JPH0817328A - ヒューズの電流遮断方法およびその構造 - Google Patents

ヒューズの電流遮断方法およびその構造

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Abstract

(57)【要約】 【目的】 外形寸法が一定の金属チップを用いて異なっ
た溶断特性を実現するヒューズの電流遮断方法およびそ
の構造を提供する。 【構成】 可溶金属導体より成るヒューズ1の可溶体部
4には、中空部3Aを有する低融点金属製の金属チップ
3が包着部2により固定されている。この金属チップ3
の外径は一定であり、中空部3Aを形成する貫通孔の径
を変えることにより、中空部3Aの容積が調整できる。
これにより、可溶体部4の溶断特性を調整することがで
きるものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車等の電気回路の
保護に用いられるヒューズの電流遮断方法およびその構
造に関し、詳しくは過渡電流発生時に的確な回路遮断を
行なう溶断特性の調整可能なヒューズの電流遮断方法お
よびその構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、自動車のモータ負荷回路のような
通電率200%程度までの過渡電流が流れる電気回路の
保護用ヒューズとして、ヒュージブルリンク(F/L)
が用いられている。このヒュージブルリンクは、デッド
ショート時のような通電率200%以上のバースト電流
が発生した時に回路保護のために有効に機能するものが
求められている。即ち、通電電流が定格値の2倍(通電
率200%)を境界値に、それより大電流領域をデッド
ショート域、低い領域をレアショート域と区分すると、
こうしたデッドショート域およびレアショート域にそれ
ぞれ有効な特性を兼備したヒューズが求められている。
【0003】更に詳述すると、デッドショート時のよう
な大きい過渡電流が流れた場合には、負荷回路の破損、
或いは負荷回路に接続されたリード線の溶断又は発煙等
が起こる前に確実に回路が遮断される必要がある。ま
た、例えば自動車ドアのパワーウインド開閉時の際、約
10秒程度の間に通電率200%以下の中電流域の電流
であるモータロック電流が流れるが、このモータロック
電流が頻繁に流れても容易に回路が遮断されないように
する必要がある。
【0004】図7に示すように上記ヒューズとして、特
開平5ー166453号公報等で開示されている遅断特
性を有するヒューズが提案されている。このヒューズ3
0は、対向して設けられた一対の接続部34と、該接続
部34の中間部に設けられ、金属チップ31を包着部3
2により固定した可溶体部33とから構成されている。
この金属チップ31は低融点金属を押し出し成形後に裁
断した線材であり、可溶体部33は板状の可溶金属導体
からなるものである。
【0005】上記可溶体部33の材質は、母材が導電線
と同じ銅合金であり、断面積を小さくして大電流の流れ
た際に瞬断するものである。一方、金属チップ31の材
質は、銅よりも融点の低い錫であり、通電による温度上
昇で溶融して可溶体部33内に拡散して合金相を形成す
る。よって、中乃至小電流域では母材の銅合金より抵抗
の高い合金相で溶断することになる。このように、錫或
いは錫を主成分とする合金等の低融点金属を有するヒュ
ーズは、錫の質量により通電電流に対する溶断時間が変
動する。従来、この種のヒューズは、中実の金属チップ
を用いてそのチップの寸法を変えることで溶断特性の調
整を行なっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記ヒ
ューズの可溶体部への金属チップの組付工程において
は、チップを所定長さに切断してから加締めているた
め、錫の寸法管理が容易ではない。また、錫の外寸法の
違いにより複数種類の加締め型を準備しなければならな
いという問題がある。
【0007】本発明の目的は、上記課題を解決するため
になされたものであり、外形寸法が一定の金属チップを
用いて異なった溶断特性を実現するヒューズの電流遮断
方法およびその構造を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は、導
電性金属で形成された溶断部を持つ可溶体と、該可溶体
に発生する熱を吸収するための低融点金属からなる金属
チップと、該金属チップを保持するための包着部とから
構成されるヒューズの電流遮断方法において、可溶体に
中空部を有する一定外径の金属チップを包着させ、該金
属チップの中空部の容積を調整することで可溶体の溶断
特性が調整されることを特徴とするヒューズの電流遮断
方法によって達成することができる。
【0009】また本発明の上記目的は、導電性金属で形
成された溶断部を持つ可溶体と、該可溶体に発生する熱
を吸収するための低融点金属からなる金属チップと、該
金属チップを保持するための包着部とから構成されるヒ
ューズ構造において、溶断特性を調整できる中空部を有
する一定外径の金属チップが、可溶体に包着されている
ことを特徴とするヒューズ構造によって達成することが
できる。また、前記中空部が金属チップの中心軸上に形
成された貫通孔であり、該貫通孔の径を変えることによ
り金属チップの溶断特性を調整できることにより、より
効果的に達成することができる。
【0010】
【作用】本発明に係わるヒューズの電流遮断方法および
その構造においては、可溶体に中空部を有する一定外径
の金属チップを包着させ、該金属チップの中空部の容積
を調整することで可溶体の溶断特性が調整される。ま
た、溶断特性を調整できる中空部を有する一定外径の金
属チップが、可溶体に包着されている。この中空部が金
属チップの中心軸上に形成された貫通孔であり、該貫通
孔の径を変えることにより金属チップの溶断特性が調整
できる。
【0011】これにより、大電流領域においては、低融
点金属である金属チップが吸熱体として作用するので、
中空部を形成する貫通孔の直径が大きく金属チップの質
量が少さい場合、溶断時間が短縮される(クイックブロ
ー特性)。また、中電流領域乃至小電流領域において
は、中空部を形成する貫通孔の直径が大きく金属チップ
の質量が少さい場合、低融点金属である金属チップの高
融点金属である可溶体への拡散により十分な合金相が形
成されるのが遅延され、可溶体の溶断時間が延長される
(スローブロー特性)。
【0012】
【実施例】以下、本発明のヒューズの電流遮断方法およ
びその構造の一実施例を図1乃至図6に基づいて詳細に
説明する。図1は本発明に係るヒューズの一実施例を示
す分解斜視図、図2は図1における要部の拡大部分斜視
図、図3は金属チップの一実施例を示す斜視図、図4は
金属チップの別の実施例を示す斜視図である。図1に示
すように本実施例に係るヒューズ1は、可溶金属から成
る比較的幅狭の断面を有して直線状に伸びる可溶体部4
が形成されている。この可溶体部4は、低融点金属から
成り中空部を備えた金属チップ3を固定した包着部2と
放熱板5とから構成されている。このように構成された
ヒューズ1は、樹脂製のハウジング10に収容され、透
明なカバー9で蓋がなされる。このカバー9を通して、
ヒューズ1の状態を確認することができる。
【0013】図2に示すように包着部2は、両側から円
筒状に巻かれ、中空部3Aを有する金属チップ3を包着
している。これは、後述するように平板状に開かれた包
着部2の中央部に金属チップ3が載せられ、加締め加工
によって包着するものである。この加締めによって金属
チップ3と包着部2は接触面2Aを形成し、この接触面
を経て電流が金属チップ3に流れ、熱もこの接触面2A
を介して伝導される。また、図中では放熱板5を備えた
構成を示しているが、放熱板5を省略した構成も可能で
ある。
【0014】図3に示すような本実施例の金属チップ3
は、低融点金属である錫又は錫合金から成る中空円筒状
の金属片である。この金属チップ3の外寸法は一定の直
径Dを有しており、軸方向の中心軸を中心に形成された
中空部3Aは比較的小さい直径X1である。よって、中
空部3Aの形成に伴う除去量は比較的少なく、金属チッ
プ3の質量は比較的大きいものである。
【0015】また、図4に示すような本実施例の金属チ
ップ3は、その外寸法は同じく一定の直径Dを有してお
り、中空部3Bは比較的大きい直径X2である。よっ
て、中空部3Bの形成に伴う除去量は比較的多く、金属
チップ3の質量は比較的小さいものである。なお、本実
施例の金属チップは円筒状のものを示したが、本発明に
係るヒューズの金属チップは、この形状に限定するもの
ではなく、三角柱や四角柱を含む多角柱などを適用して
も良い。また、中空部も円筒状以外の形状を適用するこ
とができる。
【0016】図5に示すように本実施例に係る可溶体部
4の展開図においては、可溶体部4が金属チップを包着
する包着部2を備えているが、包着される金属チップの
外寸法が一定であるため、包着部2の長さLを一定にす
ることができる。よって、包着加工時の加締め型につい
ても1種類だけ準備すれば良く、複数の加締め型を準備
する必要がないので安価に製造することができる。
【0017】図6に示すように本実施例に係るヒューズ
の溶断特性は、例えば通電電流の通電率200%を境界
値にすると、それより高い領域が大電流領域Z2、それ
より低い領域を中乃至小電流領域Z1として区分してい
る。この大電流領域Z2においては、低融点金属からな
る金属チップが吸熱体として作用するので、特性曲線2
3のように中空部X2の直径が大きい場合、金属チップ
の質量が少なくなり溶断時間が短縮される。即ち、中空
部の容積を大きくすることによって、クイックブロー特
性を短縮することができる。
【0018】また、中乃至小電流領域Z1においては、
中空部の直径を大きくすると、金属チップの質量が少な
くなり、低融点金属である金属チップの高融点金属であ
る可溶体部への拡散による合金相の形成が遅延される。
これにより可溶体部の溶断時間が延長される。即ち、中
空部の容積を大きくすることによってスローブロー特性
を延長することができる。
【0019】このように本実施例に係るヒューズによれ
ば、中空部を有するが故えに、従来の中実の低融点金属
チップを包着させた特性曲線21に比べて、溶断特性を
改善することができる。また、中空部の容積の調整が中
空部を形成する貫通孔の径を変えることにより行われ、
容易に溶断特性を調整することができる。即ち、中乃至
小電流領域Z1においては、中空部の直径を大きくして
金属チップ質量を減少させることによって、可溶体部の
溶断時間が延長してスローブロー特性を調整することが
できる。また、大電流領域Z2においては、金属チップ
質量を調整することによって、可溶体部の溶断時間が短
縮してクイックブロー特性を調整することができる。
【0020】
【発明の効果】以上説明したように本発明に係るヒュー
ズの電流遮断方法およびその構造においては、可溶体に
中空部を有する一定外径の金属チップを包着させ、該金
属チップの中空部の容積を調整することで可溶体の溶断
特性が調整される。また、溶断特性を調整できる中空部
を有する一定外径の金属チップが、可溶体に包着されて
いる。この中空部が金属チップの中心軸上に形成された
貫通孔であり、該貫通孔の径を変えることにより金属チ
ップの溶断特性が調整できる。
【0021】これにより、確実に大通電電流領域(デッ
ドショート域)で溶断時間を短くでき、更に中乃至小電
流領域(レアショート域)で溶断時間を長くすることが
できる。よって、安全で高機能のヒューズを実現するこ
とができる。更に、金属チップの外径寸法を一定にでき
るので、1種類の加締め型だけでヒューズ加工をするこ
とができ、加工コストの削減が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るヒューズの一実施例を示す分解斜
視図である。
【図2】図1における金属チップ部分の部分斜視図であ
る。
【図3】小径の中空部を備えた金属チップの斜視図であ
る。
【図4】大径の中空部を備えた金属チップの斜視図であ
る。
【図5】ヒューズの可溶体部の展開図である。
【図6】ヒューズの溶断特性図である。
【図7】従来のヒューズの斜視図である。
【符号の説明】
1 ヒューズ 2 包着部 2A 接触面 3 金属チップ 3A,3B 中空部 4 可溶体部 9 カバー 10 ハウジング X1,X2 中空部径 D 金属チップ外径

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電性金属で形成された溶断部を持つ可
    溶体と、該可溶体に発生する熱を吸収するための低融点
    金属からなる金属チップと、該金属チップを保持するた
    めの包着部とから構成されるヒューズの電流遮断方法に
    おいて、 前記可溶体に中空部を有する一定外径の金属チップを包
    着させ、該金属チップの中空部の容積を変えることで前
    記可溶体の溶断特性が調整されることを特徴とするヒュ
    ーズの電流遮断方法。
  2. 【請求項2】 導電性金属で形成された溶断部を持つ可
    溶体と、該可溶体に発生する熱を吸収するための低融点
    金属からなる金属チップと、該金属チップを保持するた
    めの包着部とから構成されるヒューズ構造において、 溶断特性を調整できる中空部を有する一定外径の金属チ
    ップが、前記可溶体に包着されていることを特徴とする
    ヒューズ構造。
  3. 【請求項3】 前記中空部が、前記金属チップの中心軸
    上に形成された貫通孔である請求項2記載のヒューズ構
    造。
  4. 【請求項4】 前記金属チップの溶断特性が、前記貫通
    孔の径を変えることにより調整できる請求項2及び3記
    載のヒューズ構造。
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