JPH08158148A - セルロースドープおよびその調製方法 - Google Patents

セルロースドープおよびその調製方法

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JPH08158148A
JPH08158148A JP29112594A JP29112594A JPH08158148A JP H08158148 A JPH08158148 A JP H08158148A JP 29112594 A JP29112594 A JP 29112594A JP 29112594 A JP29112594 A JP 29112594A JP H08158148 A JPH08158148 A JP H08158148A
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cellulose
dope
sodium thiocyanate
solution
aqueous solution
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JP29112594A
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English (en)
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Masatoshi Saito
政利 斉藤
Yoshihiko Shimatani
芳彦 嶌谷
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 安定で、分子量低下が少なく、優れた力学物
性を有するセルロース成形体となし得るセルロースドー
プの提供。 【構成】 粘度平均分子量200以上の水和セルロース
あるいは無定型セルロースを50〜70重量%のチオシ
アン酸ナトリウム塩水溶液に溶解してなるセルロースド
ープ、および粘度平均分子量200以上の水和セルロー
スおよび無定型セルロースを50〜70重量%のチオシ
アン酸ナトリウム水溶液に、100℃未満の温度で浸漬
した後または直接に100〜130℃に加熱して溶解さ
せることを特徴とするセルロースドープの調製方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、優れた特性を有するセ
ルロース成形品となし得るセルロースドープおよびその
調製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】セルロースは強固な分子間、分子内水素
結合を有するため、従来、銅アンモニアに代表される金
属錯体、4級アミン、強酸等のごく限られた媒体を用い
たときのみ溶解できるとされてきた。事実、現在でも、
セルロース繊維、セルロースフィルムの工業的製造方法
として、銅安法、ビスコース法が広く利用されている。
しかしながら、これら従来の製造方法は、水の消費量が
多い、重金属を回収しなければならない、エネルギー消
費量が多いなどの欠点を有している。特にビスコース法
においては、この方法の製造原理上発生を免れ得ない二
硫化炭素の回収や、硫化水素などの有害ガスの回収に関
する設備投資は膨大なものになっている。
【0003】近年、かかる欠点を解消するためにセルロ
ースの新しい有機溶媒系溶媒の探索が行われるようにな
り、その結果、セルロース成形体の工業的方法も提案さ
れるようになってきた。例えば、特開昭53−7012
1号公報には、セルロースをジメチルスルホキシド/ホ
ルムアルデヒド系溶媒に溶解し、得られるドープをアン
モニアを含有する気体雰囲気中に押し出す方法が開示さ
れている。しかしながらこの方法は、ドープから直接成
形体を得る場合、高沸点溶媒であるジメチルスルホキシ
ドを気化させて除去するために多大のエネルギーを要す
ること、また溶媒回収に複雑なプロセスを要しコスト高
になること、さらに溶媒の気化が人体へ影響を与える恐
れが懸念されること、および溶媒自体が分解する可能性
があることなど多くの致命的とも言える欠点を有するこ
とが判明してきた。
【0004】またセルロースをジメチルアセトアミド/
塩化リチウム系溶媒に溶解する方法も種々検討されては
いるが、この系統の溶媒では、塩化リチウムを高濃度で
使用しなければならず、そのため実用的には高価な溶媒
となり、工業化には至っていない。さらに、セルロース
の溶媒としては、古くから上記以外に濃厚塩水溶液が知
られている。この濃厚塩水溶液は、セルロースを溶解さ
せるときに、その分解温度まで昇温させて溶解すること
を避け得るならば、気化したガスによる人体への影響を
前記有機溶媒よりは少なく押さえ得ることが期待でき
る。例えば、Turback等(A.F.Turbac
k et al.,“Solvent Spun Ra
yon Modified Cellulose Fi
bersand Dcrivatives”,A.F.
Turback ed.,ACSSymposium
Series,58,ASC Washington,
D.C.,1977,Chap 2.,p15)は、塩
化亜鉛、チオシアネート、アイオダイド、ブロマイドな
どの濃厚塩水溶液がセルロースを膨潤、または溶解する
と報告している。これら塩のうちコスト的にみて工業的
に利用できる可能性が高いのは塩化亜鉛、及びチオシア
ン酸塩である。しかしながら、塩化亜鉛水溶液はセルロ
ースを溶解できる80℃以上の高温領域ではpH1以下
の強酸であるために、溶解しているセルロース分子鎖が
大幅に分解を起こしてしまい、例えこのようなドープか
らセルロース成形体を得たとしても高い物性、特に高い
力学物性を備えた成形体を得ることは期待できない。
【0005】一方、POLYMER HANDBOOK
(THIRD EDITION,SECTION V,
SOLVENT FOR CELLULOSE,V/1
30〜131)には、セルロースの溶媒としてのチオシ
アン酸塩に関する多数の報告がある。例えば、H.Er
bring等(Kolloid Z.,84,24(1
938))は、チオシアン酸カルシウム、アルミニウム
およびナトリウムの水溶液は天然セルロースを溶解する
と報告している。また、Warwicker(J.O.
Warwicker,“Cellulose and
Cellulose Dcrivatives,Par
tIV,Chap.XIII.Sec.H”,N.M.
Bikalcs and L.Segai ed.,W
iley−Interscience,New Yor
k,N.Y.,1971,p348)によると、チオシ
アン酸カルシウム水溶液以外でセルロースを溶解するも
のはリチウム、マグネシウム、マンガン、セシウムのチ
オシアン酸塩水溶液であり、ナトリウム、カリウム、ア
ンモニウム、亜鉛、アルミニウムのチオシアン酸塩水溶
液はそれら単独ではセルロースを溶解しないとしてい
る。このように、古いセルロースの溶解に関する知見の
一部には、溶解の程度を示す指標が不明確であったり、
膨潤と溶解を同一視するなどの矛盾が散見される。本発
明者等は、安定な中性塩であり、かつ低毒性のチオシア
ン酸ナトリウムに着目し、前出のH.Erbring等
が報告した溶解条件(150℃、10時間、加圧下)に
基づいて、チオシアン酸ナトリウム水溶液に天然セルロ
ース(木材バルプ)を溶解させることを試みた。すなわ
ち、セルロース濃度4重量%のチオシアン酸ナトリウム
水溶液を調製し、前記溶解温度である150℃にこの溶
液を加圧下に昇温させたが、150℃に達した直後では
原料セルロースの粒子は分散したままで残っていること
が確認され、さらに数時間経つと透明な液体となること
を確認できた。しかし、このようにして得られた溶液
は、高分子溶液特有の粘凋な溶液ではなく、極めて低粘
度な溶液にすぎなかった。この事実は、チオシアン酸ナ
トリウム水溶液が天然セルロースを溶解し得たとして
も、成形に適するドープを調製することは極めて難しい
ことを示唆している。
【0006】以上から明らかなように、セルロース成形
体の前記工業的製造方法の有する問題点および前記セル
ロースの有機溶媒系溶媒の有する問題点を解消し得て、
なおかつ、優れたセルロース成形体が得られるようなセ
ルロースドープはまだ得られていないのである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】すなわち本発明の課題
は、化学的に安定であって、セルロースの直接溶解能力
に優れ、その上毒性が極めて低く低廉であるセルロース
の溶媒とセルロースとからなり、優れた機械的特性を有
するセルロース成形体となし得るセルロースドープの提
供にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、前記課題
を達成するために、従来既知の前記溶媒を含む多くの溶
媒を用いてセルロースの溶解方法と溶解挙動およびその
成形性等について鋭意検討を重ねた結果、意外な事実を
見出す事ができ、本発明を完成させるに至ったのであ
る。
【0009】すなわち、本発明は、粘度平均重合度20
0以上の水和セルロースまたは無定型セルロースとチオ
シアン酸ナトリウム濃度が重量分率で50%以上70%
以下のチオシアン酸ナトリウム水溶液とからなるセルロ
ースドープ、である。また本発明は、粘度平均重合度2
00以上の水和セルロースまたは無定型セルロースをチ
オシアン酸ナトリウム濃度が重量分率で50%以上70
%以下のチオシアン酸ナトリウムに、100℃未満の温
度で浸漬した後100℃から130℃に加熱して溶解さ
せるか、または直接に100℃から130℃に加熱して
溶解させることを特徴とするセルロースドープの調製方
法、である。以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
【0010】本発明では、セルロースの溶媒としてチオ
シアン酸塩水溶液を用いる。本発明者等の検討によれ
ば、既述のように、チオシアン酸ナトリウムの濃厚塩水
溶液を用いて天然セルロースをそのままの状態で溶解さ
せることは極めて困難であった。しかしながら、このよ
うな事実を確認した後も本発明者等は、チオシアン酸ナ
トリウムこそが前記本発明の課題を達成するのに最も望
ましい溶媒の一つであるとの信念のもとに検討を続け
た。その結果、天然セルロースの固体構造を特定の固体
構造となすことで本発明の課題を達成しうるセルロース
ドープが得られることを見出したのである。
【0011】本発明における特定の固体構造を有するセ
ルロースというのは水和セルロースまたは無定型セルロ
ースであり、これらのセルロースは次のようにして得ら
れる。即ち、天然セルロースをセルロースの溶媒に溶解
して、その後再生して得ることができる。また別の方法
は、天然セルロースをアルカリ金属の水酸化物の水溶液
や液体アンモニア、アミン類等のセルロースの膨潤剤に
浸漬して得てもよく、さらにセルロースの溶媒を用い
て、セルロースを溶解させない条件で浸漬して得てもよ
い。より具体的に説明すると、たとえば、天然セルロー
スを水酸化ナトリウム水溶液に浸漬(いわゆる、アルカ
リ処理)させたり、ジメチルアセトアミド/塩化リチウ
ムやチオシアン酸カルシウムまたは銅アンモニア水溶液
等の溶媒中に溶解しない条件で浸漬したセルロースを用
いればよい。この時、アルカリ処理された天然セルロー
スを水で回収すると水和セルロースとなすことができ
る。このように、水和セルロースを調製する方法として
は、もとのセルロースと相互作用する媒体中でセルロー
スを処理した後、水で再生あるいは洗浄する方法が好ま
しい。また、無定型セルロースを調製するには、溶媒に
天然セルロースを溶解した後、ケトン類やアルコール類
などの有機溶媒中で再生する方法が好ましく用いられる
が、この限りではない。また、セルロースの膨潤剤は、
例えば、Warwicker等(Warwicker,
R.Jeffries,R.L.Colbran,R.
N.Robinson,Shirley Instit
ute Pamphlet,No.93,”A Rev
iew of the Literature on
the Effect of Caustic Sod
aand Other Swelling Agent
s on the Fine Structure o
f Cotton Shirley Institut
e,Didsbury,Manchester,196
6)が報告している膨潤剤を用いてもよい。このように
して得られる特定の固体構造を有するセルロースは本発
明では次のように規定される。すなわち、水和セルロー
スとは、いわゆるセルロースII型(CELL−II)
の結晶型を持つセルロースであり、また、無定型セルロ
ースとは、X線回析法で、セルロース結晶成分由来の結
晶性のピークが検出されず、回折角(2θ)約20de
g.付近にブロードなピークのみを持つセルロースであ
ると規定される。
【0012】本発明のセルロースドープに使用するセル
ロースの粘度平均重合度(DPv)は少なくとも200
以上である必要がある。DPvが200未満の場合に
は、力学物性に優れたセルロース成形体となすことが難
しく、本発明の課題を達成できない。セルロースのDP
vは200〜1000にある事が好ましい。本発明のチ
オシアン酸ナトリウム水溶液はチオシアン酸ナトリウム
が50〜70重量%の濃度の水溶液である必要がある。
チオシアン酸ナトリウム濃度が70重量%を越えると、
セルロースが溶解していることは認められるものの、そ
の溶解度は小さくなるため、セルロース濃度が低い場合
には均一な溶液となし得るが、セルロース濃度の高い均
一に溶解したドープを得ることは難しいため本発明では
用いられない。また、50重量%(以下、単に%と略記
する)未満のチオシアン酸ナトリウム水溶液では、セル
ロースの溶解能力が著しく低下するために、同様に本発
明では用いられない。
【0013】また、本発明のチオシアン酸ナトリウム水
溶液の溶解能力は、使用するセルロースのDPvに依存
するが、DPvが400〜600程度であれば約20%
の濃度までセルロースを溶解させることが可能である。
本発明のセルロースドープは、DPvが200である時
には、少なくとも2%のセルロースが溶解されているこ
とが好ましい。セルロース濃度が2%未満の場合には、
得られる成形体の伸度が低下し、かつ曲げや挫屈に対し
て極めて耐久性に乏しい成形体となる可能性が大である
ために好ましくない。もちろん、天然セルロース原料と
してコットンリントのような極めて高重合度(難溶性で
正確なDPvは決定できない)のセルロースから本発明
の水和セルロースまたは無定型セルロースを調製した場
合には、セルロース濃度が例え1%であっても非常に粘
凋なドープを得ることができる。しかしながら、本発明
のセルロースドープは経済的に強靱なフィルムや繊維等
の成形体を得ることを主目的とするのであり、そのため
には、本発明に用いるセルロースの本発明の下限重合度
(DPv=200)以上で、少なくとも2%以上のセル
ロースを溶解していることが好ましい。2%未満の場合
には、得られる成形体の力学物性の低下に加えて、その
ドープが低粘性であるため、ドープの成形性が極端に低
下することが認められるので、この点からも好ましくは
ない。ただし、本発明のセルロースドープを強靱な成形
体に成形するため以外の目的で、例えばセルロース多孔
体やセルロース粒子状物を得る目的で、セルロースドー
プを調製する場合には、この限りではない。
【0014】次に、本発明のセルロースドープの調製方
法を述べる。チオシアン酸ナトリウム水溶液でセルロー
スを溶解させる温度は、本発明では、100℃から13
0℃である必要がある。130℃より高温にするとチオ
シアン酸ナトリウムおよびセルロースの分解が促進さ
れ、溶液の着色やセルロースの分子量の低下が認められ
るようになり、これを避けるために130℃以下とす
る。溶解温度が130℃以下であれば、セルロースドー
プの着色も少なく、セルロースの重合度低下を少なくす
ることができる。また、溶解可能温度(100℃)未満
でセルロースをチオシアン酸ナトリウム水溶液に混合し
て、セルロースにチオシアン酸ナトリウムが充分に含浸
された後に本発明の溶解温度範囲の温度に昇温する溶解
方法も本発明には含まれる。また、溶解を窒素などの不
活性ガス中で行うことも好ましく用いられる。
【0015】このようにして得られたセルロースドープ
は100℃から130℃で長時間保存しても溶液の安定
な状態を維持することができる。しかし、得られたセル
ロースドープを100℃未満の温度にすると、ドープは
流動性を失いゲル化する。このゲルは再度100℃以上
に加熱すると完全に融解し、再びセルロースドープとな
し得る。
【0016】従って、本発明のセルロースドープの用途
次第によっては、このようにセルロースドープをゲル化
させた後再融解させて使用する方法も好ましく用い得
る。なおドープのゲル化を遅延するために塩化リチウム
や塩化カルシウムなどの塩類や、他のチオシアン酸塩な
どを微量添加することも望ましく用いられる。本発明の
セルロースドープは、重合度の低下が極めて少なく、重
合度の高いセルロースドープを調製することが可能であ
る。そのため本発明のドープから成形された成形品は力
学物性、特に、強度、ヤング率などにおいて著しく優れ
ることが期待できるのである。また本発明によるセルロ
ースドープは、水、及び工業的に大量に生産されている
チオシアン酸ナトリウムを溶媒とするために経済性にも
優れ、さらにドープから成形体を得る成形工程において
も有害ガスの発散、重金属等の飛散などが全くなく、極
めて安全にセルロース成形体を得ることができるのであ
る。
【0017】さらに本発明によるセルロースドープから
セルロース成形体を得る方法は、ドープを所望の状態に
吐出後、冷却することによって一部または全部をゲル化
させた後、水または希薄なチオシアン酸ナトリウム水溶
液、あるいは低級アルコール類、ケトン類などの有機溶
媒中に導いて成形することにより強靱な成形体となすこ
とができる。特に、水を凝固剤として用いるならば、チ
オシアン酸ナトリウムの回収も水の蒸留のみを行えばよ
く、コスト、安全性の面で、従来の有機溶媒あるいは金
属錯体化合物を溶媒とするセルロース成形体の製造方法
に比べ極めて有利である。
【0018】
【実施例】次に、実施例により、本発明をさらに具体的
に説明する。
【0019】
【実施例1】銅アンモニア法で得られた再生セルロース
繊維(ベンベルグ<登録商標>、旭化成工業(株)製、
DPv=760、水和セルロース)を精錬した後、細か
く裁断したセルロース試料5.0mgずつを45.0,
47.0,48.0,49.0,50.0,51.0,
52.0,53.0,55.0重量%のチオシアン酸ナ
トリウム水溶液各20.0mgと混合した9種類の試料
を調製し、示差走査熱量計(DSC、セイコー電子
(株)製DSC200、SUS密閉型セル)により、こ
れらの試料の昇温過程(昇温速度3℃/min)のDS
C測定を行った。その結果、50.0%以上のチオシア
ン酸ナトリウム水溶液を溶媒とした試料には、80℃か
ら115℃(ピーク温度は約100℃)に吸熱ピークが
観察された。50.0%未満の試料では、同ピークは観
察されなかった。同ピークはセルロースの溶解に係るピ
ークであり、50.0%以上の濃度のチオシアン酸ナト
リウム水溶液が溶媒として好適であることが判った。
【0020】
【実施例2】チオシアン酸ナトリウム濃度が、50%か
ら始まり5%の間隔で80%まで増やした計7種類の濃
度のチオシアン酸ナトリウム水溶液を各々入れた密栓付
フラスコを用意し、この各々のフラスコに実施例1と同
じセルロース試料を細かく粉砕したセルロースをセルロ
ース濃度が5%になるように入れた。これらの試料を室
温で1時間静置した後、窒素置換し、シリコンバス中で
110℃まで昇温し、30分間攪拌した。その結果、そ
の濃度が50,55,60,65,70%のチオシアン
酸ナトリウム水溶液は、極めて短時間にセルロースを溶
解し、30分後には、偏光顕微鏡による検鏡でも未溶解
のセルロース固体が殆ど含まれない曳糸性に富む粘凋な
セルロースドープであることが判った。また、濃度が7
5,80%のチオシアン酸ナトリウム水溶液を溶媒にし
た系では、粘凋な曳糸性のある溶液は得られたが、溶液
の表面にざらついた斑のような物が観察された。この溶
液を偏光顕微鏡で検鏡した結果、微量の未溶解のセルロ
ース固体を確認し得た。この未溶解物の量はチオシアン
酸ナトリウムの濃度が高くなるほど顕著であった。
【0021】
【実施例3】実施例1のセルロース試料(DPv=76
0)と、ビスコースレーヨン法で得られた再生セルロー
ス繊維(旭化成工業(株)製、DPv=338、水和セ
ルロース)を精錬して細かく切断した試料の2種類の試
料を用いて、濃度が60重量%のチオシアン酸ナトリウ
ム水溶液を溶媒にして、セルロース濃度が5重量%にな
るように調整し、溶解温度がそれぞれ100,110,
120,130℃で溶解してセルロースドープを得た。
これら8種類のセルロースドープから、それぞれ、溶解
開始から5時間後および20時間後にドープを分取し、
室温の大量の水に入れセルロースを凝固沈澱させた後、
ろ過し、再度大量の熱水で洗浄し、チオシアン酸ナトリ
ウムを完全に除去した。この含水状態の固体状セルロー
スをメタノールおよびアセトンで洗浄/置換し、自然乾
燥した。得られた計16個の乾燥セルロース試料をカド
キセンに室温で溶解し、この希薄溶液の粘度測定を25
℃で行った。Huggins plotから極限粘度数
〔η〕を求め、下式(W.Brown,R.Wikst
rom,Eur.Polym.J.,1,1(196
5)に代入し粘度平均重合度DPvを求めた。
【0022】〔η〕=3.85×10-2DPw0.76(c
3 -1,25℃) また、比較として、DPvが760および338の2つ
のセルロース試料を、60重量%のチオシアン酸ナトリ
ウム水溶液に、セルロース濃度5重量%、溶解温度14
0℃で溶解して2種類のセルロースドープを得た。これ
らのセルロースドープから、それぞれ溶解開始から5時
間および20時間後にドープを分取し、前記と同様の方
法で凝固沈澱・洗浄・乾燥して計4個の乾燥セルロース
試料を調製し、それらの乾燥セルロース試料のDPvを
測定した。同様に比較例として、150℃での溶解実験
を試みた。それらの結果を表1に示す。試料番号1から
8までは本実施例を示す。試料番号9から11は比較例
を示す。表1から、本実施例の溶解温度である130℃
までは、溶解時間5時間では分子量(DPv)低下率が
20%未満であり、溶解時間20時間では約30%であ
り、分子量低下が少ないことが判る。これに対し、溶解
温度140℃では、大幅な重合度低下(溶解時間20時
間では、低下率約60%)がみられ、溶液状態での長時
間時間保存は好ましくないことが判る。また150℃で
は溶液が短時間に黒く着色し成形用ドープとしての使用
に耐えないことを確認し得た。
【0023】
【実施例4】細かく粉砕した重合度(DPv)985の
精製アラスカパルプを、25%の水酸化ナトリウム水溶
液に25℃で1時間浸漬させた後、希塩酸で中和し、次
いで完全に水洗し乾燥させた。乾燥して得られた該セル
ロースはX線結晶学的には水和セルロースであった。室
温で、該セルロースを60%チオシアン酸ナトリウム水
溶液と混合し、セルロース濃度10%の混合物を調製し
た。この混合物を室温で1時間静置した後、窒素置換
し、シリコンバス中で120℃まで昇温し、同温度に保
持したまま1時間攪拌して溶液を得た。この溶液は、粘
凋で、透明で、偏光顕微鏡による検鏡でも未溶解セルロ
ースを含まない溶液であった。
【0024】
【実施例5】細かく粉砕した精製アラスカパルプ(DP
v=985)を20重量倍量の55%チオシアン酸カル
シウム水溶液に80℃で3時間浸漬させた後、大量のイ
オン交換水で、ろ液にチオシアン酸イオンが検出されな
くなるまで完全に水洗し、乾燥させた。乾燥して得られ
た該セルロースはX線結晶学的には水和セルロースであ
った。室温で、該セルロースを60%チオシアン酸ナト
リウム水溶液と混合し、セルロース濃度7%の混合物を
調製した。この混合物を、シリコンバス中で120℃ま
で昇温し、同温度に保持しながら1時間攪拌して溶液を
得た。この溶液は、粘凋で、透明で、偏光顕微鏡による
検鏡でも未溶解セルロースを含まない溶液であった。
【0025】
【実施例6】細かく粉砕した精製アラスカパルプ(DP
v=985)を硫酸で加水分解して得たセルロース(D
Pv=550、CELL−I)を、市販のシュバイツァ
ー試薬を4重量倍量の3%水酸化ナトリウム水溶液で希
釈した液に、15℃で1時間浸漬した。この試料を圧搾
後、大量の等容量倍量の水で希釈したメタノールで洗浄
し、次いで希薄な塩酸/メタノール中で銅を除去した。
さらに銅を除去した試料をメタノールおよびアセトンで
洗浄し自然乾燥した。乾燥して得られた該セルロース
は、X線結晶学的には結晶性のビークが観察されず、回
折角(2θ)約20deg.にブロードなビークを持つ
無定型セルロースであった。室温で、該セルロースを5
7.5%チオシアン酸ナトリウム水溶液と混合し、セル
ロース濃度10%の混合物を調製した。この混合物を、
室温で1時間浸漬処理した後、シリコンバス中で110
℃に昇温し、同温度で30分間攪拌して溶液を得た。こ
の溶液は、透明で、粘凋で、偏光顕微鏡による検鏡でも
未溶解セルロースを含まない溶液であった。
【0026】
【実施例7】実施例4で調製した溶液を、シリンダーか
らノズルまでを120℃に保温したプランジャー型押出
機能を持つ紡糸機に移送し、孔径0.1mmφ、孔数1
5個のノズルから、エァーギャップ(air−gap)
紡糸法により、10℃の空気中に吐出し、10℃のアセ
トン浴中に導き、次いで20℃のアセトン浴中で2.5
倍延伸した後、室温および60℃の水で洗浄し、油剤を
付与した後、100℃の熱ロールで乾燥した。同繊維
は、DPv=913で、単繊度2.5デニール、かつ乾
強度4.6g/d、乾伸度9.8%、乾弾性率182g
/d、湿強度3.2g/d、湿伸度16.5%で極めて
強靱であった。
【0027】
【実施例8】ビスコースレーヨン法で得られた再生セル
ロース繊維(旭化成工業(株)製、DPv=338、水
和セルロース、試料Aとする)、および実施例1のセル
ロース試料を25%硫酸水溶液中で加水分解(40℃、
1.5時間)して得た試料(DPv=189、試料Bと
する)の二つのセルロース試料を、室温で、60%チオ
シアン酸ナトリウム水溶液に、表2に記載のセルロース
濃度で混合し、混合物を調製した。これらの混合物を5
0℃で1時間浸漬した後、110℃に昇温し、3時間溶
解して、計9種類のドープを得た。これらのドープを実
施例5と同じ紡糸機に移送し、孔径0.08mmφ、孔
数15個のノズルを用いて、エアーギャップ(air−
gap)法で、25℃の空気中に吐出した後、エタノー
ル浴(20℃)中に導き、次いで別のエタノール浴(2
0℃)中で1.5倍延伸し、室温および60℃の水で洗
浄した後、油剤を付与した後、乾燥して巻き取った。こ
れらの繊維のドープ組成および物性を表2に示す。試料
番号12から15までは実施例を示し、試料番号16か
ら20までは比較例を示す。本実施例の繊維は、衣料原
綿として実用に耐え得る性能を有しているのに対し、セ
ルロース濃度が2%に満たない試料(試料16、17)
および重合度が200に満たない試料(試料18、1
9、20)は力学物性に乏しいことが判明した。特に、
試料18はセルロース濃度がかなり高いにも関わらず、
強度、弾性率がそれほど大きくなく、かつ伸度が小さ
く、繊維を手で揉むと脆い感触であった。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【発明の効果】本発明のセルロースドープは、化学的に
安定であって、セルロースの直接溶解能力に優れ、その
上毒性が極めて低く低廉であるチオシアン酸ナトリウム
水溶液をセルロースの溶媒としているためその工業的な
利用価値は極めて高い。さらに本発明のセルロースドー
プの調製方法によると、極めて簡略なプロセスで、安定
で、分子量低下が少なく、優れた機械的特性を有するセ
ルロース成形体となし得るセルロースドープを提供でき
る。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粘度平均重合度200以上の水和セルロ
    ースまたは無定型セルロースとチオシアン酸ナトリウム
    濃度が重量分率で50%以上70%以下のチオシアン酸
    ナトリウム水溶液とからなるセルロースドープ。
  2. 【請求項2】 平均重合度200以上の水和セルロース
    または無定型セルロースをチオシアン酸ナトリウム濃度
    が重量分率で50%以上70%以下のチオシアン酸ナト
    リウム水溶液に、100℃未満の温度で浸漬した後10
    0℃から130℃に加熱して溶解させるか、または直接
    に100℃から130℃に加熱して溶解させることを特
    徴とするセルロースドープの調製方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2012128315A1 (ja) 2011-03-23 2012-09-27 株式会社Kri 多糖類の溶解に用いられる溶媒ならびに該溶媒を用いた成形体および多糖類誘導体の製造方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2012128315A1 (ja) 2011-03-23 2012-09-27 株式会社Kri 多糖類の溶解に用いられる溶媒ならびに該溶媒を用いた成形体および多糖類誘導体の製造方法
US9200085B2 (en) 2011-03-23 2015-12-01 Kri, Inc. Solvent used for dissolving polysaccharide and method for manufacturing molded article and polysaccharide derivative using this solvent

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