JPH08209583A - 芳香族ポリエステルからなる紙及びその製造方法 - Google Patents

芳香族ポリエステルからなる紙及びその製造方法

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JPH08209583A
JPH08209583A JP16288495A JP16288495A JPH08209583A JP H08209583 A JPH08209583 A JP H08209583A JP 16288495 A JP16288495 A JP 16288495A JP 16288495 A JP16288495 A JP 16288495A JP H08209583 A JPH08209583 A JP H08209583A
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paper
pulp
liquid crystalline
aromatic polyester
polyester
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Application number
JP16288495A
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Inventor
Takashi Katayama
隆 片山
Junyo Nakagawa
潤洋 中川
Masaji Asano
正司 浅野
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Kuraray Co Ltd
Original Assignee
Kuraray Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】芳香族ポリエステルからなる紙力、地合、電気
絶縁性等に優れた紙及びその効率的な製造方法を提供す
る。 【構成】溶融液晶性芳香族ポリエステルを島成分、それ
以外のポリマ−を海成分とする海島繊維を、長さ5mm
以下にカットする前又はカットした後に、海成分を溶解
及び/又は分解除去して得られる直径0.1μm以上5
μm未満のパルプ状物5〜100重量%を含む紙料を湿
式抄紙して紙を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、溶融液晶性芳香族ポリ
エステルからなる紙およびその製造方法に関する。詳し
くは、抄紙性及び紙力・地合に優れると同時に、緻密で
電気絶縁性に優れた紙及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】芳香族ポリエステル紙を構成するパルプ
としては、溶融成形した後に剪断力を加えてフィブリル
化させたもの(特開昭60−239600号)や、芳香
族ポリエステルと易アルカリ溶解性有機化合物の混合物
にアルカリ処理を施して該有機化合物を除去し、得られ
た中空繊維状物を叩解したもの(特開昭56−315
号)が知られていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】溶融液晶性ポリエステ
ル繊維は高度に分子配向しているため、剪断力を加える
と比較的容易にフィブリル状になるものの、それに伴っ
て膠着・融着等の問題が生じるのみでなく、該繊維の強
力が高いために叩解に多大な時間と労力を要していた。
また、製造されたパルプは、塊状物を含むため抄造性が
低く、高強力を有する紙も殆ど得られなかった。また、
地合が悪く緻密な紙が得られないため、絶縁性も十分な
ものが得られなかった。抄造可能なパルプを得るために
は叩解を繰り返す必要があるが、叩解を繰り返すことに
より粉末状物が生じることとなる。従って、抄紙時に配
管が詰まり工程性に支障を来し、かつ長いフィブリルが
ほとんど得られないためにパルプの絡み合いが少なく強
力の低い紙しか得られなかった。また、叩解を繰り返し
ても繊維径の大きい塊状のパルプ状物を完全に取り除く
ことは不可能であるため、高紙力及び地合の良好な紙を
得ることは困難であり、さらに薄い紙を抄紙することは
困難であった。
【0004】本発明の目的は、上記のような問題を解決
し、抄紙性及び紙力・地合に優れた溶融液晶性芳香族ポ
リエステル紙およびその製造方法を提供せんとするもの
である。本発明の別の目的は、絶縁性、耐薬品性、低吸
水性に優れた冷媒圧縮機用及びプリント配線基板用等と
して好適な絶縁紙を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、直径0.1μ
m以上5μm未満であり、かつ実質的に枝分かれを有し
ない溶融液晶性芳香族ポリエステルパルプ状物を5〜1
00重量%含んだ紙料を湿式抄紙することにより紙力及
び地合の優れた紙が得られること、及び該パルプ状物の
製造方法として、溶融液晶性芳香族ポリエステルを島成
分、他のポリマ−を海成分とする海島繊維を長さ5mm
以下にカットする前又はカットした後に、海成分を溶解
及び/又は分解除去する方法を見出だしたものである。
【0006】かかる方法によれば、溶融成形体に剪断力
を加えることなく、直径のばらつきが少なくかつほぼ均
一なパルプ長を有するパルプ状物を製造することができ
る。該パルプ状物の形状は実質的に枝分かれを有しない
ものであり(図1参照)、従来のように成形物を叩解し
て得られるパルプ状物(図2参照)とは明らかに異なっ
たものである。本発明のパルプ状物は実質的に枝分かれ
を有しないため、抄紙時の分散性に優れ、地合の良好な
紙を得ることができる。また、緻密で気密度の高い紙が
得られるため、優れた絶縁性を示すことができる。
【0007】本発明に用いられる溶融液晶性芳香族ポリ
エステルは、例えば芳香族ジオ−ル、芳香族ジカルボン
酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸等より得られるポリマ
−であり、好適には化1〜化3に示される反復構成単位
の組み合わせからなるポリマ−が挙げられる。
【0008】
【化1】
【0009】
【化2】
【0010】
【化3】
【0011】溶融液晶性芳香族ポリエステルの融点(M
P)は、260〜380℃、特に270〜350℃が好
ましい。ここでいう融点とは、示差走査熱量測定装置
(DSC:例えばmettler 社製、TA3000)で観察される
主吸熱ピ−クのピ−ク温度である。特に好ましくは、パ
ラヒドロキシ安息香酸(A)と2−ヒドロキシ6−ナフ
トエ酸(B)の構成単位からなる部分が80モル%以上で
ある溶融液晶性芳香族ポリエステルであり、特にAとB
の合計量に対するB成分が5〜45モル%である芳香族ポ
リエステルが好ましい。なお、本発明にいう溶融液晶性
(溶融異方性)とは、溶融相において光学異方性を示す
ものである。このような特性は、公知の方法、例えばホ
ットステ−ジにのせた試料を窒素雰囲気下で昇温加熱
し、その透過光を観察することにより容易に認定するこ
とができる。なお、本発明で使用する溶融液晶性芳香族
ポリエステルには、適宜、酸化チタン、カオリン、シリ
カ、硫酸バリウム、カ−ボンブラック、顔料、酸化防止
剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を含んでいても良い。
【0012】本発明で用いるパルプ状物の直径は0.1
μm以上5μm未満であることが必要である。0.1μ
m未満のものは紙力にほとんど寄与せず、また抄紙時の
流出ロスが大きく効率的でなく、また直径0.1μm未
満のパルプ状物のみを製造又は分離することは極めて困
難である。逆に5μm以上のものは、パルプ状物の絡み
合いが小さくなるため抄紙性が著しく低下し、紙力が低
下するとともに地合の劣ったものとなる。パルプ状物の
直径は、0.2〜4μm、特に0.5〜3μmとするの
が抄紙性及び紙力の点で好ましい。パルプ状物の長さ
は、0.2〜5mm、特に0.5〜2mmとするのが好
ましい。パルプ状物の長さが短すぎると、繊維の絡み合
いが小さくなるため紙力が不十分となる場合が生じ、さ
らにパルプ状物が流出しやすくロスが大きくなる。逆に
長すぎると、抄紙時にパルプ状物が絡み合って塊状物と
なって抄紙性が低下する場合があり、得られる紙の地合
が不十分となる場合がある。パルプ状物のアスペクト比
は、抄紙時の分散性及び紙力の点から500〜150
0、特に800〜1200が好ましい。本発明でいうア
スペクト比とはパルプ状物の繊維長Aを該パルプ状物の
横断面面積と同じ面積を有する円の直径Bで徐したもの
である。
【0013】かかるパルプ状物5〜100重量%含んだ
紙料を用いて湿式抄紙することにより優れた紙を得るこ
とができる。溶融液晶性芳香族ポリエステル又は他のポ
リマ−からなる本発明で規定したパルプ状物以外の繊維
状物が存在していてもよい。耐熱性、低吸湿性等の点か
らは、溶融液晶性ポリエステルのみから構成された紙と
するのが好ましく、溶融液晶性芳香族ポリエステル以外
の成分は10重量%以下、特に5重量%以下とするのが
好ましい。該パルプ状物のみを抄紙した場合には耐熱
性、低吸湿性、地合に優れた紙が得られるが、さらに高
い紙力が要求される場合にはパルプ状物を構成するポリ
マ−と同組成又は異なった組成のポリマ−からなる短繊
維を混抄することが好ましい。特に溶融液晶性ポリエス
テルからなる短繊維を混抄するのが好ましい。
【0014】短繊維の直径は、直径5μm以上25μm
未満、特に8μm以上20μm未満とするのが好まし
い。短繊維の直径が大きすぎると抄紙性、地合ともに不
十分となる場合がある。短繊維の長さは、2〜30m
m、特に3〜8mmとするのが好ましい。短繊維の長さ
が短すぎると補強効果が小さく紙力がそれほど向上しな
い場合があり、長すぎると抄紙時に短繊維が絡み合って
塊状になり、抄紙性、紙力、地合等が不十分となる場合
がある。短繊維のアスペクト比は130〜500、特に
250〜300とするのが好ましい。かかる短繊維は、
1〜95重量%、特に30〜70重量%配合するのが好
ましい。
【0015】本発明で使用するパルプ状物は枝分かれを
有しないことに特徴を有しており、塊状物や粉末状物を
実質的に含まないものである。かかるパルプ状物は、水
への分散性に優れていることから抄紙性が高く、耐熱
性、低吸湿性、紙力及び地合の優れた紙を供し得るもの
であるが、特に緻密で気密度が高い紙が得られることか
ら、電気絶縁紙として好適なものが得られる。気密度は
500sec/100cc以上、特に1000sec/
100cc以上、さらに1800sec/100cc以
上とするのが好ましい。気密度が高い程、地合に優れ、
緻密な紙であるということができる。本発明でいう気密
度とは、空気の通り難さを示す指標であり、JIS C
2111に準じてガレ−式で測定したものをいう。ま
た、絶縁破壊強さは10kV/mm以上、特に13kV
/mm以上のものが好ましい。本発明にいう絶縁破壊強
さとは、交流の高電圧を印加したときに試料が絶縁破壊
するときの電圧を単位厚み当りで示したものであり、J
IS C2111に準じて1試験片で10点測定したそ
の相加平均をいう。
【0016】かかるパルプ状物は、溶融液晶性芳香族ポ
リエステルを島成分とする海島繊維を混合紡糸し、海成
分を除去することにより得られる。なお、溶融液晶性ポ
リエステルの場合、通常の溶融紡糸で直径5μm未満の
極細繊維を製造することは極めて難しい。本発明にいう
海島構造とは、繊維の横断面においてマトリックスとな
る海成分中に数十から数十万の島(溶融液晶性ポリエス
テル)が存在している状態をいう。該海島繊維は、押出
により成形され、かつ島成分が繊維軸方向にある程度連
続しているものであればよく、海島繊維の直径や断面形
状は特に限定されない。具体的には、繊維状、ストラン
ド状、ペレット状、チップ状等のものが挙げられる。溶
融液晶性ポリエステルは、繊維軸方向に配向しやすいた
め島成分が連続したものになりやすく、カットを行わな
ければ比較的長いパルプ成分が得られる。従って、海成
分の除去を行う前にカットを行っても実質的に粉末状物
は生じず、長さのほぼ一定したパルプ成分が得られる。
粉末状物が混入している場合には、抄紙時に配管に詰ま
り大きな支障を来すのみでなく、得られる紙の強力は低
いものとなる。
【0017】海島繊維の島数は数十〜数十万個程度、特
に数百〜数万個程度が好ましい。かかる島数は、両ポリ
マ−の混練割合、紡糸温度、射出剪断速度、ドラフト、
溶融粘度などを調節することにより変えることができ
る。例えば、両成分の溶融粘度差を大きくすることによ
り、島数を減少させることができる。溶融液晶性芳香族
ポリエステルは、ノズル通過時に著しい分子配向を生じ
るため、海島繊維を良好に紡糸するためにはドラフトを
1.1〜40倍にする必要がある。また、剪断速度を10
0〜100,000sec-1とすることにより、島成分の直径を好
適なものとすることができる。かかる海島繊維は、海成
分と島成分をチップブレンドする、または両成分の溶融
物をスタチックミキサ−等で混合する方法などにより得
ることができる。海成分と島成分の重量割合は、30:
70〜80:20、特に45:55〜60:40とする
のが好ましい。溶融液晶性ポリエステルの混合割合が高
いほど経済的かつ効率的であるが、70重量%を越えると
溶融液晶性芳香族ポリエステルが海成分となり本発明の
パルプ状物は得られない。
【0018】溶融液晶性芳香族ポリエステルを芯成分と
する芯鞘型複合繊維の鞘成分を除去する方法等によって
も比較的細い繊維を製造することは可能であるが、かか
る方法により直径10μm未満、特に5μm未満の極細
繊維を製造することは困難である。従って、得られたパ
ルプ状物を用いて工業的規模で抄紙することは実質的に
不可能であり、また気密度が高く絶縁性に優れた紙は得
られない。パルプ状物の具体的な製造方法としては、可
撓性の熱可塑性ポリマ−を海成分、溶融液晶性芳香族ポ
リエステルを島成分とする海島繊維を、長さ5mm以下
にカットする前又はカットした後に、熱可塑性ポリマ−
の良溶媒を用いて該熱可塑性ポリマ−を溶解除去及び/
又は分解除去する方法が挙げられる。
【0019】可撓性の熱可塑性ポリマ−としては、特に
限定されるものではないが、好適な例としては、ポリエ
チレン、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリプロ
ピレン、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−1
0、ポリカ−ボネ−トおよびポリ塩化ビニル、ポリエス
テル等が挙げられる。特に、ポリエチレン、ポリスチレ
ン、ナイロン6−6を用いた場合には、溶融液晶性芳香
族ポリエステルに対して貧溶媒でかつ熱可塑性ポリマ−
に対して良溶媒の「溶媒」を選択しやすいので好まし
い。最も好ましいのはポリスチレンであり、トルエンを
溶媒に選択することにより海成分のポリスチレンを室温
でかつ短時間に溶解除去することができる。また、ポリ
スチレンを用いた場合には、島成分の分布及び直径が均
一になりやすいので好ましい。
【0020】溶融液晶性ポリエステルは耐薬品性に優れ
ているため溶媒による劣化や浸食を受けにくく、用いる
ことのできる溶媒の種類が多いのみでなく、強度等に優
れたパルプ状物を得ることができる。熱可塑性ポリマ−
としてポリエチレンを用いた場合には、溶媒としてシク
ロヘキサン、クロロホルムを用いて70℃以上で処理を
行うことが好ましい。また、ポリプロピレンを用いる場
合には、溶媒としてベンゼン、クロロホルム、トルエン
等を用いて80℃以上で処理することが好ましい。また
ポリスチレンの場合には、トルエン、キシレン等を用い
て室温で処理できるためより工程性等の点で特に好まし
い。これらの溶媒は、単独で用いても良いが、混合溶媒
にして用いても良い。本発明は溶媒により熱可塑性ポリ
マ−の抽出を行うため、溶媒の回収、再利用が可能であ
り、経済的かつ効率的にパルプ状物を製造することがで
きる。なお、溶媒処理により繊維を分割後、水洗乾燥処
理を行うのが好ましい。
【0021】海島繊維の製造しやすさの点では、易アル
カリ減量性ポリエステルを海成分、溶融液晶性芳香族ポ
リエステルを島成分とする海島繊維を、長さ5mm以下
にカットする前又はカットした後に、易アルカリ減量性
ポリエステルを溶解及び/又は分解除去する方法を採用
するのが好ましい。該易アルカリ減量性ポリエステルと
は、ジカルボン酸、ジオ−ル、ヒドロキシカルボン酸等
からなるポリエステルであり、アルカリ分解性及び/又
はアルカリ溶解性を有するものであれば特に限定される
ものではない。用いる溶融液晶性芳香族ポリエステルと
のアルカリ分解速度比が好ましくは1000倍以上、よ
り好ましくは3000倍以上の易アルカリ減量性ポリエ
ステルを用いる。
【0022】この場合、アルカリ処理が短時間に行なえ
かつ溶融液晶性芳香族ポリエステルの耐アルカリ性が優
れているため、溶融液晶性ポリエステルがアルカリによ
る劣化や浸食を受けにくく、強度等に優れたパルプ状物
が得られる。また、易アルカリ減量性ポリエステルをア
ルカリ溶液による処理でほぼ完全に除去できるので、次
の熱処理工程等で融着等のトラブルが起こらない。な
お、本発明でいうアルカリ溶解速度とは、試料を、98
℃、20g/l の水酸化ナトリウム水溶液中に各測定サンプ
ルを浴比1:500の条件で浸漬し、撹拌しながらサン
プルを溶解させて下記式によりアルカリ溶解速度定数K
により表される。なお、サンプルとしては、同一条件で
紡糸した直径1mmのストランドを用いるのが好まし
い。
【0023】
【数1】
【0024】かかる易アルカリ減量性ポリエステルに
は、市販の酸化分解防止剤(例えばチバ・ガイキ−社製
イルガノックス1010、アメリカンサイアナミッド社製サ
イアノックス1790)を添加することにより耐熱性を向上
させることも可能である。好適な易アルカリ減量性ポリ
エステルの具体例としては、下記の構成単位I〜III を
含む共重合ポリエステルが挙げられる。
【0025】
【化4】
【0026】特に好ましくは、構成単位I〜III を含む
ポリエステルであり、かつ構成単位Iをポリエステルを
構成する全酸成分の0.5 〜10モル%、構成単位II及び
IIIをそれぞれ1重量%以上含み、かつ構成単位II及びI
II の合計含有率が全ポリエステルの2〜50重量%であ
る共重合ポリエステルを用いる。該ポリエステルのアル
カリ分解速度は、芳香族ポリエステルに比して1000
倍以上大きく、従って、アルカリ溶液による処理を短時
間に行うことが可能である。より好ましくは、構成単位
Iをポリエステルを構成する全酸成分の1〜7モル%、
構成単位II及びIII の合計含有率が全ポリエステルの5
〜30重量%である共重合ポリエステルを用いる。
【0027】構成単位I〜III の含有割合が少ないとア
ルカリ分解性が不十分となる場合が生じる。アルカリ分
解性が不十分の場合には、易アルカリ減量性ポリエステ
ルの除去に時間がかかるため、得られるパルプ状物の強
度が損なわれる等の問題が生じる。逆に、該共重合成分
の含有率が高くなれば、紡糸性が低下する場合が生じ
る。構成単位Iの含有割合が高いと粘度が大きくなりゲ
ル化が生じやすくなり、逆に構成単位II及びIII が増加
すれば粘度が低下して断糸等が生じやすくなる。側鎖単
位III を適度な割合で共重合させることにより、アルカ
リ分解性及び紡糸性を著しく向上させることが可能とな
る。ジカルボン酸単位I中の3価の芳香族基(Ar)と
しては、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基等
が挙げられ、金属原子Mは、ナトリウム、カリウム、リ
チウムなどのアルカリ金属原子が好ましい。共重合ポリ
エステルには、ジカルボン酸成分Iを複数種有していて
もよい。
【0028】共重合ポリエステルを構成する他のカルボ
ン酸単位としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフ
タレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ジフェ
ニルエ−テルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、
β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸
などの芳香族ヒドロキシカルボン酸、さらに脂肪族ジカ
ルボン酸、脂環族カルボン酸、トリカルボン酸等を挙げ
ることができ、これらのカルボン酸単位を複数種用いて
もよい。共重合ポリエステルを構成する全酸成分単位の
70モル%以上が芳香族ジカルボン酸単位、特にテレフタ
ル酸単位であるのが好ましい。
【0029】また、ジオ−ル単位II中のR1 は、炭素数
2〜4のアルキレン基であるのが好ましく、エチレン基
および/またはプロピレン基、特に、アルカリ溶解性の
点からエチレン基が好ましい。また平均重合度mは10
〜100であることが必要であるが、20〜80がさらに好
ましい。mが10未満では、アルカリ溶解性が低く、10
0を越えるとアルカリ溶解性もそれほど向上せず、着色
の問題が生じやすくなる。ポリオキシエチレングリコ−
ル、ポリオキシプロピレングリコ−ル、ポリオキシエチ
レン/ポリオキシプロピレングリコ−ル等から誘導され
た単位が好ましく、共重合ポリエステルにこれらジオ−
ル単位IIが複数含まれていてもよい。また、共重合ポリ
エステルには他のジオ−ル単位を更に有しているのが好
ましく、脂肪族ジオ−ル、脂環族ジオ−ル等が挙げられ
る。これらジオ−ル単位を複数含んでいてもよい。繊維
形成性の点から炭素数2〜6の直鎖状アルキレングリコ
−ルから誘導された単位が好ましい。
【0030】側鎖単位III 中のR2 は炭素数2〜4のア
ルキレン基であるのが好ましく、エチレン基および/ま
たはプロピレン基、特にエチレン基が好ましい。R3
しては炭素数1〜15の直鎖または分岐状アルキル基、
炭素数3〜18のシクロアルキル基,炭素数6〜18の
アリ−ル基を挙げることができる。重合度nは10〜1
00の範囲であるが、20〜80であるのがより好まし
い。nが10よりも小さいとアルカリ溶解性が低下し、
一方100を超えてもアルカリ溶解性はそれほど向上せ
ず、着色の原因となる。
【0031】具体的には、ポリオキシエチレングリコ−
ル−アルキル−グリシジルエ−テル、ポリオキシエチレ
ングリコ−ル−アルキル−2、3−ジヒドロキシプロピ
ルエ−テル、ポリオキシエチレングリコ−ル−フェニル
−グリシジルエ−テル、ポリオキシエチレングリコ−ル
−フェニル−2、3−ジヒドロキシプロピルエ−テル、
ポリオキシエチレングリコ−ル−シクロヘキシル−グリ
シジルエ−テル、ポリオキシエチレングリコ−ル−シク
ロヘキシル−2、3−ジヒドロキシプロピルエ−テル等
が挙げられ、共重合ポリエステル(Aポリマ−)中にこ
れら単位が複数含まれていてもよい。
【0032】本発明の島成分は耐アルカリ性に優れた溶
融液晶性芳香族ポリエステルであるため、アルカリ処理
により実質的に直径が変化することなく、所望の直径を
有するパルプ状物を得ることができる。易アルカリ減量
性ポリエステル(海成分)の溶解および/または分解除
去は、浸漬法、デイップニップ法、ロ−ラ−パット法等
のどの方法で行ってもよい。用いるアルカリ性溶液は、
水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、リン酸三ナトリ
ウム等の強アルカリ溶液が好ましく、アルカリ溶解性と
繊維の浸食性の点から、2〜60g/l,さらに好まし
くは、3〜20g/l 程度の処理液中でアルカリ処理を行
う。炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、リン酸二水素
ナトリウム等の弱アルカリ性物質を使用する場合は、処
理液中のアルカリ物質濃度5〜200g/l、好ましくは5〜
60g/l である。これらを強アルカリ物質及び弱アルカリ
物質を併用することも可能であり、処理液中に分解促進
剤などを含んでいてもよい。また、アルカリ界面活性剤
を添加することにより、繊維のアルカリ浸透等が促進さ
れて好ましい。
【0033】アルカリ処理温度は、70〜100 ℃が好ま
しい。温度が70℃未満ではアルカリ処理に要する時間
が長くかかるようになり、また100 ℃を超えると溶融液
晶性芳香族ポリエステル(Bポリマ−)が浸食・劣化を
受けやすくなるばかりでなく、オ−トクレ−ブ等の設備
が必要となる。アルカリ処理により繊維を分割後、中
和、水洗乾燥処理を行うのが好ましい。アルカリの微量
の残留が問題となる場合には、熱可塑性ポリマ−を海成
分とする海島繊維を溶媒で処理する前述の方法を採用す
るのが好ましい。また、溶融液晶性ポリエステルは、耐
薬品性、耐アルカリ性に優れているため、海成分除去処
理前の直径と処理後の直径を実質的に同一とみなすこと
ができ、任意の直径を有するパルプ状物を得ることがで
きる。
【0034】本発明のパルプ状物は、長さ5mm以下、好
ましくは3mm以下、さらに好ましくは1〜2mmにカット
して得られる。カットは海成分除去処理前又は処理後の
いずれで行ってもよいが、直径の太い方がカットしやす
いので海成分除去前にカットするのが好ましい。カット
方法としては、カッタ−、ペレッタイザ−、粉砕機等い
ずれの方法で行ってもよい。得られたパルプ状物に分散
剤を添加することも可能である。分散剤としては、ポリ
エ−テルエステル、C8スルホサクシネ−ト、ポリオキ
シエチレン(POE)・ノニルフェノ−ルエ−テル・サ
ルフェ−ト・アミン、POE・ノニルフェノ−ルエ−テ
ル・サルフェ−ト・ナトリウム、POE・ノニルフェノ
−ル、POE・オレイルエ−テル、フッソ系の活性剤、
変性シリコ−ン等を使用することができる。分散剤はこ
れらに限定されるものではなく、複数種類用いてもよ
い。また、パルプ状物の分散性を高めるために、ドラ
イ、ウエットあるいは分散剤を添加したウエットの状態
で、パルパ−、リファイナ−、ビ−タ−等にかけてパル
プ状物間の絡まりを低下させることも可能である。添加
量は10重量%以下、特に5重量%以下とするのが好ま
しい。
【0035】本発明においては、海島繊維の海成分を除
去して得られる直径0.1μm以上5μm未満の溶融液
晶性芳香族ポリエステルパルプ状物を抄紙することに特
徴があり、海島繊維を用いて抄紙した後に海成分を除去
した場合には、本発明の目的を達成することはできな
い。すなわち、海島繊維は繊維径が大きいために抄紙性
が極めて悪く、さらに得られる紙も気密度が低く地合の
劣ったものとなる。紙の坪量(g/m2 )は、用途によ
り適宜設定すればよく、坪量20〜200g/m2 程度
のものを広く使用することができる。
【0036】本発明のパルプ状物を用いることにより、
裂断長が4Km以上、特に4.5Km 以上という高強力を有す
る紙を得ることができるが、さらに高紙力が要求される
場合には、パルプ状物、短繊維、紙等に熱処理を施すこ
とが好ましい。この場合、裂断長6Km以上、特に7km以
上の紙を得ることができる。パルプ状物の熱処理は、海
成分除去前または除去後のいずれで行ってもよいが、繊
維間の膠着を抑制するためには海成分除去後に熱処理を
施すのが好ましい。また、得られた紙にカレンダ−ロ−
ルで軽く熱加工した後に、さらに熱加工して紙の強度お
よび融点を高くすることも可能である。
【0037】その際の熱の供給は、加熱板、赤外線ヒ−
タ−等により熱輻射を利用する方法、熱ロ−ラ−、熱プ
レ−ト等に接触させて行う方法、高周波等を利用した内
部加熱方法等がある。加熱媒体として用いる気体は、窒
素等の不活性ガスあるいは窒素と酸素、炭酸ガスなどの
混合気体および空気などが用いられる。熱処理雰囲気は
露点が-10 ℃以下、好ましくは-40 ℃以下の気体中が良
い。好ましい熱処理条件は溶融液晶性ポリエステルの融
点MPに対して、MP−60℃〜MP+20℃の温度範
囲で、MP−40℃から順次昇温していく温度パタ−ン
である。熱処理は、目的により緊張下あるいは無緊張下
のどちらで行っても良い。また、形状は、カセ状、チ−
ズ状、トウ状(金網に乗せて処理する)、ペレット状、
ストランド状、シ−ト状、パルプ状、ステ−プル状等で
行われれる。
【0038】なお、本発明にいう融点とは、示差走査熱
量計で試料を昇温した場合に、最大吸熱ピ−クの現れる
温度をいう。本発明の紙は、目的によりそのまま用いる
ことも可能であるが、熱カレンダ−処理又は熱プレス等
により、紙の表面の艶だしを行っても良い。特に熱処理
されていないパルプから得られた紙をカレンダ−処理す
ると、良好な艶が得られると共に強度を向上させること
もできる。カレンダ−温度は200〜300℃程度、特
に210〜270℃程度とするのが好ましい。カレンダ
−温度を高めると裂断長、絶縁破壊強さ等を向上させる
ことができるが、工程性の点からはカレンダ−温度を低
くするのが好ましい。カレンダ−処理における線圧は5
0〜200kg/cm程度が好ましい。また、カレンダ
−ロ−ルとしては、弾性ロ−ル(ペ−パ−ロ−ル、コッ
トンロ−ル、ゴムロ−ル等)やスチ−ルロ−ルを用いる
ことができる。
【0039】パルプ状物のみを用いて抄紙することも可
能であるが、用途によりさらに高い紙力が要求される場
合には、短繊維を混抄するのが好ましい。混抄する短繊
維は、溶融液晶性芳香族ポリエステル繊維であるのが好
ましく、通常の溶融紡糸等により得られるものを使用す
ればよい。芯鞘型複合繊維等を製造した後、他方成分を
除去することにより得られた繊維も使用することができ
る。かかる繊維をカットした短繊維を混抄することによ
り補強効果を得ることができ、特に熱処理を施した溶融
液晶性芳香族ポリエステルからなる短繊維を混抄するこ
とにより優れた補強効果を得ることができる。熱処理
は、パルプ状物と同様の方法で行うことができる。
【0040】本発明により得られる紙は、高強力高弾性
率、低吸湿性、耐熱性、耐薬品性等の性能を十分に発揮
しているため、様々な分野で用いることができる。例え
ば産業資材用途等で広く用いられ、特にブレ−キライニ
ング、クラッチフェ−シング、軸受け等の摩耗材、パッ
キング材、ガスケット材、フィルタ−,研磨材、絶縁
紙、耐熱紙、スピ−カ−コ−ン、ワイピングクロス、ハ
ニカム、マスキングテ−プ、樹脂強化剤等に好適であ
る。
【0041】特に本発明の紙は、高強度、耐熱性、低吸
湿性に優れているのみでなく、実質的に枝分かれを有し
ないパルプ状物を使用しているため緻密で気密度が高
く、絶縁紙として優れた性能を示すことができる。具体
的には、冷媒圧縮機用、プリント配線基板用等が好適な
例として挙げられる。本来溶融液晶性芳香族ポリエステ
ルは、耐熱性、耐薬品性、低吸水性に優れたものである
ため、短繊維等を叩解して得たパルプを用いた紙におい
ても優れた性能を有しているが、塊状物が必然的に含ま
れるため地合が悪く比較的大きな空隙が存在する部分等
が形成され、その結果、気密度が低く絶縁性の点で不十
分となる場合がある。
【0042】以下、実施例により本発明をより具体的に
説明するが、本発明はこれにより何等限定されるもので
はない。
【実施例】
[対数粘度の測定]試料をペンタフルオロフェノ−ルに
0.1 重量%溶解し(60〜80℃)、60℃の恒温槽中で、ウ
ベロ−デ型粘度計で相対粘度(ηrel )を測定し、次式
によって計算した。 ηinh =ln(ηrel )/c ここで、cはポリマ−濃度(g/dl)である。 [固有粘度の測定]フェノ−ルとテトラクロロエタンの
等量混合溶媒を用い、30℃の恒温槽中で測定した。
【0043】[融点の測定]DSC(例えばMettler 社
製TA3000)装置にサンプルを5〜15mgとり、アルミ製パ
ンへ封入した後、窒素を20cc/min流し、昇温速度20℃/m
inで測定したとき、吸熱ピ−ク温度の頂点を表す温度を
融点(MP)として測定する。1st-run で明確な吸熱ピ
−クが現れない場合は、50℃/minの昇温温度で、予想さ
れる吸熱ピ−ク温度より50℃以上高い温度で3分程度加
熱し完全に溶融した後、80℃/minで50℃まで冷却し、し
かるのち20℃/minの昇温速度で測定した値を用いる。
【0044】[パルプ状物の直径・長さ]パルプ状物の
電子顕微鏡写真上に直線をひき、その直線上のパルプ状
物の長さに対して直角方向での幅(直径)を20点以上
測定して平均を求め、さらに他の任意の4か所について
も電子顕微鏡写真を撮影して同様の方法で直径の平均値
を求め、得られた平均値の相加平均を直径とした。また
パルプ状物の電子顕微鏡写真を撮影して任意のパルプ状
物10点の長さを測定して平均を求め、さらに、他の任
意の4か所についても電子顕微鏡写真を撮影して同様の
方法で長さの平均値を求め、得られた平均値の相加平均
を長さとした。紙状物とした後のパルプ状物及び短繊維
の直径・長さも同様の方法で求めることができる。
【0045】[坪量 g/m2 ]得られた紙を10cm
角に切り取り、その重量を電子天秤(メトラAE16
0)にて測定して下記式により求めた。 坪量(g/m2 )=W/0.01 [裂断長 km]JIS P8113に準じて、幅15
mm、長さ250mmの試験片を用いて測定し、タテ方
向及びヨコ方向の裂断長の相加平均で示した。 [吸水率 %]得られた紙を10cm角に切り取り、真
空状態にて乾燥(120℃×6時間)した後、20℃×
95%RHに調湿されたデシケ−タ−内に1週間放置し
た。調湿前後の重量変化を電子天秤で測定し、下記式か
ら吸湿率を求めた。W0は乾燥後の紙の重量であり、W
は調湿後の重量である。 吸水率(%)=(W−W0)÷W0×100
【0046】[絶縁破壊の強さ kV/mm]JIS
C2111に準じ、1試験片中の10点の絶縁破壊強さ
を測定し、その平均値を求めた。 [気密度 sec/100cc]JIS C2111に
準じてガレ−式で3つの試験片の気密度を測定し、その
気密度の相加平均で示した(最大値1800sec/1
00cc)。 [抄紙性]紙料を標準角型抄紙機(熊谷理機工業株式会
社製)で抄紙した際に、水分散性が高く湿潤時(抄紙
時)の紙力に優れており、容易に抄紙できるものを○、
紙料の水分散性および湿潤時(抄紙時)の紙力がやや低
いが、比較的容易に抄紙できるものを△、紙料の水分散
性が低くて塊状物が生じたり、湿潤時(抄紙時)の紙力
が低くて容易に破ける等の問題が生じて容易に抄紙でき
ないものを×として評価した。
【0047】[実施例1〜3]溶融液晶性ポリエステル
は、パラヒドロキシ安息香酸と2−ヒドロキシ6−ナフ
トエ酸が73/27 モル%比、融点(MP)280 ℃、対数粘
度5.7dl/g のものを用いた。易アルカリ減量性ポリエス
テルは、共重合ポリエステルを構成する全酸成分の2.5
モル%の5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル
(I´)、分子量2000のポリエチレングリコ−ル
(II´)及び化5で表されるポリオキシエチレングリシ
ジルエ−テル(III ´)から得られる構成単位I〜 III
が全共重合ポリエステルのそれぞれ10重量%を占め、残
りがテレフタル酸、エチレングリコ−ルである共重合ポ
リエステル(固有粘度0.58dl/g)を用いた。両ポリマ−
のアルカリ溶解速度比は5800であった。なお該共重
合ポリエステルは、該ポリエチレングリコ−ルとポリオ
キシエチレングリシジルエ−テルの合計量に対して5重
量%の酸化分解防止剤(アメリカンサイアミッド社製
サイアノックス1790)を含むものである。なお、後
述する実施例2〜16、比較例1〜4においても同様の
共重合成分、酸化分解防止剤を用いた。
【0048】
【化5】
【0049】上記の易アルカリ減量性ポリエステル(A
ポリマ−)と溶融液晶性ポリエステル(Bポリマ−)を
50:50の重量比で押し出し機より溶融混練し、ギヤポン
プから紡糸ヘッドに導き、ヘッド温度320 ℃、巻取速度
300 m/min 、ドラフト11の条件で紡糸し、1500d/100
f、島数約500 個の海島繊維を得た。これをカッタ−を
用いて繊維長約1.5 mmに切断した後、沸騰している40g/
l の水酸化ナトリウム溶液に10分間浸漬した。次にこ
れをガ−ゼ上に移し取り酢酸で中和した後、30分間水
で洗浄した。得られたパルプ状物を走査型電子顕微鏡
(SEM)で観察したところ、パルプ状物は実質的に枝
分かれを有しておらず、平均直径は約1μm(0.2 〜5
μ)、パルプ長は1.5mm 前後であり、粉末状物や繊維径
の極めて大きなものは実質的に存在していなかった(図
1参照)。
【0050】短繊維としては、上記Aポリマ−と同様の
溶融液晶性芳香族ポリエステルを用いて、ヘッド温度3
20℃、巻取速度1000m/min及びドラフト22
の条件で溶融紡糸して得られた300d/100f(平
均繊維径17μm)のヤ−ンを5mmにギロチンカッタ
−で切断したものを用いた。アルカリ減量処理して得ら
れたパルプ状物80重量%と短繊維20重量%とを水中
に投じ、攪拌分散させた後、この分散物を80メッシュ
のステンレス製金網をとおして抄紙し、様々な坪量を有
するシ−ト状物を得た。次いでこのシ−トを表面温度1
20℃、2km/cm2 のドラム型乾燥機で処理して脱
水乾燥させた。得られた紙を上がゴムロ−ル、下がスチ
−ルロ−ルの条件下でロ−ル温度240℃、線圧70k
g/cmのカレンダ−処理を行った。得られた紙の性能
を第1表に示す。
【0051】[実施例4〜実施例6]パルプ状物と短繊
維の配合率を変更した以外は、実施例1と同様の方法で
行った。結果を表1に示す。 [実施例7、実施例8]カレンダ−ロ−ルの温度を変更
した以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示
す。 [実施例9]実施例1で得られた短繊維を、不活性雰囲
気(除湿窒素)中において250℃で4時間、280℃
で10時間熱処理した短繊維を用いた以外は実施例1と
同様に行った。結果を表1に示す。
【0052】[実施例10、実施例11]海島繊維を長
さ0.1mm及び6mmにカットし、用いるパルプ状物
の長さを0.1mm前後(実施例10)、6mm前後
(実施例11)とした以外は実施例1と同様に行った。
結果を表1に示す。 [実施例12、実施例13]短繊維のカット長を1mm
(実施例12)、35mm(実施例13)に変更した以
外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。 [実施例14]上記Aポリマ−と同様の溶融液晶性ポリ
エステルを用いて、ヘッド温度320℃、捲取速度35
0m/min、ドラフト8の条件で溶融紡糸して得られ
た900d/100f(平均繊維径30μm)のヤ−ン
を繊維長5mmにカットしたものを短繊維として使用し
た以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示
す。
【0053】[実施例15]Bポリマ−として、下記化
3で示された構成単位C〜Fのモル比がC:D:E:F
=60:20:15:5であるポリマ−(融点305
℃、対数粘度6.1dl/g)を用い、ヘッド温度33
0℃、捲取速度550m/min、ドラフト18とした
以外は実施例1と同様に行い、平均直径0.7μm
(0.1〜4μm)、繊維長1.5mm前後のパルプ状
物を得た。かかるパルプ状物を用いた以外は実施例1と
同様に行った。結果を表1に示す。
【0054】[実施例16]実施例1で使用した溶融液
晶性ポリエステルと易アルカリ減量性ポリエステルを押
出機で溶融混練したものをノズル径1mmの口金より引
き取り、ペレッタイザ−を用いてペレット化した。得ら
れたペレットは平均直径0.8mm、平均長さ2mmの
ものであった。このペレットを沸騰している40g/l
の水酸化ナトリウム溶液に20分間浸漬後、実施例1と
同様に中和、洗浄してパルプ状物を得た。パルプ状物を
SEM観察したところ、粉末状物や塊状物は実質的に存
在しておらず、さらにパルプ状物は実質的に枝分かれを
有していなかった。平均直径は1.5μm(0.5〜4
μm)でありパルプの長さは2mm前後であった。かか
るパルプ状物を用いた以外は実施例1と同様に行った。
結果を表1に示す。
【0055】[実施例17]海成分として、溶融液晶性
を示さない熱可塑性ポリマ−(ポリスチレン:旭化成株
式会社製「シュタイロン679」)を用いた以外は実施
例1と同様に、1500d/100f、島数約300個
の海島繊維を製造した。得られた海島繊維をカッタ−を
用いて繊維長約1.5mmにカットした後、室温でトル
エン中に1時間浸漬した。トルエンは、溶融液晶性ポリ
エステルに対して貧溶媒であり、ポリスチレンに対して
良溶媒である。次にこれをガ−ゼ上に移し取った後に3
0分間水で洗浄し、平均直径約1μ亜m(0.2〜5μ
m)、カット長1.5mm前後のパルプ状物を得た。か
かるパルプ状物には、粉末状物や塊状物は実質的に含ま
れていなかった。該パルプ状物を用いて実施例1と同様
に行った結果を表1に示す。
【0056】[比較例1]実施例1で用いた溶融液晶性
ポリエステル短繊維(3d)をリファイナ−を用いて叩
解し、強い剪断力を加えることによりフィブリル化して
パルプ状物を得た。かかるパルプ状物を走査型電子顕微
鏡で観察すると、部分的には直径1μm程度のパルプ状
物もあるが、直径及び断面形状が不均一であり塊状物や
粉末状物が混在していた(図2参照)。このパルプ状物
を用いた以外は、実施例1と同様に抄紙を行ったが、塊
状物が混在するため抄紙性に劣り、得られた紙も地合が
悪く、空隙が多数存在するため絶縁性も低いものであっ
た。結果を表1に示す。
【0057】[比較例2]長さ5mmにカットした後、
アルカリ減量処理を施していない海島繊維を用いて実施
例1と同様に抄紙した。抄紙後にアルカリ減量処理を施
して熱加工を行ったが、得られた紙は地合が悪く、さら
にシ−ト中に多数の空隙が生じるためか強度及び絶縁性
も低いものであった。得られた紙の性能を表1に示す。
【0058】[比較例3]Aポリマ−とBポリマ−とを
2台の押出機が結合された多芯鞘複合紡糸機の一方の押
出機へAポリマ−を供給して溶融混合し、ギヤポンプ
(I)で計量して多芯芯鞘複合紡糸繊維構造の鞘側に導
いた。また、Bポリマ−を他方の押出機へ供給、溶融押
出後、ギヤポンプ(II)で計量して多芯芯鞘複合紡糸繊
維構造の芯側に導いた。ギヤポンプ(I)及びギヤポン
プ(II)のポリマ−計量比は1:1とし、芯鞘複合紡糸
機構は芯数5からなるものを100組組み込んだものを
用いた。かかるポリマ−流を紡糸ヘッド温度300℃、
捲取速度1200m/min、ドラフト24の条件で複
合紡糸した。得られた繊維を1.5mmにカットした
後、実施例1と同様にアルカリ減量処理をして得られた
繊維(平均直径12μm)をパルプ成分として用いた以
外は実施例1と同様に行った。パルプ径が太いために抄
紙性が低く、かろうじて得られた紙もパルプ同志の絡み
合いが十分得られていないため、強度、地合ともに悪い
ものであった。結果を表1に示す。
【0059】[比較例4]パルプ状物の配合率を3%に
した以外は、実施例1と同様に行った。パルプ量が少量
であるために繊維状物同志の絡み合いが低く、抄紙性は
低いものであった。得られた紙の地合も劣悪なものであ
った。結果を表1に示す。 [比較例5]市販のメタ系アラミド紙(デュポン社製:
アラミド繊維を叩解して得られたパルプ使用)を用いて
同様に性能を測定した。結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】短繊維を叩解して得られたパルプを用いた
ものは、抄造性が低いのみでなく、裂断長も低く地合も
粗悪なものであった。 [実施例18、比較例6]実施例1及び比較例5で使用
した紙(10cm×10cm)を真空で80℃、24時
間乾燥し、そのまま真空下で23℃まで冷却したものを
対照試料(重量W0)とした。さらに、対照試料を23
℃の水に24時間浸漬し、表面の水を濾紙で拭き取った
後に2分間放置したものを浸漬試料(重量W1)とし
た。得られた対照試料と浸漬試料の表面抵抗率、寸法変
化、含水率を以下の方法で測定した。結果を表2に示
す。 表面抵抗率:JIS C2151に準じて電圧を加えた
1分後の表面抵抗率を測定した。 寸法変化率:浸漬試料のタテ方向及びヨコ方向の長さの
平均をL1、対照試料のタテ方向及びヨコ方向の長さの
平均をL0とするとき、(|L1−L0|)/L0×1
00により求めた。 含 水 率:(W1−W0)/W0×100により求め
た。
【0062】
【表2】
【0063】アラミド紙は、本発明の紙と比較して特に
浸漬試料の含水率が高く、表面抵抗が低いために電気絶
縁性の低いものであった。さらに、アラミド紙は寸法変
化も大きく、寸法安定性が厳密に要求される用途には不
適当なものであった。
【0064】
【発明の効果】本発明により、高紙力、低吸湿性等を有
するともに、緻密で電気絶縁性に優れた溶融液晶性ポリ
エステルからなる紙及びその効率的な製造方法を提供す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いられる実質的に枝分かれを有しな
いパルプ状物の走査電子顕微鏡写真。
【図2】成形物を叩解して得られるパルプ状物の走査電
子顕微鏡写真。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 D06M 11/38 // D01F 6/62 302 B 306 U 308

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 直径0.1μm以上5μm未満であり、
    かつ実質的に枝分かれを有しない溶融液晶性芳香族ポリ
    エステルパルプ状物を5〜100重量%含む紙。
  2. 【請求項2】 直径5μm以上25μm未満の溶融液晶
    性芳香族ポリエステルからなる短繊維を1〜95重量%
    含む請求項1に記載の紙。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の紙からなる絶縁紙。
  4. 【請求項4】 溶融液晶性芳香族ポリエステルを島成
    分、それ以外のポリマ−を海成分とする海島繊維を、長
    さ5mm以下にカットする前又はカットした後に、海成
    分を溶解及び/又は分解除去して得られる直径0.1μ
    m以上5μm未満のパルプ状物5〜100重量%を含む
    紙料を湿式抄紙する紙の製造方法。
  5. 【請求項5】 紙料に溶融液晶性芳香族ポリエステルか
    らなる直径5μm以上25μm未満の短繊維を1〜95
    重量%含む請求項4に記載の紙の製造方法。
  6. 【請求項6】 海成分を構成するポリマ−が易アルカリ
    減量性ポリエステルである請求項4に記載の紙の製造方
    法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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