JPH08193653A - 車両用自動変速機の変速制御装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 クラッチツウクラッチ変速が禁止された状態
で前記所定のエンジンブレーキレンジが選択されたとき
でも、車両走行性の違和感のない自動変速機の変速制御
装置を提供する。 【構成】 クラッチツウクラッチ変速禁止手段１６０に
よりクラッチツウクラッチ変速を発生させる第２速ギヤ
段の達成が禁止されている状況下において、第２速ギヤ
段以下のギヤ段で走行する２レンジが操作位置センサ７
４により検出されたときは、解除手段１６２により、上
記クラッチツウクラッチ変速禁止手段１６０による第２
速ギヤ段の達成の禁止が解除される。したがって、本来
は第２速ギヤ段以下のギヤ段で走行する２レンジが選択
されているときは、たとえクラッチツウクラッチ変速禁
止条件が成立していたとしても第２速ギヤ段が達成され
ることから、運転者に違和感を与えることが好適に解消
される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、車両用自動変速機の変
速制御装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】変速比が順次異なる複数のギヤ段を有
し、所定のギヤ段からそれに隣接する他のギヤ段へクラ
ッチツウクラッチ変速により切り換えられる形式の車両
用自動変速機において、複数の前進走行レンジに操作さ
れるシフト操作装置と、所定のクラッチツウクラッチ変
速禁止条件が成立したときには前記所定のギヤ段の達成
を禁止するクラッチツウクラッチ変速禁止手段とを備え
た変速制御装置が知られている。このような変速制御装
置によれば、たとえば、第１速ギヤ段から第５速ギヤ段
を有する車両用自動変速機において、第３速ギヤ段と第
４速ギヤ段との間だけがクラッチツウクラッチ変速によ
り切り換えらえる一方、油圧制御回路の作動油温度を検
出する油温センサのフェイルが検出された場合には、第
３速ギヤ段または第４速ギヤ段の達成が回避されること
により上記第３速ギヤ段と第４速ギヤ段との間のクラッ
チツウクラッチ変速が禁止される。このような変速制御
装置は、本出願人が先に出願した特願平６−７６５３０
号の明細書に記載されている。

【０００３】上記のクラッチツウクラッチ変速では、２
つの摩擦係合装置の一方を解放すると同時に他方を係合
させることによりギヤ段が切り換えられるものであり、
エンジンの吹き上がりやタイアップが発生しないように
解放側の摩擦係合装置の係合トルクが減少されつつ係合
側の摩擦係合装置の係合トルクが増加される。たとえ
ば、作動油温度が低い場合やその作動油温度を検出する
油温センサがフェイルした場合のようにクラッチツウク
ラッチ変速禁止条件が成立したときには、上記のように
摩擦係合装置の係合状態を微妙に制御することが困難で
あるため、クラッチツウクラッチ変速が禁止されること
により、変速ショックやエンジンの吹き上がりの可能性
が防止されているのである。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところで、従来の変速
制御装置では、シフト操作装置がその複数の前進走行レ
ンジのうちの所定のエンジンブレーキレンジへ操作され
ると、所定のギヤ段以下の範囲で変速が実行され且つエ
ンジンブレーキ走行が行われるようになっている。しか
しながら、クラッチツウクラッチ変速禁止手段によって
その所定のギヤ段の達成が禁止されると、上記所定のエ
ンジンブレーキレンジでは、その所定のギヤ段より１段
下のギヤ段以下で走行させられたり、或いはその所定の
ギヤ段を飛ばして、その所定のギヤ段より１段上のギヤ
段とその所定のギヤ段より１段下のギヤ段との間で変速
が行われる。このため、上記所定のエンジンブレーキレ
ンジにおいて、上記所定のギヤ段より１段下のギヤ段以
下で走行させられると、駆動力が大きくなったり、或い
は、上記所定のギヤ段より１段上のギヤ段での走行とな
ると、駆動力やエンジンブレーキ力が不足し、運転者に
違和感を与える可能性があった。

【０００５】本発明は以上の事情を背景として為された
ものであり、その目的とするところは、クラッチツウク
ラッチ変速が禁止された状態で前記所定のエンジンブレ
ーキレンジが選択されたときでも、車両走行性の違和感
のない自動変速機の変速制御装置を提供することにあ
る。

【０００６】

【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
めの本発明の要旨とするところは、変速比が異なる複数
のギヤ段を有し、所定のギヤ段からそれに隣接する他の
ギヤ段へクラッチツウクラッチ変速により切り換えられ
る形式の車両用自動変速機において、複数の前進走行レ
ンジに操作されるシフト操作装置と、所定のクラッチツ
ウクラッチ変速禁止条件が成立したときには前記所定の
ギヤ段の達成を禁止するクラッチツウクラッチ変速禁止
手段とを備えた変速制御装置であって、(a) 前記シフト
操作装置により選択操作される走行レンジを検出する走
行レンジ検出手段と、(b) 前記所定のギヤ段以下のギヤ
段で走行するエンジンブレーキレンジがその走行レンジ
検出手段により検出されたときは、前記クラッチツウク
ラッチ変速禁止手段による前記所定のギヤ段の達成の禁
止を解除する解除手段とを、含むことにある。

【０００７】

【作用】このようにすれば、前記所定のギヤ段以下のギ
ヤ段で走行するエンジンブレーキレンジが前記走行レン
ジ検出手段により検出されたときは、解除手段により、
前記クラッチツウクラッチ変速禁止手段による上記所定
のギヤ段の達成の禁止が解除される。

【０００８】

【発明の効果】したがって、所定のギヤ段以下のギヤ段
で走行するエンジンブレーキレンジが選択操作されたと
きは、その所定のギヤ段を飛ばすことなくその所定のギ
ヤ段以下のギヤ段で走行が可能とされるので、上記所定
のエンジンブレーキレンジにおいて、その所定のギヤ段
より１段下のギヤ段以下で走行させられることにより駆
動力が大きくなったり、その所定のギヤ段より１段上の
ギヤ段で走行させられることにより駆動力やエンジンブ
レーキ力が低下したりすることが解消され、運転者に違
和感を与えることが好適に解消される。

【０００９】ここで、上記発明をさらに発展させた態様
を以下に説明する。好適には、上記のように構成された
発明に加えて、前記所定のギヤ段以下で走行するエンジ
ンブレーキレンジとその所定のギヤ段より１段上のギヤ
段以下で走行するエンジンブレーキレンジとの間で切換
操作が行われたことを判定するレンジ切換判定手段と、
上記２つのエンジンブレーキレンジの間で切換操作が行
われたときに、自動変速機の実際のギヤ段が上記所定の
ギヤ段或いはそれよりも１段上のギヤ段であるか否かを
判断する実ギヤ段判定手段と、上記レンジ切換判定手段
により判定されたレンジ切り換え操作前の変速制御ロジ
ックをその切り換えに関連する変速に対して一時的に適
用する変速パターン継続手段とが、さらに設けられる。
このようにすれば、上記変速パターン継続手段によって
それまでに用いられていた変速制御ロジックがレンジ切
り換えに際しても適用されることにより、レンジ切り換
えに関連するクラッチツウクラッチ変速の発生が解消さ
れる利点がある。

【００１０】また、好適には、クラッチツウクラッチ変
速禁止条件成立状態から不成立状態へ切り換わった直後
においてそれまで達成が禁止された前記所定のギヤ段を
達成させる変速が判断されたか否かを判定する変速判断
手段と、車両の加速操作が行われたか否かを判定する加
速操作判定手段と、上記変速判断手段によりその所定の
ギヤ段を達成させる変速が判断された場合には、その加
速操作判定手段により車両の加速操作が行われたと判定
されたときにその変速を許可する変速許可手段とが、さ
らに設けられる。このようにすれば、クラッチツウクラ
ッチ変速禁止条件成立状態から不成立状態へ切り換わっ
たとき、それまでの成立状態において達成が禁止されて
いた所定のギヤ段を達成させる変速が直ちに行われて急
にダウンシフトすることが解消される利点がある。

【００１１】

【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳
細に説明する。

【００１２】図１は、本発明の一実施例の変速制御装置
により変速制御される車両用自動変速機の一例を示す骨
子図である。図において、エンジン１０の出力は、トル
クコンバータ１２を介して自動変速機１４に入力され、
図示しない差動歯車装置および車軸を介して駆動輪へ伝
達されるようになっている。

【００１３】上記トルクコンバータ１２は、エンジン１
０のクランク軸１６に連結されたポンプインペラ１８
と、自動変速機１４の入力軸２０に連結されたタービン
ランナー２２と、それらポンプインペラ１８およびター
ビンランナー２２の間を直結するロックアップクラッチ
２４と、一方向クラッチ２６によって一方向の回転が阻
止されているステータ２８とを備えている。

【００１４】上記自動変速機１４は、ハイおよびローの
２段の切り換えを行う第１変速機３０と、後進ギヤ段お
よび前進４段の切り換えが可能な第２変速機３２を備え
ている。第１変速機３０は、サンギヤＳ０、リングギヤ
Ｒ０、およびキャリヤＫ０に回転可能に支持されてそれ
らサンギヤＳ０およびリングギヤＲ０に噛み合わされて
いる遊星ギヤＰ０から成るＨＬ遊星歯車装置３４と、サ
ンギヤＳ０とキャリヤＫ０との間に設けられたクラッチ
Ｃ０および一方向クラッチＦ０と、サンギヤＳ０および
ハウジング４１間に設けられたブレーキＢ０とを備えて
いる。

【００１５】第２変速機３２は、サンギヤＳ１、リング
ギヤＲ１、およびキャリヤＫ１に回転可能に支持されて
それらサンギヤＳ１およびリングギヤＲ１に噛み合わさ
れている遊星ギヤＰ１から成る第１遊星歯車装置３６
と、サンギヤＳ２、リングギヤＲ２、およびキャリヤＫ
２に回転可能に支持されてそれらサンギヤＳ２およびリ
ングギヤＲ２に噛み合わされている遊星ギヤＰ２から成
る第２遊星歯車装置３８と、サンギヤＳ３、リングギヤ
Ｒ３、およびキャリヤＫ３に回転可能に支持されてそれ
らサンギヤＳ３およびリングギヤＲ３に噛み合わされて
いる遊星ギヤＰ３から成る第３遊星歯車装置４０とを備
えている。

【００１６】上記サンギヤＳ１とサンギヤＳ２は互いに
一体的に連結され、リングギヤＲ１とキャリヤＫ２とキ
ャリヤＫ３とが一体的に連結され、そのキャリヤＫ３は
出力軸４２に連結されている。また、リングギヤＲ２が
サンギヤＳ３に一体的に連結されている。そして、リン
グギヤＲ２およびサンギヤＳ３と中間軸４４との間にク
ラッチＣ１が設けられ、サンギヤＳ１およびサンギヤＳ
２と中間軸４４との間にクラッチＣ２が設けられてい
る。また、サンギヤＳ１およびサンギヤＳ２の回転を止
めるためのバンド形式のブレーキＢ１がハウジング４１
に設けられている。また、サンギヤＳ１およびサンギヤ
Ｓ２とハウジング４１との間には、一方向クラッチＦ１
およびブレーキＢ２が直列に設けられている。この一方
向クラッチＦ１は、サンギヤＳ１およびサンギヤＳ２が
入力軸２０と反対の方向へ逆回転しようとする際に係合
させられるように構成されている。

【００１７】キャリヤＫ１とハウジング４１との間には
ブレーキＢ３が設けられており、リングギヤＲ３とハウ
ジング４１との間には、ブレーキＢ４と一方向クラッチ
Ｆ２とが並列に設けられている。この一方向クラッチＦ
２は、リングギヤＲ３が逆回転しようとする際に係合さ
せられるように構成されている。

【００１８】以上のように構成された自動変速機１４で
は、たとえば図２に示す作動表に従って後進１段および
変速比が順次異なる前進５段のギヤ段のいずれかに切り
換えられる。図２において○印は係合状態を示し、空欄
は解放状態を示し、●はエンジンブレーキのときの係合
状態を示している。この図２からも明らかなように、ブ
レーキＢ３は、第１速ギヤ段から第２速ギヤ段へ切り換
える変速に際して係合させられるとともに、第２速ギヤ
段から第３速ギヤ段へ切り換える変速に際して解放され
るものであり、ブレーキＢ２は、第２速ギヤ段から第３
速ギヤ段へ切り換える変速に際して係合させられるもの
である。第２速ギヤ段から第３速ギヤ段への変速に際し
ては、ブレーキＢ３の解放期間とブレーキＢ２の係合期
間とがオーバラップして行われる、所謂クラッチツウク
ラッチ変速が行われるが、それ以外の変速では１つのク
ラッチまたはブレーキの係合或いは解放作動だけで行わ
れるようになっている。

【００１９】図３に示すように、車両のエンジン１０の
吸気配管には、アクセルペダル５０によって操作される
第１スロットル弁５２とスロットルアクチュエータ５４
によって操作される第２スロットル弁５６とが設けられ
ている。また、エンジン１０の回転速度Ｎ_E を検出する
エンジン回転速度センサ５８、エンジン１０の吸入空気
量Ｑを検出する吸入空気量センサ６０、吸入空気の温度
Ｔ_A を検出する吸入空気温度センサ６２、上記第１スロ
ットル弁５２の開度θ_THを検出するスロットルセンサ６
４、出力軸４２の回転速度Ｎ_OUT から車速Ｖを検出する
車速センサ６６、エンジン１０の冷却水温度Ｔ_W を検出
する冷却水温センサ６８、ブレーキの作動を検出するブ
レーキスイッチ７０、シフトレバー７２の操作位置Ｐ_SH
を検出する操作位置センサ７４などが設けられており、
それらのセンサから、エンジン回転速度Ｎ_E 、吸入空気
量Ｑ、吸入空気温度Ｔ_A 、第１スロットル弁の開度
θ_TH、車速Ｖ、エンジン冷却水温Ｔ_W 、ブレーキの作動
状態ＢＫ、シフトレバー７２の操作位置Ｐ_SHを表す信号
がエンジン用電子制御装置７６および変速用電子制御装
置７８に供給されるようになっている。また、油圧制御
回路８４の作動油温度Ｔ _OIL を検出する油温センサ７５
から作動油温度Ｔ_OIL を表す信号が変速用電子制御装置
７８に供給される。

【００２０】また、図４に示すように、上記シフトレバ
ー７２は、車両の前後方向に位置するＰレンジ、Ｒレン
ジ、Ｎレンジ、Ｄおよび４レンジ、３レンジ、２および
Ｌレンジへ操作されるとともに、Ｄレンジと４レンジの
間、および２レンジとＬレンジとの間が車両の左右方向
に操作されるようにその支持機構が構成されている。

【００２１】エンジン用電子制御装置７６は、ＣＰＵ、
ＲＡＭ、ＲＯＭ、入出力インターフェースを備えた所謂
マイクロコンピュータであって、ＣＰＵはＲＡＭの一時
記憶機能を利用しつつ予めＲＯＭに記憶されたプログラ
ムに従って入力信号を処理し、種々のエンジン制御を実
行する。たとえば、燃料噴射量制御のために燃料噴射弁
８０を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ８２を
制御し、アイドルスピート制御のために図示しないバイ
パス弁を制御し、トラクション制御のためにスロットル
アクチュエータ５４により第２スロットル弁５６を制御
する。このエンジン用電子制御装置７６は、変速用電子
制御装置７８と相互に通信可能に接続されており、一方
に必要な信号が他方から適宜送信されるようになってい
る。

【００２２】変速用電子制御装置７８も、上記と同様の
マイクロコンピュータであって、ＣＰＵはＲＡＭの一時
記憶機能を利用しつつ予めＲＯＭに記憶されたプログラ
ムに従って入力信号を処理し、油圧制御回路８４の各電
磁弁或いはリニヤソレノイド弁を駆動する。たとえば、
変速用電子制御装置７８は、第１スロットル弁５２の開
度θ_THに対応した大きさのスロットル圧Ｐ_THを発生させ
るためにリニヤソレノイド弁SLT を、アキュム背圧を制
御するためにリニヤソレノイド弁SLN を、ロックアップ
クラッチ２４の係合、解放、スリップ量およびクラッチ
ツウクラッチのシフトを制御するためにリニヤソレノイ
ド弁SLU をそれぞれ駆動する。また、変速用電子制御装
置７８は、予め記憶された変速線図から実際のスロット
ル弁開度θ_THおよび車速Ｖに基づいて自動変速機１４の
ギヤ段やロックアップクラッチ２４の係合状態を決定
し、この決定されたギヤ段および係合状態が得られるよ
うに電磁弁Ｓ１、Ｓ２、Ｓ３を駆動し、エンジンブレー
キを発生させる際には電磁弁Ｓ４を駆動する。

【００２３】図５および図６は、上記油圧制御回路８４
の要部を示している。図の１−２シフト弁８８および２
−３シフト弁９０は、電磁弁Ｓ１、Ｓ２の出力圧に基づ
いて、第１速ギヤ段から第２速ギヤ段への変速時および
第２速ギヤ段から第３速ギヤ段への変速時においてそれ
ぞれ切り換えられる切換弁であり、その切換位置を示す
数値はギヤ段を示している。前進レンジ圧Ｐ_D は、シフ
トレバー７２が前進レンジ（Ｄ、４、３、２、Ｌ）へ操
作されているときに図示しないマニアル弁から発生され
る圧であり、図示しないレギュレータ弁によりスロット
ル弁開度に応じて高く調圧されるライン圧Ｐ_L を元圧と
している。

【００２４】第１速ギヤ段から第２速ギヤ段へ切り換え
る変速出力が出された時には、上記前進レンジ圧Ｐ
_D は、１−２シフト弁８８、２−３シフト弁９０、油路
Ｌ０１、Ｂ３コントロール弁９２、油路Ｌ０２を経てブ
レーキＢ３およびＢ３アキュムレータ９４へ供給され
る。また、第２速ギヤ段から第３速ギヤ段へ切り換える
変速出力が出された時には、前進レンジ圧Ｐ_D は、２−
３シフト弁９０、油路Ｌ０３を経て、ブレーキＢ２およ
びＢ２アキュムレータ１００へ供給されると同時に、ブ
レーキＢ３およびＢ３アキュムレータ９４内の作動油
は、油路Ｌ０２、Ｂ３コントロール弁９２、油路Ｌ０
１、２−３シフト弁９０、戻り油路Ｌ０４、２−３タイ
ミング弁９８を経て調圧ドレンされるとともに、戻り油
路Ｌ０４から分岐する分岐油路Ｌ０５およびＢ２オリフ
ィスコントロール弁９６を経て急速ドレンされるように
なっている。

【００２５】上記Ｂ３アキュムレータ９４およびＢ２ア
キュムレータ１００の背圧室９４_Bおよび１００_B に
は、リニヤソレノイド弁SLT の出力圧Ｐ_SLT とリニヤソ
レノイド弁SLN の出力圧Ｐ_SLN に基づいてアキュム背圧
Ｐ_ACC を発生させる図示しないアキュム背圧制御弁から
のアキュム背圧Ｐ_ACC が、各変速に際して供給される。

【００２６】前記Ｂ３コントロール弁９２は、油路Ｌ０
１と油路Ｌ０２との間を開閉するスプール弁子１０４
と、スプリング１０６を挟んでスプール弁子１０４と同
心に設けられ且つそのスプール弁子１０４よりも大径の
プランジャ１０８と、スプリング１０６を収容し、前記
２−３シフト弁９０が第３速側へ切り換えられたときに
それから出力される前進レンジ圧Ｐ_D を油路Ｌ０７を介
して受け入れる油室１１０と、プランジャ１０８の軸端
に設けられてリニヤソレノイド弁SLU の出力圧Ｐ _SLU を
受け入れる油室１１２とを備えている。このため、Ｂ３
コントロール弁９２は、第２速ギヤ段の成立過程では、
リニヤソレノイド弁SLU の出力圧Ｐ_SLU に従ってスプー
ル弁子１０４を中心線の左側に示す開位置に位置させて
ファーストフィルをその初期に行うとともに、その後は
油路Ｌ０１からの作動油を油路Ｌ０２に供給したり或い
は油路Ｌ０２内の作動油を排出油路Ｌ０６へ流出させる
ことによりブレーキＢ３内の係合圧Ｐ_B3の立ち上がりを
数式１から上記出力圧Ｐ_SLUに基づいて調圧する。ま
た、Ｂ３コントロール弁９２は、第３速ギヤ段以上のギ
ヤ段では、２−３シフト弁９０から油室１１０に供給さ
れる前進レンジ圧Ｐ_D に従ってスプール弁子１０４を中
心線の左側に示す開位置にロックさせる。これは、Ｂ３
コントロール弁９２の油室１１２と２−３タイミング弁
９８の油室１３８とが接続されていることから、第２→
３変速状態では、Ｂ３コントロール弁９２の油室１１２
の容積変化を阻止して、２−３タイミング弁９８による
調圧作動に影響を与えないようにするためである。な
お、数式１において、Ｓ₁ およびＳ₂はプランジャ１０
８およびスプール弁子１０４の断面積である。

【００２７】

【数１】Ｐ_B3＝Ｐ_SLU ・Ｓ₁ ／Ｓ₂

【００２８】Ｂ２オリフィスコントロール弁９６は、ブ
レーキＢ２およびＢ２アキュムレータ１００と油路Ｌ０
３との間を開閉すると同時に排出油路Ｌ０６とドレンポ
ート１１３との間を開閉するスプール弁子１１４と、ス
プール弁子１１４をファーストドレン位置へ向かって付
勢するスプリング１１６と、スプール弁子１１４の軸端
に設けられて第３電磁弁Ｓ３の出力圧Ｐ_S3を３−４シフ
ト弁１１８を通して受け入れる油室１２０とを備えてい
る。これにより、３→２変速時などには第３電磁弁Ｓ３
がオン状態とされてその出力圧Ｐ_S3が油室１２０に供給
されなくなるので、スプール弁子１１４によりブレーキ
Ｂ２およびＢ２アキュムレータ１００と油路Ｌ０３との
間を開かれて、それらブレーキＢ２およびＢ２アキュム
レータ１００からの作動油の排出を速やかに行うファー
ストドレン作動が行われる。また、１→２変速において
は、上記第３電磁弁Ｓ３がオフ状態とされてその出力圧
Ｐ _S3が油室１２０に供給されることにより、Ｂ３コント
ロール弁９２の調圧作動によりそれから排出される作動
油を排出させる排出油路Ｌ０６とドレンポート１１３と
の間が開かれてそのＢ３コントロール弁９２の調圧作動
が許容されるが、１→２変速が完了すると第３電磁弁Ｓ
３がオン状態とされて排出油路Ｌ０６とドレンポート１
１３との間が閉じられることによりＢ３コントロール弁
９２の調圧作動が停止させられる。

【００２９】２−３タイミング弁９８は、第２速ギヤ段
から第３速ギヤ段への変速に関与し、ブレーキＢ３から
の解放圧をリニヤソレノイド弁SLU から出力圧Ｐ_SLU に
従って調圧する調圧弁として機能する。すなわち、２−
３タイミング弁９８は、２→３変速が出力されたときに
２−３シフト弁９０から出力された前進レンジ圧Ｐ_Dが
３−４シフト弁１１８およびソレノイドリレー弁１２２
を通して供給される供給ポート１２４と、ドレンポート
１２６と、油路Ｌ０４をその供給ポート１２４またはド
レンポート１２６に連通させることによりブレーキＢ３
のドレン期間の圧力Ｐ_B3を調圧するスプール弁子１２８
と、スプリング１３０を介してスプール弁子１２８と同
心に設けられ且つそのスプール弁子１２８と同径の第１
プランジャ１３２と、スプール弁子１２８と同心に且つ
その一端に当接可能に設けられ且つそのスプール弁子１
２８よりも大径の第２プランジャ１３４と、スプリング
１３０を収容し、前記２−３シフト弁９０が第２速側へ
切り替えられたときにそれから出力される前進レンジ圧
Ｐ_D を油路Ｌ０８を介して受け入れる油室１３６と、第
１プランジャ１３２の軸端に設けられ、リニヤソレノイ
ド弁SLU からの出力圧Ｐ_SLU を受け入れる油室１３８
と、第２プランジャ１３４の軸端に設けられ、ブレーキ
Ｂ２内の油圧Ｐ_B2を受け入れる油室１４０と、フィード
バック圧を受け入れるフィードバック油室１４２とを備
えている。

【００３０】したがって、スプール弁子１２８および第
１プランジャ１３２の断面積をＳ₃、スプール弁子１２
８の第２プランジャ１３４側のランドの断面積をＳ₄ 、
第２プランジャ１３４の断面積をＳ₅ とすると、２→３
変速出力が出された状態における解放過程のブレーキＢ
３の圧力Ｐ_B3は、２−３タイミング弁９８による調圧作
動により、数式２から、ブレーキＢ２の係合圧Ｐ_B2の増
加に応じて減少し、リニヤソレノイド弁SLU の出力圧Ｐ
_SLU に応じて増加するように調圧される。

【００３１】

【数２】Ｐ_B3＝Ｐ_SLU ・Ｓ₃ ／（Ｓ₃ −Ｓ₄ ）−Ｐ_B2・
Ｓ₅ ／（Ｓ₃ −Ｓ₄ ）

【００３２】また、上記２−３タイミング弁９８は、第
２速側へ切り換えられた２−３シフト弁９０から出力さ
れる前進レンジ圧Ｐ_D が油室１３６へ供給されると、上
記スプール弁子１２８がロックされるようになってい
る。これも、２−３タイミング弁９８の油室１３８とＢ
３コントロール弁９２の油室１１２とが接続されている
ことから、第１速および第２速の状態では２−３タイミ
ング弁９８の油室１３８の容積変化を阻止して、Ｂ３コ
ントロール弁９２の調圧作動に影響を与えないようにす
るためである。

【００３３】Ｃ０エキゾースト弁１５０は、第３電磁弁
Ｓ３の出力圧Ｐ_S3および油路Ｌ０１内の油圧に従って閉
位置に位置させられるが、第４電磁弁Ｓ４の出力圧Ｐ_S4
に従って開位置に位置させられるスプール弁子１５２を
備え、図示しない４−５シフト弁が第４速以下の切り換
え状態であるときにそれを経由して供給されるライン圧
Ｐ_L を、第２速および第５速時以外のときにクラッチＣ
０およびＣ０アキュムレータ１５４に供給する。

【００３４】以上のように構成された変速制御装置にお
いて、２→３変速（クラッチツウクラッチ変速）判断が
行われて第３速ギア段への変速出力が出された場合に
は、２−３シフト弁９０がその第２速側から第３速側へ
切り替えられる。これにより、前進レンジ圧Ｐ_D が２−
３シフト弁９０、油路Ｌ０３を経てブレーキＢ２へ供給
される。同時に、２−３シフト弁９０からの前進レンジ
圧Ｐ_D がＢ３コントロール弁９２の油室１１０に供給さ
れてそのスプール弁子１０４が開位置にロックされる一
方、これと同時に、２−３シフト弁９０を介して油路Ｌ
０１とＬ０４との接続が行われるとともに、２−３タイ
ミング弁９８の油室１３６内の作動油が油路Ｌ０８およ
び２−３シフト弁９０を通して排出され、ブレーキＢ３
の解放圧が２−３タイミング弁９８によりＰ_SLU に応じ
て調圧されつつ解放される。図７は、そのクラッチツウ
クラッチ変速におけるブレーキＢ３およびＢ２の油圧の
変化を例示している。

【００３５】しかし、低温により作動油の粘性抵抗が高
くなったり作動油温度Ｔ_OIL を検出する油温センサ７５
のフェイルが発生したりした場合には、上記のような２
−３タイミング弁９８により微妙な解放圧制御の精度が
低下し、却って変速ショックが発生する不都合がある。
本実施例では、そのような変速ショックの防止を目的と
して、低温時などにおいて第２速ギヤ段の達成を回避す
ることによりクラッチツウクラッチ変速に起因する不都
合を解消し、同時にその第２速ギヤ段を最高ギヤ段とし
てそれ以下のギヤ段にて変速を実行するエンジンブレー
キレンジすなわち２レンジにおいては、第２速ギヤ段の
達成を許可して、２レンジにおける違和感を解消する。

【００３６】図８は、変速用電子制御装置７８による制
御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図に
おいて、変速制御手段１５８は、予め記憶された変速線
図から実際のスロットル弁開度θ_THおよび車速Ｖに基づ
いて自動変速機１４のギヤ段やロックアップクラッチ２
４の係合状態を決定し、この決定されたギヤ段および係
合状態が得られるように電磁弁Ｓ１、Ｓ２、Ｓ３を駆動
し、エンジンブレーキを発生させる際には電磁弁Ｓ４を
駆動する一方、シフトレバー７２の操作位置に基づいて
複数のギヤ段のうちの変速範囲を決定する。また、変速
制御手段１５８は、シフトレバー７２がその前進（Ｄ、
４、３、２、Ｌ）レンジのうち、Ｄレンジへ操作された
ときには走行状態に応じて第１速ギヤ段乃至第５速ギヤ
段の範囲で変速を実行させ、４レンジへ操作されたとき
には走行状態に応じて第１速ギヤ段乃至第４速ギヤ段の
範囲で変速を実行させる。さらに、変速制御手段１５８
は、シフトレバー７２がそのエンジンブレーキ（３、
２、Ｌ）レンジのうち、３レンジへ操作されたときには
走行状態に応じて第１速ギヤ段乃至第３速ギヤ段の範囲
で変速を実行させるとともに第３速ギヤ段をエンジンブ
レーキモードとし、２レンジへ操作されたときには走行
状態に応じて第１速ギヤ段乃至第２速ギヤ段の範囲で変
速を実行させるとともに第２速ギヤ段だけをエンジンブ
レーキモードとし、１レンジへ操作されたときには第１
速ギヤ段だけを達成してそれをエンジンブレーキモード
とする。

【００３７】クラッチツウクラッチ変速禁止手段１６０
は、所定のクラッチツウクラッチ変速禁止条件が成立し
たときたとえば油圧制御回路８４の作動油温度Ｔ_OIL が
低温となったとき、変速比が隣接するギヤ段へクラッチ
ツウクラッチ変速により切り換えられる所定のギヤ段す
なわち第２速ギヤ段の達成を禁止する。解除手段１６２
は、その第２速ギヤ段を最高ギヤ段としてそれ以下のギ
ヤ段で変速させるエンジンブレーキ（２）レンジが操作
位置センサ７４により検出されたときは、クラッチツウ
クラッチ変速禁止手段１６０による第２速ギヤ段の達成
の禁止を解除する。所定のギヤ段からそれに隣接する他
のギヤ段へクラッチツウクラッチ変速により切り換えら
れる。

【００３８】レンジ切換判定手段１６４は、上記第２速
ギヤ段以下で走行する２レンジとその第２速ギヤ段より
１段上の第３速ギヤ段以下で走行する３レンジとの間で
切換操作が行われたことを判定する。実ギヤ段判定手段
１６６は、上記２レンジと３レンジとの間で切換操作が
行われたときに、自動変速機１４の実際のギヤ段が上記
第２速ギヤ段或いはそれよりも１段上の第３速ギヤ段で
あるか否かを判断する。変速パターン継続手段１６８
は、上記レンジ切換判定手段１６４により判定されたレ
ンジ切り換え操作前の変速制御ロジックをその切り換え
に関連する変速に対して一時的に適用する。

【００３９】変速判断手段１７０は、クラッチツウクラ
ッチ変速禁止条件成立状態から不成立状態へ切り換わっ
た直後においてそれまで達成が禁止された第２速ギヤ段
を達成させる変速が判断されたか否かを判定する。ま
た、加速操作判定手段１７２は、車両の加速操作が行わ
れたか否かを判定する。変速許可手段１７４は、上記変
速判断手段１７０により上記第２速ギヤ段を達成させる
変速が判断された状態において、上記加速操作判定手段
１７２により車両の加速操作が行われたと判定されたと
きには上記の第２速ギヤ段を達成させる変速を許可す
る。

【００４０】図９は、変速用電子制御装置７８による制
御作動の要部を説明するフローチャートである。図にお
いて、ステップ（以下ステップを省略する）ＳＡ１にお
いて種々の入力信号が読み込まれる入力信号処理が行わ
れた後、ＳＡ２において、エンジン冷却水温Ｔ_W が予め
設定された判断基準値Ｔ_WA以上か否かが判断される。こ
の判断基準値Ｔ_WAは、エンジンの出力が不安定となって
クラッチツウクラッチ変速の油圧制御が行われたときに
変速ショックが発生する程度に温度が低い状態を判定す
るための値であり、たとえば０℃程度の値に予め実験的
に定められる。

【００４１】上記ＳＡ２の判断が肯定された場合は、油
圧制御回路８４の作動油温度Ｔ_OILが予め設定された判
断基準値Ｔ_OILB以上であるか否かが判断される。この判
断基準値Ｔ_OILBは、作動油の粘性抵抗が高くなってクラ
ッチツウクラッチ変速の油圧制御の精度が得られない程
度に温度が低い状態を判定するための値であり、たとえ
ば−２５℃程度の値に予め実験的に定められる。

【００４２】上記ＳＡ３の判断が肯定された場合は、ク
ラッチツウクラッチ変速禁止条件が成立しない状態であ
るので、続くＳＡ４においてエンジン１０の出力トルク
低下制御が実行可能であるか否かが判断される。この出
力トルク低下制御は、パワーオン変速時の変速ショック
を軽減させるために、変速期間においてエンジン１０の
出力トルクを点火時期を一時的に遅角させることなどに
より低下させて、シフトダウン時のエンジン１０の回転
速度のオーバシュートやシフトアップ時のイナーシャト
ルクを軽減するものであり、たとえば触媒の温度状態な
どに従って実行許可される。。

【００４３】上記ＳＡ４の判断が肯定された場合は、続
くＳＡ５において２−３タイミング弁９８が正常な切り
換え作動を示しているか否かが、油圧制御回路８４の作
動状態に基づいて判断される。上記ＳＡ２、ＳＡ３、Ｓ
Ａ４、ＳＡ５は、クラッチツウクラッチ変速がうまく実
行されない状態であるか否かを判断するためのものであ
り、本実施例では、クラッチツウクラッチ変速禁止条件
が成立したか否かの判断に基づいてクラッチツウクラッ
チ変速禁止手段１６０に対応している。

【００４４】上記ＳＡ５の判断が肯定された場合は、前
記変速制御手段１５８に対応するＳＡ６において前述の
通常の変速制御が実行される。しかし、前記ＳＡ２およ
びＳＡ３のいずれかの判断が否定された場合は、ＳＡ７
においてシフトレバー７２がＤ、４、３レンジのいずれ
かへ操作されているか否かが操作位置センサ７４により
検出された操作位置Ｐ_SHに基づいて判断される。このＳ
Ａ７の判断が肯定された場合は、ＳＡ８において第２速
ギヤ段を達成させないで第１速ギヤ段の上は第３速ギヤ
段とするように第２速ギヤ段を除いた残りのギヤ段の変
速が実行される。すなわちＤレンジでは１、３、４、５
速の範囲で変速が実行され、４レンジでは１、３、４速
の範囲で変速が実行され、３レンジでは１、３速の範囲
で変速が実行されることにより、クラッチツウクラッチ
変速が回避される。そして、そのような第２速ギヤ段を
除く変速用の変速線図が用いられる。

【００４５】上記ＳＡ７の判断が否定された場合は、Ｓ
Ａ９においてシフトレバー７２が２レンジへ操作されて
いるか否かが操作位置センサ７４により検出された操作
位置Ｐ_SHに基づいて判断される。このＳＡ９の判断が肯
定された場合は、ＳＡ１０において第２速ギヤ段に固定
されることにより、クラッチツウクラッチ変速が回避さ
れると同時に、第２速ギヤ段の達成禁止が解除されて２
レンジ走行における違和感が解消される。

【００４６】また、前記ＳＡ４またはＳＡ５のいずれか
の判断が否定された場合は、ＳＡ１１においてシフトレ
バー７２がＤ、４、３レンジのいずれかへ操作されてい
るか否かが操作位置センサ７４により検出された操作位
置Ｐ_SHに基づいて判断される。このＳＡ１１の判断が肯
定された場合は、ＳＡ１２において前記ＳＡ８と同様に
第２速ギヤ段を達成させないで第１速ギヤ段の上は第３
速ギヤ段とするように第２速ギヤ段を除いた残りのギヤ
段の変速が実行される。

【００４７】上記ＳＡ１１の判断が否定された場合は、
ＳＡ１３においてシフトレバー７２が２レンジへ操作さ
れているか否かが操作位置センサ７４により検出された
操作位置Ｐ_SHに基づいて判断される。このＳＡ１３の判
断が肯定された場合は、ＳＡ１４において第２速ギヤ段
と第１速ギヤ段との間で変速が実行されることにより、
クラッチツウクラッチ変速が回避されると同時に、第２
速ギヤ段の達成禁止が解除されて２レンジ走行における
違和感が解消される。なお、この２レンジ走行では１−
２変速線図が用いられるが、２レンジへ操作されたとき
に高速走行しているために第３速ギヤ段が保持されてい
るときだけ、第３速ギヤ段から第１速ギヤ段へのシフト
ダウンを許可し、第１速ギヤ段へシフトダウンされた後
に１−２変速線図が設定される。本実施例では、前記Ｓ
Ａ９、ＳＡ１３が、クラッチツウクラッチ変速禁止状態
下において第２速ギヤ段の達成禁止を解除する解除手段
１６２に対応している。

【００４８】図１０は、上記図９のフローチャートに加
えて適宜実行されるものである。図において、前記クラ
ッチツウクラッチ変速禁止手段１６０に対応するＳＢ１
では、クラッチツウクラッチ変速禁止条件が成立したか
否かが判断される。この禁止条件は前記ＳＡ２乃至ＳＡ
５と同様のものである。このＳＢ１の判断が肯定された
場合は、前記レンジ切換判定手段１６４に対応するＳＢ
２において、３レンジと２レンジとの間の切り換えが実
行されたか否かが操作位置センサ７４により検出された
操作位置Ｐ_SHに基づいて判断される。このＳＢ２の判断
は、３レンジ走行と２レンジ走行との間の切り換えを判
断するものであり、たとえばシフトレバー７２の操作過
程で３レンジ或いは２レンジが単に通過させられる操作
時には判断されない。上記ＳＢ２の判断が否定された場
合は本ルーチンが終了させられるが、肯定された場合
は、前記実ギヤ段判定手段１６６に対応するＳＢ３にお
いて、シフトレバー７２が３レンジと２レンジとの間で
操作された瞬間の自動変速機１４の実際のギヤ段が第１
速ギヤ段であるか否か、すなわち相互間でクラッチツウ
クラッチ変速が行われる第２速ギヤ段或いは第３速ギヤ
段でないか否かが判断される。

【００４９】上記ＳＢ３の判断が肯定された場合は、Ｓ
Ｂ４において、たとえば図９に示す各レンジに応じた変
速制御が直ちに適用されることにより、前述のように、
２レンジが選択された場合を除いて第２速ギヤ段の達成
が禁止される。

【００５０】しかし、上記ＳＢ３の判断が否定された場
合は、第２速ギヤ段或いは第３速ギヤ段で走行中である
ので、前記変速パターン継続手段１６８に対応するＳＢ
５において、ＳＢ２により判定されたレンジ切り換え操
作前の変速制御ロジックが一時的に適用されることによ
り、クラッチツウクラッチ変速が回避される。たとえ
ば、３レンジで第３速ギヤ段にて走行中に２レンジへ切
り換えられたときには、図９に示す変速制御に従えばＳ
Ａ１０或いはＳＡ１４により第２速ギヤ段が達成されて
クラッチツウクラッチ変速が発生してしまうところであ
るが、そのシフト操作されるまでに用いられていた一律
に第２速ギヤ段の達成を禁止する３レンジの変速制御ロ
ジックが引き続き適用されることにより、第１速ギヤ段
とその上の第３速ギヤ段との間の変速制御がそのシフト
操作時だけ新たな２レンジに適用されるのである。ま
た、逆に、２レンジで第２速ギヤ段固定で走行中に３レ
ンジへ切り換えられたときには、それまで用いられてい
た２レンジの変速制御ロジックが引き続き適用されるこ
とにより、第２速ギヤ段が３レンジでも引き続き固定さ
れてクラッチツウクラッチ変速の発生が防止されるので
ある。

【００５１】上記ＳＢ１の判断が否定された場合には、
ＳＢ６において、ＳＢ１の判断が否定される直前までク
ラッチツウクラッチ変速禁止条件成立状態となったか否
かが判断される。このＳＢ６の判断が肯定された場合
は、前記変速判断手段１７０に対応するＳＢ７におい
て、クラッチツウクラッチ変速禁止条件成立状態から不
成立状態へ切り換わった直後においてそれまで達成が禁
止された第２速ギヤ段を達成させる変速判断すなわち３
→２変速判断が行われたか否かが判断される。このＳＢ
７の判断が肯定された場合は、前記加速操作判定手段１
７２に対応するＳＢ８において、車両の加速操作が行わ
れたか否かを、たとえばスロットル弁開度θ _THに基づい
て判定する。このＳＢ８の判断が肯定された場合は、前
記変速許可手段１７４に対応するＳＢ９において、上記
変速判断手段１７０により上記第２速ギヤ段を達成させ
る変速が判断された状態において、第２速ギヤ段を達成
させる変速すなわち３→２変速を許可し、３→２変速の
変速出力が出されるようにする。これにより、レンジ切
り換え操作に関連した変速制御ロジックの変更により直
ちに２−３変速（クラッチツウクラッチ変速）が発生す
ることが防止される。

【００５２】しかし、ＳＢ６乃至ＳＢ８の判断がいずれ
か否定された場合は、クラッチツウクラッチ変速禁止条
件不成立状態であって、レンジ切り換え操作に関連した
クラッチツウクラッチ変速が発生しない状態であるの
で、ＳＢ１０において前記ＳＡ６と同様の通常の変速制
御が実行される。

【００５３】上述のように、本実施例によれば、クラッ
チツウクラッチ変速禁止手段１６０に対応するＳＡ２乃
至ＳＡ５によりクラッチツウクラッチ変速を発生させる
第２速ギヤ段の達成が禁止されている状況下において、
第２速ギヤ段以下のギヤ段で走行する２レンジが操作位
置センサ７４により検出されたときは、解除手段１６２
に対応するＳＡ１０、ＳＡ１４により、上記クラッチツ
ウクラッチ変速禁止手段１６０に対応するＳＡ２乃至Ｓ
Ａ５による第２速のギヤ段の達成の禁止が解除される。
したがって、本来は第２速ギヤ段以下のギヤ段で走行す
る２レンジが選択されているときは、たとえクラッチツ
ウクラッチ変速禁止条件が成立していたとしても第２速
ギヤ段が達成されることから、２レンジで第１速ギヤ段
に固定される場合に比較して、エンジン回転数が大きく
なって駆動力が大きくなったりすることがなく、また、
２レンジで第２速ギヤ段を除く第１速ギヤ段と第３速ギ
ヤ段との間で変速される変速パターンで走行させられる
場合の第３速ギヤ段走行に比較して、駆動力やエンジン
ブレーキ力が低下したりすることが解消されるので、運
転者に違和感を与えることが好適に解消される。

【００５４】また、本実施例によれば、第２速ギヤ段以
下で走行する２レンジとそれより１段上の第３速ギヤ段
以下で走行する３レンジとの間で切換操作が行われたこ
とがレンジ切換判定手段１６４に対応するＳＢ２により
判定されたときに、実ギヤ段判定手段１６６に対応する
ＳＢ３により、自動変速機１４の実際のギヤ段が上記第
２速ギヤ段或いはそれよりも１段上の第３速ギヤ段であ
るか否かが判断される。そして、変速パターン継続手段
１６８に対応するＳＢ５により、上記レンジ切換判定手
段１６４により判定されたレンジ切り換え操作前の変速
制御ロジックがその切り換えに関連する変速に対しても
一時的に適用される。このように、上記変速パターン継
続手段１６８により、レンジ切り換え前に用いられてい
た変速制御ロジックがレンジ切り換えに際しても適用さ
れることにより、レンジ切り換えに関連するクラッチツ
ウクラッチ変速の発生が解消される利点がある。

【００５５】また、本実施例によれば、変速判断手段１
７０に対応するＳＢ７により、クラッチツウクラッチ変
速禁止条件成立状態から不成立状態へ切り換わった直後
においてそれまで達成が禁止された第２速ギヤ段を達成
させる変速が判断されたか否かが判定され、また、加速
操作判定手段１７２に対応するＳＢ８により、車両の加
速操作が行われたか否かが判定される。そして、変速許
可手段１７４に対応するＳＢ９により、上記変速判断手
段１７０により第２速ギヤ段を達成させる変速が判断さ
れた場合には、加速操作判定手段１７２により車両の加
速操作が行われたと判定されるまで待ってその判断と同
時に上記変速を許可する。このため、クラッチツウクラ
ッチ変速禁止条件成立状態から不成立状態へ切り換わっ
たとき、それまでの成立状態において達成が禁止されて
いた第２速ギヤ段を達成させる変速が直ちに行われて急
にダウンシフトすることが解消される利点がある。

【００５６】以上、本発明の一実施例を図面に基づいて
詳細に説明したが、本発明は他の態様で実施することも
できる。

【００５７】たとえば、前述の実施例の自動変速機１４
では、ブレーキＢ３の解放とブレーキＢ２の係合とによ
って第２速ギヤ段から第３速ギヤ段へのクラッチツウク
ラッチ変速が行われるように構成されていたが、他の摩
擦係合装置がそのクラッチツウクラッチ変速を実現する
ものであってもよいし、他のギヤ段たとえば第３速ギヤ
段と第４速ギヤ段との間でクラッチツウクラッチ変速が
行われるように構成されていてもよい。この場合には、
クラッチツウクラッチ変速禁止条件成立状態では第３速
ギヤ段の達成が禁止されるが、３レンジにおいて第３速
ギヤ段の達成禁止が解除される。

【００５８】また、前述の図９、図１０のフローチャー
トは、同様の制御機能を達成する範囲でステップが追加
されたり、或いはステップ内容の変更が行われても差支
えない。

【００５９】また、前述の実施例では、エンジン用電子
制御装置７６と変速用電子制御装置７８とは相互に独立
して構成されていたが、共通の演算制御装置によって構
成されていてもよい。

【００６０】その他一々例示はしないが、本発明は当業
者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実
施することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例の変速制御装置によってギヤ
段が制御される車両用自動変速機の構成を説明する骨子
図である。

【図２】図１の自動変速機における、複数の摩擦係合装
置の作動の組合わせとそれにより成立するギヤ段との関
係を示す図表である。

【図３】図１の自動変速機を制御する油圧制御回路およ
び電気制御回路を含むブロック線図である。

【図４】図３のシフトレバーの操作位置を説明する図で
ある。

【図５】図３の油圧制御回路の要部を説明する図であ
る。

【図６】図３の油圧制御回路の要部を説明する図であ
る。

【図７】図５および図６に示す油圧制御回路により実行
されるクラッチツウクラッチ変速における１対の摩擦係
合装置の解放油圧および係合油圧の変化を示す図であ
る。

【図８】図３の変速用電子制御装置の制御機能を説明す
る機能ブロック線図である。

【図９】図３の変速用電子制御装置の制御作動の要部を
説明するフローチャートである。

【図１０】本発明の他の実施例における変速用電子制御
装置の制御作動の要部を説明するフローチャートであ
る。

【符号の説明】

１４：自動変速機 ７２：シフトレバー（シフト操作装置） ７４：操作位置センサ（走行レンジ検出手段） １６０：クラッチツウクラッチ変速禁止手段 １６２：解除手段

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 変速比が異なる複数のギヤ段を有し、所
   定のギヤ段からそれに隣接する他のギヤ段へクラッチツ
   ウクラッチ変速により切り換えられる形式の車両用自動
   変速機において、複数の前進走行レンジに操作されるシ
   フト操作装置と、所定のクラッチツウクラッチ変速禁止
   条件が成立したときには前記所定のギヤ段の達成を禁止
   するクラッチツウクラッチ変速禁止手段とを備えた変速
   制御装置であって、 前記シフト操作装置により選択操作される走行レンジを
   検出する走行レンジ検出手段と、 前記所定のギヤ段以下のギヤ段で走行するエンジンブレ
   ーキレンジが前記走行レンジ検出手段により検出された
   ときは、前記クラッチツウクラッチ変速禁止手段による
   前記所定のギヤ段の達成の禁止を解除する解除手段と
   を、含むことを特徴とする車両用自動変速機の変速制御
   装置。