JPH07121867A - 潤滑層の形成方法および磁気記録媒体 - Google Patents

潤滑層の形成方法および磁気記録媒体

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JPH07121867A
JPH07121867A JP26508093A JP26508093A JPH07121867A JP H07121867 A JPH07121867 A JP H07121867A JP 26508093 A JP26508093 A JP 26508093A JP 26508093 A JP26508093 A JP 26508093A JP H07121867 A JPH07121867 A JP H07121867A
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lubricating layer
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JP26508093A
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Hideki Murayama
英樹 村山
Fumiaki Yokoyama
文明 横山
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Mitsubishi Chemical Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 潤滑剤の凝集を抑制し、潤滑性、耐摩耗性を
長期間維持することができる潤滑層の形成方法を提供す
る。 【構成】 固体表面にホスト分子としての多座配位子か
らなる層を形成し、その上にゲスト分子としての潤滑剤
分子からなる層を形成し、多座配位子と潤滑剤分子から
なるホストゲスト錯体を構成することにより潤滑層を形
成する方法であって、潤滑剤(ゲスト分子)が、固体表
面に固着された多座配位子(ホスト化合物)によって静
電相互作用で固定されることにより、凝集やスピンオフ
等を引き起こさない充分な強さの相互作用で固体表面に
配向性よく固着され、単分子膜程度の薄い膜厚で、優れ
た潤滑性、耐摩耗性を有し、耐久性に優れた潤滑層を実
現することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高速で摺動する固体接
触界面において薄膜で潤滑機能を発現する潤滑層の形成
方法に関するものである。具体的には、情報産業等で利
用される高記録密度の磁気記録媒体における潤滑層の形
成、及び該潤滑層を利用した薄膜磁気記録ディスク等の
磁気記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】情報産業等で利用される高記録密度の磁
気記録媒体の代表的な例である薄膜型磁気記録媒体は、
通常、磁性金属またはその合金をメッキ、蒸着またはス
パッタリング法等によって非磁性基板上に披着して製造
される。実際の使用時においては磁気ヘッドと磁気記録
媒体とが高速で接触摺動するので、摩耗損傷を受けた
り、磁気特性の劣化を起こしたりする。
【0003】このような欠点を解決する方法として、磁
性層上に保護膜や潤滑層を設けることによって接触摺動
の際の静/動摩擦を極力低減させ、耐摩耗性を向上させ
ることが提案されている。保護膜としては、炭素質膜、
酸化物膜、窒化物膜及びホウ化物膜等が利用される。潤
滑剤としては液体潤滑剤または固体潤滑剤が使用される
が、一般的には液体潤滑剤であるパーフルオロポリエー
テル化合物がディスク表面に塗布されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】磁気記録媒体は、その
使用時においてディスク媒体が停止状態から急速に回転
加速され、これに伴い、浮上ヘッドスライダに浮力が与
えられてヘッドは浮上する。使用後に電源が切断される
とディスク媒体を回転させているモータが停止し、ヘッ
ドと媒体とが高速で接触を起こして摺動する。
【0005】ところが、近年、面記録密度を高めるため
にヘッドの低浮上化とディスク回転の高速化が求められ
ており、媒体基板はより平滑になる方向にある。動摩擦
係数を低減するために液体潤滑膜を設けることは非常に
有効であるが、液体潤滑膜を厚くしていくと、ヘッドと
ディスクとの間に液体潤滑剤の表面張力によるメニスカ
スが形成されて、吸着現象(sticking)が生じることが知
られている。このため静摩擦係数が増加し、往々にして
ヘッドがディスクに張り付いたまま動作不能となること
が指摘されている。
【0006】すなわち、ヘッドの飛行高さを低下させる
ために基板を平滑にするに従い、液体潤滑剤では上記吸
着現象が非常に発生し易くなるという深刻な欠点があ
り、また、吸着を防ぐために膜厚を減ずると充分な耐久
性が得られなくなるという問題がある。これらの現象を
回避するために、メニスカスを作らない固体の潤滑剤が
望まれ、以前から高級脂肪酸やその金属塩等が提案され
ている。
【0007】しかしながら、これらの固体潤滑剤は、常
温で固体状態が安定相であるため、ディスク上に塗布し
た場合に塗膜の一部が結晶化して凝集しやすいという問
題があった。特に、基板が平滑化すると凝集の傾向は著
しい。凝集が発生すると被膜厚みが不均一になり、ヘッ
ドとディスクが直接接触する可能性を高めるとともに、
ヘッド汚れの原因となったり、ヘッドの飛行不安定化の
原因となる恐れがある。固体潤滑剤の凝集を防ぎ、また
スピンオフを抑えるためには、潤滑剤分子を基板と有効
に結合させ固着する必要があり、潤滑剤分子を基板に固
着する方策としては、長鎖アルキル基をシロキサン結合
によって固定する方法(特開平2−103721号、特
開平2−103722号)が提案されている。しかしな
がら、共有結合により潤滑剤を固定する方法では分子の
動きが抑制され、潤滑性が不十分である。これは、潤滑
剤を固着することが潤滑性能とトレードオフの関係とな
ってしまっているためである。
【0008】本発明は、薄膜であっても優れた潤滑性を
発現し、潤滑剤分子が凝集することのない潤滑層を得る
こと、すなわち、潤滑剤を固着することが潤滑性能とト
レードオフの関係とならず、耐久性にも優れた潤滑層を
得ることを目的とし、潤滑システムを分子・原子オーダ
ーで設計することにより達成されたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、ポリマ
ー、炭素、酸化物、窒化物、ホウ化物、金属などの種々
の固体表面に、ゲスト分子としての潤滑剤分子とこれと
錯体を形成するホスト化合物としての多座配位子とから
なるホストゲスト錯体を含む潤滑層を形成する方法を提
供することにある。
【0010】本発明の他の目的は、潤滑剤分子と多座配
位子とからなるホストゲスト錯体を含む潤滑層を表面に
形成した薄膜磁気記録媒体を提供することにある。すな
わち、本発明による潤滑層は、固体表面に密着したホス
ト化合物によって、ゲスト分子である潤滑剤分子がイオ
ン結合などの静電相互作用により固定されることによ
り、配向性良く固体表面に吸着または固着され、またそ
の結合様式が可逆的であるため、潤滑剤の凝集を防ぐだ
けでなく、より耐久性に優れた潤滑性能を実現すること
ができる。
【0011】本発明により表面にホストゲスト錯体を含
む潤滑層が形成された磁気記録媒体は、潤滑性および耐
磨耗性に優れ、ヘッドの浮上高さを低くすることができ
るので、ディスクのデータ記録密度を増大させることが
可能となるとともに、長期にわたり信頼性の高いディス
クシステムを構築することが可能となる。以下、本発明
を詳細に説明する。
【0012】図1は、本発明により潤滑層を表面に形成
した磁気記録媒体の構成を示すものである。非磁性基板
1上に磁性層2、保護膜3、潤滑層4が順次形成された
磁気記録媒体において、潤滑層4がホストゲスト錯体か
らなり、ディスク上に固着したホスト化合物によって潤
滑剤分子がゲスト分子として固定されている。図1にお
いて保護膜3は必要に応じて設ければよく、潤滑層を磁
性層2の表面に直接形成してもよい。
【0013】潤滑層を磁気記録媒体に形成するにあた
り、非磁性基板としては、通常、無電解メッキ法により
形成したニッケル・リン層を設けたアルミニウム合金板
またはガラス基板が用いられるが、そのほかにもセラミ
ック基板、樹脂基板等を用いることもできる。コバル
ト、コバルト合金等の薄膜磁性層は、非磁性基板上に、
直接または必要に応じて下引層を介して、無電解メッキ
法、スパッタリング法等により形成される。薄膜磁性層
の膜厚は、磁気記録媒体として要求される特性により決
定され、通常、200〜1500Åである。本発明の潤
滑層を適用する場合、薄膜磁性層上の保護膜は、必ずし
も不可欠のものではなく、磁性膜の硬度や弾性率等の物
理物性を鑑みて、必要に応じて形成される。保護膜とし
ては炭素質膜、酸化物膜、窒化物膜、ホウ化物膜等が用
いられ、スパッタリング法、イオンプレーティング法、
プラズマ重合法等により形成される。保護膜として好ま
しく用いられるのは、無定形炭素、水素化カーボン等の
炭素質膜であり、通常、50〜500Å、好適には、1
00〜300Åの膜厚で用いられる。
【0014】潤滑層を構成するホストゲスト錯体におい
て、ゲスト分子としての潤滑剤分子は、潤滑作用を担う
分子骨格とホスト分子と結合するための結合サイトとを
有するものが用いられ、例えば、長鎖脂肪酸の金属塩、
長鎖脂肪族アミン類、長鎖脂肪族アミンの塩等が挙げら
れる。結合サイトに続く長鎖分子骨格は、分岐鎖状また
は直鎖状の飽和または不飽和の高級脂肪族炭化水素鎖、
芳香族残基やヘテロ原子を含む前記高級脂肪族炭化水素
鎖、或いは前記高級脂肪族炭化水素鎖の一部または全部
がポリエーテル鎖を形成している長鎖分子骨格など、潤
滑作用を有するものであれば結合の種類によらず選択す
ることができる。
【0015】ホスト分子としては、金属イオンまたは有
機イオンを効果的に取り込む機能を有する多座配位子が
用いられ、特に、ドナー原子が3個以上あるような化合
物が好適である。例えば、O原子またはN原子をドナー
原子として持つものとして、環状エステル、ポリエーテ
ル類、ポリオール類、ポリアミン類、クラウンエーテル
と総称される環状エーテル類、クリプタンドあるいはク
リプテートと総称される環状エーテルアミン類、環状ア
ミン類、ポルフィリンやフタロシアニン等の大環状配位
子、シクロファン、ポリペプチドおよびこれらの化学修
飾体などが挙げられ、なかでもクラウンエーテルやクリ
プタンド等の環状配位子が特に有効である。また、上記
構造においてO、N原子のかわりに、同様に孤立電子対
を持つS原子をドナー原子とした多座配位子も用いられ
る。
【0016】これらの多座配位子は、金属イオンあるい
は有機イオンと強い錯体を形成し、例えば、クラウンエ
ーテルやクリプタンド等の環状配位子は、その内孔にO
やNの孤立電子対を向け、金属イオン等に対して強い親
和性を有するために、その錯体形成の平衡が102 〜1
10の範囲で錯体形成側に傾き、極めて強く金属イオン
を取り込むことができる。すなわち、これらの環状配位
子は孤立電子対に関する静電相互作用を主な駆動力とし
てOやN等がドナー原子として配位し、金属陽イオンを
効果的に内孔に取り込む。これらの多座配位子は、単座
配位子に比べると、OやN等のドナー原子が最初からメ
チレンブリッジでつながれているため、カチオンのまわ
りに配位するとき新たなドナー間の反発はほとんどな
く、エンタルピー的に錯形成が有利となり、また、配位
子が規則正しく配列しているためにエントロピー的にも
優れているという大きな特長がある。環状の多座配位子
以外に直鎖状の多座配位子も有効であるが、一般に環状
のものは直鎖状のものよりも錯体の安定性が増大するこ
とが知られている。これは、カチオンを取り囲むとき、
直鎖状の多座配位子の場合には、単座配位子に比べては
るかに優れているとはいえ、両末端のドナー原子間の静
電的および立体的反発があることや不利なエントロピー
変化のためであろうと考えられる。上記の環状配位子に
ついては幾つもの総説があり、例えば代表的なクラウン
エーテル、クリプタンドおよびこれらの類縁体につい
て、その合成法、構造、取り込みカチオン一覧の詳細な
表がJ.J.Christensen 等により Chem.Revs.,74, 351 (1
974). に記載されている。また、物質としての安定性の
面から見ると、環状の多座配位子は熱的にも安定なもの
が多く、例えばポルフィリンなどの大環状配位子は50
0°C以上でも安定であることはよく知られている。ま
た、一般にクラウンエーテルも熱的に安定で、例えば、
ジベンゾ−18−クラウン−6は380°Cで蒸留する
ことも可能であることが報告されている(C.J.Pederson
et al., Angev.Chem.,Int'l Ed. 11,16(1972).)。
【0017】錯体形成の際の環状配位子の内孔サイズと
取り込み易いカチオンのサイズとの間には、密接な関係
のあることがわかっている。例えば、18−クラウン−
6の内孔径は2.6〜3.2Åであり、これとほぼ一致
するイオン直径(2.66Å)を持つアルカリ金属イオ
ンのK+ と非常に安定な錯体を形成する(メタノール中
での錯化平衡定数logK=6.05)ことが知られて
いる。
【0018】このように特異的に安定な錯体を形成する
ホストゲスト錯体を利用して、潤滑剤分子(ゲスト分
子)と固体表面に密着した多座配位子(ホスト化合物)
との錯体を形成することにより、潤滑剤分子を静電相互
作用により固体表面に吸着または固着することができ
る。図2は、18−クラウン−6の誘導体およびステア
リン酸カリウムによるホストゲスト錯体が固体基板表面
に固着する様子を示した概念図であり、ゲスト分子中の
カチオンであるK+ がクラウンエーテルの内孔にトラッ
プされ、K+ のカウンターアニオンであるステアレート
が、イオン対としての末端カルボキシル基をトラップさ
れたK+ に向けてクラウンエーテル上に配位することに
なり、静電相互作用により潤滑剤部分(ステアレートの
長鎖アルキル基)がその末端カルボキシル基で基板表面
のクラウンエーテル錯体上に固着され、潤滑剤分子どう
しの凝集を防ぐことができる。一方、ホスト分子である
クラウンエーテルには、適当な化学修飾を施すことによ
り基板表面と固着させることが可能である。その固着様
式は、凝集が生じない程度の基板表面との強い相互作用
を有していれば、共有結合でも静電相互作用でもよい。
また、基板上のクラウンエーテル錯体の側に末端カルボ
キシル基が配位するということは、原理的にはすべての
アルキル鎖部分が基板に対して上を向いて配向すること
を意味しており、潤滑層全体の配向性が向上することと
なって、理想的な潤滑層の構造をとることから、ほぼ単
分子層の膜厚でも優れた潤滑能および耐久性を得ること
ができる。
【0019】ホストゲスト錯体を利用した潤滑層を固体
表面に形成するにあたり、潤滑剤分子と多座配位子を混
合し、予めホストゲスト錯体を形成した溶液を用いて固
体表面に塗布することにより、固体表面との相互作用に
よって、多座配位子が固体表面に吸着または固着し、そ
の上に潤滑剤分子が配位した構成の潤滑層が形成される
が、潤滑剤分子のアルキル鎖が非常に長いものなど立体
障害が無視できない場合には、上記方法では多座配位子
が固体表面に緻密に固着することが困難な場合がある。
【0020】従って、本発明においては、多座配位子の
吸着層または固着層を固体表面に形成した後に、多座配
位子層上に潤滑剤分子の層を形成する。この方法によれ
ば、多座配位子層を固体表面に確実に吸着または固着さ
せた後に、潤滑剤分子とのホストゲスト錯体を形成する
ことができるので、分子量の大きな潤滑剤分子をゲスト
分子として使用する場合のみならず、分子量の比較的小
さな潤滑剤分子を使用する場合も、より確実に緻密な潤
滑層を形成することができる。
【0021】ホスト分子である多座配位子の層を固体表
面に形成するには、通常、多座配位子を溶解した溶液に
固体を浸漬することにより行われるが、固体表面に該溶
液をしみこませたテープ等を荷重をかけて接触させて被
膜を形成する方法、固体表面でパッドを回転させながら
添着させる方法、またはスプレー法などを用いることが
できる。溶液の濃度は、多座配位子の種類により、また
溶媒の種類により異なるが、通常、溶液中濃度として
0.1〜1.5g/lで用いられる。
【0022】固体表面に多座配位子層を形成した後、そ
のまま多座配位子層上に潤滑剤分子の層を形成すること
もできるが、多座配位子層の膜厚が必要以上に厚い場合
には、形成した多座配位子層のうち余剰部分を除去して
固体表面との吸着層または固着層のみ残した後に潤滑剤
分子の層を形成することにより、潤滑層全体としての膜
厚が小さくなり、また、潤滑剤分子と固体表面との多座
配位子層を介した固着力を高めることができる。
【0023】多座配位子層の余剰部分の除去は、通常、
多座配位子を溶解する溶媒を用いて多座配位子層を形成
した固体を溶媒中に浸漬した後引き上げる方法、または
該固体表面を溶媒で洗浄する方法などが採用される。溶
媒としては、多座配位子を溶解する能力を有することが
必要であるが、固体表面に吸着または固着した多座配位
子層を溶離するほどの強力な溶媒の使用は避けるべきで
あり、引き続き潤滑剤層を形成するために使用する潤滑
剤溶液の溶媒と同一の溶媒を使用すれば、潤滑剤層を形
成する際に多座配位子により潤滑剤溶液を汚染すること
がないので工業的に好ましい。
【0024】ゲスト分子である潤滑剤の層を多座配位子
層上に形成するには、通常、潤滑剤を溶解した溶液に多
座配位子層を表面に形成した固体を浸漬することにより
行われるが、該固体表面に該溶液をしみこませたテープ
等を荷重をかけて接触させて被膜を形成する方法、該固
体表面でパッドを回転させながら添着させる方法、また
はスプレー法やLB膜法などを用いることができる。溶
液の濃度は、潤滑剤の種類により、また溶媒の種類によ
り異なるが、通常、錯体の溶液中濃度として0.1〜
1.5g/lで用いられる。
【0025】
【実施例】次に本発明を実施例によりさらに具体的に説
明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施
例に限定されるものではない。 実施例1 平滑なアルミニウム合金の基板上にスパッタリング法に
よりクロム下地層(2000Å)、コバルト合金の磁性
薄膜(400Å)および炭素保護膜(300Å)を形成
した直径3.5インチの磁気ディスクを、4,4’−ジ
アミノジベンゾ−18−クラウン−6を2mmol/l
の濃度(0.781g/l)で含むクロロホルム溶液に
浸した後、引き上げることにより、ディスクの表面に厚
さ14Åの均一な膜を形成した。
【0026】次に、該ディスクを、β−(N,N−ジヘ
プタデシルアミノカルボニル) プロピオン酸カリウムを
2mmol/lの濃度で含むクロロホルム溶液(1.2
6g/l)に浸した後、引き上げ、該ディスクの表面に
厚さ49Åの均一な潤滑層を形成した。膜厚を測定した
ところ、ディスク上の異なる8点(片面)においてほぼ
同一の値であることを確認した。
【0027】潤滑層を形成したディスクについて、潤滑
性能と凝集性の試験を行なった。潤滑性能の試験として
は、薄膜ヘッドを用いて、荷重9.5gf、摺動線速
0.32m/sec(半径30mm、100rpm)で
連続摺動試験を行ない、連続摺動2時間後の摩擦力を測
定した。凝集性の試験としては、温度25°C、湿度4
0%の環境にディスクを表1に記載した期間放置し、光
学顕微鏡で凝集や結晶の発生を観察した。結果を表1に
示す。
【0028】なお、4,4’−ジアミノジベンゾ−18
−クラウン−6は、E.Shchori 等の方法 (J.Am.Chem.So
c., 95, 3842 (1973)) を参考に4,4’−ジニトロジ
ベンゾ−18−クラウン−6をヒドラジンを用いて還元
することにより、90%の単離収率で得た。4,4’−
ジニトロジベンゾ−18−クラウン−6は、 W.M.Freig
enbaum等の方法 (J.Polym.Sci., Part A-1, 9, 817 (19
71).) を参考にして、市販のジベンゾ−18−クラウン
−6をニトロ化することにより、81%の単離収率で得
た。
【0029】実施例2 実施例1と同様のディスクを、4,4’−ジアミノジベ
ンゾ−18−クラウン−6を2mmol/lの濃度
(0.781g/l)で含むクロロホルム溶液に浸した
後、引き上げることにより、ディスクの表面に厚さ16
Åの均一な膜を形成した。次に、該ディスクをクロロホ
ルム液に5分間浸した後、2mm/secの速度でディ
スクを引き上げることにより、ディスクの表面に厚さ7
Åの均一な固着膜を残した。図3に示すように、この固
着膜はその後繰り返し(計3回)クロロホルム液で同様
にしてリンスしても除去されないことから、本実施例で
多座配位子として用いた4,4’−ジアミノジベンゾ−
18−クラウン−6が炭素保護膜上に強固に固着してい
ることがわかる。
【0030】次に、上記工程を経た該ディスクを、β−
(N,N−ジヘプタデシルアミノカルボニル)プロピオ
ン酸カリウムを2mmol/lの濃度(1.26g/
l)で含むクロロホルム溶液に浸した後、引き上げるこ
とにより、ディスクの表面に厚さ28Åの均一な潤滑層
を形成した。潤滑層を形成したディスクについて、実施
例1と同様に潤滑性能と凝集性の試験を行なった。結果
を表1に示す。
【0031】比較例1 実施例1と同様のディスクを用い、β−(N,N−ジヘ
プタデシルアミノカルボニル)プロピオン酸を1mmo
l/lの濃度(0.593g/l)で含むクロロホルム
溶液に浸した後、引き上げることにより、ディスクの表
面に厚さ28Åの潤滑層を形成した。
【0032】潤滑層を形成したディスクについて、実施
例1と同様に潤滑性能と凝集性の試験を行なった。結果
を表1に示す。 比較例2 実施例1と同様のディスクを用い、β−(N,N−ジヘ
プタデシルアミノカルボニル)プロピオン酸カリウムお
よび4,4’−ジアミノジベンゾ−18−クラウン−6
をそれぞれ1mmol/lの濃度(合計で1.02g/
l)の濃度で含むクロロホルム溶液に浸した後、引き上
げることにより、ディスクの表面に厚さ45Åの潤滑層
を形成した。
【0033】潤滑層を形成したディスクについて、実施
例1と同様に潤滑性能と凝集性の試験を行なった。結果
を表1に示す。
【0034】
【表1】 表1のデータから明らかな通り、本発明方法により形成
された潤滑層(実施例1〜2)は、従来の潤滑剤単独の
場合(比較例1)より膜厚が厚い場合(ホスト層が存在
するため若干厚めになる)においても、比較例1に見ら
れるような潤滑層の凝集は抑制されていることが確認さ
れ、また、従来の潤滑剤単独の系より優れた潤滑性・走
行性を有していることが確認された。すなわち、本発明
により形成された潤滑層においては、潤滑剤の固着と潤
滑性能とがトレードオフの関係とならず、固着すること
によってかえって潤滑性能が向上していることがわか
る。
【0035】また、本発明方法により形成された潤滑層
は、潤滑剤分子とクラウンエーテルとのホストゲスト錯
体を予め形成した溶液を用いて固着された潤滑層(比較
例2)と同等以上の潤滑性を示すことがわかった。これ
は、本発明方法により形成された潤滑層の方が比較例2
による方法で形成された潤滑層よりも、より緻密な面密
度で錯体が形成されているものと解釈される。もちろん
固着したそれぞれのホストゲスト錯体は、いずれの場合
も、全体として基板との相互作用の強いクラウンエーテ
ルが基板表面に固着し、その上に潤滑剤分子が配位した
層構成となっているものと考えられる。
【0036】これは、比較例2で形成した潤滑層におけ
るアルキル鎖の配向状態をFTIR−RAS法により解
析したところ、アルキル鎖先端のメチル基に由来するC
H伸縮振動がはっきりと観測され、メチレン鎖のCH伸
縮振動の強度が比較的小さいことから、アルキル鎖が基
板に対して垂直に立ち、良く配向していることが裏付け
られる。膜厚を考慮すれば、この潤滑層は基板側に結合
サイトを向け、アルキル鎖を上に向けて並べた構造の単
分子膜となっているものと考えられ(図1参照)、潤滑
層としてほぼ最適の構造になっているといえる。
【0037】これに対して、従来の潤滑剤単独の系(比
較例1)では、アルキル鎖先端のメチル基のCH伸縮振
動に基く吸収の強度は小さく、メチレン鎖のCH伸縮振
動の強度が大きいことから、アルキル鎖のディスク上で
の配向性は低く、全体としてアルキル鎖が様々な方向を
向いた状態となっていることがわかる。すなわち、本発
明方法によれば、煩雑で生産性に難点のあるLB膜法を
用いなくても、通常の浸漬法により非常に簡便に再現性
よく高配向性の単分子膜を得ることができる。
【0038】
【発明の効果】本発明方法によれば、薄膜(ほぼ単分子
膜の膜厚)で優れた潤滑性・耐摩耗性を有し、しかも潤
滑剤分子が凝集することなくそれを長期間維持すること
ができる潤滑層が得られる。また、本発明方法による潤
滑層を適用した磁気記録媒体は、信頼性が高く、データ
記録密度を増大させることができる。特にヘッドの低浮
上化に対応した平滑な基板を用いた場合に、液体潤滑剤
を使用した場合のように吸着を発生させることがなく、
良好な潤滑性と充分な耐久性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明により形成された潤滑層を有する磁気記
録媒体の概念断面図である。
【図2】本発明のホストゲスト錯体による潤滑層の構成
の原理を、ステアリン酸カリウムと18−クラウン−6
誘導体を例として用いて示した概念図である。
【図3】実施例2において、4,4’−ジアミノジベン
ゾ−18−クラウン−6をディスクに塗布した後、クロ
ロホルム液により繰り返しリンス(5分間浸漬した後、
2mm/secで引き上げ)したときの膜厚の変化を示
すグラフである。
【符号の説明】
1 非磁性基板 2 磁性層 3 保護膜 4 潤滑層

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】固体表面に、金属イオンまたは有機イオン
    を取り込む機能を有する多座配位子を吸着または固着さ
    せて、該固体表面に多座配位子層を形成する工程、およ
    び該多座配位子層上に潤滑剤分子の層を形成し、前記多
    座配位子と潤滑剤分子からなるホストゲスト錯体を構成
    する工程を含むことを特徴とする潤滑層の形成方法
  2. 【請求項2】固体表面に多座配位子層を形成する工程、
    該多座配位子層のうち余剰部分を除去して適当な膜厚と
    する工程、および該多座配位子層上に潤滑剤分子の層を
    形成し、前記多座配位子と潤滑剤分子からなるホストゲ
    スト錯体を構成する工程を含むことを特徴とする請求項
    1記載の潤滑層の形成方法
  3. 【請求項3】請求項1または請求項2記載の方法により
    潤滑層を表面に形成したことを特徴とする磁気記録媒体
JP26508093A 1993-09-28 1993-10-22 潤滑層の形成方法および磁気記録媒体 Pending JPH07121867A (ja)

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