JPH08254098A - トンネル工法における覆工コンクリートの締固め装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 覆工の厚さやトンネル断面の大小にかかわら
ず、また、型枠の剛性が高い場合でも、作業員による手
作業を軽減しつつ、容易かつ効果的に締固め作業を行な
うことのできるトンネル工法における覆工コンクリート
の締固め装置を提供する。 【構成】 この発明の締固め装置１０は、トンネル内壁
面１３とこれの内側に設置された覆工用型枠１４との間
に形成された覆工空間１５の上端部分において、トンネ
ル１１の軸方向に延長するよう配設されたガイドレール
１６と、このガイドレール１６に沿ってトンネル１１の
軸方向にスライド移動する走行装置１７と、この走行装
置１７から吊り下げられる一対のバイブレータ１８とか
らなり、また、走行装置１７には巻き上げ装置１９が搭
載され、先端にバイブレータ１８を取り付けたワイヤ２
０をこの巻き上げ装置１９に装着することにより、各バ
イブレータ１８を、走行装置１７からトンネル１１の両
側部の覆工空間１５内に、各々昇降可能に吊り下げてい
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、トンネル工法におけ
る覆工コンクリートの締固め装置に関し、特に、トンネ
ル内壁面とこれの内側に設置された覆工用型枠との間に
形成された覆工空間内に打設されるコンクリートを締固
めるための覆工コンクリートの締固め装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】シールド掘進機、トンネルボーリングマ
シーンやその他の各種のトンネル掘進機により掘削形成
されるトンネルや、山岳トンネル等の種々のトンネルの
内部には、これらのトンネルの内壁面を防護するととも
に所定の断面形状を確保すべく、トンネル内壁面を覆っ
て覆工コンクリートが打設形成される。そして、これら
の覆工コンクリートを打設形成するには、従来より、ト
ンネル覆工用の型枠が用いられている。すなわち、この
トンネル覆工用型枠によれば、当該覆工用型枠を、予定
するトンネルの断面形状に沿ってトンネル内壁面の内側
に組み立て、この組み立てた型枠のトンネル外方側すな
わち型枠の外表面とトンネル内壁面との間に形成された
覆工空間内にコンクリートを打設することにより、トン
ネル内壁面を覆う所定形状の覆工体を形成することがで
きる。

【０００３】一方、かかる覆工コンクリートを品質良く
形成するには、打設されるコンクリートを、型枠とトン
ネル内壁面との間の覆工空間内に隙間なく充填するとと
もに、充填したコンクリートを十分に締固める必要があ
り、したがって、かかる覆工空間内にコンクリートを密
実に充填するため、従来は、例えばバイブレータ等の起
振機を用いて打設したコンクリートを締固める方法が採
用されていた。

【０００４】そして、このバイブレータによる締固め方
法としては、例えば、作業員が型枠の各所に設けられて
いる検査窓から、覆工空間内に打設されたコンクリート
中に手作業でバイブレータを差し込んで直接振動を加え
る方法や、自振モータを有するバイブレータを型枠のト
ンネル内方側の表面に取り付け、この型枠に高周波の振
動を与えることにより、型枠を介して間接的にコンクリ
ートを振動させて締固める方法等が採用されている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の従来の方法では、上記検査窓を介してバイブレータを
覆工空間内のコンクリート中に差し込む方法では、トン
ネルの断面が大きいと検査窓から届かない部分のコンク
リートを十分に締め固めることができない場合があり、
またトンネルの断面が小さいと検査窓を十分に設置でき
ずに作業員による手作業が困難になる場合があるという
課題があった。

【０００６】また、バイブレータを型枠の表面に取り付
けて振動させる方法では、型枠の剛性が高い場合や覆工
の厚さが大きい場合には、バイブレータによる振動がコ
ンクリートに十分に伝わらず、締固め作業を効果的に行
なうことができないという課題があった。

【０００７】そこで、本発明は、上記従来の課題を鑑み
てなされたもので、覆工の厚さやトンネル断面の大小に
かかわらず、また、型枠の剛性が高い場合でも、作業員
による手作業を軽減しつつ、容易かつ効果的に締固め作
業を行なうことのできるトンネル工法における覆工コン
クリートの締固め装置を提供することを目的とするもの
である。

【０００８】

【課題を解決するための手段】この発明は、かかる目的
を達成するためになされたもので、その要旨は、トンネ
ル内壁面とこれの内側に設置された覆工用型枠との間に
形成された覆工空間の上端部分においてトンネル軸方向
に延長するよう配設されたガイド部材と、該ガイド部材
に沿ってトンネル軸方向にスライド移動する走行装置
と、該走行装置に設けられた巻き上げ装置からワイヤー
等の索条体を介してトンネルの側部の覆工空間に昇降可
能に吊り下げられるバイブレータとからなることを特徴
とするトンネル工法における覆工コンクリートの締固め
装置にある。

【０００９】ここで、上記記載においてトンネル内壁面
とは、掘削直後の掘削内壁面の他、吹き付けコンクリー
ト等により防護された後のトンネル内壁面、あるいは二
次覆工を行なう際の一次覆工された状態のトンネル内壁
面等をも含むものである。

【００１０】また、覆工空間の断面形状が環状である場
合には、前記バイブレータは、トンネルの側部を介して
下部の覆工空間にまで昇降させることもできる。

【００１１】そして、この発明の覆工コンクリートの締
固め装置は、一対のバイブレータを備え、各バイブレー
タを前記索条体を介してトンネルの両側部の覆工空間に
各々昇降可能に吊り下げることが好ましい。

【００１２】また、この発明の覆工コンクリートの締固
め装置は、前記巻き上げ装置に、前記索条体の張力を測
定して巻き下げ巻き上げの動作を切り替える切替え手段
を設けることが好ましい。

【００１３】

【作用】そして、この発明のトンネル工法における覆工
コンクリートの締固め装置によれば、バイブレータは、
覆工空間の上端部分に位置する走行装置から索条体を介
して昇降可能に吊り下げることにより、覆工空間の上端
部分からトンネルの側部全域に渡って、また覆工空間が
環状である場合にはさらにトンネル下部の覆工空間ま
で、必要に応じて任意の箇所に配置させることができる
とともに、バイブレータが吊り下げられる走行装置は、
トンネル軸方向の任意の位置に移動することができ、し
たがって、手作業によることなく、覆工コンクリートが
打設される空間の所定の位置にバイブレータを適宜配置
してコンクリートを直接振動させることにより、効率良
くかつ迅速に覆工コンクリートを締固めることができ
る。

【００１４】また、一対のバイブレータを装備し、各バ
イブレータを索条体を介してトンネルの両側部の覆工空
間に各々昇降可能に吊り下げるようにすれば、左右対称
となる部分を同じように締固めて左右均質なコンクリー
ト覆工体を形成し易くなる。

【００１５】さらに、巻き上げ装置には、索条体の張力
を測定して巻き下げ巻き上げの動作を切り替える切替え
手段を設ければ、例えば、巻き下げられたバイブレータ
が打設されたコンクリート内に挿入され始めて索条体の
張力が小さくなってから数秒後に、バイブレータの巻き
上げが開始されるように適宜設定することにより、覆工
空間の下方部分から順次立上げて打設されるコンクリー
トの各打設高さ毎に、同じように締固め作業を行うこと
ができ、これによって、高さ方向にも均質なコンクリー
ト覆工体を形成し易くなる。

【００１６】

【実施例】以下、この発明の一実施例を図面を参照しつ
つ詳細に説明する。図１（ａ）及び（ｂ）は、この実施
例にかかる締固め装置１０を示すもので、この締固め装
置１０は、馬蹄形断面の山岳トンネル１１のトンネル内
壁面１３を防護するとともにトンネル１１の断面を所定
の形状に仕上げるべく、トンネル内壁面１３に沿ってト
ンネル覆工体１２を形成するために用いられるものであ
る。

【００１７】そして、この実施例の締固め装置１０は、
トンネル内壁面１３とこれの内側に設置された覆工用型
枠１４との間に形成された覆工空間１５の上端部分にお
いて、トンネル１１の軸方向に延長するよう配設された
ガイド部材としてのガイドレール１６と、このガイドレ
ール１６に沿ってトンネル１１の軸方向にスライド移動
する走行装置１７と、この走行装置１７から吊り下げら
れるバイブレータ１８とからなり、また、走行装置１７
は巻き上げ装置１９を有し、先端にバイブレータ１８を
取り付けたワイヤ２０をこの巻き上げ装置１９に装着す
ることにより、バイブレータ１８を、走行装置１７から
トンネル１１の側部の覆工空間１５内に、昇降可能に吊
り下げている。

【００１８】なお、この実施例では、巻き上げ装置１９
は走行装置１７に左右２台設けられ、一対のバイブレー
タ１８を、各巻き上げ装置１９から、トンネル１１の左
右の側部に各々吊り下げている。また、バイブレータ１
８や巻き上げ装置１９を設けた走行装置１７は、必要に
応じて、ガイドレール１６に沿って複数配置することが
できる。

【００１９】ここで、覆工空間１５の上端部分に配設さ
れるガイドレール１６は、例えばＩビームや鋼棒、鋼製
パイプ、鉄筋棒等からなり、覆工用型枠１４を設置する
前に、トンネル内壁面１３の天井部分に、アンカー等の
固定部材を介して固定することにより、あるいは型枠１
４から支持部材を介して固定すること等により容易に設
けることができる。

【００２０】また、走行装置１７は、ガイドレール１６
に沿って移動するための走行車輪２１やこの走行車輪２
１を駆動するための駆動装置等を備えるとともに、この
走行装置１７は、例えばトンネルの内部に設けた制御装
置からの信号を受ける受信装置や、駆動装置及び巻き上
げ装置１９を作動させる各種のコントローラを備え、こ
れによって走行装置１７やバイブレータ１８等の動作を
遠隔操作することができるようになっている。

【００２１】さらに、巻き上げ装置１９は例えばウィン
チを内蔵し、このウィンチを回動することによりこれに
巻装したワイヤ２０を巻き出しあるいは巻き取ることが
できるようになっている。なお、巻き上げ装置１９に装
着される索条体としては、ワイヤ２０の他、ケーブル、
チェーン、ロープ等、所定の強度と可撓性を有する種々
の線状の部材を用いることができる。

【００２２】また、この巻き上げ装置１９は、ワイヤ２
０の張力を測定するセンサやタイマー等からなる切替え
手段を備え、バイブレータ１８がコンクリート内に挿入
される際の張力の変化をセンサにより検知して信号を発
するとともに、タイマーは、このセンサからの信号に従
って数秒ないしは数分後にウィンチの巻き出し動作と巻
き取り動作とを切り替え、これによって、バイブレータ
１８の昇降を自動的に制御できるようになっている。

【００２３】一方、バイブレータ１８としては、例え
ば、回動する重錘を、その重心を中心軸から偏心させた
状態で内蔵して構成される、一般の棒状バイブレータを
用いることができ、このバイブレータ１８は、前記ワイ
ヤ２０に添設あるいは内蔵されたケーブルを介して伝達
される電力等を駆動源として、高周波の振動を生じるも
のである。

【００２４】そして、以上の構成を有するこの実施例の
締固め装置１０によれば、下方部分から上方に順次立ち
上げつつ覆工空間１５内に打設されるコンクリートを、
覆工空間１５の略全域に渡って、効率良くかつ均質に締
め固めてゆくことができる。

【００２５】すなわち、バイブレータ１８は、走行装置
１７からワイヤ２０を介して昇降可能に吊り下げられる
ことにより、覆工空間１５の上端部分からトンネル１１
の側部全域に渡って任意の箇所に配置することができ、
また走行装置１７は、トンネル１１の軸方向の任意の位
置に移動することができるので、締固め不良箇所を生じ
ることなく、打設されたコンクリートを直接振動させ
て、効率良くかつ迅速に覆工コンクリートの締固め作業
を行なうことができる。また、かかる締固め作業は、手
作業を省略しつつ遠隔操作により容易に行なうことがで
きる。

【００２６】そして、この実施例によれば、走行装置１
７には一対のバイブレータ１８が装備され、各バイブレ
ータ１８はトンネルの両側部の覆工空間１５内に各々昇
降可能に吊り下げられており、これによって左右の対称
部分のコンクリートを同じように締固めて左右均質なト
ンネル覆工体１２を形成することができる。

【００２７】また、巻き上げ装置１９は、バイブレータ
１８の昇降を自動管理する切替え手段を有するので、ワ
イヤ２０の張力が小さくなってからこれを巻き上げるま
での時間をコントロールすれば、覆工空間１５に打設さ
れたコンクリートの各打設高さにおいて、バイブレータ
１８は自身の振動によりその時間中コンクリート内に侵
入して当該コンクリートを十分に締固めた後に引き上げ
られ、かかる締固め動作を各打設高さ毎に順次繰り返す
ことによって、覆工空間１５の断面の略全域に渡って適
度に締固められた、高品質かつ均質のトンネル覆工体１
２を得ることができる。

【００２８】なお、上記実施例では、馬蹄形断面の山岳
トンネル１１のトンネル覆工体１２を形成する際に、こ
の発明の締固め装置１０を用いる場合について記載した
が、この発明はかかる態様に限定されるものではなく、
例えばシールド掘進機やトンネル掘進機等により形成さ
れたその他の種々のトンネルの内壁面に覆工体を形成す
べく用いることができる。この際に、トンネルの覆工空
間の断面形状が、円形断面等の環状の断面である場合で
も、バイブレータを、トンネルの側部を経てトンネルの
底部にまで昇降させることにより、当該底部に打設した
コンクリートをも容易に締め固めることができる。

【００２９】また、上記実施例では、走行装置１７に一
対のバイブレータ１８を設けた場合について記載した
が、この発明はかかる態様に限定されるものではなく、
各走行装置１７にバイブレータ１８を一台のみ設けても
良く２台以上設けて用いることもできる。

【００３０】さらに、上記実施例では、ワイヤ２０の巻
き下げ及び巻き上げは、巻き上げ装置１９に設けた切替
え手段により自動管理する場合について記載したが、か
かる巻き上げ装置１９によるバイブレータ１８の昇降制
御は、自動の切替え手段を用いることなく、遠隔操作に
より手動で行なうこともできる。

【００３１】さらにまた、この発明の締固め装置１０
は、覆工空間１５内に鉄筋等の補強部材が配設されてい
る場合でも、バイブレータ１８の昇降を案内する各種の
ガイド部材を取り付けたり、バイブレータ１８の昇降位
置を避けてこれらの補強部材を配設すること等により、
容易に適用することができる。また、バイブレータ１８
と覆工用型枠１４との接触を避けるための各種のガイド
部材を、適宜覆工用型枠１４に取り付けて使用すること
もできる。

【００３２】

【発明の効果】以上詳細に説明したように、この発明の
トンネル工法における覆工コンクリートの締固め装置に
よれば、覆工空間の上端部分に配設されたガイド部材
と、このガイド部材に沿ってスライド移動する走行装置
と、巻き上げ装置及び索条体を介して走行装置からトン
ネルの側部の覆工空間に昇降可能に吊り下げられるバイ
ブレータとからなり、覆工空間の略全域に渡ってバイブ
レータを任意の位置に適宜配置し、コンクリートを直接
振動させるので、覆工の厚さやトンネル断面の大小にか
かわらず、また、型枠の剛性が高い場合でも、作業員に
よる手作業を軽減しつつ、容易かつ効果的に締固め作業
を行なうことができる。

【００３３】また、走行装置には一対のバイブレータを
設け、各バイブレータをトンネルの両側部の覆工空間に
各々昇降可能に吊り下げるようにすれば、左右均質なコ
ンクリート覆工体を容易に形成することができるととも
に、巻き上げ装置には、索条体の張力を測定して巻き下
げ巻き上げの動作を切り替える切替え手段を設け、覆工
空間内に打設されるコンクリートの各打設高さ毎に、同
じように締め固め作業を行うようにすれば、高さ方向に
も均質なコンクリート覆工体を容易に形成することがで
きる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の一実施例にかかる締固め装置の概略
の構成を示す説明図で、（ａ）はトンネル横断方向の断
面図、（ｂ）は（ａ）のＡ−Ａに沿った断面図である。

【符号の説明】

１０ 締固め装置 １１ 山岳トンネル １２ トンネル覆工体 １３ トンネル内壁面 １４ 覆工用型枠 １５ 覆工空間 １６ ガイドレール（ガイド部材） １７ 走行装置 １８ バイブレータ １９ 巻き上げ装置 ２０ ワイヤ（索条体） ２１ 走行車輪

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 トンネル内壁面とこれの内側に設置され
   た覆工用型枠との間に形成された覆工空間の上端部分に
   おいてトンネル軸方向に延長するよう配設されたガイド
   部材と、該ガイド部材に沿ってトンネル軸方向にスライ
   ド移動する走行装置と、該走行装置に設けられた巻き上
   げ装置からワイヤー等の索条体を介してトンネルの側部
   の覆工空間に昇降可能に吊り下げられるバイブレータと
   からなることを特徴とするトンネル工法における覆工コ
   ンクリートの締固め装置。
2. 【請求項２】 一対のバイブレータを備え、各バイブレ
   ータを前記索条体を介してトンネルの両側部の覆工空間
   に各々昇降可能に吊り下げることを特徴とする請求項１
   に記載のトンネル工法における覆工コンクリートの締固
   め装置。
3. 【請求項３】 前記巻き上げ装置が、前記索条体の張力
   を測定して巻き下げ巻き上げの動作を切り替える切替え
   手段を備えることを特徴とする請求項１又は請求項２に
   記載のトンネル工法における覆工コンクリートの締固め
   装置。