JPH08162709A - 半導体パルスレーザ装置及び半導体パルスレーザの発振方法 - Google Patents

半導体パルスレーザ装置及び半導体パルスレーザの発振方法

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JPH08162709A
JPH08162709A JP30492994A JP30492994A JPH08162709A JP H08162709 A JPH08162709 A JP H08162709A JP 30492994 A JP30492994 A JP 30492994A JP 30492994 A JP30492994 A JP 30492994A JP H08162709 A JPH08162709 A JP H08162709A
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pulse laser
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semiconductor
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JP30492994A
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English (en)
Inventor
Yasuhiro Matsui
康浩 松井
Shin Arataira
慎 荒平
Hiroshi Ogawa
洋 小川
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Oki Electric Industry Co Ltd
Original Assignee
Oki Electric Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 低い変調電流で、鋭いパルスを発振すること
ができる半導体パルスレーザ装置の提供。 【構成】 p型クラッド層14とn型クラッド層10と
にはさまれたストライプ状の活性層12を具えている。
このn型クラッド層10はn−InP基板10からな
り、一方、p型クラッド層14はp−InP層14から
なる。この活性層12は、それぞれ厚さ60Åの障壁層
26と井戸層28とを交互に積層した多重量子井戸構造
を具えている。この多重量子井戸構造では、10層の井
戸層を具えており、p型クラッド層よりから、順次に第
1井戸層〜第10井戸層とする。そして、光閉じ込め効
果を高めるために、活性層と、p型およびn型クラッド
層との間にはそれぞれSCH層30を介在させている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、光計測や光通信に用
いて好適な超短光パルス列を発生する半導体パルスレー
ザ装置(以下、単にレーザとも略称する)に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の半導体パルスレーザの技術の一例
が、文献:「OQE80−12」に開示されている。こ
の文献に開示の技術によれば、利得スイッチ法によっ
て、半導体レーザから短パルスを発生させている。利得
スイッチ法では、電流パルス(変位電流)で半導体レー
ザを駆動するので、簡単な構成で短パルスを発生させる
ことができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
半導体パルスレーザ装置においては、パルスピークが高
く且つ半値幅の狭いパルス(以下、鋭いパルスと称す
る)を発振させるためには、閾値電流の数十倍という非
常に大きな振幅の変調電流を流す必要があった。
【0004】このため、低い変調電流で、鋭いパルスを
発振することができる半導体パルスレーザ装置の実現が
望まれていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
<第1の発明>この出願に係る第1の発明の半導体パル
スレーザ装置によれば、p型クラッド層とn型クラッド
層とにはさまれた活性層を具え、該活性層は、障壁層と
井戸層とを交互に積層した多重量子井戸構造を具えてな
る半導体パルスレーザ装置において、活性層は、定常状
態において、p型クラッド層寄りの井戸層のキャリア密
度が閾値よりも過剰となり、一方、n型クラッド層寄り
の井戸層のキャリア密度が閾値よりも不足となる、この
障壁層とこの井戸層との価電子帯バンド不連続量および
井戸層の数を具えてなることを特徴とする。
【0006】また、好ましくは、第1の発明の半導体パ
ルスレーザ装置において、この障壁層とこの井戸層との
価電子帯バンド不連続量を、200meV〜400me
Vの範囲とし、且つ、この井戸層を少なくとも10層具
えてなる、ことが望ましい。
【0007】<第2の発明>また、この出願に係る第2
の発明の半導体パルスレーザの発振方法によれば、p型
クラッド層とn型クラッド層とに挟まれた活性層を具
え、この活性層として、障壁層と井戸層とが交互に積層
された多重量子井戸構造を具えてなる半導体パルスレー
ザを発振させるにあたり、活性層中のキャリアの移動を
抑制することにより、変調電流を印加してから発振開始
までの時間を延長させることによって、主にp型クラッ
ド層寄りの井戸層に閾値よりも過剰なキャリア注入を行
ってから、半導体パルスレーザを発振させることを特徴
とする。
【0008】
【作用】この出願に係る第1の発明の半導体パルスレー
ザ装置によれば、活性層の井戸層として、p型クラッド
層寄りの井戸層のキャリア密度が閾値よりも過剰とな
り、一方、n型クラッド層寄りの井戸層のキャリア密度
が閾値よりも不足となる様に 、この障壁層とこの井戸
層との価電子帯バンド不連続量および井戸層の数を具え
ている。
【0009】そして、井戸のバンド連続量を大きく(以
下、「井戸を深く」とも称する)し、且つ、井戸層の数
を増やすことにより、第2発明の半導体パルスレーザの
発振方法として、活性層中のキャリアとしてのホールの
移動を抑制することができる。その結果、活性層中の各
井戸層のキャリア濃度が不均一となる。具体的には、変
調電流の印加直後および印加後充分に時間が経過した後
の定常状態において、p型クラッド層寄りの井戸層で
は、キャリア濃度が閾値に比べて過剰となり、一方、n
型クラッド層寄りの井戸層では、キャリア濃度が閾値に
比べて不足した状態となる。ここで閾値とは、全ての井
戸層のキャリア濃度が均一な場合に、レーザの発振が開
始するキャリア濃度またはそのキャリア濃度となる注入
電流を指す。
【0010】ところで、変調電流を印加した直後は、p
型クラッド層寄りの井戸層(以下、p−井戸層)ほどキ
ャリア濃度が急激に上昇する。一方、n型クラッド層寄
りの井戸層(n−井戸層)のキャリア濃度はほとんど上
昇しない。その結果、レーザを発振させるために、p−
井戸層のキャリア濃度の過剰分がn−井戸層のキャリア
濃度の不足分に打ち勝つのに必要な量のキャリアを活性
層に注入する必要がある。このため、レーザに変調電流
を印加してからレーザの発振が開始するまでに、従来の
半導体パルスレーザよりも長い時間がかかる。その結
果、レーザの発振が開始する時点で、p−井戸層では、
過剰のキャリアが溜め込まれてキャリア密度が高くなっ
ている。
【0011】そして、キャリアの注入量が増大してレー
ザの発振が開始すると、溜め込まれたキャリアが一気に
光となり、さらに、n−井戸層が発生した光を吸収して
フォトキャリアを生じて媒質が透明となる。その結果、
活性層で発生する光密度は急激に増大する。そして、発
生する光パルスのピークパワーが大きいために誘導放出
によって消費されるフォトキャリアの数も多くなる。そ
の結果、光パルスの立ち下がりに要する時間が短くな
る。このように、レーザの発振により鋭いパルスを発生
させることができる。
【0012】前述のように、この発明のレーザおよび発
振方法によれば、変調電流の印加後、従来よりも長い時
間がかかって、pー井戸層に過剰のキャリアが溜め込ま
れてから発振が開始する。従って、小さい変調電流であ
っても、pー井戸層に過剰のキャリアを溜め込むことが
できる。即ち、従来よりも低い変調電流で鋭いパルスを
得ることができる。
【0013】例えば、従来の半導体パルスレーザ装置に
おいては、鋭いパルスを得るために、閾値の数十倍もの
大きさの変調電流を注入する必要があったが、この発明
の半導体パルスレーザ装置および発振方法では、閾値の
僅か2倍程度の変調電流で、鋭いパルスを得ることがで
きる。尚、この発明のレーザの閾値そのものは従来のレ
ーザの閾値とほぼ同じ値にすることができる。
【0014】次に、過剰のキャリアを溜め込むことによ
り、鋭いパルスが発生する理由について説明する。
【0015】レーザに電流を注入した場合の、光出力の
振舞いは、下記の(1)式および(2)式の方程式で表
すことができる。
【0016】 dN/dt=J/ed−N/ts−gS・・・(1) dS/dt=(g−1/tp)S+N/ts・・・(2) 但し、(1)式の左辺(dN/dt)は、キャリア密度
の時間変化率を表す。また、(1)式の右辺の第1項
(J/ed)は、半導体レーザに注入された電流による
キャリア密度の増加を表し、第2項の(−N/ts)
は、自然放出再結合による減少を表し、第3項の(−g
S)は、誘導放出によるキャリア密度の減少部を表して
いる。
【0017】また、(2)式の左辺の(dS/dt)
は、フォトン密度の時間変化率を表す。また、(2)式
の右辺の第1項(gS)は、誘導放出によるフォトン密
度の増加を表し、第2項の(−(1/ts)S)は、レ
ーザ共振器のもつ光損失によるフォトン密度の減少を表
し、第3項の(N/ts)は、自然放出結合により発生
した光が誘導放出光に取り込まれることによるフォトン
の減少を表している。
【0018】尚、上記(1)式および(2)式を用いた
解析で用いられるパラメータの典型的な値は、例えば、
自然放出寿命(ts)=2ns程度、フォトン寿命(t
p)=10ps程度である。また、利得係数(g)=5
0〜100cm-1程度でレーザ発振が実現する。この利
得係数(g)は、注入キャリア密度に比例して増大す
る。
【0019】そこで、発振までに主にp−井戸層に、過
剰なキャリアを溜め込むことにより、利得係数gの値を
従来よりも大きくすると、(2)式から明らかなよう
に、フォトン密度の増加が急激になる。そして、フォト
ン密度の増加が急激である程、発光パルスのパルスピー
クが高くなり、また、パルスピークが高くなると、パル
スの立ち下がり方が急激となって、鋭いパルスが得られ
る。
【0020】従って、利得スイッチ法による半導体レー
ザの構成の簡便さを損なうことなく、変調電流を従来よ
りも大幅に低減することができる。
【0021】次に、井戸を深くし、且つ、井戸層の数を
増やすと、キャリアの移動が抑制される理由について説
明する。
【0022】先ず、活性層に注入されたキャリアは、通
常、最初SCH層に辿り着き、このSCH層を拡散して
井戸層まで移動する。尚、SCH層は、活性層の光閉じ
込め効果を高めるために設けたものであり、本発明にお
いては必須の構成成分ではない。
【0023】そして、SCH層を拡散したキャリアは、
電子−LOフォノン散乱等の散乱過程を経て井戸層に捕
獲される。この過程に要する時間(τcap )の値は、お
よそ0.3〜1psと計算されている。この値は、SC
H層中のキャリアの移動時間に対して充分に速いのでキ
ャリアはほぼ100%井戸に捕獲されているとして扱う
ことができる。
【0024】井戸層に捕獲されたキャリアは、次に、ト
ンネル効果によって隣の井戸層に移動するか(この移動
に要する時間をτtun と表す。)、もしくは、熱的に励
起されて障壁層に放出される(熱放出時間をτtherとす
る。)と考えられる。障壁層に放出されたキャリアは、
拡散によって隣の井戸層まで移動して(この移動に要す
る時間をτbar とする。)井戸層に捕獲される。よっ
て、キャリアの移動過程をを総合すると、隣の井戸層に
キャリアが移動するのに要する時間(τ)は、下記の
(3)式で表される。
【0025】 τ=1/(τther+τbar +τcap )+1/τtun ・・・(3) ところで、キャリアには、一般に電子とホールが含まれ
る。電子は、有効質量が小さいため、井戸層からのしみ
出しが大きくなり、互いに隣接する井戸層との結合が強
くなる。その結果、τtun の値が0.2〜0.4ps程
度の小さな値となる。このため、活性層のポテンシャル
の形状によらず、活性層中の電子の分布は、比較的均一
になり易い。一方、ホールは、有効質量が大きいため、
τtun は、数ナノ秒程度と大きな値となる。このため、
ホールの井戸層間の移動に要する時間τは、主に熱放出
時間(τther)で決まる。このτtherは、井戸層の障壁
層に対するポテンシャルの深さ(障壁層とこの井戸層と
の価電子帯バンド不連続量)をV、ボルツマン定数を
k、温度をTと表すと、下記の(4)式で表される。
【0026】τther=exp(V/kT)・・・(4) 上記の(4)式から明らかなように、ポテンシャルの深
さVを深くすることによって、キャリア(ホール)移動
を抑制することができる。
【0027】このポテンシャルの深さが、例えば、20
0meV以上の場合は、実施例の欄で後述するように、
ホールの移動を充分に抑制することができる。尚、ホー
ルの深さ(荷電子帯バンド不連続量)が最も大きくなる
組み合わせは、InPとInGaAsとをそれぞれ障壁
層および井戸層として用いた場合であって、このときの
ポテンシャルの深さは400meV程度である。従っ
て、ポテンシャルの深さは200〜400meVである
ことが望ましい。
【0028】一方、井戸層の数が少なくては、ポテンシ
ャルを深くしても、活性層中の井戸層のキャリア密度を
不均一にすることが困難である。そこで、例えば、実施
例で後述するように、ポテンシャルの深さが200me
Vのとき、井戸層の数が10層以上ならば、キャリア密
度を不均一にできる。従って、井戸層の数は10層以上
であることが望ましい。
【0029】尚、キャリア密度をある程度不均一とする
のに、ポテンシャルの深さが深い場合は、井戸層の数は
少なくて済み、一方、ポテンシャルの深さが浅い場合
は、井戸層の数を多くする必要がある。
【0030】
【実施例】以下、図面を参照して、この出願に係る第1
の発明の半導体パルスレーザ装置および第2の発明の半
導体パルスレーザの発振方法の一例について併せて説明
する。
【0031】図1の(A)は、この実施例の半導体パル
スレーザ装置の一部断面斜視図である。また、図1の
(B)は、活性層のポテンシャル図である。
【0032】図1の(A)に示す半導体パルスレーザ装
置は、p型クラッド層14とn型クラッド層10とには
さまれたストライプ状の活性層12を具えている。この
n型クラッド層10はn−InP基板10からなり、一
方、p型クラッド層14はp−InP層14からなる。
また、p型クラッド層14には、グレーティング16が
設けてある。また、活性層12の両側には、活性層12
に沿って素子分離用溝18が設けてある。また、p−I
nP層14上には、p+ −InGaAsPのコンタクト
20層を介して第1主電極22が設けてある。また、n
−InP基板10の裏面側には第2主電極24が設けて
ある。尚、図1の(A)では、活性層12の量子井戸構
造の図示を省略する。
【0033】次に、図1の(B)に活性層12の量子井
戸構造のポテンシャル図を示す。この活性層12は、そ
れぞれ厚さ60Åの障壁層26と井戸層28とを交互に
積層した多重量子井戸構造を具えている。この多重量子
井戸構造では、10層の井戸層を具えており、p型クラ
ッド層よりから、順次に第1井戸層〜第10井戸層とす
る。そして、光閉じ込め効果を高めるために、活性層
と、p型およびn型クラッド層との間にはそれぞれSC
H層30を介在させている。そして、この実施例では、
障壁層とこの井戸層との価電子帯バンド不連続量を20
0meVとする。
【0034】次に、図2のグラフを参照して、この実施
例の半導体パルスレーザ装置の動作について説明する。
図2の横軸は、時刻t=0に変調電流を印加してからの
経過時間(ps)を表し、左側の縦軸は、フォトン密度
(×1015cm-3)を表し、右側の縦軸は、正規化キャ
リア密度(閾値=1)を表している。図2のグラフ中の
曲線Ca は、活性層中のフォトン密度の時間変化の計算
結果を表し、また、図2のグラフ中の曲線Ia 〜Xa
は、それぞれ第1井戸層〜第10井戸層のキャリア密度
の時間変化の計算結果を表している。尚、ここでは、破
線や一点鎖線等も含めて曲線と称する。
【0035】先ず、時刻t=0に、変調電流として、閾
値の2倍の大きさのステップ状パルスを印加する。変調
電流を印加すると、主に、p型クラッド層よりの第1井
戸層〜第4井戸層では、時間の経過と共にキャリア濃度
が上昇していく。一方、n型クラッド層寄りの第5井戸
層〜第10井戸層には、キャリアの移動が抑制されてキ
ャリアの輸送時間が大きいために、p型クラッド層から
キャリアが到達しない。その結果、これらのn型クラッ
ド層よりの井戸層では、変調電流を印加してもキャリア
密度がほとんど上昇しない。このため、これらの井戸層
は、充分なキャリアの注入がされないために、光に対し
て吸収領域(損失となる)として働く。従って、レーザ
発振を開始させるためには、p型クラッド層寄りの第1
井戸層〜第4井戸層に、この損失に打ち勝つだけのキャ
リアを注入する必要がある。
【0036】例えば、図2のグラフでは、発振開始時に
は、第1井戸層には、曲線Ia に示すように、第1井戸
層には閾値の4倍のキャリア密度となっている。また、
曲線IIa および曲線III a に示すように、第2井戸層お
よび第3井戸層は、それぞれ閾値の3倍および2倍のキ
ャリア密度となっている。
【0037】この閾値に対して過剰なキャリア密度とな
るまでには、変調電流を印加してから時間がかかる。こ
のため、従来の半導体パルスレーザに比べて発振開始ま
での時間が余計に係る。そして、時間をかけて、過剰な
キャリアを井戸層に溜め込むことができるので、変調電
流の値が、従来の半導体パルスレーザの場合よりも小さ
くとも、鋭いパルスを発生させることができる。
【0038】例えば、図2のグラフでは、変調電流を印
加してから550ps後に漸くパルスがピークとなる。
そして、一旦発振が開始されると、上述の(2)式の
(g−1/tp)の符号が負から正に転じるので、誘導
放出((g−1/tp)S)により光出力が急激に増加
し始める。次に、光出力の増加は共振器内のキャリア密
度を急激に消耗させるので、(キャリア密度に比例す
る)利得係数が急激に減少して光出力も減少する。その
結果、鋭いパルスを発生させることができる。ここで
は、パルスのピーク値は、約14×1015cm-3もあ
り、その半値幅は20psである。
【0039】このように、活性層中のキャリアの移動を
抑制することにより、変調電流を印加してから発振開始
までの時間を延長させることによって、主にp型クラッ
ド層寄りの井戸層に閾値よりも過剰なキャリア注入を行
ってから、半導体パルスレーザを発振させることができ
る。
【0040】尚、図2では、パルス発生後に引き続くレ
ーザの発振によるフォトン密度変化等についても示して
あるが、通常のパルス発生の場合は、パルスピークが発
振した後に、半導体レーザへの電流注入を停止する。
【0041】<比較例>次に、比較のため、図3のグラ
フを参照して、従来の半導体パルスレーザ装置の動作に
ついて説明する。ここでは、比較のため、閾値の2倍の
変調電流を印加した場合の動作を示す。また、比較例で
は、ポテンシャルの深さが50meVの井戸層を10層
具えた場合の計算結果を示す。
【0042】図3の横軸は、時刻t=0に変調電流を印
加してからの経過時間(ps)を表し、左側の縦軸は、
フォトン密度(×1015cm-3)を表し、右側の縦軸
は、正規化キャリア密度(閾値=1)を表している。図
3のグラフ中の曲線Cb は、活性層中のフォトン密度の
時間変化を表し、また、図3のグラフ中の曲線Ib 〜X
b は、それぞれ第1井戸層〜第10井戸層のキャリア密
度の時間変化を表している。尚、ここでは、破線や一点
鎖線等も含めて曲線と称する。
【0043】図3のグラフ中の曲線Cb では、変調電流
印加後僅か150ps後にパルスのピークが現れてい
る。また、曲線Ib に示すように、第1井戸層のキャリ
ア密度は、閾値の1.08倍に達していない。また、曲
線Ib と曲線Xb とを比べてみても、いずれもキャリア
密度の差がほとんど生じていない。そして、発生させた
パルスのピーク値は、1.2×1015cm-3にすぎず、
上述した実施例のピークの1/10程度である。また、
その半値幅は60psであり、本発明の半値幅の3倍程
度である。このため、従来の半導体パルスレーザにおい
ては、鋭いパルスを得るために、閾値の数十倍という大
きな変調電流を印加する必要がある。
【0044】この点、本発明の半導体パルスレーザ装置
および半導体パルスレーザの発振方法によれば、小さな
変調電流(例えば、閾値の2倍程度)で鋭いパルスを発
生させることができる。
【0045】次に、図4のグラフに、発振後充分い時間
が経過した後の各井戸層のキャリア密度の計算値を示
す。図4のグラフの横軸は、井戸層の番号を表し、縦軸
は、正規化キャリア(ホール)密度を表している。グラ
フ中の折れ線αは、上記実施例の半導体パルスレーザ装
置の各井戸層の正規化キャリア密度のプロット(白丸)
を結んだものである。また、折れ線βは、上記比較例の
プロット(黒丸)を結んだものである。(ポテンシャル
の深さが200meVの場合の)折れ線αでは、各井戸
層のキャリア密度が不均一となっている。一方、(ポテ
ンシャルの深さが50meVの場合の)折れ線βでは、
各井戸層のキャリア密度がほとんど均一となっているこ
とが分かる。
【0046】上述した実施例では、この発明を、特定の
材料を使用し、特定の条件で構成した例について説明し
たが、この発明は、多くの変更および変形を行うことが
できる。例えば、上述した実施例では、井戸層の深さを
どれも同一としたが、この発明では、井戸層の深さは必
ずしも同一である必要はない。
【0047】
【発明の効果】この出願に係る第1の発明の半導体パル
スレーザ装置によれば、活性層の井戸層として、p型ク
ラッド層寄りの井戸層のキャリア密度が閾値よりも過剰
となり、一方、n型クラッド層寄りの井戸層のキャリア
密度が閾値よりも不足となる様に、この障壁層とこの井
戸層との価電子帯バンド不連続量および井戸層の数を具
えている。
【0048】そして、井戸のバンド連続量を大きく(以
下、「井戸を深く」とも称する)し、且つ、井戸層の数
を増やすことにより、第2発明の半導体パルスレーザの
発振方法として、活性層中のキャリアとしてのホールの
移動を抑制することができる。その結果、活性層中の各
井戸層のキャリア濃度が不均一となる。具体的には、変
調電流の印加直後および印加後充分に時間が経過した後
の定常状態において、p型クラッド層寄りの井戸層で
は、キャリア濃度が閾値に比べて過剰となり、一方、n
型クラッド層寄りの井戸層では、キャリア濃度が閾値に
比べて不足した状態となる。
【0049】そして、この発明のレーザ装置および発振
方法によれば、変調電流の印加後、従来よりも長い時間
がかかって、pー井戸層に過剰のキャリアが溜め込まれ
てから発振が開始する。従って、小さい変調電流であっ
ても、pー井戸層に過剰のキャリアを溜め込むことがで
きる。即ち、従来よりも低い変調電流で鋭いパルスを得
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は、実施例の半導体パルスレーザ装置の
一部断面斜視図であり、(B)は、活性層のポテンシャ
ル図である。
【図2】実施例の半導体パルスレーザ装置の動作の説明
に供するグラフである。
【図3】比較例の半導体パルスレーザ装置の動作の説明
に供するグラフである。
【図4】半導体パルスレーザ装置が定常状態のときの活
性層中のキャリアの分布を示すグラフである。
【符号の説明】
10:n型クラッド層 12:活性層 14:p型クラッド層 16:グレーティング 18:素子分離用溝 20:コンタクト層 22:第1主電極 24:第2主電極 26:障壁層 28:井戸層 30:SCH層

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 p型クラッド層とn型クラッド層とには
    さまれた活性層を具え、該活性層は、障壁層と井戸層と
    を交互に積層した多重量子井戸構造を具えてなる半導体
    パルスレーザ装置において、 前記活性層は、定常状態において、p型クラッド層寄り
    の井戸層のキャリア密度が閾値よりも過剰となり、一
    方、n型クラッド層寄りの井戸層のキャリア密度が閾値
    よりも不足となる、該障壁層と該井戸層との価電子帯バ
    ンド不連続量および井戸層の数を具えてなることを特徴
    とする半導体パルスレーザ装置。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の半導体パルスレーザ装
    置において、 該障壁層と該井戸層との価電子帯バンド不連続量を、2
    00meV〜400meVの範囲とし、且つ、 該井戸層を少なくとも10層具えてなる、ことを特徴と
    する半導体パルスレーザ装置。
  3. 【請求項3】 p型クラッド層とn型クラッド層とに挟
    まれた活性層を具え、該活性層として、障壁層と井戸層
    とが交互に積層された多重量子井戸構造を具えてなる半
    導体パルスレーザを発振させるにあたり、 活性層中のキャリアの移動を抑制することにより、変調
    電流を印加してから発振開始までの時間を延長させるこ
    とによって、主に前記p型クラッド層寄りの井戸層に閾
    値よりも過剰なキャリア注入を行ってから、半導体パル
    スレーザを発振させることを特徴とする半導体パルスレ
    ーザの発振方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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