JPH08155722A - Ｔ溝フライス - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 経済的なＴ溝フライスを提供することであ
る。 【構成】 Ｔ溝フライスにおいて、３つの切刃取付座を
互いに１２０度となるようにＴ溝フライス本体に設け、
第１切刃取付座にはＴ溝のフライス盤から遠い側を切削
する第１ひし形切刃を取付け、第２切刃取付座にはＴ溝
のフライス盤に近い側を切削する第２ひし形切刃を取付
け、第３切刃取付座には円形または多角形の第３切刃を
取付けている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、Ｔ溝加工用のＴ溝フラ
イスに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来のＴ溝フライスは、切削径が比較的
小さい場合は切刃を２枚備えており、切削径が比較的大
きい場合や送り速度を上げる際は切刃を４枚にして切刃
の負担を軽減し、切刃の材質には割れにくい超硬合金を
採用している。また、切り残しを残さないために図８に
示すように２枚の切刃３、４がそれぞれ切削する範囲を
長さＣ₂でラップさせ、切刃３の切削部３１と切刃４の
切削部４１をなるべく一致する（図８で一直線になる）
ように調整しており、切刃を４枚にしても切刃３が２
枚、切刃４が２枚となるだけで、２枚の組の切刃がそれ
ぞれ同じ箇所を切削していた。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】従来は切り残しを生じ
ないように図８（静止した観察者が従来のＴ溝フライス
のＴ溝加工部１ａの一箇所を正面から見た場合におい
て、Ｔ溝フライスを回転させて各切刃のそれぞれの位置
を重ね合わせた正面略図）に示すように切刃３、４はそ
れぞれ長さＣ₂だけラップして切削しており、また、切
刃３の切削部３１（Ｃ₂＋Ｃ₃）と切刃４の切削部４１
（Ｃ₂＋Ｃ₄）が取付誤差により図５（静止した観察者が
従来のＴ溝フライスのＴ溝加工部１ａの一箇所を正面か
ら見た場合において、Ｔ溝フライスを回転させて各切刃
のそれぞれの位置を重ね合わせた正面略図）に示すよう
に段Ｂ₂を生じると、片方の切刃（図５では切刃４）が
被加工物に刃の全面（切削部４１すなわちＣ₂＋Ｃ₄）が
当たってしまい、切刃（図５では切刃４）に大きな負担
が掛かり、損傷が激しくなるため、Ｔ溝フライスの取付
けや切刃の取付けを、図６（静止した観察者が本発明の
Ｔ溝フライスのＴ溝加工部１ａの一箇所を正面から見た
場合において、Ｔ溝フライスを回転させて各切刃のそれ
ぞれの位置を重ね合わせた正面略図）に示す段Ｂ₂を生
じないように、すなわち図８に示すように切削部３１、
４１を一致させるため、かなりの精度が要求された。し
かし、図８において長さＣ₂をラップさせると、回転さ
せながらＤ方向へ送る時長さＣ₃は切刃３が、長さＣ₄は
切刃４が、長さＣ₂は切刃３、４が半分づつ切削し、切
刃３は長さＣ₂と長さＣ₃で、切刃４は長さＣ₂と長さＣ₄
で切削量に差が生じるため各切刃の長さ方向の部分的に
掛かる力が不均一となり、送り速度を上げることが困難
であり、また、各切刃の部分的に掛かる力が不均一とな
るので切刃の破損、消耗が激しく、いつ破損するか予想
することができないため切刃の信頼性が低く、交換用の
切刃の在庫管理が難しかった。従来は割れにくく剛性の
高い超硬合金製の切刃を使用していたが、切刃１枚当り
のコストが高く、また、破損や消耗が激しいため、高価
な切刃を経済的に使用することができなかった。また、
切刃取付座は、Ｔ溝フライスを硬く焼き入れした後では
修正することができないため（修正手段がない）、Ｔ溝
フライスを少し加減して焼き入れし、切刃の刃先が図８
に示すように切削部３１、４１が一致するように修正し
て仕上げなければならず、Ｔ溝フライスそのものの硬度
が低く、変形する恐れがあった。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明は、Ｔ溝フライス
において、少なくとも３つの切刃取付座をＴ溝フライス
本体に設け、第１切刃取付座にはＴ溝のフライス盤から
遠い側を切削する第１切刃を取付け、第２切刃取付座に
はＴ溝のフライス盤に近い側を切削する第２切刃を取付
け、第１切刃取付座と第２切刃取付座の間の第３切刃取
付座には円形または多角形の第３切刃を取付け、第３切
刃は第１切刃が切削する部分と第２切刃が切削する部分
の間でＴ溝フライス本体の回転中心線を基準に第１、第
２切刃よりも外周側へ突出していることを特徴とするＴ
溝フライスである。

【０００５】

【実施例】図１は本発明を適用したＴ溝フライス１００
の外観図を示しており、図１下方のフライス盤（図示せ
ず）に垂直に固定されたＴ溝フライス本体１（一般使用
時は上下逆）、円形切刃２、第１、第２ひし形切刃３、
４、切刃取付座５、６、７等を備えている。切刃取付座
５、６、７はＴ溝フライス本体１の一端の外向きフラン
ジの３箇所を切り欠いたＴ溝加工部１ａ（切刃保持部）
に１２０度等間隔に形成しており、切刃取付座５、６、
７には図１および図２に示すように円形切刃２と第１、
第２ひし形切刃３、４をそれぞれすり割付（十字穴付で
も可）皿ねじ８で固定するためのねじ孔５ａ、６ａ、７
ａがそれぞれ設けてある。図１の矢印ＥはＴ溝フライス
１００の回転方向である。

【０００６】ひし形切刃３、４は図１に示すように、従
来のＴ溝フライスと同じように図１の上下方向に位置を
ずらして配置しており、中心線１ｂと略直角で図４に示
す壁面２１を切削する切削部３Ａ、壁面２３を切削する
切削部４Ａと中心線１ｂと略平行で壁面２２を切削する
切削部３Ｂ、４ＢをＴ溝加工部１ａより軸方向および半
径方向に突出するように備え、さらに円形切刃２をひし
形切刃３の切削部３Ｂが切削する部分とひし形切刃４の
切削部４Ｂが切削する部分の間でＴ溝フライスの回転中
心線１ｂを基準にひし形切刃３、４よりも外周側を切削
するように配置している。以上のように構成したＴ溝フ
ライス１００をフライス盤（図示せず）に被加工物５０
を切削することができるように（例えば図１の上下が逆
となるように）取り付ける。切刃２、３、４としては超
硬合金製、硬質セラミック製またはサーメット製を採用
することができる。

【０００７】次に動作を説明する。図３は、Ｔ溝加工す
る前の固定された被加工物５０を示しており、被加工物
５０には予め幅Ａ（Ｔ溝フライス本体１に干渉しな
い）、奥行きＨ１および図３の紙面に対して直角方向に
延びる溝５１を形成しておく。これはＴ溝加工する際に
Ｔ溝フライス本体１が被加工物５０に干渉しないように
するために必要な作業であり、従来から行われている前
段階の作業である。また、図１２に示すように、溝５１
の奥行きは切削時にＴ溝フライス１００と干渉しないよ
うな寸法Ｈ２としてもよい。この場合、寸法Ｈ３および
寸法Ａで示した点線部分はＴ溝フライス１００で切削す
る。本発明には無関係であるが、幅ＡはＪＩＳ規格によ
り精度よく仕上げる必要がある。なお、図３の二点鎖線
は本発明のＴ溝フライス１００によるＴ溝加工後の断面
形状を示している。

【０００８】フライス盤（図示せず）に取り付けられた
Ｔ溝フライス１００（図１）は、図４に示すように円形
切刃２、ひし形切刃３、４によってそれぞれＴ溝の奥行
き方向の壁面２２の長さＣ₂、Ｃ₃、Ｃ₄を切削する。円
形切刃２は、Ｂ₁だけひし形切刃３、４よりも突出して
いるため、ひし形切刃３、４よりも早く切削作業を開始
する。図９、図１０、図１１は切削の途中の状態の被加
工物５０を示しており、図１０、図１１の方向ＤにＴ溝
フライスを移動させ、円形切刃２は少しづつ被加工物５
０を切削し、やがてひし形切刃３、４も被加工物５０と
接触し始め、切削作業を開始する。壁面２２には円形切
刃２によって形成された円弧状切削部９があり、本発明
の特色を示している。

【０００９】図４において円弧状切削部９は、壁面２２
からＢ₁だけ余分に切削しており、Ｂ₁は左右の両壁面２
２間の長さＢに対して十分小さく、ＪＩＳの切削誤差の
範囲内である。

【００１０】図４（静止した観察者がＴ溝フライスのＴ
溝加工部１ａの一箇所を正面から見た場合において、Ｔ
溝フライスを回転させて各切刃のそれぞれの位置を重ね
合わせた正面略図）はひし形切刃３、４のＴ溝フライス
本体１に対する取付けがＢの幅で一致した場合を二点鎖
線で示しているが、実際にはこのような取付調整は困難
であり、かつ手間が掛かるので図５のように段違いの関
係になる場合の方が多い。この場合に生じる段Ｂ₂は、
図６に示すように円形切刃２を寸法Ｂ₁（Ｂ₁＞Ｂ₂）に
設定して削り取るようにする。

【００１１】本実施例では、図１、図２、図４、図６に
示すように円形切刃２と、ひし形切刃３、４を採用した
が、切刃取付座の加工が容易であればどのような形状で
も差し支えない。例えば、図７に示すように円形切刃２
の代わりに５角形の切刃２ａを採用してもよいし、ひし
形切刃３、４の代わりに三角形の切刃３ａ、４ａを採用
してもよい。また図示していないが、円形切刃２の代わ
りに５角以上の多角形の切刃や三角形や四角形の切刃を
採用してもよいし、ひし形切刃３、４の代わりに四角
形、円形の切刃を採用してもよい。

【００１２】また、使用する切刃の取付枚数は３枚に限
らず、４、５、６、７、８枚またはそれ以上でもよく、
それらの切刃は図１の回転中心線１ｂを中心として円周
上に等間隔に配置するのが望ましいが、切削する際にＴ
溝フライス１００が振動したり異音を発生しないように
バランスよく配置（例えば切刃が４枚の場合に、隣合う
切刃を６０度および１２０度の間隔で配置）してもよ
い。Ｔ溝のＣ寸法が大きい場合に上述のような３枚以上
の切刃を使用する必要が生じるが、その場合には図１
３、図１４に示すように円形切刃２同士の間で切り残し
を生じないように配置し、この場合でも、円形切刃２の
代わりに上述のような円形以外の異なる形状の切刃を採
用しても差し支えない。

【００１３】

【発明の効果】本発明は、それぞれの切刃は一回転毎に
必ず仕事をするので、偏った消耗の仕方をせず切刃の消
耗の仕方が安定するため、切刃の交換時期を容易に管理
することができる。これにより切刃の在庫管理がし易く
なり、また従来と比較して切刃に掛かるコストを大幅に
低減することができ、非常に経済的である。円形切刃を
新たに採用し、切刃を３枚にしたことにより切刃の全面
当りを回避することができ、切削周速度（Ｔ溝フライス
の回転速度）を上げることができ、加工速度（送り速
度）を従来の倍以上にすることができ、加工時間の大幅
な短縮を図ることができる。１枚当りの切刃の負荷が安
定するので送り速度を上げることができ、旋盤加工に使
用する安価なサーメット製の切刃が使用でき、経済的で
ある。また、安価なサーメット製の切刃を経済的に使用
することができるので、切刃１枚当たりのコストを大幅
に下げることができる。また、切刃の交換回数が減少
し、切刃の取り替えの手間が少なくなり、作業能率が向
上する。円形切刃は、刃が消耗しても図１、図２のすり
割付皿ねじ８を緩めて回転させることにより、新しい切
刃と交換しなくても複数回使用することができ、経済的
である。３枚の切刃を円周上等間隔に配置すると、図４
のＣ₂、Ｃ₃、Ｃ₄と約３分の１づつ切削するので、Ｔ溝
フライスにかかる切削抵抗が安定し、切削作業中に異音
や振動が発生しない。Ｔ溝フライス１００（図１）をフ
ライス盤（図示せず）に取り付ける際に、取付精度を従
来より粗くできるので、従来ほど取付けに時間が掛から
ず、作業能率を向上させることができる。切刃取付座の
形成が従来ほど精度よく仕上げる必要がないので、Ｔ溝
フライスの焼き入れを一気に硬く仕上げることができ、
Ｔ溝フライスの硬度を向上させることができ、外力の作
用により変形しにくくなり、Ｔ溝フライスの耐久性が向
上する。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明を適用したＴ溝フライスの外観を示す
斜視図である。

【図２】 本発明を適用したＴ溝フライスの切刃の配置
を示す平面図である。

【図３】 被加工物５０のＴ溝を切削する前工程の切削
溝５１を示す正面図である。

【図４】 本発明のＴ溝フライスが切削したＴ溝全体の
形状を示す縦縦断正面略図である。

【図５】 従来のＴ溝フライスの切刃３の切削部３１と
切刃４の切削部４１が段Ｂ₂を生じている場合の正面略
図である。

【図６】 本発明の各切刃の取付位置の関係を示す正面
略図である。

【図７】 本発明のひし形切刃３、４の代わりに三角形
の切刃３ａ、４ａを、円形切刃２の代わりに多角形の切
刃２ａを採用した場合を示す正面略図である。

【図８】 従来のＴ溝フライスの２枚の切刃の刃先が完
全に一致している状態を示す正面略図である。

【図９】 本発明のＴ溝フライスにより途中まで切削し
た被加工物の正面図である。

【図１０】 図９のX−X矢視図である。

【図１１】 図１０のXI−XI矢視図である。

【図１２】 被加工物のＴ溝を切削する前工程の図３と
は異なる切削溝５１ａを示す正面図である。

【図１３】 両端にひし形切刃３、４を使用し、中間部
に円形切刃２を２枚使用した場合の切削溝を示す正面図
である。

【図１４】 図１３で円形切刃２を３枚使用した場合を
示す正面図である。

【符号の説明】

１ Ｔ溝フライス本体 １ｂ （Ｔ溝フライス１００の）回転中心線 ２ 円形切刃（第３切刃） ３ ひし形切刃（第１切刃） ４ ひし形切刃（第２切刃） ５ （第３）切刃取付座 ６ （第２）切刃取付座 ７ （第１）切刃取付座 １００ Ｔ溝フライス

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 Ｔ溝フライスにおいて、少なくとも３つ
   の切刃取付座をＴ溝フライス本体に設け、第１切刃取付
   座にはＴ溝のフライス盤から遠い側を切削する第１切刃
   を取付け、第２切刃取付座にはＴ溝のフライス盤に近い
   側を切削する第２切刃を取付け、第１切刃取付座と第２
   切刃取付座の間の第３切刃取付座には円形または多角形
   の第３切刃を取付け、第３切刃は第１切刃が切削する部
   分と第２切刃が切削する部分の間でＴ溝フライス本体の
   回転中心線を基準に第１、第２切刃よりも外周側へ突出
   していることを特徴とするＴ溝フライス。