JPH08268784A - セメント系大型焼成建材の製造方法 - Google Patents

セメント系大型焼成建材の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【目的】 セメント系材質がもつ製造の容易さと、焼き
物がもつ意匠性を兼ね備えた、大型建材の製造方法を提
供する。 【構成】 セメント、フラックス成分およびアルミナ
−シリカ質原料を主材とした配合物を混練・成形して得
られた成形素地またはその焼成基材の表面に、遷移金属
成分の水溶液を部分的に塗布後、さらに釉薬を成形素地
またはその焼成基材の表面の全面に塗布し、焼成するこ
とを特徴とするセメント系大型焼成建材の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、意匠性に優れたセメン
ト系大型焼成建材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】家屋の内外装材あるいはエクステリアな
どにタイルが使用されている。タイルは、珪石、粘土、
長石等を主原料にした配合物を成形後、焼成することで
製造される。
【0003】タイルの良さは焼き物の質感に加え、耐久
性、耐候性などに優れていることにある。また、焼成条
件のバラツキによって個々のタイルごとに微妙に異なっ
た色調を持ち、壁面に張り上げた際には、違和感のない
自然な色彩変化を作り出す。しかし、タイルの施工は日
数やコストがかかる上に、特殊技術を持つタイル職人に
頼らなければならないという問題がある。
【0004】そこで、縦横の溝の形成で多数のタイルを
張り合わせた外見を有する大型建材が提案されている。
この大型建材によれば、タイル調の壁面を容易かつ迅速
に施工することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、タイル材質で
の大型建材の製造は、タイル材質が粘土成分を主体にし
ているために、焼成前の強度が小さいことによる製造時
の取り扱いの不便さ、あるいは焼成による収縮や変形が
大きいなどの問題がある。しかも、大型建材では焼成条
件のバラツキによる色調変化がタイルピースではなく、
大型建材ごとに生じるために、自然な色彩変化を得るこ
とができない。
【0006】素地を着色する方法として、顔料の練り込
みがある。しかし、大型建材においては、部分的な発色
の違いを意識して着色させることはきわめて煩雑な工程
を強いられ、生産性に劣る。
【0007】一方、前記の特開平6-48856号公報
に見られるセメント系の不焼成品は、大型建材であって
も製造時の取り扱いが容易であり、収縮や変形も小さ
く、さらに施工を簡略化することができる。しかし、耐
久性および耐候性に劣る。また、表面にタイル調の色付
けが行われているが、ガラス塗装や樹脂塗装によるため
に人工的な外観であることは否めず、焼き物の質感が得
られない。
【0008】本発明は、セメント系材質がもつ製造の容
易さと、焼き物がもつ意匠性を兼ね備えた、大型建材の
製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の特徴とするとこ
ろは、特許請求範囲に記載した通りである。すなわち、
セメント、フラックス成分およびアルミナ−シリカ質原
料を主材とした配合物を混練・成形して得られた成形素
地またはその焼成基材の表面に、遷移金属成分の水溶液
を部分的に塗布後、さらに釉薬を成形素地またはその焼
成基材の表面の全面に塗布し、焼成することを特徴とす
るセメント系大型焼成建材の製造方法の発明である。ま
た、この方法において、成形素地表面の部分的に塗布す
る水溶液を、遷移金属成分とアルカリ金属成分および/
またはアルカリ土類金属成分との水溶液に置換した発明
である。
【0010】セメント系成形素地またはその焼成基材に
対し、遷移金属成分あるいは遷移金属成分とアルカリ金
属成分および/またはアルカリ土類金属成分の水溶液の
塗布のみにおいても、焼成後、発色が得られるが、水溶
液を塗布した部分と塗布しない部分との色調変化が極端
になり、不自然のために焼き物に窯変性など味わいを持
つ意匠性が得られない。
【0011】本発明では上記水溶液を塗布後、成形素地
の表面全体に釉薬を塗布することにより、焼成後、基材
はガラス質の釉層で被われる。その結果、透明度の高い
釉層による反射率や屈折率の影響により、水溶液を塗布
した部分の発色と塗布しない部分との色調変化が緩和さ
れ、同時に、表面の仕上がりは素地の質感を残すことに
より、全体として焼き物の質感を備えた微妙でかつ自然
な色調変化が得られる。また、本発明において、透明釉
層を着色した場合や素地表面が細かな凹凸やラフなどの
荒れた状態を有する場合には、さらに異なったおもむき
の意匠性が得られる。 しかも、基材がセメント系であ
ることで、成形素地が高強度であり、大型長尺板や異形
断面形状の製造が容易である。
【0012】以下、本発明の製造方法をさらに詳しく説
明する。
【0013】成形素地はセメント、フラックス成分、ア
ルミナ−シリカ質無機原料主材とする。セメントの具体
例は、アルミナセメント、フライアッシュセメント、普
通ポルトランドセメント等が挙げられ、その割合は20
〜40重量%が好ましい。20重量%未満では成形素地
の強度に劣り、40重量%を超えると焼成後の強度が劣
る。
【0014】フラックス成分は、焼結剤としての役割を
もつ。具体例としては、各種ガラス粉、フリット、長
石、シラス等が挙げられる。その割合は10〜30重量
%が好ましい。10重量%未満では焼成後の強度低下や
白華現象を招く。30重量%を超えると焼成過多によっ
て施工時の切削加工性に劣る。
【0015】アルミナ−シリカ質無機原料としては、ろ
う石、坑火石、珪石、珪砂、シャモット等が挙げられ
る。その割合は30〜60重量%が好ましい。30重量
%未満では成形性が低下する。60重量%を超えると焼
成後の基材強度が不十分となる。
【0016】本発明における成形素地は以上を基本配合
物とするが、成形方法等に応じて可塑剤、流動化剤、分
散剤等を適宜に選択添加することができる。
【0017】成形素地の製造においては、以上の配合物
に外掛けで10〜20重量%程度の水と必要により使用
する結合剤を添加し、混練後、押し出しやプレス等で所
望の形状に成形し、セメントによる水和硬化による強度
発現後、乾燥させる。必要により、さらにこれを焼成
し、焼成基材とする。ここでの焼成温度は1000〜1
200℃が好ましい。この場合、コスト面から焼成基材
とせず、成形素地のままの状態に後述の水溶液および釉
薬を塗布するのが好ましい。
【0018】こうして得られた成形素地またはその焼成
基材に対し、表面化粧を施すために、まず、遷移金属成
分あるいは遷移金属成分とアルカリ金属および/または
アルカリ土類とが含まれる水溶液を成形素地表面に部分
的に塗布し、ついで、透明釉薬を成形素地表面の全体に
塗布する。
【0019】遷移金属成分は発色としての役割をもつ。
さらにこれに、遷移金属成分とアルカリ金属成分および
/またはアルカリ土類成分を組み合わせた場合、遷移金
属成分の発色に濃淡が生じ、微妙な色彩の変化によっ
て、色調の幅を持たせる効果がある。
【0020】遷移金属成分あるいは遷移金属成分とアル
カリ金属および/またはアルカリ土類金属成分を含む水
溶液は、例えば、これらの金属成分を含む塩化金属水和
物を用いて作成する。塩化金属水和物であることで、水
に容易にかつ均一に溶ける。遷移金属成分の塩化金属水
和物としては、塩化マンガン、塩化コバルト、塩化ニッ
ケル、塩化クロム、塩化第2鉄等の水和物が挙げられ
る。アルカリ金属成分またはアルカリ土類金属成分の塩
化金属水和物としては、塩化カリウム、塩化ナトリウ
ム、塩化カルシウム等の水和物である。
【0021】水溶液は、例えば撹拌機等を用いて撹拌し
ながら水に上記塩化金属水和物を溶かし込むことで製造
される。
【0022】水溶液中の遷移金属成分の含有量は、好ま
しくは1重量%以上である。遷移金属成分と併用するア
ルカリ金属成分および/またはアルカリ土類金属成分に
ついても、水溶液中の好ましい含有量は1重量%以上で
ある。1重量%未満の水溶液では、呈色や濃淡変化がつ
き難い。水溶液中の含有量の上限は、溶解度、コスト等
を考慮し、20重量%までが好ましい。
【0023】以上の水溶液の塗布方法は特に限定される
ものではなく、例えば、スプレー法、ローラー法、刷毛
塗り、スタンプ法等が使用できる。塗布量は100g/m2
以上が好ましく、これ以下である場合、焼成後の素地呈
色がつきにくい。
【0024】図1、図2は、本発明の方法の説明図であ
る。各図において、(A)は斜視図、(B)図は断面拡
大図である。
【0025】本発明では上記の水溶液(1)を例えば図
1のとおり、成形素地またはその焼成基材の表面の部分
的に塗布する。この水溶液(1)は、成形素地またはそ
の焼成基材の表面の近傍に浸透する。
【0026】図2は、縦横の溝(3)の形成で多数のタ
イルピースを張り合わせた外観をもつ成形素地またはそ
の焼成基材(2)に対してのものであり、タイルピース
の相当部位を選択的に塗布した例である。
【0027】図1、図2において、水溶液(1)を塗布
後は、必要に応じて乾燥し、次いで成形素地またはその
焼成基材(2)の表面の全面に釉薬(4)を塗布する。
釉薬は透明釉薬の使用が好ましい。
【0028】透明釉薬は、顔料を適量含ませてもよい。
顔料によって、色調変化はより効果的なものとなる。
【0029】釉薬であっても、例えば乳濁釉やマット釉
薬等のうち、焼成後の釉層仕上がりにおいて透明度の低
いものの使用では、素地発色の効果が得られ難く、さら
に素地の質感等が損なわれ、本発明の意図する焼き物の
意匠性などの効果は十分でない。
【0030】釉薬の塗布方法は、例えばスプレー法、刷
毛塗り、ドブ漬けなどで行うことができる。十分な耐候
性を付与するために、塗布量は300g/m2以上が好まし
い。釉薬塗布後の焼成は、ローラーハースキルンなどの
焼成炉にて、好ましくは1000〜1200℃の温度で
行う。
【0031】本発明は、水溶液および釉薬を塗布する前
に成形素地を焼成してもよいが、その場合、水溶液およ
び釉薬を塗布後の焼成温度は、キレツ防止などの面か
ら、成形素地の焼成時より低くすることが好ましい。
【0032】
【実施例】次に本発明実施例および比較例を説明する。
【0033】各例で使用した成形素地の製造は、表1に
示す配合物に結合剤としてメチルセルロースを外掛けで
0.5wt%添加し、ニーダールーダーにて乾粉混合
し、次いで水を所定量添加後、同装置にて混練を行っ
た。得られた混練物は真空押出成形機に投入して、90
0×230mmの大型形状の成形素地を作成した。
【0034】成形素地は、セメントの水和反応による素
地強度を得るために、1〜2日間の自然養生を行い、さ
らに120℃の加熱乾燥により自然水を除去後、図2に
示す形状に加工した。
【0035】実施例8〜10および比較例5,6では、
前記製造方法にて得られた成形素地を、ローラーハース
キルンにて最高温度1130℃×30分、3時間通過の
迅速焼成を行い、焼成基材を得た。
【0036】(実施例1〜10)各例で使用した遷移金
属成分あるいは遷移金属成分とアルカリ金属成分および
/またはアルカリ土類金属成分の水溶液は、これらの塩
化金属水和物を金属元素換算で表に示す数値になるよう
に溶解し、作成した。
【0037】この水溶液をスプレーガンにて成形素地ま
たはその焼成基材の表面に、図1に示すように部分的に
約120g/m2塗布した後、成形素地またはその焼成
基材の表面全体にスプレーガンにて透明釉薬を約700
g/m2塗布した。
【0038】透明釉薬は、水野化学工業株式会社製の釉
薬No.52を使用し、着色透明釉薬は同釉薬に水野化
学工業株式会社製の顔料MG731を外掛け0.5%添
加したものを使用した。
【0039】以上の表面処理後、ローラーハースキルン
にて最高温度1100℃×30分、3時間通過の迅速焼
成を行った。
【0040】(比較例1、2および5)遷移金属成分を
使用せず、アルカリ金属成分またはアルカリ土類金属成
分のみの水溶液を塗布し、他は上記と同様にした。
【0041】(比較例3)釉薬を塗布せず、他は上記の
本発明実施例と同様にした。
【0042】(比較例4および6)釉薬として失透率の
高い乳濁釉薬を使用し、他は上記の本発明実施例と同様
にした。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】本発明実施例では、ベースとなる色調と部
分的な発色との色調差が、透明釉薬の効果により、塗装
に見られる意図的なものではなく、タイル張りがもつ自
然な変化を示す。しかも、焼き物風の質感にあふれた発
色に仕上がった。
【0046】本発明実施例のうち実施例7は、着色透明
釉薬を使ったものであり、色調変化を緩和するスリット
効果(カラーフィルターを被覆したような効果)がより
大きくなる。
【0047】これに対し、アルカリ金属成分またはアル
カリ土類金属成分のみの水溶液を使用した比較例1、2
および5では、発色源となる遷移金属成分が存在しない
ため、部分的に異なった発色はせず、本発明の効果は得
られなかった。
【0048】比較例3は、釉薬を塗布しないため、色調
差が意図的なものになり、本発明の効果は得られなかっ
た。
【0049】比較例4および6は、失透率の高い乳濁釉
薬を塗布したものであり、水溶液塗布による発色の効果
は多少あるものの、素地の質感が消され、結果的に塗装
板のような表面に仕上がり、焼き物の質感は得られなか
った。
【0050】尚、水溶液に溶解する遷移金属成分、アル
カリ金属成分あるいはアルカリ土類金属成分の具体例と
して、実施例で示した以外のものを使用しても同様の効
果が得られた。
【0051】
【発明の効果】大型建材は、施工の容易さから今後ます
ます需用は多くなると思われる。しかし、従来の製造技
術では、建材の大型化に伴ってタイル等の質感を持つ大
型板の製造が困難となる。これに対し、本発明は以上に
述べたように、部分的かつ自然な色調変化によって、窯
変調等のタイルの質感をもつ大型建材の製造が可能とな
る。
【0052】したがって、本発明によれば、大型建材が
もつ施工の容易とタイル等の質感を兼ね備えた大型建材
の製造を可能にしたものである。最近の大型建材に見ら
れる高級化志向に対応できる製造技術として、本発明が
もつ工業的価値は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の説明図である。(A)は斜視
図、(B)図は断面拡大図である。
【図2】本発明の他の実施例の説明図である。(A)は
斜視図、(B)図は断面拡大図である。
【符号の説明】
1…水溶液 2…成形素地または焼成基材 3…溝 4…釉薬
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 国屋宏明 富山県東砺波郡井波町井波1番地の1 大 建工業株式会社内 (72)発明者 伊藤 圭 富山県東砺波郡井波町井波1番地の1 大 建工業株式会社内 (72)発明者 堤 一徳 富山県東砺波郡井波町井波1番地の1 大 建工業株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セメント、フラックス成分およびアルミ
    ナ−シリカ質原料を主材とした配合物を混練・成形して
    得られた成形素地またはその焼成基材の表面に、遷移金
    属成分の水溶液を部分的に塗布後、さらに釉薬を成形素
    地またはその焼成基材の表面の全面に塗布し、焼成する
    ことを特徴とするセメント系大型焼成建材の製造方法。
  2. 【請求項2】 セメント、フラックス成分およびアルミ
    ナ−シリカ質原料を主材とした配合物を混練・成形して
    得られた成形素地またはその焼成基材の表面に、遷移金
    属成分とアルカリ金属成分および/またはアルカリ土類
    金属成分との水溶液を部分的に塗布後、さらに釉薬を成
    形素地またはその焼成基材の表面の全面に塗布し、焼成
    することを特徴とするセメント系大型焼成建材の製造方
    法。
JP07258395A 1995-03-30 1995-03-30 セメント系大型焼成建材の製造方法 Expired - Lifetime JP3530260B2 (ja)

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