必要があること、などの知見を得た。本発明は上記の知見を基になされたものである。
本発明の優れた被削性を有する高硬度ステンレス鋼に関する第1の発明の手段は、質量%で、C:0.40〜1.10%、Si:0.60%以下、Mn:0.80%以下、S:0.050〜0.200%、Cr:9.00〜17.00%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、かつMnとSの質量比が0.38≦Mn/S≦1.13(式1)を満足する組成の硫化物を含有し、さらに1.0μm2以上の大きさの硫化物と10μm2以上の大きさの炭化物を含有し、かつ該硫化物の個数と炭化物の個数が(硫化物個数)≧(炭化物個数)×2.4(式2)を満足するものであることを特徴とする。
第2の手段は、第1の手段に記載した化学成分に、質量%で、さらにNi:0.30%以下、Mo:0.01〜2.00%、P:0.050%以下、Al:0.100%以下のうちの1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、かつMnとSの質量比が0.38≦Mn/S≦1.13(式1)を満足する組成の硫化物を含有し、さらに1.0μm2以上の大きさの硫化物と10μm2以上の大きさの炭化物を含有しかつ該硫化物の個数と炭化物の個数が(硫化物個数)≧(炭化物個数)×2.4(式2)を満足するものであることを特徴とする。
第3の手段は、第2の手段に記載した化学成分に、質量%でさらにCu:0.30%以下、B:0.001〜0.020%、N:0.002〜0.100%、V:0.05〜0.50%、Nb:0.05〜0.50%、Zr:0.05〜0.50%、Co:0.05〜0.50%のうちの1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、かつMnとSの質量比が0.38≦Mn/S≦1.13(式1)を満足する組成の硫化物を含有し、さらに1.0μm2以上の大きさの硫化物と10μm2以上の大きさの炭化物を含有し、かつ該硫化物の個数と炭化物の個数が(硫化物個数)≧(炭化物個数)×2.4(式2)を満足するものであることを特徴とする。
ここで、本願の請求項1、請求項2および請求項3に係る発明であるステンレス鋼の化学成分の限定理由を以下に記載する。なお、化学成分の%は質量%を示す。
C:0.40〜1.10%
Cは、鋼の硬さおよび耐摩耗性に寄与する元素であり、0.40%より少ないとその効果が小さい。Cが1.10%を超えると数百μmオーダーの巨大な炭化物が析出することで、被削性および耐食性の悪化に繋がる。そこで、Cは0.40〜1.10%とする。望ましくは、Cは0.40〜0.70%とする。
Si:0.60%以下
Siは製鋼時の脱酸剤として有用なかつ材料強度に寄与する元素であるものの、過多の場合、高度上昇により被削性を悪化する。そこで、Siは0.60%以下とする。望ましくは、Siは0.40%以下とする。さらに望ましくは、Siは0.25%以下とする。
Mn:0.80%以下
Mnは、Sと結合して硫化物を形成し、被削性を向上させる元素である。基地よりも腐食しやすいMnSが一定量を超えると、耐食性が悪化する。そこで、Mnは0.80%以下とする。望ましくは、Mnは0.40%以下とする。
S:0.050〜0.200%
Sは、Mnと結合して硫化物を形成し、被削性を向上させる元素である。Sが0.050%よりも少ない場合は被削性の向上に寄与しない。Sが0.200%よりも過多の場合は基地よりも強度の低いMnSが増加して熱間加工性を悪化させる。そこで、Sは0.050〜0.200%とする。望ましくは、Sは0.100〜0.180%とする。
Cr:9.00〜17.00%
Crは、耐食性の向上に必須の元素であり、また、固溶強化元素として材料強度の向上に寄与する元素である。Crが9.00%より少ない場合は充分な耐食性が得られない。Crが17.00%より過多の場合は材料の基地および硫化物が硬化し、加えて数百μmオーダーの巨大な炭化物の析出量も増加するため、被削性が悪化する。そこで、Crは9.00〜17.00%とする。望ましくは、Crは10.50〜15.50%とする。
Ni:0.30%以下
Niは、材料の延性および靭性に寄与する元素であるが、強力なオーステナイト生成元素であり、マルテンサイトと比べて硬さおよび耐摩耗性が低いオーステナイトが生成することは望ましくない。また、Niは高価な元素でありコスト上昇にも繋がる。そこで、Niは0.30%以下とする。
Mo:0.01〜2.00%
Moは、耐食性を向上させる元素であるが、Moが0.20%よりも少ないと十分に耐食性を向上させることができず、Moが2.00%を超えると脆化相の析出を促進し、またコスト上昇にも繋がる。そこで、Moは0.01〜2.00%とする。
P:0.050%以下
Pは、鋼の靭性を低下する元素であるため、極力少なくすることが望ましい。ところが過度の低減はコスト上昇に繋がる。そこで、Pは0.050%以下とする。
Al:0.100%以下
Alは、製鋼時の強力な脱酸剤として有用な元素であるが、過多の場合、硬質な酸化物の形成により加工性および被削性を悪化する。そこで、Alは0.100%以下とする。
Cu:0.30%以下
Cuは、Feよりも酸化し難く、溶製過程での除去が困難な元素である。さらにCは高温での粒界脆化、熱間加工性の阻害、高温割れの要因となる。そこで、Cuは0.30%以下とする。
B:0.001〜0.020%
Bは、熱間加工性の改善効果を有する元素であるが、Bが0.001%より少ないと熱間加工性の改善効果は十分でない。一方、Bが0.020%を超えると、硼化物が生成し、逆に熱間加工性が悪化する。そこで、Bは0.001〜0.020%とする。
N:0.002〜0.100%
Nは、耐食性の向上および強度の向上に寄与する元素である。しかし、Nが0.002%未満ではその効果が乏しくなる上に精錬が困難となり、生産性が低下し製造コストの上昇を招く。一方、Nが過多の場合、熱間加工性が悪化する。そこで、Nは0.002〜0.100%とする。
V:0.05〜0.50%
Vは、安定した微細な炭化物を形成し、結晶粒を微細化して鋼の強度、延性および靭性を向上させる元素である。しかし、Vが0.05%より少ないと鋼の強度、延性および靭性を十分に向上させることができない。一方、Vが0.50%を超えて含有されると鋼の冷間加工性を低下させ、延性および靭性を低下させる。そこで、Vは0.05〜0.50%とする。
Nb:0.05〜0.50%
Nbは、Vと同様に安定した微細な炭化物を形成し、結晶粒を微細化して鋼の強度、延性および靭性を向上させる元素である。しかし、Nbが0.05%より少ないと鋼の強度、延性および靭性を十分に向上させることができない。一方、Nbが0.50%を超えて含有されると鋼の冷間加工性を低下させ、延性および靭性を低下させる。そこで、Nbは0.05〜0.50%とする。
Zr:0.05〜0.50%
Zrは、VおよびNbと同様に安定した微細な炭化物を形成し、結晶粒を微細化して鋼の強度、延性および靭性を向上させる元素である。しかし、Zrが0.05%より少ないと鋼の強度、延性および靭性を十分に向上させることができない。一方、Zrが0.50%を超えて含有されると鋼の冷間加工性を低下させ、延性および靭性を低下させる。そこで、Zrは0.05〜0.50%とする。
Co:0.05〜0.50%
Coは、基地に固溶したまま析出物の凝集を抑制し、時効軟化を阻止する元素である。しかし、Coが0.05%より少ないと時効軟化を十分に阻止できない。一方、Coが0.50%より過多の場合、Co3Alなどの金属間化合物を形成し、冷間加工性を低下する。そこで、Coは0.05〜0.50%とする。
硫化物中の組成であるMnとSの質量比を、0.38≦Mn/S≦1.13(式1)とする理由
MnとSはステンレス鋼中において硫化物であるMnSを形成し、その被削性を改善する。また、Cr濃度の高いステンレス鋼中においては、一部のMnがCrと入れ替わり、(Mn,Cr)Sを形成する。この(Mn,Cr)SはMnSと比較して、一般に耐食性が良好である。しかし、硫化物中のMn濃度が高まるに伴って硫化物中のCr濃度が低くなり、それを含有するステンレス鋼の耐食性を悪化させることとなる。この耐食性の悪化を回避するためには、鋼中のMnとSの濃度比を制限し、硫化物中のMn濃度の上昇を抑制して、Cr濃度を15%以上にまで上昇させる必要がある。しかし、硫化物中のMn濃度の上昇を抑制して、Cr濃度を45%よりも高くすると、硫化物の硬さが適正範囲である約150〜400HVを超えるため被削性の悪化に繋がる。Cr:9.00〜17.00%という本発明の範囲では、硫化物中の組成であるMnとSの質量比が決まればおのずと硫化物中のCr量も決定する。そこで、硫化物中の組成であるMnとSの質量比が0.38≦Mn/S≦1.13(式1)を満足するものとする。望ましくは0.63≦Mn/S≦1.00とする。
1.0μm2以上の大きさの硫化物と10μm2以上の大きさの炭化物を含有しかつ該硫化物の個数と炭化物の個数を、(硫化物個数)≧(炭化物個数)×2.4(式2)とする理由
ステンレス鋼中に析出する炭化物は硬さ、耐摩耗性、耐食性および被削性に影響する。炭化物量が増大するほど硬さおよび耐摩耗性は向上し、耐食性および被削性は悪化する。また、ステンレス鋼中に介在物として存在する硫化物は耐食性および被削性に影響する。硫化物量が増大するほど被削性は向上し、耐食性は悪化する。ただし、上記したように硫化物組成中のCr濃度が増加するほど該硫化物自体の耐食性は向上する。加えて、硬さ、耐摩耗性、耐食性および被削性には、炭化物や硫化物などの大きさや量も影響する。10μm2以上の粗大な硬い炭化物が鋼中に多量に存在すると、耐食性および被削性が大幅に悪化する。また、被削性に好影響を与える1.0μm2以上の硫化物の数が、10μm2以上の炭化物の数に対して少ないと充分な被削性が保てない。よって、10μm2以上の大きさで存在する炭化物の個数と1.0μm2以上の大きさで存在する硫化物の個数が(硫化物個数)≧(炭化物個数)×2.4(式2)を満足するものとする。
本発明は、硫化物組成中のMnとSの比を調整することで、硫化物の耐食性を向上させ、同時に10μm2以上の大きさで存在する炭化物の個数と1.0μm2以上の大きさで存在する硫化物の個数を調整することで、優れた被削性、硬さ、耐摩耗性および耐食性を有するステンレス鋼を得ることができる。
次いで、本発明を実施するための形態について、表および図表を参照して以下に説明する。
表1にFe以外の成分を示す成分組成からなる、本発明の高硬度ステンレス鋼を100kgVIM(真空誘導溶解炉)で溶製し、これをインゴットに鋳造し、このインゴットからなる鋼材を径が25mmの棒鋼に鍛伸した。鍛伸の際に不均一となった組織を均一なオーステナイトと炭化物の混合組織にするため、870℃で焼なまし処理を施したものを供試材として下記の各試験に供した。
表1に発明例のNo.1〜11および比較例のNo.1〜7の組成を示す。
Figure 0006207408
表2に硫化物中の組成、硫化物中のMn/Sの値の算出結果ならびに評価、および後述の介在物分布評価を示す。硫化物中の組成は、エネルギー分散X線解析(EDS)により各試料の圧延方向の断面に観測された介在物を観察、分析して得た結果である。
Figure 0006207408
介在物分布評価:
供試材の鍛伸方向に垂直な断面における、直径の1/4の位置付近を切り出し、エメリー紙とバフを用いて鏡面まで研磨した後に試料の約20視野を観察した。観察された10μm2以上の大きさで存在する炭化物の個数、および1.0μm2以上の大きさで存在する硫化物の個数を計測した。その計測結果を表2に示す。10μm2以上の大きさで存在する炭化物の個数と1.0μm2以上の大きさで存在する硫化物の個数が(硫化物個数)≧(炭化物個数)×2.4(式2)を満足するものを○で、満足しないものを×で示した。
表1に示す発明例のNo.1〜11と比較例のNo.1〜7についてのそれぞれの被削性、耐食性、硬さおよび耐摩耗性の評価結果を下記の表3に示す。表1の各発明例および比較例の組成のステンレス鋼をそれぞれ適当な試験片の大きさに加工した後に被削性試験を実施した。また、1030〜1100℃で焼入れ、150℃で焼戻し処理を行った後に表3におけるその他の各種試験を実施した。
被削性評価は、以下に示す(1)ドリル寿命試験および(2)旋削工具摩耗試験を実施した。
(1)ドリル寿命試験
ドリル寿命試験は、縦150mm、横350mm、高さ150mmの試料を作製し、以下の条件にて試験を実施した。評価は、比較例のNo.1のドリル寿命(穴数)に対する各供試材の比で表した。
試験条件
(a)ドリル:SKH51、直径5mm、ストレートシャンクツイストドリル
(b)周速:15m/min
(c)送り:0.03mm/rev
(d)穿孔深さ:15mm
(e)切削油:なし
(f)寿命判定:折損または溶損により穿孔不能となるまで
(2)旋削工具摩耗試験
旋削工具摩耗試験は、直径65mmに鍛伸後に上記熱処理を施した試料について、周方向に一定の下記の条件で旋削を行い、切削距離200mのときの工具逃げ面摩耗を測定した。評価は、比較例のNo.1の工具摩耗量(mm)に対する各供試材の比で表した。
(a)使用工具:超硬P20、正方形ネガティブチップ、刃先R0.4mm
(b)切削速度:200m/min
(c)切込量:1.5mm
(d)送り量:0.2mm/rev
(e)クーラント:なし
耐食性評価は、直径12mmで高さ21mmの腐食試験用試料を作製し、サイクル湿潤試験および塩水噴霧試験を実施した。サイクル湿潤試験は、相対湿度90%の雰囲気の下で、雰囲気を50℃にして4.5時間晒す時間帯と雰囲気を20℃にして1.5時間晒す時間帯を1サイクルとし、これを20サイクル繰り返して実施した。一方塩水噴霧試験は、35℃の雰囲気の下で濃度が50ppmの塩化ナトリウム水溶液を16時間試料に噴霧して実施した。サイクル湿潤試験および塩水噴霧試験について、発錆なしのものを○、発錆ありのものを×として評価した。
硬さ評価は、鍛伸方向に垂直な断面における直径の1/4付近をHRCスケールで測定した。
耐摩耗性評価は、縦30mmで横30mm、高さ10mmの試料を作製し、大越式摩耗試験を実施し、比摩耗量(mm2/N)を測定した。なお大越式磨耗試験は、相手リングにSCM420を用い、最終荷重が61.8N、リング回転速度が2.4m/secの条件で400m走行させて実施した。評価は、比較例のNo.1の比摩耗量に対する各供試材の比で表した。
Figure 0006207408
表2に示したように、比較例のNo.1〜4はMn/Sの値が高くなり、(式1)の上限値よりも大きな値であった。これにより硫化物(Mn,Cr)S中のCr濃度が低くなり、耐食性が良くないMnSに成分が近づくことで、それを含有するステンレス鋼の耐食性が悪化した。これは表3の耐食性の評価を見ても明らかである。
表2に示したように、比較例のNo.5〜7は(式1)を満足しており、硫化物自体の耐食性は良いものと考えられるが、10μm2以上の大きさで存在する炭化物の個数が(式2)を満足しないほど多かった。前記したように、被削性および耐食性には、炭化物や硫化物などの、基地との間に界面を生成する物質も影響する。今回の比較例のNo.5〜7では、数多く析出した10μm2以上の炭化物と基地との界面が腐食されることで、表3に示したように耐食性が悪化したものと考えられる。
表2に示したように、発明例のNo.1〜11は(式1)および(式2)を満足しており、表3に示したように被削性、耐食性、硬さおよび耐摩耗性が充分な値を示した。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.40〜1.10%、Si:0.60%以下、Mn:0.80%以下、S:0.050〜0.200%、Cr:9.00〜17.00%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、かつMnとSの質量比が0.38≦Mn/S≦1.13(式1)を満足する組成の硫化物を含有し、さらに1.0μm2以上の大きさの硫化物と10μm2以上の大きさの炭化物を含有しかつ該硫化物の個数と炭化物の個数が(硫化物個数)≧(炭化物個数)×2.4(式2)を満足するものであることを特徴とするステンレス鋼。
  2. 請求項1に記載した化学成分に、質量%で、さらにNi:0.30%以下、Mo:0.01〜2.00%、P:0.050%以下、Al:0.100%以下のうちの1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、かつMnとSの質量比が0.38≦Mn/S≦1.13(式1)を満足する組成の硫化物を含有し、さらに1.0μm2以上の大きさの硫化物と10μm2以上の大きさの炭化物を含有しかつ該硫化物の個数と炭化物の個数が(硫化物個数)≧(炭化物個数)×2.4(式2)を満足するものであることを特徴とするステンレス鋼。
  3. 請求項2に記載した化学成分に、質量%で、さらにCu:0.30%以下、B:0.001〜0.020%、N:0.002〜0.100%、V:0.05〜0.50%、Nb:0.05〜0.50%、Zr:0.05〜0.50%、Co:0.05〜0.50%のうち1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、かつMnとSの質量比が0.38≦Mn/S≦1.13(式1)を満足する組成の硫化物を含有し、さらに1.0μm2以上の大きさの硫化物と10μm2以上の大きさの炭化物を含有しかつ該硫化物の個数と炭化物の個数が(硫化物個数)≧(炭化物個数)×2.4(式2)を満足するものであることを特徴とするステンレス鋼。
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