JPH08250053A - X線管用回転陽極 - Google Patents

X線管用回転陽極

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JPH08250053A
JPH08250053A JP5580895A JP5580895A JPH08250053A JP H08250053 A JPH08250053 A JP H08250053A JP 5580895 A JP5580895 A JP 5580895A JP 5580895 A JP5580895 A JP 5580895A JP H08250053 A JPH08250053 A JP H08250053A
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JP
Japan
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base material
carbon
carbon fiber
rotary
resin
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Application number
JP5580895A
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English (en)
Inventor
Shigehiko Takaoka
重彦 高岡
Akira Ichida
晃 市田
Eiki Tsushima
栄樹 津島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tokyo Tungsten Co Ltd
Tonen General Sekiyu KK
Original Assignee
Tokyo Tungsten Co Ltd
Tonen Corp
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Publication date
Application filed by Tokyo Tungsten Co Ltd, Tonen Corp filed Critical Tokyo Tungsten Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高い比強度と高熱伝導を同時に得ることので
きる回転ターゲットを提供すること。 【構成】 X線管用回転陽極(回転ターゲット)1は,
厚さ1.0mm以下,繊維軸方向の引張強度が500M
Pa以上,及び熱伝導率200W/m・K以上の一方向
性炭素−炭素繊維複合材を回転軸方向に3層以上,擬似
等方性を有するように積層した基材2と,前記基材2の
片面に設けられたタングステン又はタングステン合金か
らなるX線発生層3とを備えている。この基材2は面方
向の熱伝導率が200W/m・K以上であり,強度が極
めて優れている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,X線管用回転陽極(以
下,回転ターゲットと呼ぶ)に関し,詳しくは,軽量,
高い熱放散性,高速回転を図った回転ターゲットに関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来,熱陰極を利用してX線を発生させ
るX線管は,陽極として設けられた回転ターゲットおよ
び電子を発生する陰極を備え,動作中,両電極間に高電
圧を印加することにより,陰極に発生した電子を回転タ
ーゲットに衝突させX線を発生させている。この場合,
回転ターゲットに衝突した電子の全エネルギーの約1%
がX線となり99%以上のエネルギーは実質上,熱とし
て回転ターゲット上に滞留する。
【0003】そのため,回転ターゲットは,タングステ
ン(W),モリブデン(Mo),レニウム・タングステ
ン合金(Re−W)あるいは,MoにWを張り合わせた
金属製の回転ターゲットが使用されてきた。
【0004】その後,回転ターゲットの大型化の要求に
応えて,比重の小さなグラファイト(等方性黒鉛)が注
目され,グラファイトを基材としてこの基材に上記の金
属をX線発生層として接合した構成を有する回転ターゲ
ットも使用されている。グラファイトと金属との接合法
としては,ろう付け法,および化学気相蒸着(CVD)
法等が用いられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】一方,この種の回転タ
ーゲットには,X線写真を連続撮影できること及び撮影
時間を短縮できること等の要求が出されている。これら
の要求に応えるために,従来,回転ターゲットの直径を
大きくしたり,厚みを増したり,さらには,回転速度を
増加するなどの方法が採用されてきた。
【0006】更に,最近では,クイックスタート,スト
ップ等が可能でなければならないとの要求も強くなって
いる。
【0007】しかしながら,一般的に金属製回転ターゲ
ットでは,重量増によりベアリング部への機械的負荷が
大きくなり,クイックスタート,ストップに限界があ
り,医療診断器としての汎用性を抑制させる重大因子と
なっていた。
【0008】これに対して,グラファイトにX線発生層
としてW,W合金等の金属をCVD法又はろう付法によ
り張り合わせた回転ターゲットは,金属製回転ターゲッ
トに比し高い熱放散性を有し,軽量であり,機能的に最
適と考えられている。
【0009】しかし,グラファイトにX線発生層を張り
合わせた回転ターゲットは,基材となるグラファイトの
強度の点で問題がある。即ち,回転ターゲットの大形大
径化に伴い回転時の遠心力が増加するため,高速回転に
なると回転ターゲットが破壊するという問題があった。
グラファイトを用いた場合における破壊を防止するため
に,例えば,特開昭63−124352号公報及び特開
昭64−3947号公報には,グラファイトよりも強度
の高い炭素繊維の織物を強化材とする炭素−炭素繊維複
合材を回転ターゲットの基材として使用することが提案
されている。
【0010】以下,図3を用いて従来の炭素−炭素繊維
複合材の平織布の構造を概略的に説明する。図3に示す
ように,炭素繊維51,53の間に炭素繊維52が織り
込まれており,このように,炭素繊維51〜53を繊維
に織り込んで構成される炭素−炭素繊維複合材の平織布
では,炭素−炭素繊維複合材の表面にマトリックスのみ
からなるポケット部54が構造上生じる事が避けられな
い。このポケット部54のマトリックスは強度的に弱
く,回転ターゲットの運転時に熱応力,遠心力等により
欠落し管球内を汚染する。また,機械加工の際にポケッ
ト部の欠落により加工面に凹凸が発生する。従って,加
工面に金属をCVD成膜あるいはろう付けする際に基材
とX線発生層との接合強度低下の原因となる。
【0011】他の炭素−炭素繊維複合材として,マンド
レルに樹脂を含浸した繊維束を巻き付けるフィラメント
ワインディング炭素−炭素繊維複合材や,平織布を円柱
状に成形した炭素−炭素繊維複合材の適用も考えられて
いる。この種の炭素−炭素繊維複合材を用いて厚肉円柱
を作製する場合,マトリックスの収縮および硬化加熱時
の冷却による熱収縮のため,円柱の周方向に割れが発生
する。そのため,回転ターゲットに使用できる様な大型
・厚肉でかつ,強度的に信頼のできる炭素−炭素繊維円
柱の製作は難しい。
【0012】一方,小型でかつ大パワーのX線を得るこ
とができる回転ターゲットに対する要求も根強いものが
あり,この小型化により,回転系および駆動系に対する
負荷を小さくできるとともに管球全体の軽量化に繋が
る。このような小型化の要求に応じるためには,回転タ
ーゲット自体,高い熱伝導率を備えている必要がある
が,上記した炭素−炭素繊維複合材では,十分に熱伝導
率が達成できないという欠点がある。
【0013】そこで,本発明の技術的課題は,高い比強
度と高熱伝導を同時に得ることのできる回転ターゲット
を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明では,前述した技
術的課題を解決するために,グラファイトの代わりによ
り高強度の炭素−炭素繊維複合材を基材として採用し,
この高性能炭素−炭素繊維複合材にX線発生層としてW
やW合金等をCVD法やろう付法による接合により一体
化させた回転ターゲットを開発したものである。
【0015】より具体的に述べると,本発明によれば,
厚さ1.0mm以下,繊維軸方向の引張強度が500M
Pa以上,熱伝導率400W/m・K以上の一方向性炭
素−炭素繊維複合材を回転軸方向に3層以上に擬似等方
性を有するように積層した基材と,前記基材の片面にタ
ングステン又はタングステン合金からなるX線発生層と
を備えたことを特徴とするX線管用回転陽極が得られ
る。
【0016】ここで,本発明においては,前記X線発生
層はCVD法により形成されていることが好ましく,ま
た,前記X線発生層は,前記基材ろう付けにより接合さ
れていることが好ましい。
【0017】
【作用】本発明においては,一方向性炭素−炭素繊維複
合材を回転軸方向に疑似等方性を示すように3層以上積
層した基材を用いることにより,熱伝導性が高められる
とともに機械的な強度を増し,高速回転時の遠心力増加
による機械的破壊を防止することができる。
【0018】
【実施例】まず,本発明の実施例に係る回転ターゲット
を説明する前に,各実施例に共通する回転ターゲットの
構造を説明する。図1を参照すると,本発明の回転ター
ゲット1は,基材2と,基材2の一面側に設けられたX
線発生層3とを備えている。基材2は,一方向性炭素−
炭素繊維複合材(以下,UD C/C材と呼ぶ)からな
り直径100mm,厚さ12.0mmの円板状で,中央
部に直径10mmの回転軸に取り付けるための取付穴4
が穿設されている。また,基材2の上面の直径65mm
より外側は,上下面に対して約12度傾斜した円錐斜面
5が形成されている。この円錐斜面5上に前述したX線
発生層3が設けられている。
【0019】次に図1の回転ターゲットの基材2の製造
方法について説明する。
【0020】一層の厚さが1mm以下(好ましくは0.
1〜0.7mm)のUD C/C材を繊維軸が交差した
疑似等方性となる様に,例えば,繊維軸が直交(0°,
90°方向)する様に3層以上好ましくは10層以上積
層し,必要な厚さの基材2を作製した後,所定の形状に
機械加工して仕上げる。
【0021】この場合,積層するUD C/C材として
は,繊維軸方向の引張強度が500MPa以上,好まし
くは700MPa以上であり,熱伝導率は400W/m
・K以上,好ましくは500W/m・K以上のものを使
用した。更に,当該UD C/C材における炭素繊維の
容積含有率(以下,Vf という)は40〜80%,好ま
しくは50〜70%であった。これは,UD C/C材
のVf が40%未満では優れた熱伝導率および引張強度
を得ることはできないし,80%を越えると引張強度が
低下して熱衝撃を受けた時に積層間の剥離を生じるから
である。
【0022】上述した高引張強度,高熱伝導率のUD
C/C材は,以下のように製作できる。まず,軟化点4
00〜550℃で揮発分を8〜20重量%含有する炭素
質ピッチ(ピッチA)と軟化点550℃以上で揮発分を
8重量%以下含有する炭素質ピッチ(ピッチB)との2
種類の炭素質ピッチを用意し,これら2種類の炭素源ピ
ッチを粉末状に熱硬化性樹脂と有機溶媒からなる溶液に
分散させる。このようにして,得られた含浸用溶液をマ
トリックス前駆体として炭素繊維に含浸させた後,一方
向に炭素繊維が配列するように成形し,硬化させ,次い
で焼成する。
【0023】ここで,使用する炭素繊維は,ピッチ系そ
の他の炭素繊維の何れでもよいが,特に熱伝導率が高い
ピッチ系炭素繊維が好ましい。更に高温で焼成して得ら
れた黒鉛繊維であってもよい。
【0024】また,炭素繊維に含浸させるマトリックス
前駆体としては,フェノール樹脂,フラン樹脂等の熱硬
化性樹脂が使用されるが,本発明の製造方法では,前述
したように,熱硬化性樹脂に高軟化点の2種類の炭素質
ピッチを混入したものを使用する。なお,これらの炭素
質ピッチとしては,石油・石炭系重質ピッチや生コーク
ス,コークスと呼ばれているものが使用される。また,
その平均粒径は0.5〜5μmとすることが好ましく,
その好ましい粒度分布としては,2μm以上35重量%
以上,1〜2μm20重量%以上,1μm以下30重量
%以上というものが挙げられる。粒度分布は,「自動粒
度分布測定装置」(例えば,堀場製作所製,APA−3
00)を用いて測定することができる。
【0025】本発明において使用される熱硬化性樹脂と
しては,前述したようにフェノール樹脂,フラン樹脂又
はそれらの混合物が好んで使用される。フェノール樹脂
には,アルカリ存在下にフェノール類とアルデヒド類と
の反応によって得られるレゾールタイプと,酸性触媒に
よって,フェノール類とアルデヒド類から得られるノボ
ラックタイプがあり,常温で液状のものと固体状のもの
がある。ノボラックタイプでは,硬化剤,例えばヘキサ
メチレンジアミンを含有した自己硬化性タイプのものが
好ましい。更に,各種のフェノール樹脂を混合して使用
することもできる。
【0026】他方,フラン樹脂としては,フラン樹脂初
期縮合物を用いることができる。この初期縮合物には,
フルフリルアルコールあるいはフルフリルアルコール/
フルフラール混合物からなるものが含まれる。
【0027】また,フェノール樹脂初期反応生成物ある
いは硬化前樹脂とフラン樹脂初期反応生成物の混合物を
使用することもできる。ここで初期反応生成物とは液状
樹脂を意味する。
【0028】上記したフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂
を溶解させて含浸材を調製する際の有機溶媒としては,
フルフラール,フルフリルアルコールあるいはそれらの
混合物などの有機溶媒が使用される。これらの有機溶媒
を用いると,例えば,多くの常温固体状ノボラックタイ
プフェノール樹脂は硬化温度より低い80〜95℃で軟
化するので,硬化反応が実質上進行することなく,且つ
ボイドの発生なしに上記した温度領域で有機溶媒を充分
に乾燥させるに必要な時間保持することができる。これ
らの有機溶媒は,乾燥速度の点から,減圧加熱あるいは
真空加熱乾燥がより実施し易いという利点も有する。
【0029】含浸用溶液の調製においては,先ず有機溶
媒(以下,単に溶媒ともいう)に熱硬化性樹脂(以下,
単に樹脂という)を溶解させる。溶解は樹脂の硬化反応
が起こらない範囲の加熱下で行なうこともできる。次
に,得られた樹脂溶液に前記の炭素質ピッチを分散させ
る。また,分散方法としては,ボールミル,超音波を用
いる方法等,任意の方法を採用することができる。溶媒
に対する樹脂,2種類の炭素質ピッチの量比は,前記し
たように,樹脂の粘度,炭素質ピッチの平均粒径,粒度
分布等によって変動するが,樹脂10〜40重量部(好
ましくは,20〜30重量部),ビッチA20〜60重
量部,ピッチB20〜60重量部,ピッチA/ピッチB
=0.5/1.0〜1.0/0.5(重量比),溶媒1
50〜700重量部の範囲が望ましい。尚,溶媒,樹
脂,炭素質ピッチ添加,混入の手順は,特に問うもので
はない。
【0030】前記含浸用溶液の炭素繊維への含浸は,通
常室温で行われるが,樹脂の硬化反応が実質上進行しな
い温度範囲内で加熱下で行なうこともできる。含浸の手
法は炭素繊維の形状に応じたものにすることができる。
例えば,連続系の場合は,含浸用溶液の中に,糸を連続
的にくぐらせて,ドラムあるいはフレームに巻き取るこ
とにより含浸させることができる。また,含浸は減圧下
で行なうこともできる。
【0031】含浸後,炭素繊維は成形に先立って一方向
に引き揃えシート状に切りとった後,乾燥される。乾燥
は一般的に加熱した状態で行われるが,乾燥時間短縮の
ため,減圧した状態で行なってもよい。乾燥は樹脂が軟
化する温度から樹脂の硬化反応が実質的に進行しない温
度の範囲で実施することが望ましく,その温度範囲は,
例えば,50〜100℃の範囲である。なお,成形の
際,残留している溶媒は,成形工程の初期に,60〜9
0℃あるいはその近辺の温度で,減圧にすることによっ
て充分に除去することができる。
【0032】得られたマトリックス前駆体含有炭素繊維
における炭素繊維の含浸量,即ち,炭素繊維容積含有率
(Vf )は前述したように,焼成後に40〜80%好ま
しくは50〜70%となる配合量となるように調整す
る。
【0033】乾燥したシート状のマトリックス前駆体含
有炭素繊維によって構成されたシートは,一方向に炭素
繊維が配列するように積層された後,通常5〜25MP
aの加圧下で成形される。成形は樹脂の硬化反応を利用
する。成形温度領域はフェノール樹脂の場合,例えば8
0〜200℃であり,フラン樹脂の場合,例えば,70
〜160℃,それらの混合物の場合,例えば70〜20
0℃である。但し,この範囲に限定されるものではな
い。加熱時間は一般に10分間〜10時間あるいはそれ
以上である。この温度領域で段階的にあるいは連続的に
徐々の昇温することが望ましい。加圧は通常5〜25M
Paの範囲で行なわれるが,特に好ましいのは10〜2
0MPaである。得られた成形体は公知の方法に従って
不活性雰囲気中,大気圧下あるいは加圧下で2000℃
以上の温度で,好ましくは2500℃以上の温度で焼成
して炭化され,必要に応じ更には黒鉛化される。
【0034】従来の炭素−炭素繊維複合材は熱可塑性樹
脂(例えば,フェノール樹脂またはフラン樹脂)をマト
リックス前駆体に使用することから,焼成工程において
繊維軸に沿って多数の割れやボイド等の発生する材料で
あった。このため,厚さ1mm以下のUD C/C材を
作製すると,繊維で強化されていないことから,繊維軸
と直角方向(90°方向)の引張強度は著しく低かっ
た。その結果,UD C/C材を回転ターゲットに使用
することは困難であった。
【0035】しかしながら,本発明のUD C/C材は
二種類のピッチ粉末と熱可塑性樹脂を用いた混合物をマ
トリックス前駆体とすることにより,割れやボイドのな
い90°方向の引張強度に優れたUD C/C材である
ことを見い出した。
【0036】また,本発明に使用されるUD C/C材
は,炭素繊維を平行に一方向に配列し,かつ,マトリッ
クスが繊維間に緻密に充填されているため,平織布の場
合と異なり,マトリックスのみのポケット部が存在しな
いという特徴を有する。そのため,X線管の管球内の汚
染もなく,かつ,平滑な加工面を得ることができる。こ
のUD C/C材を一層のみで回転ターゲット用基材を
作製した場合,熱伝導率に方向性があるため,高冷却部
とホットスポット(高蓄熱部)ができ,破損に至る。
【0037】このことを考慮して,本発明に係る回転タ
ーゲットは,UD C/C材を複数層積層した。
【0038】この積層構造を有する基材の積層方法とし
ては,UD C/C材の層間にフェノール樹脂,フラン
樹脂などの接着剤を用い,各UD C/C材を前述した
ように,繊維軸が互いに交差するように,即ち,疑似等
方性が保たれるように,順次重ねて接着した後,通常,
2000℃以上の温度で焼成する。他方,接着剤を用い
なくても積層した後,5〜25MPaの圧力,2500
℃以上の温度で加圧焼成することによって,同様な積層
構造が得られる。
【0039】本発明の回転ターゲットにおいて,X線発
生層3をCVD法により基材2上に形成するか,もしく
は,別途製作されたX線発生層を基材2にろう付法によ
り接合してもよい。ここで,CVD法を用いる場合にお
いては,X線発生層3を成す被覆金属と基材2との境界
が大切であり,塩化物法によるRe下地の上にRe−W
等のW合金を被覆するか,弗化物によるReまたはTi
Nなどを下地としてRe−W等のW合金を被覆しても良
い。この場合,接合強度は塩化物法によるRe下地が特
に優れている。
【0040】また,X線発生層3と基材2とをろう材に
より接合する場合,一般的にグラファイトや高融点金属
の接合に使用されるZr系,Ti系等のろう材でも接合
可能である。実際,X線発生層3と基材2の界面が12
00〜1300℃になるため,それより十分高温のろう
付けが必要である。そのため,ろう付け温度が1550
℃以上である5%Ru−Pdをろう材として用いれば,
この温度以下における使用を保証することができる。
【0041】図2はUD C/C材を使用した回転ター
ゲットの電子線照射による温度分布を示す図である。図
2に示すように,矢印10で示される繊維方向に直角の
半径方向両側の部分は,高温分布を示すホットスポット
発生部11,12となり,一方,繊維方向に沿う半径部
分は低温分布を示す高冷却部13,14となる。ここで
電子線照射領域は図の符号化で示される外側部分であ
る。また,機械的強度にも同様に方向性があるため,回
転時遠心力により繊維軸と直角方向に引き裂かれ破壊す
る。そのため,UD C/C材を繊維軸が疑似等方性に
よる様に(例えば,0°,90°直交方向)3層以上積
層する必要がある。
【0042】本発明においては,この3層以上のUD
C/C材の積層することにより,電子線照射によって発
生した熱を,繊維軸方向に(例えば,0°,90°方
向)に分散させることができるためホットスポットの発
生が抑制される。しかも,回転ターゲットの電子線照射
部の面積および傾きから一層の厚さを1.0mm以下に
することによりホットスポットの発生を抑えられ,更
に,遠心力に対する強度も改善できる。代表的なUD
C/C材および黒鉛の物性を下記表1に示す。
【0043】
【表1】 UD C/C材の繊維軸と直角方向(90°方向)の引
張強度は,マトリックスの引張強度および引張弾性率に
依存する。即ち,マトリックスの引張強度が大のときお
よび引張弾性率が小のときマトリックス自体の破壊が抑
制される。また破壊がUD C/C材全体に伝播するこ
とをも抑制する。
【0044】本発明のUD C/C材によってマトリッ
クス自体の引張強度が大,かつ引張弾性率が低く,また
マトリックスと繊維との接着性が強固であるために,繊
維軸と直角方向の引張強度が向上する。このため,本発
明のUD C/C材を繊維軸が疑似等方性になるように
積層することによって,機械的強度も疑似等方性を示す
ことから回転ターゲットの遠心力に対する強度を向上す
ることができる。
【0045】その結果,高強度と高熱伝導性を同時に有
する回転ターゲット用基材を提供することが可能となっ
た。
【0046】以下,本発明の回転ターゲットを製造する
方法を具体例な実施例に基づいて説明する。
【0047】(実施例1)炭素質ピッチとして,軟化点
432℃,揮発分15重量%のピッチA,および軟化点
570℃,揮発分4重量%のピッチBを用意した。な
お,両ピッチの平均粒径は1.3μmであり,その粒度
分布は1μm以下41重量%,1〜2μm28重量%お
よび2μm以上31重量%であった。フェノール樹脂2
0部をフルフリルアルコール200部に溶解させ,この
溶液に上記ピッチA40部とピッチB40部とを分散さ
せた。この含浸用溶液にピッチ系炭素繊維(東燃製,F
ORCA FT700)の連続糸を浸漬し,引き上げて
一方向に引き揃え,12時間風乾後,65℃で1時間1
-1Torrの減圧下で加熱して乾燥し,プリプレグシ
ートを作製した。このプリプレグシート1枚を,150
℃でプレス成形(20MPa)し,成形品を得た。これ
を常圧,アルゴン雰囲気中で3200℃まで1℃/分
(1000℃まで)の割合,5℃/分(1000〜32
00℃)の割合で昇温して焼成し,炭素繊維含有率(V
f )約60%のUD C/C材を得た。
【0048】出来上がったUD C/C材の厚さは0.
5mmであった。このUD C/C材を0°,90°と
直交するように,交互に24枚積層した。層間にはフェ
ノール樹脂を溶剤に溶かしたものを接着剤として用い
て,積層後150℃でプレス成形した。この積層物を真
空中3000℃で焼成し,回転ターゲット用基材とし
た。この基材の面方向の熱伝導度は200W/m・Kで
あった。この基材を機械加工により図2に示すように,
回転ターゲット形状に切り出した。機械加工はNCフラ
イス加工およびBN砥石による研削加工を行った。機械
加工後の表面は平坦で,顕微鏡で観察したところ,10
0μm以上のボイド,割れは認められなかった。その後
CVD法により厚さ50μmのRe層を析出させ,さら
に厚さ1000μmの5%Re−W合金層を析出させて
回転ターゲットとした。これを下記に示す回転試験と熱
衝撃試験を行ったが,良好な結果を得た。
【0049】(実施例2)実施例1と同様の方法で厚さ
0.5mmの一方向性プリプレグシートを作製し,プリ
プレグシートの段階で0°,90°に順番に25枚積層
して150℃でプレス後,1200℃まで窒素雰囲気中
でプレス焼成を実施し,さらにその積層物を3000
℃,アルゴン常圧雰囲気で焼成して基材を作製した。こ
れを機械加工後,実施例1と同様の方法でRe層及び5
%Re−W層をCVD法で析出させ回転ターゲットとし
た。これを実施例1と同様に回転試験と熱衝撃試験を行
い,実施例1と同様に良好な結果を得た。
【0050】(実施例3)実施例2において,厚さが
0.18mmである以外は同一の性状のプリプレグシー
トを作製した。このシートを同一方向に2枚づつ重ね1
組とした。この1組を0°と90°に交互に35組を積
層して基材を作製し,実施例2と同一の方法で回転ター
ゲットを作製した。これを実施例1と同様に回転試験と
熱衝撃試験を行い,良好な結果を得た。
【0051】(実施例4)実施例3と同様の方法で厚さ
が0.18mmのプリプレグシートを作製し,0/90
/45/−45に積層したものを1組として,それを同
じ方向に積み重ねた。積層方法以外は実施例3と同一の
方法で基材及び回転ターゲットを作製した。これを実施
例1と同様に回転試験と熱衝撃試験を行い,良好な結果
を得た。
【0052】(比較例1)実施例1と同様の方法で厚さ
0.5mmのプリプレグシートを作製した。このシート
を同一方向に4枚づつ重ね1組とした。この1組を0
°,90°に順番に6組積層した。これにより,1層の
厚さが2.0mmのUD C/C材を6枚直交に積層し
た基材を作製した。これを,実施例1と同一の方法で
W,Re−W層を析出させ,回転ターゲットを作製し
た。これを実験に用いたところ,熱衝撃試験でホットス
ポットが発生してRe−W層が一部溶融した。この結
果,比較令1は,熱伝導率が回転ターゲットとして不十
分であることを示している。
【0053】(比較例2)使用する炭素繊維としてPA
N系炭素繊維(弾性率500GPa)を用いた以外は実
施例1と同一の方法で基材及び回転ターゲットを作製し
た。できた基材の面方向の熱伝導率が40W/m・Kと
低く,回転試験により熱応力を受けて回転数28900
rpmで破損した。また,熱衝撃試験でRe−W層の全
面に溶融が認められた。したがって,弾性率が500G
Paより低い炭素繊維を用いたUDC/C材では,回転
ターゲットとしての十分な特性が得られていることが分
かる。
【0054】(比較例3)ピッチ系炭素繊維(東燃製,
FORCA FI700)を用いた平織布(1枚の厚さ
0.45mm)を使用し,これにフェノール樹脂を含浸
して,32枚積層し,それを150℃でプレス後,12
00℃までホットプレスで焼成後,3000℃アルゴン
常圧焼成したものを基材とした。これを実施例1と同一
の方法で機械加工したところ,繊維束間のポケット部に
1.0mm×0.5mmの楕円形の空孔が多数認められ
た。このため,CVD法で金属を析出させる前にこの空
孔部にフェノール樹脂を塗布し,2000℃窒素雰囲気
中で焼成をおこなった。実施例1と同一の方法でW,R
e−W層を析出させて回転ターゲットを作製したが,表
面が平滑にできなかった。このため,良好な金属層を得
ることができず,また,回転試験中にポケット部から炭
素粉末が飛散した。このことは,平織布を使用した回転
ターゲットでは,所望の特性が得られないことを意味し
ている。
【0055】(比較例4)マトリックスの作製の際に,
フェノール樹脂を100%使用する以外は,実施例1と
全く同一にしてUD C/C材を作製した。その結果,
良好なUD C/C材を作製することはできなかった。
このため,張り合わせにより(0/90)の基材の作製
は困難であった。
【0056】次に,上記実施例1,2,3,4及び比較
例1,2,3,4で作製した回転ターゲットの評価を行
った。試験は真空中/常温で40000rpmまで回転
させて遠心力による破壊の発生の有無を観察した。さら
に,この回転ターゲットにキセノンランプ加熱による熱
衝撃試験を実施した。キセノンランプの焦点が直径10
mmになるように調節して,1MW/m2 の熱流束をX
線発生層の円周部の8ケ所に5秒間与え,熱応力による
金属の溶融の有無を観察した。その結果を下記表2に示
す。
【0057】
【表2】 上記表2に示すように,本発明の実施例1〜4の回転タ
ーゲットの破壊回転数はいずれも40000rpm以上
であり,且つ熱衝撃試験においてもRe−W層の溶出も
なく,基材の表面状態が良好であった。しかし,比較例
1〜4のターゲットは,回転試験において著しく実施例
のものよりも劣り,熱衝撃試験において,Re−W層が
溶融したり(比較例1,2),空孔が生じたり(比較例
3),基材の作製が不可能(比較例4)なものもあっ
た。
【0058】
【発明の効果】以上,説明したように,本発明によれ
ば,軽量,熱放散性および引張強度に優れた基材,かつ
基材表面の平滑性を向上した回転ターゲットを提供する
ことができる。
【0059】また,本発明によれば,短時間,かつ安全
な医療診断が可能となり,実用上高性能の回転ターゲッ
トを提供することができる。
【0060】さらに,本発明によれば,医療診断におけ
る回転ターゲットの汎用性を著しく拡大できる回転ター
ゲットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回転ターゲットの一構造例を示す断面
図である。
【図2】炭素−炭素繊維複合材料を用いた回転ターゲッ
トの電子線照射による温度分布を示す平面図である。
【図3】従来例に係る炭素−炭素繊維複合材料を示す拡
大断面図である。
【符号の説明】
1 回転ターゲット 2 基材 3 X線発生層 4 孔 5 円錐斜面 10 繊維方向を示す矢印 11,12 ホットスポット発生部 13,14 高冷却部 15 電子照射域 51,52,53 炭素繊維束 54 マトリックス 55 表面
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 津島 栄樹 埼玉県入間郡大井町西鶴ケ岡1丁目3番1 号 東燃株式会社総合研究所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 厚さ1.0mm以下,繊維軸方向の引張
    強度が500MPa以上,及び熱伝導率400W/m・
    K以上の一方向性炭素−炭素繊維複合材を回転軸方向に
    3層以上に積層し面方向の熱伝導率が200W/m・K
    以上有する基材と,前記基材の片面に設けられたタング
    ステン又はタングステン合金からなるX線発生層とを備
    えたことを特徴とするX線管用回転陽極。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のX線管用回転陽極におい
    て,前記X線発生層はCVD法により形成されているこ
    とを特徴とするX線管用回転陽極。
  3. 【請求項3】 請求項1記載のX線管用回転陽極におい
    て,前記X線発生層は,前記基材にろう付けにより接合
    されていることを特徴とするX線管用回転陽極。
JP5580895A 1995-03-15 1995-03-15 X線管用回転陽極 Pending JPH08250053A (ja)

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