JPH08209039A - 抗菌能を有するエアゾールスプレー塗料組成物 およびその処理物品 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】既成塗膜上に簡単にスプレーすることができ、
かつ既成塗膜の風合いをそこねることなく、抗菌性、抗
カビ性等の機能を賦与することができる表面改質エアゾ
ール塗料の提供を目的とする。 【構成】本発明は抗菌、抗カビ性能をもつ銀、亜鉛およ
びそれらの金属化合物からなる群の中から選ばれた少な
くとも１種の化合物及び／又は複数の抗菌イオン源と該
抗菌イオンを吸着担持するリン酸ジルコニウムセラミッ
クス材である一群の抗菌性及び抗カビ性物質の少なくと
も１種を主成分とする抗菌性及び抗カビ性成分（Ａ成
分）、表面積拡張機能と風合改質機能を有するポリエチ
レンワックス微粒子（Ｂ成分）、Ａ、Ｂ２成分を結合す
るニトロセルローズとアルキド樹脂の混合物であるＣ成
分からなる塗膜形成成分と有機溶剤（Ｄ成分）と噴射剤
であるジメチルエーテル（ＤＭＥ）とで構成される既形
成塗膜上によく付着し、かつ下地の風合をそこねること
なく、既形成塗膜に抗菌性、抗カビ性機能を賦与するこ
とのできるエアゾール塗料組成物。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は抗菌性、抗カビ性を有す
る銀、亜鉛及びそれらの金属化合物からなる群の中から
選ばれた少なくとも１種の化合物および／又は複数の抗
菌イオン源と該抗菌イオンを吸着担持するリン酸ジルコ
ニウムセラミックス材である一群の抗菌性及び抗カビ性
物質の少なくとも１種を主成分とする抗菌性及び抗カビ
性成分（Ａ成分）、平均粒子径３ミクロン以下のポリエ
チレンワックス微粒子（Ｂ成分）、ニトロセルローズと
アルキド樹脂を少なくとも含む樹脂成分（Ｃ成分）、有
機溶剤（Ｄ成分）、及びジメチルエーテル（ＤＭＥ）か
ら構成され、かつ、０．０５／１〜１／１の範囲で使用
され、Ａ＋Ｂ＋Ｃの固形分に対し、Ａ＋Ｂ成分が２０％
以下含有することを特徴とする抗菌能を有するエアゾー
ルスプレー組成物に関し、特に木質系及びムク材の建築
内装材及び木工製品全ての既成塗膜上によく付着し、か
つ下地の風合をそこねることなく、既形成塗膜に抗菌
性、抗カビ性機能を賦与することのできる抗菌能を有す
るエアゾールスプレー組成物、および該組成物がすでに
塗装されている物品の上にエアゾールスプレーされ、表
面が抗菌性、抗カビ性機能を有することを特徴とする表
面処理物品である。

【０００２】

【従来の技術】抗菌性、抗カビ性機能を有する銀、亜鉛
およびそれらの金属化合物あるいは抗菌イオン源と該抗
菌イオンを吸着担持するリン酸ジルコニウムセラミック
ス材等のいわゆる抗菌性、抗カビ性物質を用いた抗菌
性、抗カビ性塗料化する試みは公知のことである。また
簡単な塗装法としてエアゾールスプレー塗料が利用され
ていることも公知のことである。

【０００３】これらの公知の技術を組み合わせて簡単な
塗装方法で手軽に当該機能を得ようとすることは容易に
想起されることである。

【０００４】しかし、機能性を有するこれらの化合物は
比重が比較的大きく、分散安定性、とくに沈降安定性を
確保することは困難で、特にエアゾール化する場合は噴
射剤と結合剤との相溶性の制約も生じ、安定なエアゾー
ル塗料を得ることは困難であった。また、機能面からは
抗菌剤の持続性を確保し、かつ機能を発揮する塗膜表面
にいかに抗菌剤を高濃度で配向させるかが困難であっ
た。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】上記のように、本発明
が解決しようと課題は、一つはいかにしてエアゾールス
プレー塗料組成物として安定な抗菌剤の分散液を得るか
ということであり、もう一つは如何に高濃度で該抗菌剤
を配向せしめるかの２点である。

【０００６】本発明者らは上記２点の課題を解決する手
段として次の２点に着目した。その一つはフィラーの沈
降安定化機能を有するポリエチレンワックス分散液を活
用すること、同時に該ワックスはマット化剤として塗面
表面を粗にし、光反射率を下げる機能を有するので、結
果として表面積を増加させうる効果を生ずることが活用
できること、さらに既形成膜によく付着し、下地の風合
いをそのまま保存し得て、かつワックス及び抗菌剤を分
散した上で噴射剤と相溶しうるバインダーは何かについ
て選択すること。これらについて鋭意検討し本発明に到
達した。

【０００７】

【課題を解決するための手段】エアゾールスプレー組成
物で大切な技術上の配慮事項のひとつは共存するフィラ
ーの分散及び沈降安定性を安定な状態に保つことであ
る。この点については微粒化されたポリエチレンワック
スの分散液が沈降防止に効果を示すのでこれを利用する
のが有効である。

【０００８】またポリエチレンワックスは微妙な風合を
呈するツヤ消し剤として広く使用されている。本発明で
はこの風合発現に効果のあるポリエチレンをツヤ消し剤
として活用し、これを同時に抗菌機能を有するフィラー
の沈降防止剤として活用させ一石二鳥の効果を発揮させ
ることにある。

【０００９】活用できるポリエチレンワックスは直鎖あ
るいは分岐したもの、あるいは極性基を含有するものい
ずれでもよく、ただ風合を発揮させるか付着性等の物性
上の選択から適度な硬さを示すものを選択すればよい。

【００１０】大切なことはワックスの粒度で、風合、ツ
ヤ消し性および沈降防止能を発揮させるためには、少な
くとも平均粒度が３ミクロン以下のものを用いるのが好
ましい。これより大きな粒径の使用は不可というわけで
はないが目的とする機能をそこなう方向となる。

【００１１】Ｂ成分であるワックスの使用量は、抗菌剤
（Ａ成分）の量との関係において、Ａ／Ｂが０．０５／
１〜１／１の範囲で使用するのがもっとも沈降防止効果
があり、好ましい結果を与える。また、ツヤ消しの程度
はＡ＋Ｂの量で加減すればよい。

【００１２】次に抗菌剤であるが、市販の抗菌能を有す
る化合物はいずれも使用しうるが、特に化学的に安定で
かつ比較的マイルドである銀、亜鉛及びそれらの金属化
合物からなる一群から選ばれる少なくとも１種及び／又
は複数の抗菌イオン源と該抗菌イオンを吸着担持するリ
ン酸ジルコニウムセラミックス材である一群の抗菌性及
び抗カビ性物質の少なくとも１種を主成分とする抗菌性
及び抗カビ性成分（Ａ成分）を、ワックスの粒子径と同
じ程度の粒子径（好ましくは１ミクロン以下の平均粒
子）で利用するのがよい。

【００１２】これらの抗菌、抗カビ剤としては、コロイ
ダル銀、コロイダル亜鉛、銀酸化物、酸化亜鉛、ハロゲ
ン化銀、ハロゲン化亜鉛の他に銀、亜鉛イオンを担持し
たリン酸ジルコニウムセラミックスとして市販されてい
る東亜合成株式会社製ノバロンＡＧ３００あるいはノバ
ロンＡＧＺ３３０が適している。バインダーとしては、
エアゾールスプレー組成物として噴射剤との相溶性、塗
布したあとの付着性を考えると、アルキド樹脂を主体に
これを硝化綿と組み合わせて使用するのが好ましい。ア
ルキド樹脂は一般的に塗料用として用いられるものであ
れば何でも使用し得る。硝化綿は１秒〜１／８秒のもの
を適当に組み合わせて使用すればよく、粘度調節とスプ
レー後の塗膜物性とを配慮して選択すればよい。選択の
基準は肉持感とソフト性をアルキッドで持たせ、硬度、
強靭性を硝化綿で受け持たせるわけである。

【００１３】またはバインダーとして、第３成分として
少量のアクリル樹脂、セルロース系樹脂、ロジン、ロジ
ンマレイン酸樹脂も添加し得る。

【００１４】エアゾールスプレー適性を賦与するために
は更に有機溶剤としてこれらのバインダーを溶解させ、
Ａ、Ｂ成分を分散させ、かつ噴射剤と相溶せしめる仲立
ちをさせるものが必要で、これらの溶剤に特定する必要
はなく、このような性質を満たすものであれば何れでも
よい。ただし、造膜性からは通常の塗料のシンナー構成
の概念を利用して低沸点〜高沸点と多用しバランスさせ
るのが好ましい。

【００１５】噴射剤としては、ＤＭＥ（ジメチルエーテ
ル）、ＬＰＧ（液状プロパン）を単独もしくは組合せ使
用が可能であるが、本発明では特にＤＭＥを単独使用す
るのが最適である。

【００１６】次にＡ＋Ｂ成分の量であるが、これは風合
いと抗菌能を支配するものであるが固型分換算で２０％
以下でもちいるのがよく、これは目的の性能に応じて最
少量を使用するのがよい。

【作用】本発明の抗菌能を有するエアゾールスプレー組
成物の塗料は、一般家庭で容易に使用できるスプレー缶
タイプであって、木質系及びムク材の建築内装材及び木
工製品全てに容易に塗布でき、更に詳しくは内装用パネ
ル（内壁）、引き戸ドア、床材、天井材、柱、手すり、
洋服ダンス、べっド、テーブル、椅子、こたつ板、箪
笥、本箱、机、収納家具、キャビネット類、盆、下駄、
サンダル等の日用品や台所用品、または病院の備品等に
容易に塗布することができ、抗菌性及び抗カビ性を得る
ことができしかもこれらの表面に透明な強い塗膜を形成
できるので表面の保護にもなる。

【００１７】

【実施例】 − エアゾールスプレー組成物の作成─── （１）ワックス分散液 （重量部） 三洋化成製Ｎワックス２１０Ｐをキシレン中で 平均粒径３μ以下に分散させた固型分濃度１４．２％のもの １１．３ （２）バインダー成分 酢酸エチル ７ 酢酸ブチル ５ イソ酢酸ブチル １０ イソブタノール ３ トルエン ２３ キシレン ７ セロソルブアセテート ３ ジブチルフタレート １ 硝化綿 １／２秒品 １０．４ ロジン変性マレイン酸樹脂 ３．７ （ハリマックＭ３２２ ハリマ化成製） アルキド樹脂 １５．７ （大日本インキ製ベッコゾール５３−２５５） （３）抗菌剤（ノバロンＡＧ３００） ０．３

【００１８】前記（１）、（２）、（３）をよく混合
し、サンドグラインダーで１時間高速分散させた。さら
に上記配合からワックス分、抗菌剤を抜き、代わりにキ
シレンを入れたものをブランク試料として作成した。次
に抗菌剤、ワックス入りの配合物とブランク試料配合
物、及びワックスなし の配合で混合し、それぞれの混合物４５ｃｃに対しＤＭ
Ｅ５５ｃｃの割合でエアゾールスプレー缶に充填した。
上記の手法で得られた３種のエアゾールスプレー缶をま
ず安定性比較テストを実施した結果は表−１の通りであ
る。

【００１８】

【表−１】上記の結果に基づいてブランク試料と、ワッ
クス＋抗菌剤入りのエアゾールスプレー缶で以下のテス
トを実施した。

【００１９】（３）ワックス＋抗菌剤入り（試料−１）
とブランク試料（試料−２）の比較を、下記の方法によ
り黒こうじカビ、大腸菌、黄色ブドウ球菌、サルモネラ
の発育状況比較試験で実施した。 （４）黒こうじカビの発育状況試験は試料１および試料
２上に黒こうじカビの菌液を１ｍｌ滴下し２５℃で保存
した後、保存日毎に上記検体上の生菌数を菌数測定用培
地を用いた混釈平板培養法により測定した。抗菌結果を
表−２に示す。表−２での表示数は、試験菌液の生菌数
を測定し検体１枚当たりに換算して表示した。

【００２０】

【表−２】

【００２１】（５）表−２に示す比較試験結果より明ら
かなように、試料１は試料２より優れた抗カビ性を有し
ている。 （６）前記試料１及び試料２の比較を、下記の方法によ
り大腸菌、黄色ブドウ球菌サルモネラの発育状況比較試
験で実施した。 （７）試料１及び試料２上に試験菌液を１ｍｌ滴下し３
５℃で保存した後、保存２４時間後に検体を滅菌リン酸
緩衝液で洗い出し、この洗い出した液中の生菌数をＳＣ
ＤＬＰ寒天培地「日本製薬（株）製」を用いた混釈平板
培養法（３５℃、２日間）で測定した。抗菌結果を表−
３に示す。表−３での表示数は、使用した菌液の菌数を
測定し検体１枚当たりに換算して表示した。

【００２２】

【表−３】

【００２３】（８）表−３に示す比較試験結果より明ら
かなように、試料１は試料２より優れた抗カビ性を有し
ている。

【００２４】

【発明の効果】本発明の抗菌能を有するエアゾールスプ
レー塗料組成物およびその処理物品は高い抗菌性及び抗
カビ性を有するだけでなく、木工塗装に於いて、密着
性、乾燥性が優れ、塗膜の硬度が高く改善され、傷がつ
きにくく、半永久的に美しい塗膜を保つことができる。
更に手軽に使用できて塗膜の仕上がり肌にはしっくりと
したぬくもり感がある。

【００２５】

【表−１】

【００２６】

【表−２】

【００２７】

【表−３】

フロントページの続き (51)Int.Cl.⁶ 識別記号 庁内整理番号 ＦＩ 技術表示箇所 Ｃ０９Ｄ 5/00 ＰＳＥ 7/12 ＰＳＫ 101/18 ＰＣＵ 123/06 ＰＥＱ 167/08 ＰＬＪ 191/06 ＰＣＺ

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】抗菌性、抗カビ性を有する銀、亜鉛及びそ
   れらの金属化合物からなる群の中から選ばれた少なくと
   も１種の化合物及び／又は複数の抗菌イオン源と該抗菌
   イオンを吸着担持するリン酸ジルコニウムセラミックス
   材である一群の抗菌性及び抗カビ性物質の少なくとも１
   種を主成分とする抗菌性及び抗カビ性成分（Ａ成分）、
   平均粒子径３ミクロン以下のポリエチレンワックス微粒
   子（Ｂ成分）、ニトロセルローズとアルキド樹脂を少な
   くとも含む樹脂成分（Ｃ成分）、有機溶剤（Ｄ成分）、
   及びジメチルエーテル（ＤＭＥ）から構成され、かつ、
   ０．０５／１〜１／１の範囲で使用され、Ａ＋Ｂ＋Ｃの
   固形分に対し、Ａ＋Ｂ成分が２０％以下含有することを
   特徴とする抗菌能を有するエアゾールスプレー塗料組成
   物。
2. 【請求項２】請求項１における組成物がエアゾールスプ
   レー缶に充填されていることを特徴とする抗菌性、抗カ
   ビ性エアゾールスプレー塗料。
3. 【請求項３】請求項１における組成物がすでに塗装され
   ている物品の上にエアゾールスプレーされ、表面が抗菌
   性、抗カビ性機能を有することを特徴とする表面処理物
   品。