JP3584555B2 - 車両用自動変速機の変速制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、変速期間には調圧弁を用いて油圧式摩擦係合装置内の作動油圧を直接的に制御する形式の車両用自動変速機の変速制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
複数の油圧式摩擦係合装置(クラッチまたはブレーキ)の作動の組み合わせに従って複数の遊星歯車装置の要素を相互に或いは位置固定の部材に選択的に連結させることにより複数のギヤ段が択一的に達成される車両用自動変速機が知られている。このような自動変速機においては、所定のギヤ段を達成させるために係合させられるが、他のギヤ段を達成させるために解放させられる油圧式摩擦係合装置内の作動油圧を調圧する調圧弁と、その調圧弁を制御するための制御圧を出力する電磁弁とを備え、変速期間には前記油圧式摩擦係合装置内の作動油圧をその制御圧に応じた値に直接的に制御する変速制御装置が設けられる場合がある。
【0003】
このような変速制御装置では、上記油圧式摩擦係合装置に体積の大きいアキュムレータが設けられる替わりに上記調圧弁によって変速期間内の作動油圧(係合油圧)が直接的に制御されるので、自動変速機が小型となる利点がある。たとえば、特開平6−341525号公報に記載された変速制御装置がそれである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記油圧式摩擦係合装置を解放させることにより達成される変速途中に他の変速判断が行われて実行される多重変速が行われる場合がある。しかしながら、当初の変速に際して上記油圧式摩擦係合装置内の作動油を解放させるために調圧弁に対する制御圧を零にしてしまうと、多重変速の実行によって再び制御圧を調圧弁に供給しようとするとき、電磁弁の出力側の流量変化が大きいため、所望の制御圧を発生させるまでの電磁弁の応答遅れが大きい。このため、たとえば、上記油圧式摩擦係合装置が第2速ギヤ段を達成させるためのものであるとき、2→1変速途中に1→2変速が判断された多重変速において、2→1変速途中において電磁弁に対する制御圧が零となっていると、1→2変速の応答性が低下し、変速ショックを発生する可能性があった。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、直接的に係合圧が制御される油圧式摩擦係合装置を解放させる変速途中において他の変速判断を実行する多重変速に起因する変速ショックの発生が抑制される車両用自動変速機の変速制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、所定のギヤ段を達成させるために係合させられるが、他のギヤ段を達成させるために解放させられる油圧式摩擦係合装置内の作動油圧を調圧する調圧弁と、その調圧弁を制御するための制御圧を出力する電磁弁とを備え、変速期間には前記油圧式摩擦係合装置内の作動油圧を上記制御圧に応じた値に直接的に制御する形式の車両用自動変速機の変速制御装置であって、前記油圧式摩擦係合装置が解放される変速期間において、前記調圧弁に対して供給される制御圧の最低値を、その変化範囲の下限値よりも所定値大きい予め設定された設定圧力値に保持する制御圧保持手段を含むことにある。
【0007】
【発明の効果】
このようにすれば、制御圧保持手段により、前記油圧式摩擦係合装置が解放される変速期間において、前記調圧弁に対して供給される制御圧の最低値が、その変化範囲の下限値よりも所定値大きい予め設定された設定圧力値に保持される。このため、前記油圧式摩擦係合装置が解放される変速期間において他の変速を行う多重変速が実行されるとき、上記制御圧が設定圧力値に予め保持されているので、多重変速の実行に際して上記油圧式摩擦係合装置を再係合させるために再び制御圧を調圧弁に供給しようとするとき、電磁弁の出力側の流量変化が小さく、所望の制御圧を発生させるまでの電磁弁の応答遅れが大幅に短縮される。したがって、その電磁弁の応答性に起因する変速ショックの発生が好適に解消される。
【0008】
【発明の他の態様】
ここで、好適には、前記制御圧保持手段によって保持される設定圧力値は、前記油圧式摩擦係合装置内の作動油圧がその油圧式摩擦係合装置を略係合直前とする大きさとなるように予め設定された値である。
【0009】
また、好適には、前記油圧式摩擦係合装置を解放させることにより達成される変速に際しては、その油圧式摩擦係合装置内の作動油圧を制御する変速油圧制御手段が設けられる。この変速油圧制御手段は、前記制御圧を最大値から連続低下初期値まで急速に低下させた後、所定の低下率で上記制御圧を連続的に低下させるスイープ制御手段と、そのスイープ制御手段により連続的に低下させられた制御圧が前記設定圧力値に到達するとその制御圧をその設定圧力値に保持する制御圧保持手段とを含む。
【0010】
また、好適には、前記油圧式摩擦係合装置を解放させることにより達成される変速が完了したか否かを判定する変速完了判定手段が設けられ、前記制御圧保持手段は、その変速完了判定手段によって変速が完了したと判定されるまで前記制御圧を前記設定圧力値に保持する。
【0011】
また、好適には、たとえばスロットル弁開度などにより表される車両のエンジン負荷を検出するエンジン負荷検出手段と、前記作動油の温度を検出する作動油温度検出手段とが設けられ、前記スイープ制御手段は、予め記憶された関係から上記エンジン負荷および作動油温度に基づいて前記制御圧の連続低下初期値および低下率を決定する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施例の変速制御装置により変速制御される車両用自動変速機の一例を示す骨子図である。図において、エンジン10の出力は、トルクコンバータ12を介して自動変速機14に入力され、図示しない差動歯車装置および車軸を介して駆動輪へ伝達されるようになっている。
【0014】
上記トルクコンバータ12は、エンジン10のクランク軸16に連結されたポンプインペラ18と、自動変速機14の入力軸20に連結されたタービンランナー22と、それらポンプインペラ18およびタービンランナー22の間を直結するロックアップクラッチ24と、一方向クラッチ26によって一方向の回転が阻止されているステータ28とを備えている。
【0015】
上記自動変速機14は、ハイおよびローの2段の切り換えを行う第1変速機30と、後進ギヤ段および前進4段の切り換えが可能な第2変速機32を備えている。第1変速機30は、サンギヤS0、リングギヤR0、およびキャリヤK0に回転可能に支持されてそれらサンギヤS0およびリングギヤR0に噛み合わされている遊星ギヤP0から成るHL遊星歯車装置34と、サンギヤS0とキャリヤK0との間に設けられたクラッチC0および一方向クラッチF0と、サンギヤS0およびハウジング41間に設けられたブレーキB0とを備えている。第2変速機32は、サンギヤS1、リングギヤR1、およびキャリヤK1に回転可能に支持されてそれらサンギヤS1およびリングギヤR1に噛み合わされている遊星ギヤP1から成る第1遊星歯車装置36と、サンギヤS2、リングギヤR2、およびキャリヤK2に回転可能に支持されてそれらサンギヤS2およびリングギヤR2に噛み合わされている遊星ギヤP2から成る第2遊星歯車装置38と、サンギヤS3、リングギヤR3、およびキャリヤK3に回転可能に支持されてそれらサンギヤS3およびリングギヤR3に噛み合わされている遊星ギヤP3から成る第3遊星歯車装置40とを備えている。
【0016】
上記サンギヤS1とサンギヤS2は互いに一体的に連結され、リングギヤR1とキャリヤK2とキャリヤK3とが一体的に連結され、そのキャリヤK3は出力軸42に連結されている。また、リングギヤR2がサンギヤS3に一体的に連結されている。そして、リングギヤR2およびサンギヤS3と中間軸44との間にクラッチC1が設けられ、サンギヤS1およびサンギヤS2と中間軸44との間にクラッチC2が設けられている。また、サンギヤS1およびサンギヤS2の回転を止めるためのバンド形式のブレーキB1がハウジング41に設けられている。また、サンギヤS1およびサンギヤS2とハウジング41との間には、一方向クラッチF1およびブレーキB2が直列に設けられている。この一方向クラッチF1は、サンギヤS1およびサンギヤS2が入力軸20と反対の方向へ逆回転しようとする際に係合させられるように構成されている。
【0017】
キャリヤK1とハウジング41との間にはブレーキB3が設けられており、リングギヤR3とハウジング41との間には、ブレーキB4と一方向クラッチF2とが並列に設けられている。この一方向クラッチF2は、リングギヤR3が逆回転しようとする際に係合させられるように構成されている。
【0018】
以上のように構成された自動変速機14では、たとえば図2に示す作動表に従って後進1段および変速比が順次異なる前進5段のギヤ段のいずれかに切り換えられる。図2において○印は係合状態を示し、空欄は解放状態を示し、●はエンジンブレーキのときの係合状態を示している。この図2からも明らかなように、ブレーキB3は、他のギヤ段から第2速ギヤ段へ切り換える変速に際して係合させられるとともに、第2速ギヤ段から他のギヤ段へ切り換える変速に際して解放されるものである。ブレーキB2は、第2速ギヤ段などから第3速ギヤ段へ切り換える変速に際して係合させられるものである。第2速ギヤ段と第3速ギヤ段との間の変速に際しては、ブレーキB2およびブレーキB3のうちの解放側に係合トルクを持たせる期間と係合側に係合トルクを持たせる期間とをオーバラップさせつつ変速を進行させる所謂クラッチツウクラッチ変速が行われるようになっている。
【0019】
図3に示すように、車両のエンジン10の吸気配管には、アクセルペダル50によって操作される第1スロットル弁52と、常時は開かれているがエンジン出力を抑制するなどに際してスロットルアクチュエータ54によって制御される第2スロットル弁56とが設けられている。また、エンジン10の回転速度NE を検出するエンジン回転速度センサ58、エンジン10の吸入空気量Qを検出する吸入空気量センサ60、吸入空気の温度TA を検出する吸入空気温度センサ62、上記第1スロットル弁52の開度θTHを検出するスロットルセンサ64、出力軸42の回転速度NOUT から車速Vを検出する車速センサ66、エンジン10の冷却水温度TW を検出する冷却水温センサ68、ブレーキの作動を検出するブレーキスイッチ70、シフトレバー72の操作位置PSHを検出する操作位置センサ74などが設けられており、それらのセンサから、エンジン回転速度NE 、吸入空気量Q、吸入空気温度TA 、第1スロットル弁の開度θTH、車速V、エンジン冷却水温TW 、ブレーキの作動状態BK、シフトレバー72の操作位置PSHを表す信号がエンジン用電子制御装置76および変速用電子制御装置78に供給されるようになっている。また、自動変速機14の入力軸回転速度NE すなわちクラッチC0の回転速度NC0を検出する入力軸回転センサ73からその入力軸回転速度NINすなわちクラッチC0の回転速度NC0を表す信号が変速用電子制御装置78に供給される。さらに、油圧制御回路84内の作動油温度TOIL を検出する油温センサ75から作動油温度TOIL を表す信号が変速用電子制御装置78に供給される。
【0020】
また、図4に示すように、上記シフトレバー72は、車両の前後方向に位置するPレンジ、Rレンジ、Nレンジ、Dおよび4レンジ、3レンジ、2およびLレンジへ操作されるとともに、Dレンジと4レンジの間、および2レンジとLレンジとの間が車両の左右方向に操作されるようにその支持機構が構成されている。
【0021】
エンジン用電子制御装置76は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェースを備えた所謂マイクロコンピュータであって、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って入力信号を処理し、種々のエンジン制御を実行する。たとえば、燃料噴射量制御のために燃料噴射弁80を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ82を制御し、アイドルスピード制御のために図示しないバイパス弁を制御し、トラクション制御のためにスロットルアクチュエータ54により第2スロットル弁56を制御する。このエンジン用電子制御装置76は、変速用電子制御装置78と相互に通信可能に接続されており、一方に必要な信号が他方から適宜送信されるようになっている。
【0022】
変速用電子制御装置78も、上記と同様のマイクロコンピュータであって、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って入力信号を処理し、油圧制御回路84の各電磁弁或いはリニヤソレノイド弁を駆動する。たとえば、変速用電子制御装置78は、第1スロットル弁52の開度θTHに対応した大きさのスロットル圧PTHを発生させ或いはアキュム背圧を制御するためにリニヤソレノイド弁SLT を、ロックアップクラッチ24の係合、解放、スリップ量および変速時のブレーキB3内の油圧を制御するためにリニヤソレノイド弁SLU をそれぞれ駆動する。また、変速用電子制御装置78は、予め記憶された変速線図から実際のスロットル弁開度θTHおよび車速Vに基づいて自動変速機14のギヤ段やロックアップクラッチ24の係合状態を決定し、この決定されたギヤ段および係合状態が得られるように電磁弁S1、S2、S3を駆動し、エンジンブレーキを発生させる際には電磁弁S4を駆動する。
【0023】
図5および図6は、上記油圧制御回路84の要部を示している。図の1−2シフト弁88および2−3シフト弁90は、電磁弁S1、S2の出力圧に基づいて、第1速ギヤ段から第2速ギヤ段への変速時および第2速ギヤ段から第3速ギヤ段への変速時においてそれぞれ切り換えられる切換弁であり、その切換位置を示す数値はギヤ段を示している。前進レンジ圧PD は、シフトレバー72が前進レンジ(D、4、3、2、L)へ操作されているときに図示しないマニュアル弁から出力される圧であり、図示しないレギュレータ弁によりスロットル弁開度に応じて高く調圧されるライン圧PL を元圧としている。
【0024】
第1速ギヤ段から第2速ギヤ段へ切り換える変速出力が出された時には、上記前進レンジ圧PD は、1−2シフト弁88、2−3シフト弁90、油路L01、B3コントロール弁92、油路L02を経てブレーキB3および圧力振動吸収用のダンパー94へ供給される。また、第2速ギヤ段から第3速ギヤ段へ切り換える変速出力が出された時には、前進レンジ圧PD は、2−3シフト弁90、油路L03を経て、ブレーキB2およびB2アキュムレータ100へ供給されると同時に、ブレーキB3内の作動油は、油路L02、B3コントロール弁92、油路L01、2−3シフト弁90、戻り油路L04、2−3タイミング弁98を経て調圧ドレンされるとともに、戻り油路L04から分岐する分岐油路L05およびB2オリフィスコントロール弁96を経て急速ドレンされるようになっている。
【0025】
上記B2アキュムレータ100の背圧室100B には、リニヤソレノイド弁SLT の出力圧PSLT が各変速に際して供給され、ブレーキB2内の作動油圧が制御される。
【0026】
前記B3コントロール弁92は、アキュムレータが設けられていないブレーキB3の係合圧を直接的に調圧するための調圧弁として機能し、油路L01と油路L02との間を開閉するスプール弁子104と、スプリング106を挟んでスプール弁子104と同心に設けられ且つそのスプール弁子104よりも大径のプランジャ108と、スプリング106を収容し、前記2−3シフト弁90が第3速側へ切り換えられたときにそれから出力される前進レンジ圧PD を油路L07を介して受け入れる油室110と、プランジャ108の軸端に設けられてリニヤソレノイド弁SLU からの制御圧PSLU を受け入れる油室112とを備えている。このため、B3コントロール弁92は、1→2変速に際しては、リニヤソレノイド弁SLU の制御圧PSLU に従ってスプール弁子104を中心線の左側に示す開位置に位置させてファーストフィルをその初期に行うとともに、その後は油路L01からの作動油を油路L02に供給したり或いは油路L02内の作動油を排出油路L06へ流出させることによりブレーキB3内の係合圧PB3の立ち上がり速度が一定となるように調圧し、ブレーキB3の係合が予測されるときの直前急速に立ち上げる。また、2→1変速に際しては、電磁弁S1およびS2は第2速の変速出力に維持されて油路L01にはDレンジ圧が保持されており、B3コントロール弁92は、制御圧PSLU に従って所定の速度で圧力降下させられた後、ブレーキB3内に作動油が供給されたと仮定したときにはそのブレーキB3の係合直前となるように予め設定された設定圧力値PSLUHに維持され、第1速ギヤ段の変速完了が判定されるまでそれを持続する。また、上記B3コントロール弁92は、3→2変速および2→3変速に際しても、フレーキB3の係合圧および解放圧を制御圧PSLU に従って直接的に制御する。なお、数式1において、S1 およびS2 はプランジャ108およびスプール弁子104の断面積である。
【0027】
【数1】
PB3=PSLU ・S1 /S2
【0028】
B2オリフィスコントロール弁96は、ブレーキB2およびB2アキュムレータ100と油路L03との間を開閉すると同時に排出油路L06とドレンポート113との間を開閉するスプール弁子114と、スプール弁子114をファーストドレン位置へ向かって付勢するスプリング116と、スプール弁子114の軸端に設けられて第3電磁弁S3の出力圧PS3を3−4シフト弁118を通して受け入れる油室120とを備えている。これにより、3→2変速時などには第3電磁弁S3がオン状態とされてその出力圧PS3が油室120に供給されなくなるので、スプール弁子114によりブレーキB2およびB2アキュムレータ100と油路L03との間を開かれて、それらブレーキB2およびB2アキュムレータ100からの作動油の排出を速やかに行うファーストドレン作動が行われる。また、1→2変速においては、上記第3電磁弁S3がオフ状態とされて制御圧PS3が油室120に供給されることにより、B3コントロール弁92の調圧作動によりそれから排出される作動油を排出させる排出油路L06とドレンポート113との間が開かれてそのB3コントロール弁92の調圧作動が許容されるが、1→2変速が完了すると第3電磁弁S3がオン状態とされて排出油路L06とドレンポート113との間が閉じられることによりB3コントロール弁92の調圧作動が停止させられる。
【0029】
2−3タイミング弁98は、第2速ギヤ段から第3速ギヤ段へのクラッチツウクラッチ変速に関与し、ブレーキB3からの解放圧をリニヤソレノイド弁SLU から制御圧PSLU に従って調圧するドレーン調圧弁として機能する。すなわち、2−3タイミング弁98は、2→3変速が出力されたときに2−3シフト弁90から出力された比較的高圧の前進レンジ圧PD (ライン圧と同じ値)が3−4シフト弁118およびソレノイドリレー弁122を通して供給される高圧ポート124と、ドレンポート126と、油路L04をその高圧ポート124またはドレンポート126に連通させることによりブレーキB3のドレン期間の圧力PB3を調圧するスプール弁子128と、スプリング130を介してスプール弁子128と同心に設けられ且つそのスプール弁子128と同径の第1プランジャ132と、スプール弁子128と同心に且つその一端に当接可能に設けられ且つそのスプール弁子128よりも大径の第2プランジャ134と、スプリング130を収容し、前記2−3シフト弁90が第2速側へ切り替えられたときにそれから出力される前進レンジ圧PD を油路L08を介して受け入れる油室136と、第1プランジャ132の軸端に設けられ、リニヤソレノイド弁SLU からの制御圧PSLU を受け入れる油室138と、第2プランジャ134の軸端に設けられ、ブレーキB2内の油圧PB2を受け入れる油室140と、フィードバック圧を受け入れるフィードバック油室142とを備えている。
【0030】
したがって、スプール弁子128および第1プランジャ132の断面積をS3 、スプール弁子128の第2プランジャ134側のランドの断面積をS4 、第2プランジャ134の断面積をS5 とすると、2→3変速出力が出された状態における解放過程のブレーキB3の圧力PB3は、2−3タイミング弁98による調圧作動により、数式2から、ブレーキB2の係合圧PB2の増加に応じて減少し、リニヤソレノイド弁SLU の制御圧PSLU に応じて増加するように調圧される。
【0031】
【数2】
PB3=PSLU ・S3 /(S3 −S4 )−PB2・S5 /(S3 −S4 )
【0032】
また、上記2−3タイミング弁98は、第2速側へ切り換えられた2−3シフト弁90から出力される前進レンジ圧PD が油室136へ供給されると、上記スプール弁子128がロックされるようになっている。これも、2−3タイミング弁98の油室138とB3コントロール弁92の油室112とが接続されていることから、第1速および第2速の状態では2−3タイミング弁98の油室138の容積変化を阻止して、B3コントロール弁92の調圧作動に影響を与えないようにするためである。
【0033】
C0エキゾースト弁150は、第3電磁弁S3の出力圧PS3および油路L01内の油圧に従って閉位置に位置させられるが、第4電磁弁S4の出力圧PS4に従って開位置に位置させられるスプール弁子152を備え、図示しない4−5シフト弁が第4速以下の切り換え状態であるときにそれを経由して供給されるライン圧PL を、第2速および第5速時以外のときにクラッチC0およびC0アキュムレータ154に供給する。
【0034】
図7および図8は、第2速ギヤ段を達成するために係合させられるブレーキB3、およびリニヤソレノイド弁SLU をそれぞれ詳細に説明するものである。図7において、ブレーキB3は、ハウジング41に固定されたピストンハウジング158の環状溝160内に摺動可能に嵌合された環状ピストン162と、ハウジング41およびキャリヤK1に対して軸まわりの回転不能かつ軸方向の移動可能に係合させられた環状の摩擦板164および166と、ハウジング41に固定されてピストン162からの推力を受け止めるストッパ168とを備えており、ピストンハウジング158内の油室170内の作動油圧が高められると、図示しないリターンスプリングの一端を受ける環状のスプリング受け172からの復帰力に抗して環状ピストン162が前進させられて、上記摩擦板164および166との間のスペースであるパッククリアランス173を詰めた後、それら摩擦板164および166をストッパ168との間で挟圧し、係合トルクを発生させる。すなわち、ブレーキB3では、油室170内の作動油圧が零から高められるとき、上記パッククリアランス173を詰める時間だけ係合トルクの立ち上がり応答が遅れる。
【0035】
上記リニヤソレノイド弁SLU は、ライン圧PL を元圧として一定に調圧されたモジュレータ圧PM が供給される入力ポート174と制御圧PSLU を出力する出力ポート176との間を開閉するスプール弁子178と、このスプール弁子178を閉弁方向に付勢するスプリング180と、変速用電子制御装置78からの指令値(駆動電流すなわちデューティ比)DSLUに従ってスプール弁子178を開弁方向に付勢する電磁ソレノイド182と、細孔184を通して制御圧PSLU を導入することによりスプール弁子178を閉弁方向に付勢するフィードバック室186とを備えている。すなわち、フィードバック室186における閉弁方向の受圧面積をS6 、電磁ソレノイド182の推力をF、スプリング180の荷重をWとすると、制御圧PSLU は数式3に従って出力される。なお、上記のように構成されたリニヤソレノイド弁SLU では、指令値DSLUが零とされるとスプール弁子178がスプリング180の付勢力に従ってその閉位置すなわち図8の最上端位置に位置させられるので、指令値DSLUが零から増加させられるときには、たとえば図9の破線に示すように、スプール弁子178が作動位置へ到達するまでに相当する、制御圧PSLU の立ち上がりに時間遅れが発生する。
【0036】
【数3】
PSLU =(F−W)/S6
【0037】
図10は、変速用電子制御装置78による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図において、自動変速判断手段188は、自動変速機14を自動的に変速させるために、ギヤ段毎に設けられた変速線(シフトアップ線およびシフトダウン線)から構成されたよく知られた変速線図から実際の車両状態たとえば車速およびエンジン負荷(たとえばスロットル弁開度)に基づいて変速判断を行う。たとえば、1→2変速用シフトアップ線から実際のエンジン負荷に基づいて決定された変速点車速を実際の車速が超えたときにアップシフト変速が判断され、2→1変速用シフトダウン線から実際のエンジン負荷に基づいて決定された変速点車速を実際の車速が下回ったときにダウンシフトが判断される。
【0038】
変速油圧制御手段190は、自動変速判断手段188によりブレーキB3を解放する変速が判断された場合には、その変速期間において、B3コントロール弁92に対してリニヤソレノイド弁SLU から供給される制御圧PSLU を変化させることによりブレーキB3の解放圧を制御する。この変速油圧制御手段190は、制御圧PSLU をその最大値(100%)から連続低下初期値PSLUIまで急速に低下させた後、所定の低下率Rで上記制御圧PSLU を連続的に低下させるスイープ制御手段192と、そのスイープ制御手段192により連続的に低下させられた制御圧PSLU が設定圧力値PSLUHに到達するとその制御圧をその設定圧力値PSLUHに保持する制御圧保持手段194とを含む。
【0039】
上記制御圧保持手段194により保持される設定圧力値PSLUHは、ブレーキB3を解放させる変速期間において、B3コントロール弁92に対して供給される制御圧PSLU の最低値を、その変化範囲の下限値(零)よりも所定値大きく予め設定された値であり、好適にはそのブレーキB3内の作動油圧がブレーキB3を略係合直前とする大きさとなるように予め設定される。この結果、ブレーキB3が解放される2→1変速期間において、上記制御圧保持手段194により、B3コントロール弁92に対して供給される制御圧PSLU が、そのブレーキB3内の作動油圧がブレーキB3を略係合直前とする大きさとなるように予め設定された設定圧力値PSLUHに保持される結果、上記ブレーキB3が解放される変速期間において他の変速たとえば1→2変速を行う多重変速が実行されるとき、上記制御圧PSLU が設定圧力値PSLUHに予め保持されているので、多重変速の実行に際して上記ブレーキB3を再係合させるために再び制御圧PSLU をB3コントロール弁92に供給しようとするとき、リニヤソレノイド弁SLU の出力側の流量変化が小さく、所望の制御圧PSLU を発生させるまでのリニヤソレノイド弁SLU の応答遅れが大幅に短縮される。
【0040】
変速完了判定手段196は、ブレーキB3を解放させることにより達成される変速たとえば2→1変速が完了したか否かを判定する。前記制御圧保持手段194は、その変速完了判定手段196によって変速が完了したと判定されるまで制御圧PSLU を設定圧力値PSLUHに保持する。
【0041】
また、前記スイープ制御手段192は、予め記憶された関係から、エンジン負荷検出手段に対応するスロットルセンサ64により検出されたスロットル弁開度θTHすなわち車両のエンジン負荷と、作動油温度検出手段に対応する油温センサ75により検出された作動油温度TOIL とに基づいて制御圧PSLU の連続低下初期値PSLUIおよび低下率Rを実質的に決定する。
【0042】
図11は、変速用電子制御装置78による制御作動の要部、すなわち2→1変速を実行させるための変速制御を示すフローチャートである。なお、前記自動変速判断手段188に対応するステップはよく知られたものであるので、省略されている。
【0043】
図11のステップ(以下、ステップを省略する)S1では、前記自動変速判断手段188により2→1変速が判断された後の2→1変速途中であるか否かが判断される。このS1の判断が否定された場合には、図示しない他のルーチンを経て本ルーチンが繰り返されるが、肯定された場合には、前記スイープ制御手段192に対応するS2およびS3において、制御圧PSLU が連続的に低下させられる。
【0044】
すなわち、S2では、たとえば図12に示す予め記憶された関係から実際のスロットル弁開度θTHおよび作動油温度TOIL に基づいて連続低下初期値DSLUIが算出されるとともに、指令値がその最大値(100%)からその連続低下初期値DSLUIまで急速に低下させられることにより、制御圧PSLU がその最大値(100%)から連続低下初期値PSLUIまで急速に低下させられる。図14のt1 はこの時点を示している。次いで、S3では、たとえば図13に示す予め記憶された関係から実際のスロットル弁開度θTHおよび作動油温度TOIL に基づいて一定の減少周期たとえば16ms当たりの減少量DD21PU1すなわち減少率(DD21PU1/16ms)が算出され、前回の指令値DSLUi−1 からその減少量DD21PU1が減算された後の指令値DSLUi から出力されることにより、制御圧PSLU が低下率Rで降圧開始される。
【0045】
次いで、前記変速完了判定手段196に対応するS4において2→1変速が完了したか否かが判断される。このS4では、たとえば自動変速機14の入力軸回転速度NINと出力軸回転速度NOUT との比NIN/NOUT が第1速ギヤ段の変速比i1 に到達したか否かに基づいて判断される。当初は上記S4の判断が否定されるので、S5において、今回の指令値DSLUi が予め設定された設定値KSLU以下となったか否かが判断される。その設定値KSLUは、ブレーキB3を略係合直前とする制御圧を発生させるために予め実験的に求められた値である。
【0046】
当初は上記S5の判断が否定されるので、上記S3以下が繰り返し実行されるが、制御圧PSLU が連続的に低下して上記設定値KSLU以下となると、そのS5の判断が肯定されるので、前記制御圧保持手段194に対応するS6において、今回の制御サイクルにおいて出力される指令値DSLUi が予め設定された設定値KSLUに置換されてから上記S3以下が繰り返し実行される。これにより制御圧PSLU が設定圧力値PSLUHに保持される。図14のt2 はこの時点を示している。
【0047】
以上のステップが繰り返し実行されるうち、S4の判断が肯定されると、S7の終了制御が実行され、指令値DSLUおよび制御圧PSLU が零とされる。図14のt3 はこの時点を示している。
【0048】
本実施例では、上述のように、ブレーキB3を解放させることにより実行される2→1変速期間において、制御圧保持手段194に対応するS6により、前記B3コントロール弁92に対して供給される制御圧PSLU の最低値が、その変化範囲の下限値(零)よりも所定値大きく予め設定された設定圧力値PSLUHに保持されるため、上記2→1変速期間において1→2変速を行う多重変速が実行されるとき、上記制御圧PSLU が設定圧力値PSLUHに予め保持されている結果、多重変速の実行に際してブレーキB3を再係合させるために再び制御圧PSLU をB3コントロール弁92に対して供給しようとするとき、リニヤソレノイド弁SLU の出力側の流量変化が小さく、たとえば図9の実線に示すように破線に示す従来に比較して、所望の制御圧を発生させるまでのリニヤソレノイド弁SLU の応答遅れが大幅に短縮される。したがって、そのリニヤソレノイド弁SLU の応答性に起因する変速ショックの発生が好適に解消される。
【0049】
図15は、上記の効果を示すタイムチャートである。図において、2→1変速途中において1→2変速が多重的に実行されると、指令値DSLUが設定値KSLUに保持され且つ制御圧PSLU が設定圧力値PSLUHに保持されている本実施例では、ブレーキB3を係合させるために直ちに指令値DSLUが増加させられたとき、実線に示すように制御圧PSLU も直ちに上昇開始する。しかし、指令値DSLUが設定値KSLUに保持されておらず、制御圧PSLU も設定圧力値PSLUHに保持されていない従来例では、破線に示すように、先ず、リニヤソレノイド弁SLU の応答性を高めるためにステップ的に指令値DSLUが上昇させられ、制御圧PSLU の出力可能な時期となってから指令値DSLUが連続的に上昇させられるので、指令値DSLUに時間遅れAが形成され、制御圧PSLU に時間遅れBが形成される。
【0050】
また、本実施例においては、たとえば図15に示すように、制御圧保持手段194に対応するS6により、前記B3コントロール弁92に対して供給される制御圧PSLU がブレーキB3を略係合直前とする大きさとなるように予め設定された設定圧力値PSLUHに保持される結果、ブレーキB3のピストン162がパッククリアランス173を詰めた位置まで前進させられるので、ブレーキB3内の作動油圧の立ち上がりの応答おくれが大幅に短縮される。したがって、そのブレーキB3の応答性に起因する変速ショックの発生も好適に解消される。
【0051】
また、本実施例によれば、スイープ制御手段192に対応するS2およびS3において、連続低下初期値PSLUIすなわちDSLUIと制御圧PSLU の低下率Rすなわち指令値DSLUの減少量DD21PU1とが、図12および図13に示す予め記憶された関係から実際のスロットル弁開度θTHおよび作動油温度TOIL に基づいて算出されるので、2→1変速期間におけるブレーキB3内の作動油圧が、自動変速機14の伝達トルク或いは作動油の粘性を考慮して最適の値に制御される利点がある。
【0052】
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0053】
たとえば、前述の実施例において、2→1変速期間内において1→2変速が判断される多重変速について説明されていたが、2→3変速期間内において3→2変速が判断される場合であってもよい。この場合には、ブレーキB2内の作動油圧の上昇によってブレーキB3内の作動油圧がドレンされるように構成されていることから、制御圧PSLU が設定圧力値PSLUHに保持されてもブレーキB3内には圧力が残らないので、ブレーキB3の立ち上がりの応答性が改善されないが、リニヤソレノイド弁SLU の応答性は改善されるので、それに基づいて変速ショックが防止される。
【0054】
また、前述の実施例の自動変速機14では、ブレーキB3内の作動油圧がB3コントロール弁92によって直接的に制御されるようになっていたが、他の油圧式摩擦係合装置内の油圧が直接的に制御されるようになっていてもよいのである。
【0055】
また、前述の実施例では、ブレーキB3を解放させる変速期間においてB3コントロール弁92に対して供給される制御圧PSLU がブレーキB3を略係合直前とする大きさとなるように予め設定された設定圧力値PSLUHに保持されていたが、その設定圧力値PSLUHは、その変化範囲の下限値零よりも大きい値であれば、リニヤソレノイド弁SLU の応答性において、それなりの改善効果が得られるのである。
【0056】
その他、一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の変速制御装置によってギヤ段が制御される車両用自動変速機の構成を説明する図である。
【図2】図1の自動変速機における、複数の油圧式摩擦係合装置の作動の組合わせとそれにより成立するギヤ段との関係を示す図表である。
【図3】図1の自動変速機を制御する油圧制御回路および電子制御回路を含むブロック線図である。
【図4】図3のシフトレバーの操作位置を説明する図である。
【図5】図3の油圧制御回路の要部を図6と共に説明する図である。
【図6】図3の油圧制御回路の要部を図5と共に説明する図である。
【図7】図1の自動変速機に用いられるブレーキB3の構成を詳しく説明する図である。
【図8】図3および図6のリニヤソレノイド弁の構成を詳しく説明する図である。
【図9】図3および図6のリニヤソレノイド弁の応答特性を、破線に示す従来と対比して説明する図である。
【図10】図3の変速用電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図11】図3の変速用電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートであり、2→1変速制御ルーチンを示している。
【図12】図11のフローチャートにおいて連続低下初期値DSLUIを求めるために用いられる関係を示す図である。
【図13】図11のフローチャートにおいて指令値DSLUの減少量DD21PU1を求めるために用いられる関係を示す図である。
【図14】図11のフローチャートにより制御される2→1変速の指令値の変化を説明するタイムチャートである。
【図15】図11のフローチャートにより制御される2→1変速中に1→2変速の判断が行われた多重変速時の指令値DSLUおよび制御圧PSLU の変化を、破線に示す従来例と対比して示すタイムチャートである。
【符号の説明】
14:自動変速機
92:B3コントロール弁92(調圧弁)
SLU:リニヤソレノイド弁(電磁弁)
ブレーキB3:油圧式摩擦係合装置
Claims (1)
- 所定のギヤ段を達成させるために係合させられるが、他のギヤ段を達成させるために解放させられる油圧式摩擦係合装置内の作動油圧を調圧する調圧弁と、該調圧弁を制御するための制御圧を出力する電磁弁とを備え、変速期間には前記油圧式摩擦係合装置内の作動油圧を該制御圧に応じた値に直接的に制御する形式の車両用自動変速機の変速制御装置であって、
前記油圧式摩擦係合装置が解放される変速期間において、前記調圧弁に対して供給される制御圧の最低値を、その変化範囲の下限値よりも所定値大きく予め設定された設定圧力値に保持する制御圧保持手段を含むことを特徴とする車両用自動変速機の変速制御装置。
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