JPH08158035A - オーステナイト系金属に対する浸炭処理方法およびそれによって得られたオーステナイト系金属製品 - Google Patents

オーステナイト系金属に対する浸炭処理方法およびそれによって得られたオーステナイト系金属製品

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JPH08158035A
JPH08158035A JP8847095A JP8847095A JPH08158035A JP H08158035 A JPH08158035 A JP H08158035A JP 8847095 A JP8847095 A JP 8847095A JP 8847095 A JP8847095 A JP 8847095A JP H08158035 A JPH08158035 A JP H08158035A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】母材強度を劣化させることなくオーステナイト
系金属の浸炭処理を可能にする。 【構成】浸炭処理に先立って、フッ素系ガス雰囲気下で
オーステナイト系金属を加熱状態で保持し、ついで浸炭
処理の際の温度を680℃以下の温度に設定して浸炭す
るようにした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、オーステナイト系金属
に対して浸炭処理を施し、その表面を硬質化する浸炭処
理方法およびそれによって得られたオーステナイト系金
属製品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】オーステナイト系金属、とくにオーステ
ナイト系ステンレスは、高耐蝕性および高装飾性を有す
るため、最も広く使用されている。特に、ボルト,ナッ
ト,ねじ,ワッシャ,ピン等のファスナー類は、上記特
性に鑑み、オーステナイト系ステンレス材料によって構
成されている。しかしながら、上記のようなオーステナ
イト系ステンレス製品は、それ自体の材料強度は、一般
の炭素鋼材と異なり、その多くは、最終形状に仕上げる
までの中間加工工程での強化によって高められる。例え
ば、プレス加工,押し出し成形加工,パンチング加工等
によってオーステナイト系ステンレス自体の結晶構造を
緻密化させ、材料強度を向上させることが行われてい
る。このような中間加工工程での材料強度の強化の程度
は、ボルト,ナット等の形状に対する制約や、押し出し
成形加工等における金型コスト等の制約があることか
ら、おのずと限界が生ずる。したがって、ボルト,ナッ
ト,ねじ等のオーステナイト系ステンレス製品に対し
て、締めつけ時の材料強度や焼付防止ならびに鋼板に対
するタップ能力等が要求される時には、硬質クロムメ
ッキやNi−P等の湿式メッキを施したり、物理蒸着
(physical vaper depositi
n,PVD)等の皮膜コーティングを施したり、窒化
のような浸透硬化処理を施すこと等が行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記のような
湿式メッキや、PVD等のような皮膜コーティングにつ
いては、オーステナイト系ステンレス製品の表面に形成
された皮膜の剥離等が生じ、製品寿命が短かくなるとい
う問題を生じる。
【0004】また、窒化のような浸透硬化処理のうち、
窒化処理は、オーステナイト系ステンレス材料の表面か
ら内部に窒素原子を浸透させて、その表面層を硬質窒化
層に形成するという方法である。この方法では、オース
テナイト系ステンレス製品の表面硬度は向上するもの
の、肝心の耐蝕性の低下が生ずるという大きな問題があ
る。そのうえ、ステンレス製品の表面粗度が悪くなった
り、表面が膨れたり、また、磁性を帯びたりするという
難点もある。上記のように、窒化によって耐蝕性の低下
が生ずるのは、窒化硬化層中において、オーステナイト
系ステンレス材料自体が有している含有クロム原子(こ
のクロム原子によって耐蝕性の向上が実現される)が、
窒化により、CrN,Cr2 Nというクロム窒化物とな
って消費され、その含有量が低下することによるものと
考えられる。また、上記のような窒化物の生成によっ
て、表面が膨れたり、表面粗度が悪くなる等の問題も生
ずる。
【0005】上記浸透硬化処理の他の方法としては、浸
炭法が存在する。しかし、従来の浸炭法は、オーステナ
イト系ステンレス製品の表面を炭素分を含有するガスと
接触させ、表面層中に炭素原子を浸透させ、硬質な浸炭
層を形成するというものである。このような浸炭法にお
いては、炭素原子の浸透性と固溶限度を考慮し、一般に
鉄のA1 変態点である700℃以上の温度で浸炭処理が
処理されるが、鉄の再結晶温度をはるかに越えた温度
(鉄の再結晶温度は略450℃)に長時間保持されるこ
ととなり、オーステナイト系ステンレス材料自体の有す
る強度が著しく低下するという大きな欠点がある。この
ような浸炭法は、上記のように、浸炭によって材料自体
の強度がかなり低下するという欠点があることから、元
来がそれほど大きな材料硬度を有していないオーステナ
イト系ステンレス製品については、その適用が考慮され
ていない。また、先に述べたように、ボルト,ナット,
ねじ等のファスナー類に対する強度の向上は、上記のよ
うにプレス,押し出し,パンチング等によって行われて
いて、材料全体の強度向上を実現させることによって行
われていることから、浸炭法によって表面硬度のみを向
上させるという技術の適用は考慮されていないのが実情
である。
【0006】この発明は、このような事情に鑑みなされ
たもので、オーステナイト系金属自体の強度を低下させ
ずに、表面硬度を大幅に向上させ、しかも、オーステナ
イト系金属自体の優れた耐蝕性が損なわれていない硬質
表面層をもつオーステナイト系金属に対する浸炭処理方
法およびそれによって得られたオーステナイト系金属製
品の提供をその目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、この発明は、浸炭処理に先立って、フッ素系ガス雰
囲気下でオーステナイト系金属を加熱状態で保持し、つ
いで浸炭処理の際の温度を680℃以下の温度に設定し
て浸炭処理するオーステナイト系金属に対する浸炭処理
方法を第1の要旨とし、その浸炭処理方法によって得ら
れた、表面から10〜70μmの深さの表面層が炭素原
子の浸入によって硬化して浸炭硬化層に形成され、この
浸炭硬化層の硬度がマイクロビッカース硬度で700〜
1050(HV)に形成され、上記浸炭硬化層中には粗
大クロム炭化物粒子が存在していないオーステナイト系
金属製品を第2の要旨とする。
【0008】
【作用】本発明者らは、オーステナイト系金属に対する
表面硬度を向上させるため、一連の研究を重ねる過程
で、浸炭処理に際し、フッ素系ガスで前処理すると、オ
ーステナイト系ステンレス等のオーステナイト系金属に
対し、鋼のA1 変態点以下の温度での浸炭処理が可能に
なるのではないかと着想し、これに基づき一連の研究を
重ねた。この研究の過程で、前記の着想のように、浸炭
処理に先立ち、または、浸炭処理と同時に、フッ素系ガ
スで処理すると、従来、不可能視されていた浸炭処理が
可能になるのであり、特に、その浸炭処理の温度も従来
のような700℃以上の温度ではなく680℃以下の温
度、好適には500℃よりも低温側にすると、より効果
的な浸炭が実現できることを見いだした。そして、この
ようにすることにより、オーステナイト系ステンレス製
品等のオーステナイト系金属製品の表面から10〜70
μmの深さの表面層が浸炭層に形成され、この浸炭層の
硬度が、マイクロビッカーズ硬度で520〜1180H
v、好適には、700〜1050Hvに形成され、しか
も、その浸炭層中に粗大クロム炭化物粒子が析出しなく
なることを見いだし、本発明に到達した。このようにし
て得られた浸炭処理品は、表面層が硬質になっており、
しかもオーステナイト系金属自体の有する耐蝕性は殆ど
損なわれていない。また、表面が膨れたり、表面粗度が
悪くなる等の難点もない。
【0009】上記粗大クロム炭化物粒子は、通常、0.
1〜5μmであるが、これより微細なクロム炭化物であ
っても、上記浸炭層中に含有されていても表面硬度の向
上等の効果の実現には、支障がない。また、上記浸炭層
中の炭素濃度を、その上限が2.0重量%ないし、その
近傍にしたときには、表面硬度の向上効果が一層大きく
なる。また、オーステナイト系金属製品を構成するオー
ステナイト系ステンレス材料等のオーステナイト系金属
の材質が、ニッケルを32重量%以上または、モリブデ
ンを1.5重量%以上含有する安定形オーステナイト系
ステンレス等のオーステナイト系金属であるときには、
浸炭による耐蝕性の低下が一層小さくなるという効果が
得られるようになる。
【0010】つぎに、この発明について詳しく説明す
る。
【0011】この発明は、オーステナイト系金属に対し
て、フッ素ガスを用い前処理したのち、または、前処理
と同時に、浸炭処理を施す。
【0012】上記オーステナイト系金属としては、オー
ステナイト系ステンレス、例えば鉄分を50重量%(以
下「wt%」と略す)以上含有し、クロム分を10wt
%以上含有するオーステナイト系ステンレス等が挙げら
れる。具体的には、SUS316、SUS304等の1
8−8系ステンレス材や、クロムを23wt%、ニッケ
ルを13wt%含有するオーステナイト系ステンレスで
あるSUS310や309、さらに、クロム含有量が2
3wt%、モリブデンを2wt%含むオーステナイト−
フェライト2相系ステンレス材等が挙げられる。さら
に、耐熱鋼であるインコロイ(Ni30〜45wt%,
Cr10wt%以上,残Fe等)も含まれる。また、上
記オーステナイト系金属には、ニッケル分45wt%以
上、クロム20wt%、鉄30wt%、その他モリブデ
ン等を含むニッケル基合金も含まれる。このように、本
発明においてオーステナイト系金属とは、常温で実質的
(実質的とは、60wt%以上がオーステナイト相を有
することをいう)に、オーステナイト相を呈する全ての
金属を意味し、従って、ニッケルをオーステナイト安定
化元素であるマンガンで置換したような、Fe−Cr−
Mn系金属も含まれる。本発明では、これらを母材とい
う。
【0013】このようなオーステナイト系金属材料から
形成されるオーステナイト系金属のうち、特に、オース
テナイト系ステンレス材は、ボルト,ナット,ねじ,ワ
ッシャー,ピン等のようなファスナー類等に多く使用さ
れている。この発明において、オーステナイト系ステン
レス製品等のオーステナイト系金属製品とは、上記のよ
うなファスナー類を含む他、チェーン類,時計のケー
ス,紡績用の杼(スピンドル)の先端,微細な歯車,ナ
イフ等各種のステンレス製品があげられる。
【0014】つぎに、上記のようなオーステナイト系金
属に対し、浸炭処理に先立って、または、浸炭処理と同
時に、フッ素系ガス雰囲気下でフッ化処理が行われる。
このフッ化処理には、フッ素系ガスが用いられる。上記
フッ素系ガスとしては、NF 3 ,BF3 ,CF4 ,H
F,SF6 ,C2 6 ,WF6 ,CHF3 ,SiF4
ClF3 等からなるフッ素化合物ガスが挙げられ、これ
らは、単独でもしくは2種以上併せて使用される。ま
た、これらのガス以外に、分子内にフッ素(F)を含む
他のフッ素系ガスも上記フッ素系ガスとして用いること
ができる。また、このようなフッ素化合物ガスを熱分解
装置で熱分解させて生成させたF2 ガスや、あらかじめ
作られたF2 ガスも上記フッ素系ガスとして用いること
ができる。このようなフッ素化合物ガスとF2 ガスと
は、場合によって混合使用される。そして、上記フッ素
化合物ガス,F2 ガス等のフッ素系ガスは、それのみで
用いることもできるが、通常はN2 ガス等の不活性ガス
で希釈されて使用される。このような希釈されたガスに
おけるフッ素系ガス自身の濃度は、容量基準で、例え
ば、10000〜100000ppmであり、好ましく
は20000〜70000ppm、より好ましくは、3
0000〜50000ppmである。このフッ素系ガス
として最も実用性を備えているのはNF3 である。上記
NF3 は、常温でガス状であり、化学的安定性が高く、
取扱いが容易である。このようなNF3 ガスは、通常、
上記N2 ガスと組み合わせて、上記の濃度範囲内で用い
られる。
【0015】上記フッ化処理についてより詳しく述べる
と、この発明では、まず、炉内にバージン(未処理)の
オーステナイト系金属を入れ、上記濃度のフッ素系ガス
雰囲気下に、加熱状態で保持し、フッ化処理する。この
場合、加熱保持は、オーステナイト系金属自体を、例え
ば、250〜600℃、好適には、280〜450℃の
温度に保持することによって行われる。上記フッ素系ガ
ス雰囲気中での上記オーステナイト系金属の保持時間
は、通常は、10数分〜数十分に設定される。オーステ
ナイト系金属をこのようなフッ素系ガス雰囲気下で処理
することにより、オーステナイト系金属の表面に形成さ
れた、Cr2 3 を含む不働態皮膜がフッ化膜に変化す
る。このフッ化膜は、不働態皮膜に比べ、浸炭に用いる
炭素原子の浸透を容易にすると予想され、オーステナイ
ト系金属の表面は、上記フッ化処理によって「C」原子
の浸透の容易な表面状態になるものと推測される。
【0016】つぎに、上記のようなフッ素処理を行った
後、浸炭処理を行う。浸炭処理は上記オーステナイト系
金属自体を680℃以下の温度、好適には600℃以下
の温度、より好適には400〜500℃の温度に加熱
し、CO2 +H2 からなる浸炭用ガス、または、RX
〔RXの成分、CO23容量%(以下「vol%」と略
す),CO2 1vol%,H2 31vol%,H2 O1
vol%,残部N2 〕+CO2 からなる浸炭用ガス等を
用い、炉内を浸炭用ガス雰囲気にして行われる。このよ
うに、本発明では、浸炭処理をオーステナイト系金属の
芯部の軟化・溶体化を生起させない低温で行うのであ
り、これが最大の特徴である。この場合、上記CO2
2 の比率は、CO2 2〜10vol%、H2 30〜4
0vol%が好ましく、RX+CO2 は、RXが80〜
90vol%、CO2 が3〜7vol%の割合が好まし
い。また、浸炭に用いるガスは、CO+CO2 +H2
用いられる。この場合、それぞれの比率は、CO32〜
43vol%、CO2 2〜3vol%、H2 55〜65
vol%の割合が好適である。
【0017】このように処理することにより、オーステ
ナイト系金属の表面に「炭素」の拡散浸透層が深く均一
に形成される。この浸透層は、基相であるγ−相中に、
多量のCが溶解して格子歪を起こした形態となってお
り、母材に比べて著しく硬度の向上を実現し、しかも耐
蝕性も母材と同程度を保持している。例えば、代表的な
オーステナイト系ステンレスであるSUS316板片を
サンプルとし、これを炉内に入れ、NF3 +N2 (NF
3 10vol%、N2 90vol%)のフッ素系ガス雰
囲気下において、300℃で40分間フッ化処理し、つ
いで、上記フッ素系ガスを炉から排出したのち、浸炭用
ガスであるCO+CO2 +H2 (CO32vol%、C
2 3vol%、H2 65vol%)を炉内に導入し、
450℃で16時間保持し、浸炭処理した。その結果、
SUS316板材の表面に、表面硬度Hv=880(芯
部230〜240)、深さ20μmの硬化層が形成され
た。この硬化サンプルをJIS 2371の塩水噴霧試
験に供したところ、480時間を越えても全く発錆しな
かった。また、上記硬化層は、硬化層の耐腐食試験に用
いられるビルラ試薬(酸性ピクリン酸アルコール溶液)
でもエッチングされず、王水によってかろうじてエッチ
ングされた。また、上記硬化サンプルは、表面粗度もほ
とんど悪化せず、膨れによる寸法変化ならびに磁性も生
じていなかった。そして、本発明者らは、オーステナイ
ト系金属片の種類、浸炭処理温度等を種々に組み合わせ
てさらに研究を重ねた結果、浸炭処理温度が600℃を
越えると、オーステナイト系金属の芯部の軟化が生じや
すくなること、硬化層の耐蝕性が大幅に低下することを
突き止めた。耐蝕性の見地からいえば、特に浸炭処理温
度は600℃以下、好適には500℃以下に設定すると
好結果がもたらされる。より好ましい浸炭処理温度は、
先に述べたように、400〜500℃である。また、本
発明者らの研究の結果、オーステナイト系金属の中で
も、ニッケルを多量に含む安定型オーステナイト系ステ
ンレス、また、モリブデンを含有する安定型オーステナ
イト系ステンレスほど、硬化後も耐蝕性が良好であるこ
とが明らかになった。
【0018】上記のようなフッ化処理および浸炭処理
は、例えば、図1に示すような金属製のマッフル炉で行
われる。すなわち、このマッフル炉内において、まずフ
ッ化処理をし、ついで浸炭処理を行う。図1において、
1がマッフル炉、2はその外殻、3がヒータ、4は内容
器、5はガス導入管、6は排気管、7はモーター、8は
ファン、11は金網製のかご、13は真空ポンプ、14
は排ガス処理装置、15,16はボンベ、17は流量
計、18はバルブである。この炉1内に、例えばオース
テナイト系ステンレス製品10を入れ、ボンベ16を流
路に接続しNF3 等のフッ素系ガスを炉1内に導入して
加熱しながらフッ化処理をし、ついで排気管6からその
ガスを真空ポンプ13の作用で引き出し排ガス処理装置
14内で無毒化して外部に放出する。つぎに、ボンベ1
5を流路に接続し炉1内に先に述べた浸炭用ガスを導入
して浸炭処理を行い、その後、排気管6、排ガス処理装
置14を経由してガスを外部に排出する。この一連の作
業によりフッ化処理と浸炭処理がなされる。
【0019】このように、この発明の浸炭処理によれ
ば、処理品は、オーステナイト系金属自体の高耐蝕性を
保持するのであるが、これは、つぎのような理由による
と考えられる。すなわち、本願発明においては、浸炭に
先立って、フッ化処理を施すことによって、浸炭処理の
際の温度を680℃以下の低温で行うことが可能となる
のであるが、このような低温による浸炭処理によって、
オーステナイト系金属内に存在するクロム成分(これが
耐蝕性を発揮すると思われる)がCr7 2 やCr23
6 等の炭化物として析出固定しにくくなって、その析出
固定量が低くなり、それによってオーステナイト系金属
内に残存するクロム成分が多くなるからと考えられる。
これは、図2b〜cに示すSUS316の各浸炭処理品
をNF3 10vol%+N2 90vol%のフッ素系ガ
ス雰囲気下300℃で40分フッ化処理したのち、CO
32vol%+CO2 3vol%+H2 65vol%の
浸炭用ガス雰囲気下で600℃、4時間浸炭処理(図
3)、450℃16時間浸炭処理〔図2(b)〕の硬化
層のX線回折結果を、未処理品〔図2(a)〕それと対
象することによってあきらかである。すなわち、図3に
示す600℃の浸炭においては、Cr236 のピークが
シャープで高い。これは、上記クロム炭化物が比較的多
く析出し、オーステナイト系金属内に残存するクロム成
分が少なくなっていることを意味する。これに対して4
50℃で浸炭処理した図2(b)においては、Cr23
6 のピークがほとんど認められないことから、上記炭化
物の析出量が著しく小さく、したがって、オーステナイ
ト系金属内に残存するクロム成分が多く、耐蝕性が高い
ものとみられる。
【0020】また、浸炭処理品の硬度の向上は、炭素原
子の浸透によるγ−格子歪み発生に起因することが考え
られる。これは、450℃での浸炭処理品〔図2
(b)〕の、X線回折におけるγ−相のピーク位置およ
び480℃で浸炭処理後酸洗品〔図2(c)〕のγ−相
のピーク位置が、SUS316未処理品のγ−相のピー
ク位置よりも低角度側(左側)にシフトしていることか
ら、浸炭処理品〔図2(b),(c)〕にはγ−格子歪
が生じていることが明らかである。なお、上記X線回折
は、RINT1500装置を用い、50kV,200m
A,Cuターゲット,条件下に行った。
【0021】本願発明においては、浸炭処理の温度が高
くなり、特に450℃を越えると、たとえわずかでもC
236 等の炭化物が硬化層の表面に析出するという現
象が生じる。しかし、このような場合でも、その浸炭処
理品をHF−HNO3 ,HCl−HNO3 等の強酸に浸
漬すると、上記析出物が除去され、母材なみの耐蝕性
と、ビッカース硬度Hv=850以上の高い表面硬度と
を保持することができる。図2(c)は、図2(a)で
示すSUS316板材を480℃で浸炭処理をした後、
濃度5vol%HF−15vol%HNO3 の強酸に2
0分間浸漬した処理品のX線回折チャートであり、上記
炭化物は全く観察されていない。このようにして、浸炭
処理されたオーステナイト系金属、たとえばオーステナ
イト系ステンレス製品は、その表面に形成された浸炭硬
化層の表面が浸炭によって黒色になっているとともに、
場合によって、その浸炭硬化層の最表面層が鉄系内部酸
化層になっている。すなわち、このような表面の内部酸
化層は、浸炭の際の雰囲気中に、場合によって、多少酸
素原子が存在しており、この酸素原子の存在により形成
されるものである。このような内部酸化層の除去は、先
に述べたように、HF−HNO3 ,HCl−HNO3
の強酸に浸漬して、上記析出物を除去することにより行
うことができ、それによって、母材なみの耐蝕性と、ビ
ッカース硬度Hv=850以上の高い表面硬度とを保持
することができる。そして、上記処理によって、内部酸
化層が除去されたオーステナイト系ステンレス製品は、
浸炭処理を施す前の光輝状態を示すようになる。これに
ついてより詳しく述べると、浸炭処理後に、その処理品
の表面をよく観察すると、最表層において、表面から深
さ2〜3μmに暗色を呈する層が存在し、これが鉄の内
部酸化層であることがX線回折によって確かめられた。
これは、つぎのように考えられる。すなわち、400〜
500℃の範囲でのCOを含む雰囲気下では、浸炭(C
O→CO2 +C)と同時にFeの酸化(4CO2 +3F
e→4CO+Fe3 4 )が共存する領域であり、この
ために上記内部酸化層が形成されたものと考えられる。
このような鉄の内部酸化層は、700℃以上の温度で処
理する従来の浸炭処理法ではみられないものである。4
80℃で12時間浸炭処理を行ったSUS316L(C
=0.02wt%,Cr=17.5wt%,Ni=1
2.0wt%,Mo=2.0wt%)系ソケットボル
ト,ならびにワッシャの例でさらに述べると、硬化層深
さは30μm、表面硬度はマイクロビッカーズでHv=
910を示した。つぎに、黒色の、これら浸炭処理品を
50℃に加熱した5wt%HF−25wt%HNO3
液に20分間浸漬した後、ソフトブラストをかけたとこ
ろ、ほぼ浸炭処理を施す前の光輝状態の外観を持つソケ
ットボルトならびにワッシャが得られた。これをJIS
2371の塩水噴霧試験に供したところ、2000時
間を過ぎても全く発錆しなかった。また、JIS 05
78の塩化第二鉄を用いた孔食試験の結果もほとんど未
処理SUS316材と同等であった。
【0022】なお、上記浸炭硬化層に関してであるが、
500℃以下の低温領域においては、オーステナイト組
織下でのCの拡散速度が相当遅いため、最も硬化層が厚
くなるSUS316L系の場合でも、処理温度490
℃、処理時間12時間で37μmの浸炭硬化層ができる
が、さらに12時間浸炭時間を追加しても、全浸炭硬化
層は、49μmにしかならない。70μmの硬化層深さ
を得るためには、70時間以上を要することになる。お
そらく、このような長時間処理は経済性を失うであろ
う。できるだけ深い硬化層を要求されるドリルタッピン
グの場合でも、40μmの硬化層で2.3tのSPCC
(冷延鋼板)が充分ドリリング可能であり、経済性を失
わない処理時間の範囲で、有用な浸炭硬化層を得ること
ができる。
【0023】
【発明の効果】以上のように、本発明は、浸炭処理に先
立って、または、浸炭処理と同時に、フッ素系ガス雰囲
気下でオーステナイト系金属を加熱状態で保持するた
め、浸炭処理の際の温度を680℃以下の低温にするこ
とができる。したがって、オーステナイト系金属自身の
有する耐蝕性、高加工性等を全く損なうことなく、高い
表面硬度を実現することが可能となる。そして、本願発
明では、浸炭処理によって上記のような表面高度を向上
させることから、オーステナイト系金属表面の表面粗度
の悪化現象や、膨れに基づく寸法精度の低下ならびに、
オーステナイト系金属自体が磁性を帯びる等の不都合を
全く生じない。
【0024】このようにして得られたオーステナイト系
ステンレス製品等のオーステナイト系金属製品は、オー
ステナイト系金属製品の表面から10〜70μmの深さ
の表面層が、炭素原子の浸入によって硬化して浸炭硬化
層に形成され、この浸炭硬化層の硬度がマイクロビッカ
ース硬度で、520〜1180(Hv)、好適には、7
00〜1050(Hv)に形成されている。しかも、上
記浸炭硬化層中に、粗大クロム炭化物粒子が析出してい
ないため、得られる製品は、オーステナイト系金属自体
の有する耐蝕性を有し、しかも高い表面硬度を備えてい
る。そのため、オーステナイト系金属製品のうち、オー
ステナイト系ステンレスからなる、ボルト,ナット,ね
じ等のファスナー類に関しては、締結時の強度や、焼付
防止ならびに鋼板に対するタップ能力等の優れた性能を
有しており、特に、装飾性と同時に耐久性も要求される
ような用途、たとえば自動車用の室内外に用いられるフ
ァスナー類等に有用である。
【0025】つぎに、実施例について比較例と併せて説
明する。
【0026】
【実施例1および比較例1】実施例として、SUS31
6(Cr含量18wt%,Ni含量12wt%,Mo含
量2.5wt%,残部部Fe)およびSUS304(C
r含量18wt%,Ni含量8.5wt%,残部Fe)
の2.5mm厚板片をそれぞれ準備した。また、ニッケ
ル基材料であるNCF601(Ni含量60wt%,C
r含量23wt%,Fe14wt%)の1mm厚板片を
準備した。比較例として、フェライト系ステンレスであ
るSUS430(C含量0.06wt%,Cr含量1
7.5wt%,残部Fe)および、マルテンサイト系ス
テンレスであるSUS420J2(C含量0.32wt
%,Cr含量13wt%,残部Fe)の2.5mm厚板
片をそれぞれ準備した。
【0027】つぎに、これらの材料を、それぞれ図1に
示すマッフル炉1内に入れ、炉1内を充分に真空パージ
した後、300℃に昇温させた。そして、その状態でフ
ッ素系ガス(NF3 10vol%+N2 90vol%)
を入れ、炉1内を大気圧と同圧にし、その状態で10分
間フッ化処理した。つぎに、上記フッ素系ガスを炉1か
ら排出した後、炉1内を450℃まで加熱し、その温度
を保持した状態で、浸炭用ガス(CO10vol%,C
2 2vol%,H2 10vol%,残部N2)を導入
し、16時間保持して浸炭処理した。
【0028】得られたサンプルは、実施例品(SUS3
16,SUS304,NCF601)については、表面
が黒色となっていた。比較例品については、このような
黒色表面化は生じていなかった。つぎに、実施例品につ
いて、上記黒色表面層をこすり落とし、表面硬度,浸炭
硬化層の深さを求めた。なお、比較例品も対照用として
同様の測定を行った。その結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】上記表1の結果からあきらかなように、実
施例品は、いずれも浸炭処理により表面硬度が著しく向
上しており、浸炭硬化層も形成されているのに対し、比
較例品ではそのような現象が全くみられないことがわか
る。なお、これら実施例のSUS316,SUS30
4,NCF601の断面の顕微鏡写真を図4,図5,図
6に示す。これらは、光学顕微鏡を用い、倍率600倍
で撮影したものである。これらの図において、図の下側
から生地層,浸炭硬化層,樹脂層(真黒の部分)を示し
ている。なお、上記樹脂層は、試料を樹脂中に埋め込ん
だ状態における埋め込み樹脂からなる層のことである。
【0031】つぎに、上記実施例品について、それぞれ
エメリーペーパーによって研磨光沢をだし、JIS 2
371の塩水噴霧試験(SST)および15wt%HN
3の50℃溶液に浸漬して再度別種の耐蝕性試験を行
うとともに、透磁率も測定した。その結果を、SUS3
16,SUS304,NCF601の未処理品、ならび
にそれらの材料を窒化した窒化品と併せて表2に示し
た。
【0032】
【表2】
【0033】なお、上記SUS316,SUS304,
NCF601において、比較例となる窒化品の製作は、
つぎのようにして行った。すなわち、上記実施例で用い
たのと同様の炉を用い、同様の条件で同様のフッ素系ガ
スを用い40分間フッ化処理した。つぎに、上記フッ素
系ガスを炉内から排出したのち、窒化ガス(NH3 50
vol%+N2 25vol%+H2 25vol%)を導
入し、炉内を580℃に昇温させ、その状態で3時間保
持して窒化処理した。
【0034】上記表2の結果より、実施例品は、窒化品
よりもSST発錆までの時間が長く、また15wt%H
NO3 浸漬でも変化がなく、窒化品よりも著しく耐蝕性
に優れていることがわかる。また、窒化品が磁性を帯び
ているに対し、実施例品は、磁性を全く帯びないことが
わかる。さらに、実施例品は窒化品に比べてほとんどふ
くれが生じていず、寸法精度が高いこともわかる。
【0035】
【実施例2】SUS316(Cr含量17wt%,Ni
含量13wt%,Mo3wt%,残部Fe)線材より圧
造成形したM6ボルトと、非磁性ステンレス(Cr含量
17.8wt%,Ni含量11.5wt%,Mn含量
1.4wt%,N含量0.5wt%,残部Fe)線材よ
り圧造成形したタッピングねじ(直径4mm)ならび
に、実施例1で使用したSUS316板材,SUS30
4板材をサンプルとし、図1に示す炉内に入れ、400
℃に加熱、実施例1と同様にしてフッ化処理した。つぎ
に、浸炭用ガスとの混合ガス(CO50vol%+H2
10vol%+残部N2 )を炉内に導入し、その状態で
32時間保持し、処理した。この場合には、フッ化処理
と浸炭処理とが略同時に行われている。そして、得られ
たサンプルをエアブラストにかけ、表面の黒色層(1〜
2μm厚)を除去して表面高度を測定したところ、SU
S316からなるM6ボルトの硬度はHv=820,非
磁性タッピングねじの硬度はHv=860,SUS31
6板材の硬度はHv=780,SUS304板材の硬度
はHv=830で,硬化層の深さは、それぞれ18μ
m,19μm,20μm,21μmであった。
【0036】つぎに、上記のようにして得られた実施例
品を15wt%HNO3 の60%溶液に30分浸漬し、
付着鉄分を完全に除去したのち、前記SST試験にか
け、耐蝕性を試験した。その結果、SUS316のボル
ト,非磁性ステンレスねじ,SUS316板材の3者は
480時間を越えても全く発錆しなかった。また、30
4板材については、71時間経過後、かすかに赤く発錆
した。これらの結果から、耐蝕性も前記の実施例と、ほ
ぼ同様に優れた結果が得られることがわかる。
【0037】
【実施例3】実施例1で用いたSUS316板材,SU
S304板材およびNCF601板材を実施例1と同様
の炉に入れ、400℃に昇温し、実施例1で用いたと同
様のフッ素系ガスを導入し、実施例1と同様にしてフッ
化処理した後、各材料を480℃に昇温させ、その状態
で浸炭用ガス(吸熱型発生ガス:RX30vol%,C
2 2.5vol%,N2 65vol%からなる混合ガ
ス)を導入した。そして、その状態で12時間保持した
後、取り出した。得られた実施例品の表面には、実施例
1と同様、黒色スケールが付着していた。そこで、この
黒色スケールを除去するため、強酸浸漬処理を行った。
すなわち、上記強酸(HNO3 15vol%,HF3v
ol%の混合溶液)の50℃溶液に10分浸漬したの
ち、エアブラストに軽くかけた。その結果、黒色スケー
ルが除去され、未処理品(フッ化処理,浸炭処理のなさ
れていないもの)と同様の表面外観となった。他方、上
記のような強酸浸漬処理を施さず、単にフッ化処理した
後、浸炭処理を施した実施例品と上記強酸浸漬処理を行
ったものとを対比し、表面硬度,硬化層の深さ,および
SST発錆試験を行った。その結果は、表3のとおりで
ある。
【0038】
【表3】
【0039】上記のように、強酸浸漬処理を施すと、そ
れを施さないものに比べて、耐蝕性が大幅に向上するこ
とがわかる。
【0040】なお、316板材の強酸浸漬処理品につい
て、X線回折処理を行った結果は、図2(c)に示すと
おりであり、図2(c)ではCr炭化物は全く同定され
ていない。また、生地γ−相格子に炭素を多量に含んだ
ことによる格子歪みの発生によって、γ−相のピーク位
置が未処理材のそれよりかなり低角度側にシフトしてお
り、このことは、大きな格子歪みが発生し、硬化の起源
となっていることの証となっている。
【0041】
【実施例4】実施例1で用いたSUS316の板材を実
施例1と同様にしてフッ化処理をしたのち、600℃に
昇温させた。つぎに、浸炭用ガス(N2 50vol%+
RX50vol%)を導入し、4時間保持した後、取り
出した。
【0042】この実施例品は、表面硬度Hv=900、
硬化層の深さ35μmであった。つぎに、表面をよく研
磨した後、SST発錆試験に供した。発錆までの時間
は、4時間であり、窒化品に比べ、SST発錆試験の結
果は良好ではあるが、ステンレスの耐蝕性としては不充
分と考えられる。この実施例品のX線回折結果は、図3
のとおりであり、Cr炭化物,Mo炭化物のシャープな
回折線が多く認められた。
【0043】
【実施例5】実施例2で用いたSUS316板材からな
るボルトおよび非磁性ステンレスからなるタッピングね
じを用い、実施例3と同様にフッ素系ガスと浸炭用ガス
の混合ガスを用い、フッ化処理と浸炭処理とを同時に行
った。この場合、温度は510℃であり、保持時間は8
時間に変えた。このようにして得られたねじ類の頭部の
表面硬度は、Hv=920とHv=980であり、硬化
層深さは、それぞれ26μm,28μmであった。
【0044】つぎに、実施例3と同様にして強酸浸漬処
理を施したのち、表面硬度を測定した結果、表面硬度H
v=580,Hv=520と大幅に低下した。
【0045】この原因は、実施例3の場合よりも浸炭温
度が30℃高くなったことから、表面層側にクロム炭化
物が多く析出し、そのため、耐蝕性劣化部が大きくな
り、その部分が強酸によって浸食除去されたことから、
表面硬度の低下現象が生じたためと予測される。
【0046】
【実施例6】溶体化処理(固溶化処理)を施したもの
と、同程度の芯部硬度(Hv=150〜160)を有す
る複数個のSUS316(Cr含量17.5wt%,N
i含量11wt%,NO含量2wt%)板片およびSU
S304(C含量0.06wt%,Cr含量17.5w
t%,Ni8wt%,残部Fe)板片ならびにSUS3
16線材から圧造成形したM6ボルトをそれぞれ複数個
準備した。これら複数個準備したうちの、数個の板片お
よびボルトをそれぞれ図1に示す実験炉に入れ、320
℃に加熱し、その状態でフッ素系ガス(NF3 10vo
l%+N2 90vol%)を吹込みフッ化処理した後、
同炉から取り出しフッ化サンプルとした。
【0047】つぎに、残りの非フッ化サンプルと、上記
のようにしてフッ化処理されたフッ化サンプルとを一緒
にして再び図1に示す実験炉に入れ460℃に昇温さ
せ、その温度を保持した状態で浸炭用ガス(CO20v
ol%,H2 75vol%,CO2 1vol%)を吹込
み12時間保持して浸炭処理した。
【0048】上記のように処理されたサンプルのうち、
フッ化サンプル(実施例品)についてはそれぞれ表面が
黒色を呈していた。これに対しフッ化処理をしていない
非フッ化サンプル(比較例品)に付いては殆ど処理前の
外観,金属光沢を保っていた。つぎに、上記実施例品に
付いて表面硬度を調べたところ、それぞれHv=920
〜1050の表面硬度を示した。また、実施例品の硬化
層の深さはそれぞれ20μm〜25μmであった。他
方、フッ化処理を行わなかった比較例品に付いては、全
く表面硬度の向上は見られなかった。
【0049】
【比較例2】実施例6で用いたSUS316線材を、圧
造成形したM6ボルトを対象とした。このボルトは、そ
の頭部ならびにネジ山部が、それぞれ上記圧造成形によ
り硬度がHv=350〜390に達している。このボル
トをジョブショップ(熱処理受託加工メーカー)におけ
る通常のオールケース型浸炭炉に入れ920℃で60分
の浸炭処理を施した。
【0050】その結果、浸炭処理されたボルトの表面硬
度はHv=580〜620℃となり硬化層の深さは25
0μmとなっていた。しかしながら、ボルトの頭部およ
びねじ山部の硬度はHv=230〜250と著しく低下
していた。そして、このような浸炭処理のなされたボル
トを塩水噴霧試験に供したところ、6時間で全面に赤錆
が発生した。
【0051】
【実施例7】SUS316L材およびSUS310材
(C=0.06wt%,Cr=25wt%,Ni=2
0.5wt%)ならびにXM7材(C=0.01wt
%,Cr=18.5wt%,Ni=9.0wt%,Cu
=2.5wt%)より圧造したM4ソケットボルトなら
びにSUS304材より成形したM6ボルトを準備し、
いずれも頭部の表面硬度を測定した。SUS316L製
ボルト;Hv=340、SUS310製ボルト;Hv=
350、XM7製ボルト;Hv=320、SUS304
製ボルト;Hv=400であった。つぎに、これらを図
1に示す炉にて350℃に加熱した時点で、N2 +5v
ol%NF3 を15分間導入した後、N2 のみに切り換
え、480℃に昇温した。つぎに、H2 20vol%+
CO10vol%+CO2 1vol%+残部N2 の浸炭
性ガスを導入し、その雰囲気中で15時間保持して取り
出した。全サンプルが黒色を呈していたが、洗浄後、表
面硬度と炭化硬化層深さを測定したところ、SUS31
6;Hv=880,深さ38μm、SUS310;Hv
=920,深さ30μm、XM7;Hv=890,深さ
33μm、SUS304;Hv=1080,深さ20μ
mであった。ついで、炭化硬化層の断面を王水で腐食し
て顕微鏡観察を行ったところ、SUS304ボルトは硬
化層,未硬化部共に黒色を呈しているのに対し、SUS
316およびSUS310からなるボルトは、炭化硬化
層が白色を帯びて明るくなっており、XM7からなるボ
ルトはややこの二者に比べて暗色を呈していた。
【0052】つぎに、これらのサンプルの全てを、50
℃の5wt%HF−20wt%HNO3 溶液に10分間
浸漬して取り出した。強酸浸漬後の炭化硬化層の状態
は、つぎのとおりであった。SUS316;Hv=86
0,深さ=35μm、SUS310;Hv=880,深
さ=28μm、XM7;Hv=650,深さ=25μ
m、SUS304;Hv=450,深さ=5μm。ま
た、SUS316,SUS310,XM7の酸浸漬品を
JIS 2371の塩水噴霧試験に供したが、2000
時間を越えても発錆しなかった。
【0053】
【実施例8】実施例1で使用したSUS316ソケット
ボルトを実施例1で示したと同一のフッ化処理を施した
後、510℃において、H2 20vol%+CO10v
ol%+CO2 1vol%+残部N2 で12時間保持し
て取り出した。頭部の表面硬度はHv=1020、浸炭
硬化層の深さは、45μmであった。つぎに50℃の5
wt%HF−28wt%HNO3 溶液に10時間浸漬し
て取り出し、硬化層状態を調べたところ、表面硬度Hv
=650で、硬化層は、20μmと、浸漬前に比べて減
少しており、HF−HNO3 溶液によって、エッチング
されていることがわかった。
【0054】
【実施例9】Cu分を2wt%含んだSUS316L線
材から、4ミリ径のドリルタッピングねじ(首下長25
mm)を圧造成形した。これを、実施例1と同様の方法
で、浸炭処理条件のみを、490℃,処理時間16時間
として浸炭処理を施した。その後、処理品を55℃の3
wt%HF−15wt%HNO3 溶液に15時間浸漬
し、さらにショットブラストをかけた。ショットブラス
ト後のものの浸炭硬化層を測定したところ、表面硬度H
v=890,硬化層深さ42μmであった。つぎに、2
13tのSPCCを準備し、ハンドドライバーで、ドリ
リングテストをしたところ、鉄系浸炭品とほぼ同等のド
リリング性能が得られた。
【0055】
【実施例10】実施例1で使用した316Lソケットボ
ルトと、310ボルトを実施例1と同様な方法でフッ化
処理し、つぎに、430℃まで上昇し、また実施例1と
全く同様の浸炭性ガスを用いて24時間保持し、取り出
した。この時の表面硬度は、316材でHv=720、
310材でHv=780、硬化層厚さは、21μm,1
6μmであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の浸炭処理に用いる炉の構成図である。
【図2】(a)はSUS316未処理品のX線回折図で
あり、(b)はSUS316板材の浸炭処理を450℃
で行った処理品のX線回折図であり、(c)はSUS3
16板材の浸炭処理を480℃で行った後、強酸浸漬処
理を行った処理品のX線回折図である。
【図3】SUS316板材の浸炭処理を600℃で行っ
た処理品のX線回折図である。
【図4】SUS316板材の浸炭を450℃で行った処
理品の断面の顕微鏡写真図である。
【図5】SUS304板材の浸炭を450℃で行った処
理品の断面の顕微鏡写真図である。
【図6】NCF601板材の浸炭を450℃で行った処
理品の断面の顕微鏡写真図である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成7年4月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正内容】
【図4】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図5
【補正方法】変更
【補正内容】
【図5】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正内容】
【図6】 ─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成7年7月6日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図面の簡単な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の浸炭処理に用いる炉の構成図である。
【図2】X線回折図であって、(a)はSUS316未
処理品のX線回折図であり、(b)はSUS316板材
の浸炭処理を450℃で行った処理品のX線回折図であ
り、(c)はSUS316板材の浸炭処理を480℃で
行った後、強酸浸漬処理を行った処理品のX線回折図で
ある。
【図3】SUS316板材の浸炭処理を600℃で行っ
た処理品のX線回折図である。
【図4】SUS316板材の浸炭を450℃で行った処
理品の断面の顕微鏡写真図である。
【図5】SUS304板材の浸炭を450℃で行った処
理品の断面の顕微鏡写真図である。
【図6】NCF601板材の浸炭を450℃で行った処
理品の断面の顕微鏡写真図である。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 浸炭処理に先立って、フッ素系ガス雰囲
    気下でオーステナイト系金属を加熱状態で保持し、つい
    で浸炭処理の際の温度を680℃以下の温度に設定して
    浸炭処理することを特徴とするオーステナイト系金属に
    対する浸炭処理方法。
  2. 【請求項2】 浸炭処理の際の温度が、400〜500
    ℃に設定されている請求項1記載のオーステナイト系金
    属に対する浸炭処理方法。
  3. 【請求項3】 フッ素系ガス雰囲気下における上記加熱
    が、オーステナイト系金属を250〜450℃の温度範
    囲にして行われる請求項1または2記載のオーステナイ
    ト系金属に対する浸炭処理方法。
  4. 【請求項4】 オーステナイト系金属が、オーステナイ
    ト系ステンレスである請求項1〜3のいずれか一項に記
    載のオーステナイト系金属に対する浸炭処理方法。
  5. 【請求項5】 オーステナイト系金属が、ニッケルを3
    2重量%以上含有するNi基合金である請求項1〜4の
    いずれか一項に記載のオーステナイト系金属に対する浸
    炭処理方法。
  6. 【請求項6】 表面から10〜70μmの深さの表面層
    が炭素原子の浸入によって硬化して浸炭硬化層に形成さ
    れ、この浸炭硬化層の硬度がマイクロビッカース硬度で
    700〜1050(HV)に形成され、上記浸炭硬化層
    中には粗大クロム炭化物粒子が存在していないことを特
    徴とするオーステナイト系金属製品。
  7. 【請求項7】 オーステナイト系金属がオーステナイト
    系ステンレスである請求項6に記載のオーステナイト系
    金属製品。
  8. 【請求項8】 硬質表面層をもつオーステナイト系ステ
    ンレス製品の材料が、モリブデンを1.5重量%以上含
    有する安定形オーステナイト系ステンレスである請求項
    6記載の硬質表面層をもつオーステナイト系金属製品。
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