JPH0797653A

JPH0797653A - 快削性アルミニウム合金鋳造棒

Info

Publication number: JPH0797653A
Application number: JP24280293A
Authority: JP
Inventors: Yoshio Watanabe; 良夫渡辺; Teruo Uno; 照生宇野
Original assignee: Sumitomo Light Metal Industries Ltd
Current assignee: Sumitomo Light Metal Industries Ltd
Priority date: 1993-09-29
Filing date: 1993-09-29
Publication date: 1995-04-11

Abstract

(57)【要約】【目的】ＶＴＲシリンダーに必要とされる耐食性など
の性能を阻害せずに切削性に優れ生産性の向上をもたら
すＶＴＲシリンダー用アルミニウム合金を提供すること
を目的とする。【構成】Ｃｕ３．５〜５％、Ｍｇ０．５〜２％、Ｓｉ
０．５〜２％、Ｍｎ０．１〜１％、Ｆｅ０．２〜０．８
％、Ｔｉ０．０１５〜０．０４％を含み、且つＳｎ０．
１〜０．６％、Ｐｂ０．２〜０．８％、Ｂｉ０．２〜
０．８％の内の２種類以上を含み、残部がアルミニウム
と不純物とからなり、平均結晶粒径が０．４〜１ｍｍで
あることを特徴とする快削性アルミニウム合金鋳造棒、
およびＣｕ３．５〜５％、Ｍｇ０．５〜２％、Ｓｉ０．
５〜２％、Ｍｎ０．１〜１％、Ｆｅ０．２〜０．８％、
Ｔｉ０．００２〜０．０１５％、Ｂ５〜５０ｐｐｍを含
み、且つＳｎ０．１〜０．６％、Ｐｂ０．２〜０．８
％、Ｂｉ０．２〜０．８％の内の２種類以上を含み、残
部がアルミニウムと不純物とからなり、平均結晶粒径が
０．４〜１ｍｍであることを特徴とする快削性アルミニ
ウム合金鋳造棒。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ＶＴＲシリンダーに代
表される各種機械部品等に好適に使用される、切削性の
良好なアルミニウム合金鋳造棒に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、ＶＴＲシリンダーはＡｌ−Ｃｕ−
Ｎｉ−Ｍｇ−Ｓｉ系の２２１８合金やＡｌ−Ｓｉ系合金
をベースとした鋳造棒を素材としてこれを鍛造し、ＶＴ
Ｒシリンダーに必要な強度を得るための熱処理が施され
た後、切削加工により、最終形状にされている。しか
し、２２１８合金は鍛造性に比較的優れた性能を有する
ものの、切削加工においては、以下の点が問題となる場
合が多くなっている。切り屑が連続しやすく、切り屑処
理のための工程が必要となるといった、外周の旋盤によ
る切削加工を行う際に切削処理性の問題があり、さらに
その後の多数の穴あけを行う際に切削性が劣っているの
で、穴あけ時に製品コーナー部にバリが生成しやすく、
バリ除去のための工程が必要となる。

【０００３】Ａｌ−Ｓｉ系合金については、切り屑処理
性は優れているものの鍛造性に劣り、穴あけ等の機械加
工の際にアルミニウムマトリックス中に多数分散する硬
質のＳｉ粒子によって、切削工具が摩耗され、工具寿命
の低下をもたらすという問題があって機械加工性が劣っ
ている。特に、最近では、生産性を向上させるために切
削速度を増加させたり、切削加工の自動化を行う傾向に
あり、上記問題が顕著になりつつある。このため、Ａｌ
−Ｃｕ系合金に低融点元素のＰｂ，Ｓｎ，Ｂｉを添加し
た切削合金が提案されている。これらＰｂ，Ｓｎ，Ｂｉ
等の低融点元素はアルミニウムマトリックス中に低融点
の化合物として分散し、切削性を向上させる作用があ
る。

【０００４】しかし、これらの低融点元素の添加量が多
いと、材料の耐食性が低下し、湿度の高い大気中に放置
されるのみで、切削加工面に腐食生成物が形成され、Ｖ
ＴＲシリンダーに要求されるテープ走行性を阻害する。
また、低融点元素が多いと鍛造性が損なわれ、さらに、
Ｓｎの添加量がＰｂやＢｉに対して多い場合、熱処理の
際に亀裂が発生しやすくなるという問題もある。上記の
ように、低融点元素の添加は切削性を向上させる上では
極めて有効な手段であるが、添加量によってはＶＴＲシ
リンダーに必要とされる他の性能を阻害する。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、ＶＴＲシリ
ンダーに必要とされる性能を阻害せずに切削性に優れた
ＶＴＲシリンダー材を提供することを目的としている。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成するため鋭意検討した結果、合金成分を選択し、その
含有量範囲を定め、かつ結晶粒径範囲を定めることによ
り、上記目的が達成されるとの知見を得た。本願の第一
の発明は、Ｃｕ３．５〜５％、Ｍｇ０．５〜２％、Ｓｉ
０．５〜２％、Ｍｎ０．１〜１％、Ｆｅ０．２〜０．８
％、Ｔｉ０．０１５〜０．０４％を含み、且つＳｎ０．
１〜０．６％、Ｐｂ０．２〜０．８％、Ｂｉ０．２〜
０．８％の内の２種類以上を含み、残部がアルミニウム
と不純物とからなり、平均結晶粒径が０．４〜１ｍｍで
あることを特徴とする快削性アルミニウム合金鋳造棒で
あり、又、本願の第二の発明は、Ｃｕ３．５〜５％、Ｍ
ｇ０．５〜２％、Ｓｉ０．５〜２％、Ｍｎ０．１〜１
％、Ｆｅ０．２〜０．８％、Ｔｉ０．００２〜０．０１
５％、Ｂ５〜５０ｐｐｍを含み、且つＳｎ０．１〜０．
６％、Ｐｂ０．２〜０．８％、Ｂｉ０．２〜０．８％の
内の２種類以上を含み、残部がアルミニウムと不純物と
からなり、平均結晶粒径が０．４〜１ｍｍであることを
特徴とする快削性アルミニウム合金鋳造棒である。な
お、この明細書において「％」はいずれも「重量％」を
示すものである。上記合金成分元素の添加意義とその含
有量の限定理由及びその結晶粒径の限定理由は次のとお
りである。

【０００７】Ｃｕ，Ｍｇ，Ｓｉ：これらの成分はアルミ
ニウムマトリックス中に微細な析出物を形成してＶＴＲ
シリンダーに必要な強度を与えるが、下限未満では強度
が不足し、上限を越えると鍛造性を損なう。また、Ｃｕ
については、上限を越えると耐食性も損なう。Ｍｎ，Ｆ
ｅ：これらの成分はアルミニウム中に化合物を形成し、
切削性を向上させる作用があるが、下限未満では、その
作用が得られず、上限を越えると、鍛造性を損なう。Ｔｉ，Ｂ：これらの成分は鋳造の際に形成される結晶粒
を微細化する作用がある。ここで、Ｔｉ単独添加の場合
は、０．０１５％未満では本発明で限定した結晶粒径よ
りも大きくなり、逆に０．０４％を越えると本発明で限
定した結晶粒径よりも小さくなる。また、ＴｉとＢが同
時に添加される場合は、Ｔｉが０．００２％未満、Ｂが
５ｐｐｍ未満では結晶粒径が本発明の上限を越え、Ｔｉ
が０．０１５％、Ｂが５０ｐｐｍを越えると結晶粒径が
本発明の下限に満たなくなる。

【０００８】Ｓｎ，Ｐｂ，Ｂｉ：これらの成分は前記の
とおり、切削性を向上させるために添加されるが、下限
未満ではその効果が小さく、上限を越えると、前記のよ
うに、鍛造性や耐食性を損なう。結晶粒径：従来の研究では結晶粒径と切削性の関係はほ
とんど明らかにされていないが、本発明に至る研究の過
程で、結晶粒径を適切に制御することによって、著しく
切削性が向上することを見出した。すなわち、切削加工
の際の切込み量の１０倍程度の結晶粒径を有する場合に
最も良好な切削性が得られ、２倍〜５０倍程度であれば
従来材以上の切削性が得られることが明らかになった。
一般にＶＴＲシリンダーの切削加工で用いられる切込み
量は０．０２〜０．２ｍｍ程度あるから、結晶粒を０．
４〜１ｍｍに制御すれば、切削性に優れたＶＴＲシリン
ダー材が得られる。しかし、結晶粒径が下限未満では、
素材の延性が高いため、切り屑が連続しやすく、また製
品コーナー部にバリが生成しやすくなる。逆に結晶粒径
が上限を越えると、いわゆる肌荒れによって加工面の精
度が低下し、製品表面粗度が大きくなると共に、素材の
延性が低下して鍛造性が損なわれる。

【０００９】なお、一般に鋳造時の結晶粒は鍛造によっ
て砕かれ、その後に熱処理が施されると再結晶し、結晶
粒の制御は困難になるが、ＶＴＲシリンダーの鍛造加工
では、最も重要なテープ走行面を含めて、切削加工され
る部分の加工量が比較的少ないため、鋳造の際に形成さ
れた結晶粒がほぼそのまま残存する。したがって、上記
合金成分とその含有量によって鋳造時の結晶粒径を制御
すれば、上記のように、切削性の優れた材料が得られ
る。

【００１０】

【実施例】次に実施例によって本発明をさらに詳細に説
明する。表１に示した化学成分を有する合金を常法に従
って径６５ｍｍの棒に鋳造し、この鋳造棒を４８０℃で
６時間で均質化処理したのち、３９０℃で４時間軟化処
理を施した後、下記要領で鍛造性を調べた。また、軟化
処理後の素材にＴ６処理（５００℃で２時間加熱、水
冷、１７５℃で８時間加熱）を施し、下記要領で切削
性、耐食性を調査した。鍛造性、切削性、耐食性の試験
結果を各素材の結晶粒径、及び熱処理後の硬さと共に表
２に示す。

【００１１】＜鍛造試験＞径２０ｍｍ、高さ３０ｍｍの
円柱状試験片の両端面を拘束したまま、圧縮速度１０ｍ
ｍ／ｓで種々の量に圧縮し、試験片円周面に亀裂が発生
する限界の圧縮率で鍛造性を評価した。実用に供されて
いる２２１８合金よりも限界圧縮率が高ければ鍛造性は
問題ないと考えられる。

【００１２】＜切削試験＞径５０ｍｍ、長さ１００ｍｍ
の試験片の円周面を下記条件で５０回切削し、切り屑の
形状と切削工具の逃げ面摩耗量で切削性を評価した。切削試験条件試験片回転数３０００ｒｐｍ切込み０．２ｍｍ０．０５ｍｍ０．０２ｍｍ切削工具超硬＜耐食性＞径５０ｍｍに成形した試験片の端面をダイア
モンドバイトで切削加工し、温度４０℃、湿度９５％の
恒温恒湿槽に１週間放置し、切削加工面の腐食状態で耐
食性を評価した。実用に供されている２２１８合金より
も耐食性が良好であれば実用上問題ないと考えられる。
表１中、Ｎo.１〜８は本発明の実施例であり、Ｎo.９〜
２３は比較例である。また比較例の中のＮo.２３はＶＴ
Ｒシリンダー用アルミニウム合金として実用に供されて
いる２２１８合金鋳造棒である。実施例Ｎo.１〜８は化
学成分、結晶粒径共に本発明の限定を満たすため、切削
性、鍛造性、耐食性共に良好である。

【００１３】これに対して、比較例Ｎo.９はＣｕ，Ｍ
ｇ，Ｓｉ量が少ないために、硬さが低く、切り屑が連続
しやすい。Ｎo.１０は逆にＣｕ，Ｍｇ，Ｓｉ量が多いた
めに、鍛造性が劣り、耐食性も低い。Ｎo.１１はＦｅ，
Ｍｎ量が少ないため、切り屑が連続しやすく、Ｎo.１２
はＦｅ，Ｍｎ量が多いために、鍛造性が劣ると共に、工
具摩耗量が多い。Ｎo.１３は低融点元素のＰｂ，Ｓｎ，
Ｂｉの添加量が少ないために、切り屑が連続しやすく、
Ｎo.１４，１５，１６，１７は逆に添加量が多いため
に、耐食性と鍛造性が劣る。Ｎo.１８，１９，２０はＴ
ｉ，Ｂの添加量が少ないために、結晶粒が粗大となりす
ぎ、切削加工面の粗度が大きくなって、実用に供せる状
態ではなくなった。Ｎo.２１，２２はＴｉ，Ｂの添加量
が多いために、結晶粒が微細化されすぎ、切削性が著し
く劣る。

【００１４】これら実施例および比較例によって明らか
なように、本願発明のアルミニウム合金棒は、本願発明
の合金成分、その含有量範囲およびその結晶粒径の範囲
から、その一以上が逸脱するものと比較して、良好な耐
摩耗性や硬さを維持しつつ、切削性、耐食性に顕著な効
果を奏するものである。

【００１５】

【表１】

【００１６】

【表２】

【００１７】＊１ ○：２２１８合金と同等 △：２２１８合金よりやや劣る ×：２２１８合金より明らかに劣る＊２Ｅは最も連続した切り屑を示し、Ａは最も微細な
切り屑を示す＊３切削加工面の凹凸が激しく、実用不可能

【００１８】

【発明の効果】以上のように、本発明のアルミニウム合
金鋳造棒は、ＶＴＲシリンダーの諸性能を損なうことな
く、切削性を大幅に向上できるとともに、耐摩耗性及び
耐食性に優れているものであって、ＶＴＲシリンダ用ア
ルミニウム合金として好適なものであり、その生産性の
向上をもたらすものである。

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】Ｃｕ３．５〜５％、Ｍｇ０．５〜２％、
Ｓｉ０．５〜２％、Ｍｎ０．１〜１％、Ｆｅ０．２〜
０．８％、Ｔｉ０．０１５〜０．０４％を含み、且つＳ
ｎ０．１〜０．６％、Ｐｂ０．２〜０．８％、Ｂｉ０．
２〜０．８％の内の２種類以上を含み、残部がアルミニ
ウムと不純物とからなり、平均結晶粒径が０．４〜１ｍ
ｍであることを特徴とする快削性アルミニウム合金鋳造
棒。
【請求項２】Ｃｕ３．５〜５％、Ｍｇ０．５〜２％、
Ｓｉ０．５〜２％、Ｍｎ０．１〜１％、Ｆｅ０．２〜
０．８％、Ｔｉ０．００２〜０．０１５％、Ｂ５〜５０
ｐｐｍを含み、且つＳｎ０．１〜０．６％、Ｐｂ０．２
〜０．８％、Ｂｉ０．２〜０．８％の内の２種類以上を
含み、残部がアルミニウムと不純物とからなり、平均結
晶粒径が０．４〜１ｍｍであることを特徴とする快削性
アルミニウム合金鋳造棒。