JPH08177864A - コンプレッサー用の転がり軸受 - Google Patents
コンプレッサー用の転がり軸受Info
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- JPH08177864A JPH08177864A JP33845194A JP33845194A JPH08177864A JP H08177864 A JPH08177864 A JP H08177864A JP 33845194 A JP33845194 A JP 33845194A JP 33845194 A JP33845194 A JP 33845194A JP H08177864 A JPH08177864 A JP H08177864A
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Abstract
部で、冷媒と共に潤滑剤を混合した潤滑条件下で使用さ
れる転がり軸受においては、冷媒をヒドロフルオロカー
ボンに、潤滑剤をポリアルキレングリコール類に変更さ
れるに伴い、高クロム軸受鋼製の軸受の転走面に水素脆
化による特異な亀裂が発生して寿命が短い。本発明は、
コンプレッサー用の軸受の鋼組成を調節して、水素脆化
を防止し、長寿命化を図る。 【構成】 軸受の構成部材のうち、少なくとも転動体
を、Cr1.6〜2.0%を含有し、〔%Cr〕/〔%
C〕を2.0以上とした合金鋼より形成して、焼入れ焼
戻しする。
Description
ショナー、特に、自動車用エアコンディショナーのコン
プレッサーに使用される回転軸の支承に使用される転が
り軸受に関する。
のコンプレッサーには、冷媒圧縮用のピストンや回転部
材を駆動する回転軸に転がり軸受が使用されているが、
この軸受には、コンプレッサー中で冷媒に潤滑剤を混合
した状態で使用されるタイプのものがある。従来のエア
コンディショナーでは、冷媒としてクロロフルオロカー
ボン類(フロン)とこの冷媒に可溶なパラフィン系やナ
フテン系等の鉱油系潤滑剤とが混合状態で、軸受の潤滑
剤として使用されていた。
ン層の破壊の原因となるなど地球環境に影響を及ぼすこ
とから、冷媒として、ヒドロフルオロカーボン類(HF
C)、例えば、HFC134a(1,1,1,2-テトラフルオ
ロエタンCF3-CFH2 )などに代替されつつあり、こ
れに対応して、潤滑剤としても冷媒ヒドロフルオロカー
ボン類に可溶なポリアルキレングリコール(PAG)や
ポリオールエステルなどが使用されている。
オールエステルとの混合物の潤滑下では、転がり軸受に
とって潤滑環境がきびしく、従来の高炭素クロム軸受鋼
製の焼入れ焼戻し材から製作した軸受の軌道輪や転動体
では、従来の表面金属疲労とは異なった形態の剥離現象
を生じ、軸受寿命が、従来の疲労寿命から予測されるよ
りも遙かに短くなる傾向が認められた。即ち、従来のフ
ロンと鉱油との混合潤滑下では、転走面表面に疲労損傷
が発生するか、或いは繰り返し荷重によって表層部に生
じた亀裂が順次表面に向かって進行し、亀裂の進行に伴
って剥離が生じるものであった。これに対して、ヒドロ
フルオロカーボン類とPAGとの混合潤滑下では、転走
面の深い部分から生じた特異な剥離現象であった。一例
として、図4には、軸受鋼SUJ2による玉軸受をPA
Gを含む潤滑剤を使用して実機試験によって試験した後
の鋼球3(同図(C))の断面顕微鏡写真を示すが、剥
離前に転走面下に亀裂が生じて延展し(同図(A)に未
剥離部aの組織を示す)、転動体の回転により亀裂面が
繰り返し摩擦を受けながら割れ目に緩みを生じ、急にこ
の亀裂面から表層部側が剥がれる現象である(剥離部b
の表面近傍の組織を同図(B)に示す)。
ルオロカーボンが塩素を含まないので化学的に安定で、
金属表面を保護する作用がなく、また、PAG等の合成
油との混合物による潤滑条件では、転走面に潤滑膜が形
成され難く、軌道輪・転動体の転走面が摩耗して金属表
面が露出し、この金属新生面が潤滑剤中の炭化水素ない
し混合水分を分解し、発生した水素が内部に吸収拡散さ
れ、内部の金属組織を脆化させることによるものと考え
られた。
明者らは、高荷重且つ高速で使用されるグリース封入軸
受において、転走面の相当内部の深い部分から突然生じ
る特異性剥離により寿命が著しく短くなることを見出し
ており、この対策として、転動体や軌道輪の転走面の表
面に薄層の酸化皮膜を予め形成しておき、この酸化皮膜
により表面での触媒作用を制限して、水素発生を抑制し
て水素脆化を防止した軸受を提案した(特開平2−19
0615号明細書)。
ても、上記のヒドロフルオロカーボン類とPAGとの混
合潤滑下の軸受に対しては、潤滑油膜形成が不十分であ
るので酸化皮膜が早期に摩耗滅失してしまい、転走面に
金属新生面が現れることになり、特異性剥離を防止する
ことができなかった。
ロカーボン類とPAGとの混合物の潤滑下で使用される
転がり軸受において、その寿命を改善したコンプレッサ
ー用転がり軸受を提供しようとするものである。
プレッサー用転がり軸受は、内外の軌道輪とこれら軌道
輪の間に介装される転動体とから成り、冷媒としてのヒ
ドロフルオロカーボン類とこの冷媒に可溶な潤滑剤との
混合潤滑下で使用されるコンプレッサー用の転がり軸受
であるが、少なくとも該転動体が、Crを1.6〜2.
0重量%含有し、Cr含有量とC含有量との重量%で示
した比〔%Cr〕/〔%C〕が2.0以上である組成の
合金鋼により形成されていることを特徴とする。
ては、コンプレッサーの用途と仕様によって定まる冷媒
のヒドロフルオロカーボン類とこの冷媒に可溶な潤滑剤
との混合物による潤滑である。この潤滑剤には、ポリア
ルキレングリコールやポリオールエステルなどがある。
〜2.0重量%含有し、Cr含有量とC含有量との重量
%で示した比〔%Cr〕/〔%C〕が2.0以上である
鋼で形成するが、その金属表面に緻密で強固な酸化皮膜
(例えば、FeCrO4 )を形成し、ポリアルキレング
リコール或いはポリオールエステルの潤滑環境下でこの
酸化皮膜は摩耗することがなく、この皮膜が転動体表面
及び軌道輪の転走面を不活性にする。この組成範囲の鋼
では、上記冷媒と潤滑剤との混合液に接触しても、その
炭化水素や水が分解することはなく、例え分解しても上
記酸化皮膜が、発生した水素が鋼中に侵入するのを防
ぐ。これにより、水素脆性に起因する特異性剥離を防止
して、軸受の転がり寿命を本来の転がり疲労寿命まで延
長できる。
は、Crが表面酸化皮膜を形成するので1.6重量%を
必要とする。1.6重量%Cr未満では、上記の潤滑条
件では、表面酸化皮膜の形成が不十分となり使用中に早
期に摩耗してしまい、活性面が露出することになる。他
方、2.0重量%Crを越えると、Crの溶体化のため
に焼入れ温度を高める必要があり、この場合には材料コ
ストと共に熱処理コストが上昇するから好ましくない。
条件は、安定した表面酸化皮膜の形成のために必要であ
る。鋼中Cは、Crの炭化物を形成するので、炭化物量
を減らして、マトリックス中に固溶する有効なCr含有
量を高めるために、C含有量〔%C〕を〔%Cr〕/
2.0以下とする。鋼中C含有量は、上記の〔%Cr〕
/〔%C〕の条件の下で、C0.6〜0.8重量%の範
囲に規制するのが好ましい。C0.6重量%未満では、
焼入れ焼戻し後の表面硬さが不足して使用中の摩耗が多
くなり軸受としては好ましくない。C0.8重量%を越
えると、必要とするCr量を多くする必要があり、素材
の成形性を悪化させて好ましくない。
0.35重量%、Mn0.50重量%とするのが良い。
不純物の P、S、Oは、出来るだけ低減しておく。こ
れら成分は、通常の高炭素クロム軸受鋼に相当する組成
規制をすれば良い。
少なくとも転動体を上記の合金鋼で形成する。転動体は
全周面が摺動摩耗を受けた状態で使用されるので、水素
脆化の影響を大きく受ける危険性があり、このために事
前に金属新生面となるのを防止する必要があるからであ
る。このような合金鋼で形成した軌道輪や転動体は、常
用の方法で、オーステナイト化して焼入れし、低温で焼
戻しをされる。
機、エアコンディショナーのコンプレッサーの内部で回
転軸支承に使用される。
0.7〜1.0%(重量%、以下同じ)、Cr1.5〜
2.0%の鋼材から、鋼球を製作した。他の成分は、S
i0.23〜0.28%、Mn0.45〜0.47%、
P0.010〜0.013%、S0.005%以下、N
i0.07%以下である。これらの鋼球を850℃×
0.5hのオーステナイト化後に油中冷却して焼入れ
し、180℃×2.0hの焼戻しを行ない、表面研磨を
して転がり軸受用の鋼球(直径10.3187mm)と
し、以下の試験に供した。
鋼球の転がり疲労寿命試験を行った。装置は、図3に示
す如く、下側の円板1がハウジング6に固定され、上側
の円板2が回転軸に固定されて、上下の円板1、2の間
に、保持器4により案内保持された鋼球3個を介装し
て、一定荷重を負荷して上側の円板2を回転させるもの
で、ハウジング6内には、上側の円板2も充分浸漬でき
る潤滑混合液7が入れてある。
としてポリアルキレングリコール3%を配合したもので
あり、常温で、回転数1000rpmで、負荷応力13
82N(141kgf)で試験した。試験結果を表1と
図1〜2に示す。
鋼)、4%Cr鋼、及び高炭素マルテンサイト系ステン
レス鋼(SUS440C鋼)を選んで、同様の試験を行
った。
C〕1.9以下の鋼球では10%寿命が短く、〔%C
r〕/〔%C〕2.0以上とすることによりポリアルキ
レングリコールによる潤滑条件下であつても、寿命を向
上できることが判る。
じなかった残り鋼球について、鋼中の水素分析をした。
水素分析は、LECO社製の水素分析装置(DH−10
3型)により、鋼球全体を減圧容器中で1100℃に加
熱して水素を拡散放出させ、その水素量を測定して行っ
た。寿命試験前の鋼球の鋼中水素濃度〔H〕は、全ての
鋼種について0.3〜0.4ppmの範囲にあるが、寿
命試験後では、表1及び図2に示すように、〔%Cr〕
/〔%C〕1.9以下の鋼球は、鋼中水素濃度〔H〕が
高く、〔%Cr〕/〔%C〕2.0以上とすることによ
り〔H〕が低いままであることが判る。このように〔%
Cr〕/〔%C〕1.9以下の鋼球の特異性の剥離は、
水素脆性に起因するものと考えられる。
剥離面は、図5の軸受鋼SUJ2(98.3hで剥離し
た鋼球)の断面組織写真に示すように、剥離部は特異な
凹凸のある破壊面を示し(同図(A))、未剥離部の写
真(図中(B))から、既に表面から50〜150μm
程度の深い部分で表面に沿った亀裂とこの亀裂から更に
分岐して深部に向かう亀裂が認められ、このような亀裂
面から表層部が急速に剥離していくことが判る。そし
て、上記の鋼中水素濃度〔H〕の挙動に対応して、この
亀裂が水素脆化によるものと推定される。これに対し
て、〔%Cr〕/〔%C〕2.0以上の鋼球は、水素脆
化を抑制することができ、通常の疲労剥離を示してい
た。
た鋼種により、上述の転動試験機の下側の固定用の円板
1を作製し、鋼球にはSUS440C鋼の鋼球12個を
使用して、円板によるスラスト軸受の軌道輪を想定した
寿命試験を行った。その結果を表2にまとめた。寿命試
験の他の条件は、実施例1と同じである。
の試験結果と同様に、〔%Cr〕/〔%C〕2.0以上
確保したものは、特異性剥離も観察されず、疲労寿命に
顕著な改善が認められた。
は、少なくとも該転動体が、1.6〜2.0重量%Cr
を含有し、〔%Cr〕/〔%C〕が2.0以上の合金鋼
により形成されているから、冷媒としてのヒドロフルオ
ロカーボン類とこの冷媒に可溶な潤滑剤との混合潤滑下
で使用されても、水素脆化による特異性剥離を防止し
て、優れた長寿命を発現し、軸受の信頼性の向上に有用
である。また、軸受自体の酸化皮膜処理を必要としない
など材料・熱処理コストの上昇を招くことなく、しか
も、コンプレッサー側に潤滑剤の変更を必要としないな
どの優れた効果を奏するのである。
C〕と転がり疲労寿命との関係を示す図。
C〕と〔H〕との関係を示す図。
組織を示す光学顕微鏡写真(腐食:ナイタール)(A,
B)と剥離した鋼球の模式図(C)。
面金属組織を示す光学顕微鏡写真(腐食:ナイタール)
(A,B)。
Claims (2)
- 【請求項1】 内外の軌道輪とこれら軌道輪の間に介装
される転動体とから成り、冷媒としてのヒドロフルオロ
カーボン類とこの冷媒に可溶な潤滑剤との混合潤滑下で
使用されるコンプレッサー用の転がり軸受において、 少なくとも該転動体が、Crを1.6〜2.0重量%含
有し、且つCr含有量とC含有量との重量%で示した比
〔%Cr〕/〔%C〕が2.0より大きい組成の合金鋼
により形成されていることを特徴とするコンプレッサー
用の転がり軸受。 - 【請求項2】 上記合金鋼が、C0.6〜0.8重量%
を含有する請求項1記載の転がり軸受。
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---|---|---|---|
JP33845194A JP3911616B2 (ja) | 1994-12-27 | 1994-12-27 | コンプレッサー用の転がり軸受 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP33845194A JP3911616B2 (ja) | 1994-12-27 | 1994-12-27 | コンプレッサー用の転がり軸受 |
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Publication Number | Publication Date |
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JPH08177864A true JPH08177864A (ja) | 1996-07-12 |
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Family
ID=18318285
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP33845194A Expired - Fee Related JP3911616B2 (ja) | 1994-12-27 | 1994-12-27 | コンプレッサー用の転がり軸受 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3911616B2 (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP1312817A2 (en) | 2001-11-15 | 2003-05-21 | Nissan Motor Co., Ltd. | Rotary member and production process |
EP1312818A2 (en) | 2001-11-15 | 2003-05-21 | Nissan Motor Company, Limited | Rolling bearing |
JP2003227520A (ja) * | 2001-11-27 | 2003-08-15 | Nippon Parkerizing Co Ltd | 回転部材およびその製造方法 |
US6962441B2 (en) | 2001-11-27 | 2005-11-08 | Nissan Motor Co., Ltd. | Rotary member and production process |
-
1994
- 1994-12-27 JP JP33845194A patent/JP3911616B2/ja not_active Expired - Fee Related
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EP1312818A2 (en) | 2001-11-15 | 2003-05-21 | Nissan Motor Company, Limited | Rolling bearing |
US7070335B2 (en) | 2001-11-15 | 2006-07-04 | Nissan Motor Co., Ltd. | Rolling bearing |
JP2003227520A (ja) * | 2001-11-27 | 2003-08-15 | Nippon Parkerizing Co Ltd | 回転部材およびその製造方法 |
US6962441B2 (en) | 2001-11-27 | 2005-11-08 | Nissan Motor Co., Ltd. | Rotary member and production process |
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