JPH08273148A - 磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録媒体

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JPH08273148A
JPH08273148A JP6985795A JP6985795A JPH08273148A JP H08273148 A JPH08273148 A JP H08273148A JP 6985795 A JP6985795 A JP 6985795A JP 6985795 A JP6985795 A JP 6985795A JP H08273148 A JPH08273148 A JP H08273148A
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JP6985795A
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English (en)
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Hideki Murayama
英樹 村山
Fumiaki Yokoyama
文明 横山
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Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
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Abstract

(57)【要約】 【発明の名称】 磁気記録媒体 【目的】 薄膜で優れた潤滑性、耐磨耗性を有し、それ
を長期間維持することができる潤滑層を備えた磁気記録
媒体を得る。 【構成】 非磁性基板上に磁性層、潤滑層を順次備えた
磁気記録媒体において、該潤滑層が極性官能基を有する
鎖状潤滑剤分子と多座配位子とを含み、鎖状潤滑剤分子
を多座配位子に対して、その分子数比が1より大きい割
合で含有する磁気記録媒体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高速で摺動する固体接
触界面において、薄膜で潤滑機能を発現する潤滑層を備
えた情報産業等で利用される高記録密度の磁気記録媒体
における潤滑システムに関するものである
【0002】
【従来の技術】情報産業等で利用される高記録密度の磁
気記録媒体の代表的な例である薄膜型磁気記録媒体は、
通常、磁性金属またはその合金をメッキ、蒸着またはス
パッタリング法等によって非磁性基板上に披着して製造
される。実際の使用時においては磁気ヘッドと磁気記録
媒体とが高速で接触摺動するので、摩耗損傷を受けた
り、磁気特性の劣化を起こしたりする。
【0003】このような欠点を解決する方法として、磁
性層上に保護膜や潤滑層を設けることによって接触摺動
の際の静/動摩擦を極力低減させ、耐摩耗性を向上させ
ることが提案されている。保護膜としては、炭素質膜、
酸化物膜、窒化物膜及びホウ化物膜等が利用される。潤
滑剤としては液体潤滑剤または固体潤滑剤が使用され、
一般的には液体潤滑剤であるパーフルオロポリエーテル
化合物がディスク表面に塗布されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】磁気記録媒体は、その
使用時においてディスク媒体が停止状態から急速に回転
加速され、これに伴い、浮上ヘッドスライダに浮力が与
えられてヘッドは浮上する。使用後に電源が切断される
とディスク媒体を回転させているモータが停止し、ヘッ
ドと媒体とが高速で接触を起こして摺動する。
【0005】ところが、近年、面記録密度を高めるため
にヘッドの低浮上化とディスク回転の高速化が求められ
ており、媒体基板はより平滑になる方向にある。動摩擦
係数を低減するために液体潤滑膜を設けることは非常に
有効であるが、液体潤滑膜を厚くしていくと、ヘッドと
ディスクとの間に液体潤滑剤の表面張力によるマイクロ
メニスカスが形成されて、吸着現象(sticking)が生じる
ことが知られている。このため静摩擦係数が増加し、往
々にしてヘッドがディスクに張り付いたまま動作不能と
なることが指摘されている。すなわち、ヘッドの飛行高
さを低下させるために基板を平滑にするに従い、液体潤
滑剤では上記吸着現象が非常に発生し易くなるという深
刻な欠点があり、また、吸着を防ぐために膜厚を減ずる
と充分な耐久性が得られなくなるという問題がある。こ
れらの現象を回避するために、メニスカスを作らない固
体の潤滑剤が望まれ、以前から高級脂肪酸やその金属塩
等が提案されている。
【0006】しかしながら、これらの固体潤滑剤は、常
温で固体状態が安定相であるため、ディスク上に塗布し
た場合に塗膜の一部が結晶化して凝集しやすいという問
題があった。特に基板が平滑化すると凝集の傾向は著し
い。凝集が発生すると被膜厚みが不均一になり、ヘッド
とディスクが直接接触する可能性を高めるとともに、ヘ
ッド汚れの原因となったり、ヘッドの飛行不安定化の原
因となる恐れがある。
【0007】また、ディスクの回転速度が大きくなるに
従い、潤滑剤が揮散し膜厚が減少するスピンオフと呼ば
れる現象も問題となる。スピンオフによる潤滑剤膜厚の
減少は耐久性を低下させることになり、好ましくない。
【0008】固体潤滑剤の凝集を防ぎ、スピンオフを抑
えるためには、潤滑剤分子を基板と有効に結合させ固着
する必要がある。潤滑層分子の結合力を高める方策とし
ては、例えばアルキルシランをポリマー化する方法(特
開平2−103721号、特開平2−103722号)
が提案されている。しかしながら、従来の方法による潤
滑層は、固着化されることにより分子の動きが抑制さ
れ、潤滑剤を固着化することが潤滑性能とトレードオフ
の関係となりやすいことが指摘されている。磁気記録媒
体の性能向上に対する要求は厳しく、従来の構成では十
分な特性であるとはいえず、特に高湿度下における潤滑
性、耐摩耗性、耐蝕性およびスティクション特性等を含
めた長期にわたる耐久性において一層の改善が望まれて
いる。
【0009】本発明は、厳しい条件下においても耐久性
に優れた潤滑層を構築することによって、長年月の使用
に耐える高記録密度の磁気記録媒体を提供することにあ
る。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、非磁性
基板上に磁性層、潤滑層を順次備えた磁気記録媒体にお
いて、潤滑層が極性官能基を有する鎖状潤滑剤分子と多
座配位子とを含み、該鎖状潤滑剤分子を多座配位子に対
してその分子数比が1より大きい割合で含有する磁気記
録媒体により達成される。
【0011】本発明によれば、固体基板上に密着した多
座配位子あるいは多座配位子に取り込まれた金属イオン
によって、潤滑剤分子が水素結合、イオン結合などの静
電相互作用により固定化されることにより固体基板上に
固着される。その結合様式が可逆的であるため、多座配
位子に対して過剰の潤滑剤分子を存在させることによっ
て、固着された潤滑剤分子が周囲に存在する過剰の潤滑
剤分子と速やかに交換反応をすることが可能である。潤
滑剤分子と過剰の潤滑剤分子を含めた潤滑剤分子全体と
して効果的に基板上に固着化することができる。これよ
り潤滑剤の凝集を防ぎ、均一薄膜構造を長期間保持する
ことができる。また例えば、ヘッドとの衝突等で潤滑剤
分子が失われるような事態が起きた場合にも、周囲の潤
滑剤分子が速やかに潤滑剤の失われた箇所を被うことが
でき、より耐久性に優れた自己修復性を有する潤滑層を
実現することができる。
【0012】以下、本発明を更に詳細に説明する。図1
は、本発明による磁気記録媒体の構成を示すものであ
り、非磁性基板1上に磁性層2、保護膜3、潤滑層4が
順次形成された磁気記録媒体である。保護膜3は必要に
応じて設ければよく、潤滑層を磁性層2の表面に直接形
成してもよい。ここで潤滑層4は例えば図3に示すよう
に、ディスク上に固着した多座配位子5によって、多座
配位子に対して複数の潤滑剤分子11が固定化されてい
るホストゲスト錯体系を形成する。
【0013】非磁性基板としては、通常、ニッケル・リ
ン層が形成されたアルミニウム合金板またはガラス基板
が用いられるが、そのほかセラミック基板、カーボン基
板、樹脂基板等を用いることもできる。磁性層は、例え
ばコバルトまたはCoP系合金、CoNiP系合金、C
oNiCr系合金、CoNiPt系合金、CoCrPt
系合金、CoCrTa系合金、CoCrPtTa系合金
等のコバルト合金等であり、非磁性基板上に必要に応じ
て下引層を設けたのち、無電解メッキ法、スパッタリン
グ法等により形成される。磁性層の膜厚は、磁気記録媒
体として要求される特性により決定され、通常、200
〜1500Åである。本発明の潤滑層を適用する場合、
磁性層上の保護膜は、必ずしも不可欠のものではなく、
磁性膜の硬度や弾性率等の物理物性を鑑みて、必要に応
じて形成される。保護膜としては炭素質膜、酸化物膜、
窒化物膜、ホウ化物膜等が用いられ、スパッタリング
法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法等により
形成される。保護膜として好ましく用いられるのは、無
定形炭素、水素化カーボン等の炭素質膜であり、通常、
50〜500Å、好適には、100〜300Åの膜厚で
用いられる。保護膜は、潤滑層を形成する前に、必要に
応じて紫外線照射等の表面処理を施しておいてもよい。
【0014】本発明において潤滑層を構成する潤滑剤分
子は、潤滑作用を担う分子骨格および多座配位子または
金属イオンと結合するための結合サイトとして機能する
極性官能基を有するものが用いられる。潤滑作用を担う
分子骨格としては、例えば、分岐鎖状または直鎖鎖状の
飽和または不飽和の化合物、芳香族残基やヘテロ原子を
含む化合物、また結合がアルキル鎖またはポリエーテル
鎖等の種類によらず、潤滑作用を有するものであれば高
級脂肪族に限らず選択することができる。長鎖部を構成
する有機基中にヘテロ原子を含まない場合は、直鎖部分
の炭素原子数が12以上24以下であるものが好まし
い。直鎖部分の炭素原子数が12未満になると耐久性が
不十分のなり、炭素原子数が24を越えると溶媒への溶
解性に問題が生じる事がある。長鎖炭素骨格は通常炭化
水素より構成されるが、部分的にフッ化炭素を有してい
てもよい。
【0015】具体的には、例えばステアリン酸等に代表
されるカルボキシル基を有する長鎖脂肪族類、β−
(N,N−ジヘプタデシルアミノカルボニル)プロピオン
酸等のジアルキル化合物、ステアリルアミン等に代表さ
れる長鎖脂肪族アミン類、リン酸ジオレイルエステル等
のリン酸長鎖脂肪族エステル類、ジチオリン酸長鎖脂肪
族エステル類、あるいは長鎖脂肪族スルホン酸類、長鎖
脂肪族の硫酸エステル類、ステアリルアルコールなどに
代表される長鎖脂肪族アルコール類等を用いることがで
きる。
【0016】また、金属イオンあるいは多座配位子との
結合サイトとなる極性官能基としては、金属イオンと対
イオンを形成するようなカウンターアニオンとなりうる
もの、あるいはそのものが多座配位子と静電相互作用で
結合するものであればよく、具体的には、水酸基、カル
ボキシル基等の含酸素極性官能基、アミノ基、イミノ基
等の含窒素極性官能基、リン酸基、リン酸エステル基等
の含リン極性官能基、あるいはメルカプト基、スルホン
酸基、スルホン酸エステル基等の含硫黄極性官能基等の
群から用いることができる。
【0017】多座配位子にトラップされる金属としては
特に制限はなく、通常はNa、K、Rb等のアルカリ金
属、Mg、Cs、Sr、Ba等のアルカリ土類金属、A
l、Sn、Pb等の典型金属、Ag、Cu、Fe等の遷
移金属等が用いられる。多座配位子が環状配位子でその
空孔の直径が2.5〜3.5Å程度である場合は、特に
K、Ba、Ag、Cu等が好ましい。
【0018】多座配位子としては、ポリエーテル類、ポ
リアミン類、あるいはポリペプチド等も有効であるが、
潤滑剤分子あるいは潤滑剤分子を固着するための金属イ
オンをより効果的にトラップするためには環状多座配位
子が好ましい。また、環状構造の骨格で分子としての柔
軟性を付与するため、環を構成する原子のうち特にドナ
ー原子は、sp3電子軌道からなる孤立電子対を有して
いることが望ましい。ドナー原子としては例えば酸素原
子、窒素原子、硫黄原子等が挙げられ、なかでも酸素原
子が好ましく用いられる。環状骨格として具体的にはク
ラウンエーテルと総称される環状エーテル類、クリプタ
ンドまたはクリプテートと総称される環状エーテルアミ
ン類、環状アミン類、環状ポリペプチドおよびこれらの
化学修飾体などが用いられ、なかでもクラウンエーテル
やクリプタンド等の環状骨格は特に有効である。
【0019】これらの多座配位子は、金属イオンあるい
は有機イオンと強い錯体を形成し、例えば、クラウンエ
ーテルやクリプタンド等の環状配位子は、その内孔にO
やNの孤立電子対を向け、金属イオン等に対して強い親
和性を有するために、その錯体形成の平衡が大きく錯体
形成側に傾き、極めて強く金属イオンを取り込むことが
できる。すなわち、これらの環状配位子は孤立電子対に
関する静電相互作用を主な駆動力としてOやN等がドナ
ー原子として配位し、金属陽イオンを効果的に内孔に取
り込む。これらの多座配位子は、単座配位子に比べる
と、OやN等のドナー原子が最初からメチレンブリッジ
でつながれているため、カチオンのまわりに配位すると
き新たなドナー間の反発はほとんどなく、エンタルピー
的に錯形成が有利となり、また、配位子が規則正しく配
列しているためにエントロピー的にも優れているという
大きな特長がある。環状の多座配位子以外に直鎖状の多
座配位子も有効であるが、一般に環状のものは直鎖状の
ものよりも錯体の安定性が増大することが知られてい
る。これは、カチオンを取り囲むとき、直鎖状の多座配
位子の場合には、単座配位子に比べてはるかに優れてい
るとはいえ、両末端のドナー原子間の静電的および立体
的反発があることや不利なエントロピー変化のためであ
ろうと考えられる。上記の環状配位子については幾つも
の総説があり、例えば代表的なクラウンエーテル、クリ
プタンドおよびこれらの類縁体について、その合成法、
構造、取り込みカチオン一覧の詳細な表がJ.J.Christen
sen 等により Chem.Revs.,74, 351 (1974). に記載され
ている。
【0020】このように特異的に安定な錯体を形成する
ホストゲスト錯体を利用して、潤滑剤分子と固体基板に
密着した多座配位子(ホスト化合物)との錯体を形成す
ることにより、潤滑剤分子を静電相互作用により基板上
に固着することができる。
【0021】この潤滑剤分子の固定は静電相互作用によ
る可逆的なものであり、潤滑剤分子は常にある特定の多
座配位子上にいるわけではなく、他の潤滑剤分子と交換
反応を起こしながら別の多座配位子上に移動していると
みられる。多座配位子あるいは多座配位子にトラップさ
れている金属イオンに対して、潤滑剤分子が複数存在す
る場合には、この過剰の潤滑剤分子も交換反応に等価に
加わることができるものと考えられる。この交換反応は
溶液系におけるNMR法によって確認することができ
る。例えば、18−クラウン−6およびステアリン酸カ
リウムによるホストゲスト錯体系に過剰のステアリン酸
を添加すると、K+のカウンターアニオンであるステア
レートとフリーのステアリン酸とが極めて速やかに交換
反応を起こしていることが確認される。カルボキシル基
に隣接するメチレンプロトンのシグナルの化学シフト
は、ステアリン酸では2.35ppmに観測されるが、
+のカウンターアニオンであるステアレートにおいて
は2.20ppmに観測される。従って、もしこのステ
アレートとステアリン酸とが交換反応をしなければ、こ
れらのシグナルはそれぞれ独立に観測されるはずであ
る。ところが、実際にはこれらのシグナルは独立には現
れず、例えばステアレートとステアリン酸の割合が1:
1(つまりK+に対して2等量のステアリン酸)の場
合、シグナルは独立には現れず、ただ1種の化学シフト
が2者の中間の値である2.28ppmに観測される。
すなわち、ステアレートとステアリン酸の交換反応は極
めて速く、NMR法の観測周波数(この例では300M
Hz)以上のスピードで交換反応していることがわか
る。添加するフリーのステアリン酸の量を増加していっ
た場合、徐々にステアリン酸単独での化学シフト値に近
付くが、いずれの場合にもただ1種のシグナルが観測さ
れる。図2は添加するフリーのステアリン酸の量を増加
していった場合のカルボキシル基に隣接するメチレンプ
ロトンのシグナルの化学シフトを示す。すなわち、フリ
ーのステアリン酸の量を増やしていった場合にも極めて
速やかにステアレートとステアリン酸とが交換反応して
いることがわかる。
【0022】この交換反応を利用して、自己修復性に関
し原理的にすぐれた潤滑層を構築することが可能とな
る。すなわち、図3に示すように多座配位子6に対して
分子数で過剰の潤滑剤化合物11を存在させることによ
って、基板表面に添着した多座配位子上に固着された潤
滑剤分子が周囲に存在する過剰の潤滑剤分子と速やかに
交換反応をすることが可能であることから、過剰の潤滑
剤分子をも含めた潤滑剤分子全体として効果的に基板上
に固着化することができるため、潤滑剤の凝集を防ぐだ
けでなく、例えば、ヘッドとの衝突等でいったん潤滑剤
分子が失われるような事態が起きた場合にも、周囲の潤
滑剤分子が速やかに潤滑剤の失われた箇所を被うことが
可能となり、より耐久性に優れた自己修復性を有する潤
滑層を実現することができる。ただし、多座配位子に対
する潤滑剤分子の割合があまりに大きすぎると、潤滑剤
分子の凝集抑制力に支障が出ることもあるため、多座配
位子と潤滑剤分子の組合せや、用いる環境により決めら
れる。多座配位子に対する潤滑剤分子の割合は、潤滑剤
分子が1より大きい割合で過剰に存在すればよく、通常
2以上8以下、なかでも2以上4以下の範囲であれば、
凝集抑制に関しての問題もなく、潤滑特性、耐久性に優
れた潤滑層とすることができる。
【0023】これらのホストゲスト錯体を含む潤滑剤の
固体基板への塗布方法としては、通常、上記の多座配位
子と潤滑剤化合物とを溶解した溶液、あるいはそれぞれ
の溶液に固体基板を浸漬することにより行われるが、固
体基板表面に該溶液をしみこませたテープ等を荷重をか
けて接触させて被膜を形成する方法、固体基板上でパッ
ドを回転させながら添着させる方法、またはスプレー法
やLB膜法などを用いることができる。塗布液の濃度
は、溶質の種類により、また用いる溶媒の種類により異
なるが、通常、溶質の溶液中濃度として0.1〜5g/
lで用いられる。ホストゲスト錯体の特長として、一般
に有機溶媒に可溶性のものが多く、本発明の潤滑層を形
成させるための溶媒としては、汎用の有機溶媒を用いる
ことが可能である。例えば、ステアリン酸カリウムはク
ロロホルムにはほとんど溶解しないが、18−クラウン
−6を加えると、クラウンエーテルがカリウムイオンを
そのなかに取り込んで可溶化するため、よく溶解するよ
うになる。
【0024】
【実施例】次に本発明を実施例によりさらに具体的に説
明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施
例に限定されるものではない。 実施例1 アルミニウム合金の基板上に、スパッタリング法により
クロム下地層、コバルト合金の磁性層および炭素保護膜
を形成した直径3.5インチの磁気ディスクををステア
リン酸カリウムおよび4,4’−ジアミノジベンゾ−1
8−クラウン−6をそれぞれ1mmol/lの濃度で含
むクロロホルム溶液、あるいはこの溶液にさらにステア
リン酸が4mmol/lの濃度で含まれるクロロホルム
溶液を用いて、ディスクの表面にディッピング法により
潤滑膜を形成した。
【0025】4,4’−ジアミノジベンゾ−18−クラ
ウン−6は、E.Shchori 等の方法 (J.Am.Chem.Soc., 9
5, 3842 (1973)) を参考に4,4’−ジニトロジベンゾ
−18−クラウン−6をヒドラジンを用いて還元するこ
とにより、90%の単離収率で得た。4,4’−ジニト
ロジベンゾ−18−クラウン−6は、 W.M.Freigenbaum
等の方法 (J.Polym.Sci., Part A1, 9, 817 (1971).)
を参考にして、市販のジベンゾ−18−クラウン−6を
ニトロ化することにより、81%の単離収率で得た。
【0026】潤滑層を形成したそれぞれのディスクにつ
いて、潤滑性能試験と凝集性試験を行なった。潤滑性能
試験としては、薄膜ヘッドを用いて、荷重9.5gf、
摺動線速0.32m/sec(半径30mm、100r
pm)で連続摺動試験を行ない、連続摺動2時間後の摩
擦力を測定した。凝集性試験としては、温度25°C、
湿度40%の環境下にディスクを放置し、光学顕微鏡で
凝集や結晶の発生を観察した。また水に対する接触角を
測定した。結果を表1に示す。
【0027】実施例2 実施例1と同様のディスクを用い、4,4’−ジアミノ
ジベンゾ−18−クラウン−6を1mmol/lの濃度
で、ステアリルアミンをそれぞれ1、2、および4mm
ol/lの濃度で含む各クロロホルム溶液を用いて、デ
ィッピング法により該ディスクの表面に潤滑膜を形成し
た。ここで、例えばステアリルアミン2mmol/lの
場合は、過剰ステアリルアミン濃度1mmol/lとな
る。潤滑膜を形成したディスクについて、実施例1と同
様に潤滑性能試験と凝集性試験を行ない、また水に対す
る接触角を測定した。結果を表2に示す。
【0028】実施例3 実施例1と同様のディスクを用い、β−(N,N−ジヘ
プタデシルアミノカルボニル)プロピオン酸を2mmo
l/l、水酸化カリウムおよび4,4’−ジアミノジベ
ンゾ−18−クラウン−6をそれぞれ1mmol/lの
濃度で含むクロロホルム溶液を用いて、ディッピング法
によりディスクの表面に厚さ29Åの潤滑膜を形成し
た。潤滑膜を形成したディスクについて、実施例1と同
様に潤滑性能試験と凝集性試験を行なった。結果を表3
に示す。
【0029】実施例4 実施例1と同様のディスクを用い、β−(N,N−ジヘ
プタデシルアミノカルボニル)プロピオン酸を2mmo
l/l、水酸化カリウムおよびサイクロイヌロヘキサオ
ースをそれぞれ1mmol/lの濃度で含むクロロホル
ム溶液に浸し、ディッピング法により該ディスクの表面
に厚さ18Åの潤滑膜を形成した。潤滑膜を形成したデ
ィスクについて、実施例1と同様に潤滑性能と凝集性の
試験を行なった。結果を表3に示す。
【0030】実施例5 実施例1と同様のディスクを用い、2−デシルトリデカ
ン酸を2mmol/l、水酸化カリウムおよびサイクロ
イヌロヘキサオースをそれぞれ1mmol/lの濃度で
含むクロロホルム溶液に浸し、ディッピング法により該
ディスクの表面に厚さ12Åの潤滑膜を形成した。潤滑
膜を形成したディスクについて、実施例1と同様に潤滑
性能試験と凝集性試験を行なった。結果を表3に示す。
【0031】比較例1 実施例1と同様のディスクを用い、ステアリン酸カリウ
ムを1mmol/lの濃度で含むクロロホルム溶液を用
いて、ディッピング法によりディスクの表面に厚さ16
Åの潤滑膜を形成した。潤滑膜を形成したディスクにつ
いて、実施例1と同様に潤滑性能試験と凝集性試験を行
なった。結果を表4に示す。
【0032】比較例2 実施例1と同様のディスクを用い、β−(N,N−ジヘ
プタデシルアミノカルボニル)プロピオン酸を1mmo
l/lの濃度で含むクロロホルム溶液を用いて、ディッ
ピング法により該ディスクの表面に厚さ28Åの潤滑膜
を形成した。この潤滑膜を形成したディスクについて、
実施例1と同様に潤滑性能試験と凝集性試験を行なっ
た。結果を表4に示す。
【0033】比較例3 実施例1と同様のディスクを用い、2−デシルトリデカ
ン酸を2mmol/lの濃度で含むクロロホルム溶液を
用いて、ディッピング法により該ディスクの表面に厚さ
20Åの潤滑膜を形成した。この潤滑膜を形成したディ
スクについて、実施例1と同様に潤滑性能試験と凝集性
試験を行なった。結果を表4に示す。
【0034】比較例4 実施例1と同様のディスクを用い、ステアリルアミンを
3mmol/lの濃度で含むクロロホルム溶液を用い
て、ディッピング法により該ディスクの表面に厚さ25
Åの潤滑膜を形成した。この潤滑膜を形成したディスク
について、実施例1と同様に潤滑性能試験と凝集性試験
を行なった。結果を表4に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】表1に示すように、いずれの系も膜はその
均一性を長期間にわたり保持することができる。これに
対してステアリン酸単独のクロロホルム溶液系から同様
にして形成された潤滑層の接触角は50度であり、1日
以内に膜の不均一化が観測された。これより、ステアリ
ン酸カリウムおよび4,4’−ジアミノジベンゾ−18
−クラウン−6系にさらに過剰のステアリン酸が共存す
る潤滑層は、過剰のステアリン酸も凝集等を起こすこと
なく固定化され、潤滑膜においてアルキル鎖の密度が高
まることにより、撥水性が向上したものと考えられる。
膜の撥水性が向上することは、スティクションの大きな
原因であるヘッド/ディスク間における水のマイクロメ
ニスカス形成が低減できることを意味している。
【0040】表2から、水に対する接触角は、ステアリ
ルアミンおよび4,4’−ジアミノジベンゾ−18−ク
ラウン−6を含むクロロホルム溶液系で、ステアリルア
ミンが過剰に存在する程接触角が高くなる。過剰のステ
アリルアミンが共存することにより、潤滑膜におけるア
ルキル鎖の密度が高くなり、実施例1と同様に撥水性が
向上したものと考えられる。
【0041】
【発明の効果】本発明によれば、薄膜で優れた潤滑性・
耐摩耗性を有し、それを長期間維持することができる潤
滑層を有する磁気記録媒体が得られる。本発明により潤
滑層を形成された磁気記録媒体は、特にヘッドの低浮上
化に対応した平滑な基板を用いた場合に、液体潤滑剤の
ように吸着を発生させることがなく、薄い膜厚で良好な
潤滑性と充分な耐久性を有する。また、固体潤滑剤に特
有な凝集の問題がない潤滑層を備えた、長期にわたり信
頼性の高い磁気記録媒体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気記録媒体の概念断面図である。
【図2】4、4`−ジアミノジベンゾ−18−クラウン
−6およびステアリン酸カリウムによるホストゲスト錯
体系に添加するフリーのステアリン酸の量を増やしてい
った場合におけるカルボキシル基に隣接するメチレンプ
ロトンのシグナルの化学シフトを示す。
【図3】本発明の磁気記録媒体におけるホストゲスト錯
体型潤滑層の潤滑剤分子の交換反応の原理を、ステアリ
ン酸カリウムを含むホストゲスト錯体系に過剰のステア
リン酸を添加した系を例にして示した概念図である。
【符号の説明】
1 非磁性基板 2 磁性層 3 保護膜 4 潤滑層 5 ディスク表面 6 多座配位子 7 金属カチオン 8 カウンターアニオン(カルボキシレート) 9 潤滑骨格 10 フリーのステアリン酸 11 潤滑剤化合物
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C10M 105:68 105:60) C10N 30:00 30:06 40:18 70:00

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】非磁性基板上に磁性層、潤滑層を順次備え
    た磁気記録媒体であって、該潤滑層が極性官能基を有す
    る鎖状潤滑剤分子と多座配位子とを含み、該鎖状潤滑剤
    分子を多座配位子に対して、その分子数比が1より大き
    い割合で含有することを特徴とする磁気記録媒体
  2. 【請求項2】極性官能基を有する鎖状潤滑剤分子を、多
    座配位子に対して、その分子数比が2以上8以下の割合
    で含有することを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒
  3. 【請求項3】多座配位子が、環状にドナー原子が配列し
    た環状配位子であることを特徴とする請求項1記載の磁
    気記録媒体
  4. 【請求項4】環状配位子におけるドナー原子がsp3
    子軌道からなる孤立電子対を有することを特徴とする請
    求項3記載の磁気記録媒体
  5. 【請求項5】環状配位子におけるドナー原子が酸素原子
    を含むことを特徴とすることを特徴とする請求項4記載
    の磁気記録媒体
  6. 【請求項6】環状配位子がクラウンエーテル誘導体、ま
    たはその類縁体であることを特徴とする請求項3記載の
    磁気記録媒体
  7. 【請求項7】多座配位子が金属イオンを取り込んだ金属
    錯体であることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒
  8. 【請求項8】金属錯体がホストゲスト錯体となっている
    ことを特徴とする請求項7記載の磁気記録媒体
  9. 【請求項9】多座配位子が有機イオンあるいは有機極性
    基を取り込んだ分子団を形成することを特徴とする請求
    項1記載の磁気記録媒体。
  10. 【請求項10】極性官能基が鎖状潤滑剤分子の末端に位
    置することを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体
  11. 【請求項11】請求項7において、多座配位子に取り込
    まれた金属イオンに、この金属イオンと対イオンを形成
    するカウンターアニオンを結合末端とする潤滑作用を担
    う分子骨格が結合した潤滑剤分子を含むことを特徴とす
    る磁気記録媒体
  12. 【請求項12】潤滑層が多座配位子と、多座配位子に対
    して過剰の極性官能基を有する鎖状潤滑剤分子とを含
    み、遊離の該鎖状潤滑剤分子が多座配位子に結合した鎖
    状潤滑剤分子と交換反応して自己修復能を発現すること
    を特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体
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