JPH08237Y2 - 舶用フラップラダーの振動防止装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この考案は、舶用フラップラダー
の振動防止装置に関する。

【０００２】本明細書において、「フラップラダー」と
はフラップ舵を備えた舵装置全体を指し、「フラップ
舵」とはフラップラダー中の一構成要素を指すものとす
る。

【０００３】

【従来の技術】フラップラダーは、図３の水平断面図に
示す如く舵板が主舵１とその主舵１の後縁に関節（ヒン
ジ）４を介して回動自在に取り付く主舵１より舵面積の
小さい副舵（フラップ舵）３とに分かれ、そのフラップ
舵３が連動装置５（図１参照）の働きで主舵１の舵角に
連動して主舵１に対して更に自己の舵角をとり、もって
舵全体の横推力を増長して船体をより小さな半径で旋回
させ得る装置として知られている。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】上記のようにフラップ
舵３は、主舵１の後縁に関節４を介して取り付けられて
いるが、運行中にフラップ舵３が水流により左右に振動
して機構を損じたり、不快な騒音のもととなることがあ
る。それは、フラップ舵３を取り付けている関節４や、
主舵１からフラップ舵３への連動装置５（図１）には、
もともと不可避の機械的な「がた」が存在する所へ、図
３の如く水流中に発生するカルマン渦８様の周期的な渦
や乱れによる外力が加わるために起こると考えられる。

【０００５】本来、船の直進時は舵角が零（中立）であ
るため、フラップ舵には原理的にどちらの向きにも外力
が加わらない。しかし、このような時でも上記のように
水流中に周期的な渦や乱れが発生すると、それはフラッ
プ舵に左右からの周期的な外力として加わる。しかも、
船の運行時間のほとんどは直進進行であるから、その間
騒音を発し続けるのみでなく、このように零を中心とし
たプラスマイナス方向の外力が、長時間にわたってフラ
ップ舵の関節や連動装置に繰り返し働くと機構は傷めつ
けられ、その本来の機能が損なわれるとともに、その機
械的な「がた」も加速度的に増大して補修に多大の労力
を要するという問題があった。この種問題は舶用サイド
スラスタ等においても存在し、すでに本出願人によって
ひとつの解決手段が与えられている（実公昭６０−１０
４０号公報参照）。この場合は、サイドスラスタの入力
軸ポッドの周囲に螺旋状に突起を巻設するようにしてい
るが、フラップラダーの場合には主舵がフラップ舵に連
なって存在するためこの構成は採り得ない。

【０００６】本考案は、かかる従来技術の課題に鑑み、
フラップ舵に所定の棒状突起を設けることにより振動や
騒音の防止ができるフラップラダーの振動防止装置を提
供することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】前記目的達成のため、本
考案の舶用フラップラダーの振動防止装置は、少なくと
も長さがフラップ舵のほぼ弦長にわたり、一方の側面に
は前上がりに、他方の側面には後ろ上がりに水平からそ
れぞれ２０〜４０°の勾配に傾斜させて左右非対称的に
複数の棒状突起をフラップ舵の両側面の上下方向に列設
し、該棒状突起の高さと幅とをいずれもフラップ舵弦長
の２〜５％とし、かつ、フラップ舵の一側面当たりの該
棒状突起の個数を６〜１５個に設定したことを特徴とす
る。

【０００８】

【作用】上記構成においては、図３に示すようなフラッ
プ舵付近に発生し、後方へ左右交互に成長するカルマン
渦様の水流の周期的な渦や乱れは、その発生部地点にて
上記の左右非対称的に配置された複数の棒状突起により
取り崩され、騒音や振動の原因は除去される。

【０００９】

【実施例】以下、本考案の一実施例を図面を参照しなが
ら説明する。

【００１０】図１において、主舵１は、船体Ｈに軸支さ
れた舵頭軸２により支持され操舵される。この主舵１の
後縁には、舵面積の小さいフラップ舵３が上下の関節
（ヒンジ）４を介して回動自在に枢着されている。この
フラップ舵３は、舵上部に設けた連動装置５につながれ
ており、主舵１の舵角に連動して主舵１に対しさらに主
舵１と同方向でかつ同様大きさの自己の舵角をとること
ができるようになっている。従って、例えば主舵１を右
に切ると、連動装置５によりフラップ舵３は主舵１に対
して更に右舵に切られ、両舵が相まってより大きな横推
力を発生して船体を強力に回頭させることができる。

【００１１】図１ないし図２に示すように、フラップ舵
３の両側面には、長さがフラップ舵３のほぼ弦長Ｌにわ
たり、一方の側面には前上がりに、他方の側面には後ろ
上がりに水平からそれぞれ角度αの勾配で左右非対称的
に、所要の大きさと数の棒状突起６が列設されている。

【００１２】棒状突起６の勾配の角度αは、２０°〜４
０°とする。角度αが２０°より小さいと、突起の左右
非対称性が小さくカルマン渦８（図３）を取り崩すこと
ができず、又角度αが４０°より大きいと水流に対し棒
状突起６の角度が倒れすぎて同様に効果が減少する。

【００１３】棒状突起６の断面の高さｈ（図２）と幅ａ
（図１）は、いずれもフラップ舵３の弦長Ｌの２〜５％
の範囲とする。これより、小さいと渦流の取り崩し効果
がなく、大きいと舵の前進水流に対する抵抗が大きくな
り過ぎる。

【００１４】棒状突起６の個数はフラップ舵３の側面片
方一面当たり６〜１５個とする。この場合も同様に少な
過ぎると効果がなく、多過ぎると抵抗が大きくなる。

【００１５】棒状突起６は上記のような長さ、取り付け
角度、断面の大きさ（ａ×ｈ）並びに本数のものを、例
えば鋼棒などで用意し、フラップ舵３の本体表面に溶接
固定するものとするが、もちろん上記範囲の大きさ数量
である限り、状況に応じて鋳出しその他公知の方法もと
り得る。

【００１６】必要に応じてフラップ舵３より前方、即ち
主舵１の後方にも上記のフラップ舵３の場合と同様な数
と大きさの棒状突起７を、フラップ舵３両側面上の棒状
突起６を延長するような形で列設してもよい。

【００１７】

【考案の効果】本考案は上記のように構成したので、フ
ラップ舵付近に発生し、後方へ左右交互に成長するカル
マン渦様の水流の周期的な渦や乱れは取り崩され、騒音
や振動の原因が除去される。従って船の運行時間のほと
んどをしめる直進進行時に騒音を発し続けたり、振動が
フラップ舵の関節や連動装置に加わって機構を傷め、補
修に多大の労力を要するという問題が解消される。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本考案の実施例にかかるフラップラダーの側
面図である。

【図２】 図１におけるＡ−Ａ断面図である。

【図３】 従来のフラップラダー後方におけるカルマン
渦の発生状況を示した水平断面図である。

【符号の説明】

１…主舵 ２…舵頭軸 ３…フラップ舵 ４…関節 ５…連動装置 ６、７…棒状突起 ８…カルマン渦

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 少なくとも長さがフラップ舵のほぼ弦長
   にわたり、一方の側面には前上がりに、他方の側面には
   後ろ上がりに水平からそれぞれ２０〜４０°の勾配に傾
   斜させて左右非対称的に複数の棒状突起をフラップ舵の
   両側面の上下方向に列設し、該棒状突起の高さと幅とを
   いずれもフラップ舵弦長の２〜５％とし、かつ、フラッ
   プ舵の一側面当たりの該棒状突起の個数を６〜１５個に
   設定したことを特徴とする舶用フラップラダーの振動防
   止装置。