JPH0813905B2 - イオン交換機能を持ったセルロース系組成物 - Google Patents

イオン交換機能を持ったセルロース系組成物

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JPH0813905B2
JPH0813905B2 JP16174590A JP16174590A JPH0813905B2 JP H0813905 B2 JPH0813905 B2 JP H0813905B2 JP 16174590 A JP16174590 A JP 16174590A JP 16174590 A JP16174590 A JP 16174590A JP H0813905 B2 JPH0813905 B2 JP H0813905B2
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誠吾 檜垣
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明はイオン交換機能を持ったセルロース系組成
物、更に詳しくは再生セルロースと特定のアニオン性高
分子化合物とを、分子状に混合してなるイオン交換機能
を持ったセルロース系組成物に関する。
従来の技術 従来より、イオン交換機能を有する高分子材料とし
て、イオン交換樹脂やキレート樹脂などが知られてお
り、これら樹脂のイオン交換機能を利用して、例えば
鉄、銅、ニッケルなどの金属の捕集が行われている。し
かしこれらの樹脂は合成高分子である為に、イオン交換
機能、耐水性、耐薬品性などの点で良好であるが、使用
後の廃棄処理が困難であるという欠点がある。
セルロース系組成物の場合には上記のような欠点はな
いが、それ自体ではイオン交換機能をほとんど有しない
ため、機能性素材としてはあまり利用されていない。
従来セルロースを改質するためにアニオン性ポリマー
を導入することは知られている。例えば特開昭48−9812
0号及び特開昭48−99416号にはビスコース溶液中にイソ
ブチレン−マレイン酸重合体を混合することにより、ビ
スコースレーヨンの染色性、寸法安定性等が改善される
ことが記されている。また、特開昭58−136351号にはセ
ルロースの銅アンモニア溶液にポリアクリル酸、セルロ
ース誘導体、硫酸セルロース、コンドロイチン硫酸、硫
酸アミロース、硫酸アミロペクチン、ムコ多糖類硫化
物、ポリビニルアルコール硫酸化物、リン酸セルロース
又はこれらの塩を溶解してフィルムや繊維の中に上記高
分子化合物を固定してセルロースに高凝血性を付与する
ことが記されている。
しかしながら、斯かる改質セルロースは、セルロース
に混合されたアニオン性高分子化合物に起因して改質後
のセルロース系組成物の耐水性が著しく低下する欠点が
ある。この為にアニオン性高分子化合物に基づくイオン
交換機能を充分に発現させ得なかったり、また使用時間
の経過につれ初期のイオン交換機能が著しく低下するな
どの不利があった。
発明が解決しようとする課題 本発明は、前記従来のセルロース系組成物の諸欠点を
解消せんとするものである。すなわち、イオン交換樹脂
やキレート樹脂と同等の優れたイオン交換機能を有し、
耐水性にも優れ長期に亘って優れたイオン交換能を保持
し、しかもセルロース本来の特長である後処理の容易性
を保持しうる新規なセルロース系組成物を提供すること
を目的とする。
課題を解決するための手段 すなわち本発明は、重合度100〜500の再生セルロース
60〜99重量%と酢酸ビニル−マレイン酸共重合体40〜1
重量%との混合体であり、該混合体の両成分が分子状に
混ざり合い固体化されてなるイオン交換機能を持ったセ
ルロース系組成物に係る。
本発明者の研究によると上記酢酸ビニル−無水マレイ
ン酸共重合体がセルロースに、イオン交換樹脂やキレー
ト樹脂に匹敵する優れたイオン交換能を付与でき、しか
も耐水性の低下を伴うことなく長期の使用に耐える持続
性良好なイオン交換能を付与し得ることが見出された。
本発明で用いる再生セルロースとしては、ビスコース
レーヨン、キュプラなどの製造に使われている木材パル
プ、綿リンターなどが好適であり、これらをビスコース
或は銅アンモニア溶液にして再生使用する。再生セルロ
ースの重合度は、得られるセルロース系組成物の機械的
強度に影響するため、本発明では重合度が100〜500のも
のを使用するのがよい。
本発明に於て用いる酢酸ビニル−マレイン酸共重合体
は、両者のほぼ等モル共重合体であることが望ましい。
分子量は用途に応じて広い範囲に亘り得るが通常1万〜
200万好ましくは10万〜50万の範囲である。斯かる共重
合体は酢酸ビニルと無水マレイン酸とを公知のラジカル
重合開始剤を使用して、ベンゼン、トルエン、酢酸エス
テルのような有機溶媒の存在下に、溶液重合させること
により容易に収得することができる。酢酸ビニル及び無
水マレイン酸は両者の等モル共重合体を得る場合0.9:1.
1〜1.1:0.9の割合で仕込めばよい。重合条件としては特
に制限はされず、公知の条件を適宜選択して採用すれば
よい。重合温度は通常50〜120℃程度、重合時間は1〜
6時間程度とすればよい。ラジカル重合開始剤として
は、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチルなどの過酸化物
系重合開始剤、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ
系重合開始剤を例示でき、それらの使用量は通常全単量
体に対して0.05〜1.0重量%程度とされる。得られた共
重合体溶液から溶剤を除去し、共重合体固形分とするこ
とができる。ついで必要により、該共重合体をアンモニ
ア、有機アミン、アルカリ金属水酸化物などを用いて水
溶性塩としうる。上記中和剤としてはアルカリ金属水酸
化物が臭気が無い点で好ましく、具体的には水酸化ナト
リウム、水酸化カリウムなどを挙げることができる。
本発明のセルロース系組成物は、公知の方法によりえ
られるセルロースのビスコース溶液、セルロースの銅ア
ンモニア溶液などの含金属アルカリ溶液の存在下に、前
記酢酸ビニル−マレイン酸共重合体を溶解混合した後、
該混合物を固体化して得られる。セルロースは、上記共
重合体の歩留まりの点から見て、ビスコース溶液として
用いるのが好ましい。ビスコースと共重合体との混合溶
液は、これをノズルから塩酸、硫酸、硝酸、リン酸など
の強酸の浴に導入することにより繊維状の固化物とでき
る。凝固浴として用いる強酸としては特に硫酸が好まし
い。またビスコースと共重合体との混合溶液を矩形等の
所定の口金から熱水中に押出し、希塩酸で洗浄してスポ
ンジ状の固化物とすることもできる。更に上記混合溶液
をガラス板やステンレス板等の平板上に流しドクターナ
イフで平滑化し乾燥後希硫酸洗浄してフィルム状の固化
物とすることもできる。その他適宜公知の方法によって
中空子、粉体等任意の形態の固化物を得ることができ
る。
斯くして得られる本発明のセルロース系組成物は再生
セルロースと酢酸ビニル−マレイン酸共重合体が分子状
に混ざり合い固体化された混合物である。再生セルロー
スと共重合体との混合割合は前者60〜99重量%及び後者
40〜1重量%である。再生セルロースの使用割合が60重
量%未満の場合には、得られるセルロース系組成物は表
面にべとつき感があり、引き続く編織、複合化などの工
程に際してブロッキングなどの不利が生じることとな
る。また99重量%を越える場合には酢酸ビニル−マレイ
ン酸共重合体を使用することによるセルロースの改質効
果が不充分となる。両者の特に好ましい混合割合は用途
に応じ適宜決定すればよいが通常再生セルロース90〜75
%、酢酸ビニル−マレイン酸共重合体10〜25%である。
本発明のセルロース系組成物は、吸水性、消臭性、抗
菌性、染色性、金属捕捉機能などの各種イオン交換機能
を持った有用素材として利用することができる。例え
ば、繊維状組成物を用い吸水性タオル、消臭性タオル、
医療用繊維などに加工できる。また本発明のセルロース
系組成物とポリオレフィンなどの他の素材とを組み合わ
せて、所望の形態に複合材料化することにより、高吸湿
性材料、イオン交換体、過基材、過助剤、凝集沈殿
剤、重金属イオン捕集剤、海水の淡水化剤、イオン交換
剤、抗菌剤、消臭剤などとして極めて広範に使用でき
る。
発明の効果 本発明セルロース系組成物はイオン交換樹脂やキレー
ト樹脂に匹敵する優れたイオン交換機能を有し、しかも
充分なる耐水性を有しイオン交換機能を長期に亘り保持
すると共に、セルロース本来の特長である後処理の容易
性を有する。
実施例 以下に実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に
説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるもので
はない。なお、各例中、部および%は特記しない限りす
べて重量基準である。
実施例1 酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体水溶性塩(固形
分濃度25%、商品名タマノリSA−25、荒川化学工業
(株)製)を、セルロースのビスコース溶液(セルロー
ス濃度9%)に前記共重合体固形分がセルロース固形分
100部に対して、それぞれ3、5、10、20、30部となる
よう添加し、溶解した。各々の混合溶液を硫酸130g/l、
硫酸亜鉛10g/l、硫酸ナトリウム250g/lの強酸性浴中に
白金ノズルから押し出し、常法により脱硫、精練漂白す
ることにより本発明のビスコース繊維の各試料を得た。
各繊維の繊度は3デニール、繊維長は51mmである。
試料名は、以下タマノリ溶液添加量の順にTR−3、TR
−5、TR−10、TR−20、TR−30という。
比較例 実施例1において、タマノリSA−25に代えて、ポリア
クリル酸の部分中和塩水溶液(商品名タマノリG−31
6、荒川化学工業(株)製、不揮発分濃度15.4%、粘度
(20℃)58000cps、pH2.2)またはイソブチレン−無水
マレイン酸の部分中和塩水溶液(商品名イソバン−06、
(株)クラレ製、不揮発分濃度30.3%、粘度(20℃)89
00cps、pH9.8)をそれぞれセルロース100重量部に対し
て10重量部の割合で使用したほかは同様にして調製し、
比較試験用の試料とした。各試料は順にGR−10、IBR−1
0という。
(性能評価および結果) (1)強度、伸度 上記各試料および比較のため前記共重合体を全く含ま
ない普通レーヨンにつき、それらの強度および伸度をJI
S L−1015 7.7の方法に準じて測定した。
結果は以下の通りであった。
(2)吸湿性 上記各試料をリング紡績し、20番手の紡績糸を得
た。各サンプル約0.5gを105℃×3時間循風乾燥器中で
乾燥させ、乾燥後の重量(W1)を精秤した。また、各サ
ンプルを60%RH、25℃で5時間循風乾燥器中で放置後、
その重量(W2)を精秤した。同様に95%RH、25℃で5時
間循風乾燥器中で放置後、その重量(W3)を精秤した。
各条件下でのサンプルの吸湿率は下記の式で求めた。
結果は下記第2表の通りであった。表には普通レーヨ
ン20番手の紡績糸を用いて同様にして求めた吸湿率を併
記する。
次にTR−10、GR−10及びIBR−10綿をJIS K 1004洗濯
法により50回及び100回洗濯し、上記と同様にA1及びA2
を求めた。結果は下記第3表の通りである。
(3)吸水性 吸湿性試験に使用したものと同じTR−10、ビスコース
レーヨン及び綿の20番手の紡績糸を用いて以下のように
して吸水性試験を行った。
各試料約0.5gを105℃×3時間循風乾燥器中で乾燥さ
せ、乾燥後の重量(W1)を精秤した。1容器に20℃の
脱イオン水500ccを入れたのち、試料を3分間浸漬す
る。その後、42メッシュの金網上で試料を水きりし、吸
水後の重量(W2)を精秤した。
サンプルの吸水率は下記の式で求めた。
同様の条件下に5回測定し、それらの平均値を求め
た。
結果はTR−10は9.9、ビスコースレーヨンは4.5、綿は
3.9であった。
(4)消臭性 テドラーバック(フッ化ビニリデンフィルム製のガス
分析用袋、容積5l)中にTR−10の綿1gと各悪臭ガス(硫
化水素、アンモニアおよびピリジン)を各々5lを封入
し、1時間放置した後のガス濃度を測定した。各ガスは
TR−10により分解(硫化水素)吸着(アンモニア)また
は中和(ピリジン)され濃度が低下した。
次に、TR−10、GR−10及びIBR−10の綿10gを、各金属
イオンが2%(owf)になるような金属塩(CuSO4又はZn
Cl2)の水溶液に浸漬し10分間放置した。ついでこれを
蒸留水で充分に水洗し、乾燥機中で70℃、3時間乾燥し
て金属イオンを吸着したTR−10の綿を得た。この試料を
用いて上記と同じ悪臭ガスの除去試験をした。
以上に結果を第4表に示す。
上記各試料をJIS K 1004洗浄法により50回及び洗濯
し、上記と同様にして悪臭ガス除去試験をした。結果は
下記第5表の通りであった。
(5)抗菌性 TR−5、TR−10、TR−20の綿を試料とし、シェークフ
ラスコ法(抗菌防臭加工製品認定基準)で抗菌性の試験
をした。試験菌株はグラム陽性菌としてブドウ状球菌St
aphylo coccus aureus FDA209Pおよびグラム陰性菌とし
てKlebsiella pneumoniae ATCC 4352の二種である。
結果(菌死滅率)を第6表に示す。
次に同じTR−10、GR−10及びIBR−10の綿をJIS K1004
洗濯法により50回及び100回洗濯し、上記と同じ抗菌性
の試験をした。結果は次の通りである。
(6)染色性 TR−10および普通レーヨンの綿を使ってJIS L 1015
7.30に準じて染着率(%)の試験をした。結果は次の通
りである。
(7)重金属イオン捕捉性 TR−10の綿80%と芯ポリプロピレン、鞘ポリエチレン
の複合繊維20%とを均一に混綿して薄い繊維ウェブを作
った。これを加熱しながらロール状に捲回し、外径70m
m、内径30mm、長さ250m、密度0.3g/cm2のカートリッジ
フィルターを作成した。これを過筒ハウジングにセッ
トし、金属イオンを含む水100lを過した。液中の残
留する金属イオンを原子吸光分析装置で測定した。
結果を第9表に示す。
次にTR−10、GR−10及びIBR−10の綿をマルセル石鹸
水溶液(石鹸濃度1g/l)を用いてJIS K 1004洗濯法に準
じ25回及び100回洗濯し洗濯回数と銅イオン捕集率との
関係を求めた。結果は下記第10表の通りである。
尚表中外観変化などは洗濯100回の試料の外観であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C08L 31:04) (72)発明者 岡本 彬 島根県益田市須子町17番17号 (56)参考文献 特開 昭58−136351(JP,A) 特開 平2−28203(JP,A)

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重合度100〜500の再生セルロース60〜99重
    量%と酢酸ビニル−マレイン酸共重合体40〜1重量%と
    の混合体であり、該混合体の両成分が分子状に混ざり合
    い固体化されてなるイオン交換機能を持ったセルロース
    系組成物。
  2. 【請求項2】イオン交換機能が、吸水性、消臭性、抗菌
    性、染色性及び/又は金属捕捉機能である請求項1記載
    のセルロース系組成物。
  3. 【請求項3】再生セルロースがビスコースレーヨンであ
    る請求項1または2記載のセルロース系組成物。
  4. 【請求項4】酢酸ビニル−マレイン酸共重合体の重量平
    均分子量が10,000〜2,000,000である請求項1、2また
    は3記載のセルロース系組成物。
JP16174590A 1989-06-23 1990-06-19 イオン交換機能を持ったセルロース系組成物 Expired - Fee Related JPH0813905B2 (ja)

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