JPH08139307A - 強誘電体薄膜形成用電極 - Google Patents

強誘電体薄膜形成用電極

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JPH08139307A
JPH08139307A JP6270010A JP27001094A JPH08139307A JP H08139307 A JPH08139307 A JP H08139307A JP 6270010 A JP6270010 A JP 6270010A JP 27001094 A JP27001094 A JP 27001094A JP H08139307 A JPH08139307 A JP H08139307A
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Japan
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thin film
ferroelectric thin
ferroelectric
electrode
orientation
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JP6270010A
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English (en)
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Kunio Aketo
邦夫 明渡
Jiro Sakata
二郎 坂田
Yasunori Taga
康訓 多賀
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Original Assignee
Toyota Central R&D Labs Inc
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 残留分極値が比較的大きいペロブスカイト型
鉛系酸化物強誘電体の(111)配向膜を表面に形成で
きる、高集積化を可能とする電極を提供する。 【構成】 シリコン基板12上にSiO2 層14を形成
し、この上に、バッファ層としてのTi層16を介し
て、下部電極18が形成されている。下部電極18とし
ては、Pt、Au、Pd、Ag、Rhから選ばれる少な
くとも1種以上の貴金属と、その貴金属以外で単体で面
心立方体の結晶構造をとる少なくとも1種以上の金属と
の(111)優先配向している合金薄膜が用いられる。
この合金薄膜の表面には、PbOとの混在層20が形成
されている。この下部電極18及び混在層20によって
形成される電極の上に、PLT強誘電体薄膜22を形成
すると、この強電体薄膜22が(111)優先配向をす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ペロブスカイト型鉛系
酸化物強誘電体薄膜を形成するための電極に関する。特
に、焦電型赤外線センサや不揮発性メモリ等に用いられ
る(111)優先配向ペロブスカイト型鉛系酸化物強誘
電体薄膜を形成するのに有用な電極に関する。
【0002】
【従来の技術】強誘電体とは、平行もしくは反平行に並
んだ永久電気双極子を有し、キュリー点以下において電
界を加えなくても自発的に分極が発生している材料のこ
とである。この強誘電体は、外部電界により双極子の向
きを反転できるような性質を有する。この性質を利用し
て、焦電型赤外線センサや不揮発性メモリなどに応用さ
れている。代表的な強誘電体材料として、Pb含有ペロ
ブスカイト結晶構造の酸化物、例えばPbTiO3 (P
TO)、Pb1-x Lax Ti1-x /43 (PLT)、P
bZrx Ti1-x 3 (PZT)等があげられる。
【0003】焦電型赤外線センサは、温度の変化により
自発分極の大きさが変化するという強誘電体の特性を利
用したセンサである。すなわち、焦電型赤外線センサに
赤外線が照射されると素子の温度が変化し、強誘電体の
自発分極の大きさが変化する。焦電型赤外線センサは、
この自発分極の大きさの変化を電気信号の変化として検
出するものである。
【0004】焦電型赤外線センサに使用される強誘電体
材料としては、PLTが良く知られている。PLTは結
晶構造がペロブスカイト構造の場合に、c軸方向((0
01)方向)に自発分極を持つ強誘電体である。また、
この材料はPTOのPbの一部をLaで置換した材料で
あり、La組成xを増加させることでキュリー点を下げ
ることができる。例えば、x=0の場合のキュリー点は
490℃であるが、x=0.26まで増加させた場合は
室温付近までキュリー点を下げることができる。これに
より、温度変化に対する自発分極の変化の大きさを表す
焦電係数を増大させることができる。
【0005】不揮発性メモリは、強誘電体のヒステリシ
ス特性を利用した素子である。すなわち、電圧印加後そ
の電圧を0に戻しても、印加した電圧の向きに応じた残
留分極が保持されるので、残留分極の向きを、例えば0
と1とに対応させることにより、強誘電体にデジタル情
報を記憶させることができる。この場合、分極が緩和さ
れない限り情報を保持することができる。不揮発性メモ
リに使用される強誘電体材料としては、PZTがよく知
られている。このPZTは、Zrの組成により正方晶
系、菱面体晶系等の結晶構造を取る。
【0006】上述した焦電型赤外線センサや不揮発性メ
モリ等の強誘電体薄膜素子は、基板上に第1の電極を形
成し、その上に強誘電体薄膜を形成し、さらに第2の電
極を強誘電体薄膜上に形成した構造を有する。この素子
の出力を最大にするには、強誘電体材料の自発分極Ps
が素子面に垂直な方向に揃っている必要がある。
【0007】例えば、正方晶系強誘電体を用いた場合、
第1の電極上に正方晶系強誘電体が素子面に対して垂直
な方向にc軸配向((001)配向)した場合に出力が
最大となる。
【0008】そこで、従来より、この素子出力を最大に
するために基板及び電極に種々の改良が加えられてき
た。
【0009】例えば、PLTを用いた場合、x=0の時
にa軸の格子定数が3.90オングストロームであるの
に対して、Ptのa軸の格子定数が3.92オングスト
ローム、MgOが4.21オングストロームと近い値を
取る材料系に注目し、このような材料系を用いて強誘電
体薄膜素子を形成することが行われていた。
【0010】すなわち、図7に示されるように、NaC
l結晶構造をとるMgOの単結晶で、かつ(100)面
を切り出したMgO基板30を下地基板として用い、こ
のMgO基板30の上にエピタキシャル成長的に基板表
面に対して垂直方向に(100)配向したPt電極32
を形成し、Pt電極32の上にc軸(001)配向した
PLT強誘電体薄膜22と上部電極24とを形成するこ
とにより、強誘電体薄膜素子を作成することが行われて
いた(J.Appl.Phys.,vol.60(19
86)2914)。
【0011】一方、近年強誘電体薄膜素子一般に対し、
高機能化、高集積化が要求されるようになってきた。こ
れに応じるためには、強誘電体薄膜を使用したセンサ部
とアンプ等の回路部等を一体化するなど集積化が必要と
なる。通常、回路部を構成する基板としては、シリコン
基板が用いられており、センサ部と回路部とを一体化さ
せたセンサを作成するためには、シリコン基板を用いて
強誘電体薄膜素子を形成することが必要となる。従っ
て、上述のMgO基板30を使用した素子では、高集積
化を達成することができない。
【0012】図8には、シリコン基板を用いて強誘電体
薄膜素子を形成した例が示される。図8においては、シ
リコン基板12あるいはシリコン基板12上のSiO2
上に、直接もしくはTi、Ta等のバッファ層34を介
してPt電極32がスパッタリング法で形成され、さら
にその上にゾル・ゲル法により強誘電体薄膜22が形成
されている。強誘電体薄膜22の上には、Au等の金属
による上部電極24が形成されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、シリ
コン基板12上もしくはシリコン基板12上のSiO2
上に、直接もしくはTi、Ta等のバッファ層34を介
してPtのような面心立方体の結晶構造をとる金属を薄
膜化させ下部電極として形成する場合、この金属薄膜は
表面エネルギーが最も小さくなる(111)配向性を取
り易い。そして、Pt(111)自然配向膜の上に、ゾ
ル・ゲル法により、正方晶系強誘電体薄膜を形成する
と、a軸配向性((100)配向性)を示すものが多
い。a軸とはc軸と90°の角度をなす結晶方位のこと
である。
【0014】一般に、正方晶系強誘電体薄膜がa軸配向
((100)配向)を示すのは、引っ張りの応力がその
薄膜にかかっているからであると考えられる。a軸方向
とc軸方向の格子定数を比較すると、a軸方向に比べて
c軸方向の格子定数の方が大きくなっている。例えば、
PLTにおいてLa組成x=0の場合、a軸方向の格子
定数は3.90オングストロームであるのに対して、c
軸方向の格子定数は4.15オングストロームであり、
La組成の増大と共に格子定数の差は減少する。このた
め、膜に引っ張りの応力が掛ると、応力を緩和させるた
めにc軸が素子面に平行に並ぼうとする。この結果、素
子面に対して垂直な方向にはa軸が並びa軸配向とな
る。
【0015】この場合、Pt(111)面内の原子の並
びは、三角形基調であるのに対して、正方晶系強誘電体
(100)面内の原子の並びは四角形基調であるので、
Pt(111)自然配向膜上に強誘電体がエピタキシャ
ル成長的にa軸配向しているわけではない。すなわち、
Ptと強誘電体との相互作用が弱いため、正方晶系強誘
電体は表面エネルギーが最も小さくなるa軸配向性を取
り易くなっている。
【0016】しかし、正方晶系強誘電体は、このa軸方
向には自発分極をもたないために、素子の分極の大きさ
を表す残留分極値は理論上ほとんど0の値に近くなる。
従って、Pt(111)配向膜の上のゾル・ゲル法によ
る正方晶系強誘電体薄膜を用いて強誘電体薄膜素子を作
成しても、ほとんど出力が得られないという問題があっ
た。
【0017】図9には、上記従来の強誘電体薄膜のX線
回折パターンが示される。本図における強誘電体薄膜と
してはPLTが使用されている。
【0018】図9に示されるように、Pt(111)上
にゾル・ゲル法によるPLTの強誘電体薄膜を形成した
場合、a軸(100)配向を示すピークは観察される
が、(111)配向を示すピークは観察されていない。
【0019】また、図10には、上記従来例の強誘電体
薄膜のD−Eヒステリシス曲線が示される。図10にお
いては、残留分極値は約10μC/cm2 となってい
る。ここで、残留分極値とは、バイアス0V時の正負分
極値の絶対値の平均をいう。
【0020】また、上述の説明とは逆に、強誘電体薄膜
に圧縮の応力をかけることができれば、応力を緩和する
ためにa軸が素子面に平行に並ぼうとするので、素子面
に垂直な方向にc軸配向させることができる。
【0021】応力の起源は、主としてシリコン基板とP
LT強誘電体薄膜との線膨脹係数の違いによるものであ
る。すなわち、Siの線膨脹係数の値は約4×10-6
℃であるが、PLTの線膨脹係数の値は、例えばLa組
成x=0の時約9×10-6/℃であって、Siの線膨脹
係数の方がPLTの線膨脹係数よりも小さくなってい
る。このため、室温よりも高温で成膜後、室温まで基板
温度を下げると、PLT強誘電体薄膜に引っ張り応力が
かかる。
【0022】この引っ張り応力を圧縮応力に代える方法
は、基板として前述のMgOを使うなど線膨脹係数が強
誘電体薄膜に比べて大きなものを選択する必要がある。
しかし、上述のようにMgOを使用する場合には素子の
高機能化、高集積化が実現できないという問題があっ
た。
【0023】本発明は上記従来の課題に鑑みなされたも
のであり、その目的は、残留分極値が比較的大きいペロ
ブスカイト型鉛系酸化物強誘電体の(111)配向膜を
表面に形成できる、高集積化が可能となる電極を提供す
ることにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明に係る強誘電体薄膜形成用電極は、Pt、A
u、Pd、Ag、Rhから選ばれる少なくとも1種以上
の貴金属と、前記貴金属以外で単体で面心立方体の結晶
構造をとる少なくとも1種以上の金属との(111)優
先配向している合金薄膜であり、且つ表面にPbOとの
混在層を有することを特徴とする。
【0025】ここで、上記貴金属以外の金属で、単体で
面心立方体の結晶構造をとるものとしては例えばNi、
Cuなどがある。
【0026】前述したように、ゾル・ゲル法により正方
晶系強誘電体薄膜をPt(111)自然配向膜上に形成
すると、a軸(100)配向膜となり、所望の性能が得
られない。
【0027】そこで、本発明者は、強誘電体薄膜を(1
11)方位に結晶配向させることを可能とすべく検討
し、本発明に係る強誘電体薄膜形成用電極を用いれば、
上記目的を達成し得ることを見い出した。
【0028】この(111)方位は、正方晶系強誘電体
において、応力の影響を受けても分極軸であるc軸成分
が素子面に垂直方向の成分として存在するような結晶方
位、すなわち応力の影響を受けても常にc軸配向膜の約
58%の残留分極値が得られる方位である。
【0029】また、菱面体晶系強誘電体においては、自
発分極軸方向であり、最大の残留分極値が得られる方位
である。
【0030】
【作用】本発明に係る強誘電体薄膜形成用電極が上記効
果を奏する機構は以下のようであると考えられる。
【0031】すなわち、下部電極としてPtの代りに上
記電極を用いると、Ni、Cuの存在により電極と強誘
電体との相互作用を強め、電極の結晶方位の情報を直接
強誘電体薄膜に伝えて強誘電体薄膜を(111)配向さ
せることが可能となる。
【0032】この場合、表面にPbOとの混在層を設け
ずに上記電極上に強誘電体薄膜を直接形成した場合は、
上記電極中のNiもしくはCuが酸素を介して強誘電体
薄膜の構成原子とランダムに結合するために、強誘電体
薄膜は(111)配向しなくなる。
【0033】一方、表面にPbOとの混在層を設ける
と、電極表面に予めNi−O−PbもしくはCu−O−
Pbの結合が形成されるので、そこを核として強誘電体
薄膜を(111)配向させることができる。
【0034】以上のように、本発明に係る強誘電体薄膜
形成用電極は、正方晶系強誘電体薄膜を、成膜時に応力
の影響を受けても分極軸であるc軸成分が素子面に垂直
方向の成分として常に存在するような結晶方位である
(111)方位に配向させることができる。これにより
c軸配向膜の約58%の残留分極値が得られ、a軸配向
膜と比べて大きな性能の向上が可能となる。
【0035】すなわち、(111)方位に配向した正方
晶系強誘電体薄膜では、a軸、c軸は共に膜面に対して
35°前後の角度をもっているので、応力を受けてa軸
とc軸の交換による緩和が起っても、c軸は膜面に対し
て約35°の角度を保つ。これにより、c軸成分が素子
面に垂直方向の成分として維持され、応力の影響を受け
ても、比較的大きな残留分極値を得ることが可能とな
る。また、菱面体晶系強誘電体薄膜では、(111)方
向に分極軸をもつので、最大の残留分極値を得ることが
できる。
【0036】すなわち、本発明によれば、応力に関係な
く比較的大きな残留分極値が得られ、焦電型赤外線セン
サや不揮発性メモリ等に好適に用いることができる(1
11)配向した強誘電体薄膜を表面に形成できる強誘電
体薄膜形成用電極を提供することができる。
【0037】
【実施例】以下、本発明の好適な実施例を図面に基づい
て説明する。
【0038】図1には、本発明に係る強誘電体薄膜形成
用電極を使用した強誘電体薄膜素子10の断面図が示さ
れる。
【0039】図1において、強誘電体薄膜素子10は、
(100)面のシリコン基板12上にSiO2 層14が
形成され、このSiO2 層14の上に電極とSiO2
14との密着性を向上させるために一般に良くとられる
方法であるバッファ層としてのTi層16が形成されて
いる。
【0040】さらにこのTi層16の上には、下部電極
18が形成されている。この下部電極18の材料として
は、Pt、Au、Pd、Ag、Rhから選ばれる少なく
とも1種以上の貴金属と、この貴金属以外で単体で面心
立方体の結晶構造をとる少なくとも1種以上の金属との
(111)優先配向している合金薄膜が使用される。こ
の場合、前述した貴金属以外の金属であって、単体で面
心立方体の結晶構造をとるものとしてはNi、Cuなど
が好適である。本実施例においては、下部電極18とし
てPt−Ni合金が用いられている。
【0041】下部電極18の上には、下部電極18とP
bOとの混在層20が形成されている。下部電極18と
混在層20とにより、本発明に係る強誘電体薄膜形成用
電極が構成される。この強誘電体薄膜形成用電極は、シ
リコン基板上に形成することができるので、これを使用
したセンサを他の回路部と一体的に形成でき、高集積化
を図ることができる。
【0042】さらに混在層20の上には、強誘電体薄膜
22及び上部電極24が形成されている。本実施例にお
ける強誘電体薄膜22としてはPLTが使用されてい
る。
【0043】上述した下部電極18を形成する合金薄膜
を構成する元素は、いずれも単体で面心立方体の結晶構
造をとっている。これらは適切な条件の下において結晶
相を変化させることなく合金を形成する。従って、これ
らの合金薄膜は(111)配向の膜とすることができ
る。
【0044】Pt、Au、Pd、Ag、Rhから選ばれ
る少なくとも1種以上の貴金属とNiとの合金として
は、例えばNiを20〜80%含み、残部がPt、A
u、Pd、Ag、Rhから選ばれる少なくとも1種以上
の貴金属及び微量元素からなる組成を有するものが用い
られる。
【0045】また、上記貴金属とCuとの合金として
は、例えばCuを20〜50%含み、残部がPt、A
u、Pd、Ag、Rhから選ばれる少なくとも1種以上
の貴金属及び微量元素からなる組成を有するものが用い
られる。
【0046】下部電極18として用いられる合金薄膜と
PbOとの混在層20は、その合金薄膜の結晶構造を大
きく乱さずに、かつ表面がPbOで覆われている構造で
あれば良い。よって、下部電極18としての合金薄膜と
PbOとの混在層20の厚さは限定的ではないが、50
0オングストローム以下が良く、特に50オングストロ
ーム以下が好適である。
【0047】混在層20の形成手法は限定されるもので
はないが、例えば、湿式PbOコーティング処理法、C
VD法等が用いられる。湿式PbOコーティング処理法
とは、例えばゾル・ゲル法により上記下部電極18上に
PbO薄膜を形成し熱処理した後、例えば酢酸、あるい
は硝酸、アルカリ、酢酸鉛、塩化アンモニウム、塩化カ
ルシウムなどの水溶液により過剰なPbOを除去する工
程のことである。
【0048】また、強誘電体薄膜22の形成法として
は、スパッタリング法、CVD法、レーザスパッタ法、
ゾル・ゲル法等が知られている。このうち、ゾル・ゲル
法は、アルコキシド溶液のコーティングにより得たポリ
マーゲル状の前駆体膜を加熱することにより薄膜を得る
手法である。この方法は、多成分系でも組成制御を再現
性良くできること、低温合成が可能であること、低コス
トであること等の利点を有し、強誘電体薄膜22の形成
に最も有用な薄膜形成手法である。
【0049】実験例 次に、本実施例に基づく実験例を比較例と共に示す。
【0050】本実施例に係る強誘電体薄膜素子10を以
下の方法で作製した。
【0051】シリコン基板12上にSiO2 熱酸化膜で
あるSiO2 層14を形成した後、RFマグネトロンス
パッタリングにより厚さ500オングストロームのTi
層16を基板温度300℃で形成した。次に、Ti層1
6上に、Pt及びNiの2つのターゲットを用い、それ
ぞれのターゲットに加えられるRFパワーを制御するこ
とにより、膜の組成を制御する手法であるRFマグネト
ロンマルチスパッタリングにより、厚さ1000オング
ストロームのPt−Ni合金からなる下部電極18を基
板温度300℃で形成した。上述したスパッタリングに
より形成された下部電極18としてのPt−Ni合金薄
膜は、結晶構造を崩さずに合金として形成されており、
(111)方向に配向している。
【0052】次に、下部電極18とPbOとの混在層2
0を湿式PbOコーティング処理法を用いて形成した。
【0053】図2には、シリコン(100)基板上にT
iバッファ層を形成し、Niを30%含むPt−Ni合
金薄膜を形成した後、湿式PbOコーティング処理を行
った電極のオージェ電子分光による深さ方向分析が示さ
れる。図2に示されるように、合金表面に合金とPbO
との混在層が形成されていることが分る。そして、その
厚さは約40オングストロームであることが確められ
た。
【0054】PLTの強誘電体薄膜22は、文献K.
D.Budd et al,Br.Ceram.Pro
c.,36(1985)107−121に示されている
方法に従って、ゾル・ゲル法により焼成温度600℃で
厚さ3000オングストローム形成した。最後に、上述
したPLT強誘電体薄膜22上に、上部電極24として
Auを蒸着し、強誘電体薄膜素子10を作製した。
【0055】上述の実験例のうち、実験例1として、下
部電極18にNiを70%含むPt−Ni合金薄膜を用
いたものを作製した。
【0056】また実験例2として、下部電極18にNi
を30%含むPt−Ni合金薄膜を用いたものも作製し
た。
【0057】これら実験例1、2に対する、Niの組成
比に関する比較例1として、上記構造において下部電極
18としてNiを10%含むPt−Ni合金薄膜を用い
たものを作成した。また比較例2として、上記構造にお
いて下部電極18としてNi薄膜を用いたものも作成し
た。
【0058】さらに、上述の実験例1に対する混在層2
0に関する比較例3として、実験例1と同様に作成し混
在層20のみを省略したものを作成した。
【0059】また、図8に示されるような従来例とし
て、(100)面のシリコン基板12上にSiO2 熱酸
化膜を形成し、さらにスパッタリング法によりTiのバ
ッファ層34及びPtの下部電極32を形成後、ゾル・
ゲル法によりPLT強誘電体薄膜を形成し、Auの上部
電極24を形成した強誘電体薄膜素子を作成した。
【0060】図3には、実験例1及び比較例3のX線回
折パターンが示される。図3において、実験例1の強誘
電体薄膜の回折パターンが実線で、比較例3の強誘電体
薄膜の回折パターンが破線で示される。
【0061】図3に示されるように、比較例3のX線回
折パターンには(111)配向に対応するピークが認め
られない。従って無配向の多結晶膜であることが分る。
一方実験例1には(111)配向を示すピークが認めら
れ、(111)配向膜であることが確認できた。すなわ
ち、本発明に係る強誘電体薄膜形成用電極を用いて強誘
電体薄膜素子を形成した場合には、ゾル・ゲル法による
PLT(111)配向膜が得られ、下部電極18とPb
Oの混在層20は省略することのできない重要な要素で
あることが確認された。
【0062】図4には、実験例1の強誘電体薄膜素子の
D−Eヒステリシス曲線が示される。 図10の従来例
におけるヒステリシス曲線と比較した場合、残留分極値
の値が大幅に向上されており、本実験例においては残留
分極値Prとしては約20μC/cm2 の値が得られて
いる。なお、ここでも前述した通り、バイアス0V時の
正負分極値の絶対値の平均を残留分極値Prとしてい
る。
【0063】実験例1、2、比較例1、2、3及び従来
例の残留分極値Pr及び焦電係数γを表1に示す。
【0064】
【表1】 また、図1の構造の素子において、下部電極18にPt
−Cu合金薄膜を用いた場合の効果を見るため、実験例
3としてCuを25%含むPt−Cu合金薄膜を下部電
極18として用いたもの、及び比較例4としてCu70
%を含むPt−Cu合金薄膜を用いたものを作製した。
更に、比較例5として、実験例3と同様に作成し混在層
20のみを省略したものを作成した。
【0065】図5には、実験例3及び比較例5による強
誘電体薄膜のX線回折パターンが示される。図5におい
て実線が実験例3を、破線が比較例5を示している。
【0066】図5においても、比較例5の強誘電体薄膜
については(111)配向を示すピークが認められない
が、実験例3の強誘電体薄膜においては、(111)配
向を示すピークが認められる。従って、実験例3の強誘
電体薄膜素子においても、強誘電体薄膜は(111)配
向膜であることが認められた。
【0067】図6には、実験例3のD−Eヒステリシス
曲線が示される。本図と従来例である図10とを比較し
た場合、残留分極値の値が向上されており、本実験例の
場合残留分極値Prは20μC/cm2 であった。ま
た、焦電係数γは16nC/cm2 Kの値が得られた。
【0068】一方、比較例4についてはPLT強誘電体
薄膜が剥離してしまった。
【0069】PLT(111)配向膜が得られた実験例
1〜3については、従来例の約2.5〜3倍の焦電係数
γが得られており、本発明の電極を用いて形成されたP
LT強誘電体薄膜素子は、焦電型赤外線センサや不揮発
性メモリ等に好適に用いることができることが確められ
た。
【0070】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る強誘
電体薄膜形成用電極を用いることで、この電極の上に形
成された強誘電体薄膜に電極の結晶方位の影響を直接受
けさせることが可能となった。これにより、この強誘電
体薄膜を(111)配向させることが可能となる。
【0071】(111)配向した正方晶系強誘電体薄膜
は、理論上c軸配向膜の約58%の残留分極値が得ら
れ、また、(111)配向した菱面体晶系強誘電体薄膜
は、最大の残留分極値が得られるので、十分な強誘電性
を発揮し得る強誘電体薄膜素子を提供することが可能と
なる。
【0072】以上により、本発明に係る強誘電体薄膜形
成用電極を使用することにより形成された強誘電体薄膜
素子は、焦電型赤外線センサや不揮発性メモリ等に好適
に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る強誘電体薄膜素子の膜構成を示す
断面図である。
【図2】本発明の電極の一例のオージェ電子分光による
深さ方向分析を示す図である。
【図3】実施例1及び比較例3の強誘電体薄膜のX線回
折パターンを示す図である。
【図4】実験例1の強誘電体薄膜素子のD−Eヒステリ
シス曲線を示す図である。
【図5】実験例3及び比較例5の強誘電体薄膜のX線回
折パターンを示す図である。
【図6】実験例3の強誘電体薄膜のD−Eヒステリシス
曲線を示す図である。
【図7】従来のMgO薄膜上に形成された強誘電体薄膜
素子の断面図である。
【図8】従来のシリコン基板上に形成された強誘電体薄
膜素子の膜構成を示す断面図である。
【図9】従来のシリコン基板を用いた強誘電体薄膜のX
線回折パターンを示す図である。
【図10】図8に示される従来例のD−Eヒステリシス
曲線を示す図である。
【符号の説明】
10 強誘電体薄膜素子 12 シリコン基板 14 SiO2 層 16 Ti層 18 下部電極 20 混在層 22 強誘電体薄膜 24 上部電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H01L 29/792 37/02 // H01L 21/203 S 9545−4M

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Pt,Au,Pd,Ag,Rhから選ば
    れる少なくとも1種以上の貴金属と、前記貴金属以外で
    単体で面心立方体の結晶構造をとる少なくとも1種以上
    の金属と、の(111)優先配向している合金薄膜であ
    り、且つ表面にPbOとの混在層を有することを特徴と
    する、(111)優先配向ペロブスカイト型鉛系酸化物
    強誘電体ゾル・ゲル薄膜を形成するための強誘電体薄膜
    形成用電極。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の強誘電体薄膜形成用電極
    であって、 前記面心立方体の結晶構造をとる金属が、Ni,Cuか
    ら選ばれる少なくとも一種以上の金属であることを特徴
    とする強誘電体薄膜形成用電極。
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