JPH08199276A - 冷間鍛造用アルミニウム合金 - Google Patents
冷間鍛造用アルミニウム合金Info
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- JPH08199276A JPH08199276A JP2885295A JP2885295A JPH08199276A JP H08199276 A JPH08199276 A JP H08199276A JP 2885295 A JP2885295 A JP 2885295A JP 2885295 A JP2885295 A JP 2885295A JP H08199276 A JPH08199276 A JP H08199276A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 機械加工性、冷間鍛造性に優れ、強度の高い
アルミニウム合金材料を提供する。 【構成】 Mg:0.2〜0.75wt%、Si:0.
2〜1.5wt%、Cu:0.05〜1.0wt%、S
n:0.01〜1.0wt%、Ti:0.005〜0.
20wt%、及びNi:0.1〜5.0wt%、Fe:
0.1〜1.0wt%、Mn:0.1〜1.0wt%の
うち少なくとも2種以上含有し、Ni+Fe+Mn≧
1.0wt%でかつFe+Mn≦1.0wt%で、残部
が不可避不純物からなり、Mg2 Si≦−0.52EX
Si+1.03なる関係を満足し、結晶粒の平均径が1
mm以下であることを特徴とする冷間鍛造用アルミニウ
ム合金。 【効果】 冷間鍛造品が歩留り良く得られ、かつ切削性
に優れているため、コスト低減し良好な生産性が得られ
る。
アルミニウム合金材料を提供する。 【構成】 Mg:0.2〜0.75wt%、Si:0.
2〜1.5wt%、Cu:0.05〜1.0wt%、S
n:0.01〜1.0wt%、Ti:0.005〜0.
20wt%、及びNi:0.1〜5.0wt%、Fe:
0.1〜1.0wt%、Mn:0.1〜1.0wt%の
うち少なくとも2種以上含有し、Ni+Fe+Mn≧
1.0wt%でかつFe+Mn≦1.0wt%で、残部
が不可避不純物からなり、Mg2 Si≦−0.52EX
Si+1.03なる関係を満足し、結晶粒の平均径が1
mm以下であることを特徴とする冷間鍛造用アルミニウ
ム合金。 【効果】 冷間鍛造品が歩留り良く得られ、かつ切削性
に優れているため、コスト低減し良好な生産性が得られ
る。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、寸法精度を必要とする
薄肉鍛造加工に適したアルミニウム合金に関するもので
ある。
薄肉鍛造加工に適したアルミニウム合金に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】最近、寸法精度が高く薄肉で製品強度を
必要とするアルミニウム合金部材の要求が高まってい
る。例えば油圧部品用の各種タンクやエアーバッグのイ
ンフレーター及びパイプボディーのようなもので、成形
品に厚さ4mm以下の薄肉部を有している。従来からこ
れらの部材は鍛造によって得ている。その際、5052合金
のような非熱処理型の合金を加工硬化させて強度を持た
せる方法か、あるいは6061合金のような熱処理型の合金
を鍛造後、熱処理して強度をだしている。5000番系合金
は鍛造時の硬度が高く、金型寿命が短い欠点がある。ま
た、6000番系合金は高温から焼入れして熱処理する際に
歪が生じ、寸法精度が悪化して製品歩留まりが低くなる
欠点がある。さらに、鍛造用素材の組織の結晶粒が粗大
になりやすく、鍛造時に割れたり粗大結晶粒の模様が表
面に現われ、梨地外観を呈して、いわゆるオレンジピー
ルが発生する。これら従来の規格合金の欠点を解消する
ものとして、本発明者はAl−Mg−Si系の遅時効硬
化型鍛造用アルミニウム合金として特願平6−2508
15を提案した。
必要とするアルミニウム合金部材の要求が高まってい
る。例えば油圧部品用の各種タンクやエアーバッグのイ
ンフレーター及びパイプボディーのようなもので、成形
品に厚さ4mm以下の薄肉部を有している。従来からこ
れらの部材は鍛造によって得ている。その際、5052合金
のような非熱処理型の合金を加工硬化させて強度を持た
せる方法か、あるいは6061合金のような熱処理型の合金
を鍛造後、熱処理して強度をだしている。5000番系合金
は鍛造時の硬度が高く、金型寿命が短い欠点がある。ま
た、6000番系合金は高温から焼入れして熱処理する際に
歪が生じ、寸法精度が悪化して製品歩留まりが低くなる
欠点がある。さらに、鍛造用素材の組織の結晶粒が粗大
になりやすく、鍛造時に割れたり粗大結晶粒の模様が表
面に現われ、梨地外観を呈して、いわゆるオレンジピー
ルが発生する。これら従来の規格合金の欠点を解消する
ものとして、本発明者はAl−Mg−Si系の遅時効硬
化型鍛造用アルミニウム合金として特願平6−2508
15を提案した。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前記アルミニウム合金
は溶体化後常温時効せず、鍛造時の硬度が低くて成形性
に富み、鍛造後の焼戻し処理による時効析出硬化による
強度向上が期待できる。しかしながら製品の旋削、ドリ
ル加工等の機械加工時に、切り粉のからまりやバリ発生
を伴う問題を生じていた。そのためかかる切り粉の処
理、バリ発生を防止するため、種々の加工法の工夫や、
バリ取り工程の追加を行う等、工程上種々煩雑であっ
た。
は溶体化後常温時効せず、鍛造時の硬度が低くて成形性
に富み、鍛造後の焼戻し処理による時効析出硬化による
強度向上が期待できる。しかしながら製品の旋削、ドリ
ル加工等の機械加工時に、切り粉のからまりやバリ発生
を伴う問題を生じていた。そのためかかる切り粉の処
理、バリ発生を防止するため、種々の加工法の工夫や、
バリ取り工程の追加を行う等、工程上種々煩雑であっ
た。
【0004】そこで本発明は、特願平6−250815
で提案した溶体化後常温時効せず鍛造時の硬度が低く成
形性に富み、鍛造後は焼き戻し処理による時効析出硬化
による強度向上するアルミニウム合金について、さら
に、旋削、ドリル加工等の機械加工時の切削性を格段に
改善することを目的としたものである。
で提案した溶体化後常温時効せず鍛造時の硬度が低く成
形性に富み、鍛造後は焼き戻し処理による時効析出硬化
による強度向上するアルミニウム合金について、さら
に、旋削、ドリル加工等の機械加工時の切削性を格段に
改善することを目的としたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、素材の結晶粒
度を微細な範囲に規制し、微量のSn添加により鍛造前
に溶体化を行なっても常温時効せず、鍛造時は硬度が低
くて成形性に富み、鍛造後に200℃以下の低温で焼き
戻すことにより時効析出硬化による強度の向上が期待で
きるものである。
度を微細な範囲に規制し、微量のSn添加により鍛造前
に溶体化を行なっても常温時効せず、鍛造時は硬度が低
くて成形性に富み、鍛造後に200℃以下の低温で焼き
戻すことにより時効析出硬化による強度の向上が期待で
きるものである。
【0006】また、MgとSiの含有量を、Mg2 Si
を形成するための当量関係と一定の範囲に規定すること
により、常温時効効果の抑制をはかり冷間鍛造性の改善
をはかりながら、かつ切削性を改善するため数μmの金
属間化合物を存在させることにより、切削工具の構成刃
先を生成しずらくし、切り粉破砕性を高めたものであ
る。
を形成するための当量関係と一定の範囲に規定すること
により、常温時効効果の抑制をはかり冷間鍛造性の改善
をはかりながら、かつ切削性を改善するため数μmの金
属間化合物を存在させることにより、切削工具の構成刃
先を生成しずらくし、切り粉破砕性を高めたものであ
る。
【0007】即ち、本発明の合金はMg:0.2〜0.
75wt%、Si:0.2〜1.5wt%、Cu:0.
05〜1.0wt%、Sn:0.01〜1.0wt%、
Ti:0.005〜0.20wt%、及びNi:0.1
〜5.0wt%、Fe:0.1〜1.0wt%、Mn:
0.1〜1.0wt%のうち少なくとも2種以上含有
し、Ni+Fe+Mn≧1.0wt%でかつFe+Mn
≦1.0wt%で、残部が不可避不純物からなり、Mg
2 Si≦−0.52EXSi+1.03なる関係を満足
し、結晶粒の平均径が1mm以下であることを特徴とす
る冷間鍛造用アルミニウム合金である。
75wt%、Si:0.2〜1.5wt%、Cu:0.
05〜1.0wt%、Sn:0.01〜1.0wt%、
Ti:0.005〜0.20wt%、及びNi:0.1
〜5.0wt%、Fe:0.1〜1.0wt%、Mn:
0.1〜1.0wt%のうち少なくとも2種以上含有
し、Ni+Fe+Mn≧1.0wt%でかつFe+Mn
≦1.0wt%で、残部が不可避不純物からなり、Mg
2 Si≦−0.52EXSi+1.03なる関係を満足
し、結晶粒の平均径が1mm以下であることを特徴とす
る冷間鍛造用アルミニウム合金である。
【0008】先ず、本発明のアルミニウム合金の成分限
定理由を説明する。 Sn:Snは遅時効性を付与するための重要な元素であ
る。Sn添加による常温時効の抑制効果は、Al−Cu
系合金では既に知られていることである。溶体化時の凍
結空孔とSnが結び付いて時効析出に寄与する元素の拡
散を阻止して、常温時効性を抑制するとされている。
0.01wt%以下では効果がなく、1.0wt%を越
えるとその効果が飽和するだけでなく、耐食性を著しく
劣化させる。しかし、Mg添加合金ではその効果は少な
い。たとえば日本金属学会誌Vol.35P.1021(1971年)に
よれば、6061合金に単にSnを添加しても、実用レベル
の溶体化後1週間以上の常温時効抑制効果は認められな
いとされている。
定理由を説明する。 Sn:Snは遅時効性を付与するための重要な元素であ
る。Sn添加による常温時効の抑制効果は、Al−Cu
系合金では既に知られていることである。溶体化時の凍
結空孔とSnが結び付いて時効析出に寄与する元素の拡
散を阻止して、常温時効性を抑制するとされている。
0.01wt%以下では効果がなく、1.0wt%を越
えるとその効果が飽和するだけでなく、耐食性を著しく
劣化させる。しかし、Mg添加合金ではその効果は少な
い。たとえば日本金属学会誌Vol.35P.1021(1971年)に
よれば、6061合金に単にSnを添加しても、実用レベル
の溶体化後1週間以上の常温時効抑制効果は認められな
いとされている。
【0009】Mg:Mgは析出硬化元素であり、Siと
Mg2 Siを形成し、Al−Cu−Mgを形成して強度
を向上させる効果を有する。0.2wt%以下では効果
がなく、0.75wt%を越えると溶体化後の時効硬化
が起こりやすくなる。
Mg2 Siを形成し、Al−Cu−Mgを形成して強度
を向上させる効果を有する。0.2wt%以下では効果
がなく、0.75wt%を越えると溶体化後の時効硬化
が起こりやすくなる。
【0010】Si:Siも析出硬化元素であり、Mgと
Mg2 Siを形成して強度を向上させる効果を有する。
0.2wt%以下では効果がなく、1.5wt%を越え
ると溶体化後の時効硬化が起こりやすくなる。
Mg2 Siを形成して強度を向上させる効果を有する。
0.2wt%以下では効果がなく、1.5wt%を越え
ると溶体化後の時効硬化が起こりやすくなる。
【0011】ところで、Al−Si−Mg系合金でSn
添加による常温時効抑制効果を発揮させるには、Mg2
Siを形成するMgとSiの含有量が大きく影響するこ
とが判かった。即ち、Mg、Si量を変化させたSn:
0.10wt%添加合金について550℃水冷した場合
の常温時効性について調べた。その結果を図1に示す。
図1は横軸に過剰Siを、縦軸にMg2 Si量をプロッ
トしたものである。ここで、縦軸のMg2 Si量(wt
%)は、合金中のMg含有量を基準とした計算上のMg
2 Si生成量である。また、過剰Si(EXSi)と
は、前記Mg2 Si量に相当する計算上のSi量と、実
際に合金中に含有されているSi量との差である。Mg
過剰の場合には負の値となる。Mg、Si量を変化させ
てこれらの指標を計算し、常温時効性を測定して図1に
グラフ化した。図1中で◎印は1か月でも常温時効硬化
しなかったもの、○印は1〜2週間後に常温時効硬化を
開始したもの、X印は溶体化の当日又は翌日より常温時
効硬化を開始したものを示す。図1より常温時効硬化の
抑制効果の有るものとして直線Mg2 Si=−0.52
EXSi+1.03の下側、即ち、 Mg2 Si≦−0.52EXSi+1.03 ・・・・(1) なる関係が導かれた。図1よりMg2 Siの当量よりも
Si<Mgなる領域にも常温時効硬化抑制効果の有る領
域が有ることが判かり、実用上もこの範囲の方が製品硬
度が高くなる。
添加による常温時効抑制効果を発揮させるには、Mg2
Siを形成するMgとSiの含有量が大きく影響するこ
とが判かった。即ち、Mg、Si量を変化させたSn:
0.10wt%添加合金について550℃水冷した場合
の常温時効性について調べた。その結果を図1に示す。
図1は横軸に過剰Siを、縦軸にMg2 Si量をプロッ
トしたものである。ここで、縦軸のMg2 Si量(wt
%)は、合金中のMg含有量を基準とした計算上のMg
2 Si生成量である。また、過剰Si(EXSi)と
は、前記Mg2 Si量に相当する計算上のSi量と、実
際に合金中に含有されているSi量との差である。Mg
過剰の場合には負の値となる。Mg、Si量を変化させ
てこれらの指標を計算し、常温時効性を測定して図1に
グラフ化した。図1中で◎印は1か月でも常温時効硬化
しなかったもの、○印は1〜2週間後に常温時効硬化を
開始したもの、X印は溶体化の当日又は翌日より常温時
効硬化を開始したものを示す。図1より常温時効硬化の
抑制効果の有るものとして直線Mg2 Si=−0.52
EXSi+1.03の下側、即ち、 Mg2 Si≦−0.52EXSi+1.03 ・・・・(1) なる関係が導かれた。図1よりMg2 Siの当量よりも
Si<Mgなる領域にも常温時効硬化抑制効果の有る領
域が有ることが判かり、実用上もこの範囲の方が製品硬
度が高くなる。
【0012】Cu:CuはAl−Cu−Mg、Al−C
uの時効析出により合金強度を高める。含有量が0.0
5wt%以下では効果がなく、1wt%を越えるとM
g、Siとの相互作用が起きて常温時効性が高まる。
uの時効析出により合金強度を高める。含有量が0.0
5wt%以下では効果がなく、1wt%を越えるとM
g、Siとの相互作用が起きて常温時効性が高まる。
【0013】Ti、B:微量のTiは鋳造組織を微細化
し、素材として鍛造成形性を高める。0.005wt%
未満の添加では微細化効果が得られず、0.20wt%
以上では初晶としてTiAl3 が晶出し、材料欠陥とな
る。また、Tiと共に微量のBを添加すると一層効果的
である。この場合は1ppm未満ではその効果がなく、
500ppmを越えるとTiB2 の粗大粒子が混入して
材料欠陥となる。
し、素材として鍛造成形性を高める。0.005wt%
未満の添加では微細化効果が得られず、0.20wt%
以上では初晶としてTiAl3 が晶出し、材料欠陥とな
る。また、Tiと共に微量のBを添加すると一層効果的
である。この場合は1ppm未満ではその効果がなく、
500ppmを越えるとTiB2 の粗大粒子が混入して
材料欠陥となる。
【0014】本発明のアルミニウム合金は鍛造加工時の
組織が重要である。鍛造性の観点からは鍛造素材の結晶
粒の大きさが非常に大きな影響を有する。結晶粒とは、
押出加工後の組織あるいは溶体化後の再結晶組織の結晶
粒を指す。良好な鍛造性を有するためには、結晶粒の大
きさが微細であることが必須要件となる。その大きさは
平均径で1mm以下、好ましくは 0.5mm以下であるこ
とを要する。結晶粒径が粗大であると塑性流動性が悪く
なり、鍛造割れが起こりやすい。たとえ鍛造が可能であ
ってもオレンジピールによる外観不良となる。適正な粒
径の範囲は偏曲点があるわけではないが、鍛造しようと
する製品の形状や用途で決まるが、平均的な結晶粒径が
1mm以下であれば問題はない。本発明合金の組織を得
るには、結晶微細化剤を使用して直径100mm以下の
連続鋳造体とすれば良い。
組織が重要である。鍛造性の観点からは鍛造素材の結晶
粒の大きさが非常に大きな影響を有する。結晶粒とは、
押出加工後の組織あるいは溶体化後の再結晶組織の結晶
粒を指す。良好な鍛造性を有するためには、結晶粒の大
きさが微細であることが必須要件となる。その大きさは
平均径で1mm以下、好ましくは 0.5mm以下であるこ
とを要する。結晶粒径が粗大であると塑性流動性が悪く
なり、鍛造割れが起こりやすい。たとえ鍛造が可能であ
ってもオレンジピールによる外観不良となる。適正な粒
径の範囲は偏曲点があるわけではないが、鍛造しようと
する製品の形状や用途で決まるが、平均的な結晶粒径が
1mm以下であれば問題はない。本発明合金の組織を得
るには、結晶微細化剤を使用して直径100mm以下の
連続鋳造体とすれば良い。
【0015】機械加工性については、図2の写真(鍛造
VTRドラムの外周近傍のミクロ組織)に示されるよう
に数μmの金属間化合物が存在することにより、機械加
工時のバイトやドリルの構成刃先をセルフクリーニング
効果で生成しずらくさせる。また、写真のようにネット
ワーク状に明瞭に認められる組織であれば、切削切り粉
の分断性がよくなる。この金属間化合物は、Mn、Fe
およびNiを主成分としたAl、SiあるいはCuとの
化合物が一般的で、その他に共晶Siの分散も同様な効
果がある。このような分散相を得るには各々の元素単独
で、Mn+Fe+Niで1.0wt%を越える程度の添
加が必要(Si単独では2wt%以上)となる。
VTRドラムの外周近傍のミクロ組織)に示されるよう
に数μmの金属間化合物が存在することにより、機械加
工時のバイトやドリルの構成刃先をセルフクリーニング
効果で生成しずらくさせる。また、写真のようにネット
ワーク状に明瞭に認められる組織であれば、切削切り粉
の分断性がよくなる。この金属間化合物は、Mn、Fe
およびNiを主成分としたAl、SiあるいはCuとの
化合物が一般的で、その他に共晶Siの分散も同様な効
果がある。このような分散相を得るには各々の元素単独
で、Mn+Fe+Niで1.0wt%を越える程度の添
加が必要(Si単独では2wt%以上)となる。
【0016】Mn、Feは金属間化合物を形成し、切削
切り粉の分断性を改良する。しかしながらMn、Feの
総量で1.0wt%を越えると、Mn、FeはSiと化
合物を形成し、本合金成分範囲では、時効硬化に寄与す
るSi量が確保されない場合がある。さらにMn、Fe
は総量で1.0wt%を越えると、有効Si量に影響を
与えるだけでなく、鋳造条件により巨大晶出物を発生さ
せ好ましくない。また、Mnの場合、単独で1.0wt
%を越えるような添加では、アルミマトリックス硬度を
向上させ、冷間鍛造用途には適さない。また逆にMn、
Feとも0.1wt%以下は、金属間化合物の形成が少
なく、切削切り粉の分断性を向上する効果が得られな
い。
切り粉の分断性を改良する。しかしながらMn、Feの
総量で1.0wt%を越えると、Mn、FeはSiと化
合物を形成し、本合金成分範囲では、時効硬化に寄与す
るSi量が確保されない場合がある。さらにMn、Fe
は総量で1.0wt%を越えると、有効Si量に影響を
与えるだけでなく、鋳造条件により巨大晶出物を発生さ
せ好ましくない。また、Mnの場合、単独で1.0wt
%を越えるような添加では、アルミマトリックス硬度を
向上させ、冷間鍛造用途には適さない。また逆にMn、
Feとも0.1wt%以下は、金属間化合物の形成が少
なく、切削切り粉の分断性を向上する効果が得られな
い。
【0017】Niの場合、単独で1.0wt%以上添加
しても、Siとの化合物の形成はなく有効Si量が確保
され、共晶点近傍の5.0wt%までは巨大晶出物の形
成の心配も少ない。しかしながら5.0wt%を越える
と、やはり巨大晶出物の形成が懸念され、かつコスト的
にも高価となる。また、0.1wt%以下では、金属間
化合物の形状が少なく、切削切り粉の分断性を向上する
効果が得られない。
しても、Siとの化合物の形成はなく有効Si量が確保
され、共晶点近傍の5.0wt%までは巨大晶出物の形
成の心配も少ない。しかしながら5.0wt%を越える
と、やはり巨大晶出物の形成が懸念され、かつコスト的
にも高価となる。また、0.1wt%以下では、金属間
化合物の形状が少なく、切削切り粉の分断性を向上する
効果が得られない。
【0018】なお不可避不純物の1つとして、Crは
0.3wt%以下なら本発明の効果を損わないため許容
されるが、0.3wt%を越えるとFe、Mnと同様に
巨大な晶出物の形成を助長するため好ましくない。
0.3wt%以下なら本発明の効果を損わないため許容
されるが、0.3wt%を越えるとFe、Mnと同様に
巨大な晶出物の形成を助長するため好ましくない。
【0019】ネットワーク状の金属間化合物相を形成さ
せるためには、鋳造のまま材料を熱処理などを施した後
にそのまま鍛造に供することにより達成できる。しか
し、鋳造材を押出しのような強加工を施すと、前記金属
間化合物相が分散し、さらにこの材料を鍛造に供するこ
とによりこの分散が顕著となり、製品の切り粉処理性は
劣り好ましくない。
せるためには、鋳造のまま材料を熱処理などを施した後
にそのまま鍛造に供することにより達成できる。しか
し、鋳造材を押出しのような強加工を施すと、前記金属
間化合物相が分散し、さらにこの材料を鍛造に供するこ
とによりこの分散が顕著となり、製品の切り粉処理性は
劣り好ましくない。
【0020】
【作用】本発明はMg含有量を低く抑え、かつSiとの
関係をMg2 Siと一定の関係を有する範囲に規定し、
さらにSnを添加することによりAl−Si−Mg系合
金の常温時効を抑制する効果を維持しながら、Fe、M
n、Niを一定量添加することにより金属間化合物をネ
ットワーク状に晶出させ構成刃先のセルフクリーニング
及び切り粉破砕性を高めたものである。
関係をMg2 Siと一定の関係を有する範囲に規定し、
さらにSnを添加することによりAl−Si−Mg系合
金の常温時効を抑制する効果を維持しながら、Fe、M
n、Niを一定量添加することにより金属間化合物をネ
ットワーク状に晶出させ構成刃先のセルフクリーニング
及び切り粉破砕性を高めたものである。
【0021】
【実施例】次に、VTRドラムの場合の実施例を挙げて
本発明を説明する。
本発明を説明する。
【0022】(実施例1〜6)表1に示す組成のアルミ
ニウム合金を溶製し、直径67mmの丸棒に連続鋳造し
た。この連続鋳造棒を表2に示す加工条件に従って、V
TR用ドラム部材に加工した。即ち、連続鋳造棒を直径
62.5mmに面削加工し、厚さ9.5mmの円板状に
切断した。この円板を溶体化処理後、ボンデ処理を施
し、冷間鍛造してVTRドラム用に成形した。次いでこ
の成形体を焼き戻してVTRドラム用の部材を得た。そ
して前記VTRドラム用部材の外周面を、バイト(ダイ
ヤモンドバイト(商品名 コンパックス)R=0.4)
を使用し、切り込み片側0.2mm、削り速度V=10
m/s(3000rpm)、送り速度0.1mm/re
vの条件で切削を行った。
ニウム合金を溶製し、直径67mmの丸棒に連続鋳造し
た。この連続鋳造棒を表2に示す加工条件に従って、V
TR用ドラム部材に加工した。即ち、連続鋳造棒を直径
62.5mmに面削加工し、厚さ9.5mmの円板状に
切断した。この円板を溶体化処理後、ボンデ処理を施
し、冷間鍛造してVTRドラム用に成形した。次いでこ
の成形体を焼き戻してVTRドラム用の部材を得た。そ
して前記VTRドラム用部材の外周面を、バイト(ダイ
ヤモンドバイト(商品名 コンパックス)R=0.4)
を使用し、切り込み片側0.2mm、削り速度V=10
m/s(3000rpm)、送り速度0.1mm/re
vの条件で切削を行った。
【0023】(比較例1〜5)比較例1はNi+Fe+
Mnが1.0wt%以下であること以外は実施例1〜6
と同様の条件で加工した。比較例2はMnを1.2wt
%添加した以外は実施例1〜6と同様の条件で加工を行
った。比較例3はFe+Mnを1.3wt%添加した以
外は実施例1〜6と同様の条件で加工を行った。比較例
4はMg2 Si>−0.52EXSi+1.03となる
ようにMnとSiを調整した以外実施例1〜6と同様の
条件で加工を行った。比較例5は実施例1と同一の合金
組成で直径200mmのビレットに鋳造し、直径62.
5mmに押出した後O材処理を行い、ボンデ処理を施し
冷間鍛造しVTR用ドラムを成形した。そして530℃
で3時間溶体化処理を行い、180℃で6時間焼き戻し
を行った以外は実施例1〜6と同様の条件で加工を行っ
た。
Mnが1.0wt%以下であること以外は実施例1〜6
と同様の条件で加工した。比較例2はMnを1.2wt
%添加した以外は実施例1〜6と同様の条件で加工を行
った。比較例3はFe+Mnを1.3wt%添加した以
外は実施例1〜6と同様の条件で加工を行った。比較例
4はMg2 Si>−0.52EXSi+1.03となる
ようにMnとSiを調整した以外実施例1〜6と同様の
条件で加工を行った。比較例5は実施例1と同一の合金
組成で直径200mmのビレットに鋳造し、直径62.
5mmに押出した後O材処理を行い、ボンデ処理を施し
冷間鍛造しVTR用ドラムを成形した。そして530℃
で3時間溶体化処理を行い、180℃で6時間焼き戻し
を行った以外は実施例1〜6と同様の条件で加工を行っ
た。
【0024】表3に試験結果を示す。以下に表3におけ
る鍛造性評価、仕上げ精度評価、切り粉処理性評価、鍛
造品寸法精度評価の判断基準を示す。
る鍛造性評価、仕上げ精度評価、切り粉処理性評価、鍛
造品寸法精度評価の判断基準を示す。
【0025】鍛造性評価基準 ○:鍛造成形したVTRドラムの底厚が3.0mm以下 ×:鍛造成形したVTRドラムの底厚が3.0mmを越
えるもの
えるもの
【0026】仕上げ精度評価基準 ○:表面が滑らか △:表面にバイトツール痕有り ×:表面に引っかきキズが有り
【0027】切り粉処理性評価基準 ◎:短径カールで切り粉排出性が良好 ○:大径カールで切り粉排出性が良好 △:大径カールでバイトに切り粉がからまる ×:切り粉がカールせずバイトに切り粉がからまる
【0028】鍛造品寸法精度評価基準 ○:外周面切削後黒皮残りがなく、設計寸法が確保され
たもの ×:外周面切削後黒皮残りが有り、設計寸法が確保され
ないもの
たもの ×:外周面切削後黒皮残りが有り、設計寸法が確保され
ないもの
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
【発明の効果】上述のように本発明は、素材の結晶粒度
を微細な範囲に規制し、微量のSn添加により鍛造前に
溶体化を行なっても常温時効せず、鍛造時は硬度が低く
て成形性に富み、鍛造後に200℃以下の低温で焼き戻
すことにより時効析出硬化による強度の向上が期待でき
るものである。また、MgとSiの含有量を、Mg2 S
iを形成するための当量関係と一定の範囲に規定するこ
とにより、常温時効効果の抑制をはかり冷間鍛造性の改
善をはかりながら、かつ切削性を改善するため数μmの
金属間化合物を存在させることにより、切削工具の構成
刃先を生成しずらくし、切り粉破砕性を高めたものであ
る。従って、薄肉の器物、例えばエアバックインフレー
ター、パイプボデーのように製品強度が必要な用途で、
成形品に薄肉部が存在するような場合の製品寸法精度を
向上させると同時に、鍛造・熱処理後の機械加工性を向
上させることができる。
を微細な範囲に規制し、微量のSn添加により鍛造前に
溶体化を行なっても常温時効せず、鍛造時は硬度が低く
て成形性に富み、鍛造後に200℃以下の低温で焼き戻
すことにより時効析出硬化による強度の向上が期待でき
るものである。また、MgとSiの含有量を、Mg2 S
iを形成するための当量関係と一定の範囲に規定するこ
とにより、常温時効効果の抑制をはかり冷間鍛造性の改
善をはかりながら、かつ切削性を改善するため数μmの
金属間化合物を存在させることにより、切削工具の構成
刃先を生成しずらくし、切り粉破砕性を高めたものであ
る。従って、薄肉の器物、例えばエアバックインフレー
ター、パイプボデーのように製品強度が必要な用途で、
成形品に薄肉部が存在するような場合の製品寸法精度を
向上させると同時に、鍛造・熱処理後の機械加工性を向
上させることができる。
【図1】SiとMgの適正な含有量との関係を示す図で
ある。
ある。
【図2】本発明に係る冷間鍛造用アルミニウム合金の金
属組成写真である。
属組成写真である。
Claims (2)
- 【請求項1】 Mg:0.2〜0.75wt%、Si:
0.2〜1.5wt%、Cu:0.05〜1.0wt
%、Sn:0.01〜1.0wt%、Ti:0.005
〜0.20wt%、及びNi:0.1〜5.0wt%、
Fe:0.1〜1.0wt%、Mn:0.1〜1.0w
t%のうち少なくとも2種以上含有し、Ni+Fe+M
n≧1.0wt%でかつFe+Mn≦1.0wt%で、
残部が不可避不純物からなり、Mg2 Si≦−0.52
EXSi+1.03なる関係を満足し、結晶粒の平均径
が1mm以下であることを特徴とする冷間鍛造用アルミ
ニウム合金。 - 【請求項2】 Mg:0.2〜0.75wt%、Si:
0.2〜1.5wt%、Cu:0.05〜1.0wt
%、Sn:0.01〜1.0wt%、Ti:0.005
〜0.20wt%、B:0.0001wt%〜0.05
wt%、及びNi:0.1〜5.0wt%、Fe:0.
1〜1.0wt%、Mn:0.1〜1.0wt%のうち
少なくとも2種以上含有し、Ni+Fe+Mn≧1.0
wt%でかつFe+Mn≦1.0wt%で、残部が不可
避不純物からなり、Mg2 Si≦−0.52EXSi+
1.03なる関係を満足し、結晶粒の平均径が1mm以
下であることを特徴とする冷間鍛造用アルミニウム合
金。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2885295A JPH08199276A (ja) | 1995-01-25 | 1995-01-25 | 冷間鍛造用アルミニウム合金 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2885295A JPH08199276A (ja) | 1995-01-25 | 1995-01-25 | 冷間鍛造用アルミニウム合金 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08199276A true JPH08199276A (ja) | 1996-08-06 |
Family
ID=12259919
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2885295A Pending JPH08199276A (ja) | 1995-01-25 | 1995-01-25 | 冷間鍛造用アルミニウム合金 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH08199276A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009185388A (ja) * | 1999-06-16 | 2009-08-20 | Nippon Light Metal Co Ltd | 外観品質の優れたAl−Mg−Si系アルミニウム合金冷間鍛造品 |
JP2019507248A (ja) * | 2016-01-22 | 2019-03-14 | アーエムアーゲー ローリング ゲーエムベーハー | 時効硬化型Al−Mg−Si系アルミニウム合金 |
WO2021153412A1 (ja) * | 2020-01-30 | 2021-08-05 | 住友電気工業株式会社 | アルミニウム合金、アルミニウム合金線、アルミニウム合金部材、及びボルト |
-
1995
- 1995-01-25 JP JP2885295A patent/JPH08199276A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009185388A (ja) * | 1999-06-16 | 2009-08-20 | Nippon Light Metal Co Ltd | 外観品質の優れたAl−Mg−Si系アルミニウム合金冷間鍛造品 |
JP2019507248A (ja) * | 2016-01-22 | 2019-03-14 | アーエムアーゲー ローリング ゲーエムベーハー | 時効硬化型Al−Mg−Si系アルミニウム合金 |
WO2021153412A1 (ja) * | 2020-01-30 | 2021-08-05 | 住友電気工業株式会社 | アルミニウム合金、アルミニウム合金線、アルミニウム合金部材、及びボルト |
CN114901845A (zh) * | 2020-01-30 | 2022-08-12 | 住友电气工业株式会社 | 铝合金、铝合金线、铝合金部件及螺栓 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Effective date: 20040622 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 |
|
A02 | Decision of refusal |
Effective date: 20041102 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 |