JP4016433B2 - 磁気特性に優れる方向性けい素鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、変圧器等の鉄心材料として使用される磁気特性に優れる方向性けい素鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
方向性けい素鋼板は、各種変圧器の鉄心材料として使用されているが、これは材料を構成する結晶粒の方位を圧延方向に容易磁化軸を有する(110 )〔001 〕方位、いわゆるゴス方位に高度に集積させたものである。この集積度は、鋼板の磁束密度特性に現われ、一般には800A/mの磁場中での磁束密度を示すB8(T) の値で評価されている。
【0003】
このゴス方位への集積方法としては、2次再結晶と呼ばれる現象が利用される。すなわち、通常の結晶粒(これを1次再結晶粒という)の熱的成長過程において、方位選択性の極めて強い異常粒成長挙動を利用したものであり、その方位選択性と異常粒成長の2点を制御することがゴス方位への集積度の高い良好な2次再結晶粒を得るために重要である。
【0004】
そのためには、2次再結晶前の1次再結晶において、集合組織および結晶粒径さらには結晶粒成長を抑制するためのインヒビターの抑制力(分散第2相である析出物や、粒界偏析成分の偏析による粒界移動を抑制する力)などのバランスを適正に保つことが重要になる。
【0005】
これらは、熱間圧延工程、冷間圧延工程および1次再結晶焼鈍工程での各条件を適正に制御することによって、目標とする状態に調整されるが、いずれも微妙な温度や圧下率さらには表面性状の制御を要求されるため、工業的生産においては、以下に述べるような問題があった。
【0006】
すなわち、圧延方向に筋状に2次再結晶の生成不良が発生したり、全面的に2次再結晶の生成不良が発生したり、また、2次再結晶粒の結晶方位がゴス方位から大幅にずれていることなどのため、磁気特性が劣化し、大量の屑が発生することがしばしば生じた。
【0007】
さらに、各工程条件が極めて厳重に管理された上記以外の場合でも、工場生産工程での通板チャンスにおいて、磁気特性にバラツキが生じるのが常であり、歩留りや製品としての品質保証に問題をきたしていた。
【0008】
このような、不安定さを解消させようとする技術として、1次再結晶粒径をオンラインで計測し、1次再結晶粒径が適正範囲になるように1次再結晶焼鈍条件を制御する手段が特開平2−267223号公報(方向性電磁鋼板の1次再結晶焼鈍方法)に提案開示されている。また、特開平4−337029号公報(一方向性電磁鋼板の1次再結晶焼鈍方法)には、最終冷延前の鋼板のN含有量を測定し、1次再結晶粒径を15〜25μm の範囲とすべく1次再結晶焼鈍温度を変更する手段が提案開示されている。
【0009】
これらは、上記したように、1次再結晶粒径が2次再結晶挙動に大きな影響をおよぼす事実から、1次再結晶粒径を最も優れる磁気特性が得られる範囲に制御すべく、1次再結晶焼鈍条件(温度やライン速度)を変更し、製品の磁気特性を安定かつ向上させる技術であるが、実際には、熱延条件の変動、冷間圧延後の焼鈍条件やその冷却条件が変動して、インヒビターの抑制力が変化した場合、それらの変化に応じて最適な1次再結晶粒径が変化するので、2次再結晶の生成不良は抑止できても磁気特性の安定化を得ることができず、実用上はうまく機能していなかった。
【0010】
また、これまでに1次再結晶粒径に関連して磁気特性に優れる良好な2次再結晶を得ようとする技術が数多く提案されている。
【0011】
例えば、特開平2−182866号公報(一方向性電磁鋼板用板材)には、1次再結晶焼鈍後の結晶粒径が15μm 以上で変動係数を0.6 以下とする手段が、特開平6−33141 号公報(磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法)には、1次再結晶焼鈍後の平均粒径を6〜11μm 、変動係数を0.5 以下とし、2次再結晶開始直前までに5〜30%平均粒径を増大させる手段がそれぞれ開示されており、また、特開平5−156361号公報(磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法)には、1次再結晶焼鈍後から最終仕上焼鈍開始までの1次再結晶粒径を10〜35μm に、特開平5−295438号公報(磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法)には、1次再結晶粒径を18〜35μm に、特開平6−172861号公報(磁気特性の優れた厚い厚板の一方向性電磁鋼板の製造方法)には、1次再結晶粒径を18〜30μm にそれぞれ制御する手段が開示されている。
【0012】
しかし、これらはいずれも1次再結晶粒径を指標としこれを制御することにより、磁気特性を向上させるための良好な2次再結晶を生じさせようとする技術であるが、工業的生産における磁気特性の不安定さという上記した問題点は残されたままであった。
【0013】
さらに、1次再結晶粒径には本来的に依存しない熱間圧延工程での集合組織形成の変動や冷間圧延工程での集合組織形成の変動による2次再結晶挙動の変化の問題について、1次再結晶焼鈍後の透磁率や磁束密度を測定し集合組織の形成状態を評価しようとする技術が提案されている。
【0014】
例えば、特開昭59−50119 号公報(磁気特性の優れた一方向性珪素鋼板の製造方法)には、1次再結晶焼鈍後、焼鈍分離剤塗布前の鋼板の透磁率を測定し、その値に応じて焼鈍分離剤中へのS化合物の添加量を調整する技術が、特開昭61−170514号公報(磁気特性の優れた一方向性珪素鋼板の製造方法)には、1次再結晶焼鈍後、焼鈍分離剤塗布前の鋼板の磁束密度を測定し、その値に応じて焼鈍分離剤中へ添加するSなどの添加量を調整する技術が、それぞれ開示されている。これらは、1次再結晶焼鈍後鋼板の集合組織の形成状態を把握し,その状態に応じて焼鈍分離剤の成分組成を変化させることにより2次再結晶条件を調整し、磁気特性を向上させようとするものである。
【0015】
しかしながら、これらの技術は1次再結晶焼鈍後鋼板の集合組織の形成状態を正しく反映しないので、工業生産に実際に適用した場合良好な成果が得られなかった。
すなわち、1次再結晶焼鈍後鋼板の透磁率や磁束密度は、磁化容易軸である
<001> 軸が圧延方向にどの程度配向しているかを示す尺度であるので、結晶粒の方位として{hko }<001> 方位(h,kまたはoは任意の整数)は全く区別できず、例えば(110) 001 方位と(100) 001 方位とが等価となってしまう問題を有していた。
【0016】
また、圧延直角方向の透磁率や磁束密度も併せて測定する場合、上述の問題点は解消されるが、<001> 軸を測定方向に所有しない結晶方位、例えば{111 }<112> 方位や{112 }<111> 方位等、多くの結晶方位間の区別が不能で、特に{111 }<112> 方位は2次再結晶の成長に重要であるので、問題となっていた。
このように、1次再結晶焼鈍後鋼板の透磁率や磁束密度の測定では、X線法などと異なり、かかる鋼板の集合組織の評価法として不十分であり、改善する必要があった。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、磁気特性の向上および安定化をはかるため2次再結晶を適切に制御するには、冷間圧延工程で形成される集合組織と熱延バンド組織との双方のバランスを調整すること、さらに加えて、1次再結晶粒径とインヒビター抑制力との双方のバランスを調整することが重要であることに着目して、前記した問題点を有利に解決しようとするものであり、冷間圧延工程で形成される集合組織と熱延バンド組織との双方のバランスをあらわす最終冷延板の特性、さらには、1次再結晶粒径とインヒビター抑制力とのバランスをあらわす1次再結晶後2次再結晶前鋼板の特性を考慮した新規手段により、従来にない安定かつ優れる磁気特性が得られる方向性けい素鋼板の製造方法を提案することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
この発明は、種々実験・検討を重ねた結果、最終冷間圧延後の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損が、けい素鋼板製品の磁気特性の予測、さらにはその向上および安定化に極めて有用であることを全く新規に知見したことにより達成したものである。
すなわち、この発明の要旨とするところは以下のとおりである。
【0019】
1)けい素鋼スラブを加熱したのち熱間圧延し、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行ったのち、脱炭・1次再結晶焼鈍を施し、ついで焼鈍分離剤を塗布して2次再結晶焼鈍と純化焼鈍とからなる最終仕上焼鈍を施す方向性けい素鋼板の製造方法において、最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損と製品の磁気特性との関係を、該抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損を制御するための脱炭・1次再結晶焼鈍前の製造条件を変更することにより求め、前記最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損と製品の磁気特性との関係から、抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損の目標範囲を定め、 最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損を前記目標範囲内に制御することを特徴とする方向性けい素鋼板の製造方法(第1発明)。
【0020】
2)第1発明における制御手段が、スラブの加熱条件の調整、熱間圧延条件の調整および中間焼鈍を含む冷間圧延条件の調整のうちから選んだ少なくともいずれか一つである方向性けい素鋼板の製造方法(第2発明)。
【0021】
3)けい素鋼スラブを加熱したのち熱間圧延し、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行ったのち、脱炭・1次再結晶焼鈍を施し、ついで焼鈍分離剤を塗布して2次再結晶焼鈍と純化焼鈍とからなる最終仕上焼鈍を施す方向性けい素鋼板の製造方法において、最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損と製品の磁気特性との関係を、該抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損を制御するための脱炭・1次再結晶焼鈍前の製造条件を変更することにより求めるとともに、前記最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損と製品の磁気特性との関係から、抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損の目標値を定め、最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損に応じた、所望の磁気特性を得るための脱炭・1次再結晶焼鈍条件、焼鈍分離剤の塗布量・成分組成の条件および2次再結晶焼鈍条件を求めておき、最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損を測定し、その測定値と、前記目標値との差に応じて、脱炭・1次再結晶焼鈍条件の調整、焼鈍分離剤の塗布量・成分組成の調整および2次再結晶焼鈍条件の調整のうちから選んだ少なくともいずれか一つの処理を施すことを特徴とする方向性けい素鋼板の製造方法(第3発明)。
【0022】
4)けい素鋼スラブを加熱したのち熱間圧延し、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行ったのち、脱炭・1次再結晶焼鈍を施し、ついで焼鈍分離剤を塗布して2次再結晶焼鈍と純化焼鈍とからなる最終仕上焼鈍を施す方向性けい素鋼板の製造方法において、最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損と製品の磁気特性との関係を、該抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損を制御するための脱炭・1次再結晶焼鈍前の製造条件を変更することにより求めるとともに、前記最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損と製品の磁気特性との関係から、抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損の目標範囲を定め、脱炭・1次再結晶焼鈍後、2次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力と製品の磁気特性との関係を、該抗磁力を制御するための2次再結晶焼鈍前の製造条件を変更することにより求めるとともに、前記脱炭・1次再結晶焼鈍後、2次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力と製品の磁気特性との関係から、抗磁力の目標範囲を定め、 最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損ならびに、脱炭・1次再結晶焼鈍後、2次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力を前記それぞれの目標範囲内に制御することを特徴とする方向性けい素鋼板の製造方法(第4発明)。
【0023】
5)第4発明における制御手段が、最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板で、スラブの加熱条件の調整、熱間圧延条件の調整および中間焼鈍を含む冷間圧延条件の調整のうちから選んだ少なくともいずれか一つであり、脱炭・1次再結晶焼鈍後、2次再結晶焼鈍前の鋼板で、スラブ加熱条件の調整、熱間圧延条件の調整、中間焼鈍を含む冷間圧延条件の調整および脱炭・1次再結晶焼鈍条件の調整のうちから選んだ少なくともいずれか一つである方向性けい素鋼板の製造方法(第5発明)。
【0024】
6)けい素鋼スラブを加熱したのち熱間圧延し、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行ったのち、脱炭・1次再結晶焼鈍を施し、ついで焼鈍分離剤を塗布して2次再結晶焼鈍と純化焼鈍とからなる最終仕上焼鈍を施す方向性けい素鋼板の製造方法において、
(1)最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損と製品の磁気特性との関係を、該抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損を制御するための脱炭・1次再結晶焼鈍前の製造条件を変更することにより求めるとともに、
前記最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損と製品の磁気特性との関係から、抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損の目標値を定め、
最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損に応じた、所望の磁気特性を得るための脱炭・1次再結晶焼鈍条件、焼鈍分離剤の塗布量・成分組成の条件および2次再結晶焼鈍条件を求めておき、
最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損を測定し、その測定値と、前記最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前における目標値との差に応じて、脱炭・1次再結晶焼鈍条件の調整、焼鈍分離剤の塗布量・成分組成の調整および2次再結晶焼鈍条件の調整のうちから選んだ少なくともいずれか一つの処理を施すこと、
(2)脱炭・1次再結晶焼鈍後、2次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力と製品の磁気特性との関係を、該抗磁力を制御するための2次再結晶焼鈍前の製造条件を変更することにより求めるとともに、
前記脱炭・1次再結晶焼鈍後、2次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力と製品の磁気特性との関係から、抗磁力の目標値を定め、
脱炭・1次再結晶焼鈍後、2次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力に応じた、所望の磁気特性を得るための焼鈍分離剤の塗布量・成分組成の条件および2次再結晶焼鈍条件を求めておき、
脱炭・1次再結晶焼鈍後、2次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力を測定し、その測定値と前記脱炭・1次再結晶焼鈍後、2次再結晶焼鈍前における目標値との差に応じて、焼鈍分離剤の塗布量・成分組成の調整および2次再結晶焼鈍条件の調整のうちから選んだ少なくともいずれか一つの処理を施すこと
を特徴とする方向性けい素鋼板の製造方法(第6発明)。
【0025】
7)けい素鋼スラブを加熱したのち熱間圧延し、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行ったのち、脱炭・1次再結晶焼鈍を施し、ついで焼鈍分離剤を塗布して2次再結晶焼鈍と純化焼鈍とからなる最終仕上焼鈍を施す方向性けい素鋼板の製造方法において、最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損と製品の磁気特性との関係を、該抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損を制御するための脱炭・1次再結晶焼鈍前の製造条件を変更することにより求めるとともに、前記最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損と製品の磁気特性との関係から、抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損の目標値を定め、脱炭・1次再結晶焼鈍後、2次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力と製品の磁気特性との関係を、該抗磁力を制御するための2次再結晶焼鈍前の製造条件を変更することにより求めるとともに、前記脱炭・1次再結晶焼鈍後、2次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力と製品の磁気特性との関係から、抗磁力の目標値を定め、最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損に応じた、所望の磁気特性を得るための脱炭・1次再結晶焼鈍条件を求めておき、さらに、脱炭・ 1 次再結晶焼鈍後、2次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力に応じた、所望の磁気特性を得るための焼鈍分離剤の塗布量・成分組成の条件および2次再結晶焼鈍条件を求めておき、最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損を測定し、その測定値と前記最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前における目標値との差に応じて、脱炭・1次再結晶焼鈍条件の調整を行ったのち、さらに、脱炭・1次再結晶焼鈍後、2次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力を測定し、その測定値と前記脱炭・1次再結晶焼鈍後、2次再結晶焼鈍前における目標値との差に応じて、焼鈍分離剤の塗布量・成分組成の調整および2次再結晶焼鈍条件の調整のうちから選んだ少なくともいずれか一つの処理を施すことを特徴とする方向性けい素鋼板の製造方法(第7発明)。
【0026】
8)抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損が、オンラインでの計測によるものである第1〜第7発明のいずれかに記載の方向性けい素鋼板の製造方法(第8発明)。
【0028】
ここで、この発明は、冷間圧延後、1次再結晶焼鈍前鋼板(冷延板)の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損により、熱延板のバンド組織、転位の導入状況を含んで冷延板の集合組織の形成状態を評価するものであるが、これは、熱延板のバンド組織や冷延板の転位の導入状況の違いの差が、冷延板での抗磁力、透磁率あるいはヒステリシス損に大きく反映し、より適格な評価を行うことができることによるものである。
【0029】
なお、1次再結晶焼鈍後鋼板の集合組織は、1次再結晶焼鈍前鋼板の転位の導入状況などやこの焼鈍前鋼板の集合組織にも大きく依存し、通常の操業条件では、前記した従来技術の1次再結晶焼鈍後鋼板の透磁率や磁束密度で評価するよりも、1次再結晶焼鈍前鋼板の抗磁力、透磁率あるいはヒステリシス損で評価した方が、1次再結晶焼鈍条件の外乱要因を含んでいても適格である。
【0030】
また、抗磁力に関し、1次再結晶焼鈍前鋼板の抗磁力は、上記したように転位の導入状況等を示す指標となるが、1次再結晶焼鈍後鋼板の抗磁力は主としてインヒビターの抑制状況を示す別の指標となり、この指標を用いればさらなる磁気特性の向上がはかれるようになる。
【0031】
以下、この発明を達成するに至った実験例をもとにして述べる。
C:0.068mass %, Si:3.35mass%, Mn:0.072 mass%, sol Al:0.024mass %, S:0.003 mass%, Se:0.016 mass%, Sb:0.030 mass%、Cu:0.15mass%およびN:0.008 mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成からなる10本のスラブを用い、それらのスラブを1430℃の温度に加熱する際、5本は均熱時間を5分間とし、他の5本は20分間とした。スラブ加熱後は粗圧延を1200〜1210℃の温度範囲、仕上圧延出側温度を950 〜1000℃の温度範囲で熱間圧延し、板厚:2.2mm の熱延板コイルとした。
【0032】
その後、各コイルは温度:1000℃、時間:1分間の熱延板焼鈍を施したのち、1.50mmの板厚に冷間圧延し、さらに1050℃の温度で1分間の中間焼鈍を施し、70〜100 ℃、120 〜140 ℃、150 〜180 ℃、200 〜230 ℃、250 〜270 ℃の各温度域で、上記したスラブ均熱時間の2水準のスラブについて、それぞれ各1本ずつ冷間圧延した。
【0033】
これらの冷間圧延コイルはHm=1000A/m における鋼板の抗磁力および透磁率を測定し、850 ℃の温度で3分間の湿水素中における脱炭焼鈍を兼ねる1次再結晶焼鈍を施し、つづいてMgO を主成分とする焼鈍分離剤を塗布して最終仕上焼鈍を行った。
【0034】
かくして得られた最終仕上焼鈍後の各鋼板について磁束密度B8(T) 、2次再結晶率および2次再結晶粒の鋼板面内における結晶方位の(110 )〔001 〕方位からのずれ角(α)を測定するとともに、1次再結晶焼鈍後の各鋼板の平均1次再結晶粒径を測定した。
【0035】
これらの測定結果を図1、図2および図3に示す。
図1は、1次再結晶焼鈍後鋼板の平均1次再結晶粒径と最終仕上焼鈍後鋼板の諸特性との関係を示すグラフであり、図2は最終冷間圧延後鋼板の抗磁力 (Hc) と最終仕上焼鈍後鋼板の諸特性との関係を示すグラフであり、図3は最終冷間圧延後鋼板の透磁率(μ)と最終仕上焼鈍後鋼板の諸特性との関係を示すグラフである。
【0036】
図1から明らかなように、平均1次再結晶粒径が同一であっても、磁気特性B8は大きく変化し、平均1次再結晶粒径によって磁気特性は一義的に決定されないことが分かる。すなわち、前記した従来技術のように、平均1次再結晶粒径を制御する手段では磁気特性に優れる2次再結晶を適確に得ることができないことになる。
【0037】
これに対して、図2あるいは図3においては、スラブ加熱温度や冷間圧延温度が変化しても、最終冷間圧延後鋼板の抗磁力(Hc)もしくは透磁率(μ)によってのみ2次再結晶後の磁気特性B8は決定され、図2においては抗磁力が535 〜545 (A/m) の範囲あるいは図3においては透磁率が0.53〜0.56 (×10-3H/m)の範囲にて、良好な磁気特性が得られることを示している。
【0038】
したがって、この抗磁力もしくは透磁率を指標として用いれば、最終仕上焼鈍後の磁気特性を極めて正確な再現性のもとに予測できることになる。
【0039】
ここで、このような結果が得られた理由について考察する。
一般に、1430℃以上の高温にスラブを加熱した場合、インヒビターは極めて短時間に溶解することが知られており、均熱時間が5分間と20分間とでは、インヒビターの固溶に関して差異はない。また、熱間圧延の温度条件についても、両者に違いはないのでインヒビターの析出分散に関しても差異は生じない。このことは両者のインヒビターの抑制力の測定結果でも確認された。
【0040】
したがって、両者の差異はスラブ加熱後の結晶粒径であり、加熱後スラブの結晶粒径の調査によると、均熱時間が5分間の場合には15〜30mmの結晶粒であったのに対し、均熱時間が20分間の場合には50〜80mmの大きさに結晶粒が成長していた。
この熱間圧延前のスラブ結晶粒の大きさは熱間圧延後の熱延バンド組織の発達に関係しており、スラブ結晶粒が大きい程、熱延バンド組織が発達する。
【0041】
そして、熱延バンド組織の発達は、その程度が弱いと1次再結晶集合組織のうち(110) 集合組織の発達が弱いことが考えられ、逆に熱延バンド組織の発達の程度が強いと1次再結晶集合組織のうち(111) 集合組織の発達が阻害される。したがって、製品板での良好な磁気特性を得るためには、熱延バンド組織の発達の程度を適正化することが肝要であり、そのためには、スラブ結晶粒のサイズを適正化することが重要になる。
【0042】
また、冷間圧延の温度を変えることは、冷間圧延時の変形挙動を変え、1次再結晶集合組織を変えることになる。
したがって上記両者はともに同一の効果を狙うものであり、適正なバランスを保つことにより、最も優れた磁気特性を得ることが可能となるのである。
【0043】
ここに、1次再結晶集合組織に影響を及ぼす要因としては、スラブ均熱温度や冷間圧延温度の他にも、熱間圧延における粗圧延、仕上圧延の圧下率や、鋼中C量、炭化物サイズ、中間焼鈍、冷間圧延圧下率、圧延速度、圧延回数、圧延時の摩擦、圧延パス間の時効、圧延張力等種々あり、これらを調整することが重要となる。
【0044】
ところで、1次再結晶集合組織を測定する方法はX線回折法などがあるが簡便に測定する方法がなかった。
そこで、この発明では上記実験結果に基づき最終冷間圧延後鋼板の抗磁力や透磁率もしくはヒステリシス損を測定するようにするものである。
【0045】
すなわち、最終冷間圧延後鋼板に存在する転位は、変形時の挙動や、圧延前の結晶組織によって、その集積状態が異なり、これが、1次再結晶集合組織に影響を及ぼす。例えば、高温度で冷間圧延変形を受けた場合は、高い転位の集積となり、1次再結晶集合組織としては(110) 集合組織が発達する。
この発明は、かかる冷間圧延によって導入された転位の集積度は、最終冷間圧延後鋼板の抗磁力や透磁率もしくはヒステリシス損の測定によって容易に推測できることを知見したことに基づくものである。
【0046】
したがって、前記した1次再結晶組織に影響を及ぼすスラブ加熱工程、熱間圧延工程、冷間圧延工程における諸要因の条件を変更することにより、最終冷間圧延後鋼板の抗磁力や透磁率あるいはヒステリシス損を目標値に近づけることが可能になるのである。
【0047】
一方、最終冷間圧延後の鋼板の状態はこれらの抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損を測定することにより推測可能であり、熱延バンド組織と冷間圧延で導入された転位の集積度のバランスを調整することが重要であるとの発明者らの知見によって、鋼板のその後の処理に対し、容易かつ適切な対策を施すことが可能になる。
【0048】
たとえば、抗磁力が目標値よりも高い場合や、透磁率が目標値よりも高い場合は鋼中に導入された転位の集積が過剰であるので、脱炭焼鈍の昇温速度を低減する、均熱温度を低下する、もしくは最終仕上焼鈍の昇温速度を増加する。最終仕上焼鈍時の雰囲気の中性雰囲気から還元性雰囲気への切替時期を遅延する、さらには焼鈍分離剤の塗布量を低減したり、焼鈍分離剤に添加するTiO2、Sr(OH)2 ・8H2OやSnO2などの添加量を低減したり、添加を取りやめたりする対策が有効となる。これらは転位の集積が過剰な場合に形成される(110) 系の再結晶集合組織の発達を弱め、(111) 系の再結晶集合組織の発達を促す対策である。
また、抗磁力や透磁率もしくはヒステリシス損が目標値より低い場合には、逆の対策を施すことで抑制力とのバランスをとることが可能となる。
【0049】
さらに、かかる転位の集積度のバランスをとり再結晶集合組織を安定化させる技術の他に、インヒビターの抑制力と、1次再結晶粒径とのバランスをとる技術を付加させることは、優れた磁気特性の製品を得る上でより好ましい。
そのためには、1次再結晶後鋼板の抗磁力を目標値に合わせて、一定に管理するか、目標値からの偏差に応じて1次再結晶焼鈍条件の調整、焼鈍分離剤の塗布量・成分組成の調整もしくは2次再結晶焼鈍条件の調整のいずれかの対策を施すことがよい。
【0050】
【発明の実施の形態】
この発明の作用を以下に述べる。
この発明の対象としている方向性けい素鋼板は、従来から用いられている製鋼法で得られた溶鋼を連続鋳造法あるいは造塊法で鋳造し、必要に応じて分塊工程を経てスラブとし、該スラブを熱間圧延して熱延板としたのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚となし、つづいて脱炭を兼ねる1次再結晶焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布して2次再結晶焼鈍と純化焼鈍とからなる最終仕上焼鈍を施し製造される。
【0051】
そして、その方向性けい素鋼スラブの好適成分組成範囲は以下の通りである。
【0052】
Cは、0.20mass%を超えると脱炭が困難になるので、その含有量は0.20mass%以下がよい。
【0053】
Siは、2.0 mass%未満では固有抵抗が低すぎ、所望の鉄損が得られなく、一方7.0 mass%を超えると圧延が困難になる。したがってその含有量は2.0 mass%以上、7.0 mass%以下とすることがよい。
【0054】
Mnは、MnS やMnSeなどのインヒビター成分として、また熱間圧延性向上のために0.02mass%以上は必要であるが、3.0 mass%を超えるとγ変態への影響が大きくなり、2次再結晶が不安定となる。したがってその含有量は0.02mass%以上、3.0 mass%以下とすることがよい。
【0055】
上記成分のほかにインヒビター成分とし知られるS,Se, Al, TeおよびBのうちから選んだいずれか1つ以上を含有させることが磁気特性に優れる良好な2次再結晶を得るために重要である。さらに安定な2次再結晶を得るために、Cu, Ni, Sn, Sb, As, Bi, Cr, Mo, PおよびNのうちから選んだいずれか一つ以上を含有させることもよい。
【0056】
つぎにこの発明の特徴である最終冷間圧延後鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損に関して、その測定方法や制御方法などについて述べる。
まず、その測定方法としては、最終冷間圧延後の鋼板を切出して測定する方法(オフライン測定法)や冷間圧延ラインもしくは1次再結晶焼鈍ラインに1次コイルおよび2次コイルを設置し、該コイルの中に鋼帯を通したり、鋼帯表面に接触させて鋼帯を磁化させる方法(オンライン測定法)があるが、後者の方が制御法としては優れている。
【0057】
抗磁力や透磁率もしくはヒステリシス損の測定は、
・一定の最大磁化力を与えて測定する
・一定の最大磁束密度を与えて測定する
・飽和磁束密度に近い領域まで磁化し測定するなど、いずれの方法もこの発明に適する。また、磁場を変化させる方法としては、準静的に変化させる方法(直流法)や交番的に変化させる方法(交流法)のいずれもがこの発明に適する。
【0058】
さらに、磁化の付与方法としては、1次コイルのかわりに磁石を用いることも可能である。
なお、抗磁力と透磁率との積すなわち、ヒステリシス損に相当する量も測定できる。
【0059】
かかる方法で測定した最終冷間圧延後鋼板の抗磁力や透磁率もしくはヒステリシス損の値が、あらかじめ測定しておいた最終仕上焼鈍を経た製品で優れる磁気特性を発現できる最終冷間圧延後の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損の最適範囲を所定範囲と定めこの範囲内に入るように制御する。
その抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損の制御手段としては、スラブ加熱工程から冷間圧延工程までの間で、前記した抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損を変化させる要因となる各処理条件があり、これらのうちから選んだ少なくともいずれか一つ調整を行うことでよい。
【0060】
さらに好ましくは、最終冷間圧延後の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損を上記所定範囲内にて目標値を定め、この目標値と最終冷間圧延後鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損の測定値とを比較して、両者の偏差に応じて、1次再結晶焼鈍条件の調整、焼鈍分離剤の塗布量・成分組成の調整および2次再結晶焼鈍条件の調整のうちから少なくともいずれか一つの処理を施すことがよい。
かくすることにより安定かつ優れる磁気特性を有する製品が得られることになる。
【0061】
ここで、測定した抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損が目標値よりも小さい場合には熱延バンド組織の発達が不十分となっているか、最終冷間圧延後の鋼板中の転位の集積度が過少であるので下記するA〜Eのいずれか一つ以上の対策で処理する。
【0062】
1. 1次再結晶焼鈍条件の調整
A.500 〜800 ℃間の昇温速度を増加する。
B. 均熱時の酸素ポテシャルを増加させる。
【0063】
2.焼鈍分離剤の塗布量の成分組成の調整
C. 焼鈍分離剤の塗布量を増加する。
D. TiO2, Sr(OH)2 ・8H2O, SnO2, Fe2O3, NiO, CuO2, CoO 等の酸化物を焼鈍
分離剤に含有させるか、もしくはそれの含有量を増加する。
【0064】
3.2次再結晶焼鈍条件の調整
E.800 ℃から2次再結晶開始までの熱処理時間を延長する。
【0065】
一方、逆に測定した抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損が目標値よりも大きい場合は熱延バンド組織が発達しているか、最終冷間圧延後鋼板中の転位の集積度が過大であるので、上記したA〜Eと逆の対策のうちのいずれか一つ以上を施すことでよい。
【0066】
上記において、測定した抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損が目標値よりも小さい場合に行う、A〜Eの対策は、いずれも、(110) 再結晶集合組織の発達を促し、(111) 再結晶集合組織の発達を抑制する手段になっており、逆に抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損が目標値よりも大きい場合に行うA〜Eの逆の対策は、いずれも(110) 再結晶集合組織の発達を抑え、(111) 再結晶集合組織の発達を促進する手段になっている。
【0067】
このようにこの発明においては、抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損という指標を用いることによって、熱延バンド組織と再結晶集合組織という2次再結晶に影響をおよぼす2つの因子を複合して評価することを可能としたのである。
したがって、最も優れる2次再結晶の制御のためには、目標とする抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損からの偏差に応じてA〜Eの対策およびその逆の対策の調整量を正確にかつ定量的に設定することが重要であることは云うまでもない。
【0068】
また、かかる、抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損の偏差の低減もしくは、偏差量に応じての工程条件の調整は各コイル単位で行うことの他、コイル内の各部分において行ってもよいことは自明のことである。
【0069】
さらに、かかる技術に組合せて、1次再結晶後、鋼板の抗磁力の値が2次再結晶開始までの間にあらかじめ測定しておいた最終仕上焼鈍を経た製品で優れる磁気特性を発現できる1次再結晶板の抗磁力を所定範囲に入るように制御することも磁気特性をさらに向上させるのに有効である。
【0070】
その抗磁力の制御手段としては、スラブ加熱工程から冷延工程までの間で、前記した抗磁力を変化させる要因となる処理条件を変更する手段があるがさらに、1次再結晶焼鈍の変更ならびに焼鈍分離剤の成分組成の調整および2次再結晶焼鈍条件の調整のうちから少なくとも一つの処理を施すことがよく、さらに好ましくは、1次再結晶板の抗磁力の上記所定範囲内にて目標値を定め、この目標値と1次再結晶焼鈍後鋼板の抗磁力の測定値とを比較して、両者の偏差に応じて、1次再結晶焼鈍条件の変更ならびに焼鈍分離剤の塗布量・成分組成の調整および2次再結晶焼鈍条件の調整のうちから少なくともいずれか一つの処理を施すことがよい。
【0071】
かくすることにより安定かつ優れる磁気特性を有する製品が得られることになる。
【0072】
ここで、測定した抗磁力が目標値よりも小さい場合にはインヒビターの抑制力が低下しているか1次再結晶粒径が過大であるので下記するa〜mのいずれか一つ以上の対策で処理する。
【0073】
1. 1次再結晶焼鈍条件の変更
a.昇温時の酸素ポテシャルを増加する。
b. 昇温速度を低下する。
c.酸素目付量を低減する。
d.サブスケールのファイヤライト/シリカ比を低減する。
e. 均熱温度を下げる。
f. 均熱時間を低減する。
g. 窒化量を減らすか脱窒する(Alを含有する方向性けい素鋼板の場合) 。
【0074】
2. 焼鈍分離剤の塗布量・成分組成の調整
h.焼鈍分離剤の塗布量を増加する。
i.SrSO4, MgSO4, SnSO4, Na2SO4, CaSO4, FeSO4, NiSO4およびCoSO4 等の硫酸塩化合物を焼鈍分離剤に含有させるか、もしくはそれらの含有量を増加する。
j.Alを含有する方向性けい素鋼板の場合には、FeN, SiN4, Fe x N, (Mn, Fe) x N, TiNおよびCrN 等の窒化物を焼鈍分離剤に含有させるか、もしくはそれらの含有量を増加する。
【0075】
3. 2次再結晶焼鈍条件の調整
k.昇温速度を増加する。
l.Sbを含有する方向性けい素鋼板の場合、750 〜950 ℃の温度間における2次再結晶または2次再結晶核生成のための定温保持処理の温度を高める。
【0076】
m.Alを含有する方向性けい素鋼板の場合、2次再結晶開始までの雰囲気中のH2分圧を低下する。
【0077】
一方、逆に測定した抗磁力が目標値よりも大きい場合には、1次再結晶粒径が過少であるかインヒビターの抑制力が過大であるので、上記したa〜mと逆の対策のうち、いずれか一つ以上を行うことでよい。
【0078】
上記において、測定した抗磁力が目標値よりも小さい場合に行うa〜mの対策は、いずれも1次再結晶焼鈍を含めて2次再結晶開始前までに抗磁力を高める手段になっており、逆に抗磁力が目標値よりも大きい場合に行うa〜mの逆の対策は、いずれも1次再結晶焼鈍を含めて2次再結晶開始前までに抗磁力を低下させる手段になっている。
【0079】
このように、抗磁力という指標を用いることによって、インヒビターの抑制力と1次再結晶粒径という2次再結晶に影響をおよぼす1次再結晶焼鈍後鋼板の2つの因子を複合して評価することを可能としたのである。
【0080】
したがって、最も優れる2次再結晶の制御のためには、目標とする抗磁力からの偏差に応じてa〜mの対策およびその逆の対策の調整量を正確かつ定量的に設定することが重要であることは云うまでもない。
【0081】
なお、鋼板表面に溝を設けたり、局部的に歪を付加して方向性けい素鋼板の磁区幅を低減し、鉄損を向上させる技術の併用も、この発明は、これを妨げるものではない。
上記において、溝を設ける手段としてはエッチング法や突起ロールによる加工法、また歪付加の手段としてはパルス型または連続型レーザー光の照射、プラズマジェットの照射、回転球の押付けなど従来公知のあらゆる手段が適合する。
【0082】
【実施例】
実施例1
C:0.07mass%, Si:3.26mass%, Mn:0.07mass%, sol Al:0.024 mass%, S:0.003 mass%, Se:0.018 mass%, Sb:0.035 mass%, Cu:0.10mass%, Mo:0.010 mass%およびN:0.007 mass%を含有するスラブ24本を1400℃の温度に加熱し、公知の方法で熱間圧延を行い、それぞれ板厚:2.0mm の熱延板コイルとした。
【0083】
ついで、温度:1150℃、時間:50s の熱延板焼鈍を行い、冷却速度:15〜100 ℃/s の範囲で室温までの冷却した。その後、酸洗し、ゼンジマー圧延機で80〜250 ℃の温度範囲で冷間圧延を行い、それぞれ0.26mmの最終板厚とした。
【0084】
かくして得られた24の冷延コイルを12コイルずつにグループ分けした。
最初の12コイルは、露点:55℃、H2:60%残部N2の雰囲気中で昇温速度:15℃/s、均熱温度:800 ℃、均熱時間:120sの脱炭・1次再結晶焼鈍を施したのち、MgO を主成分とし、Sr(OH)2 ・8H2O:3%,TiO2:10%, SnO2:5%を含有する焼鈍分離剤を鋼板表面(両面)に10g/m2塗布後、コイル状に巻き取り、最終仕上焼鈍を、N2雰囲気中で温度:840 ℃まで昇温速度:30℃/hで昇温し840 ℃の温度で45時間保持したのち、N2:25%, H2:75%の雰囲気中で温度:1150℃まで昇温速度:15℃/hで昇温し、つづいてH2雰囲気中で1150℃の温度で5時間保持したのち冷却した。
【0085】
その後、それぞれ未反応焼鈍分離剤を除去し、平坦化焼鈍を兼ねて、張力コーティング剤を塗布してN2雰囲気中で、温度:800 ℃、保持時間:90s の条件で焼付け処理を行い、製品とした(比較例)。
【0086】
つぎの12コイルは上記比較例と同様に80〜250 ℃の温度範囲で冷間圧延を行ったのち、鋼板片を切出し、それぞれ抗磁力および透磁率を測定するとともに、実験室的に最高の磁気特性が得られる最大磁化力H=1000A/m の時の抗磁力:540A/m、および透磁率:0.54 H/m×10-3の値を得、それらの値を目標抗磁力および透磁率とした。
【0087】
その後、6コイルについては、上記目標抗磁力と各コイルの抗磁力との差に応じて、最初の3コイルは、比較例と同一の脱炭・1次再結晶焼鈍を施したのち、比較例と同一の組成の焼鈍分離剤を用い、その塗布量を変更し、最終仕上焼鈍は比較例と全く同一とし、また、残る3コイルは、比較例と全く同一の脱炭・1次再結晶焼鈍条件および焼鈍分離剤の塗布を行ったのち、最終仕上焼鈍条件において、840 ℃の温度で保持する時間のみを変更し、それ以外は比較例と同一の条件で最終仕上焼鈍を施した。
また残りの6コイルについては、上記目標透磁率と各コイルの透磁率との差に応じて、最初の3コイルは比較例と同一の脱炭・1次再結晶焼鈍であるが、500 〜800 ℃間の昇温速度を変更し、焼鈍分離剤および最終仕上焼鈍は比較例と全く同一とし、次の3コイルは、比較例と同一の脱炭・1次再結晶焼鈍を施した後、焼鈍分離剤中のSnO2の含有量を調整し、最終仕上焼鈍は比較例と全く同一とした。
【0088】
これらのコイルはそれぞれ未反応分離剤を除去したのち、平坦化焼鈍を兼ねて張力コーティング剤を塗布し、雰囲気:N2、温度:800 ℃、時間:90s の条件で焼付け、それぞれ製品とした(この発明の適合例)。
なお、上記1次再結晶焼鈍後鋼板の2次再結晶温度は1100℃である。
【0089】
これらの製品について測定した磁気特性(磁束密度、鉄損)を表1にまとめて示す。
【0090】
【表1】
【0091】
表1から明らかなように、この発明の適合例は比較例に比し優れた磁気特性を有していて、コイル間のバラツキも極めて小さく安定した値を示している。
【0092】
実施例2
C:0.07mass%, Si:3.35mass%, Mn:0.07mass%, P:0.07 mass %, S:0.003 mass%, Se:0.018 mass%, Sb:0.02mass%, Mo:0.01mass%およびN:0.008 mass%を含有する鋼スラブ8本を、1350℃の温度で60分間加熱したのち、通常の熱間圧延で板厚:2.4mm の熱延板コイルとした。
【0093】
これらの熱延板コイルをそれぞれ6分割し合計48コイルとした。その後温度:1000℃、時間:60s の熱延板焼鈍を施し、さらに冷間圧延により1.50mmの板厚としたのち、前段が温度:830 ℃、時間:30s 、後段が温度:1050℃、時間:60s の2段均熱の中間焼鈍を、露点:50℃、H2:50%、残部N2の雰囲気中で行い、ミスト水を用いて、350 ℃の温度まで40℃/s の速度で急冷したのち、350 ℃の温度で20s 間保持した後、80℃の温度の酸洗浴中で酸洗する処理を行った。
【0094】
その後、各コイルは、100 〜230 ℃の温度範囲での冷間圧延を行い、最終板厚0.22mmの冷延板コイルとし、冷間圧延の最終圧延を通過した時点でオンラインで各コイルの長手方向の抗磁力の変化を測定した。その後、鋼板表面に電気絶縁性のレジストインキを部分的に塗布し、電解エッチングを施し、鋼板の片側の表面に、圧延方向に対し85゜の方向で、幅:100 μm 、深さ:25μm の溝を圧延方向に3mmピッチで設ける処理を行ったのち、レジストインキを除去し脱炭・1次再結晶焼鈍を行い、焼鈍分離剤を塗布し、コイルに巻きとった。
【0095】
脱炭・1次再結晶焼鈍の条件は、露点:50℃, H2:50%残部N2の雰囲気中で昇温速度:10℃/s, 均熱温度:845 ℃, 均熱時間:120sの一定条件のもとで行い、MgO を主体とし、TiO2:8%,SrSO4 :3%を含有する焼鈍分離剤を鋼板表面(両面)に8g/m2塗布した。
この時、最初の16コイルは、比較例として、抗磁力を測定するのみとし、測定結果を何ら工程条件に反映させなかった。
【0096】
次の16コイルは、適合例Iとして、抗磁力の測定値と適正な抗磁力の目標値との偏差が零となるように、冷間圧延の最終パスの圧延温度をコイルの長手方向において、ロールクーラントの油量を抗磁力の偏差量に応じて変更する制御を行った。
【0097】
また、残りの16コイルは、適合例IIとして、抗磁力の測定値と適正な抗磁力の目標値との偏差に応じて、焼鈍分離剤の塗布量の変更を、コイル長手方向において、塗布ロールの絞付け圧を変えることで行った。
【0098】
その後これらのコイルは、最終仕上焼鈍として、N2雰囲気中で温度:850 ℃まで昇温速度:30℃/hで昇温し、850 ℃の温度で35時間保持したのち、N2:35%, H2:65%の雰囲気中で温度:1150℃まで昇温速度:30℃/hで昇温し、つづいてH2雰囲気中で1150℃の温度で5時間保持したのち冷却した。
しかるのち、未反応焼鈍分離剤を除去し、平坦化焼鈍を兼ねて、張力コーテング剤を塗布してN2雰囲気中で温度:800 ℃、時間:90s の焼付け処理を行い、それぞれ製品とした。
【0099】
これらの製品について、各16コイルの最終冷間圧延後の鋼板の抗磁力の平均値と標準偏差、および製品板の磁気特性の平均値を表2にまとめて示す。
【0100】
【表2】
【0101】
表2において、この発明に適合する適合例Iおよび適合例IIは、比較例に比し、優れる磁気特性の値を示している。
なお、当然のことながら、比較例、適合例IIに比し、適合例Iの冷間圧延後の鋼板の抗磁力の標準偏差は小さくなっている。
【0102】
実施例3
表3に示すA〜Dの4種類の目標成分組成の鋼スラブ各60本を、鋼種AおよびBは1400℃の温度に、CおよびDは1300℃の温度に加熱したのち、常法により熱間圧延し、それぞれ2.2mm の熱延板コイルとした。
【0103】
【表3】
【0104】
これらのコイルは、1000℃の温度で30秒間の熱延板焼鈍を施した。その後ミスト中で急冷し、冷間圧延で1.50mmの板厚としたのち、再び1080℃の温度で1分間の中間焼鈍後ミスト中で急冷し、140 〜250 ℃の温度域で冷間圧延を行い、それぞれ最終板厚:0.22mmの冷延板とした。
【0105】
その後、A〜Dの各鋼種とも30コイルは、露点:60℃, H2:50%残部N2の雰囲気中で温度:850 ℃, 時間:120sの脱炭・1次再結晶焼鈍を施し、MgO を主成分とし、TiO2:5%,SrSO4 :3%を含有する焼鈍分離剤を鋼板表面(両面)に13g/m2塗布して、コイル状に巻きとった。
【0106】
しかるのち、N2雰囲気中で850 ℃の温度まで昇温速度:40℃/hで加熱し、つづいてN2:20%、H2:80%の雰囲気中で、鋼種A,BおよびCについては850 ℃から1150℃までの温度域を昇温速度:30℃/hで、鋼種Dについては850 ℃から1000℃までの温度域を昇温速度:15℃/hで、さらにつづいて鋼種A,BおよびCについては1150℃の温度で、鋼種Dについては1000℃の温度でそれぞれ5時間保持する最終仕上焼鈍を施した。
【0107】
その後これらの各コイルは未反応焼鈍分離剤を除去したのち、平坦化焼鈍を兼ねて張力コーティング剤を塗布し、N2雰囲気中で温度:800 ℃, 時間:90s の焼付け処理をそれぞれ行い製品とした(比較例)。
【0108】
一方、鋼種A〜Dの残る各60コイルのうち30コイルについては、実験室にて、事前に最終冷間圧延後の鋼板の最適透磁率を求めておき、この値を目標透磁率として定め、脱炭・1次再結晶焼鈍直前の位置に設置したオンライン透磁率測定器により各コイルの透磁率を測定し、目標透磁率からの偏差に応じて、脱炭・1次再結晶焼鈍の均熱部の酸素ポテンシァルPH2O/PH2の値の変更と、焼鈍分離剤塗布量の変更のうちいずれか一つもしくは二つの組合せによる工程条件の適正化を行った。
【0109】
上記の変更において、PH2O/PH2の変更は炉内に注入する水蒸気流量を変えることにより行い、焼鈍分離剤塗布量の変更は焼鈍炉出側に設置した焼鈍分離剤塗布ロールの絞付け圧を変えることにより行った。
【0110】
かくして最終仕上焼鈍後は、それぞれ未反応焼鈍分離剤を除去したのち、平坦化焼鈍を兼ねて張力コーティング剤を塗布し、N2雰囲気中で温度:800 ℃, 時間:90s の焼付け処理を行い、製品とした(この発明の適合例I:単独型)。
【0111】
次に鋼種A〜Dの残る各30コイルについては、実験室にて、事前に最終冷間圧延後の鋼板の最適透磁率を求めておき、この値を目標透磁率として定め、脱炭・1次再結晶焼鈍直前の位置に設置したオンライン透磁率測定器により各コイルの透磁率を測定し、目標透磁率からの偏差に応じて、脱炭・1次再結晶焼鈍の500 〜800 ℃間の昇温速度の変更を行った。
【0112】
また、事前に脱炭・1次再結晶焼鈍後の鋼板の最適抗磁力を求めておき、この値を目標抗磁力として定め、脱炭・1次再結晶焼鈍直後の位置に設置したオンライン抗磁力測定器により各コイルの抗磁力を測定し、目標抗磁力からの偏差に応じて、焼鈍分離剤成分組成の変更を行った。この成分組成の変更は焼鈍分離剤に含有させるSrSO4 の含有量を変えることによって行った。
【0113】
その他の脱炭・1次再結晶焼鈍条件、焼鈍分離剤塗布条件、最終仕上焼鈍条件については比較例と同一とした。
【0114】
かくして、最終仕上焼鈍後は、それぞれ未反応焼鈍分離剤を除去したのち、平坦化焼鈍を兼ねて張力コーティング剤を塗布し、N2雰囲気中で温度:800 ℃, 時間:90s の焼付け処理を行い、製品とした(この発明の適合例II:組合せ型)。
【0115】
これらの製品について測定した磁気特性について鋼種ごと、製造方法ごとの平均値を表4にまとめて示す。
【0116】
【表4】
【0117】
表4から明らかなように、比較例に比しこの発明の適合例の磁気特性は大幅に向上しており、特に、最終冷間圧延後の鋼板の透磁率を測定し、その値に基づき脱炭・1次再結晶焼鈍条件あるいは焼鈍分離剤塗布量を変更し、かつ脱炭・1次再結晶焼鈍後の鋼板の抗磁力を測定し、その値に基づき、焼鈍分離剤組成を調整した適合例IIの磁気特性は大幅に向上している。
これは、インヒビターの抑制力と冷間圧延工程条件との整合性および熱延バンド組織と冷間圧延工程条件との整合性を同時に満たすことができた結果に他ならない。
【0118】
実施例4
前掲表3に示したAの目標成分組成の鋼スラブ30本を1400℃の温度に加熱したのち、常法により熱間圧延し、板厚:2.6mm の熱延板とした。
【0119】
これらのコイルのうち15本のコイルは1150℃の温度で30秒間の熱延板焼鈍を施したのちミスト中で30℃/s の冷却速度で急冷後、ゼンジマー圧延機を用いて180 〜220 ℃の温度で冷間圧延し、0.34mmの最終板厚とした。この鋼板の最高磁化力:2000A/m の時の抗磁力を測定したのち、露点:60℃, H2:50%残部N2の雰囲気中で温度850 ℃, 時間:120sの脱炭・1次再結晶焼鈍を施し、この鋼板の最高磁束密度1.5Tの時の抗磁力を測定した。その後、MgO を主成分とし、TiO2:8%,SnO2:3%を含有する焼鈍分離剤を鋼板表面(両面)に10g/m2塗布して、コイル状に巻きとった。
【0120】
しかるのち、N2雰囲気中で850 ℃まで昇温速度:40℃/hで加熱し、つづいてN2:30%、H2:70%の雰囲気中で、1150℃まで15℃/h の昇温速度で昇温し、H2雰囲気中にて、1150℃の温度で8時間保持する最終仕上焼鈍を施した。
【0121】
その後、未反応分離剤を除去したのち、平坦化焼鈍を兼ねて張力コーティング剤を塗布し、N2雰囲気中で温度:800 ℃,時間:90s の焼付け処理をそれぞれ行い製品とした(比較例)。
【0122】
一方、残る熱延板コイル15コイルはコイルより小試片を切出し、研究室的に比較例と同一の工程条件で処理し、冷間圧延後の鋼板の最高磁化力:2000A/m の時の抗磁力、脱炭・1次再結晶焼鈍後の鋼板の最高磁束密度1.5Tの時の抗磁力、および最終処理品の磁気特性を測定した。最も磁気特性の優れていた試料の冷間圧延後鋼板の抗磁力:658A/mを冷間圧延後の鋼板の目標抗磁力として、冷間圧延の温度を変更して、また、最も磁気特性の優れていた試料の脱炭・1次再結晶焼鈍後の鋼板の抗磁力を脱炭・1 次再結晶焼鈍後の鋼板の目標抗磁力として、熱延板焼鈍の温度を変更して、いずれも目標値に合致するようにして、比較例と同じ工程条件(前述の熱延板焼鈍温度と冷間圧延の温度は除く)で、これらの15コイルを処理し、製品とした(適合例)。
【0123】
これら、比較例、適合例の製品の磁気特性および、途中工程品の抗磁力の平均値と標準偏差を表5にまとめて示す。
【0124】
【表5】
【0125】
表5から明らかなように、比較例に比し、この発明の適合例の磁気特性は大幅に向上しており、最終冷間圧延後の鋼板の抗磁力、および、脱炭・1次再結晶焼鈍後の鋼板の抗磁力を目標値に制御するこの発明の方法が優れていることを示している。
【0126】
実施例5
前掲表3に示したBの目標成分組成の鋼スラブ8本を1420℃の温度に加熱したのち、常法により熱間圧延し、板厚:2.4mm の熱延板とした。
【0127】
これらのコイルのうち、15本のコイルは1150℃の温度で30秒間の熱延板焼鈍を施したのちミスト中で30℃/s の冷却速度で急冷し、タンデム圧延機で1.50mm厚まで冷間圧延し、その後、露点:60℃, H2:50%、残部N2雰囲気中で、温度:1080℃、時間:60s の中間焼鈍を施し、ミスト中で40℃/s の冷却速度で350 ℃の温度まで急冷し、その後350 ℃の温度で20s 間保持し、80℃の温度まで空冷したのち、酸洗した。
【0128】
その後、ゼンジマー圧延機を用いて150 〜240 ℃の温度範囲で、冷間圧延し、0.22mmの最終板厚とした。最終冷間圧延後の透磁率または抗磁力を評価するため、鋼板から試料を切出し、これらの磁気特性と強い相関を有するヒステリシス損も併せて最高磁化力を1000A/m に設定して測定した。
【0129】
このうち4本のコイルは845 ℃まで10℃/s の昇温速度で温度:845 ℃、時間:120s、露点:60℃, H2:50%、残部N2雰囲気中で、脱炭・1次再結晶焼鈍を施し、MgO を主成分とし、TiO2:8%,Sr(OH)2 ・8H2O:3 %, Fe2O3 :3 %を含有する焼鈍分離剤を鋼板表面(両面)に12g/m2塗布してコイル状に巻きとった。
【0130】
しかるのち、N2雰囲気中で845 ℃の温度まで昇温速度:40℃/hで加熱し、845 ℃の温度で35時間保持したのち、N2:30%、H2:70%の雰囲気中で、1150℃の温度まで15℃/h の昇温速度で加熱したのち、1160℃まで昇温し、1160℃の温度でH2中で8時間保持する最終仕上焼鈍を施した。
【0131】
その後、未反応分離剤を除去したのち、平坦化焼鈍を兼ねて張力コーティング剤を塗布し、N2雰囲気中で温度:800 ℃、時間:90s の焼付け処理をそれぞれ行い製品とした(比較例)。
【0132】
一方、残る最終冷間圧延後の4コイルについては、コイルの一部から試片を採取し、実験室で比較材と同一の処理を行い、最も磁気特性の優れていたコイルの最終冷間圧延後の特性として、抗磁力:544A/m、透磁率:0.551 ×10-3H/m 、および抗磁力と透磁率の双方に強い相関を有するヒステリシス損:6.07W/kgの値を得た。
【0133】
したがって、ヒステリシス損の目標値6.07W/kgの偏差に応じて、残り3コイルについては、脱炭・1次再結晶焼鈍後の500 ℃から800 ℃にかけての昇温速度を変更し、その他の脱炭・1次再結晶焼鈍、焼鈍分離材塗布、最終仕上焼鈍、張力コーティング塗布、平坦化焼鈍などの条件は比較例と同一とした(適合例)。
【0134】
これらの比較例、適合例の製品の磁気特性および、途中工程品の抗磁力、透磁率およびヒステリシス損の平均値と標準偏差とを表6にまとめて示す。
【0135】
【表6】
【0136】
表6から明らかなように、比較例に比し、この発明の適合例の磁気特性は大幅に向上しており、最終冷間圧延後の鋼板の抗磁力、透磁率のほか、これらに依存するヒステリシス損を目標値に制御するこの発明の方法が優れていることを示している。
【0137】
【発明の効果】
この発明は、最終冷間圧延後、1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損を指標とする方向性けい素鋼板の製造方法であって、
この発明によれば、安定かつ優れる磁気特性を有する方向性けい素鋼板が得られ、歩留りが向上するとともに品質保証の点でも有利であり、この発明によって得られる鋼板は変圧器等の鉄心材料として極めて有利に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】1次再結晶焼鈍後鋼板の平均1次再結晶粒径と最終仕上焼鈍後鋼板の諸特性との関係を示すグラフである。
【図2】最終冷間圧延後鋼板の抗磁力と最終仕上焼鈍後鋼板の諸特性との関係を示すグラフである。
【図3】最終冷間圧延後鋼板の透磁率と最終仕上焼鈍後鋼板の諸特性との関係を示すグラフである。
Claims (8)
- けい素鋼スラブを加熱したのち熱間圧延し、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行ったのち、脱炭・1次再結晶焼鈍を施し、ついで焼鈍分離剤を塗布して2次再結晶焼鈍と純化焼鈍とからなる最終仕上焼鈍を施す方向性けい素鋼板の製造方法において、
最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損と製品の磁気特性との関係を、該抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損を制御するための脱炭・1次再結晶焼鈍前の製造条件を変更することにより求め、
前記最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損と製品の磁気特性との関係から、抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損の目標範囲を定め、
最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損を前記目標範囲内に制御することを特徴とする方向性けい素鋼板の製造方法。 - 請求項1における制御手段が、スラブの加熱条件の調整、熱間圧延条件の調整および中間焼鈍を含む冷間圧延条件の調整のうちから選んだ少なくともいずれか一つである方向性けい素鋼板の製造方法。
- けい素鋼スラブを加熱したのち熱間圧延し、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行ったのち、脱炭・1次再結晶焼鈍を施し、ついで焼鈍分離剤を塗布して2次再結晶焼鈍と純化焼鈍とからなる最終仕上焼鈍を施す方向性けい素鋼板の製造方法において、
最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損と製品の磁気特性との関係を、該抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損を制御するための脱炭・1次再結晶焼鈍前の製造条件を変更することにより求めるとともに、
前記最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損と製品の磁気特性との関係から、抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損の目標値を定め、
最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損に応じた、所望の磁気特性を得るための脱炭・1次再結晶焼鈍条件、焼鈍分離剤の塗布量・成分組成の条件および2次再結晶焼鈍条件を求めておき、
最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損を測定し、その測定値と、前記目標値との差に応じて、脱炭・1次再結晶焼鈍条件の調整、焼鈍分離剤の塗布量・成分組成の調整および2次再結晶焼鈍条件の調整のうちから選んだ少なくともいずれか一つの処理を施すことを特徴とする方向性けい素鋼板の製造方法。 - けい素鋼スラブを加熱したのち熱間圧延し、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行ったのち、脱炭・1次再結晶焼鈍を施し、ついで焼鈍分離剤を塗布して2次再結晶焼鈍と純化焼鈍とからなる最終仕上焼鈍を施す方向性けい素鋼板の製造方法において、
最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損と製品の磁気特性との関係を、該抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損を制御するための脱炭・1次再結晶焼鈍前の製造条件を変更することにより求めるとともに、
前記最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損と製品の磁気特性との関係から、抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損の目標範囲を定め、
脱炭・1次再結晶焼鈍後、2次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力と製品の磁気特性との関係を、該抗磁力を制御するための2次再結晶焼鈍前の製造条件を変更することにより求めるとともに、
前記脱炭・1次再結晶焼鈍後、2次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力と製品の磁気特性との関係から、抗磁力の目標範囲を定め、
最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損ならびに、脱炭・1次再結晶焼鈍後、2次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力を前記それぞれの目標範囲内に制御することを特徴とする方向性けい素鋼板の製造方法。 - 請求項4における制御手段が、最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板で、スラブの加熱条件の調整、熱間圧延条件の調整および中間焼鈍を含む冷間圧延条件の調整のうちから選んだ少なくともいずれか一つであり、脱炭・1次再結晶焼鈍後、2次再結晶焼鈍前の鋼板で、スラブ加熱条件の調整、熱間圧延条件の調整、中間焼鈍を含む冷間圧延条件の調整および脱炭・1次再結晶焼鈍条件の調整のうちから選んだ少なくともいずれか一つである方向性けい素鋼板の製造方法。
- けい素鋼スラブを加熱したのち熱間圧延し、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行ったのち、脱炭・1次再結晶焼鈍を施し、ついで焼鈍分離剤を塗布して2次再結晶焼鈍と純化焼鈍とからなる最終仕上焼鈍を施す方向性けい素鋼板の製造方法において、
(1)最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損と製品の磁気特性との関係を、該抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損を制御するための脱炭・1次再結晶焼鈍前の製造条件を変更することにより求めるとともに、
前記最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損と製品の磁気特性との関係から、抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損の目標値を定め、
最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損に応じた、所望の磁気特性を得るための脱炭・1次再結晶焼鈍条件、焼鈍分離剤の塗布量・成分組成の条件および2次再結晶焼鈍条件を求めておき、
最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損を測定し、その測定値と、前記最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前における目標値との差に応じて、脱炭・1次再結晶焼鈍条件の調整、焼鈍分離剤の塗布量・成分組成の調整および2次再結晶焼鈍条件の調整のうちから選んだ少なくともいずれか一つの処理を施すこと、
(2)脱炭・1次再結晶焼鈍後、2次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力と製品の磁気特性との関係を、該抗磁力を制御するための2次再結晶焼鈍前の製造条件を変更することにより求めるとともに、
前記脱炭・1次再結晶焼鈍後、2次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力と製品の磁気特性との関係から、抗磁力の目標値を定め、
脱炭・1次再結晶焼鈍後、2次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力に応じた、所望の磁気特性を得るための焼鈍分離剤の塗布量・成分組成の条件および2次再結晶焼鈍条件を求めておき、
脱炭・1次再結晶焼鈍後、2次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力を測定し、その測定値と前記脱炭・1次再結晶焼鈍後、2次再結晶焼鈍前における目標値との差に応じて、焼鈍分離剤の塗布量・成分組成の調整および2次再結晶焼鈍条件の調整のうちから選んだ少なくともいずれか一つの処理を施すこと
を特徴とする方向性けい素鋼板の製造方法。 - けい素鋼スラブを加熱したのち熱間圧延し、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行ったのち、脱炭・1次再結晶焼鈍を施し、ついで焼鈍分離剤を塗布して2次再結晶焼鈍と純化焼鈍とからなる最終仕上焼鈍を施す方向性けい素鋼板の製造方法において、
最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損と製品の磁気特性との関係を、該抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損を制御するための脱炭・1次再結晶焼鈍前の製造条件を変更することにより求めるとともに、
前記最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損と製品の磁気特性との関係から、抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損の目標値を定め、
脱炭・1次再結晶焼鈍後、2次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力と製品の磁気特性との関係 を、該抗磁力を制御するための2次再結晶焼鈍前の製造条件を変更することにより求めるとともに、
前記脱炭・1次再結晶焼鈍後、2次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力と製品の磁気特性との関係から、抗磁力の目標値を定め、
最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損に応じた、所望の磁気特性を得るための脱炭・1次再結晶焼鈍条件を求めておき、
さらに、脱炭・ 1 次再結晶焼鈍後、2次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力に応じた、所望の磁気特性を得るための焼鈍分離剤の塗布量・成分組成の条件および2次再結晶焼鈍条件を求めておき、
最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損を測定し、その測定値と前記最終冷間圧延後、脱炭・1次再結晶焼鈍前における目標値との差に応じて、脱炭・1次再結晶焼鈍条件の調整を行ったのち、
さらに、脱炭・1次再結晶焼鈍後、2次再結晶焼鈍前の鋼板の抗磁力を測定し、その測定値と前記脱炭・1次再結晶焼鈍後、2次再結晶焼鈍前における目標値との差に応じて、焼鈍分離剤の塗布量・成分組成の調整および2次再結晶焼鈍条件の調整のうちから選んだ少なくともいずれか一つの処理を施すことを特徴とする方向性けい素鋼板の製造方法。 - 抗磁力、透磁率もしくはヒステリシス損が、オンラインでの計測によるものである請求項1〜7のいずれかに記載の方向性けい素鋼板の製造方法。
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