JPH08188349A - 油圧エレベータの制御装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明は、乗りかごの加速度を考慮したエレベ
ータの速度制御を容易に実現して、乗り心地を著しく向
上させることを最も主要な目的とする。 【構成】本発明は、プランジャを介して乗りかごを昇降
させる油圧ジャッキと、電動機にて駆動され、乗りかご
を昇降する時に油圧ジャッキに圧油を供給／排出する油
圧ポンプとから構成される油圧エレベータの制御装置に
おいて、乗りかごに対するかご加速度パターンを設定す
るかご加速度パターン設定手段と、かご加速度パターン
設定手段により設定されたかご加速度パターンを積分し
て得られる乗りかごに対するかご速度指令を出力するか
ご速度指令演算手段と、かご速度指令演算手段から出力
されるかご速度指令に基づいて油圧ポンプ駆動用電動機
の速度制御を行ない、油圧ジャッキに供給される圧油流
量を制御する制御手段とを備える。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、油圧ジャッキに供給さ
れる圧油流量を、油圧ポンプ駆動用電動機の速度制御を
行なうことで制御する油圧エレベータの制御装置に係
り、特に乗りかごの加速度を考慮したエレベータの速度
制御を容易に実現して、乗り心地を向上させるようにし
た油圧エレベータの制御装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】一般に、油圧エレベータは、プランジャ
を介して乗りかごを昇降させる油圧ジャッキと、三相誘
導電動機にて駆動され、乗りかごを昇降する時に油圧タ
ンクから油圧ジャッキに圧油を供給／排出する油圧ポン
プとから構成されている。

【０００３】一方、制御装置は、図３にその機能ブロッ
ク図を示すように、かご速度パターン設定手段１と、バ
イアス分設定手段２と、変換係数回路３と、電動機速度
制御手段４と、エレベータ油圧・機械系５と、電動機速
度検出器６とから構成されている。

【０００４】すなわち、かご速度パターン設定手段１に
おいて、かご速度指令基本値１ａを設定する。これに対
し、バイアス分設定手段２において、乗りかごが起動し
ない範囲のバイアス分２ａを加える。これは、乗りかご
の起動時における乗客へのショックを軽減するためであ
る。そして、かご速度指令基本値１ａとバイアス分２ａ
とを加算した結果を、かご速度指令１ｂとして変換係数
回路３に入力する。

【０００５】一方、変換係数回路３において、かご速度
指令１ｂを電動機速度指令３ａに変換し、電動機速度制
御手段４に入力する。この場合の変換係数は、対象エレ
ベータに応じて設定すればよい。

【０００６】そして、インバータ制御を適用した電動機
速度制御手段４において、電動機速度４ａを電動機速度
検出器６により検出した結果である電動機速度検出値６
ａを電動機速度指令３ａに追従させるように、電動機速
度４ａをエレベータ油圧・機械系５を介し、かご速度５
ａとして油圧エレベータに与えることにより、乗りかご
を昇降させるようにしている。

【０００７】次に、図４は、上記油圧エレベータの制御
装置の乗りかごの上昇走行時におけるかご速度指令の一
例を示すパターン図である。図４において、かご速度指
令基本値１ａは点Ａ〜Ｄを頂点とする台形部分、バイア
ス分２ａは一点鎖線で示す部分に相当する また、図４の実線に示すかご速度指令では、点Ａ〜Ｄの
折れ点がトリガとなり、かご振動が発生する。このた
め、かご速度指令に点線で示すようなカーブを付けるこ
とにより、乗りかごの振動を抑制するようにしている。

【０００８】ところで、上述したような油圧エレベータ
の制御装置では、乗り心地の向上が重要な課題である
が、乗客の間隔に及ぼす影響は、かご速度よりもかご加
速度の方が大きいことが知られている。このため、油圧
エレベータにおいては、かご加速度の振幅の大きさや変
化率等が、重要な評価基準となっている。

【０００９】しかしながら、従来の方法では、かご速度
指令のパターンを設定する際に、かご加速度を陽に考慮
していないため、乗り心地の点でいまひとつ問題があ
る。また、乗りかごの振動を抑制するためには、図４の
点線で示すように、かご速度指令パターンを滑らかな形
状に整形する必要があり、煩雑な演算を行なうことが必
要である。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】以上のように、従来の
油圧エレベータの制御装置においては、かご速度指令の
パターンの設定に際して、かご加速度を陽に考慮してい
ないことから、乗り心地の点で問題があり、また乗りか
ごの振動を抑制するために、煩雑な演算を行なう必要が
あるという問題があった。

【００１１】本発明の目的は、乗りかごの加速度を考慮
したエレベータの速度制御を容易に実現して、乗り心地
を著しく向上させることが可能で、かつ煩雑な演算を行
なう必要がない油圧エレベータの制御装置を提供するこ
とにある。

【００１２】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに本発明では、プランジャを介して乗りかごを昇降さ
せる油圧ジャッキと、電動機にて駆動され、乗りかごを
昇降する時に油圧ジャッキに圧油を供給／排出する油圧
ポンプとから構成される油圧エレベータの制御装置にお
いて、乗りかごに対するかご加速度パターンを設定する
かご加速度パターン設定手段と、かご加速度パターン設
定手段により設定されたかご加速度パターンを積分して
得られる乗りかごに対するかご速度指令を出力するかご
速度指令演算手段と、かご速度指令演算手段から出力さ
れるかご速度指令に基づいて油圧ポンプ駆動用電動機の
速度制御を行ない、油圧ジャッキに供給される圧油流量
を制御する制御手段とを備えて成る。

【００１３】ここで、特に上記かご速度指令演算手段と
しては、積分回路を用いることが望ましい。また、上記
かご加速度パターン設定手段としては、かご加速度パタ
ーンを台形状に設定することが望ましい。

【００１４】さらに、上記かご加速度パターン設定手段
としては、乗りかごの起動前に矩形状のかご加速度パタ
ーンを設定することが望ましい。さらにまた、上記かご
加速度パターン設定手段としては、かご加速度パターン
を台形状に設定すると共に、乗りかごの起動前に矩形状
のかご加速度パターンを設定することが望ましい。

【００１５】

【作用】従って、本発明の油圧エレベータの制御装置に
おいては、かご加速度パターン設定手段にて、乗りかご
に対する加速度指令のパターン（かご加速度パターン）
を設定し、またこの設定されたかご加速度パターンをか
ご速度指令演算手段にて積分することで、乗りかごに対
する速度指令（かご速度指令）を演算し、さらにこのか
ご速度指令を基に油圧ポンプ駆動用電動機の速度制御を
行なうことで、油圧ジャッキに供給される圧油流量を制
御することにより、乗りかごの加速度を考慮したエレベ
ータの速度制御を容易に実現することが可能となり、こ
れにより起動ショックを乗客に与えることなく、乗り心
地の改善を図ることができる。

【００１６】また、かご加速度パターンを台形状に設定
することにより、かご速度指令を滑らかに変化させて、
加速度の急激な変化に起因する乗りかごの振動を抑制す
ることができる。

【００１７】さらに、乗りかごの起動時刻よりも以前に
矩形状のかご加速度パターンを設定することにより、乗
りかごが起動しない範囲であらかじめ油圧ポンプ駆動用
電動機を運転し、乗りかご起動時におけるショックを緩
和することができる。

【００１８】

【実施例】以下、本発明の一実施例について図面を参照
して詳細に説明する。図１は、本発明による油圧エレベ
ータの制御装置の全体構成例を示す概要図であり、図３
と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、こ
こでは異なる部分についてのみ説明する。

【００１９】すなわち、本実施例の油圧エレベータの制
御装置は、図１に示すように、図３におけるかご速度パ
ターン設定手段１、およびバイアス分設定手段２を省略
し、これに代えて、かご加速度パターン設定手段７と、
かご速度指令演算手段である積分回路８とを備えた構成
としている。

【００２０】ここで、かご加速度パターン設定手段７
は、乗りかごに対する加速度指令のパターン（かご加速
度パターン）７ａを設定するものである。また、積分回
路８は、かご加速度パターン設定手段７により設定され
たかご加速度パターン７ａを積分することにより、乗り
かごに対する速度指令（かご速度指令）８ａを演算し、
前記変換係数回路３に入力するものである。

【００２１】次に、以上のように構成した本実施例の油
圧エレベータの制御装置の作用について説明する。図１
において、かご加速度パターン設定手段７では、乗りか
ごに対する加速度指令のパターン（かご加速度パター
ン）７ａが設定され、積分回路８に入力される。

【００２２】積分回路８では、かご加速度パターン設定
手段７からのかご加速度パターン７ａが積分されること
により、乗りかごに対する速度指令（かご速度指令）８
ａが演算され、変換係数回路３に入力される。

【００２３】一方、変換係数回路３では、積分回路８か
らのかご速度指令８ａが電動機速度指令３ａに変換され
て、電動機速度制御手段４に入力される。この場合の変
換係数は、対象エレベータに応じて設定される。

【００２４】そして、インバータ制御を適用した電動機
速度制御手段４では、電動機速度４ａを電動機速度検出
器６により検出した結果である電動機速度検出値６ａを
電動機速度指令３ａに追従させるように、電動機速度４
ａがエレベータ油圧・機械系５を介し、かご速度５ａと
して油圧エレベータに与えられることにより、乗りかご
が昇降される。

【００２５】次に、本実施例の特徴である上記かご加速
度パターン設定手段７と積分回路８の作用について、よ
り具体的に説明する。図２は、かご速度指令８ａの演算
方法の一例を示すパターン図である。

【００２６】図２において、（ａ）はかご加速度パター
ン設定手段７で設定されたかご加速度パターン７ａであ
り、また（ｂ）はかご加速度パターン７ａを積分回路８
で積分することにより得られるかご速度指令８ａであ
る。

【００２７】図２（ａ）に示すかご加速度パターン７ａ
において、時刻ｔ₁ から時刻ｔ₂ における矩形状の部分
は、乗りかご起動時における乗客へのショックを軽減す
るためのバイアス分を生成するために設ける。

【００２８】また、時刻ｔ₃ は、乗りかごの起動時刻で
ある。さらに、時刻ｔ₃ から時刻ｔ₆ における台形状の
部分は、乗りかごを加速するために設ける。

【００２９】そして、この際に、時刻ｔ₃ から時刻ｔ₄
において、かご加速度を０から最大値まで連続的に変化
させることにより、かご速度指令８ａを滑らかな形状に
設定する（ジャークと称される）。

【００３０】また、この際に、かご加速度パターン７ａ
の傾きを変更することにより、曲線部分の形状を指定で
きる。そして、一般に、傾きが小さい程、かご速度指令
８ａの変化が穏やかになるため、振動が発生し難く、乗
り心地が向上する一方、昇降に時間を要する。従って、
かご加速度パターン７ａの傾きは、要求しように応じて
設定する必要がある。

【００３１】また、時刻ｔ₅ から時刻ｔ₆ も同様に、ジ
ャークを付ける部分である。さらに、時刻ｔ₆ から時刻
ｔ₇ に至る部分は、定速走行部分であるため、加速度は
０とする。

【００３２】一方、時刻ｔ₇ から時刻ｔ₁₀における台形
状の部分は、乗りかごを減速するために設ける。ここ
で、時刻ｔ₇ から時刻ｔ₈ 、時刻ｔ₉ から時刻ｔ₁₀は、
乗りかご加速時と同様のジャーク部分である。

【００３３】また、時刻ｔ₁₀は、乗りかごの停止時刻で
ある。なお、乗りかごの停止時においては、実際には位
置決め制御が用いられているが、本発明の範囲外である
ため、ここではその説明を省略する。

【００３４】上述したように、本実施例の油圧エレベー
タの制御装置においては、かご加速度パターン設定手段
７にて、乗りかごに対する加速度指令のパターン（かご
加速度パターン）７ａを設定し、またこの設定されたか
ご加速度パターン７ａをかご速度指令演算手段である積
分回路８にて積分することで、乗りかごに対する速度指
令（かご速度指令）８ａを演算し、さらにこのかご速度
指令８ａを基に油圧ポンプ駆動用電動機の速度制御を行
なうことで、油圧ジャッキに供給される圧油流量を制御
するようにしたものである。

【００３５】従って、かご加速度パターン７ａを積分し
てかご速度指令８ａを演算するようにしているので、乗
りかごの加速度を考慮したエレベータの速度制御を容易
に実現することが可能となる。これにより、起動ショッ
クを乗客に与えることなく、乗り心地の改善を図ること
ができる。

【００３６】また、図２（ａ）に示すように、乗りかご
の起動時刻ｔ₃ 以降のかご加速度パターン７ａを台形状
に設定するようにしているので、かご速度指令８ａを滑
らかに変化させ、これにより加速度の急激な変化に起因
する乗りかごの振動を抑制することが可能となる。

【００３７】なお、この際に、加速度の変化率や昇降に
要する時間を考慮する必要があるが、本実施例では、か
ご加速度パターン７ａの傾きを変更することにより容易
に対処することができる。

【００３８】さらに、乗りかごの起動時刻よりも以前に
矩形状のかご加速度パターンを設定するようにしている
ので、乗りかごが起動しない範囲であらかじめ油圧ポン
プ駆動用電動機を運転し、これにより乗りかご起動時に
おけるショックを緩和することが可能となる。

【００３９】尚、本発明は上記実施例に限定されるもの
ではなく、次のようにしても同様に実施できるものであ
る。 （ａ）上記実施例では、乗りかごの起動時以降のかご加
速度パターンを台形状に設定する場合について説明した
が、これに限らず、必要に応じて、２次曲線や３次曲線
等を組み合わせるようにすることも可能である。

【００４０】（ｂ）上記実施例では、かご速度指令演算
手段として、積分回路を用いる場合について説明した
が、これに限らず、その他の手段を適用することも可能
である。

【００４１】（ｃ）上記実施例では、本発明を油圧エレ
ベータに適用する場合について説明したが、これに限ら
ず、ロープ式のエレベータや他の昇降装置（例えば、舞
台装置）についても、本発明を同様に適用することが可
能である。

【００４２】

【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、プ
ランジャを介して乗りかごを昇降させる油圧ジャッキ
と、電動機にて駆動され、乗りかごを昇降する時に油圧
ジャッキに圧油を供給／排出する油圧ポンプとから構成
される油圧エレベータの制御装置において、乗りかごに
対するかご加速度パターンを設定するかご加速度パター
ン設定手段と、かご加速度パターン設定手段により設定
されたかご加速度パターンを積分して得られる乗りかご
に対するかご速度指令を出力するかご速度指令演算手段
と、かご速度指令演算手段から出力されるかご速度指令
に基づいて油圧ポンプ駆動用電動機の速度制御を行な
い、油圧ジャッキに供給される圧油流量を制御する制御
手段とを備えるようにしたので、乗りかごの加速度を考
慮したエレベータの速度制御を容易に実現して、乗り心
地を著しく向上させることが可能で、かつ煩雑な演算を
行なう必要がない油圧エレベータの制御装置が提供でき
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明による油圧エレベータの制御装置の一実
施例を示す機能ブロック図。

【図２】同実施例の油圧エレベータの制御装置における
かご加速度パターンとかご速度指令の一例を示すパター
ン図。

【図３】従来の油圧エレベータの制御装置の構成例を示
す機能ブロック図。

【図４】従来の油圧エレベータの制御装置におけるかご
速度指令の一例を示すパターン図。

【符号の説明】

１…かご速度パターン設定手段、２…バイアス分設定手
段、３…変換係数回路、４…電動機速度制御手段、５…
エレベータ油圧・機械系、６…電動機速度検出器、７…
かご加速度パターン設定手段、８…積分回路、１ａ…か
ご速度指令基本値、１ｂ…かご速度指令、２ａ…バイア
ス分、３ａ…電動機速度指令、４ａ…電動機速度、５ａ
…かご速度、６ａ…電動機速度検出値、７ａ…かご加速
度パターン、８ａ…かご速度指令。

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 プランジャを介して乗りかごを昇降させ
   る油圧ジャッキと、電動機にて駆動され、前記乗りかご
   を昇降する時に前記油圧ジャッキに圧油を供給／排出す
   る油圧ポンプとから構成される油圧エレベータの制御装
   置において、 前記乗りかごに対するかご加速度パターンを設定するか
   ご加速度パターン設定手段と、 前記かご加速度パターン設定手段により設定されたかご
   加速度パターンを積分して得られる前記乗りかごに対す
   るかご速度指令を出力するかご速度指令演算手段と、 前記かご速度指令演算手段から出力されるかご速度指令
   に基づいて前記油圧ポンプ駆動用電動機の速度制御を行
   ない、前記油圧ジャッキに供給される圧油流量を制御す
   る制御手段と、 を備えて成ることを特徴とする油圧エレベータの制御装
   置。
2. 【請求項２】 前記かご速度指令演算手段としては、積
   分回路を用いるようにしたことを特徴とする請求項１に
   記載の油圧エレベータの制御装置。
3. 【請求項３】 前記かご加速度パターン設定手段として
   は、かご加速度パターンを台形状に設定するようにした
   ことを特徴とする請求項１に記載の油圧エレベータの制
   御装置。
4. 【請求項４】 前記かご加速度パターン設定手段として
   は、乗りかごの起動前に矩形状のかご加速度パターンを
   設定するようにしたことを特徴とする請求項１に記載の
   油圧エレベータの制御装置。
5. 【請求項５】 前記かご加速度パターン設定手段として
   は、かご加速度パターンを台形状に設定すると共に、乗
   りかごの起動前に矩形状のかご加速度パターンを設定す
   るようにしたことを特徴とする請求項１に記載の油圧エ
   レベータの制御装置。