JPH08283855A - 磁気特性に優れる方向性けい素鋼板の製造方法 - Google Patents

磁気特性に優れる方向性けい素鋼板の製造方法

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JPH08283855A
JPH08283855A JP8025044A JP2504496A JPH08283855A JP H08283855 A JPH08283855 A JP H08283855A JP 8025044 A JP8025044 A JP 8025044A JP 2504496 A JP2504496 A JP 2504496A JP H08283855 A JPH08283855 A JP H08283855A
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JP
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annealing
steel sheet
coercive force
silicon steel
primary recrystallization
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JP8025044A
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Inventor
Michiro Komatsubara
道郎 小松原
Masayoshi Ishida
昌義 石田
Kunihiro Senda
邦浩 千田
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JFE Steel Corp
Original Assignee
Kawasaki Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 安定かつ優れる磁気特性を有する方向性けい
素鋼板を得る。 【構成】 けい素鋼スラブを熱間圧延につづいて冷間圧
延し、1次再結晶焼鈍後焼鈍分離剤を塗布して最終仕上
げ焼鈍を施す方向性けい素鋼板の製造方法において、1
次再結晶後、2次再結晶開始前の鋼板の抗磁力を所定範
囲に制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、変圧器等の鉄心材料
として使用される磁気特性に優れる方向性けい素鋼板の
製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】方向性けい素鋼板は、各種変圧器の鉄心
材料として使用されているが、これは材料を構成する結
晶粒の方位を圧延方向に容易磁化軸を有する(110 )〔00
1 〕方位、いわゆるゴス方位に高度に集積させたもので
ある。この集積度は、鋼板の磁束密度特性に現われ、一
般には800A/mの磁場中での磁束密度を示すB8(T) の値で
評価されている。
【0003】このゴス方位への集積方法としては、2次
再結晶と呼ばれる現象が利用される。すなわち、通常の
結晶粒(これを1次再結晶粒という)の熱的成長過程に
おいて、方位選択性の極めて強い異常粒成長挙動を利用
したものであり、その方位選択性と異常粒成長の2点を
制御することがゴス方位への集積度の高い良好な2次再
結晶粒を得るために重要である。
【0004】そのためには、2次再結晶前の1次再結晶
において、集合組織および結晶粒径さらには結晶粒成長
を抑制するためのインヒビターの抑制力(分散第2相で
ある析出物や、粒界偏析成分の偏析による粒界移動を抑
制する力)などのバランスを適正に保つことが重要にな
る。
【0005】これらは、熱間圧延工程、冷間圧延工程お
よび1次再結晶焼鈍工程での各条件を適正に制御するこ
とによって、目標とする状態に調整されるが、いずれも
微妙な温度や圧下率さらには表面性状の制御を要求され
るため、工業的生産においては、以下に述べるような問
題があった。
【0006】すなわち、圧延方向に筋状に2次再結晶の
生成不良が発生したり、全面的に2次再結晶の生成不良
が発生したり、また、2次再結晶粒の結晶方位がゴス方
位から大幅にずれていることなどのため、磁気特性が劣
化し、大量の屑が発生することがしばしば生じた。
【0007】さらに、各工程条件が極めて厳重に管理さ
れた上記以外の場合でも、工場生産工程での通板チャン
スにおいて、磁気特性にバラツキが生じるのが常であ
り、歩留りや製品としての品質保証に問題をきたしてい
た。
【0008】このような、不安定さを解消させようとす
る技術として、1次再結晶粒径をオンラインで計測し、
1次再結晶粒径が適正範囲になるように1次再結晶焼鈍
条件を制御する手段が特開平2−267223号公報(方向性
電磁鋼板の1次再結晶焼鈍方法)に提案開示されてい
る。また、特開平4−337029号公報(一方向性電磁鋼板
の1次再結晶焼鈍方法)には、最終冷延前の鋼板のN含
有量を測定し、1次再結晶粒径を15〜25μm の範囲とす
べく1次再結晶焼鈍温度を変更する手段が提案開示され
ている。
【0009】これらは、上記したように、1次再結晶粒
径が2次再結晶挙動に大きな影響をおよぼす事実から、
1次再結晶粒径を最も優れる磁気特性が得られる範囲に
制御すべく、1次再結晶焼鈍条件(温度やライン速度)
を変更し、製品の磁気特性を安定かつ向上させる技術で
あるが、実際には、熱延条件の変動、冷間圧延後の焼鈍
条件やその冷却条件が変動して、インヒビターの抑制力
が変化した場合、それらの変化に応じて最適な1次再結
晶粒径が変化するので、2次再結晶の生成不良は抑止で
きても磁気特性の安定化を得ることができず、実用上は
うまく機能していなかった。
【0010】さらに、これまでに1次再結晶粒径に関連
して磁気特性に優れる良好な2次再結晶を得ようとする
技術が数多く提案されている。
【0011】例えば、特開平2−182866号公報(一方向
性電磁鋼板用板材)には、1次再結晶焼鈍後の結晶粒径
が15μm 以上で変動係数を0.6 以下とする手段が、特開
平6−33141 号公報(磁気特性の優れた一方向性電磁鋼
板の製造方法)には、1次再結晶焼鈍後の平均粒径を6
〜11μm 、変動係数を0.5 以下とし、2次再結晶開始直
前までに5〜30%平均粒径を増大させる手段がそれぞれ
開示されており、また、特開平5−156361号公報(磁気
特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法)には、1次
再結晶焼鈍後から最終仕上げ焼鈍開始までの1次再結晶
粒径を10〜35μm に、特開平5−295438号公報(磁気特
性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法)には、1次再
結晶粒径を18〜35μm に、特開平6−172861号公報(磁
気特性の優れた厚い厚板の一方向性電磁鋼板の製造方
法)には、1次再結晶粒径を18〜30μm にそれぞれ制御
する手段が開示されている。
【0012】しかし、これらはいずれも1次再結晶粒径
を指標としこれを制御することにより、磁気特性を向上
させるための良好な2次再結晶を生じさせようとする技
術であるが、工業的生産における磁気特性の不安定さと
いう上記した問題点は残されたままであった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、磁気特性
の向上および安定化をはかるため2次再結晶を適切に制
御するには、1次再結晶粒径とインヒビター抑制力との
双方のバランスを調整することが重要であることに着目
して、前記した問題点を有利に解決しようとするもので
あり、1次再結晶粒径とインヒビター抑制力とを考慮し
た新規手段により、従来にない安定かつ優れる磁気特性
が得られる方向性けい素鋼板の製造方法を提案すること
を目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】この発明は、種々実験・
検討を重ねた結果、1次再結晶後2次再結晶開始前の鋼
板の抗磁力が、けい素鋼板製品の磁気特性の予測、さら
にはその向上および安定化に極めて有効であることを全
く新規に知見したことにより達成したものである。すな
わち、この発明の要旨とするところは以下のとおりであ
る。
【0015】けい素鋼スラブを熱間圧延し、1回もし
くは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行ったのち、
1次再結晶焼鈍を施し、ついで焼鈍分離剤を塗布して2
次再結晶焼鈍と純化焼鈍とからなる最終仕上げ焼鈍を施
す方向性けい素鋼板の製造方法において、1次再結晶
後、2次再結晶開始前の鋼板の抗磁力を所定範囲に制御
することを特徴とする磁気特性に優れる方向性けい素鋼
板の製造方法である(第1発明)。
【0016】第1発明における制御手段が、スラブの
加熱条件の調整、熱間圧延条件の調整、熱延板焼鈍条件
の調整、中間焼鈍条件を含む冷間圧延条件の調整、一次
再結晶焼鈍条件の調整のうちから選んだ少なくともいず
れか一つである磁気特性に優れる方向性けい素鋼板の製
造方法である(第2発明)。
【0017】けい素鋼スラブを熱間圧延し、1回もし
くは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行ったのち、
1次再結晶焼鈍を施し、ついで焼鈍分離剤を塗布して2
次再結晶焼鈍と純化焼鈍とからなる最終仕上げ焼鈍を施
す方向性けい素鋼板の製造方法において、1次再結晶焼
鈍後鋼板の抗磁力を測定し、その測定値の目標抗磁力値
からの偏差に応じて、1次再結晶焼鈍条件の変更ならび
に、焼鈍分離剤の成分組成の調整および2次再結晶焼鈍
条件の調整のうちから選んだ少なくともいずれか一つの
処理を施すことを特徴とする磁気特性に優れる方向性け
い素鋼板の製造方法である(第3発明)。
【0018】抗磁力がオンラインでの計測によるもの
である第1または第2発明に記載の磁気特性に優れる方
向性けい素鋼板の製造方法である(第4発明)。
【0019】第3発明において、抗磁力の測定をオン
ラインで計測するものである(第5発明)。
【0020】以下、この発明を達成するに至った実験例
をもとにして述べる。
【0021】C:0.073mass %, Si:3.25mass%, Mn:
0.072 mass%, sol Al:0.025mass%, S:0.003 mass
%, Se:0.014 mass%, Sb:0.025 mass%およびN:0.
007mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の
組成からなる多数のスラブを用い、加熱温度を1380℃,
1395℃,1410℃および1425℃に変化させたそれぞれのス
ラブについて、粗圧延出側温度を1100〜1280℃の範囲、
仕上げ圧延出側温度を850 〜1050℃の範囲で熱間圧延
し、板厚:2.3mm の熱延板コイルとしたのち、950 〜12
50℃の温度範囲で熱延板焼鈍を行い、圧下率が約88%の
強圧下最終冷間圧延を100 〜280 ℃の温度域で行い、そ
れぞれ最終板厚:0.285mm の冷延板コイルとした。
【0022】これらの冷延板コイルを用い、800 ℃から
5℃間隔で900 ℃まで均熱温度を変えて脱炭を兼ねる1
次再結晶焼鈍を施し、つづいてMgO を主成分とする焼鈍
分離剤を塗布して最終仕上げ焼鈍を行った。
【0023】かくして得られた最終仕上げ焼鈍後の各鋼
板について、磁束密度B8(T) 、2次再結晶率および2次
再結晶粒の鋼板面内における結晶方位の(110 )〔001 〕
方位からのずれ角(α)を測定するとともに、1次再結
晶焼鈍後の各鋼板の平均1次再結晶粒径および飽和磁化
させた時の抗磁力(Hc)を測定した。
【0024】これらの測定結果を図1および図2にまと
めて示す。図1は1次再結晶焼鈍後鋼板の平均1次再結
晶粒径と最終仕上げ焼鈍後鋼板の諸特性との関係を示す
グラフであり、図2は1次再結晶焼鈍後鋼板の抗磁力(H
c)と最終仕上げ焼鈍後鋼板の諸特性との関係を示すグラ
フである。
【0025】なお、これらの図において、スラブ加熱温
度が同一の集団内では、脱炭・1次再結晶焼鈍温度を変
化させている。
【0026】図1から明らかなように、スラブ加熱温度
が変化する、すなわちインヒビターの抑制力が変化する
と平均1次再結晶粒径が同一でも磁気特性B8(T) が異な
り、平均1次再結晶粒径と磁気特性との関係が大きく変
化することを示している。したがって、この図1から
は、前記した従来技術のように平均1次再結晶粒径を制
御する手段では、磁気特性に優れる2次再結晶を適確に
得ることができないことが分る。
【0027】これに対して図2においては、スラブ加熱
温度が変化しても、1次再結晶焼鈍後鋼板の抗磁力(Hc)
と磁気特性B8(T) との関係は何ら影響されることがな
く、抗磁力が135 〜140 (A/m)の範囲において良好な磁
気特性を有している。したがって、この抗磁力を用いれ
ば、最終仕上げ焼鈍後の磁気特性を極めて正確な再現性
のもとに予測できることを示している。
【0028】これらの現象は、1次再結晶焼鈍後鋼板の
抗磁力に影響をおよぼす主要因子として、1次再結晶粒
径のみならず鋼中に析出している分散第2相が挙げられ
ることにある。
【0029】すなわち、この実験においては、脱炭・1
次再結晶焼鈍温度の変更(830 〜930 ℃)による1次再
結晶粒径の変化のほかに、スラブ加熱温度の変更(1380
〜1425℃)によるインヒビターの析出状態(分散第2
層)の変化といった影響を1次再結晶焼鈍後鋼板が忠実
に反映していることにより、1次再結晶粒径を指標とし
て用いるのでは、最終仕上げ焼鈍後鋼板の磁気特性を正
確に予測することが困難であるのに対し、1次再結晶焼
鈍後鋼板の抗磁力を指標として用いれば、抗磁力が、磁
気特性に影響する1次再結晶粒径とインヒビターの析出
状態とにより主として定まるものであることから、最終
仕上げ焼鈍後鋼板の磁気特性を正確に予測できることに
なる。
【0030】さらに抗磁力は、前掲特開平2−267223号
公報に記載されている鉄損値を測定する(結晶粒径の計
測に用いる)方法に比し、その測定が板厚および鋼板表
面の内部酸化物層の厚さに依存しない点優れている。
【0031】以上より、このような抗磁力を指標として
用いその好適範囲を特定すれば、従来にない安定かつ優
れる磁気特性を有する方向性けい素鋼板の製造が可能に
なる。
【0032】ここで、上記実験から、1次再結晶焼鈍後
鋼板の抗磁力が、良好な磁気特性の製品を得るための最
適範囲(所定範囲)あるいは最適値(目標値)より増加
している場合、低下している場合について考察する。
【0033】1次再結晶焼鈍後鋼板の抗磁力が増加して
いる場合、1次再結晶焼鈍条件以外の要因として、熱延
板焼鈍温度や中間焼鈍温度が低目のとき、あるいは冷間
圧下率が高目のときなどがあり、これらは1次再結晶粒
径が小さくなることにより抗磁力が増加する。また、ス
ラブの加熱温度の低下や加熱時間の不足、粗圧延温度の
低下ならびに熱間圧延時間の長時間化なども抗磁力の増
加要因となる。
【0034】逆に抗磁力が低下している場合、1次再結
晶焼鈍条件以外の要因として、鋼の成分組成の目標値か
らのずれ、熱延板焼鈍温度や中間焼鈍温度の高温化、冷
間圧延温度の高温化など多々あり、これらはインヒビタ
ーの高密度微細分散相が得られないこと、すなわち、イ
ンヒビターの抑制力が低下することのほか結晶粒径も増
大する。
【0035】このように、1次再結晶板の抗磁力を変化
させる1次再結晶焼鈍の前工程における要因は種々あ
り、抗磁力が変化した場合その要因を特定することは困
難であるが、抗磁力を目標値に近づけることは可能であ
る。
【0036】一方、1次再結晶板の再結晶状態は、抗磁
力を測定することにより推測可能であり、インヒビター
の抑制力の低下の程度と1次再結晶粒径の大きさとが抗
磁力の観点からは同等であるとの発明者らの知見によっ
て、抗磁力を目標値に近づけるためのより容易かつ適切
な対策を施すことが可能になる。
【0037】たとえば、インヒビターの抑制力が低下し
ている場合には、焼鈍分離剤中に硫酸塩化物を含有ある
いは増量させて抑制力を強化することで対処でき、1次
再結晶粒径が大きい場合には、1次再結晶焼鈍時の酸素
ポテンシャルを増加させたり、その焼鈍温度を低下させ
たりすることで対処でき、また最終仕上げ焼鈍時の昇温
速度を増加させることでも対処可能である。この発明の
特筆すべき点は、これらインヒビターの抑制力の低下と
1次再結晶粒径の粗大化とを抗磁力という指標によって
統一的に表現し、対処することができることである。
【0038】したがって、実用上最も簡便な方法は、抗
磁力が目標値より小さい場合は、インヒビターの抑制力
が低下している場合や結晶粒径が過大な場合の対策を、
抗磁力が目標値より大きい場合は結晶粒径が過大な場合
の逆の対策を施すことでよい。
【0039】
【作用】この発明の作用を以下に述べる。この発明の対
象としている方向性けい素鋼板は、従来から用いられて
いる製鋼法で得られた溶鋼を連続鋳造法あるいは造塊法
で鋳造し、必要に応じて分塊工程を経てスラブとし、該
スラブを熱間圧延して熱延板としたのち、1回または中
間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚とな
し、つづいて脱炭を兼ねる1次再結晶焼鈍後、焼鈍分離
剤を塗布して2次再結晶焼鈍と純化焼鈍とからなる最終
仕上げ焼鈍を施し製造される。
【0040】そして、その方向性けい素鋼スラブの好適
成分組成範囲は以下の通りである。
【0041】Cは、0.20mass%を超えると脱炭が困難に
なるので、その含有量は0.20mass%以下がよい。
【0042】Siは、2.0 mass%未満では固有抵抗が低す
ぎ、所望の鉄損が得られなく、一方7.0 mass%を超える
と圧延が困難になる。したがってその含有量は2.0 mass
%以上、7.0 mass%以下とすることがよい。
【0043】Mnは、MnS やMnSeなどのインヒビター成分
として、また熱間圧延性向上のために0.02mass%以上は
必要であるが、3.0 mass%を超えるとγ変態への影響が
大きくなり、2次再結晶が不安定となる。したがってそ
の含有量は0.02mass%以上、3.0 mass%以下とすること
がよい。
【0044】上記成分のほかにインヒビター成分とし知
られるS,Se, Al, TeおよびBのうちから選んだいずれ
か1つ以上を含有させることが磁気特性に優れる良好な
2次再結晶を得るために重要である。さらに安定な2次
再結晶を得るために、Cu, Ni, Sn, Sb, As, Bi, Cr, M
o, PおよびNのうちから選んだいずれか一つ以上を含
有させることもよい。
【0045】つぎにこの発明の特徴である抗磁力につい
て、その測定方法や制御方法などについて述べる。
【0046】まず、その測定方法としては、1次再結晶
焼鈍後の鋼板を切出して測定する方法(オフライン測定
法)や1次再結晶焼鈍炉と焼鈍分離剤塗布装置との間に
1次および2次コイルを設置し、該コイルの中に鋼帯を
通す方法(オンライン測定法)があるが、後者の方が制
御法としては優れている。
【0047】抗磁力の測定としては、 ・一定の磁化力を与えて測定する ・最大磁束密度を与えて測定する ・飽和磁束密度に近い領域まで磁化し測定するなど、い
ずれの方法もこの発明に適する。また、磁場を変化させ
る方法としては、準静的に変化させる方法(直流法)や
交番的に変化させる方法(交流法)のいずれもがこの発
明に適する。
【0048】さらに、磁化の付与の方法としては、1次
コイルのかわりに磁石を用いることも可能である。
【0049】かかる方法で測定した1次再結晶焼鈍後鋼
板の抗磁力の値があらかじめ測定しておいた最終仕上げ
焼鈍を経た製品で優れる磁気特性を発現できる1次再結
晶板の抗磁力が所定範囲内に入るように制御する。
【0050】なお、抗磁力は、方向性けい素鋼の成分組
成によって変化し、さらに測定方法として最大磁化力や
最大磁束密度のいずれを採るか、また、それらの設定値
によって変わるので、その目標値を特定することは困難
であるが、ほぼ同一の成分組成、同一の製造工程および
同一の測定方法であれば、抗磁力の値は一致するので、
製品での優れる磁気特性を発現できる1次再結晶板の抗
磁力の値を測定することは可能である。
【0051】その抗磁力の制御手段としては、スラブ加
熱工程から冷間圧延工程までの間で、前記した抗磁力を
変化させる要因となる処理条件を変更することもよい
が、より好ましくは、1次再結晶焼鈍条件の変更ならび
に焼鈍分離剤の成分組成の調整および2次再結晶焼鈍条
件の調整のうちから少なくとも一つ処理を施すことがよ
く、さらには、1次再結晶板の抗磁力の上記所定範囲内
にて目標値を定め、この目標値と1次再結晶焼鈍後鋼板
の抗磁力の測定値とを比較して、両者の偏差に応じて、
1次再結晶焼鈍条件の変更ならびに、焼鈍分離剤の成分
組成の調整および2次再結晶焼鈍条件の調整のうちから
少なくともいずれか一つの処理を施すことがよい。
【0052】かくすることにより安定かつ優れる磁気特
性を有する製品が得られることになる。
【0053】ここで、測定した抗磁力が目標値よりも小
さい場合にはインヒビターの抑制力が低下しているか1
次再結晶粒径が過大であるので下記するa〜lのいずれ
か一つ以上の対策で処理する。
【0054】1. 1次再結晶焼鈍条件の変更 a. 昇温時の酸素ポテンシャルを増加する。 b. 昇温速度を低下する。 c. 酸素目付量を低減する。 d. サブスケールのファイヤライト/シリカ比を低減す
る。 e. 均熱温度を下げる。 f. 均熱時間を低減する。 g. 窒化量を減らすか脱窒する(Alを含有する方向性け
い素鋼板の場合) 。
【0055】2. 焼鈍分離剤の組成の調整 h. SrSO4, MgSO4, SnSO4, Na2SO4, CaSO4, FeSO4, NiSO
4およびCoSO4 等の硫酸塩化合物を焼鈍分離剤に含有さ
せるか、もしくは含有量を増加する。 i. Alを含有する方向性けい素鋼板の場合には、FeN, Si
N4, Fe x N, (Mn, Fe) x N, TiNおよびCrN 等の窒化物
を焼鈍分離剤に含有させるか、もしくは含有量を増加す
る。
【0056】3. 2次再結晶焼鈍条件の調整 j. 昇温速度を増加する。 k. Sbを含有する方向性けい素鋼板の場合、750 〜950
℃の温度間における2次再結晶または2次再結晶核生成
のための定温保持処理の温度を高める。
【0057】l. Alを含有する方向性けい素鋼板の場
合、2次再結晶開始までの雰囲気中のH2分圧を低下す
る。
【0058】一方、逆に測定した抗磁力が目標値よりも
大きい場合には、1次再結晶粒径が過少であるかインヒ
ビターの抑制力が過大であるので、上記したa〜lと逆
の対策のうち、いずれか一つ以上を行うことでよい。
【0059】上記において、測定した抗磁力が目標値よ
りも小さい場合に行うa〜lの対策は、いずれも1次再
結晶焼鈍を含めて2次再結晶開始前までに抗磁力を高め
る手段になっており、逆に抗磁力が目標値よりも大きい
場合に行うa〜lの逆の対策は、いずれも1次再結晶焼
鈍を含めて2次再結晶開始前までに抗磁力を低下させる
手段になっている。
【0060】このように、抗磁力という指標を用いるこ
とによって、インヒビターの抑制力と1次再結晶粒径と
いう2次再結晶に影響をおよぼす1次再結晶焼鈍後鋼板
の2つの因子を複合して評価することを可能としたので
ある。
【0061】したがって、最も優れる2次再結晶の制御
のためには、目標とする抗磁力からの偏差に応じてa〜
lの対策およびその逆の対策の変更量あるいは調整量を
正確かつ定量的に設定することが重要であることは云う
までもない。
【0062】
【実施例】
実施例1 C:0.07mass%, Si:3.25mass%, Mn:0.07mass%, so
l Al:0.025 mass%,S:0.003 mass%, Se:0.018 mas
s%, Sb:0.030 mass%およびN:0.007 mass%を含有
する鋼スラブ24本を1410℃の温度に加熱し、公知の方法
で熱間圧延を行い、それぞれ板厚:1.8mm の熱延板コイ
ルとした。
【0063】ついで、温度:1150℃、時間:50s の熱延
板焼鈍を行い、ミストをかけることにより40℃/sの冷却
速度で 350℃まで冷却したのち、 350℃の温度で20秒間
保持後空冷した。その後、酸洗し、ゼンジマー圧延機で
80〜250 ℃の温度範囲で冷間圧延を行い、それぞれ0.20
mmの最終板厚とした。
【0064】かくして得られた24の冷延コイルを12コイ
ルずつにグループ分けした。
【0065】最初の12コイルは、露点:55℃、H2:60%
残部N2の雰囲気中で昇温速度:15℃/s、均熱温度:800
℃、均熱時間:120sの脱炭・1次再結晶焼鈍を施したの
ち、MgO を主成分とし、SrSO4 :3%,TiO2:10%を含
有する焼鈍分離剤を鋼板表面(両面)に10g/m2塗布後コ
イル状に巻き取り、最終仕上げ焼鈍を、N2雰囲気中で温
度:840 ℃まで昇温速度:30℃/hで昇温し840 ℃の温度
で45時間保持したのち、N2:25%, H2:75%の雰囲気中
で温度:1200℃まで昇温速度:15℃/hで昇温し、つづい
てH2雰囲気中で1200℃の温度で10時間保持したのち冷却
した。
【0066】その後、それぞれ未反応焼鈍分離剤を除去
し、平坦化焼鈍を兼ねて、張力コーティング剤を塗布し
てN2雰囲気中で、温度:800 ℃、保持時間:90s の条件
で焼付け処理を行い、製品とした(比較例)。
【0067】つぎの12コイルは上記比較例と同一の脱炭
焼鈍を施したのち、鋼板片を切出しそれぞれ抗磁力を測
定するとともに、実験室的に最高の磁気特性が得られる
抗磁力を調査し、139A/mの抗磁力値を得、その値を目標
抗磁力とした。
【0068】その後、上記目標抗磁力と各コイルの抗磁
力との差に応じて、最初の3コイルは焼鈍分離剤中のSr
SO4 の含有量を、次の3コイルは最終仕上げ焼鈍におけ
る840 ℃の温度で45時間保持する際の保持温度を、次の
3コイルは840 ℃から1200℃の温度まで昇温するときの
N2+H2混合雰囲気中のH2分圧を、残る3コイルは840℃
から1200℃の温度まで昇温速度をそれぞれ変更し、これ
らの条件以外は上記比較例とほぼ同様の最終仕上げ焼鈍
をそれぞれについて施した。
【0069】その後、比較例と同様に未反応焼鈍分離剤
を除去し、平坦化焼鈍を兼ねて張力コーティング剤を塗
布し、雰囲気:N2, 温度:800 ℃, 時間:90s の条件で
焼付け、それぞれ製品とした(この発明の適合例)。な
お、上記1次再結晶焼鈍後鋼板の2次再結晶温度は1100
℃である。
【0070】これらの製品について測定した磁気特性
(磁束密度、鉄損)を表1にまとめて示す。
【0071】
【表1】
【0072】表1から明らかなように、この発明の適合
例は比較例に比し優れた磁気特性を有していて、コイル
間のバラツキも極めて小さく安定した値を示している。
【0073】実施例2 C:0.04mass%, Si:2.95mass%, Mn:0.07mass%,
P:0.05 mass %, S:0.003 mass%, Se:0.02mass
%, Sb:0.02mass%およびMo:0.01mass%を含有する鋼
スラブ8本を、1350℃の温度で50分間加熱したのち、通
常の熱間圧延で板厚:2.4mm の熱延板コイルとした。
【0074】これらの熱延板コイルをそれぞれ4分割し
合計32コイルとしたのち、酸洗し、板厚:0.75mmに冷間
圧延後、温度:950 ℃, 時間:60s の中間焼鈍を施し、
さらに冷間圧延してそれぞれ最終板厚:0.30mmとした。
その後各コイルに、脱脂後、脱炭・1次再結晶焼鈍を施
した。
【0075】最初の16コイルは、露点:50℃, H2:50%
残部N2の雰囲気中で昇温速度:10℃/s, 均熱温度:835
℃, 均熱時間:120sの一定条件のもとで脱炭・1次再結
晶焼鈍を行ったのち、MgO を主体とし、MgSO4 :1%,
TiO2:2%およびSrSO4 :1%を含有する焼鈍分離剤を
鋼板表面(両面)に8g/m2塗布し、それぞれコイル状に
巻き取った。
【0076】ここで、これらのコイルは脱炭・1次再結
晶焼鈍後焼鈍分離剤塗布直前にそれぞれオンラインで抗
磁力の連続測定を行った。
【0077】その後これらのコイルは、最終仕上げ焼鈍
として、N2雰囲気中で温度:850 ℃まで昇温速度:40℃
/hで昇温し、850 ℃の温度で50時間保持したのち、N2
35%, H2:65%の雰囲気中で温度:1200℃まで昇温速
度:30℃/hで昇温し、つづいてH2雰囲気中で1200℃の温
度で5時間保持したのち冷却した。
【0078】その後、未反応焼鈍分離剤を除去し、平坦
化焼鈍を兼ねて、張力コーティング剤を塗布してN2雰囲
気中で温度:800 ℃, 時間:90s の焼付け処理を行い、
それぞれ製品とした(比較例)。
【0079】これらの製品について、それぞれ測定した
磁気特性を表2にまとめて示す。
【0080】
【表2】
【0081】表2において、最も優れる磁気特性を示し
たコイル通板順16番目のコイルの脱炭・1次再結晶焼鈍
板の抗磁力:147 A/m を目標値と定め、残る16コイルに
ついて、脱炭・1次再結晶焼鈍条件を、オンラインで焼
鈍分離剤塗布直前に抗磁力を測定しながら上記目標値に
合致するよう変更し、脱炭・1次再結晶焼鈍を施した。
【0082】この時脱炭・1次再結晶焼鈍条件の変更
は、最初の4コイルは昇温時の酸素ポテンシャルを、次
の3コイルは昇温速度を、次の3コイルはライン速度
を、次の3コイルは均熱温度を、最後の3コイルは均熱
時の酸素ポテンシャルをそれぞれ変更して、それぞれの
コイルの抗磁力を上記で定めた目標に合せるようにし
た。
【0083】なお、上記において、ライン速度を変更さ
せた場合は、昇温速度と均熱時間が同時に変化し、均熱
時の酸素ポテンシャルを変更させた場合は、サブスケー
ルのファイアライト/シリカ比と酸素目付量が同時に変
化した。
【0084】また、上記各コイルとも抗磁力が目標値と
合致しないコイルの先行部分はその抗磁力の偏差に応じ
て、比較例と同一の焼鈍分離剤におけるMgSO4 の含有量
を変更し、優れる磁気特性が得られるようにした。
【0085】その後これらのコイルは、比較例と同様の
条件にて焼鈍分離剤を塗布しコイル状に巻き取ったの
ち、最終仕上げ焼鈍を施し、未反応焼鈍分離剤を除去し
た後、平坦化焼鈍を兼ねて張力コーティング剤を塗布し
て焼付け処理を行いそれぞれ製品とした(この発明の適
合例)。
【0086】これらの製品について、それぞれ測定した
磁気特性を上掲表2にまとめて併記した。
【0087】表2から明らかなように、この発明の適合
例は全て比較例で得られた最も優れる磁気特性値と同等
の値を示していて、かつ磁気特性値のバラツキが極めて
小さいことを示している。
【0088】実施例3 表3に示すA〜Dの4鋼種の目標成分の鋼スラブ各60本
を、鋼AおよびBは1400℃の温度に、CおよびDは1300
℃の温度に加熱したのち、常法により熱間圧延し、それ
ぞれ板厚:2.2mm の熱延板とした。
【0089】
【表3】
【0090】これらのコイルは、1150℃の温度で熱間圧
延を施したのちミスト中で急冷し、120 〜300 ℃の温度
域で冷間圧延を行い、それぞれ最終板厚:0.30mmの冷延
板とした。
【0091】その後、A〜Dの各鋼種とも30コイルは、
露点:60℃, H2:50%残部N2の雰囲気中で温度:850
℃, 時間:120sの脱炭・1次再結晶焼鈍を施し、MgO を
主成分としTiO2:5%を含有する焼鈍分離剤を鋼板表面
(両面)に13g/m2塗布して、コイル状に巻き取った。
【0092】しかるのち、N2雰囲気中で850 ℃の温度ま
で昇温速度:30℃/hで加熱し、つづいてN2:25%、H2
75%の雰囲気中で、鋼種A,BおよびCについては850
℃から1200℃までの温度域を昇温速度:30℃/hで、鋼種
Dについては850 ℃から1000℃までの温度域を昇温速
度:15℃/hで、さらにつづいて鋼種A,BおよびCにつ
いては1200℃の温度で、鋼種Dについては1000℃の温度
でそれぞれ5時間保持する最終仕上げ焼鈍を施した。
【0093】その後これらの各コイルは未反応焼鈍分離
剤を除去したのち、平坦化焼鈍を兼ねて張力コーティン
グ剤を塗布し、N2雰囲気中で温度:800 ℃, 時間:90s
の焼付け処理をそれぞれ行い製品とした(比較例)。
【0094】一方、鋼種A〜Dの残る各30コイルについ
ては、実験室にて、事前に脱炭・1次再結晶焼鈍材の最
適抗磁力(最大磁束密度1.5 Tのとき;104 A/m )を求
めておき、この値を目標抗磁力として定め、脱炭・1次
再結晶焼鈍後から焼鈍分離剤塗布前までの間の位置に設
置したオンライン抗磁力測定器により各コイルの抗磁力
をそれぞれ測定し、目標抗磁力からの偏差に応じて、 ・脱炭・1次再結晶焼鈍条件の変更 ・焼鈍分離剤成分組成の変更 ・最終仕上げ焼鈍条件の変更 のうちいずれか一つもしくは二つ以上の組合せによる工
程条件の適正化を行った。
【0095】上記において、条件変更の設定量は目標抗
磁力からの偏差の大きさに応じて定めたものであり、焼
鈍分離剤の成分組成については、鋼種BはSrSO4 の含有
量を、鋼種A,CおよびDはFex N の含有量を変化させ
たものである。
【0096】かくして最終仕上げ焼鈍後は、それぞれ未
反応焼鈍分離剤を除去したのち、平坦化焼鈍を兼ねて張
力コーティングを施し、N2雰囲気中で温度:800 ℃, 時
間:90s の焼付け処理を行い、製品とした(この発明の
適合例)。
【0097】これらの製品について測定した磁気特性に
ついて鋼種ごとの平均値を表4にまとめて示す。
【0098】
【表4】
【0099】表4から明らかなように、比較例に比しこ
の発明の適合例の磁気特性は大幅に向上している。
【0100】実施例4 C:0.04mass%(±0.003 )、Si:2.95mass%(±0.0
2)、Mn:0.15mass%(±0.005 )、P:0.017 mass%
(±0.003 )、Al:0.017 mass%(±0.003 )、Se:0.
006 mass%(±0.001 )、Sb:0.012 mass%(±0.002
)、およびN:0.0075mass%(±0.0005)を含有する
鋼スラブ10本を、1200℃の温度で8時間加熱したのち、
通常の熱間圧延により、板厚:2.6 mmの熱延板コイルと
した。
【0101】これらの熱延板コイルはそれぞれ2分割
し、一方を比較例用に使用し、他方を適合例用に使用し
た。比較例用の分割コイルは1000℃の温度で30秒間の
熱延板焼鈍後、酸洗し、250 ℃の温度で0.35mmの最終板
厚に冷間圧延したのち、820 ℃の温度で2分間、露点60
℃、H2 50%の湿潤N2 +H2 雰囲気で脱炭・1次再
結晶焼鈍を施した。これらの1次再結晶焼鈍板から試料
を採取し、最大磁束密度:1.5 Tでの抗磁力を測定し
た。脱炭・1次再結晶焼鈍後は鋼板表面にTiO2を5%含
有するMgO を焼鈍分離剤として塗布しコイル状に巻きと
った。その後、最終仕上げ焼鈍として、N2 雰囲気中で
850 ℃まで昇温速度30℃/hrで昇温し、850℃の温度で3
5時間保持したのち、N2 :25%、H2 :75%の雰囲気
中で温度:1180℃まで昇温速度:30℃/hrで昇温し、つ
づいてH2 雰囲気中で1180℃の温度で5時間保持後、冷
却した。その後、未反応焼鈍分離剤を除去し、平坦化焼
鈍を兼ねて、張力コーティング剤を塗布し、800 ℃の温
度で90秒間の焼付け処理を施して製品とし、磁気特性を
測定した。
【0102】一方、適合例用の熱延コイルについては、
コイル端より熱延板試料を採取し、比較例と同一の条件
で熱延板焼鈍、冷間圧延、脱炭1次再結晶焼鈍、焼鈍分
離剤塗布、最終仕上焼鈍を実験室で行い、脱炭・1次再
結晶焼鈍後の鋼板(1次再結晶板)の抗磁力を最大磁束
密度:1.5 Tに測定した。また最終仕上焼鈍後の鋼板の
磁気測定を行った。この結果、最も磁気特性の良好であ
った鋼板の1次再結晶板の抗磁力:93 A/mを目標抗磁力
として得た。
【0103】次に適合例用の熱延コイル10本について、
熱延板焼鈍後、酸洗し、0.35mmの最終板厚に冷間圧延し
た。この時、前半の5本のコイルについては、1次再結
晶板の抗磁力と目標抗磁力との偏差に応じて、抗磁力が
過大の場合は焼鈍の温度を高め、抗磁力が低い場合は焼
鈍の温度を低下させていずれも30秒間の熱延板焼鈍を施
した。また、後半の5コイルは1000℃の温度で30秒間の
熱延板焼鈍を施した。その後、冷間圧延を、前半の5コ
イルは250 ℃の温度で行い、後半の5コイルについて
は、1次再結晶板の抗磁力と目標抗磁力との偏差に応じ
て、抗磁力が過大の場合は圧延温度を低下し、抗磁力が
低い場合は圧延温度を増加させて、冷間圧延を行った。
これらのコイルは、820 ℃の温度で2分間、露点60℃、
2 50%の湿潤N2 +H2 雰囲気で脱炭・1次再結晶焼
鈍を施し、抗磁力測定用の試料を採取し最大磁束密度:
1.5 Tで抗磁力を測定した。その後、鋼板表面にTiO2
5%含有するMgO を焼鈍分離剤として塗布し、コイル状
に巻きとった。しかる後、これらのコイルは、比較例と
同一の条件で最終仕上焼鈍およびコーティング剤を塗布
して平坦化焼鈍を施し、製品とし磁気測定を行った。こ
れらの製品の磁気特性の平均値と変動量ならびに1次再
結晶板の抗磁力の平均値と変動量を併せて表5に示す。
【0104】
【表5】
【0105】表5から明らかなように、比較例に比し、
この発明の適合例の磁気特性は大幅に向上しており、バ
ラツキも低減している。
【0106】
【発明の効果】この発明は、1次再結晶後、2次再結晶
開始前の鋼板の抗磁力を所定範囲に制御する磁気特性に
優れる方向性けい素鋼板の製造方法であって、この発明
によれば、安定かつ優れる電磁特性を有する方向性けい
素鋼板が得られ、歩留りが向上するとともに品質保証の
点でも有利であり、この発明によって得られる鋼板は変
圧器等の鉄心材料として極めて有利に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】1次再結晶焼鈍後鋼板の平均1次再結晶粒径と
最終仕上げ焼鈍後鋼板の諸特性との関係を示すグラフで
ある。
【図2】1次再結晶焼鈍後鋼板の抗磁力と最終仕上げ焼
鈍後鋼板の諸特性との関係を示すグラフである。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成8年2月16日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正内容】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、変圧器等の鉄心
材料として使用される磁気特性に優れる方向性けい素鋼
板の製造方法に関するものである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正内容】
【0039】
【発明の実施の形態】この発明の作用を以下に述べる。
この発明の対象としている方向性けい素鋼板は、従来か
ら用いられている製鋼法で得られた溶鋼を連続鋳造法あ
るいは造塊法で鋳造し、必要に応じて分塊工程を経てス
ラブとし、該スラブを熱間圧延して熱延板としたのち、
1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して
最終板厚となし、つづいて脱炭を兼ねる1次再結晶焼鈍
後、焼鈍分離剤を塗布して2次再結晶焼鈍と純化焼鈍と
からなる最終仕上げ焼鈍を施し製造される。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 けい素鋼スラブを熱間圧延し、1回もし
    くは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行ったのち、
    1次再結晶焼鈍を施し、ついで焼鈍分離剤を塗布して2
    次再結晶焼鈍と純化焼鈍とからなる最終仕上げ焼鈍を施
    す方向性けい素鋼板の製造方法において、 1次再結晶後、2次再結晶開始前の鋼板の抗磁力を所定
    範囲に制御することを特徴とする磁気特性に優れる方向
    性けい素鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1における制御手段が、スラブの
    加熱条件の調整、熱間圧延条件の調整、熱延板焼鈍条件
    の調整、中間焼鈍条件を含む冷間圧延条件の調整、一次
    再結晶焼鈍条件の調整のうちから選んだ少なくともいず
    れか一つである磁気特性に優れる方向性けい素鋼板の製
    造方法。
  3. 【請求項3】 けい素鋼スラブを熱間圧延し、1回もし
    くは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行ったのち、
    1次再結晶焼鈍を施し、ついで焼鈍分離剤を塗布して2
    次再結晶焼鈍と純化焼鈍とからなる最終仕上げ焼鈍を施
    す方向性けい素鋼板の製造方法において、 1次再結晶焼鈍後鋼板の抗磁力を測定し、その測定値の
    目標抗磁力値からの偏差に応じて、1次再結晶焼鈍条件
    の変更ならびに、焼鈍分離剤の成分組成の調整および2
    次再結晶焼鈍条件の調整のうちから選んだ少なくともい
    ずれか一つの処理を施すことを特徴とする磁気特性に優
    れる方向性けい素鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 抗磁力がオンラインでの計測によるもの
    である請求項1または2に記載の磁気特性に優れる方向
    性けい素鋼板の製造方法。
  5. 【請求項5】 抗磁力の測定がオンラインでの計測であ
    る請求項3に記載の磁気特性に優れる方向性けい素鋼板
    の製造方法。
JP8025044A 1995-02-13 1996-02-13 磁気特性に優れる方向性けい素鋼板の製造方法 Withdrawn JPH08283855A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015190022A (ja) * 2014-03-28 2015-11-02 Jfeスチール株式会社 一次再結晶集合組織の予測方法および方向性電磁鋼板の製造方法

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