JPH08140538A - 釣 糸 - Google Patents

釣 糸

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JPH08140538A
JPH08140538A JP31274594A JP31274594A JPH08140538A JP H08140538 A JPH08140538 A JP H08140538A JP 31274594 A JP31274594 A JP 31274594A JP 31274594 A JP31274594 A JP 31274594A JP H08140538 A JPH08140538 A JP H08140538A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 従来の釣糸に比べて細く、軽量でありなが
ら、しかも伸びが小さくてアタリが分かり易く、更に耐
久性にも優れている。 【構成】 重量平均分子量が50万以上、引張強さが
15g/デニール以上、破断伸度が6%以下、初期弾性
率が450g/デニール以上、フィラメント繊度が10
デニール以下のポリエチレンマルチフィラメント糸を用
いて組紐または撚糸の形態に形成した釣糸。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、釣糸、特に非常にし
なやかで、かつ軽量であって、しかも優れた耐摩耗性と
高強力を有する超高分子量ポリエチレンマルチフィラメ
ント糸からなり、深海釣り、投釣り、磯釣り、ルアー釣
り、渓流釣り等のレジャー用に特に有用な釣糸に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】レジャー用の釣糸には、元来、絹繊維や
馬の尾の毛を撚り合わせたものが使用されてきたが、最
近では、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・1
0、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリフッ化
ビニリデン等の化学繊維のモノフィラメント糸およびタ
ングステンやアモルファス金属等の金属繊維が用いられ
ている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ナイロ
ン製の釣糸は、伸びが大きいので、アタリ(魚信)が分
かり難く、またポリエステル製の釣糸は、ナイロン製に
比べて伸度が小さいが、深海釣り用に使用した場合に
は、釣糸が非常に長くなるため、やはりアタリが分かり
難いという問題があった。一方、タングステン等の金属
繊維は、強力が大きく、伸びが小さい点で上記のナイロ
ン製やポリエステル製に比べて著しく優れているが、比
重が大きいため軽量化の点で難色があり、かつ上記のよ
うに引張強さが大きい反面、結節強さが小さいため、鼻
環等に締結して使用する場合に問題があった。
【0004】この発明は、従来の釣糸に比べて細く、軽
量でありながら、しかも伸びが小さくてアタリが分かり
易く、更に耐久性にも優れた釣糸を提供するものであ
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明の釣糸は、重量
平均分子量が50万以上、引張強さが15g/デニール
以上、破断伸度が6%以下、初期弾性率が450g/デ
ニール以上、フィラメント繊度が10デニール以下のポ
リエチレンマルチフィラメント糸からなることを特徴と
する。
【0006】この発明の釣糸を構成する繊維は、重量平
均分子量が50万以上、好ましくは100万以上の超高
分子量ポリエチレンを原料とし、例えば特開昭56−1
5408号公報、特開昭55−107506号公報、特
開昭58−152261号公報、特開昭58−1546
22号公報および特開昭58−161044号公報等に
記載された方法で製造することができる。この超高強力
ポリエチレン繊維は、高い強力特性を有すると共に、結
節強力、引掛強力についても高い強力保持率を示し、耐
摩耗性、耐薬品性、耐紫外線劣化性、耐水性および耐油
性等に代表される耐久性能においても、アラミド繊維や
アリレート繊維等の従来の高強力繊維をはるかに凌ぐ高
い性能を有しているが、この発明では、このような超高
強力ポリエチレン繊維のうち特に引張強さが15g/デ
ニール以上、破断伸度が6%以下、初期弾性率が450
g/デニール以上のフィラメントからなるマルチフィラ
メント糸が使用される。
【0007】上記の引張強さが15g/デニール未満の
場合は、この発明が目的とする高強力の釣糸を得ること
が困難になる。また、破断伸度が6%を超えると、上記
同様に高強力の釣糸を得ることが困難になり、かつ魚信
も得られ難くなる。また、初期弾性率が450g/デニ
ール未満の場合は、魚信の伝播が遅くなる。
【0008】そして、この発明の上記マルチフィラメン
ト糸を構成する1本のフィラメントの繊度は、10デニ
ール以下、好ましくは5デニール以下、特に好ましくは
2デニール以下である。すなわち、フィラメントの繊度
を比較的小さくすることにより、マルチフィラメント糸
を構成するフィラメント相互間の空隙が小さくなり、個
々のフィラメントが相互に固定され易く、動き難くな
る。そして、この繊度が10デニール超の場合は、釣糸
の柔軟性が低下し、硬くなって結節強力が低下すると共
に、耐摩耗性、引張強さ、弾性率が低下する一方、破断
伸度が増大するため、釣糸として使用時のアタリが分か
り難くなる。
【0009】なお、上記結節強力は、10g/デニール
以上が好ましく、該結節強力が10g/デニール未満の
場合は、鼻環に締結した場合等に締結部が破断し易くな
る。そして、ポリエチレンマルチフィラメント糸の直線
強力に対する結節強力の保持率は、32%以上であるこ
とが好ましい。この保持率が32%未満の場合は、締結
部が長期間の使用によって破断し易くなる。
【0010】上記フィラメントの断面形状は、異形、特
に偏平であることが好ましく、異形の場合は表面積が真
円に比して大きくなるため、単位面積当りに加わる摩擦
力が小さくなり、耐摩耗性が向上する。上記異形の程度
を表す指標として、上記フィラメントの断面輪郭線に外
接する円の半径と内接する円の半径との比を使用する
と、この外接円および内接円の半径比は、1.1〜8.
0が好ましく、この半径比が1.1未満では、表面積が
真円とほとんど変わらず、反対に8.0を超えた場合
は、結節強度が低下する。そして、異形断面とすること
により、同一繊度の円形断面糸に比して剛性が向上し、
釣糸としての腰を高める効果が生じる。
【0011】上記のフィラメントは、その3〜100本
を集束してマルチフィラメント糸とすることにより、結
節強力および引掛強力の高い釣糸とすることができる
が、複数本のマルチフィラメント糸で組紐を編組し、こ
の組紐を釣糸として使用することにより、上記フィラメ
ントの強力利用率および釣糸の結節強力を高くすること
ができ、かつキンクが発生しない。この場合、組紐を構
成するマルチフィラメント糸の本数は3〜36本、特に
4〜8本が好ましく、組紐の組角度は8〜25度、特に
18度以下が好ましい。上記マルチフィラメント糸の本
数が3本未満では組紐を構成することができず、36本
を超えると、組紐を構成するマルチフィラメント糸が細
くなり過ぎて耐摩耗性が低下すると共に、組紐の芯部に
空洞が形成される。また、組角度が8度未満では、釣糸
が柔らか過ぎ、目が開き易く、釣針の先が食い込む等の
トラブルが発生し易くなり、反対に25度を超えると、
釣糸が太くなり過ぎ、かつ引張強さ、結節強力および耐
摩耗性が低下し、更に柔軟性が失われる。
【0012】上記のマルチフィラメント糸で組紐を構成
する代わりに双糸または三子の撚り糸を構成して釣糸と
することができる。この場合、撚り数(回/インチ)を
T、繊度(デニール)をDとしたとき、K=(T×D
1/2 )/73で定義される撚係数Kが、下撚では0〜
1.0に、上撚では0.1〜1.5にそれぞれ設定され
ることが好ましい。上記下撚りの撚係数Kが1.0を超
えると、強度低下が大きくなり、また上撚の撚係数Kが
0.1未満では、加撚による形態保持が不可能となり、
反対に1.5を超えると、強度低下が大きくなる。
【0013】上記の組紐または撚り糸は、その編組後ま
たは撚糸後に0.05〜15g/デニールの荷重で緊張
しアフターストレッチを施し、次いで50〜100℃の
温度でヒートセットすることにより、構造歪を除去し、
破断伸度とポリエチレンフィラメントの破断伸度との差
で表される構造伸度を1.5%以下、特に1.0%以下
に小さくし、寸法安定性を高めることが好ましい。
【0014】この発明の釣糸は、例えば深海釣やルアー
釣の場合の長さの目安として50mごとに色分けした
り、見易くしたりする目的で着色することができる。ま
た、鮎釣りの場合の囮となる鮎の攻撃心を煽る目的で黄
色に着色して、釣果を上げることができる。この着色
は、フィラメントの断面中心部と周辺部の濃度差が20
%以内となるように均一に行われることが好ましい。上
記の濃度差が20%を超すと、周辺部のみが着色された
ことになり、耐光褪色堅牢度の低いポリエチレンフィラ
メントの耐光褪色堅牢度が一層低下するため、好ましく
ない。なお、上記の断面中心部とは、繊維断面の輪郭線
に対する外接円の中心から上記外接円の半径の1/3の
距離よりも内側の部分をいい、周辺部とは上記外接円の
中心から外接円の半径の2/3の距離よりも外側の部分
をいう。また、濃度とは、上記フィラメントを構成する
ポリエチレン中に含まれる染料または顔料の量を重量で
表したものであり、濃度差とは、その比率を表す。
【0015】フィラメントを着色する染料または顔料
は、デカリンに対する溶解度が温度25℃で0.001
%以上、特に0.01〜0.5%であることが好まし
い。この溶解度が0.001%未満の場合は、溶解不十
分となり、繊維の高強度化を妨げる原因となる。好適な
染料としては、ソルベントイエロー16、ソルベントイ
エロー56、ソルベントブラック7、ソルベントレッド
4、ソルベントブルー14、ソルベントブルー25、ソ
ルベントクリーン28、ソルベントバイオレット13等
の油溶性染料、ディスパースバイオレット31、ディス
パースイエロー64等の分散染料、または溶媒に可溶な
一部の塩基性染料、酸性染料等が挙げられるが、これに
限るものではない。ここで、溶解度とは、デカリン10
0g中に溶解する染料の重量をgで表示したときの比率
を%で表したものである。
【0016】上記のようにフィラメントの原料であるポ
リエチレンを着色する代わりに、釣糸を着色樹脂で被覆
することができる。この被覆用の樹脂としては、ウレタ
ン系、エポキシ系等の汎用樹脂を採用することができ、
顔料としては、有機系、無機系のいずれでもよいが、耐
光性に優れたものを選択することが好ましい。被覆する
ための手段としては、溶剤で希釈した樹脂液に浸漬、乾
燥する方法が例示される。
【0017】顔料を含む樹脂でマルチフィラメント糸を
被覆し、固めることにより、耐光褪色堅牢度に優れた着
色が可能になる。そして、超強力ポリエチレン繊維に対
する接着性の良好な樹脂を使用することにより、摩擦汚
染堅牢度においても実用上問題にならない程度の製品が
得られる。また、上記の樹脂で固めることにより、組紐
の目ずれが防止され、組紐を釣針が貫通するトラブルも
発生し難くなる。なお、上記樹脂の付着量は、繊維量の
0.5〜40重量%、特に10〜30重量%が好まし
く、この付着量が0.5重量%未満では効果がなく、4
0重量%を超えると、釣糸が太くなったり、固くなった
りする等の欠陥が生じる。
【0018】
【作用】この発明の釣糸は、重量平均分子量が50万以
上の超高強力ポリエチレンのマルチフィラメント糸から
なり、引張強さが15g/デニール以上で、従来のナイ
ロン6やナイロン66からなる釣糸に比べて大きいた
め、同じ目的に対しては釣糸太さを細くすることがで
き、しかも比重が0.97と小さいため、軽量化に有効
である。また、破断伸度が6%以下で、従来のナイロン
6やナイロン66からなる釣糸に比べて小さく、また初
期弾性率が450g/デニール以上で、従来のナイロン
6やナイロン66からなる釣糸に比べて大きいため、ア
タリが分かり易く、釣糸として好適である。
【0019】そして、この発明の釣糸は、モノフィラメ
ント糸ではなく、繊度10デニール以下の細いフィラメ
ント多数本の集束体であるマルチフィラメント糸を使用
しているので、1本のフィラメントの曲げに対する内部
歪が小さくなり、そのため柔軟性に優れ、結節強力が向
上する。また、マルチフィラメント糸を構成する個々の
フィラメントが比較的太い場合は、外力によって内層の
フィラメントが外層に露出し易く、そのため岩石その他
の摩擦体に接触した際に内外層のフィラメントがランダ
ムに摩耗し、摩耗箇所の分子鎖切断に伴って未切断部分
の張力負担が大きくなり、フィラメントが損傷を受けて
から切断に至るまでの寿命が短縮されるが、この発明で
は、上記のとおり細いフィラメントが集束されているた
め、太いフィラメントを集束した場合に比べ、フィラメ
ント相互間の空隙が小さくなって断面方向の力に対して
フィラメントが移動し難くなり、そのため釣糸が釣針や
岩その他の摩擦体と接触した際、最外層のフィラメント
から順に摩擦を受けて摩耗し、結果的に耐摩耗性が向上
する。
【0020】また、この発明の超高強力ポリエチレンフ
ィラメントは、フィラメントの破断強力が高く、かつ高
配向しているため、上記の摩擦によって繊維表面に微細
なフィブリルが発生し易く、このフィブリルが上記摩擦
体とフィラメントとの間に介在し、摩擦体によるフィラ
メントの損傷を緩和する働きをする。しかも、1本のフ
ィラメントが比較的細いため、マルチフィラメント糸の
繊度が等しく、個々のフィラメントが比較的太い場合に
比べてマルチフィラメント糸を構成する繊維の合計表面
積が広くなり、それだけ微細なフィブリルが発生し易く
なるため、耐摩耗性が一層向上する。
【0021】
【実施例】
実験1 市販の超高分子量ポリエチレンからなる超高強力マルチ
フィラメント糸(重量平均分子量200万)の試料A
(20デニール/20フィラメント)、試料B(20デ
ニール/10フィラメント)、試料C(20デニール/
4フィラメント)、試料D(20デニール/2フィラメ
ント)および上記と同じ方法で製造されたモノフィラメ
ント糸の試料E(20デニール1フィラメント)をそれ
ぞれ8本ずつ用い、実施例1〜4および比較例1の釣糸
を製造し、その引張強さ、破断伸度、初期弾性率、耐摩
耗性および柔軟性を測定した。その結果を表1に示す。
ただし、耐摩耗性能は、JIS−L−1095−199
0(7−10−2)B法(荷重:0.1g/d、摩擦子
直径:0.9mm、摩擦子往復距離:2.5cm、摩擦角
度:110度)に準拠し、試料が切断するまでに要した
摩擦子の往復回数で表し、柔軟性は、JIS−L−10
04(45度カンチレバー法)に準拠し、等速度で移動
する試料が傾斜面に接触するまでに要した長さで表し
た。
【0022】 表 1 実施例1 実施例2 実施例3 実施例4 比較例1 フィラメント糸試料 A B C D E フィラメント繊度(d) 1 2 5 10 20 ストランド繊度 (d) 20 20 20 20 20 フィラメント本数 20 10 4 2 1 フィラメント断面形状 異形 異形 真円 真円 真円 組紐構造 8打組紐 8打組紐 8打組紐 8打組紐 8打組紐 紐紐の編張力(g/d) 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 組紐の組角度(度) 15 15 15 15 15 耐摩耗性能(回) 13354 12209 9032 8231 8003 柔軟性(mm) 32 38 49 61 74
【0023】上記の表1から明らかなとおり、フィラメ
ント繊度の増大と共に、耐摩耗性および柔軟性が低下す
る傾向が認められ、特に比較例1は、フィラメント繊度
が過大で、20デニールであり、かつマルチフィラメン
ト糸でなく、モノフィラメント糸であるため、耐摩耗性
が低く、かつ柔軟性が劣っていた。
【0024】実験2 上記と同じ超高強力フィラメント糸の試料AないしEを
それぞれ4本ずつ合糸して下撚りを加え、この下撚糸2
本を合わせ、上撚りを加えて2子撚りの釣糸とし、上記
同様に耐摩耗性能および柔軟性を比較した。その結果を
下記の表2に示す。
【0025】 表 2 実施例5 実施例6 実施例7 実施例8 比較例2 フィラメント糸試料 A B C D E フィラメント繊度(d) 1 2 5 10 20 ストランド繊度 (d) 80 80 80 80 80 フィラメント本数 80 40 16 8 4 フィラメント断面形状 異形 異形 真円 真円 真円 撚糸構造 2子撚糸 2子撚糸 2子撚糸 2子撚糸 2子撚糸 上撚係数 0.3 0.3 0.3 0.3 0.3 下撚係数 0.3 0.3 0.3 0.3 0.3 耐摩耗性能(回) 11135 10774 8821 7986 7213 柔軟性(mm) 45 46 63 77 91
【0026】上記の表2から明らかなように、撚糸構造
とした場合も、表1の組紐構造の場合と同様に、フィラ
メント繊度の増大と共に、耐摩耗性および柔軟性が低下
する傾向が認められ、特に比較例2は、フィラメント繊
度が過大で、20デニールであるため、耐摩耗性および
柔軟性が共に実施例よりも劣っていた。ただし、表1お
よび表2を比較すると、同じ試料を使用した場合は、表
1(組紐構造)の方が表2(撚糸構造)よりも耐摩耗性
能および柔軟性に優れていた。
【0027】実験3 上記と同じ超高強力フィラメント糸の試料AないしEを
それぞれ60本ずつ使用し、これを集束し、上撚りを加
えて釣糸とし、結節強度、その引張強さに対する強度保
持率、引掛強度、その引張強さに対する強度保持率、耐
摩耗性能および耐屈曲摩耗を測定した。その結果を下記
の表3に示す。ただし、結節強度は、JIS−L−10
13(1981)7の6により測定し、引掛強度はJI
S−L−1013(1981)7の7により測定した。
また、耐屈曲摩耗は、JIS−L−1095法に準拠
(荷重:0.1g/d、曲角度:左右に130度、曲速
度:100回/分)し、試料切断までに要する摩擦子の
往復回数で表した。
【0028】 表 3 実施例9 実施例10 実施例11 実施例12 比較例3 フィラメント糸試料 A B C D E フィラメント繊度(d) 1 2 5 10 20 ヤーン繊度 (d) 1200 1200 1200 1200 1200 フィラメント本数 1160 580 240 120 60 フィラメント断面形状 異形 異形 真円 真円 真円 上撚り数(回/m) 25 25 25 25 25 引張強度(g/d) 32.4 31.1 29.2 22.4 19.9 破断伸度(%) 4.0 4.4 4.6 5.8 8.2 初期弾性率(g/d) 1062 1003 971 675 549 結節強度(g/d) 12.3 10.0 7.8 5.5 3.9 結節強度保持率(%) 38.0 32.3 26.6 24.5 19.5 引掛強度(g/d) 14.9 12.4 8.5 5.8 4.6 引掛強度保持率(%) 46.0 39.9 29.2 25.8 23.1 耐摩耗性能(回) 254153 217211 175184 94402 87002 耐屈曲摩耗(回) 312579 288830 89752 26767 21322
【0029】上記の表3から明らかなように、フィラメ
ント繊度の増大と共に、引張強さおよび初期弾性率が低
下し、破断伸度が大きくなる傾向が認められ、特に比較
例3は、フィラメント繊度が過大で、20デニールであ
るため、破断伸度も8.2%に大きくなった。また、結
節強度、結節強度保持率、引掛強度、引掛強度保持率、
耐摩耗性能および耐屈曲摩耗も、フィラメント繊度の増
大と共に低下した。そして、フィラメント繊度が2デニ
ール以下の実施例9、10は、結節強度が10g/d
を、その強度保持率が32%をそれぞれ超え、耐摩耗性
能および耐屈曲摩耗もそれぞれ20万回を超える優れた
特性を示した。
【0030】実験4 実験1に使用したフィラメント糸試料A(20デニール
/20フィラメント)を8本使用し、組角度を種々に変
えて8打組紐からなる釣糸を5種類製造し、その性能を
比較した。その結果を下記の表4に示す。なお、組紐繊
度はJIS−L−1095に準拠して求めた。また、取
扱性は、試験者5名の実用評価によって判定し、非常に
良好を◎で、良好を〇で、フィラメントのバラケによる
トラブルが発生したものを△で、上記バラケが多発した
ものを×で表した。
【0031】 表 4 実施例13 実施例14 実施例15 実施例16 実施例17 フィラメント糸試料 A A A A A フィラメント繊度(d) 1 1 1 1 1 ストランド繊度 (d) 20 20 20 20 20 組紐構造 8打組紐 8打組紐 8打組紐 8打組紐 8打組紐 組角度(度) 8 18 4 20 30 組紐繊度(デーニル) 166 168 162 172 176 破断強力(kg) 4.87 4.73 4.89 4.44 3.88 破断伸度(%) 4.2 4.3 4.2 4.8 5.4 初期弾性率(g/d) 758 748 776 679 604 結節強力(kg) 2.18 2.11 2.20 1.69 1.16 結節強度保持率(%) 44.6 44.6 44.9 38.0 29.8 耐摩耗性能(回) 15296 13354 12177 11152 9886 耐屈曲摩耗(回) 281791 242579 292579 208621 199355 柔軟性(mm) 54 64 46 71 84 取扱性 〇 ◎ △ ◎ ◎
【0032】上記の表4で明らかなように、組角度を8
〜25度の範囲に設定した実施例13、14、16は、
結節強力、結節強度保持率、耐摩耗性能、耐屈曲摩耗、
柔軟性および取扱性の点でバランスがとれて良好な特性
を備えていたが、組角度が4度と小さい実施例15は、
取扱性に劣り、組角度が30度と大きい実施例17は、
結節強力、その保持率が共に低く、また耐摩耗性能およ
び柔軟性が他に比べて劣っていた。
【0033】実験5 実験1に使用したフィラメント糸試料A(20デニール
/20フィラメント)を8本使用し、撚り係数の異なる
5種類の2子撚糸を製造して釣糸とし、その性能を実験
4と同様に比較した。その結果を下記の表5に示す。
【0034】 表 5 実施例18 実施例19 実施例20 実施例21 実施例22 フィラメント糸試料 A A A A A フィラメント繊度(d) 1 1 1 1 1 ストランド繊度 (d) 80 80 80 80 80 撚糸構造 2子撚糸 2子撚糸 2子撚糸 2子撚糸 2子撚糸 上撚係数 0.1 0.3 1.5 2.0 3.0 下撚係数 0 0.3 1.0 1.5 2.0 撚糸繊度(d) 162 166 177 189 192 破断強力(kg) 4.77 4.72 3.89 3.45 3.21 破断伸度(%) 4.1 4.2 4.3 4.8 5.2 初期弾性率(g/d) 766 739 709 631 589 結節強力(kg) 2.08 2.08 1.52 1.15 1.01 結節強度保持率(%) 43.6 44.1 39.3 33.3 31.4 耐摩耗性能(回) 17915 14665 13821 11152 9886 耐屈曲摩耗(回) 343642 300213 290592 278621 250355 柔軟性(mm) 64 64 64 71 84 取扱性 × 〇 ◎ ◎ ◎
【0035】上記の表5から明らかなように、撚係数の
増大に伴って取扱性が良好になる反面、破断強力、初期
弾性率、結節強力、結節強力保持率、耐摩耗性能および
耐屈曲摩耗がいずれも低下し、破断伸びが増大し、かつ
柔軟性が乏しくなる傾向が認められたが、上撚係数を
0.3〜1.5に、下撚係数を0.3〜1.0の範囲に
設定した実施例19、20は、破断強力、破断伸び、初
期弾性率、結節強力、結節強力保持率、耐摩耗性能、耐
屈曲摩耗、柔軟性および取扱性のバランスが良好であっ
た。
【0036】実験1に使用したフィラメント糸試料A
(20デニール/20フィラメント)8本からなる8打
組紐および2子撚糸を製造し、種々のアフターストレッ
チを加えて、得られた釣糸の引張強さ、破断伸度、初期
弾性率および構造伸度(釣糸の破断伸度と原糸の破断伸
度の差)を比較した。その結果を下記の表6に示す。
【0037】 表 6 実施例番号 23 24 25 26 27 28 フィラメント糸試料 A A A A A A フィラメント繊度(d) 1 1 1 1 1 1 ストランド繊度 (d) 20 20 20 20 80 80 釣糸構造 8打組紐 同 同 同 2子撚糸 同 編張力(g/d) 0.1 0.1 0.1 0.1 − − 組角度(度) 15 15 15 15 − − 上撚係数 − − − − 0.3 0.3 下撚係数 − − − − 0.3 0.3 アフターストレッチ(g/d) 4 3 2 無 3 無 引張強さ(g/d) 29.2 29.1 27.8 28.7 29.1 28.3 破断伸度(%) 4.2 4.4 4.0 4.4 4.2 4.4 初期弾性率(g/d) 736 706 677 699 726 651 構造伸度(%) 1.5 1.8 1.5 2.0 1.5 3.0
【0038】上記の表6から明らかなように、8打組紐
および2子撚糸のいずれにおいてもアフターストレッチ
を行うことにより、構造伸度が小さくなり、釣糸として
の性能が向上することが認められた。
【0039】実験1に使用したフィラメント糸試料A
(20デニール/20フィラメント)、該試料Aと同じ
超高分子量ポリエチレンからなるモノフィラメント糸の
試料F(10デニール/1フィラメント)をそれぞれ4
本ずつ用いて4打組紐の0.2号相当の釣糸を製造し、
市販の0.2号のナイロンモノフィラメント糸製釣糸お
よび0.2号のタングステンモノフィラメント製釣糸と
性能を比較した。その結果を下記の表7に示す。
【0040】 表 7 実施例29 比較例4 比較例5 比較例6 フィラメント糸試料 A F ナイロン タングステン フィラメント繊度(d) 1 10 66 66 釣糸構造 4打組紐 4打組紐 モノフイラメント モノフイラメント 号数(号) 0.2 0.2 0.2 0.2 釣糸繊度 44 44 66 425 破断強力(g) 965 897 421 1209 引張強さ(g/d) 21.9 20.4 6.4 2.8 破断伸度(%) 4.2 5.8 28.7 2.6 初期弾性率(g/d) 688 641 45 234 結節強力(g) 581 489 380 503 結節強さ(g/d) 13.2 11.1 5.8 1.2 柔軟性(mm) 24 48 67 117 耐摩耗性能(回) 6542 3821 3443 18972
【0041】上記の表7から明らかなように、実施例2
9および比較例4は、超高強力ポリエチレンフィラメン
トを使用しているため、引張強さ、破断伸度、初期弾性
率、結節強さおよび柔軟性において優れている。ただ
し、比較例4は、モノフィラメント糸を使用しているの
で、耐摩耗性能が低くなった。また、ナイロン製モノフ
ィラメントを使用した比較例5は、破断伸度が著しく大
きく、初期弾性率および結節強さが低く、釣糸として劣
っていた。また、タングステン製の比較例6は、引張強
さ(g/d)および結節強さ(g/d)が著しく低く、
かつ柔軟性に乏しく、釣糸として劣るものであった。
【0042】実験8 実験1に使用したフィラメント糸試料A(20デニール
/20フィラメント)にアゾ系有機顔料を含有する2液
型ポリウレタン系塗料を塗布し、乾燥し、他は実施例1
と同様にして8打組紐で、黄色の着色被膜を有する実施
例30の釣糸を得た。また、上記塗料の塗布を省略し、
染料としてソルベントブルー14を使用して青色に原料
着色する以外は、実施例1と同様にして実施例31の釣
糸を製造した。また、この実施例31の染料をソルベン
トイエロー16に変更し、黄色に原料着色する以外は、
実施例31と同様にして実施例32の釣糸を製造した。
また、実施例31の染料をソルベントレッド18に変更
し、赤色に原料着色する以外は、実施例31と同様にし
て実施例33の釣糸を製造した。これらの釣糸の着色状
況および性能を下記の表8に示す。ただし、摩擦堅牢度
(汚染)は、JIS−L−0849に準拠して測定し
た。
【0043】 表 8 実施例30 実施例31 実施例32 実施例33 フィラメント繊度(d) 1 1 1 1 ストランド繊度(d) 20 20 20 20 釣糸構造 8打組紐 同 同 同 着色方法 着色被膜 原料着色 原料着色 原料着色 着色剤 顔料 染料 染料 染料 デカリンに対する溶解度(%) − 0.0008 0.005 0.03 断面各部の着色の有無 中心部 無 有 有 有 周辺部 無 有 有 有 被膜部 有 − − − 中心部と周辺部の濃度差(%) − 5 5 5 着色濃度 淡〜濃 淡 淡〜中 淡〜濃 耐光褪色堅牢度(級) 5 3〜4 3〜4 3〜4 耐摩擦褪色堅牢度(級) 1〜2 5 5 4〜5 引張強さ(g/d) 18 23 23 23 破断伸度(%) 6 6 6 6 初期弾性率(g/d) 400 500 500 500
【0044】上記の表8から明らかなように、染料を使
用して原料着色をした実施例31、32、33は、顔料
を塗布した実施例30に比べて繊維内部の着色が良好で
あるため、耐摩擦褪色堅牢度に優れていた。
【0045】
【発明の効果】請求項1に記載した発明は、重量平均分
子量が50万以上、引張強さが15g/デニール以上、
破断伸度が6%以下、初期弾性率が450g/デニール
以上、フィラメント繊度が10デニール以下のポリエチ
レンマルチフィラメント糸からなることを特徴とする釣
糸であり、従来のナイロンモノフィラメント製釣糸に比
して引張強さが大きく、しかも比重が小さいため、同じ
目的に対して釣糸を細く、軽くすることができ、かつ破
断伸度が小さく、初期弾性率が大きいため、アタリが分
かり易く、しかも柔軟で、結束強さおよび耐摩擦性能に
優れるため、結び易くて取扱い容易であり、寿命が延長
される。また、従来のタングステン等の金属製釣糸に比
較して柔軟で、かつ軽く、釣糸としての取扱性が良好で
ある。
【0046】請求項2に記載した発明は、請求項1に記
載した釣糸において、ポリエチレンマルチフィラメント
糸の直線強力に対する結節強力の保持率を32%以上と
したものであるから、鼻環その他における結び目の強度
に対する信頼感が増す。
【0047】請求項3に記載した発明は、請求項1に記
載した釣糸において、フィラメント断面を異形にしたも
のであるから、断面が真円のものに比べて耐摩耗性が向
上すると共に、剛性が向上し、釣糸としての腰が高めら
れる。
【0048】請求項4に記載した発明は、請求項1に記
載した釣糸の構造を3〜36本のマルチフィラメント糸
からなる組紐構造とし、その組角度を8〜25度に限定
したものであるから、1本のマルチフィラメント糸構造
の釣糸であって、釣糸としての合計繊度が等しいものと
比較し、芯部が空洞化したり、目が開いて釣糸が食い込
んだりすることがなく、取扱性が向上する。しかも、撚
糸構造のものに比較してフィラメントの強力利用率およ
び釣糸の結節強力、柔軟性および耐摩耗性にすぐれ、キ
ンクの発生がない。
【0049】請求項5に記載した発明は、請求項1に記
載した釣糸の構造を双糸または3子の撚糸構造に限定
し、下撚の撚係数を1.0以下に、また上撚の撚係数を
0.1〜1.5に限定したものであるから、1本のマル
チフィラメント糸構造の釣糸であって、釣糸としての合
計繊度が等しいものと比較し、強力特性をほとんど低下
させることなく、取扱性を向上することができる。
【0050】請求項6に記載した発明は、請求項1〜5
に記載した釣糸において、その構造伸度を1.5%以下
に限定したものであるから、釣糸としての寸法安定性が
向上し、アタリが一層分かり易くなり、しかも上記の特
性は、編組後または撚糸後にアフターストレッチとヒー
トセットを行うことによって容易に得られる。
【0051】請求項7に記載した発明は、請求項1〜6
に記載した釣糸において、フィラメントが断面中心部と
周辺部の濃度差20%以内の均一に着色されたものであ
るから、深海釣やルアー釣の場合の長さの目安として一
定長ごとに色分けしたり、また鮎釣りの場合の囮鮎の攻
撃心を煽る目的で黄色に着色したりする場合に、その着
色の耐光褪色堅牢度が向上する。
【0052】請求項8に記載した発明は、請求項7に記
載した釣糸において、そのフィラメントを着色する染料
または顔料のデカリンに対する溶解度を25℃で0.0
01%以上に限定したものであるから、着色によって釣
糸の強度が低下することがない。
【0053】請求項9に記載した発明は、請求項1〜6
に記載した釣糸を着色された樹脂で被覆したものである
から、請求項7に記載した発明と同じ目的で使用するこ
とができ、しかも請求項7に記載した発明に比べて手軽
に加工することができる。
【0054】請求項10に記載された発明は、請求項9
に記載された釣糸において、その被覆層の着色樹脂が顔
料を含有するものであるから、一定の長さごとに色分け
することができ放糸量の目安とすることが可能である。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量平均分子量が50万以上、引張強さ
    が15g/デニール以上、破断伸度が6%以下、初期弾
    性率が450g/デニール以上、フィラメント繊度が1
    0デニール以下のポリエチレンマルチフィラメント糸か
    らなることを特徴とする釣糸。
  2. 【請求項2】 ポリエチレンマルチフィラメント糸の直
    線強力に対する結節強力の保持率が32%以上である請
    求項1記載の釣糸。
  3. 【請求項3】 フィラメント断面が異形である請求項1
    記載の釣糸。
  4. 【請求項4】 3〜36本のフィラメントからなるポリ
    エチレンマルチフィラメント糸が組角度8〜25度の組
    紐を形成している請求項1記載の釣糸。
  5. 【請求項5】 ポリエチレンマルチフィラメント糸が双
    糸または三子の撚り糸を構成し、下撚の撚係数(ただ
    し、撚係数をK、撚り数(回/インチ)をT、繊度(デ
    ニール)をDとしたとき、K=(T×D1/2 )/73)
    が1.0以下、上撚の撚係数が0.1〜1.5である請
    求項1記載の釣糸。
  6. 【請求項6】 釣糸の破断伸度とポリエチレンフィラメ
    ントの破断伸度との差で表される構造伸度が1.5%以
    下である請求項1〜5のいずれかに記載の釣糸。
  7. 【請求項7】 フィラメントが断面中心部と周辺部の濃
    度差20%以内の均一に着色されたものである請求項6
    記載の釣糸。
  8. 【請求項8】 フィラメントを着色する染料または顔料
    のデカリンに対する溶解度が25℃で0.001%以上
    である請求項7記載の釣糸。
  9. 【請求項9】 着色された樹脂で被覆されている請求項
    6記載の釣糸。
  10. 【請求項10】 着色された樹脂が顔料を含有するもの
    である請求項9に記載の釣糸。
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