JPH0822815B2 - 高度にフツ素化された有機化合物の安定乳濁液 - Google Patents

高度にフツ素化された有機化合物の安定乳濁液

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JPH0822815B2
JPH0822815B2 JP62013904A JP1390487A JPH0822815B2 JP H0822815 B2 JPH0822815 B2 JP H0822815B2 JP 62013904 A JP62013904 A JP 62013904A JP 1390487 A JP1390487 A JP 1390487A JP H0822815 B2 JPH0822815 B2 JP H0822815B2
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Description

【発明の詳細な説明】 発明の技術分野 本発明は高度にフツ素化された有機化合物の安定な乳
濁液ならびに同製造法および使用法に関する。更に詳し
く言えば、本発明は実質的に界面活性剤がなくそして重
要な意味をもつほどには水溶性でない油、水、界面活性
剤および高度にフツ素化された有機化合物からなる、室
温においても安定な新規乳濁液に関する。このような乳
濁液は酸素運搬剤、「人工血」あるいは赤血球代用物と
して、また生物学的イメージングの造影剤として使用さ
れる組成物にとりわけ有用である。
発明の背景 高度にフツ素化された有機化合物は化学的にそして医
薬品的に不活性であること、および大量の酸素を溶解し
運搬できることがよく知られている。この性質のため、
これら化合物は酸素運搬剤、「人工血」または赤血球代
用物として、また核磁気共鳴、超音波およびＸ−線とい
つた各種イメージング物理療法の造影剤として潜在的に
有用なものとなつている。しかし未希釈の過フツ化炭化
水素液体を血流中に注射することはできない。それはこ
れらの疎水性のため血液と混和せず、その結果これらが
小血管に運ばれたとき血管閉塞を起こし死亡することが
あるからである。結果として、静脈内注射を必要とする
医学的用途に対しては、高度にフツ素化された有機化合
物を生理学上容認できる乳濁液として分散させねばなら
ない。例えば、L.C.Clark,Jr.等の「Emulsions of Per
−fluorinated Solvents For Intravascular Gas Trans
port」、Fed. Proc.,34（６）,1468〜77頁（1975）;K.
Yokoyama等、「A Perfluorochenmical Emulsion As An
Oxygen Carrier」、Artif.Organs（Cleve）、８（１）,
34〜40頁（1984）；および米国特許第4,110,474号およ
び第4,187,252号明細書参照。
しかし、現在まで、「人工血」または血液代用物、酸
素運搬剤または生物学的イメージングのための造影剤と
しての、高度にフツ素化された有機化合物のこのような
乳濁液の医学上の有用性は望み通りに成功をおさめたこ
とがない。これは、実際上、例えば「人工血」のよう
に、投与できる乳濁液の全量が制限される臨床上の実際
面に要求される比較的大量の高度にフツ素化された有機
化合物を取り入れた安定な乳濁液を、以前には製造不可
能であつたという事実から生じている。更にまた、臨床
的に容認できる時間内に身体から排泄される高度にフツ
素化された有機化合物を使用したこのような乳濁液を、
以前に製造できたことがない（米国特許第3,911,138号
明細書参照）。最後に、治療上明らかに容認できないも
のでさえ、現在までに入手できた組成物は高温で不安定
なため滅菌が困難である。
これらの問題を解決するために、また臨床上適当な高
度にフツ素化された有機化合物を高濃度で含有する安定
な乳濁液をつくるため種々な試みがなされた。しかし成
功したものは何一つなかつた。例えば、安定性の向上を
目指して種々な過フツ化炭化水素およびそれらの組み合
わせが乳濁液の製造に使用された。室温で安定な、医学
的に有効で商業上受け入れることのできる乳濁液は何も
つくられなかつた。例えば、「人工血」として臨床試験
に達した唯一の過フツ素化炭化水素乳濁液「Fluosol DA
20％」は、二つの界面活性剤、卵黄リン脂質およびPlur
onic F68の混合物中に２種の過フツ化炭化水素、即ちペ
ルフルオロデカリンとペルフルオロトリプロピルアミン
を含む約12容量％乳濁液である。このものは液体状態で
不安定であり、凍結させて貯蔵せねばならない（Yok0ya
ma等、前出）。更にまた、その「安定化」を助長するた
めに要求されたこの乳濁液中のペルフルオロトリプロピ
ルアミンの存在は、乳濁液の医学的有用性を不利にして
いる。それは肝臓その他の身体組織中でのペルフルオロ
トリプロピルアミンの半減期が長く望ましくないからで
ある（例えば、K.Yokoyama等、参照前出）。最後にこの
乳濁液は僅か約12容量％の過フツ化炭化水素を含むに過
ぎず、その酸素含有容量が低いので、療法上望まれる程
有効ではない例えば（「急性貧血症における赤血球代用
物としてのFluosol−DA」、N.E.Jour.Med.,,314,1653〜
66頁（1986）参照）。
他の過フツ化炭化水素の乳濁液も同様に、これら不安
定さと酸素容量の問題回避の上で余り有効でなかつた。
例えば、２種の界面活性剤、即ちPluronicF−68と卵黄
リン脂質中のペルフルオロ−４−メチルオクタヒドロキ
ノリジジン（FMOQ）の乳濁液は４℃で貯蔵しなければな
らない（K.Yokoyama等、前出）。
酸素運搬剤および「人工血」として使用できる、高度
にフツ素化された有機化合物の有用な安定乳濁液を生ず
るかも知れないことを期待して、種々な界面活性剤も研
究されて来た。これらの試みも不成功に終つた。例え
ば、水素化リン脂質、非イオン重合体界面活性剤、およ
び６〜22炭素脂肪酸、それらの塩およびモノグリセリド
を含有する過フツ化炭化水素乳濁液もまた４℃で貯蔵せ
ねばならない。例えば、特願昭59−067,229号明細書、
米国特許第4.252,827号明細書、およびドイツ特許第263
0506号明細書参照。
それ故に、効果的な酸素運搬剤、「人工血」または赤
血球代用物、および生物学的イメージング用の造影剤と
して、高度にフツ素化された有機化合物を医学的または
非医学的に使用することは、依然久しく要求されて来た
重要な目標である。
発明の要約 本発明は前記の諸問題に解決を与えるものである。本
発明は酸素運搬剤、「人工血」または赤血球代用物とし
て、また種々な生物学的イメージング物理療法に対する
造影剤として使用できる、高度にフツ素化された有機化
合物の新規乳濁液を提供する。本発明はまた、血液代用
物としての応用には高い酸素含有容量が要求されるの
で、代用血液として使用される乳濁液に要求される高度
にフツ素化された有機化合物を高濃度で含む場合でも安
定な乳濁液を提供する。本発明はまた肝臓および他の身
体組織から申し分なく迅速な排泄時間を示す過フツ化炭
化水素のみを使用する安定な乳濁液を提供する。最後
に、本発明は容易に滅菌される乳濁液を提供する。
本発明乳濁液は少なくとも１種の高度にフツ素化され
た有機化合物、実質的に界面活性がなく重要な意味をも
つ程水溶性でない油、界面活性剤および水からなる。
本発明はまたこれら乳濁液の製造法ならびにこれらを
酸素運搬剤、「人工血」あるいは赤血球代用物、および
生物学的イメージング用造影剤として使用する方法およ
び組成物も包含する。
本発明はまたガスまたは蒸気肺動脈塞栓症を起こすこ
となくヘルフルオロインダンまたはその乳濁液を動物に
おけるガス運搬剤またはNMR造影剤として使用すること
も包含する。
発明の詳細な記述 本発明乳濁液は、少なくとも１種の高度にフツ素化さ
れた有機化合物、実質的に界面活性剤がなくまた重要な
意味をもつ程水溶性でない油、界面活性剤および水から
なる。
特に適当な本発明乳濁液は長時間室温で安定である。
これらは貯蔵中実質的に相分離を示さずかつ粒子または
小滴の粒径分布に実質的に変化を示さない。更にまた、
本乳濁液は肝臓および他の身体組織から申し分なく迅速
な排泄時間を示す高度にフツ素化された有機化合物の使
用を可能にする。またこれらは高濃度の過フツ化炭化水
素の使用を可能にするので、療法上効果的な代用血液と
しての本発明乳濁液の使用に要求される高酸素含有容量
乳濁液を製造できる。最後に、本発明乳濁液は安定なの
で、これらは高温度に、例えば115℃に15分加熱するこ
とにより滅菌できる。本発明の非常に驚くべき一面はこ
のような厳しい条件でも本発明乳濁液の相分離を起こさ
ないことである。これら新規な予想外の特性の結果とし
て、本発明乳濁液は先行技術による過フツ化炭化水素含
有組成物の長く続いた問題を解決しそしてこれら高度に
フツ素化された有機化合物を先ず第一に酸素運搬剤、
「人工血」または赤血球代用物としてまた生物学的イメ
ージングのための造影剤として使用するために、商業上
有用な形で入手できるようにしたのである。
理論に拘束されることは望まないが、本発明者等は、
本発明乳濁液が高度フツ素化有機化合物を油の中に分散
した状態で含むこと、および油−過フツ化炭化水素の組
み合わせは水と界面活性剤の中に乳化しているものと考
えている。しかし、他の可能な相および界面も本発明の
範囲と意図の中にある。
本発明乳濁液および方法に有用な高度にフツ素化され
た有機化合物は酸素運搬剤、「人工血」あるいは赤血球
代用物、および生理学的イメージング用の造影剤として
以前に言われたものである。これらには例えば過フツ化
炭化水素、部分フツ素化炭化水素およびそれらの誘導体
および混合物が含まれる。例えば、本発明乳濁液に有用
なフルオロ含有化合物には９〜18炭素の過フツ化炭化水
素、例えばペルフルオロデカリン、ペルフルオロ−トリ
メチル−ビシクロ（3.3.1）ノナンおよびペルフルオロ
−2,2,4,4−デトラメチルペンタン、９〜12炭素ペルフ
ルオロアミン、例えばペルフルオロトリプロピルアミ
ン、ペルフルオロトリブチルアミン、ペルフルオロジメ
チルアダマンタン、ペルフルオロ−１−アザ−三環式ア
ミン、ブロモ−またはヨード−置換過フツ化炭化水素、
およびＦ−４−メチルオクタヒドロキノリジジンがあ
る。このような化合物は、例えば米国特許第3,962,439
号、第3,493,581号、第4,110,474号、第4,186,253号、
第4,187,252号、第4,252,827号、第4,423,077号、第4,4
43,480号、第4,534,978号および第4,542,147号明細書、
欧州特許願第80710号および第158,996号明細書、英国特
許第1,549,038号明細書およびドイツ特許第2,650,586号
明細書に記述されている。当然のことながら、これら高
度にフツ素化された有機化合物の混合物も本発明に係る
乳濁液および方法に使用できる。
なるべく本発明乳濁液は１種以上の過フツ化炭化水素
を含むのがよく、そしてペルフルオロデカリン、ペルフ
ルオロジメチルアダマンタン、ペルフルオロオクチルブ
ロミド、ペルフルオロ−４−メチルオクタヒドロキノリ
ジジン、ペルフルオロ−Ｎ−メチル−デカヒドロキノリ
ン、Ｆ−メチル−１−オキサ−デカリン、ペルフルオロ
−ビシクロ（5.3.0）デカン、ペルフルオロ−オクタヒ
ドロキノリジジン、ペルフルオロ−5,6−ジヒドロ−５
−デセン、ペルフルオロインダン、ペルフルオロトリメ
チルシクロヘキサン、ペルフルオロイソプロピルシクロ
ヘキサン、およびペルフルオロ−4,5−ジヒドロ−４−
オクテンからなる群から選ばれる過フツ化炭化水素を含
むのが最も好ましい。生物学的イメージングの造影剤と
して使用するには、ペルフルオロオクチルブロミドが本
発明に係る特に適当な高度にフツ素化された有機化合物
の一つである。
高度にフツ素化された有機化合物またはこのような化
合物の混合物は、本発明乳濁液の約75％（容量）までを
占めることができる。なるべく本発明乳濁液は10％から
約70％（容量）の過フツ化炭化水素を含有するのがよ
い。乳濁液を「人工血」あるいは赤血球代用物として用
いようとするとき、フルオロ含有化合物はできるだけ高
い容量濃度で存在するのがよい。しかし、40％（容量）
がしばしば好ましいのはこの濃度が全血の近似の酸素含
有容量に匹敵するからである。
本発明に係る乳濁液および方法に役立つ、実質的に界
面活性がなくかつ重要な意味をもつ程は水溶性でない油
には、液体脂肪油、炭化水素、ワツクス、例えば脂肪酸
およびモノヒドロキシアルコールのモノエステル、長鎖
エーテル、ジグリセリド、シリコーン油およびニトリル
類がある。これらには、例えばパルミトイルオレエー
ト、オクチルニトリル、ドデシルニトリル、大豆油、ベ
ニバナ油、ヘキサデカン、Ｃ112〜18炭素鎖と一つの不
飽和を有するジグリセリド、および鉱油が含まれる。フ
ルオロ含有成分の場合と同様、これら油もまた本発明に
係る乳濁液および方法に単独でまたは種々な組み合わせ
で使用できる。本発明乳濁液を医学的に使用しようとす
るとき、当然のことながら油または油の組み合わせが生
理学上容認できなければならない。例えば、本乳濁液を
「人工血」として用いようとする場合、本発明者等は生
理学上容認しうる液体脂肪油を用いるのがよいと考え
る。
本発明乳濁液中に存在する油または油類の量は、広範
囲の濃度にわたり変化しうる。これは乳濁液の他の成分
の濃度と性質に依存し、主として乳濁液の過フツ化炭化
水素成分の特性に左右される。成分の特定の組に対し容
認しうる乳濁液をつくる実際の油濃度は、本発明の教示
による通り、種々な油濃度で乳濁液をつくりその安定性
を試験するという簡単な技術を用いて容易に決定され
る。この教示の範囲内で本発明者等は、典型的には約10
から30％（乳濁液の残りの非過フツ化炭化水素の量の重
量％）の油または油混合物を使用する。なるべくは約15
から20重量％を用いるのがよい。
本発明乳濁液に役立つ界面活性剤は公知の陰イオン、
陽イオン、非イオンおよび双性イオン界面活性剤のいず
れかである。これらには、例えば陰イオン界面活性剤、
例えばアルキルまたはアリールサルフエート、スルホネ
ート、カルボキシレート、またはホスフエート、陽イオ
ン界面活性剤、例えばモノ−、ジ−、トリ−、およびテ
トラアルキルまたはアリールアンモニウム塩、非イオン
界面活性剤、例えばアルキルまたはアリール化合物（そ
の親水性部分がポリオキシエチレン鎖、糖分子、ポリア
ルコール誘導体または他の親水性基からなる）、および
双性イオン界面活性剤（これは上記陰イオンまたは陽イ
オン基の組み合わせでもよく、その疎水性部分は他の重
合体、例えばポリイソブチレンまたはポリプロピレンオ
キシドからなる）が包含される。この場合もまた当然の
ことながら、これら界面活性剤の組み合わせを本発明に
係る乳濁液に使用できる。更にまた化合物の混合物で、
そのうちの一つ以上が界面活性剤でないが組み合わされ
たときその化合物が界面活性剤として作用する混合物も
本発明乳濁液の界面活性剤成分として順調に使用でき
る。
また、本発明乳濁液を「人工血」あるいは赤血球代用
物に用いようとするとき、界面活性剤またはそれらの組
み合わせは生理学上容認できなければならない。例え
ば、「人工血」においては非イオン界面活性剤が好まし
い。本発明乳濁液に用いる界面活性剤は下記のもの：卵
ホスフアチド、レシチン、およびオレイン酸アルカリ
塩、例えばオレイン酸ナトリウムの１種以上がよい。
本発明乳濁液に用いる個々の界面活性剤の量は、乳濁
液の他の成分の量や性質に依存するが、典型的には、約
0.5から７％（非過フツ化炭化水素量の重量％）の界面
活性剤が使用される。更に好ましくは約１〜２％（重
量）を使用する。
高度にフツ素化された有機化合物、油、界面活性剤お
よび水に加えて、本発明乳濁液は「人工血」または代用
血、酸素運搬剤、または生物学的イメージングの造影剤
に通常使用される他の成分も含みうる。例えば、代用血
として用いるとき、本発明に係る乳濁液は、乳濁液の浸
透性をおよそ血液のそれに調節するため等張剤、典型的
にはグリセリンを含むべきである。典型的には約2.5％
（非過フツ化炭化水素量の重量％）のグリセリンが使わ
れる。しかし、他の量および他の浸透圧調節剤、例えば
Tyrode溶液も同様に使用できる。本発明乳濁液はまた他
の成分、例えば腫張剤、例えばデキストランまたはHE
S、および酸化防止剤も含みうる。
本発明乳濁液は、本発明乳濁液の四つの主成分、即ち
高度にフツ素化された有機化合物、油、界面活性剤およ
び水をどの混合順序で用いても調製できる。しかし最適
乳濁液を得るには、界面活性剤の全部または一部と若干
の水との組み合わせの存在で、最初に過フツ化炭化水素
を油と混合するのがよいと考えられる。次に、この最初
の乳濁液を残りの水および残りの界面活性剤中に乳化す
ることにより最終乳濁液を調製する。
本発明に係る成分の混合と乳化は従来の混合器および
乳化器のいずれかを用いて行なわれる。例えば、Fisher
ブランド・タツチ・ミキサーおよびミクロフルイダイザ
ーを使用できる。また必要に応じ、通常の摩砕によつて
本発明乳濁液における平均的な小滴または粒子の大きさ
を減らすこともできる。
本発明の一形式においては、例えばペルフルオロイン
ダンを適当な界面活性剤を用いて水中に乳化する。もう
一つの形式では、ペルフルオロインダンを前以て調製さ
れた静脈内投与用乳濁液の中に乳化する。水中に約20か
ら約50容量％またはそれ以上のペルフルオロインダンを
含む乳濁液をつくることができる。乳化剤は約１から10
％のオーダーで含まれ、例として卵ホスフアチド、リン
脂質または約8200の分子量をもつポリオキシエチレン−
ポリオキシプロピレン共重合体（Pluronic F−68）があ
げられる。他の型の界面活性剤、例えばアルブミン、グ
リセリン、デキストラン、ゼラチン、または他の天然に
依存する界面活性剤も使用できる。溶血を起こさない非
イオン界面活性剤が好ましい。乳濁液にはペルフルオロ
インダンおよび界面活性剤以外にイオン性の成分を含め
るのがよいが、これは絶対必要なことではない。界面活
性剤の大部分はかなり大きい浸透活性をもつので、高浸
透圧溶液とならないようにイオン組成を調節する何らか
の考慮を払わねばならない。概して、乳濁液の調製にお
いては、およそ0.6から0.9重量％の塩化ナトリウムが添
加されるが、それはこれが溶血を起こさずにかなり迅速
に注入できる濃度だからである。リンゲル液をそのま
ゝ、あるいは水で二分の一濃度に希釈して適宜使用でき
る。ペルフルオロインダンまたはペルフルオロインダン
含有液体組成物の導入により冠状動脈における酸素運搬
が促進される。分離した動物器官をペルフルオロインダ
ンまたは同化合物を含有する液体組成物で灌流できる。
更にまた、本発明ペルフルオロインダン組成物は米国特
許第4,586,511号明細書記載の手順に従いNMR技術を利用
して使用することができる。
下記の例は本発明の各種具体例を説明するものである
が制限を与えるものではない。
例１ 本例では二つの乳濁液を同じ方法でつくりそれらの安
定性を比較した。第一の乳濁液はペルフルオロデカリン
40容量％と次の混合物、即ち水（96.3重量％）、レシチ
ン（1.2重量％）、グリセリン（2.5重量％）および水酸
化ナトリウム（pH8にするまで）の混合物60容量％から
なる通常の組成物であつた。第二の乳濁液は本発明に従
つて調製した。このものは下記の組成：ペルフルオロデ
カリン40容量％と次の混合物、即ち水（78.8重量％）、
レシチン（1.2重量％）、グリセリン（2.5重量％）、大
豆油（17.5重量％）および水酸化ナトリウム（pH8にす
るまで）の混合物60容量％を有した。これら二つの乳濁
液は、それらの成分を一緒にFisherブランド・タツチ・
ミキサーで混合し、次にミクロフルダイザーに60ポンド
／平方インチで30分間流すことにより調製した。
第一の乳濁液は光学顕微鏡検査によると第二の乳濁液
よりも小さい平均小滴粒径を有した。このものはまたよ
り高濃度の水を含み、従つて第二の乳濁液より分散相が
少なかつた。従つてこれらだけに基づくと、第一の乳濁
液の方が第二の乳濁液より一層安定であることが期待で
きる筈であつた。しかし、第一の「乳濁液」は非常に不
安定で、室温において24時間以内に相分離を示した。第
二の乳濁液（本発明に従つて調製したもの）は大きい平
均小滴または粒子粒径と多量の分散相を有しながら、驚
く程非常に安定で、室温において４周間の貯蔵中実質的
に相分離を示さず、また小滴あるいは粒子の粒度分布に
実質的に変化を示さなかつた。
この比較は本発明乳濁液が、高度にフツ素化された有
機化合物の先行組成物とは異種のものであることをはつ
きり実証している。本発明乳濁液の方がずつと安定であ
るだけでなく、これらはより大きい平均粒径あるいは小
滴粒径を有しながら、かつより多量の分散相を有しなが
ら驚く程安定なのである。
例２ ペルフルオロデカリン40容量％と次の成分、即ちベニ
バナ油（10重量％）、大豆油（10重量％）、レシチン
（1.2重量％）、グリセリン（2.5重量％）、水（76.3重
量％）および水酸化ナトリウム（pH8.3にするまで）を
含有する第一乳濁液60容量％を含む乳濁液を調製した。
ペルフルオロデカリン20mlと第一乳濁液30mlとを合わ
せ、この合併液をFisherタツチ・ミキサーで20分間混合
することにより最終乳濁液を調製した。次に得られた乳
濁液をミクロフルイダイザーに60ポンド／平方インチで
１時間流した。
得られた均質化乳濁液は室温で４週間後も安定である
ことが光学顕微鏡検査により実証された。この検査の示
すところによると粒子または小滴の粒度分布に実質的に
変化がなく、また相分離も実質的になかつた。
例３ 例２に記載の方法と実質的に同じ方法を用いて、ペル
フルオロデカリン40容量％と下記の成分、即ちベニバナ
油（10重量％）、大豆油（10重量％）、レシチン（2.0
重量％）、グリセリン（2.5重量％）、水（75.5重量
％）および水酸化ナトリウム（pH8.3にするまで）を含
む第一乳濁液60容量％とを含有する乳濁液を調製した。
前と同様、得られた乳濁液は室温で４週間後も依然安定
であつた。
例４ ペルフルオロデカリン40容量％と下記の成分、即ちベ
ニバナ油（10重量％）、大豆油（10重量％）、レシチン
（2.0重量％）、グリセリン（2.5重量％）、XMO−20
（例えば、米国特許第4,443,480号明細書参照）（0.1重
量％）、水（75.4重量％）および水酸化ナトリウム（pH
8.3となるまで）を含む第一乳濁液60容量％とを含有す
る乳濁液を調製した。ペルフルオロデカリン20mlを第一
乳濁液30mlと一緒にし、この合併液をFisherタツチ・ミ
キサーでレシチンとXMO−20が完全に溶けるまで混合す
ることにより最終乳濁液をつくつた。次にこの乳濁液を
ミクロフルイダイザーに60ポンド／平方インチで30分間
流した。得られた乳濁液は室温で４週間後もなお安定で
あつた。
例５ ペルフルオロデカリン40容量％と次の成分、即ちベニ
バナ油（10重量％）、大豆油（10重量％）、レシチン
（1.2重量％）、グリセリン（2.5重量％）、オレイン酸
（0.8重量％）、水（75.5重量％）、および水酸化ナト
リウム（pH8.3となるまで）を含む第一乳濁液60容量％
とを含有する乳濁液をつくつた。ペルフルオロデカリン
20mlを第一乳濁液30mlとFisherタツチ・ミキサーで10分
間混合し、得られた乳濁液をミクロフルイダイザーに45
分間通すことにより最終乳濁液をつくつた。得られた乳
濁液は室温で４週間後もなお安定であつた。
例６ 例５の最終乳濁液に最終濃度２％（重量）までレシチ
ンを加え、レシチンが完全に溶解し終るまでこれを混合
した。次にこの乳濁液をミクロフルイダイザーに60ポン
ド／平方インチで30分間流した。得られた乳濁液は室温
で４週間後もなお安定であつた。
例７ ペルフルオロデカリン40容量％と、次の成分、即ち水
（78.8重量％）、レシチン（1.2重量％）グリセリン
（2.5重量％）、大豆油（17.5重量％）および水酸化ナ
トリウム（pH8.0になるまで）を含む混合物60容量％と
を含有する乳濁液をつくつた。レシチン0.377gをペルフ
ルオロデカリン20mlとFisherブランド・タツチ・ミキサ
ーで10分間混合することにより乳濁液をつくつた。次に
大豆油5.4915gを加え、再び10分間混合し、グリセリン
0.7945gを加え、再び10分間混合した。最後に水24.721g
をかきまぜながら段階的に加えた。この添加は、最初1
2.36gの水を混合物に加えて過フツ化炭化水素−油−レ
シチン混合物を分散させることにより行ない、得られた
分散液をミクロフルイダイザーで60ポンド／平方インチ
において30分間乳化した。次にミクロフルイダイザーか
ら乳濁液を取り出し、残りの水をミクロフルイダイザー
に注入した。前に調製した乳濁液をこの水に滴加後、得
られた混合物をミクロフルイダイザーに60ポンド／平方
インチで30分流し、水酸化ナトリウムでpHを8.0に調節
した。次に再びこの乳濁液をミクロフルイダイザーに60
ポンド／平方インチで30分間流した。最終乳濁液は室温
で４週間後もなお安定であつた。
例８ ペルフルオロデカリン40容量％と次の成分、即ち水
（78.8重量％）、レシチン（1.2重量％）、グリセリン
（2.5重量％）、ヘキサデカン（17.5重量％）、および
水酸化ナトリウム（pH8.0になるまで）を含む混合物60
容量％とを含有する乳濁液を調製した。例７記載の方法
と実質的に同じ方法を使用した。最終乳濁液は室温で４
週間後もなお安定であつた。
例９ 例８のものと同様の乳濁液をつくるが、ただしヘキサ
デカンの代りに鉱油を使用した。この場合もまた、乳濁
液の調製に例７記載のものと実質的に同じ方法を使用し
た。最終乳濁液は室温で４週間後もなお安定であつた。
例10 ペルフルオロデカリン55容量％と次の成分、即ちベニ
バナ油（10重量％）、大豆油（10重量％）、グリセリン
（2.5重量％）、レシチン（２重量％）および水（75.5
重量％）、および水酸化ナトリウム（pH8になるまで）
を含む混合物45容量％とを含有する乳濁液をつくつた。
この乳濁液をつくるため、油含有混合物18ml、ペルフル
オロデカリン22ml、およびオレイン酸１％（全体に基づ
いた重量％）を用いた。例７記載のものと実質的に同じ
方法を使用した。最終乳濁液をFisherタツチ・ミキサー
で20分間、次にミクロフルイダイザーで65ポンド／平方
インチにおいて15サイクルの間混合した。この乳濁液は
室温で安定であつた。
例11 ペルフルオロデカリン70容量％と下記の成分、即ちベ
ニバナ油（10重量％）、大豆油（10重量％）、レシチン
（1.2重量％）、グリセリン（2.5重量％）、水（76.3重
量％）、および水酸化ナトリウム（pH8.0になるまで）
を含む混合物30容量％とを含有する乳濁液をつくつた。
最終乳濁液を調製するため、ペルフルオロデカリン21m
l、油含有混合物9ml、およびオレイン酸0.5％（全体に
基づく（重量％）を使用した。例10におけるように、最
終乳濁液をつくるため例７記載の方法と実質的に同じ方
法を用いた。次に最終乳濁液をFisherタツチ、ミキサー
で20分間、次にミクロフルイダイザーで65ポンド／平方
インチにおいて15サイクルの間混合した。この乳濁液は
室温で安定であつた。
例12 ペルフルオロオクチルプロミド16.5ml（55容量％）と
他の成分の例11記載のものと同じ混合物13.5mlとを含む
乳濁液を調製した。第10および例11に記載のそれと同じ
混合および流動化の様式を用いた。最終乳濁液は室温で
安定であつた。
例13 Abbott Laboratories製造の静脈内投与用脂肪乳濁
液、即ちLIPOSYN IIの中にペルフルオロインダン10容量
％を混合することによりペルフルオロ−シス−インダン
の乳濁液を調製した。LIPOSYN IIは10％および20％濃度
で供給される。本例では、10％濃度のLIPOSYN IIを使用
したが、このものは注射用水の中にベニバナ油５％、大
豆油５％、乳化剤として添加された卵ホスフアチド1.2
％まで、およびグリセリン2.5％を含む。水酸化ナトリ
ウムを添加してpHを約8.0に調節した。LIPOSYN II 10％
はおよそ320mosm/lの浸透圧濃度をもつ。脂肪、リン脂
質およびグリセリンを含むLIPOSYN II 10％の全カロリ
ー値は1.1Kcal/mlである。この全体のうち約0.6Kcal/ml
はリノール酸により供給される。
本例におけるペルフルオロインダン乳濁液を、次に体
重１キログラム当り20ccの用量でマウスに静脈内注射し
た。静脈注射時に毒性の微候およびガスまたは蒸気塞栓
症のきざしはなかつた。またペルフルオロインダンはペ
ルフルオロデカリンより約５倍早く動物の身体から排泄
されることも決定された。更に詳しく言えば、ペルフル
オロインダンに対する平均蒸散速度（マイクロリツトル
／日で表わす）は注入時の約30マイクロリツトル／日か
ら２日目の約５マイクロリツトル／日のレベルに減少
し、続いて３日目後１マイクロリツトル／日未満に迅速
に減少した。
比較のため、ペルフルオロ−1,3,5−トリメチルシク
ロヘキサンを10％LIPOSYN II中約10容量％の濃度で同様
の仕方で乳化し、約20cc/キログラムの用量でマウスに
静脈内注射した。マイクロリツトル／日で表わした平均
蒸散速度は注入直後約10のレベルで観察され、１日目後
約５マイクロリツトル／日のレベルにそして４日目後約
２1/2マイクロリツトル／日に減少した。それ故に、ペ
ルフルオロインダンの蒸散速度と比較してみると、後者
は類縁化合物あるいは姉妹化合物とみなされるペルフル
オロトリメチルシクロヘキサンの速度より相当に早い。
同様な仕方でペルフルオロイソプロピルシクロヘキサ
ンを、10％LIPOSYN IIを用いて約10容量％の濃度で乳化
し、約20cc/キログラムの用量でマウスに静脈内注射し
た。予想した通り、このペルフルオロイソプロピルシク
ロヘキサンの蒸散速度はペルフルオロトリメチルシクロ
ヘキサンのそれと本質的に同じであつた。しかし、ペル
フルオロインダンと比較すると、後者はマウスの身体か
ら予想外に早い速度で蒸散あるいは除去される。
このようにして、本例はガスまたは蒸気塞栓症を起こ
すことなく、ペルフルオロインダンを動物体に注射でき
ることを実証している。更にまた、有毒な影響を伴なわ
ずにガス運搬の機能を果たすようペルフルオロインダン
の乳濁液をつくりそして静脈内に注入できる。更にま
た、類似化合物と比較したとき、全く予想外に蒸散速度
が有意に早い。
例14 ペルフルオロ−シス−インダンに対する例13の手順を
繰り返すが、ただし10％LIPOSYN IIを用いて10容量％の
乳濁液を40cc/キログラムの用量でマウスに静脈内注射
した。ペルフルオロインダンのより大量を用いて同様な
蒸散速度が観察されたが、ただし注射後により多量のペ
ルフルオロインダンが蒸散していた、即ちおよそ１日目
で約30マイクロリツトル／日、２日目で約17マイクロリ
ツトル／日、３日目で約10マイクロリツトル／日、４日
目で約４マイクロリツトル／日、そして７日目でほとん
ど０マイクロリツトル／日が観察された。それ以外は、
40cc/キログラムのレベルで静脈内注射したマウスにつ
いての実験で、例13によるもつと低用量の20cc/キログ
ラムにおける結果と本質的に同じ結果が得られた。
本発明者等は本発明の幾つかの具体例を上に記述して
来たが、他の具体例も本発明の範囲内に存在することが
明らかとなつたに違いない。それ故、本発明の範囲は、
例として前に提出された特定の具体例によるのでなく特
許請求の範囲によつて定義されるべきであることを理解
されるに違いない。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 ＦＩ 技術表示箇所 Ａ６１Ｋ 49/04 Ａ (72)発明者 ロバート エフ．ショウ アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフラ ンシスコ，テイラー ストリート 1750 (56)参考文献 特開 昭58−225013（ＪＰ，Ａ) 特開 昭50−69219（ＪＰ，Ａ) 特開 昭59−67229（ＪＰ，Ａ) 米国特許4252827（ＵＳ，Ａ)

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】高度にフッ素化された有機化合物、実質的
    に界面活性がなくまた有意に水溶性でない油、界面活性
    剤および水からなる生理学的に許容される乳濁液。
  2. 【請求項２】高度にフッ素化された有機化合物が75容量
    ％までの量で存在する特許請求の範囲第１項記載の乳濁
    液。
  3. 【請求項３】高度にフッ素化された有機化合物が10〜70
    容量％の量で存在する特許請求の範囲第１項記載の乳濁
    液。
  4. 【請求項４】高度にフッ素化された有機化合物は、ペル
    フルオロデカリン、ペルフルオロジメチルアダマンタ
    ン、ペルフルオロオクチルブロミド、ペルフルオロ−４
    −メチル−オクタヒドロキノリジジン、ペルフルオロ−
    Ｎ−メチル−デカヒドロキノリン、Ｆ−メチル−１−オ
    キサ−デカリン、ペルフルオロ−ビシクロ（5.3.0）デ
    カン、ペルフルオロオクタヒドロキノリジジン、ペルフ
    ルオロ−5,6−ジヒドロ−５−デセン、ペルフルオロイ
    ンダン、ペルフルオロトリメチルシクロヘキサン、ペル
    フルオロイソプロピルシクロヘキサンおよびペルフルオ
    ロ−4,5−ジヒドロ−４−オクテンから選ばれる、特許
    請求の範囲第１項記載の乳濁液。
  5. 【請求項５】115℃で15分間加熱後安定である特許請求
    の範囲第１項記載の乳濁液。
  6. 【請求項６】油は、高度にフッ素化された有機化合物の
    外の成分の量の10から30重量％の量で存在する、特許請
    求の範囲第１項記載の乳濁液。
  7. 【請求項７】油は、高度にフッ素化された有機化合物の
    外の成分の量の15から20重量％の量で存在する、特許請
    求の範囲第６項記載の乳濁液。
  8. 【請求項８】油は液体脂肪油である特許請求の範囲第１
    項〜第７項のいずれか一つに記載の乳濁液。
  9. 【請求項９】界面活性剤は、高度にフッ素化された有機
    化合物の外の成分の量の0.5から７重量％の量で存在す
    る。特許請求の範囲第１項記載の乳濁液。
  10. 【請求項１０】界面活性剤は、高度にフッ素化された有
    機化合物の外の成分の量の１から２重量％の量で存在す
    る、特許請求の範囲第９項記載の乳濁液。
  11. 【請求項１１】界面活性剤はレシチン、卵ホスフアチド
    およびオレイン酸のアルキル塩から選ばれる、特許請求
    の範囲第１項〜第10項のいずれか一つに記載の乳濁液。
  12. 【請求項１２】等張剤、浸透圧調節剤、血清増量剤およ
    び酸化防止剤から選択される少なくとも１種の化合物を
    さらに含む、特許請求の範囲第１項記載の乳濁液。
  13. 【請求項１３】高度にフッ素化された有機化合物、実質
    的に界面活性がなくかつ有意に水溶性でない油、界面活
    性剤および水からなる生理学的に許容される乳濁液の製
    造方法において、界面活性剤の全部または一部および水
    の若干の存在下に、高度にフッ素化された有機化合物を
    油と混合することにより最初の乳濁液をつくり、次いで
    この最初の乳濁液、残りの水および残りの界面活性剤を
    乳化することにより、最終乳濁液をつくる工程からなる
    ことを特徴とする方法。
  14. 【請求項１４】最終乳濁液を115℃に加熱することによ
    り最終乳濁液を滅菌する工程をさらに含み、かつ乳濁液
    はこれらの条件下でその安定性を保つ、特許請求の範囲
    第13項記載の方法。
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