JPH08225489A - テレフタル酸の製造方法 - Google Patents

テレフタル酸の製造方法

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JPH08225489A
JPH08225489A JP7294050A JP29405095A JPH08225489A JP H08225489 A JPH08225489 A JP H08225489A JP 7294050 A JP7294050 A JP 7294050A JP 29405095 A JP29405095 A JP 29405095A JP H08225489 A JPH08225489 A JP H08225489A
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terephthalic acid
crystallization
tank
particles
slurry
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JP7294050A
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Yoshiaki Izumisawa
義昭 泉沢
Tsukasa Kawahara
司 川原
Akihiko Toyosawa
明彦 豊澤
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Mitsubishi Chemical Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 スラリー特性、反応性、粉体流動性等に優れ
た高純度テレフタル酸を取得する。また、テレフタル酸
の製造系で生ずる熱エネルギ−の効率的な回収を行う。 【解決手段】 粗テレフタル酸を水性媒体に溶解させ、
260〜320℃の温度条件下、白金族金属触媒と接触
させて精製し、該テレフタル酸の水性溶液からテレフタ
ル酸を直列に接続した複数の晶析槽で段階的に冷却して
晶析するに際し、第1晶析帯域における晶析温度を24
0〜260℃とし、攪拌翼にて攪拌動力0.4〜10k
w/m3 の範囲で攪拌下で晶析を行った後、固液分離
し、分離したテレフタル酸粒子を乾燥して粒径が210
μmを越える割合が10重量%以下のテレフタル酸粒子
を得ること、及び、第1晶析帯域の晶析槽の放圧冷却に
より発生する蒸気を、粗テレフタル酸スラリ−を溶解さ
せるための加熱エネルギ−として使用することを特徴と
するテレフタル酸の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はテレフタル酸の製造
方法に関する。詳しくは、ポリエチレンテレフタレ−ト
などのポリエステルの製造原料として好適なテレフタル
酸の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】パラキシレンの酸化によって得られる粗
テレフタル酸中には、通常、4−カルボキシベンズアル
デヒド(「4CBA」と略して示す)をはじめとする各
種の不純物が比較的多量に含まれており、従来、これを
精製した後で、ポリエステルの原料として用いている。
このような粗テレフタル酸の精製方法としては、粗テレ
フタル酸を水性媒体に溶解させ、高圧・高温下、白金族
金属触媒と接触させて精製する方法が一般的である(特
公昭41−16860号等)。
【0003】そして、該精製反応を行った後のテレフタ
ル酸結晶の回収方法として、テレフタル酸の水溶液又は
水性スラリ−を、直列に接続した複数の晶析槽で段階的
に冷却して晶析する方法が知られている。例えば、特公
昭53−24057号公報には、晶析槽の温度設定を前
段より結晶の析出率が小さくなるよう冷却することによ
り、4−カルボキシベンズアルデヒドを水素添加して変
換したp−トルイル酸のテレフタル酸の混入を防止し、
テレフタル酸の純度を保持する方法が開示されている。
なお、該公報には、各晶析条件とテレフタル酸結晶の平
均粒径、粒度分布についての関係については何ら記載が
ない。
【0004】一方、近年、テレフタル酸とグリコール類
と直接反応させるいわゆる直接重合法によりポリエステ
ル、特にポリエチレンテレフタレ−トを製造する方法が
さかんである。この直接重合法において、テレフタル酸
はエチレングリコール等のグリコール類と混合してスラ
リー状態で反応系へ送られ、反応に供される。この際、
反応の均一性を高めるために、テレフタル酸のスラリー
流動性がより優れたものであることが望まれる。また、
テレフタル酸の輸送、貯蔵等粉体の取り扱いにおいて、
良好な粉体流動性も要求されている。
【0005】テレフタル酸のスラリー流動性は、テレフ
タル酸粒子の粒径分布や平均粒子径の値により大きく影
響される。一般的には、大粒径から小粒径域まで広範囲
の粒度分布を持った方がスラリー特性が向上する傾向に
あり、平均粒径としては通常50〜150μmの範囲が
好適である。また、粒径が200μmを越えるような大
粒径粒子の割合が増えすぎると、直接重合法の際にテレ
フタル酸が未反応分として残存しやすく、その結果とし
て反応時間を長くとる必要が生じ、副生物が増加するな
どの問題があることが判明した。
【0006】良好なスラリー性、反応の均一性を得るに
は、テレフタル酸に対し多量のグリコール類を用いれば
よいが、過剰量のグリコールは重縮合反応に際して副反
応を増加させ、ポリマーの融点、重合度の低下、さらに
は着色の原因となる。これらの欠点を避けるためには、
グリコール類を化学理論量に極力近付ければよいが、グ
リコール類の使用量を減ずると、スラリーの調製槽、及
び、反応器の攪拌所要動力が増加させる必要がある。ま
た、スラリ−の流動性、反応性が悪くなり、反応所要時
間が長くなる等の問題がある。従って、グリコール類の
必要最低量で良好な流動性、反応性を有するスラリーを
形成するテレフタル酸粒子が直接重合の原料として最も
好適であるといえる。
【0007】このようなテレフタル酸を得る方法とし
て、特開昭48−29735号公報には、平均粒径10
0ミクロン以上のテレフタル酸粒子と同50ミクロン以
上のテレフタル酸粒子を70〜85%対30〜15%で
混合する方法が記載されているが、この方法では2種類
以上の晶析工程が必要であり、また製造したテレフタル
酸を別々に貯蔵した後に再度混合する設備を要し、不経
済である。また、特公昭49−20303号公報には、
溶解度の小さい溶媒に懸濁したスラリー状態でポンプに
よる循環攪拌処理を行なうことにより、僅かに粒径を減
少しながらしだいに見掛け密度を向上し、良好なスラリ
ー性を有するテレフタル酸を得る方法が記載されてい
る。この方法によれば良好なスラリー性を有するテレフ
タル酸は得られるが、粒径を減少させることで粉体とし
ての流動性が悪化する傾向があり、粉体の取り扱い上好
ましくない。
【0008】さらに、複数の晶析槽で多段晶析するに際
し、第1晶析槽の温度が高ければ高いほど、熱エネルギ
−の回収効率を向上させることができる。しかしなが
ら、当業者から見れば、晶析温度が高すぎると、晶析さ
れるテレフタル酸粒子の粒径が大きくなり過ぎるという
問題に直面する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、高純
度であって、かつ、上記のようなスラリー性、反応性、
及び、流動性、反応性を同時に満足するテレフタル酸粒
子を、効率よく、かつ、複雑な工程を経ずに直接得る方
法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の問
題点に鑑み、パラキシレンを分子状酸素で液相酸化して
得られたテレフタル酸を水素と接触させて精製した後、
多段晶析によりテレフタル酸を回収する際の晶析条件な
どを特定することにより、高純度であり、かつ、スラリ
−特性、粉体流動性などに優れたテレフタル酸粒子を工
業的に効率よく製造し得ることを知得し、本発明を完成
した。
【0011】すなわち、本発明は、粗テレフタル酸を水
性媒体に溶解させ、260〜320℃の温度条件下、白
金族金属触媒と接触させて精製し、該テレフタル酸の水
性溶液からテレフタル酸を直列に接続した複数の晶析槽
で段階的に冷却して晶析するに際し、第1晶析帯域にお
ける晶析温度を240〜260℃とし、攪拌翼にて攪拌
動力0.4〜10kw/m3 の範囲で攪拌下で晶析を行
った後、固液分離し、分離したテレフタル酸粒子を乾燥
して粒径が210μmを越える割合が10重量%以下の
テレフタル酸粒子を得ること、及び、第1晶析帯域の晶
析槽の放圧冷却により発生する蒸気を、粗テレフタル酸
スラリ−を溶解させるための加熱エネルギ−として使用
することを特徴とするテレフタル酸の製造方法、に存す
る。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
テレフタル酸の製造方法としては、パラキシレンの酸化
及び粗テレフタル酸水溶液の白金族金属による精製が公
知であり、いくつもの方法が知られている。パラキシレ
ンの酸化反応としては、通常、パラキシレンを酢酸溶媒
中、例えば、コバルト、マンガン及び臭素を含む触媒の
存在下、170〜230℃の温度条件下で分子状酸素と
反応させる方法が採用される。この方法により得られる
粗テレフタル酸は、不純物として4−カルボキシベンズ
アルデヒドを通常、重量基準で500〜10000pp
m含有している。この粗テレフタル酸を水性媒体と混合
し、通常10〜60重量%、好ましくは20〜40重量
%のスラリーとする。
【0013】次に、このスラリーは、昇圧ポンプにより
反応圧力より若干高い圧力まで加圧され、加熱溶解工程
へ送られてテレフタル酸水溶液とされる。このテレフタ
ル酸水溶液を、白金族金属を含む触媒を充填した塔型反
応器に通過させる。白金族金属を含む触媒としては、パ
ラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジ
ウム、白金等、又はこれらの金属酸化物が用いられる。
これらの金属又は金属酸化物はそのまま触媒として使用
することもできるが、テレフタル酸水溶液に不溶性の、
例えば、活性炭のごとき担体に担持させたものも使用さ
れる。
【0014】白金族金属触媒によるテレフタル酸の精製
は、単にテレフタル酸水溶液を触媒と接触させるだけで
も行なうことができるが、還元剤の存在下に行なうのが
有利である。通常は還元剤として水素を使用し、テレフ
タル酸水溶液と水素ガスとを反応器に供給し、260〜
320℃、好ましくは270〜300℃の温度条件下で
水素と接触させる。水素は、テレフタル酸水溶液100
0kgに対し、通常0.05〜10Nm3 、好ましくは
0.1〜3Nm3 の割合で反応器に供給すればよい。
【0015】精製工程を経たテレフタル酸は、晶析工程
へ送られ、テレフタル酸を直列に接続した複数の晶析槽
で段階的に冷却して晶析する。この多段での晶析は、直
列に接続した複数の晶析槽、通常2〜7段、好ましくは
3〜6段の晶析槽で蒸発冷却により段階的に温度を低下
させて行ない、最終的にはテレフタル酸の大部分が析出
する温度まで冷却する。生成した結晶は固液分離した
後、乾燥し、高純度のテレフタル酸粒子を得る。
【0016】本発明におけるテレフタル酸の晶析におい
ては、第1晶析帯域の条件設定が最も重要な要素であ
る。第1晶析帯域の温度範囲は、精製反応温度の260
〜320℃よりわずかに低いだけの高温領域である24
0〜260℃に設定する。第1晶析帯域とは、通常は1
つの晶析槽で構成されるが、かかる温度範囲条件にある
晶析槽を複数使用する場合は、複数の晶析槽の全てで第
1晶析帯域を構成する。第1晶析帯域では、テレフタル
酸の大半を晶析させることが望ましく、通常、全晶析量
の少なくとも50%以上、好ましくは55〜95%を晶
析させる。なお、240〜260℃に設定した第1晶析
帯域の前に260℃を超える温度範囲で予備晶析帯域を
設置する方法も考えられるが、該予備晶析帯域では温度
が高すぎて晶析率が低いので、結晶粒子の物性の大半
は、次の第1晶析帯域以後で決定されることになる。
【0017】本発明では、第1晶析帯域の晶析槽に攪拌
翼を設け、攪拌動力0.4〜10kw/m3 、好ましく
は0.6〜5kw/m3 という範囲で充分な動力攪拌を
行うことにより、テレフタル酸結晶粒子の粒径分布を調
整し、特に、最終製品として、粒径が210μmを越え
る割合が10重量%以下、好ましくは7重量%以下のテ
レフタル酸粒子が得られるようにする。
【0018】また、各晶析帯域の晶析槽の放圧冷却によ
り発生する多量の蒸気については、多量のエネルギ−を
含むので、これを、粗テレフタル酸スラリ−を溶解させ
るための加熱エネルギ−などとして有効利用することが
できる。例えば、晶析槽で発生する蒸気を直接、粗テレ
フタル酸スラリ−の加熱用熱交換器に導入する場合、あ
るいは、晶析槽で発生する蒸気を熱交換してスチームを
発生させ、当該スチームを粗テレフタル酸スラリ−の加
熱に用いる場合があるが、熱効率や設備効率の点では前
者の方法が好ましい。通常、粗テレフタル酸スラリ−
は、低圧スチームで予備加熱される場合も含め、晶析槽
の低温回収蒸気から逐次、第1晶析帯域の蒸気により加
熱され、さらに、粗テレフタル酸の還元精製に必要な温
度条件まで外部からの熱供給により加熱される。
【0019】第1晶析帯域の晶析槽の攪拌機の翼型は、
テレフタル酸粒子の形状変化を起こしうるようなある程
度剪断力の強い形式が望ましく、パドル状翼、ファンタ
ービン翼、ディスクタービン翼、傾斜ファンタービン、
ブルマージン型翼などが例示される。これらのうち、特
に、晶析槽の水平面に対して75〜105°の角度を有
するパドル翼が好ましい。攪拌翼の回転速度は通常、翼
先端速度として3〜10m/s、好ましくは4〜8m/
sである。また、翼径は、晶析槽の内径をDとすると
き、通常(0.2〜0.7)D、好ましくは(0.3〜
0.6)Dの範囲にある。
【0020】さらに、必須の要件ではないが、晶析槽の
内部において、衝突板を攪拌翼の近傍に設けることは、
攪拌動力の負荷を軽減し、所望のテレフタル酸粒子をよ
り効率よく得るための有効な手段となりうる場合があ
る。この衝突板は、晶析槽の内径をRとするとき、攪拌
翼の先端との間に、(0.01〜0.1)Dの間隔をお
いて衝突板を設けた場合に特に効果がある。なお、この
衝突板は、通常の邪魔板と異なり、通常、槽内壁から離
して設置するものであり、衝突板は槽に固定されている
が、衝突板と内壁との間には槽内のスラリー流が自由に
流通するための間隔を有するのである。
【0021】衝突板は、攪拌翼の回転半径の延長線上、
即ち攪拌機の回転軸と槽内壁とを結ぶ直線に沿って設置
するのが好ましいが、攪拌翼により形成されたスラリー
流がこれに衝突するという機能を損なわない限り、この
直線から多少外れた方向に設置されていてもよい。衝突
板の幅、すなわち上述の設置方向に沿った長さは(0.
05〜0.2)Dの範囲にあるのが好ましい。この幅が
大きすぎると、攪拌翼により形成されるスラリー流の流
れが大きく阻害され、局所的な不均一をもたらす恐れが
ある。また幅が小さすぎるとその効果が少なくなる。
【0022】衝突板の高さ(=縦方向の長さ)は、攪拌
翼の高さ以上であるのが好ましい。通常は衝突板の上側
縁は攪拌翼の上側縁と同じ水平線上にあるか、ないしは
それよりも上方にあり、衝突板の下側縁は攪拌翼の下側
縁と同じ水平線上にあるか、ないしはそれよりも下方に
あるのが好ましい。攪拌翼との相対的関係で衝突板の高
さと配置をこのようにすると、攪拌翼により形成された
スラリー流が衝突するという衝突板の作用を十分に発揮
させることができる。
【0023】攪拌翼が攪拌軸に多段に取付けられている
場合には、衝突板は少くとも最下段の攪拌翼に対応させ
て設置することが必要である。それより上方の攪拌翼の
近傍には衝突板を設けてもよく、または設けなくてもよ
い。設ける場合には、最下段の攪拌翼に対応させて設け
た衝突板と一体のもの、すなわちこの衝突板を上方に延
長した形状のものとすることもできる。衝突板の数は、
通常2〜20枚、好ましくは4〜12枚をほぼ等間隔に
設けるのが好ましい。なお、前述のごとく衝突板は通常
の邪魔板とは別のものであり、衝突板に加えて常法によ
り槽内壁に邪魔板を設け、槽内のスラリーの攪拌混合を
良好ならしめることは任意である。
【0024】次に、第2晶析帯域では、晶析温度を通常
180〜230℃、好ましくは185〜225℃とし、
かつ、該晶析温度を第1晶析帯域の晶析温度より20〜
60℃低く、特に25〜55℃低くすることが望まし
い。第1晶析帯域の晶析温度が240℃未満では、平均
粒径自体が小さくなり、粒子形状が歪みが生じて好まし
くない。第1晶析帯域の晶析温度を高くすることで、平
均粒径は大きくなり、粒子形状は丸くなるのでテレフタ
ル酸の製品としての粉体特性は良好であるが、第2晶析
帯域において上記の条件下で晶析を行うことにより、テ
レフタル酸粒子の粒径分布において、平均粒径は維持し
つつ、粒径が約50μm以下の微粉の割合を増加せし
め、テレフタル酸の製品としてのスラリ−特性を更に良
化させることができる。
【0025】以下、必要に応じ第3以上の晶析帯域を設
けて、さらに冷却により晶析する。この場合、通常17
0〜80℃程度まで、通常2〜7段、好ましくは3〜5
段程度の晶析槽をほぼ等間隔の温度差で冷却していく方
法が例示される。第2晶析槽以降においても通常攪拌翼
を設けるが、撹拌は第1晶析槽のように条件が特に限定
されるものではなく、攪拌動力が通常0.2〜3kw/
3 、翼先端速度が通常1〜10m/sであり、翼の形
状や大きさも特に限定はない。そして、生成したテレフ
タル酸の結晶を固液分離した後、乾燥し、高純度のテレ
フタル酸粒子を得る。以上の本発明により得られたテレ
フタル酸粒子は、そのままポリエステルの原料として好
適に使用することができる。
【0026】なお、本発明者等の検討によれば、従来、
殆ど無視していたテレフタル酸粒子中の粒径数mm程
度、例えば粒径1〜5mm程度の範囲にあるごく微量の
塊状粒子が、テレフタル酸をポリエステルの原料として
使用した場合に、ポリエステル製造工程や品質に大きな
影響を及ぼすことがあることが確認されている。従っ
て、ポリエステル原料として使用する場合の本発明によ
るテレフタル酸粒子も塊状粒子ができるだけ少ないもの
が望ましく、通常、粒径2.0mm以上のテレフタル酸
の塊状粒子が0.5ppm以下、特に0.3ppm以下
のものが好ましい。また、粒径1.0mm以上のテレフ
タル酸の塊状粒子が20ppm以下、特に10ppm以
下のものが特に好ましい。
【0027】以上の塊状粒子は、テレフタル酸の製造工
程で微量ではあるが不可避的に発生する。テレフタル酸
の塊状粒子としては、反応槽、晶析槽、その他各工程に
おける配管内のスケ−ルの剥離物、テレフタル酸粒子の
分離器、移送コンベア、乾燥器などでの固結物の崩壊や
剥離により生成したもの、あるいは、サイロ内などで保
存中に粒子が塊状に固結したものなどが考えられる。こ
の塊状粒子には、着色性の不純物や金属成分などの異物
などを多く含有する傾向があり、エステル化工程におい
て、テレフタル酸の塊状粒子が溶解が遅くて固形物とし
て残存しやすく、結果として、エステル化されたオリゴ
マーの重合工程への移送工程あるいは重合工程における
フィルターを閉塞させる原因となる。また、塊状粒子が
残存すると、製品ポリエステルにおける色ムラの発生、
耐熱性の低下や紡糸の際の糸切れの原因となると推定さ
れる。
【0028】従って、テレフタル酸の製造工程において
発生する塊状粒子の発生そのものをできるだけ防止する
ことが望ましく、系内温度、乾燥状態などの製造条件の
見直し、系内の定期的洗浄などの塊状粒子の発生防止方
法が考えられる。塊状粒子の発生を最少限に抑えること
で、上記の篩を通過する大きさの除去できない範囲の塊
状粒子も低減できる。
【0029】しかしながら、塊状粒子の極めて少ないテ
レフタル酸を長期に安定して得るためには、塊状粒子の
除去工程を設けることが望ましい。テレフタル酸粒子中
の塊状粒子の除去方法には特に制限はないが、テレフタ
ル酸の製造工程の乾燥器出口、製品サイロの出口、払い
出しホッパーの入口などのいづれか又は複数の場所に篩
を設置し、あるサイズ以上の塊を除去する方法が考えら
れる。例えば、目開き約2mmの篩を使用して粒径約2
mm以上の塊状粒子を除去すればよい。さらに、好まし
くは目開き約1mmの篩を使用して最大長約1mm以上
の塊状粒子を除去するとよいが、目開き約1mmの篩に
よる処理は工業的に相当の設備負荷が予想される。
【0030】
【実施例】以下に実施例により本発明をさらに具体的に
説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実
施例に限定されるものではない。 実施例1 酢酸溶媒中、コバルト及びマンガン化合物及び臭素化合
物の存在下、分子状酸素によってパラキシレンを酸化し
て得られた粗テレフタル酸の30重量%水スラリーを調
製し、該スラリ−を加圧して所定流量にて加熱器に供給
して溶解させ、内部にPd/C触媒を充填した塔型反応
器に導入して、所定流量の水素を供給し、反応圧力9M
P、反応温度290℃で水添反応を行った。水添反応処
理を受けたテレフタル酸水溶液について、同じ容量の5
個の晶析槽を直列に接続した装置を用いて、水溶媒の蒸
発冷却により段階的にテレフタル酸の晶析を行った。以
上の実施例1の装置系を示す概念図を図1に示す。図1
において、1〜5は各晶析槽、11〜17は熱交換器、
21はスラリー調製槽、22は昇圧ポンプ、23が水添
反器を示す。
【0031】この際、第1晶析槽としては、槽の内径D
が3.6mで、槽の内壁から0.1Dの邪魔板を同間隔
で5枚を設置し、さらに4枚羽根の垂直パドル型(翼径
d:0.36D、翼幅c:0.13D)の攪拌翼を有す
る回転数可変タイプの攪拌機を使用した。また、第2か
ら第5の晶析槽としては、4枚翼の45°の傾斜かき下
げ型(翼径0.42D)の攪拌翼を有する攪拌機を回転
数60rpm(攪拌動力0.7kw/m3 、翼先端速度
4.7m/s)一定で使用した。
【0032】第1晶析槽は252℃に維持され、ここで
全晶析量の約70%が晶出する。第2晶析槽以下は順次
温度が低下し、第5晶析槽は約150℃とした。この
際、各晶析槽の滞留時間は各々約20分間とした。生成
したテレフタル酸スラリーは第5晶析槽から連続的に抜
出し、晶析温度を維持したままでテレフタル酸の結晶粒
子を遠心分離し、乾燥した。
【0033】表−1に、以上の晶析における主な条件
と、精製テレフタル酸粒子についての物性試験の結果を
示す。表−1において、粉径分布とは、JIS標準篩で
湿式分級して測定した値であり、平均粒径とは、重量累
積50%相当径である。スラリートルクとは、テレフタ
ル酸1モルに対しエチレングリコール1.1モルの割合
で混合したスラリーを25℃で、2枚羽根櫂型翼で攪拌
したときの攪拌トルクである。粉体排出性とは、64m
2 の開口部を有するホッパーから所定の振動条件で3
00グラムのテレフタル酸粒子を排出させるに要した時
間である。スラリートルクは当然のことながら極力小さ
いことが望ましい。粉体排出性は通常150秒以下が望
ましく、150秒を越えるものは粉体の流動性が著しく
悪い。粒度分布に関しては200μmを越えるような大
粒径粒子が増加すると反応性が悪化する。
【0034】また、各晶析帯域の晶析槽の放圧冷却によ
り発生する多量の蒸気中のエネルギ−については、晶析
槽で発生する蒸気を直接、粗テレフタル酸スラリ−の加
熱用交換管に導入して利用した。粗テレフタル酸スラリ
−において、第1晶析槽の蒸気と熱交換した以降の加熱
に要したエネルギー量は、実施例1では330MJ/ト
ン・スラリーであるに対し、後述の比較例2では420
MJ/トン・スラリーであった。 実施例2〜5、比較例1〜2 実施例1において、第1及び第2晶析槽での晶析条件を
表−1のように変更した場合の結果を表−1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】実施例6〜8、比較例3 第1晶析槽として、図2に示すような、槽の内径Dが
3.1mで、槽の内壁から0.1Dの邪魔板24を同間
隔で5枚設置し、ならびに、槽の中心軸と槽内壁とを結
ぶ直線上に、攪拌翼25の先端から0.03D離れて、
幅aが0.1Dで高さbが攪拌翼25の高さの2倍であ
る衝突板26を10枚等間隔に設置したものを使用し
た。さらに4枚羽根の垂直パドル型(翼径d:0.36
D、翼幅c:0.13D)の攪拌翼を有する回転数可変
タイプの攪拌機を使用した。また、第2から第5の晶析
槽としては、4枚翼の45°の傾斜かき下げ型(翼径
0.45D)の攪拌翼を有する攪拌機を回転数60rp
m(攪拌動力0.5kw/m3 、翼先端速度4.4m/
s)一定で使用した。各条件にて晶析を行った結果を表
−2に示す。
【0037】なお、第2晶析槽以下は順次温度が低下
し、第5晶析槽を150℃とした。この際、各晶析槽の
滞留時間は各々約30分間とした。生成したテレフタル
酸スラリーは第5晶析槽から連続的に抜出し、晶析温度
を維持したままでテレフタル酸の結晶粒子を遠心分離
し、乾燥した。 比較例4 実施例6において、第1晶析槽も第2から第5の晶析槽
と同じ4枚翼の45°の傾斜かき下げ型(翼径0.45
D)の攪拌翼を有する攪拌機を使用して晶析を行ったと
きの結果を表−2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
【発明の効果】本発明によれば、スラリー特性、反応
性、粉体流動性等に優れた高純度テレフタル酸を取得す
ることができる。また、テレフタル酸の製造系で生ずる
熱エネルギ−の効率的な回収も容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の装置系を示す概念図である。
【図2】実施例6の第1晶析槽を示す概念図である。
【符号の説明】 1 第1晶析槽 2 第2晶析槽 3 第3晶析槽 4 第4晶析槽 5 第5晶析槽 11〜17 熱交換器 21 スラリー調製槽 22 昇圧ポンプ 23 水添反応器 24 邪魔板 25 撹拌翼 26 衝突板 a 衝突板の幅 b 衝突板の高さ c 翼幅 d 翼径

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粗テレフタル酸を水性媒体に溶解させ、
    260〜320℃の温度条件下、白金族金属触媒と接触
    させて精製し、該テレフタル酸の水性溶液からテレフタ
    ル酸を直列に接続した複数の晶析槽で段階的に冷却して
    晶析するに際し、第1晶析帯域における晶析温度を24
    0〜260℃とし、攪拌翼にて攪拌動力0.4〜10k
    w/m3 の範囲で攪拌下で晶析を行った後、固液分離
    し、分離したテレフタル酸粒子を乾燥して粒径が210
    μmを越える割合が10重量%以下のテレフタル酸粒子
    を得ること、及び、第1晶析帯域の晶析槽の放圧冷却に
    より発生する蒸気を、粗テレフタル酸スラリ−を溶解さ
    せるための加熱エネルギ−として使用することを特徴と
    するテレフタル酸の製造方法。
  2. 【請求項2】 第1晶析帯域の晶析槽の攪拌翼が晶析槽
    の水平面に対して75〜105°の角度を有するパドル
    翼であることを特徴とする請求項1のテレフタル酸の製
    造方法。
  3. 【請求項3】 第1晶析帯域の晶析槽の攪拌翼の先端部
    周速が3〜10m/sであることを特徴とする請求項1
    又は2のテレフタル酸の製造方法。
  4. 【請求項4】 第1晶析帯域の晶析槽の内径をDとする
    とき、攪拌翼の翼径が(0.2〜0.7)Dであり、か
    つ、攪拌翼の先端との間に(0.01〜0.1)Dの間
    隔をおいて幅が(0.05〜0.2)Dの衝突板を槽の
    縦方向に複数枚並設した晶析槽を用いることを特徴とす
    る請求項1ないし3のいずれかのテレフタル酸の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 第1晶析帯域での晶析率が50%以上で
    あることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかのテ
    レフタル酸の製造方法。
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