JP2003301849A - 針状ころ軸受 - Google Patents

針状ころ軸受

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JP2003301849A
JP2003301849A JP2002108286A JP2002108286A JP2003301849A JP 2003301849 A JP2003301849 A JP 2003301849A JP 2002108286 A JP2002108286 A JP 2002108286A JP 2002108286 A JP2002108286 A JP 2002108286A JP 2003301849 A JP2003301849 A JP 2003301849A
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needle roller
roller bearing
nitrogen
needle
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Kenji Yamamura
賢二 山村
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 エアコン用コンプレッサ等のような希薄な潤
滑環境下で使用されても長寿命な針状ころ軸受を提供す
る。 【解決手段】 軌道面1aを有する内輪1と、軌道面2
aを有する外輪2と、両軌道面1a,2aの間に転動自
在に配設された複数の針状ころ3と、を備える針状ころ
軸受において、両軌道面1a,2aを、窒素濃度が0.
1質量%以上である合金鋼で構成し、針状ころ3を、ク
ロムの含有量が8〜18質量%で、炭素及び窒素の合計
の含有量が0.5〜1.2質量%である合金鋼で構成し
た。

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は針状ころ軸受に係
り、特に、エアコンディショナー(以降はエアコンと記
す)用コンプレッサ等のような希薄な潤滑環境下で使用
されても長寿命な針状ころ軸受に関する。 【0002】 【従来の技術】エアコン用コンプレッサ等においては、
地球温暖化防止等の環境保護の観点から、HCFC13
4a等の代替フロンが冷媒として使用されている。この
代替フロンは、従来のCFC12(クロロフルオロカー
ボン)等と比較して自己潤滑性が乏しいため、ポリアル
キレングリコール(PAG)が潤滑油として添加されて
いる。 【0003】しかしながら、冷媒中の潤滑油量を多くす
ると冷却性能が低下するので、PAGは極微量しか添加
することはできない。このため、コンプレッサに使用さ
れる軸受は希薄な潤滑環境で駆動されることになるの
で、摩耗や表面疲労型の剥離が発生するおそれがある。
潤滑油の種類を変えて潤滑性能を向上させることも考え
られるが、冷媒との相溶性を考慮すると選択肢は限定さ
れる。また、冷却性能を考慮すると、潤滑油の量を増や
すことも困難である。 【0004】このような背景から、内輪,外輪,及び転
動体の少なくとも一つに浸炭窒化処理を施して潤滑性を
向上させた転がり軸受が、特開平8−166014号公
報に開示されている。また、特開平11−6521号公
報に記載の浸硫処理を適用することが検討されている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】近年、自動車の低燃費
化の要求がますます強まっており、エアコンの高効率化
の要求も強まっている。そのため、コンプレッサの圧力
上昇に伴って軸受に負荷される荷重が増大したり、発熱
による温度の上昇が生じたりする。また、エアコン用コ
ンプレッサの使用環境は、周囲の温度が高くなるなど年
々悪化してきているので、潤滑条件も厳しくなってい
る。 【0006】その結果、エアコン用コンプレッサに使用
される針状ころ軸受には差動滑りによる摩耗が生じやす
くなり、摩耗の少ない純転がり部に応力が集中して剥離
につながり、寿命が不十分となるという問題があった。
そこで、本発明は、上記のような従来の針状ころ軸受が
有する問題点を解決し、エアコン用コンプレッサ等のよ
うな希薄な潤滑環境下で使用されても長寿命な針状ころ
軸受を提供することを課題とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発
明の針状ころ軸受は、外周面に軌道面を有する内輪又は
軸と、内周面に軌道面を有する外輪と、前記両軌道面の
間に転動自在に配設された複数の針状ころと、を備える
針状ころ軸受において、前記両軌道面の少なくとも一方
は、窒素濃度が0.1質量%以上である合金鋼で構成さ
れており、前記針状ころは、クロムの含有量が8〜18
質量%で、炭素及び窒素の合計の含有量が0.5〜1.
2質量%である合金鋼で構成されていることを特徴とす
る。 【0008】針状ころ軸受の長寿命化のためには、損傷
の根本原因である摩耗を抑制することが重要であり、耐
摩耗性を向上させるためには鋼にクロムを多量に含有さ
せることが有効である。本発明者らが鋭意検討した結
果、クロムを多量に含有させると鋼の表面に強固な酸化
膜(不動態膜)が形成されるため、金属接触による相手
材との凝着が弱まり相手材の摩耗を抑える効果が得られ
ることが分かった。そして、この効果は、相手材の表面
の窒素濃度が0.1質量%以上である場合に顕著である
ことが分かった。 【0009】このような効果を利用することを目的とし
て、クロムを多量に含有する合金鋼で針状ころ軸受の内
輪及び外輪を構成すると、例えばスラスト形の針状ころ
軸受の場合は、板材を製造しプレス成形する必要がある
ので、製造コストが高くなってしまうという問題が生じ
る。しかし、クロムを多量に含有する合金鋼で針状ころ
を構成すれば、針状ころは単純な形状であるので加工に
おいて大きな問題はない。そして、従来行っていた浸炭
窒化処理や表面処理等が省略できるので、製造コストの
上昇を最小限に抑えることができる。 【0010】以下に、本発明の針状ころ軸受における前
記各数値の臨界的意義について説明する。 〔針状ころを構成する合金鋼のクロムの含有量:8〜1
8質量%〕クロムは焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗性を向
上させるのに有効な元素であり、基地を強化して転動疲
労寿命を向上させる。また、微細で高硬度な炭化物を形
成して耐摩耗性を向上させる働きも有する。さらに、強
固で安定な酸化物層である不動態膜を表面に形成して耐
食性を向上させると同時に、相手材との凝着力を低減す
ることから、相手材の摩耗を低減する効果がある。この
ような効果を十分に発揮させるためには、クロムの含有
量は8質量%以上とする必要がある。しかし、多量に添
加しても上記効果が飽和してしまうばかりか、粗大な炭
化物が形成され加工性が低下しコストの上昇を招くの
で、クロムの含有量は18質量%以下とする必要があ
る。 【0011】〔針状ころを構成する合金鋼の炭素及び窒
素の合計の含有量:0.5〜1.2質量%〕転動疲労寿
命を確保するために必要なビッカース硬さHv650以
上の表面硬さを得るためには、焼入れ時のマルテンサイ
ト変態に必要な侵入型元素である炭素及び/又は窒素を
合計で0.5質量%以上含有させる必要がある。しかし
ながら、あまり多量に含有させると、粒径20μmを超
える粗大な共晶炭化物が生成して転動疲労寿命が低下す
るおそれがあるため、炭素及び窒素の合計の含有量は
1.2質量%を上限とする必要がある。ただし、粗大な
共晶炭化物の析出を防止するためには、炭素及び窒素の
合計の含有量は0.7質量%を上限とすることがより好
ましい。 【0012】また、炭化物の粒径は、熱処理生産性の点
から平均値で3μm以下とすることが好ましく、1.5
μm以下とすることがより好ましい。さらに、窒素は粗
大な炭化物の析出を防止するのに有効な元素であり、積
極的に添加することが好ましいが、0.2質量%を超え
ると製鋼時にブローホールと呼ばれる欠陥の発生を防止
するための加圧が必要となり、コストが非常に高くな
る。よって、窒素の含有量は0.2質量%以下とするこ
とが好ましい。上記のような問題がより生じにくくする
ためには、窒素の含有量は0.1〜0.15質量%とす
ることがより好ましい。したがって、炭素の好ましい含
有量の下限値は0.35質量%となる。 【0013】さらに、針状ころを構成する合金鋼には、
他の合金元素を含有させてもよい。例えば、ケイ素は製
鋼時の脱酸剤として必要な元素であり、さらに、焼戻し
軟化抵抗性を向上させて高温における寿命を向上させる
効果があるので、0.15質量%以上含有させることが
好ましい。ただし、多量に含有させても寿命向上効果が
飽和するばかりでなく、鋼の被削性が低下してコストの
上昇を招くため、1.5質量%以下とすることが好まし
い。 【0014】また、マンガンは製鋼時の脱酸剤として必
要な元素であり、さらに、焼入れ性の向上に有効である
ので、0.15質量%以上含有させることが好ましい。
ただし、あまり多量に含有させると非金属介在物が多く
なってかえって寿命が低下するおそれがあり、また、鋼
の鍛造性,被削性等の機械加工性が低下するため、1.
5質量%以下とすることが好ましい。 【0015】さらに、耐摩耗性の向上に有効なモリブデ
ン,バナジウム,タングステンはコストが許す限り添加
することができる。その他、リン,イオウ,ニッケル,
銅,チタン,酸素等の不可避の不純物元素を含有する場
合があるが、転動疲労寿命に有害な酸化物系の非金属介
在物を低減するためには、酸素の含有量は15ppm以
下とすることが好ましく、10ppm以下とすることが
さらに好ましい。 【0016】〔軌道面を構成する合金鋼の窒素濃度:
0.1質量%以上〕前述したように、窒素は、転がり軸
受として必要な硬さを得るために有効な元素である。ま
た、焼戻し軟化抵抗性を向上させ、高温における硬さを
向上させる効果も有するため、耐熱性及び耐摩耗性の向
上に有効な元素である。相手材(針状ころ)に高クロム
鋼を用いた場合、軌道面を構成する合金鋼の窒素濃度を
0.1質量%以上とすると、耐摩耗性の向上効果が著し
い。 【0017】スラスト形の針状ころ軸受の場合は、軌道
輪はSPCC等の板材をプレス成形する必要があるの
で、プレス成形後に浸炭窒化処理することにより窒素を
添加する。このとき、転がり軸受として必要な転動疲労
寿命を確保するために必要なビッカース硬さHv650
以上の表面硬さを得るためには、炭素及び窒素の合計の
含有量が0.5質量%以上となるように浸炭窒化処理を
施す必要がある。しかしながら、あまり多量に添加する
と、粗大な共晶炭化物が生成して転動疲労寿命が低下す
るおそれがあるため、炭素及び窒素の合計の含有量は
1.2質量%を上限とする必要がある。 【0018】なお、軌道輪の素材はSPCCに限定され
るものではなく、軌道面を構成する合金鋼の窒素濃度が
0.1質量%以上であれば、他の素材であっても差し支
えない。また、十分な寿命を確保するためには、軌道面
の表面から0.02mmの深さまでの部分の窒素濃度を
0.1質量%以上とすることが好ましい。 【0019】 【発明の実施の形態】本発明に係る針状ころ軸受の実施
の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。まず、
表1に示すような組成を有する種々の鋼について、耐摩
耗性を評価した。なお、鋼種Hは、JIS鋼種SUJ2
である。 【0020】 【表1】【0021】耐摩耗性の評価は、図1に示すような二円
筒式の摩耗試験により行った。すなわち、2つのリング
状の試験片をそれぞれ別々の軸に装着し、上方から荷重
を負荷しながら2つの試験片を互いに接触状態で逆方向
に回転させて、両試験片の摩耗量の平均値を求めた。試
験条件は以下の通りである。 【0022】荷重(面圧):1800MPa 回転速度 :10min-1 滑り率 :10% 潤滑剤 :ポリアルキレングリコール(PAG) 試験時間 :20時間 試験温度 :室温 試験片は、鋼材を所定の寸法に旋削加工した後に、82
0〜1050℃で焼入れを行い、続いて160〜200
℃で焼戻しを行ってから、さらに仕上げ研削を行うこと
により製造した。 【0023】摩耗試験の結果を表1に併せて示す。な
お、表1中の摩耗量は、SUJ2である鋼種Hの摩耗量
を1とした場合の相対値で示してある。表1から分かる
ように、鋼種A〜Eは、鋼種Hと比べて摩耗量が約1/
5以下と小さく、希薄な潤滑環境下においても耐摩耗性
が非常に優れていた。それに対して、鋼種F及び鋼種G
は、鋼種Hよりも摩耗量は少ないものの、クロムの含有
量又は炭素と窒素との合計の含有量が低いため、耐摩耗
性の向上効果が十分ではなかった。 【0024】次に、表1に記載の8種の鋼材で針状ころ
を製造し、これを用いて図2に示すようなスラスト形針
状ころ軸受を作製した。すなわち、この針状ころ軸受
は、図示しない軸に固定される内輪1と図示しないハウ
ジングに固定される外輪2とを備えており、該両輪1,
2の対向する軌道面1a,2aの間に転動自在に配設さ
れた複数の針状ころ3が保持器4によって保持されてい
る。 【0025】両輪1,2はSPCC材で構成され、浸炭
窒化処理に続いて焼入れ(820〜830℃で0.5〜
1時間)及び焼戻し(160〜200℃で1〜2時間)
が施されており、軌道面1a,2aの窒素濃度は0.2
質量%とされている。このようなスラスト形針状ころ軸
受について、PAGを潤滑剤として添加したHCFC1
34a雰囲気中で摩耗試験を行った。試験条件は、面圧
2050MPa、回転速度1000min-1、試験時間
200時間である。試験後の軌道面の最大摩耗深さを、
図3のグラフに示す。なお、図3のグラフ中の最大摩耗
深さは、SUJ2である鋼種Hで針状ころが構成された
針状ころ軸受の軌道面の最大摩耗深さを100とした場
合の相対値で示してある。 【0026】図3のグラフから、クロムの含有量が8質
量%以上である鋼材で針状ころが構成されている場合
は、浸炭窒化処理が施された軌道面の最大摩耗深さが小
さいこと分かる。また、クロムの含有量を12質量%以
上に増やしても、その効果は飽和していることが分か
る。次に、鋼種B及びHで針状ころが構成された針状こ
ろ軸受について、浸炭窒化処理の条件を調整することに
より軌道面の窒素濃度を種々変更して、各スラスト形針
状ころ軸受の摩耗試験を上記と同様に行った。なお、軌
道面の炭素濃度は0.7〜1.1質量%である。 【0027】試験結果を図4のグラフに示す。なお、図
4のグラフ中の最大摩耗深さは、鋼種Hで針状ころが構
成され、軌道面の窒素濃度が0質量%である針状ころ軸
受の軌道面の最大摩耗深さを100とした場合の相対値
で示してある。鋼種Hで針状ころが構成されている場合
は、相手材である軌道輪の軌道面の窒素濃度が高くなっ
ても、軌道面の耐摩耗性が向上した効果のみしか得られ
ていない。しかしながら、鋼種Bで針状ころが構成され
ている場合は、鋼種Hの場合と比較して最大摩耗深さが
非常に小さくなっていることに加えて、軌道面の窒素濃
度が低い場合は、その効果が比較的小さいことが分か
る。 【0028】図3及び図4のグラフから、針状ころを構
成する鋼材のクロムの含有量を8質量%以上とし、軌道
面の窒素濃度を0.1質量%以上とすれば、耐摩耗性の
優れた針状ころ軸受が得られることが分かる。なお、本
実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明
は本実施形態に限定されるものではない。例えば、本実
施形態においてはスラスト形の針状ころ軸受を例示して
説明したが、本発明はラジアル形の針状ころ軸受にも適
用可能であることは言うまでもない。 【0029】 【発明の効果】以上説明したように、本発明の針状ころ
軸受は、エアコン用コンプレッサ等のような希薄な潤滑
環境下で使用されても長寿命である。
【図面の簡単な説明】 【図1】二円筒摩耗試験の試験方法を説明する概略図で
ある。 【図2】本発明の一実施形態であるスラスト針状ころ軸
受の構成を示す部分断面図である。 【図3】針状ころを構成する鋼材のクロムの含有量と軌
道面の最大摩耗深さとの相関を示すグラフである。 【図4】軌道面の窒素濃度と軌道面の最大摩耗深さとの
相関を示すグラフである。 【符号の説明】 1 内輪 2 外輪 1a,2a 軌道面 3 針状ころ

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】 外周面に軌道面を有する内輪又は軸と、
    内周面に軌道面を有する外輪と、前記両軌道面の間に転
    動自在に配設された複数の針状ころと、を備える針状こ
    ろ軸受において、 前記両軌道面の少なくとも一方は、窒素濃度が0.1質
    量%以上である合金鋼で構成されており、 前記針状ころは、クロムの含有量が8〜18質量%で、
    炭素及び窒素の合計の含有量が0.5〜1.2質量%で
    ある合金鋼で構成されていることを特徴とする針状ころ
    軸受。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005299771A (ja) * 2004-04-09 2005-10-27 Nsk Ltd 転がり軸受
JP2007046114A (ja) * 2005-08-10 2007-02-22 Ntn Corp 転がり軸受
US8535457B2 (en) 2007-05-17 2013-09-17 Ntn Corporation Rolling member, rolling bearing and process for manufacturing rolling member
US10781857B2 (en) 2016-11-08 2020-09-22 Carrier Corporation Hybrid bearings

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