JPH08158147A - セルロース繊維の製造方法 - Google Patents
セルロース繊維の製造方法Info
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- JPH08158147A JPH08158147A JP29112494A JP29112494A JPH08158147A JP H08158147 A JPH08158147 A JP H08158147A JP 29112494 A JP29112494 A JP 29112494A JP 29112494 A JP29112494 A JP 29112494A JP H08158147 A JPH08158147 A JP H08158147A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】セルロースの直接溶解能力に優れ、化学的に安
定で低毒性な溶媒からなるセルロースドープによる、力
学的物性に優れ、かつ耐摩耗性に優れるセルロース繊維
を得るためのセルロース繊維の製造方法の提供 【構成】セルロースと49〜63重量%のロダンカルシ
ウム塩水溶液とからなるセルロースドープを、水およ
びロダンカルシウムを抽出し得る溶剤中を通過させる
か、または該セルロースドープをゲル状糸条体となし
た後、水およびロダンカルシウムを抽出し得る溶剤中を
通過させるかして、セルロース濃度が15重量%以上の
濃縮されたゲル状糸条体となしてから、セルロースの連
続糸条体に成形することを特徴とするセルロース繊維の
製造方法
定で低毒性な溶媒からなるセルロースドープによる、力
学的物性に優れ、かつ耐摩耗性に優れるセルロース繊維
を得るためのセルロース繊維の製造方法の提供 【構成】セルロースと49〜63重量%のロダンカルシ
ウム塩水溶液とからなるセルロースドープを、水およ
びロダンカルシウムを抽出し得る溶剤中を通過させる
か、または該セルロースドープをゲル状糸条体となし
た後、水およびロダンカルシウムを抽出し得る溶剤中を
通過させるかして、セルロース濃度が15重量%以上の
濃縮されたゲル状糸条体となしてから、セルロースの連
続糸条体に成形することを特徴とするセルロース繊維の
製造方法
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、セルロース繊維の新し
い製造方法に関するものである。具体的には、セルロー
スの特定の溶媒を使用して、乾燥時および湿潤時の力学
的物性に優れ、かつ摩耗特性に優れるセルロース繊維を
提供することにある。
い製造方法に関するものである。具体的には、セルロー
スの特定の溶媒を使用して、乾燥時および湿潤時の力学
的物性に優れ、かつ摩耗特性に優れるセルロース繊維を
提供することにある。
【0002】
【従来技術】工業的に再生セルロース繊維を得る方法に
はビスコース法レーヨン(ビスコース法)や銅アンモニ
ア法レーヨン(銅安法)がある。これら従来の方法は長
い年月を経て種々の改良がなされほぼ完成した技術とな
っているが、それぞれ次のような課題を抱えている。す
なわち、ビスコース法では、製造原理上使用を免れない
二硫化炭素や副生する硫化水素への対策を必要とし、ま
た銅安法でも原料として使用するアンモニアという臭気
性ガスへの対策を必要とすること、さらに、紡糸用ドー
プの調製には、ビスコース法では原料セルロースをアル
カリセルロースに変性後に誘導体化して、さらに分子量
調節するといった2段階あるいは3段階の工程を必要と
し、また銅安法では銅安溶液の溶解力を制御するために
溶媒組成や溶媒調製方法を微妙に調整する工程を付加す
るなど、それぞれの製法で特有のプロセスや特別なノウ
ハウを必要とすることなどの問題をかかえている。故
に、これらの技術は、ポリエステルやアクリル繊維のよ
うな合成繊維のように加熱または溶媒と共に混合するの
みで比較的簡単に融液や溶液が得られる技術とはなって
いない。このため、複雑で長大な溶解設備を必要とし、
それに伴い設備投資や設備維持費が発生するといった特
徴を有している。
はビスコース法レーヨン(ビスコース法)や銅アンモニ
ア法レーヨン(銅安法)がある。これら従来の方法は長
い年月を経て種々の改良がなされほぼ完成した技術とな
っているが、それぞれ次のような課題を抱えている。す
なわち、ビスコース法では、製造原理上使用を免れない
二硫化炭素や副生する硫化水素への対策を必要とし、ま
た銅安法でも原料として使用するアンモニアという臭気
性ガスへの対策を必要とすること、さらに、紡糸用ドー
プの調製には、ビスコース法では原料セルロースをアル
カリセルロースに変性後に誘導体化して、さらに分子量
調節するといった2段階あるいは3段階の工程を必要と
し、また銅安法では銅安溶液の溶解力を制御するために
溶媒組成や溶媒調製方法を微妙に調整する工程を付加す
るなど、それぞれの製法で特有のプロセスや特別なノウ
ハウを必要とすることなどの問題をかかえている。故
に、これらの技術は、ポリエステルやアクリル繊維のよ
うな合成繊維のように加熱または溶媒と共に混合するの
みで比較的簡単に融液や溶液が得られる技術とはなって
いない。このため、複雑で長大な溶解設備を必要とし、
それに伴い設備投資や設備維持費が発生するといった特
徴を有している。
【0003】一般に、湿式紡糸法で成形体を得るには、
ドープの調製工程、ドープの凝固または再生、脱溶媒、
乾燥等の狭義の紡糸工程、および溶媒や凝固剤等の回収
をする回収工程の3つの主要な工程を必要とする。この
うち、回収工程は、水のみを溶媒および凝固剤とするよ
うな特殊な場合を除くと、製法の原理上不可欠な工程で
ある。この観点に立てば、回収工程を除く湿式紡糸法の
2つの基本工程の中で、溶解工程を簡略化して、従来の
セルロース繊維の工業的製造法であるビスコース法およ
び銅安法が抱える溶解工程の複雑さを解消し得る製造方
法を見い出すことができるならば、極めて大きく工程を
革新できることとなる。この点、近年研究開発が活発に
行われているアミンオキシド系セルロース溶媒は、ドー
プの調製時のアミンオキシド水溶液の水分率の調整にや
や難点があるものの、基本的にはセルロースとアミンオ
キシド水溶液との混合物を溶解可能な温度に加熱するの
みで均一溶液が得られる優れた溶媒系といえる。
ドープの調製工程、ドープの凝固または再生、脱溶媒、
乾燥等の狭義の紡糸工程、および溶媒や凝固剤等の回収
をする回収工程の3つの主要な工程を必要とする。この
うち、回収工程は、水のみを溶媒および凝固剤とするよ
うな特殊な場合を除くと、製法の原理上不可欠な工程で
ある。この観点に立てば、回収工程を除く湿式紡糸法の
2つの基本工程の中で、溶解工程を簡略化して、従来の
セルロース繊維の工業的製造法であるビスコース法およ
び銅安法が抱える溶解工程の複雑さを解消し得る製造方
法を見い出すことができるならば、極めて大きく工程を
革新できることとなる。この点、近年研究開発が活発に
行われているアミンオキシド系セルロース溶媒は、ドー
プの調製時のアミンオキシド水溶液の水分率の調整にや
や難点があるものの、基本的にはセルロースとアミンオ
キシド水溶液との混合物を溶解可能な温度に加熱するの
みで均一溶液が得られる優れた溶媒系といえる。
【0004】しかしながら、上述の3種類のセルロース
溶媒を用いて得られるセルロース繊維の性能は、ポリエ
ステルなどの合成繊維や綿繊維と比較して乾燥時および
湿潤時の力学的物性に劣り、かつ耐摩耗性、耐洗濯性の
ような水湿潤時の消費特性等の点で必ずしも満足できる
ものとは言えない。換言すると、衣料用レーヨン繊維
は、耐摩耗性は極めて高いものの、乾燥および湿潤時の
力学的物性に乏しく、キュプラ繊維は、乾燥および湿潤
時の力学的物性は比較的高いものの、それでもまだ綿に
比べると不十分であり、また耐摩耗性も不足している。
さらに、ポリノジックレーヨン繊維も、力学的物性は高
いが、耐摩耗性には著しく乏しい。さらにまた、アミン
オキシド系溶媒をセルロースの溶媒にするセルロース繊
維も一部市販されているが、この繊維も力学的物性は優
れているものの、耐摩耗性には極めて乏しい。この様
に、乾燥および湿潤時の力学的物性に優れ、そのうえ耐
摩耗性をも併せ持つ再生セルロース繊維は未だ工業的に
供給されてはいないのである。繊維、とりわけ衣料用繊
維が具備すべき性能は、力学的物性のみならず、摩擦に
対する強さや皺になりにくさ、風合い等のいわゆる消費
性能等を考慮して総合的に判断されなければならないこ
とは言うまでもない。この中で、摩擦に対する強さ、つ
まり耐摩耗性は極めて重要な性能である。耐摩耗性が高
ければ、後加工工程や着用時の繊維の摩擦による切断や
フィブリル化が低減できるのみならず、織物を作製する
場合にも原糸の均一性や強靭性が要求される経糸に使用
可能であるし、織物の染色工程での摩耗による染色斑を
防止できる上、何よりもセルロース繊維を外衣料用途に
広範に使用できるようになる等多大な利点があるのであ
る。前述の如く工業的に供給されているセルロース繊維
の中で、耐摩耗性の尺度から十分な耐久性を有する繊維
は、一部の衣料用レーヨン繊維のみである。
溶媒を用いて得られるセルロース繊維の性能は、ポリエ
ステルなどの合成繊維や綿繊維と比較して乾燥時および
湿潤時の力学的物性に劣り、かつ耐摩耗性、耐洗濯性の
ような水湿潤時の消費特性等の点で必ずしも満足できる
ものとは言えない。換言すると、衣料用レーヨン繊維
は、耐摩耗性は極めて高いものの、乾燥および湿潤時の
力学的物性に乏しく、キュプラ繊維は、乾燥および湿潤
時の力学的物性は比較的高いものの、それでもまだ綿に
比べると不十分であり、また耐摩耗性も不足している。
さらに、ポリノジックレーヨン繊維も、力学的物性は高
いが、耐摩耗性には著しく乏しい。さらにまた、アミン
オキシド系溶媒をセルロースの溶媒にするセルロース繊
維も一部市販されているが、この繊維も力学的物性は優
れているものの、耐摩耗性には極めて乏しい。この様
に、乾燥および湿潤時の力学的物性に優れ、そのうえ耐
摩耗性をも併せ持つ再生セルロース繊維は未だ工業的に
供給されてはいないのである。繊維、とりわけ衣料用繊
維が具備すべき性能は、力学的物性のみならず、摩擦に
対する強さや皺になりにくさ、風合い等のいわゆる消費
性能等を考慮して総合的に判断されなければならないこ
とは言うまでもない。この中で、摩擦に対する強さ、つ
まり耐摩耗性は極めて重要な性能である。耐摩耗性が高
ければ、後加工工程や着用時の繊維の摩擦による切断や
フィブリル化が低減できるのみならず、織物を作製する
場合にも原糸の均一性や強靭性が要求される経糸に使用
可能であるし、織物の染色工程での摩耗による染色斑を
防止できる上、何よりもセルロース繊維を外衣料用途に
広範に使用できるようになる等多大な利点があるのであ
る。前述の如く工業的に供給されているセルロース繊維
の中で、耐摩耗性の尺度から十分な耐久性を有する繊維
は、一部の衣料用レーヨン繊維のみである。
【0005】一方、ロダン塩(チオシアン酸塩)、特に
ロダンカルシウム塩(Ca(SCN)2)がセルロースを溶解す
ることは1900年代の初めには既に知られていた。例
えば、POLYMER HANDBOOK(THIRD EDITION,SECTION V,S
OLVENT FOR CELLULOSE,V/130〜131)にはロダン塩系溶
媒についての記述があり、これによれば1912年には
既に正式に報告されている。また、ロダンカルシウム塩
を溶媒にするとセルロースの重合度(DP)の低下が避け
られない事もすでに報告されている。例えば、P.P. von
Weimarn(Kolloid-Z 11,41(1912))はハロゲン化リチ
ウムおよびハロゲン化カルシウムやCa,Sr,Ba,Mnのロダ
ン塩は、セルロースに対して極めて強い水和能力と溶解
性を示すと報告している。また、H.E.Williams(J.Soc.
Chem.Ind.40,221T(1921))はロダンカルシウム塩水溶液
にセルロースを溶解させる方法を種々検討している。さ
らに、H. Erbring(Kolloid-Z.84,25(1938))らはロダ
ンカルシウム塩を中心にした中性塩水溶液へのセルロー
スの溶解挙動、溶液粘度、溶液粘度に対する沈殿剤の効
果等について詳細に検討している。さらにまた、Warwic
ker(“Cellulose and Cellulose Derivatives,PartIV,
Chap.XIII,Sec.H”,N.M.Bikales and L.Segal ed.,Wile
y-Interscience,New York,N.Y.,1971,p348)によると、
チオシアン酸(ロダン)カルシウム塩水溶液以外でセル
ロースを溶解するものは、リチウム、マグネシウム、マ
ンガン、セシウムのチオシアン酸塩水溶液であり、ナト
リウム、カリウム、アンモニウム、亜鉛、アルミニウム
のチオシアン酸塩水溶液はそれら単独ではセルロースを
溶解させないとしている。しかしながら、本出願人等が
検討したところでは、前記諸報告の存在に関わらず、単
独でセルロースを溶解させる能力を有するのはカルシウ
ムとナトリウム塩の水溶液のみであり、またロダンナト
リウム塩水溶液は天然セルロースを直接には溶解できな
かった。
ロダンカルシウム塩(Ca(SCN)2)がセルロースを溶解す
ることは1900年代の初めには既に知られていた。例
えば、POLYMER HANDBOOK(THIRD EDITION,SECTION V,S
OLVENT FOR CELLULOSE,V/130〜131)にはロダン塩系溶
媒についての記述があり、これによれば1912年には
既に正式に報告されている。また、ロダンカルシウム塩
を溶媒にするとセルロースの重合度(DP)の低下が避け
られない事もすでに報告されている。例えば、P.P. von
Weimarn(Kolloid-Z 11,41(1912))はハロゲン化リチ
ウムおよびハロゲン化カルシウムやCa,Sr,Ba,Mnのロダ
ン塩は、セルロースに対して極めて強い水和能力と溶解
性を示すと報告している。また、H.E.Williams(J.Soc.
Chem.Ind.40,221T(1921))はロダンカルシウム塩水溶液
にセルロースを溶解させる方法を種々検討している。さ
らに、H. Erbring(Kolloid-Z.84,25(1938))らはロダ
ンカルシウム塩を中心にした中性塩水溶液へのセルロー
スの溶解挙動、溶液粘度、溶液粘度に対する沈殿剤の効
果等について詳細に検討している。さらにまた、Warwic
ker(“Cellulose and Cellulose Derivatives,PartIV,
Chap.XIII,Sec.H”,N.M.Bikales and L.Segal ed.,Wile
y-Interscience,New York,N.Y.,1971,p348)によると、
チオシアン酸(ロダン)カルシウム塩水溶液以外でセル
ロースを溶解するものは、リチウム、マグネシウム、マ
ンガン、セシウムのチオシアン酸塩水溶液であり、ナト
リウム、カリウム、アンモニウム、亜鉛、アルミニウム
のチオシアン酸塩水溶液はそれら単独ではセルロースを
溶解させないとしている。しかしながら、本出願人等が
検討したところでは、前記諸報告の存在に関わらず、単
独でセルロースを溶解させる能力を有するのはカルシウ
ムとナトリウム塩の水溶液のみであり、またロダンナト
リウム塩水溶液は天然セルロースを直接には溶解できな
かった。
【0006】また、本発明はセルロース繊維の製造方法
に関するものであるが、ロダンカルシウム塩水溶液にセ
ルロースを溶解させた溶液から、セルロース繊維を得る
方法について、前掲の諸文献では記載がなきに等しい。
この点米国特許第2737437号公報および第278
7459号公報にはセルロースとロダンカルシウム塩水
溶液の分散物から成形物を得る方法が開示されている。
前記米国特許第2737437号公報が開示している製
法は、セルロースを溶解させない濃度のチオシアン酸
(ロダン)カルシウム塩水溶液に0.1から100ミク
ロンメータの粒子状セルロースを分散させてなるセルロ
ース分散物を大気圧下で成形し成形物を得た後、粒子状
セルロースが溶着(coalesce)するまで大気圧下で95
℃から120℃の温度で該成形物から水を蒸発させ、そ
の後、必要により25重量%の塩化ナトリウム水溶液等
の凝固浴中で凝固させ、最終的に水で洗浄することを特
徴とする方法である。また、前記米国特許第27874
59号公報には、少なくとも175の重合度と少なくと
もグルコースユニット当たり2.5の自由な水酸基を持
つ水に溶解しないセルロース粒子を、40〜75重量%
のチオシアン酸カルシウム塩水溶液と混合してなる25
℃で流動性のない均一な粒子状セルロース分散物または
該粒子状セルロース分散物から得られたゲルを、85〜
150℃の温度で、少なくとも10ホ゜ント゛/インチ2の圧力下
で成形物に成形する方法が開示されている。しかしなが
ら、この米国特許による方法は、粒子状セルロースを分
散させたチオシアン酸カルシウム塩水溶液を用いて、こ
の分散させた溶解していないセルロースを成形物となす
提案であり、本発明の対象とする溶媒に溶解させたセル
ロースからセルロース繊維を得る方法とは明らかにその
技術思想を異にするものである。一方、D.M.MacDONALD
(ACS Symp.Ser. 58,25(1977))は、前記米国特許に開
示している技術を応用し、セルロースをロダンカルシウ
ム塩水溶液に溶解した溶液から繊維を製造することを試
みているが、極めて多孔質な脆い繊維しか得られないと
報告している。即ち、この方法では、セルロースと主成
分である52.5重量%の濃度のチオシアン酸カルシウ
ム塩水溶液からなる溶液を、エクストルーダ押出機(1
10℃に保温)を使用して吐出させ、水または25重量
%チオシアン酸カルシウム塩水溶液あるいは25重量%
塩化ナトリウム水溶液中で凝固させて繊維を得ることを
試みているのであるが、乾強度0.1−0.8g/d、乾
伸度4−10%、でかつ湿強度0.1−0.3g/dの多
孔質で極めて脆い繊維しか得られないと報告している。
また、同様に本発明とは技術思想を異にする開示ではあ
るが、例えば、S.KUGA(J.Colloid and Interface Sci.
77,No.2,413(1980))および特公昭63−62252号
公報を関連文献として挙げることができる。前者には、
59重量%のチオシアン酸カルシウム塩水溶液にセルロ
ースを1重量%の濃度で溶解し、この溶液をガラス板に
流延して、冷却してゲルを作り、さらにメタノールで脱
溶媒して得たゲルがフィルターや分離用カラムの充填材
に適することの開示がある。また、後者には、セルロー
スをチオシアン酸カルシウムを主成分とするカルシウム
塩水溶液に溶解させて溶液を作り、この溶液もしくはこ
の溶液から得られたゲル状物を分散溶媒としての有機溶
媒中に分散させ、この有機溶媒により又はこれと混合し
かつカルシウム塩を溶解する溶媒により脱塩し、セルロ
ースをゲル状に再生させて、顆粒状ないしビーズ状セル
ロースゲルを作る技術が開示されている。しかし、いず
れにしてもこれらもまた本発明とは異なる目的を有する
開示であることが明らかである。
に関するものであるが、ロダンカルシウム塩水溶液にセ
ルロースを溶解させた溶液から、セルロース繊維を得る
方法について、前掲の諸文献では記載がなきに等しい。
この点米国特許第2737437号公報および第278
7459号公報にはセルロースとロダンカルシウム塩水
溶液の分散物から成形物を得る方法が開示されている。
前記米国特許第2737437号公報が開示している製
法は、セルロースを溶解させない濃度のチオシアン酸
(ロダン)カルシウム塩水溶液に0.1から100ミク
ロンメータの粒子状セルロースを分散させてなるセルロ
ース分散物を大気圧下で成形し成形物を得た後、粒子状
セルロースが溶着(coalesce)するまで大気圧下で95
℃から120℃の温度で該成形物から水を蒸発させ、そ
の後、必要により25重量%の塩化ナトリウム水溶液等
の凝固浴中で凝固させ、最終的に水で洗浄することを特
徴とする方法である。また、前記米国特許第27874
59号公報には、少なくとも175の重合度と少なくと
もグルコースユニット当たり2.5の自由な水酸基を持
つ水に溶解しないセルロース粒子を、40〜75重量%
のチオシアン酸カルシウム塩水溶液と混合してなる25
℃で流動性のない均一な粒子状セルロース分散物または
該粒子状セルロース分散物から得られたゲルを、85〜
150℃の温度で、少なくとも10ホ゜ント゛/インチ2の圧力下
で成形物に成形する方法が開示されている。しかしなが
ら、この米国特許による方法は、粒子状セルロースを分
散させたチオシアン酸カルシウム塩水溶液を用いて、こ
の分散させた溶解していないセルロースを成形物となす
提案であり、本発明の対象とする溶媒に溶解させたセル
ロースからセルロース繊維を得る方法とは明らかにその
技術思想を異にするものである。一方、D.M.MacDONALD
(ACS Symp.Ser. 58,25(1977))は、前記米国特許に開
示している技術を応用し、セルロースをロダンカルシウ
ム塩水溶液に溶解した溶液から繊維を製造することを試
みているが、極めて多孔質な脆い繊維しか得られないと
報告している。即ち、この方法では、セルロースと主成
分である52.5重量%の濃度のチオシアン酸カルシウ
ム塩水溶液からなる溶液を、エクストルーダ押出機(1
10℃に保温)を使用して吐出させ、水または25重量
%チオシアン酸カルシウム塩水溶液あるいは25重量%
塩化ナトリウム水溶液中で凝固させて繊維を得ることを
試みているのであるが、乾強度0.1−0.8g/d、乾
伸度4−10%、でかつ湿強度0.1−0.3g/dの多
孔質で極めて脆い繊維しか得られないと報告している。
また、同様に本発明とは技術思想を異にする開示ではあ
るが、例えば、S.KUGA(J.Colloid and Interface Sci.
77,No.2,413(1980))および特公昭63−62252号
公報を関連文献として挙げることができる。前者には、
59重量%のチオシアン酸カルシウム塩水溶液にセルロ
ースを1重量%の濃度で溶解し、この溶液をガラス板に
流延して、冷却してゲルを作り、さらにメタノールで脱
溶媒して得たゲルがフィルターや分離用カラムの充填材
に適することの開示がある。また、後者には、セルロー
スをチオシアン酸カルシウムを主成分とするカルシウム
塩水溶液に溶解させて溶液を作り、この溶液もしくはこ
の溶液から得られたゲル状物を分散溶媒としての有機溶
媒中に分散させ、この有機溶媒により又はこれと混合し
かつカルシウム塩を溶解する溶媒により脱塩し、セルロ
ースをゲル状に再生させて、顆粒状ないしビーズ状セル
ロースゲルを作る技術が開示されている。しかし、いず
れにしてもこれらもまた本発明とは異なる目的を有する
開示であることが明らかである。
【0007】以上から明らかなように、ロダンカルシウ
ム塩水溶液は優れたセルロースの溶媒であるにも拘わら
ず、ロダンカルシウム塩水溶液をセルロースの溶媒に使
用して、物理的な性能(摩耗特性、引っ張り物性、水湿
潤時の膨潤性等)に優れた繊維を得る試みは、なされた
ものの、優れたセルロース繊維は未だ得られていなかっ
たのである。これは、セルロースをロダン塩水溶液に溶
解して得たドープは冷却すると極めて迅速にゲル化する
特性を有し、その挙動の制御が困難であったこと、およ
び該ドープから湿式紡糸法によって繊維を得るに際し
て、水又は溶媒の希薄水溶液を凝固剤に用いる方法で
は、前記D.M.MacDONALDの報告あるいは本出願人等の検
討結果からも明らかなように極めて脆い繊維しか得られ
ず、この脆さを改良または回避することが極めて難しか
ったこと、さらには前出の POLYMER HANDBOOK に記載さ
れているように溶解後にセルロースのDP低下が大きく、
その制御が容易でなかったこと等のためであると推定さ
れる。
ム塩水溶液は優れたセルロースの溶媒であるにも拘わら
ず、ロダンカルシウム塩水溶液をセルロースの溶媒に使
用して、物理的な性能(摩耗特性、引っ張り物性、水湿
潤時の膨潤性等)に優れた繊維を得る試みは、なされた
ものの、優れたセルロース繊維は未だ得られていなかっ
たのである。これは、セルロースをロダン塩水溶液に溶
解して得たドープは冷却すると極めて迅速にゲル化する
特性を有し、その挙動の制御が困難であったこと、およ
び該ドープから湿式紡糸法によって繊維を得るに際し
て、水又は溶媒の希薄水溶液を凝固剤に用いる方法で
は、前記D.M.MacDONALDの報告あるいは本出願人等の検
討結果からも明らかなように極めて脆い繊維しか得られ
ず、この脆さを改良または回避することが極めて難しか
ったこと、さらには前出の POLYMER HANDBOOK に記載さ
れているように溶解後にセルロースのDP低下が大きく、
その制御が容易でなかったこと等のためであると推定さ
れる。
【0008】以上詳述したように、セルロース繊維の製
造方法として、十分に満足し得る方法はまだ得られてい
ないのである。
造方法として、十分に満足し得る方法はまだ得られてい
ないのである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、以上
詳述したようなセルロース繊維の従来の製造方法の有す
る諸問題を解決し得るような、すなわちセルロースの直
接溶解能力に優れ、化学的に安定で低毒性な溶媒からな
るセルロースドープによる、力学的物性に優れ、かつ耐
摩耗性に優れるセルロース繊維を得るための方法を提供
することにある。
詳述したようなセルロース繊維の従来の製造方法の有す
る諸問題を解決し得るような、すなわちセルロースの直
接溶解能力に優れ、化学的に安定で低毒性な溶媒からな
るセルロースドープによる、力学的物性に優れ、かつ耐
摩耗性に優れるセルロース繊維を得るための方法を提供
することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題
を達成するために、従来公知のセルロースの種々の溶媒
を用いてセルロースドープの試作を繰り返し、その溶解
方法、溶解挙動、さらにはそれらのドープを用いた成形
方法などについて多くの検討を加えた。その結果、本発
明の課題を達成し得る特定の溶媒を選択し得て、その上
それを用いたセルロースドープによる新しい成形方法を
見い出すことができて本発明を完成させるに至ったので
ある。
を達成するために、従来公知のセルロースの種々の溶媒
を用いてセルロースドープの試作を繰り返し、その溶解
方法、溶解挙動、さらにはそれらのドープを用いた成形
方法などについて多くの検討を加えた。その結果、本発
明の課題を達成し得る特定の溶媒を選択し得て、その上
それを用いたセルロースドープによる新しい成形方法を
見い出すことができて本発明を完成させるに至ったので
ある。
【0011】すなわち本発明は、セルロースと49〜6
3重量%のロダンカルシウム塩水溶液とからなるセルロ
ースドープを紡糸用ノズルから吐出させ、水およびロダ
ンカルシウムを抽出し得る溶剤中を通過させ、セルロー
ス濃度が15重量%以上の濃縮されたゲル状糸条体とな
してから、セルロースの連続糸条体に成形することを特
徴とするセルロース繊維の製造方法である。また、本発
明は、セルロースと49〜63重量%のロダンカルシウ
ム塩水溶液とからなるセルロースドープを紡糸用ノズル
から吐出させゲル状糸条体となした後、水およびロダン
カルシウムを抽出し得る溶剤中を通過させ、セルロース
濃度が15重量%以上の濃縮されたゲル状糸条体となし
てから、セルロースの連続糸条体に成形することを特徴
とするセルロース繊維の製造方法である。
3重量%のロダンカルシウム塩水溶液とからなるセルロ
ースドープを紡糸用ノズルから吐出させ、水およびロダ
ンカルシウムを抽出し得る溶剤中を通過させ、セルロー
ス濃度が15重量%以上の濃縮されたゲル状糸条体とな
してから、セルロースの連続糸条体に成形することを特
徴とするセルロース繊維の製造方法である。また、本発
明は、セルロースと49〜63重量%のロダンカルシウ
ム塩水溶液とからなるセルロースドープを紡糸用ノズル
から吐出させゲル状糸条体となした後、水およびロダン
カルシウムを抽出し得る溶剤中を通過させ、セルロース
濃度が15重量%以上の濃縮されたゲル状糸条体となし
てから、セルロースの連続糸条体に成形することを特徴
とするセルロース繊維の製造方法である。
【0012】以下に本発明をさらに詳細に説明する。本
発明では、濃度が49〜63重量%のロダンカルシウム
塩水溶液をセルロースの溶媒として用いる。本発明者等
の検討結果によれば、49重量%以上のロダンカルシウ
ム塩水溶液は天然セルロースを始めとするほとんど全て
の結晶型を持つセルロースを溶解可能であり、この点か
らは本発明のドープを調製するに際しセルロースの種類
を選ぶ必要はない。本発明におけるロダンカルシウム塩
の濃度は、49重量%以上の濃厚塩水溶液であるが、ロ
ダンカルシウム塩濃度を高くしすぎると、セルロースの
溶解能力はあるものの、溶解度が小さくなる傾向を示す
ようになり、セルロース濃度が低い時には均一溶液とな
す事ができるが、セルロース濃度が高くなると微量では
あるが未溶解セルロースがドープ中に残存するようにな
るため、本発明では63重量%を越える濃度のロダンカ
ルシウム塩水溶液は溶媒として使用しない。また、49
重量%未満の濃度のロダンカルシウム塩水溶液は、前述
の如くセルロースを溶解する能力が著しく低いので、本
発明では同様に使用しない。
発明では、濃度が49〜63重量%のロダンカルシウム
塩水溶液をセルロースの溶媒として用いる。本発明者等
の検討結果によれば、49重量%以上のロダンカルシウ
ム塩水溶液は天然セルロースを始めとするほとんど全て
の結晶型を持つセルロースを溶解可能であり、この点か
らは本発明のドープを調製するに際しセルロースの種類
を選ぶ必要はない。本発明におけるロダンカルシウム塩
の濃度は、49重量%以上の濃厚塩水溶液であるが、ロ
ダンカルシウム塩濃度を高くしすぎると、セルロースの
溶解能力はあるものの、溶解度が小さくなる傾向を示す
ようになり、セルロース濃度が低い時には均一溶液とな
す事ができるが、セルロース濃度が高くなると微量では
あるが未溶解セルロースがドープ中に残存するようにな
るため、本発明では63重量%を越える濃度のロダンカ
ルシウム塩水溶液は溶媒として使用しない。また、49
重量%未満の濃度のロダンカルシウム塩水溶液は、前述
の如くセルロースを溶解する能力が著しく低いので、本
発明では同様に使用しない。
【0013】本発明のセルロースドープは、溶解させる
セルロースの重合度が200から1000であることが
好ましく、また、セルロース濃度が2〜20重量%の範
囲にあることが好ましく、このようになすことでドープ
の曳糸性、粘性、成形性等の点で優れたセルロースドー
プを得ることができる。また、本発明のセルロースドー
プは、ドープの組成により若干異なるが、溶解可能温度
(100℃)よりも低温に冷却するとゲル化する特性を
持っている。このゲルは、100℃以上に加熱すると溶
液に戻すことができる熱可逆性ゲルである。本発明のセ
ルロースドープは、基本的には、セルロースと49〜6
3重量%のロダンカルシウム塩水溶液とを約100℃以
上の温度に昇温し適度に撹拌するのみで調製可能であ
る。しかし、より溶液の均一性を向上させ、かつDP低下
を防止するためには、以下の溶解方法が好ましい。即
ち、不活性ガス中で、セルロースを溶解させない温度領
域で約1〜2時間程度前記ロダンカルシウム塩水溶液と
接触(例えば、25℃では少なくとも1時間程度、以
下、浸漬処理と呼ぶ)させた後、100℃から130℃
まで昇温させるとセルロースを完全に溶解させ得る。こ
の様にすると、溶解可能温度に達すると、驚くべき事
に、セルロースを殆ど瞬間的にロダンカルシウム塩水溶
液に溶解させ得るばかりでなく、DP低下の少ないドープ
を調製できる。前記浸漬処理は、単に、比較的粘度の高
い溶媒をセルロース固体内部に拡散させるために必要で
あるばかりではなく、本発明によると、セルロースとロ
ダン塩を溶解前に予め相互に化学的に作用させておくこ
とが重要なのである。このような溶解方法を用いると、
ロダン塩濃度が低く、加熱温度が低く加熱時間が短い等
のかなり穏和な条件下でもセルロースのDP低下が殆ど認
められないドープとなすことができる。ただし、意図的
にDP低下を期待する場合にはこの限りではない。その場
合であっても、セルロースとロダン塩自体の分解が加速
される150℃を越える温度にすることは避けるべきで
ある。本発明における好ましい溶解温度は100℃以
上、140℃以下であり、時に好ましい溶解温度は11
0℃〜130℃である。
セルロースの重合度が200から1000であることが
好ましく、また、セルロース濃度が2〜20重量%の範
囲にあることが好ましく、このようになすことでドープ
の曳糸性、粘性、成形性等の点で優れたセルロースドー
プを得ることができる。また、本発明のセルロースドー
プは、ドープの組成により若干異なるが、溶解可能温度
(100℃)よりも低温に冷却するとゲル化する特性を
持っている。このゲルは、100℃以上に加熱すると溶
液に戻すことができる熱可逆性ゲルである。本発明のセ
ルロースドープは、基本的には、セルロースと49〜6
3重量%のロダンカルシウム塩水溶液とを約100℃以
上の温度に昇温し適度に撹拌するのみで調製可能であ
る。しかし、より溶液の均一性を向上させ、かつDP低下
を防止するためには、以下の溶解方法が好ましい。即
ち、不活性ガス中で、セルロースを溶解させない温度領
域で約1〜2時間程度前記ロダンカルシウム塩水溶液と
接触(例えば、25℃では少なくとも1時間程度、以
下、浸漬処理と呼ぶ)させた後、100℃から130℃
まで昇温させるとセルロースを完全に溶解させ得る。こ
の様にすると、溶解可能温度に達すると、驚くべき事
に、セルロースを殆ど瞬間的にロダンカルシウム塩水溶
液に溶解させ得るばかりでなく、DP低下の少ないドープ
を調製できる。前記浸漬処理は、単に、比較的粘度の高
い溶媒をセルロース固体内部に拡散させるために必要で
あるばかりではなく、本発明によると、セルロースとロ
ダン塩を溶解前に予め相互に化学的に作用させておくこ
とが重要なのである。このような溶解方法を用いると、
ロダン塩濃度が低く、加熱温度が低く加熱時間が短い等
のかなり穏和な条件下でもセルロースのDP低下が殆ど認
められないドープとなすことができる。ただし、意図的
にDP低下を期待する場合にはこの限りではない。その場
合であっても、セルロースとロダン塩自体の分解が加速
される150℃を越える温度にすることは避けるべきで
ある。本発明における好ましい溶解温度は100℃以
上、140℃以下であり、時に好ましい溶解温度は11
0℃〜130℃である。
【0014】また、ドープの調製時に、セルロースとロ
ダンカルシウム塩水溶液との親和性や浸透性を改良する
目的で微量の界面活性剤や粘度低下剤等を使用したり、
ドープのゲル化を遅延する目的で微量の他のロダン塩や
中性塩を使用することも本発明では差し支えない。本発
明では、このようにして得られたセルロースドープを、
水およびロダンカルシウムを抽出し得る溶媒中を通過さ
せ水およびロダンカルシウム塩を抽出し、セルロース濃
度が15重量%以上の濃縮されたゲル状糸条体となすこ
とが必要である。本発明で言うゲルとは、溶質であるセ
ルロースが溶媒であるロダンカルシウム塩水溶液を内包
する集合体となり、不溶化し、セルロースドープが流動
性を失った状態と定義される。セルロースドープをゲル
に転移させる最も単純で簡便な方法は、セルロースドー
プを冷却して溶媒の溶媒和力を低下させることであっ
て、本発明ではこのようにして得られるゲルを冷却ゲル
と呼ぶことにする。ゲル転移を起こさせる別の方法は、
いわゆるゲル化剤を使用する方法である。本発明のゲル
化剤である水あるいはロダンカルシウムを抽出し得る溶
剤は、ドープからロダンカルシウム塩および水を抽出
し、セルロースを濃縮して、ドープをセルロース濃度が
高いゲルに転移させる作用を有する溶剤である。本発明
のセルロースドープは本発明の前記ゲル化剤を用いると
殆ど瞬間的にゲルに転移させ得る。本発明においてはゲ
ル転移に際して安定で、加熱しても再び溶液には戻らな
いゲルとなす。本発明によるセルロース溶液の濃縮ゲル
化は、本発明におけるゲル化剤とロダンカルシウム塩水
溶液との相互作用を、ロダンカルシウム塩水溶液とセル
ロースの相互作用に比べて大きくなるようになし、か
つ、ゲル化剤の沈殿力を水などに比べて小さくなるよう
になすために、ドープからロダンカルシウム塩と水を選
択的に抽出し得るが、セルロースを完全には固化させる
ことなく、柔軟なセルロースのゲル状物となし得るので
ある。
ダンカルシウム塩水溶液との親和性や浸透性を改良する
目的で微量の界面活性剤や粘度低下剤等を使用したり、
ドープのゲル化を遅延する目的で微量の他のロダン塩や
中性塩を使用することも本発明では差し支えない。本発
明では、このようにして得られたセルロースドープを、
水およびロダンカルシウムを抽出し得る溶媒中を通過さ
せ水およびロダンカルシウム塩を抽出し、セルロース濃
度が15重量%以上の濃縮されたゲル状糸条体となすこ
とが必要である。本発明で言うゲルとは、溶質であるセ
ルロースが溶媒であるロダンカルシウム塩水溶液を内包
する集合体となり、不溶化し、セルロースドープが流動
性を失った状態と定義される。セルロースドープをゲル
に転移させる最も単純で簡便な方法は、セルロースドー
プを冷却して溶媒の溶媒和力を低下させることであっ
て、本発明ではこのようにして得られるゲルを冷却ゲル
と呼ぶことにする。ゲル転移を起こさせる別の方法は、
いわゆるゲル化剤を使用する方法である。本発明のゲル
化剤である水あるいはロダンカルシウムを抽出し得る溶
剤は、ドープからロダンカルシウム塩および水を抽出
し、セルロースを濃縮して、ドープをセルロース濃度が
高いゲルに転移させる作用を有する溶剤である。本発明
のセルロースドープは本発明の前記ゲル化剤を用いると
殆ど瞬間的にゲルに転移させ得る。本発明においてはゲ
ル転移に際して安定で、加熱しても再び溶液には戻らな
いゲルとなす。本発明によるセルロース溶液の濃縮ゲル
化は、本発明におけるゲル化剤とロダンカルシウム塩水
溶液との相互作用を、ロダンカルシウム塩水溶液とセル
ロースの相互作用に比べて大きくなるようになし、か
つ、ゲル化剤の沈殿力を水などに比べて小さくなるよう
になすために、ドープからロダンカルシウム塩と水を選
択的に抽出し得るが、セルロースを完全には固化させる
ことなく、柔軟なセルロースのゲル状物となし得るので
ある。
【0015】本発明のゲル化剤としては、水およびロダ
ンカルシウムを抽出し得る溶剤であれば無材系溶剤有材
系溶剤のいずれでもよく特に制限されるものではない
が、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタ
ノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、
酢酸メチル等のエステル類、ジメチルスルフォキシド、
ジメチルアセトアミド、ジメチルフォルムアミド等を好
ましく例示することができ、これらのうちでアセトン、
メタノール、エタノールが本発明の課題を達成するため
に特に好ましく用いられる溶剤である。本発明におい
て、水とロダンカルシウム塩をどの様な割合で抽出する
のかは、用いるゲル化剤とセルロースドープを構成する
各成分との親和性の違いにより抽出される程度が異なる
ため、実験により適宜決定すればよい。本発明における
セルロース濃縮効果は、セルロースドープを弛緩状態で
溶剤中でゲルに成形するよりも、緊張状態で成形する場
合により顕著である。セルロースドープがゲル化剤と接
触すると、ドープからゲルへと組成が変化するに伴い収
縮するが、少なくともこの収縮状態で弛緩しない程度の
張力下でゲルを成形することが好ましい。すなわちドラ
フト(巻取速度/吐出線速度)が少なくとも1以上であ
ることが本発明では好ましい。同様に、ゲル化剤中をド
ープから得られたゲル状物を、緊張状態(定長または延
伸する)で通過させることによっても濃縮効果を大きく
し得る。本発明における好ましい成形法であるゲルの緊
張下における成形によって、セルロースドープに張力を
かけて、ドープを圧密化させると同時に、溶媒を絞り出
してゲルとなし得るのである。このように、本発明によ
るセルロース繊維は、セルロースドープを水およびロダ
ンカルシウムを抽出し得る溶剤中を好ましくは緊張状態
で通過させて、極めて高濃度のセルロースゲルに成形
し、すなわちゲル状糸条体とすることにより調製できる
のである。
ンカルシウムを抽出し得る溶剤であれば無材系溶剤有材
系溶剤のいずれでもよく特に制限されるものではない
が、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタ
ノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、
酢酸メチル等のエステル類、ジメチルスルフォキシド、
ジメチルアセトアミド、ジメチルフォルムアミド等を好
ましく例示することができ、これらのうちでアセトン、
メタノール、エタノールが本発明の課題を達成するため
に特に好ましく用いられる溶剤である。本発明におい
て、水とロダンカルシウム塩をどの様な割合で抽出する
のかは、用いるゲル化剤とセルロースドープを構成する
各成分との親和性の違いにより抽出される程度が異なる
ため、実験により適宜決定すればよい。本発明における
セルロース濃縮効果は、セルロースドープを弛緩状態で
溶剤中でゲルに成形するよりも、緊張状態で成形する場
合により顕著である。セルロースドープがゲル化剤と接
触すると、ドープからゲルへと組成が変化するに伴い収
縮するが、少なくともこの収縮状態で弛緩しない程度の
張力下でゲルを成形することが好ましい。すなわちドラ
フト(巻取速度/吐出線速度)が少なくとも1以上であ
ることが本発明では好ましい。同様に、ゲル化剤中をド
ープから得られたゲル状物を、緊張状態(定長または延
伸する)で通過させることによっても濃縮効果を大きく
し得る。本発明における好ましい成形法であるゲルの緊
張下における成形によって、セルロースドープに張力を
かけて、ドープを圧密化させると同時に、溶媒を絞り出
してゲルとなし得るのである。このように、本発明によ
るセルロース繊維は、セルロースドープを水およびロダ
ンカルシウムを抽出し得る溶剤中を好ましくは緊張状態
で通過させて、極めて高濃度のセルロースゲルに成形
し、すなわちゲル状糸条体とすることにより調製できる
のである。
【0016】このようにして得られる本発明のゲル状糸
条体は、セルロースが15重量%以上含まれている必要
がある。セルロース濃度が15重量%未満の場合には、
濃縮効果不足で、本発明の目的とする力学的物性および
耐摩耗性に優れる繊維を得られないので、このような組
成のゲル状糸条体を本発明は含まない。また、既述の如
く本発明のセルロースドープはセルロース濃度が2重量
%以上であることが成形性等の点で好ましいが、本発明
のゲル状糸条体を調製する点からも2重量%以上である
ことが望ましい。即ち、ドープ中のセルロース濃度が2
重量%よりも低い場合には、本発明のゲル化剤を用いた
としても、現実的で実用的な速度で、本発明のセルロー
スが15重量%以上にまで濃縮されたゲル状糸条体を得
ることが極めて難しいからである。
条体は、セルロースが15重量%以上含まれている必要
がある。セルロース濃度が15重量%未満の場合には、
濃縮効果不足で、本発明の目的とする力学的物性および
耐摩耗性に優れる繊維を得られないので、このような組
成のゲル状糸条体を本発明は含まない。また、既述の如
く本発明のセルロースドープはセルロース濃度が2重量
%以上であることが成形性等の点で好ましいが、本発明
のゲル状糸条体を調製する点からも2重量%以上である
ことが望ましい。即ち、ドープ中のセルロース濃度が2
重量%よりも低い場合には、本発明のゲル化剤を用いた
としても、現実的で実用的な速度で、本発明のセルロー
スが15重量%以上にまで濃縮されたゲル状糸条体を得
ることが極めて難しいからである。
【0017】また、本発明のゲル状糸条体を長時間、前
記ゲル化剤中に浸漬すると、漸次該ゲル状糸条体中のロ
ダンカルシウム塩および水を減少させることができるた
め、最終的に溶媒が殆ど残留していない実質的にセルロ
ース固体からなるセルロースの連続糸条体にすることが
可能であるが、ゲル状糸条体の可塑性や延伸性を保持さ
せるために、ゲル状糸条体中のセルロース濃度を60重
量%程度に留めることが好ましい。例えば、セルロース
濃度が10〜20重量%のセルロースドープを、本発明
のゲル化剤と本発明の好ましいゲルの成形法である緊張
下のゲルの成形法を組み合わせて、ゲル状糸条体となし
た場合、極めて短時間(少なくとも1秒以内)にセルロ
ース濃度が60重量%以上のゲル状糸条体となすことが
できるが、上述した理由からむしろセルロース濃度を6
0重量%程度もしくはそれ以下に制御する方が望ましい
のである。
記ゲル化剤中に浸漬すると、漸次該ゲル状糸条体中のロ
ダンカルシウム塩および水を減少させることができるた
め、最終的に溶媒が殆ど残留していない実質的にセルロ
ース固体からなるセルロースの連続糸条体にすることが
可能であるが、ゲル状糸条体の可塑性や延伸性を保持さ
せるために、ゲル状糸条体中のセルロース濃度を60重
量%程度に留めることが好ましい。例えば、セルロース
濃度が10〜20重量%のセルロースドープを、本発明
のゲル化剤と本発明の好ましいゲルの成形法である緊張
下のゲルの成形法を組み合わせて、ゲル状糸条体となし
た場合、極めて短時間(少なくとも1秒以内)にセルロ
ース濃度が60重量%以上のゲル状糸条体となすことが
できるが、上述した理由からむしろセルロース濃度を6
0重量%程度もしくはそれ以下に制御する方が望ましい
のである。
【0018】さらに、本発明によって得られるセルロー
ス濃度が15重量%以上の濃縮されたゲル状糸条体は、
意外なことに、前記ゲル化剤を最大10重量%程度しか
含んでいない。例えば、ゲル化剤にアセトンやメチルエ
チルケトンを使用し、本発明における好ましい成形法で
あるゲルの緊張下における成形法を組み合わせてゲル状
糸条体を調製すると、該ゲル化剤はゲル状糸条体中に極
僅かの3重量%以下しか含まなくすることが可能であ
る。ゲル化剤としてメタノール、エタノール等のアルコ
ール類を用いても同様の結果を得ることができる。本発
明の製造方法はエヤーギャップ(air-gap)法のような
乾/湿式紡糸法と組み合わせて実施すると最適の結果が
得られる。
ス濃度が15重量%以上の濃縮されたゲル状糸条体は、
意外なことに、前記ゲル化剤を最大10重量%程度しか
含んでいない。例えば、ゲル化剤にアセトンやメチルエ
チルケトンを使用し、本発明における好ましい成形法で
あるゲルの緊張下における成形法を組み合わせてゲル状
糸条体を調製すると、該ゲル化剤はゲル状糸条体中に極
僅かの3重量%以下しか含まなくすることが可能であ
る。ゲル化剤としてメタノール、エタノール等のアルコ
ール類を用いても同様の結果を得ることができる。本発
明の製造方法はエヤーギャップ(air-gap)法のような
乾/湿式紡糸法と組み合わせて実施すると最適の結果が
得られる。
【0019】次に、本発明においてセルロースドープを
紡糸用ノズルから吐出させゲル状糸条体となすには、気
体雰囲気中またはドープとの間で物質移動をしない液状
の冷媒中でセルロースドープを冷却して冷却ゲルにすれ
ばよい。このようにして得られる冷却ゲルは熱可逆性ゲ
ルであり、かつドープと実質的に同じ組成を持ってい
る。本発明のセルロースドープはほぼ90℃以下に冷却
すると、冷却ゲルとなせる。また、本発明のロダンカル
シウム塩水溶液は−80℃でも固化しない。このためゲ
ル化温度は、上記の90℃から−80℃まで適宜設定し
てよいが、ゲル化温度を40℃以下にすると極めて迅速
にゲル化させ得るので、いっそう好ましい。
紡糸用ノズルから吐出させゲル状糸条体となすには、気
体雰囲気中またはドープとの間で物質移動をしない液状
の冷媒中でセルロースドープを冷却して冷却ゲルにすれ
ばよい。このようにして得られる冷却ゲルは熱可逆性ゲ
ルであり、かつドープと実質的に同じ組成を持ってい
る。本発明のセルロースドープはほぼ90℃以下に冷却
すると、冷却ゲルとなせる。また、本発明のロダンカル
シウム塩水溶液は−80℃でも固化しない。このためゲ
ル化温度は、上記の90℃から−80℃まで適宜設定し
てよいが、ゲル化温度を40℃以下にすると極めて迅速
にゲル化させ得るので、いっそう好ましい。
【0020】本発明におけるセルロースドープ間で物質
移動を起こさない液状の冷媒としては、水およびロダン
カルシウムを実質的に溶解しない溶剤であり、このよう
な溶剤としては有機系溶剤と無機系溶剤がある。有機系
溶剤としては、室温で液状の炭化水素類、例えばペンタ
ン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、あるい
はベンゼン、トルエン、キシレン、等の芳香族炭化水素
類や動植物油等を例示できるがこれらに限定されるもの
ではない。同様に無機系溶剤としては、ロダンカルシウ
ム塩水溶液やシリコンオイル等が挙げられるが、これら
に限定されるものではない。冷却ゲルの調製のための冷
媒として、ドープを調製したのと同じロダンカルシウム
濃度のロダンカルシウム塩水溶液を用いることは、溶媒
回収等の点から合理的であり、特に好ましい。本発明
は、このようにして得られる冷却ゲルを、引き続き、水
およびロダンカルシウムを抽出し得る溶剤中を通過させ
ることにより、セルロース濃度が15重量%以上の濃度
まで濃縮されたゲル状糸条体となす発明をも含む。この
場合にも、ゲル化剤中を緊張状態で通過させると、セル
ロースを濃縮させる効果をいっそう顕著となすことがで
きる。
移動を起こさない液状の冷媒としては、水およびロダン
カルシウムを実質的に溶解しない溶剤であり、このよう
な溶剤としては有機系溶剤と無機系溶剤がある。有機系
溶剤としては、室温で液状の炭化水素類、例えばペンタ
ン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、あるい
はベンゼン、トルエン、キシレン、等の芳香族炭化水素
類や動植物油等を例示できるがこれらに限定されるもの
ではない。同様に無機系溶剤としては、ロダンカルシウ
ム塩水溶液やシリコンオイル等が挙げられるが、これら
に限定されるものではない。冷却ゲルの調製のための冷
媒として、ドープを調製したのと同じロダンカルシウム
濃度のロダンカルシウム塩水溶液を用いることは、溶媒
回収等の点から合理的であり、特に好ましい。本発明
は、このようにして得られる冷却ゲルを、引き続き、水
およびロダンカルシウムを抽出し得る溶剤中を通過させ
ることにより、セルロース濃度が15重量%以上の濃度
まで濃縮されたゲル状糸条体となす発明をも含む。この
場合にも、ゲル化剤中を緊張状態で通過させると、セル
ロースを濃縮させる効果をいっそう顕著となすことがで
きる。
【0021】本発明によるセルロース繊維は、本発明の
ゲル状糸条体を完全に脱溶媒させ、乾燥させ、最終的に
セルロースの連続糸条体に成形することにより調製でき
る。また、前記ゲル状糸条体を多量の本発明のゲル化剤
でロダンカルシウム塩(チオシアン酸根)が検出されな
くなるまで洗浄し自然乾燥して得られるセルロース試料
は、広角X線回折図で、結晶性のピークが全く観察され
ず、回折角(2θ)20deg.付近に無定型構造に由来す
る幅広いピークのみが観察されるため、無定型セルロー
スである。このため、本発明のゲル状糸条体を本発明の
ゲル化剤で脱溶媒して、そのまま乾燥した場合には、無
定型セルロースからなるセルロース繊維が得られる。ま
た、前記ゲル状糸条体を水に浸漬すると、脱溶媒と同時
に結晶化が起こり、セルロースII型(CELL-II型)の
結晶型を持つ本発明のセルロース繊維が得られる。従っ
て目的に応じて、紡糸プロセスを選定することにより、
無定型またはCELL-II型さらにはCELL-III型等の結晶型
を持つ繊維を調製することができる。この際、所望によ
り乾燥前にスチーム処理等の工程を付加することもでき
る。
ゲル状糸条体を完全に脱溶媒させ、乾燥させ、最終的に
セルロースの連続糸条体に成形することにより調製でき
る。また、前記ゲル状糸条体を多量の本発明のゲル化剤
でロダンカルシウム塩(チオシアン酸根)が検出されな
くなるまで洗浄し自然乾燥して得られるセルロース試料
は、広角X線回折図で、結晶性のピークが全く観察され
ず、回折角(2θ)20deg.付近に無定型構造に由来す
る幅広いピークのみが観察されるため、無定型セルロー
スである。このため、本発明のゲル状糸条体を本発明の
ゲル化剤で脱溶媒して、そのまま乾燥した場合には、無
定型セルロースからなるセルロース繊維が得られる。ま
た、前記ゲル状糸条体を水に浸漬すると、脱溶媒と同時
に結晶化が起こり、セルロースII型(CELL-II型)の
結晶型を持つ本発明のセルロース繊維が得られる。従っ
て目的に応じて、紡糸プロセスを選定することにより、
無定型またはCELL-II型さらにはCELL-III型等の結晶型
を持つ繊維を調製することができる。この際、所望によ
り乾燥前にスチーム処理等の工程を付加することもでき
る。
【0022】本発明に用いるセルロース原料としては、
木材パルプ、コットンリンターあるいはそれらの加水分
解物または爆砕物、ビスコース法または銅安法により得
られた再生セルロース等が好適である。また、本発明の
ドープの調製方法としては既述のように、初めからセル
ロースとセルロースを溶解可能な濃度のロダンカルシウ
ム塩水溶液とを混合し溶解可能温度まで加熱してドープ
を作る方法でもよいし、最初にセルロースを溶解させな
い濃度のロダンカルシウム塩水溶液とセルロースとを混
合し、加熱して徐々に水を蒸発させながら所定のセルロ
ースを溶解しうる濃度にまで溶媒を濃縮してセルロース
を溶解し、最終的に均一溶液(ドープ)とする方法でも
よい。いずれにしても、本発明のドープは、セルロース
とロダンカルシウム塩水溶液を混合し加熱するのみでド
ープを調製をできるため、溶解工程は極めて単純化し得
る。また、浸漬処理後のスラリー状物あるいは均一溶液
およびその中間状態にある不均一溶解物は、直ちに使用
しない場合には、適当な方法(例えば、冷却してチップ
状に成形する)で貯蔵しておくことも可能である。
木材パルプ、コットンリンターあるいはそれらの加水分
解物または爆砕物、ビスコース法または銅安法により得
られた再生セルロース等が好適である。また、本発明の
ドープの調製方法としては既述のように、初めからセル
ロースとセルロースを溶解可能な濃度のロダンカルシウ
ム塩水溶液とを混合し溶解可能温度まで加熱してドープ
を作る方法でもよいし、最初にセルロースを溶解させな
い濃度のロダンカルシウム塩水溶液とセルロースとを混
合し、加熱して徐々に水を蒸発させながら所定のセルロ
ースを溶解しうる濃度にまで溶媒を濃縮してセルロース
を溶解し、最終的に均一溶液(ドープ)とする方法でも
よい。いずれにしても、本発明のドープは、セルロース
とロダンカルシウム塩水溶液を混合し加熱するのみでド
ープを調製をできるため、溶解工程は極めて単純化し得
る。また、浸漬処理後のスラリー状物あるいは均一溶液
およびその中間状態にある不均一溶解物は、直ちに使用
しない場合には、適当な方法(例えば、冷却してチップ
状に成形する)で貯蔵しておくことも可能である。
【0023】本発明によるセルロース繊維の製造方法に
よると、引張強度が2〜5 g/dであり、引掛強伸度積が
20〜40 g/d・% である、力学的物性に優れたセルロ
ース繊維を得ることができる。また、湿強度と乾強度の
比(湿/乾強度比)は0.5以上であり、かつ湿強度の
絶対値も大きく、その上後述する水膨潤度も50〜80
%であり、市販のレーヨン、キュプラ繊維(100〜120%)
に比べてかなり低く、水に対する抵抗力が極めて大きい
セルロース繊維を得ることができる。さらに後述するフ
ィブリル性の評価(フィブリル化度)では20分間ホー
ムミキサーで撹拌した後でも繊維表面に微細なフィブリ
ルが発生するのみで繊維本体は完全に保存されており極
めて耐摩耗性に優れている。本発明のセルロース繊維
が、乾燥および湿潤時の力学的物性に優れ、かつ耐摩耗
性に優れた性能を有するのは、このような特性を発揮で
きるセルロース固体構造となし得るゲル状構造体を経て
成形するからである。
よると、引張強度が2〜5 g/dであり、引掛強伸度積が
20〜40 g/d・% である、力学的物性に優れたセルロ
ース繊維を得ることができる。また、湿強度と乾強度の
比(湿/乾強度比)は0.5以上であり、かつ湿強度の
絶対値も大きく、その上後述する水膨潤度も50〜80
%であり、市販のレーヨン、キュプラ繊維(100〜120%)
に比べてかなり低く、水に対する抵抗力が極めて大きい
セルロース繊維を得ることができる。さらに後述するフ
ィブリル性の評価(フィブリル化度)では20分間ホー
ムミキサーで撹拌した後でも繊維表面に微細なフィブリ
ルが発生するのみで繊維本体は完全に保存されており極
めて耐摩耗性に優れている。本発明のセルロース繊維
が、乾燥および湿潤時の力学的物性に優れ、かつ耐摩耗
性に優れた性能を有するのは、このような特性を発揮で
きるセルロース固体構造となし得るゲル状構造体を経て
成形するからである。
【0024】なお、本出願の明細書に開示した引張物性
はJIS L 1013に準じて測定した。また、膨潤度の測定お
よびフィブリル性の評価は以下の方法により行った。さ
らに重合度(DP)はHenley-Brown-Wirkstromの提案した
下記粘度式を用いて、粘度法により算出した。 [η]=3.85×10-2Mw0.76 [膨潤度]乾燥した繊維試料約 2g をイオン交換水中に
60分間浸漬した後、付着水を濾紙でふき取り、あらかじ
め2mmφのガラスビーズを充填した遠沈管に入れ、1000
Gの遠心加速度で10分間遠心分離した。遠心分離後の繊
維試料の重さをW’[g]、絶乾後の重さをW[g]として下
式により算出した。 膨潤度={(W’−W)/W}×100 (%) [フィブリル化度]繊維試料約0.5gを70℃で3%
硫酸水溶液300gに30分間浸漬した後、イオン交換
水で洗浄する。該繊維試料をイオン交換水を媒体にして
ホームミキサー(消費電力260W、定格容量1200
ml)中で所定時間撹拌する。フィブリル化度の判定
は、顕微鏡観察で行い、全くフィブリル化しないものを
100、全部の繊維試料の元の直径が全く保存されない
状態にまで破壊されたものを0とし、0から100まで
の間で判定した。同試験を3回行いその平均値を採用し
た。
はJIS L 1013に準じて測定した。また、膨潤度の測定お
よびフィブリル性の評価は以下の方法により行った。さ
らに重合度(DP)はHenley-Brown-Wirkstromの提案した
下記粘度式を用いて、粘度法により算出した。 [η]=3.85×10-2Mw0.76 [膨潤度]乾燥した繊維試料約 2g をイオン交換水中に
60分間浸漬した後、付着水を濾紙でふき取り、あらかじ
め2mmφのガラスビーズを充填した遠沈管に入れ、1000
Gの遠心加速度で10分間遠心分離した。遠心分離後の繊
維試料の重さをW’[g]、絶乾後の重さをW[g]として下
式により算出した。 膨潤度={(W’−W)/W}×100 (%) [フィブリル化度]繊維試料約0.5gを70℃で3%
硫酸水溶液300gに30分間浸漬した後、イオン交換
水で洗浄する。該繊維試料をイオン交換水を媒体にして
ホームミキサー(消費電力260W、定格容量1200
ml)中で所定時間撹拌する。フィブリル化度の判定
は、顕微鏡観察で行い、全くフィブリル化しないものを
100、全部の繊維試料の元の直径が全く保存されない
状態にまで破壊されたものを0とし、0から100まで
の間で判定した。同試験を3回行いその平均値を採用し
た。
【0025】
【実施例】以下、実施例により本出願の発明を更に具体
的に説明する。
的に説明する。
【0026】
【実施例1および比較例1】レーヨン製造用溶解グレー
ドのアラスカパルプ(DP=985)30gを室温でイ
オン交換水60.6gとロダンカルシウム・4水和物
(Ca(SCN)2・4H2O)338.0gと混合し、
窒素置換して70℃で60分間浸漬処理した後、115
℃まで昇温し2時間撹拌溶解してセルロース濃度が7重
量%のセルロースドープを調製した。このドープをシリ
ンダーからノズルまでの間を115℃に保温したプラン
ジャー型押出機能を持つ紡糸機に移送し、孔径 0.1
0mmφで孔数15個を有するノズルからエアーギャップ
紡糸法によりギャップ長50mmで、約25℃の空気中
に吐出して冷却ゲルとなした後、これを10℃のアセト
ン浴(第1浴)中に導き、同浴中をドラフト1で通過さ
せ、さらに10℃のアセトン浴(第2浴)中で1.5倍
延伸し、次いで室温のアセトンで洗浄し、さらにエタノ
ールで洗浄した後、油剤を付与して、60℃の乾熱ロー
ルで乾燥し巻き取った。この得られた試料を試料1とす
る。この際に、第1浴で分取したゲル状糸条体を130
℃に加熱しても溶解状態には戻らなかった。また、第2
浴を通過したゲル状糸条体の組成を分析したところ、セ
ルロース50.7重量%、ロダンカルシウム塩水溶液4
7.1重量%で、アセトン2.2重量%であった。ま
た、第2浴を通過したゲル状糸条体を室温および60℃
の水で洗浄し、油剤を付与した後、60℃の乾熱ロール
で乾燥して巻き取った。この試料を試料2とする。さら
に、エアーギャップで吐出後、10℃の水浴中に、ドラ
フト1で通過させ、さらに室温および60℃の水で洗浄
した後、油剤を付与して、60℃の乾熱ロールで乾燥し
巻き取った。この試料を試料3とする。なお、試料3
は、水浴を出た後には延伸することができなかった。試
料1、2、3の性能を表1に示す。試料1,2は実施例
1を示し、試料3は比較例1を示す。また、参考例とし
て、市販のレーヨン、キュプラ繊維の性能を併記した。
試料1および2の繊維は力学的物性(伸張、引掛け)お
よび湿/乾強度比が高く、膨潤度が小さく、かつ耐フィ
ブリル性が高く、優れた性能を併せ持つ事が解る。これ
に対し、水を凝固剤にした試料3は極めて脆い繊維であ
った。
ドのアラスカパルプ(DP=985)30gを室温でイ
オン交換水60.6gとロダンカルシウム・4水和物
(Ca(SCN)2・4H2O)338.0gと混合し、
窒素置換して70℃で60分間浸漬処理した後、115
℃まで昇温し2時間撹拌溶解してセルロース濃度が7重
量%のセルロースドープを調製した。このドープをシリ
ンダーからノズルまでの間を115℃に保温したプラン
ジャー型押出機能を持つ紡糸機に移送し、孔径 0.1
0mmφで孔数15個を有するノズルからエアーギャップ
紡糸法によりギャップ長50mmで、約25℃の空気中
に吐出して冷却ゲルとなした後、これを10℃のアセト
ン浴(第1浴)中に導き、同浴中をドラフト1で通過さ
せ、さらに10℃のアセトン浴(第2浴)中で1.5倍
延伸し、次いで室温のアセトンで洗浄し、さらにエタノ
ールで洗浄した後、油剤を付与して、60℃の乾熱ロー
ルで乾燥し巻き取った。この得られた試料を試料1とす
る。この際に、第1浴で分取したゲル状糸条体を130
℃に加熱しても溶解状態には戻らなかった。また、第2
浴を通過したゲル状糸条体の組成を分析したところ、セ
ルロース50.7重量%、ロダンカルシウム塩水溶液4
7.1重量%で、アセトン2.2重量%であった。ま
た、第2浴を通過したゲル状糸条体を室温および60℃
の水で洗浄し、油剤を付与した後、60℃の乾熱ロール
で乾燥して巻き取った。この試料を試料2とする。さら
に、エアーギャップで吐出後、10℃の水浴中に、ドラ
フト1で通過させ、さらに室温および60℃の水で洗浄
した後、油剤を付与して、60℃の乾熱ロールで乾燥し
巻き取った。この試料を試料3とする。なお、試料3
は、水浴を出た後には延伸することができなかった。試
料1、2、3の性能を表1に示す。試料1,2は実施例
1を示し、試料3は比較例1を示す。また、参考例とし
て、市販のレーヨン、キュプラ繊維の性能を併記した。
試料1および2の繊維は力学的物性(伸張、引掛け)お
よび湿/乾強度比が高く、膨潤度が小さく、かつ耐フィ
ブリル性が高く、優れた性能を併せ持つ事が解る。これ
に対し、水を凝固剤にした試料3は極めて脆い繊維であ
った。
【0027】
【実施例2および比較例2】実施例1で用いたのと同じ
アラスカパルプを硫酸で加水分解したセルロース試料
(DP=550)を用いて実施例1と同じ方法で溶解
し、セルロース濃度がそれぞれ1,2,3,5,10,
20,25重量%のドープを調製した。なお、セルロー
ス濃度が25重量%のドープは粘度が高すぎて曳糸性に
乏しく、かつ偏光顕微鏡で検鏡するとドープ中に未溶解
セルロースが観察されたため紡糸を断念した。残りの6
種類のドープを実施例1と同じ紡糸機に移送し、孔径
0.10mmφ,孔数15個のノズルからエアーギャップ
法(ギャップ長50mm)でドープを吐出し、10℃の
アセトン浴(第1浴)中に導き、さらに、10℃のアセ
トン浴(第2浴)中で1.3倍延伸し、室温および60
℃の水で洗浄した後、油剤を付与して、100℃の乾熱
ロールで乾燥し、巻き取った。セルロース濃度が1,
2,3,5,10,20重量%のドープから得られた繊
維をそれぞれ試料4,5,6,7,8,9とする。表2
に各試料の組成分析結果および性能を示す。試料5,
6,7,8,9は実施例2を示し、試料4は比較例2を
示す。ドープ中のセルロース濃度が2重量%に満たない
試料4は力学的物性に劣り、かつ二次膨潤度が高く、耐
フィブリル性に乏しい実用に耐えない繊維であると判断
される。
アラスカパルプを硫酸で加水分解したセルロース試料
(DP=550)を用いて実施例1と同じ方法で溶解
し、セルロース濃度がそれぞれ1,2,3,5,10,
20,25重量%のドープを調製した。なお、セルロー
ス濃度が25重量%のドープは粘度が高すぎて曳糸性に
乏しく、かつ偏光顕微鏡で検鏡するとドープ中に未溶解
セルロースが観察されたため紡糸を断念した。残りの6
種類のドープを実施例1と同じ紡糸機に移送し、孔径
0.10mmφ,孔数15個のノズルからエアーギャップ
法(ギャップ長50mm)でドープを吐出し、10℃の
アセトン浴(第1浴)中に導き、さらに、10℃のアセ
トン浴(第2浴)中で1.3倍延伸し、室温および60
℃の水で洗浄した後、油剤を付与して、100℃の乾熱
ロールで乾燥し、巻き取った。セルロース濃度が1,
2,3,5,10,20重量%のドープから得られた繊
維をそれぞれ試料4,5,6,7,8,9とする。表2
に各試料の組成分析結果および性能を示す。試料5,
6,7,8,9は実施例2を示し、試料4は比較例2を
示す。ドープ中のセルロース濃度が2重量%に満たない
試料4は力学的物性に劣り、かつ二次膨潤度が高く、耐
フィブリル性に乏しい実用に耐えない繊維であると判断
される。
【0028】
【実施例3および比較例3】実施例1と同様のセルロー
ス試料(DP=550)を実施例1と同じ方法で溶解
し、セルロース濃度がそれぞれ1,2,3,5,10,
20重量%のドープを調製した。この6種類のドープを
実施例1と同じ紡糸機に移送し、孔径0.10mmφ,孔
数15個のノズルからエアーギャップ法(ギャップ長5
0mm)でドープを吐出し、10℃のメタノール浴(第
1浴)中に導き、さらに、10℃のメタノール浴(第2
浴)中で1.3倍延伸し、室温および60℃の水で洗浄
した後、油剤を付与して、100℃の乾熱ロールで乾燥
し、巻き取った。セルロース濃度が1,2,3,5,1
0,20重量%の繊維をそれぞれ試料10,11,1
2,13,14,15とする。表3に各試料の組成分析
結果および性能を示す。試料11,12,13,14,
15は実施例3を示し、試料10は比較例3を示す。
ス試料(DP=550)を実施例1と同じ方法で溶解
し、セルロース濃度がそれぞれ1,2,3,5,10,
20重量%のドープを調製した。この6種類のドープを
実施例1と同じ紡糸機に移送し、孔径0.10mmφ,孔
数15個のノズルからエアーギャップ法(ギャップ長5
0mm)でドープを吐出し、10℃のメタノール浴(第
1浴)中に導き、さらに、10℃のメタノール浴(第2
浴)中で1.3倍延伸し、室温および60℃の水で洗浄
した後、油剤を付与して、100℃の乾熱ロールで乾燥
し、巻き取った。セルロース濃度が1,2,3,5,1
0,20重量%の繊維をそれぞれ試料10,11,1
2,13,14,15とする。表3に各試料の組成分析
結果および性能を示す。試料11,12,13,14,
15は実施例3を示し、試料10は比較例3を示す。
【0029】
【実施例4】実施例1と同じドープを、実施例1と同じ
紡糸機で、孔径0.1mmφ孔数15個のノズルから、ギ
ャップ長50mmのエアーギャップで吐出し、10℃の
アセトン浴(第1浴)中を通過させた後、10℃のアセ
トン浴(第2浴)中でそれぞれ1.0,1.2,1.
5,1.8倍延伸し、室温および60℃の水で洗浄し、
油剤を付与した後、100℃の乾熱ロールで乾燥し、巻
き取った。延伸倍率1.0,1.2,1.5,1.8倍
の繊維を、それぞれ試料15,16,2,17とする。
なお、試料15〜17は実施例4であり、試料2は実施
例1と同一の試料であるが、理解しやすいように表4に
実施例4の評価結果と併記した。表4に各試料の組成分
析結果および性能を示す。
紡糸機で、孔径0.1mmφ孔数15個のノズルから、ギ
ャップ長50mmのエアーギャップで吐出し、10℃の
アセトン浴(第1浴)中を通過させた後、10℃のアセ
トン浴(第2浴)中でそれぞれ1.0,1.2,1.
5,1.8倍延伸し、室温および60℃の水で洗浄し、
油剤を付与した後、100℃の乾熱ロールで乾燥し、巻
き取った。延伸倍率1.0,1.2,1.5,1.8倍
の繊維を、それぞれ試料15,16,2,17とする。
なお、試料15〜17は実施例4であり、試料2は実施
例1と同一の試料であるが、理解しやすいように表4に
実施例4の評価結果と併記した。表4に各試料の組成分
析結果および性能を示す。
【0030】
【実施例5】ノズルおよびギャップ長を実施例1と同様
にしてセルロースドープを吐出し、0℃のトルエン浴
(第1浴)中を通過させ、次いで20℃のアセトン浴
(第2浴)中で2.5倍延伸した後、75重量%のアセ
トン水溶液中で洗浄し、さらに室温および60℃の水で
洗浄し、油剤を付与した後、100℃の乾熱ロールで乾
燥し、巻き取った。この繊維のアセトン浴(第2浴)で
延伸後のゲル状糸条体の組成を分析した所、セルロース
濃度は45.3重量%であった。得られた繊維の力学的
物性は乾強度4.4g/d,乾伸度10.8%,湿強度
3.0g/d,湿伸度14.7%,湿乾強度比0.68
で、二次膨潤度58%,フィブリル化度92であった。
にしてセルロースドープを吐出し、0℃のトルエン浴
(第1浴)中を通過させ、次いで20℃のアセトン浴
(第2浴)中で2.5倍延伸した後、75重量%のアセ
トン水溶液中で洗浄し、さらに室温および60℃の水で
洗浄し、油剤を付与した後、100℃の乾熱ロールで乾
燥し、巻き取った。この繊維のアセトン浴(第2浴)で
延伸後のゲル状糸条体の組成を分析した所、セルロース
濃度は45.3重量%であった。得られた繊維の力学的
物性は乾強度4.4g/d,乾伸度10.8%,湿強度
3.0g/d,湿伸度14.7%,湿乾強度比0.68
で、二次膨潤度58%,フィブリル化度92であった。
【0031】
【実施例6】アラスカパルプを硫酸で加水分解して得た
セルロース試料(DP=300)30gを、室温でイオ
ン交換水35.1gおよびロダンカルシウム・4水和物
184.9gと混合し、窒素置換して70℃で2時間浸
漬処理した後、110℃に昇温し3時間撹拌溶解してセ
ルロース濃度が12重量%のセルロースドープを調製し
た。このドープを孔径0.08mmφで孔数15個を有す
るノズルから25℃の空気雰囲気中にエアーギャップ紡
糸法(ギャップ長50mm)で吐出し、5℃のn−ヘキ
サン浴(第1浴)中に導き、得られた冷却ゲルの糸条体
を一組のネルソンロール間で空気中で2.5倍延伸し、
次いで20℃のメタノール浴(第2浴)に導き、同浴で
1.3倍延伸し、さらに75重量%のメタノール水溶液
を通過させた後、室温および60℃の水で洗浄し、油剤
を付与した後、100℃の乾熱ロールで乾燥し巻き取っ
た。この試料を試料18とする。さらに、第1浴をnー
ヘキサンからシリコンオイルに置き換えた以外は試料1
8と全く同じ条件で紡糸して、同様にセルロース繊維を
得た。この試料を試料19とする。試料18,19を実
施例6とする。これらの試料の組成分析結果および性能
を表5に示す。
セルロース試料(DP=300)30gを、室温でイオ
ン交換水35.1gおよびロダンカルシウム・4水和物
184.9gと混合し、窒素置換して70℃で2時間浸
漬処理した後、110℃に昇温し3時間撹拌溶解してセ
ルロース濃度が12重量%のセルロースドープを調製し
た。このドープを孔径0.08mmφで孔数15個を有す
るノズルから25℃の空気雰囲気中にエアーギャップ紡
糸法(ギャップ長50mm)で吐出し、5℃のn−ヘキ
サン浴(第1浴)中に導き、得られた冷却ゲルの糸条体
を一組のネルソンロール間で空気中で2.5倍延伸し、
次いで20℃のメタノール浴(第2浴)に導き、同浴で
1.3倍延伸し、さらに75重量%のメタノール水溶液
を通過させた後、室温および60℃の水で洗浄し、油剤
を付与した後、100℃の乾熱ロールで乾燥し巻き取っ
た。この試料を試料18とする。さらに、第1浴をnー
ヘキサンからシリコンオイルに置き換えた以外は試料1
8と全く同じ条件で紡糸して、同様にセルロース繊維を
得た。この試料を試料19とする。試料18,19を実
施例6とする。これらの試料の組成分析結果および性能
を表5に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】
【表5】
【0037】
【発明の効果】本発明は、セルロースの直接溶解能力に
優れ、かつ安定で低毒性な溶媒を用いる極めて単純なプ
ロセスでドープを調製することが可能なセルロース繊維
の製造方法である。本発明の製造方法によると、これま
でに試みられたロダンカルシウム塩水溶液を溶媒にした
セルロース繊維の製造方法では達成できなかった、実用
性に著しく優れる性能を有する繊維すなわち、乾燥およ
び湿潤時の力学的物性に優れ、かつ耐摩耗性に優れた性
能を併せ持つ、総合的性能に優れるセルロース繊維を提
供することができる。
優れ、かつ安定で低毒性な溶媒を用いる極めて単純なプ
ロセスでドープを調製することが可能なセルロース繊維
の製造方法である。本発明の製造方法によると、これま
でに試みられたロダンカルシウム塩水溶液を溶媒にした
セルロース繊維の製造方法では達成できなかった、実用
性に著しく優れる性能を有する繊維すなわち、乾燥およ
び湿潤時の力学的物性に優れ、かつ耐摩耗性に優れた性
能を併せ持つ、総合的性能に優れるセルロース繊維を提
供することができる。
Claims (2)
- 【請求項1】セルロースと49〜63重量%のロダンカ
ルシウム塩水溶液とからなるセルロースドープを紡糸用
ノズルから吐出させ、水およびロダンカルシウムを抽出
し得る溶剤中を通過させ、セルロース濃度が15重量%
以上の濃縮されたゲル状糸条体となしてから、セルロー
スの連続糸条体に成形することを特徴とするセルロース
繊維の製造方法 - 【請求項2】セルロースと49〜63重量%のロダンカ
ルシウム塩水溶液とからなるセルロースドープを紡糸用
ノズルから吐出させゲル状糸条体となした後、水および
ロダンカルシウムを抽出し得る溶剤中を通過させ、セル
ロース濃度が15重量%以上の濃縮されたゲル状糸条体
となしてから、セルロースの連続糸条体に成形すること
を特徴とするセルロース繊維の製造方法
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP29112494A JPH08158147A (ja) | 1994-11-25 | 1994-11-25 | セルロース繊維の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP29112494A JPH08158147A (ja) | 1994-11-25 | 1994-11-25 | セルロース繊維の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08158147A true JPH08158147A (ja) | 1996-06-18 |
Family
ID=17764773
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP29112494A Withdrawn JPH08158147A (ja) | 1994-11-25 | 1994-11-25 | セルロース繊維の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH08158147A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US6790503B2 (en) | 1998-06-22 | 2004-09-14 | Target Technology Company, Llc | Metal alloys for the reflective or the semi-reflective layer of an optical storage medium |
US6841219B2 (en) | 1998-06-22 | 2005-01-11 | Han H. Nee | Metal alloys for the reflective or the semi-reflective layer of an optical storage medium |
-
1994
- 1994-11-25 JP JP29112494A patent/JPH08158147A/ja not_active Withdrawn
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US6790503B2 (en) | 1998-06-22 | 2004-09-14 | Target Technology Company, Llc | Metal alloys for the reflective or the semi-reflective layer of an optical storage medium |
US6841219B2 (en) | 1998-06-22 | 2005-01-11 | Han H. Nee | Metal alloys for the reflective or the semi-reflective layer of an optical storage medium |
US6852384B2 (en) | 1998-06-22 | 2005-02-08 | Han H. Nee | Metal alloys for the reflective or the semi-reflective layer of an optical storage medium |
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