JPH0813109A - 成形加工用アルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents

成形加工用アルミニウム合金板の製造方法

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JPH0813109A
JPH0813109A JP16601294A JP16601294A JPH0813109A JP H0813109 A JPH0813109 A JP H0813109A JP 16601294 A JP16601294 A JP 16601294A JP 16601294 A JP16601294 A JP 16601294A JP H0813109 A JPH0813109 A JP H0813109A
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JP
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aluminum alloy
annealing
rolling
forming
temperature
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JP16601294A
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Toshio Komatsubara
俊夫 小松原
Masaichi Shiina
昌市 椎名
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Sky Aluminium Co Ltd
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Sky Aluminium Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 成形加工用、特に2ピースアルミニウム缶の
DI缶胴用のアルミニウム合金板として、深絞り耳率が
低くかつ塗装焼付処理後に高強度を有し、さらにDI成
形性に優れるとともに、DI成形、塗装焼付処理後の缶
胴縁部の成形性にも優れたものを提供する。 【構成】 Al−Mn−Mn系合金をDC鋳造法で鋳造
し、530〜600℃で均質化処理、さらに熱間圧延の
終了温度を250〜320℃、上り板厚を2.5mmを
越え3.5mm以下として熱間圧延を行ない、第1段焼
鈍を加熱速度100℃/hr以下、330〜400℃×
1〜10時間で行ない、続いて第2段焼鈍を450〜6
00℃×10分以内行ない、その後85%以上の冷間圧
延を施して、Mn固溶量が0.16%を越えるアルミニ
ウム合金板を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は2ピースアルミニウム
缶の缶胴、すなわちDI缶胴で代表される成形加工用の
用途に使用されるAl−Mn−Mg系合金硬質板の製造
方法に関するものであり、特に深絞り加工における耳率
(深絞り耳率)が低く、かつ塗装焼付処理後の強度が高
く、しかも塗装焼付処理後の缶胴縁部等の成形性に優れ
た成形加工用アルミニウム合金板を製造する方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】従来一般にアルミニウムDI缶胴材とし
ては、Al−Mn−Mg系合金であるJIS 3004
合金あるいは合金AA3104合金の硬質板が広く用い
られている。この種のAl−Mn−Mg系合金は、強度
を高めるために最終冷間圧延として高圧延率の冷間圧延
を施した場合でも比較的良好な成形性を示すところか
ら、DI缶胴材に最適であるとされている。なおこの種
のDI缶胴用Al−Mn−Mg系アルミニムウ合金板の
製造にあたっては、一般には、鋳塊に均質化処理を施し
た後、常法に従って熱間圧延し、次いで冷間圧延を施し
てから、あるいは施さずに焼鈍を行ない、その後最終冷
間圧延を施して所定の板厚の硬質板とするのが通常であ
る。このような製造工程において、焼鈍としては、30
0〜400℃で30分〜3時間程度のバッチ焼鈍を適用
するか、あるいは500℃前後の高温で短時間の連続焼
鈍を適用するのが一般的である。
【0003】一方、上述のようにして得られたアルミニ
ウム合金板を用いて2ピースアルミニウムDI缶を製造
するにあたっては、深絞り加工およびしごき加工による
DI成形によって缶胴を成形した後、トリミングを施
し、さらに塗装焼付を行なった後、缶胴縁部に対してネ
ッキング加工(口絞り加工)フランジ加工(口拡げ加
工)を行なう。そしてその後、飲料メーカ等において内
容物を充填し、別に成形した缶蓋(缶エンド)を合わせ
てシーミング加工(巻締め)を行ない、密封缶体とす
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】2ピースアルミニウム
缶については、より薄肉化を図って材料コストの低減、
軽量化を図ることが強く望まれている。そのためDI缶
胴用の素材についても、より高強度化することが望まれ
ているが、そればかりでなく、DI成形における深絞り
耳率が低いことが材料歩留りの点等から重要である。ま
た、DI成形における加工性(DI成形性)、特にしご
き加工性が良好であること、さらにDI缶胴に成形して
塗装焼付処理を行なった後の缶胴縁部に対するネッキン
グ加工、フランジ加工、シーミング加工での成形性が良
好であることも重要である。とりわけ缶胴縁部について
は、缶胴素材製造過程における冷間圧延の後、DI成形
過程で深絞り加工、しごき加工を受け、さらにネッキン
グ加工、フランジ加工、シーミング加工を受けるため、
これらの加工中にクラックが生じやすく、最悪の場合、
製品缶とした状態で内容物が漏れるといったトラブルが
生じるおそれがあり、そのため缶胴縁部の成形性が優れ
ていることが重要である。特に最近では缶胴の薄肉化に
伴なって缶胴縁部の肉厚も薄くなっているため、フラン
ジ加工やシーミング加工中に破断が生じやすく、したが
って缶胴縁部の成形性、特にフランジ加工性、シーミン
グ加工性を改善することが重要視されている。
【0005】ところで既に述べたようなDI缶胴用アル
ミニウム合金板の製造工程においては、熱間圧延後、あ
るいは熱間圧延−冷間圧延後、焼鈍を行なってから最終
冷間圧延を行なうのが通常であり、この場合の焼鈍とし
てはバッチ焼鈍もしくは連続焼鈍を適用している。しか
しながらバッチ焼鈍を適用した材料の場合には、DI成
形および塗装焼付処理後の強度低下が大きく、そのため
強度向上のためにMg,Cu等の合金元素の添加量を高
めざるを得ないが、これらの添加元素は成形性を低下さ
せる原因となってしまう。一方連続焼鈍を適用した材料
の場合には、強度を高めるために最終冷間圧延における
圧延率を85%以上に高めれば、DI成形における深絞
り耳率が高くなって材料歩留りが低下するばかりでな
く、DI成形中に缶切れや搬送中のトラブルが生じやす
くなる問題が生じる。
【0006】このように焼鈍工程にバッチ焼鈍を適用し
た場合、連続焼鈍を適用した場合のいずれにおいても一
長一短があり、特に次のイ〜ハのような要請を同時に満
足することは従来は困難とされていた。 イ:最終冷間圧延率を大きくしてもDI成形における深
絞り耳率が大きくならないようにすること。 ロ:DI成形時における成形性が良好であると同時に、
DI成形−塗装焼付処理後のフランジ加工性、シーミン
グ加工性も良好であること。 ハ:強度、特に塗装焼付処理後の強度を充分に確保する
ことができること。
【0007】この発明は以上の事情を背景としてなされ
たもので、主として缶胴素材として用いられるアルミニ
ウム合金板の製造方法において、DI成形における深絞
り耳率が低くかつ塗装焼付処理後の強度が高く、しかも
DI成形性ばかりでなく塗装焼付処理後の缶胴縁部に対
するフランジ加工性、シーミング加工性に優れたアルミ
ニウム合金板を製造する方法を提供することを目的とす
るものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】前述の課題を解決するべ
く本発明者等が鋭意実験検討を重ねた結果、缶胴素材と
なるAl−Mn−Mg系アルミニウム合金板の製造条
件、特に熱間圧延の条件、およびその後の焼鈍条件を適
切に設定し、またこれにより最終板におけるMn固溶量
を適切に調整することによって、前述の課題を解決し得
ることを見出し、この発明をなすに至った。
【0009】具体的には、請求項1の発明の成形加工用
アルミニウム合金板の製造方法は、Al−Mn−Mg系
アルミニウム合金をDC鋳造法により鋳造した後、得ら
れた鋳塊に対して530〜600℃の範囲内の温度で均
質化処理を施し、さらに熱間圧延を施すにあたって、熱
間圧延終了温度が250〜320℃の範囲内、上り板厚
が2.5mmを越え3.5mm以下の範囲内となるよう
に圧延し、得られた熱延板に対して、100℃/hr以
下の加熱速度で昇温して330〜400℃の範囲内の温
度で1〜10時間加熱する第1段焼鈍を施し、さらに4
50〜600℃で10分以内加熱する第2段焼鈍を施
し、その後85%以上の圧延率で冷間圧延を施すことに
より、0.16wt%を越える固溶Mnを含有する最終
板を得ることを特徴とするものである。
【0010】また請求項2の発明の成形加工用アルミニ
ウム合金板の製造方法は、請求項1に記載の方法におい
て、前記Al−Mn−Mg系アルミニウム合金を、必須
合金成分としてMn0.5〜1.8%、Mg0.5〜
2.0%を含有するものとした。
【0011】さらに請求項3の発明の成形加工用アルミ
ニウム合金板の製造方法は、請求項1に記載の方法にお
いて、前記Al−Mn−Mg系アルミニウム合金を、M
n0.5〜1.8%、Mg0.5〜2.0%、Fe0.
1〜0.7%を含有し、かつTi0.005〜0.20
%を単独でもしくはB0.0001〜0.05%と組合
せて含有し、さらに必要に応じてSi0.05〜0.5
%、Cu0.05〜0.5%、Cr0.05〜0.3
%、Zn0.1〜0.5%のうちの1種以上を含有し、
残部がAlおよび不可避的不純物よりなるものとした。
【0012】
【作用】この発明の成形加工用アルミニウム合金板の製
造方法においては、製造条件およびその結果のMn固溶
量が重要であり、対象となる合金自体は、基本的には、
JIS 3004合金に代表されるAl−Mn−Mg系
合金と同等であれば良いが、特に請求項2、請求項3で
規制される成分組成の限定理由について先ず説明する。
【0013】Mn:Mnは強度、成形性の向上に寄与す
るに有効な元素である。特にこの発明で主な対象として
いる缶胴の製造過程では、DI成形時に苛酷なしごき加
工が施されるため、Mnは重要となる。アルミニウム板
のしごき加工においては通常エマルジョンタイプの潤滑
剤が用いられているが、Mn系晶出物が少ない場合には
同程度の強度を有していてもエマルジョンタイプ潤滑剤
だけでは潤滑能が不足し、ゴーリングと呼ばれる擦り疵
や焼付きなどの外観不良が発生するおそれがある。この
現象は晶出物の大きさ、量、種類に影響されることが知
られており、適切なMn系晶出物を形成して、しごき加
工における潤滑能を向上させるためにMnは不可欠な元
素である。Mn量が1.8%を越えればMnAl6 の初
晶巨大金属間化合物が発生して、逆に著しく成形性を損
ってしまう。またMn量が0.5%未満ではMn系化合
物による固体潤滑的な効果が得られない。そこでMnの
範囲は0.5〜1.8%とした。
【0014】Mg:Mgは単独でも固溶強化に効果があ
る元素であり、強度向上に不可欠な元素である。さらに
Mgの添加は、SiやCuとの共存によってMg2 Si
あるいはAl−Cu−Mg相の析出による時効硬化を期
待することができる。Mg量が0.5%未満ではその効
果が少ないため所要の強度が得られず、一方2.0%を
越えて添加した場合には、絞り成形上は問題ないが、加
工硬化しやすくなるため、DI成形時の再絞り性やしご
き性を悪くする。そこでMgの範囲は0.5〜2.0%
とした。
【0015】Fe:FeはMnの晶出や析出を促進し、
アルミニウム基地中のMn固溶量やMn系不溶性化合物
の分散状態を制御するために必要な元素である。適正な
化合物分散状態を得るためには、Mn添加量に応じてF
eを添加することが必要である。Fe量が0.1%未満
では適正な化合物分散状態を得ることが困難であり、一
方Fe量が0.7%以上では、Mn添加に伴なって初晶
巨大化合物が発生しやすくなり、成形性を著しく損う。
そこでFeの範囲は0.1〜0.7%とした。
【0016】Ti,B:通常のアルミニウム合金におい
ては鋳塊結晶粒微細化のためにTiを単独で、あるいは
Bと組合せて微量添加することが一般的である。この発
明においても微量のTi、もしくはTiおよびBを添加
することができる。但しTi量が0.005%未満では
その効果が得られず、0.20%を越えれば初晶TiA
3 が晶出して成形性を阻害するから、Ti量は0.0
05〜0.20%とすることが望ましい。またTiと併
せてBを添加する場合、B量が0.0001%未満では
その効果がなく、0.05%を越えればTiB2 の粗大
粒子が混入して成形性を害するから、B量は0.000
1〜0.05%の範囲が望ましい。
【0017】以上の各成分のほかは、Alおよび不可避
的不純物とすれば良いが、強度向上のために必要に応じ
てSi,Cu,Cr,Znのうちの1種または2種以上
を添加しても良い。これらの成分について次に説明す
る。
【0018】Si:Siの添加は、Mg2 Si系化合物
の析出による時効硬化に寄与する。Si量が0.05%
未満ではその効果が得られず、0.5%を越えれば時効
硬化は容易に得られるものの、材料が硬くなりすぎて成
形性を阻害する。そこでSiの範囲は0.05〜0.5
%とした。
【0019】Cu:Cuは、焼鈍中に溶体化させておい
て塗装焼付処理時にAl−Cu−Mg系化合物を析出さ
せることによる時効硬化に寄与する。Cu量が0.05
%未満ではその効果が得られず、一方Cuを0.5%を
越えて添加した場合には、時効硬化は容易に得られるも
のの硬くなりすぎて成形性を阻害するとともに、耐食性
が劣化する。そこでCuの範囲は0.05〜0.5%と
した。
【0020】Cr:Crも強度向上に有効な元素である
が、0.05%未満ではその効果が少なく、0.3%を
越えれば巨大晶出物を生成して成形性の低下を招くか
ら、Crを添加する場合のCr量は0.05〜0.3%
の範囲内とした。
【0021】Zn:Znの添加はMg2 Zn3 Al2
時効析出による強度向上に寄与するが、Zn量が0.1
%未満ではその効果が得られず、一方0.5%を越えれ
ば耐食性を劣化させるから、Znを添加する場合のZn
量は0.1〜0.5%の範囲内とした。
【0022】なお上記のSi,Cu,Cr,Znの各範
囲は、積極的にこれらの元素を添加する場合の添加量に
ついて規定したものであり、積極添加しない場合でも不
純物として各下限未満の量が含有されることがあること
は勿論である。
【0023】次にこの発明の方法における製造プロセス
をその作用とともに説明する。
【0024】先ず前述のような成分組成のアルミニウム
合金溶湯を常法にしたがってDC鋳造法(半連続鋳造
法)により鋳造し、得られた鋳塊に対して均質化処理を
施す。この均質化処理は、鋳塊中の偏析を解消して均質
化するとともに、Mn系第2相粒子のサイズ、分布を最
適化するために必要な工程であり、530〜600℃の
範囲内の温度とする必要がある。530℃未満では均質
化効果が充分に得られず、一方600℃を越えれば共晶
融解が生じるおそれがある。なお均質化処理の時間は特
に定めないが、2〜24時間の範囲内が適当である。2
時間未満では均質化の効果が充分に得られず、24時間
を越えれば不経済となるだけである。
【0025】均質化処理後の鋳塊に対しては熱間圧延を
施す。熱間圧延は一般に粗圧延と仕上圧延とに分けられ
るが、粗圧延は常法に従って行なえば良い。なお均質化
処理後には一旦冷却してから再加熱して熱間粗圧延を開
始しても、あるいは均質化処理後冷却することなく直ち
に熱間圧延を開始しても良い。
【0026】熱間圧延における仕上圧延は、その終了温
度が250〜320℃の範囲内、上り板厚が2.5mm
を越え3.5mm以下の範囲内となるように制御する必
要がある。熱間圧延終了温度および上り板厚は、次工程
の焼鈍時における深絞り耳率の制御に重要な影響を与
え、また固溶Mn量に影響を与える。
【0027】すなわち、熱間圧延終了温度が250℃未
満では、熱間圧延上りでの転位の回復が充分に進まず、
耳を低くするに有効なキューブ方位の再結晶粒をその後
の焼鈍で形成するための芽(キューブ方位の芽)が生成
されなくなり、一方320℃を越えれば転位の回復が過
度に進行する結果、その後の焼鈍で再結晶させるために
は、より高温での処理が必要となってしまい、再結晶粒
が粗大となるばかりでなく、深絞り耳を高くする有害な
R方位の再結晶粒が生成されやすくなってしまう。また
熱間圧延終了温度が320℃を越える高温となれば、熱
延コイル巻取中にMnの析出が生じ、固溶Mn量が減少
して、最終的に所要の強度が得られなくなる。
【0028】また熱間圧延上り板厚が2.5mm以下で
は、最終板厚まで冷間圧延した状態での加工歪の蓄積が
不充分となり、そのため塗装焼付処理後のフランジ成形
性が劣るようになる。一方熱間圧延上り板厚が3.5m
mを越えれば板厚方向の転位の存在が不均一となり、そ
の後の焼鈍でキューブ方位の再結晶粒が生成されにくく
なり、冷間圧延後の深絞り加工での45°耳の抑制が不
充分となる。
【0029】上述のようにして熱間圧延を終了した熱延
板に対しては、先ず第1段焼鈍として100℃/hr以
下の加熱速度で330〜400℃の範囲内の温度に加熱
して1〜10時間保持し、さらにその後、第2段焼鈍と
して、450〜600℃で10分以内の時間加熱する。
【0030】第1段焼鈍は、熱間圧延終了段階で形成さ
れている深絞り耳低減に有効なキューブ方位の芽を焼鈍
再結晶過程で優先的に成長させるために必要な工程であ
る。第1段焼鈍の温度が330℃未満では充分に再結晶
が進行せず、一方400℃を越える高温で加熱を行なえ
ば、表面酸化皮膜が厚くなってその後の冷間圧延におけ
る圧延性を劣化させる。また第1段焼鈍の時間が1時間
未満では、再結晶が充分に進行せず、一方10時間を越
えれば経済性を損なうだけである。さらに加熱昇温速度
が100℃/hrを越えれば、再結晶集合組織がランダ
ム化して相対的にキューブ方位の再結晶粒が減少し、冷
間圧延後の深絞り耳が大きくなる。
【0031】第2段焼鈍は、塗装焼付処理における時効
硬化による強度向上を図ると同時に成形性を確保するた
め、析出硬化元素を溶体化させておくために必要な工程
である。第2段焼鈍の温度が450℃未満では溶体化が
不充分となり、一方600℃を越えれば共晶融解が生じ
て製造に支障をきたすとともに、製品外観品質を損なう
おそれがある。また第2段焼鈍の時間については、溶体
化に対しては10分以内で充分であって、これを越えれ
ば表面酸化皮膜の生成によりその後の冷間圧延性や製品
外観を損なう。なお第2段焼鈍後の冷却は急冷が望まし
く、特にCu量が0.1%を越える場合には、冷却中に
おけるCuの析出を抑制するため、1℃/sec以上の
冷却速度で強制空冷もしくは水焼入れを行なうことが望
ましい。
【0032】ここで、熱間圧延終了後、第1段焼鈍、第
2段焼鈍を行なうに際しては、熱間圧延後の冷却および
第1段焼鈍後の冷却は必ずしも必要としない。したがっ
て熱間圧延後室温まで冷却することなく直ちに第1段焼
鈍を行なっても良く、また第1段焼鈍後直ちに第2段焼
鈍を行なっても良い。
【0033】前述の第2段焼鈍終了後には、冷間圧延を
行なって最終板厚とする。この冷間圧延においては、圧
延率を85%以上とすることが、薄肉化しても充分な強
度が得られるようにするとともに、その後のDI成形を
含めて加工組織を均一に強化し、塗装焼付処理後のネッ
キング加工性、フランジ加工性、シーミング加工性を向
上させるために必要である。圧延率が85%未満では、
加工歪の蓄積が不充分なため、塗装焼付処理時に不均一
な加工組織の回復が生じて、ネッキング加工性、フラン
ジ加工性、シーミング加工性を劣化させ、とりわけフラ
ンジ加工性を劣化させる。
【0034】以上のようにして得られた最終板厚のアル
ミニウム合金板は、塗装焼付処理後に充分な強度を得る
ため、0.16%を越えるMn固溶量とする必要があ
る。Mn固溶量が0.16%以下では、塗装焼付処理後
に充分な強度が得られない。なお0.16%を越えるM
n固溶量は、前述のように熱間圧延終了温度および焼鈍
条件を定めることによって達成することが可能である。
【0035】なお前述のようにして最終冷間圧延を行な
った後には、そのままDI成形に供しても良いが、必要
に応じて100〜200℃×30分〜10時間程度の最
終焼鈍を施すことによって深絞り性の一層の改善を図る
ことができる。
【0036】以上のようにこの発明の成形加工用アルミ
ニウム合金板の製造方法では、熱間圧延における圧延終
了温度および上り板厚を適切に調整し、併せて熱間圧延
後の焼鈍を、相対的に低温・長時間の第1段焼鈍および
相対的に高温・短時間の第2段焼鈍との組合せによって
実施し、さらに85%以上の最終冷間圧延を施すことに
よって、DI成形時における深絞り耳率の低減を図るこ
とができるとともに、塗装焼付処理後の缶胴縁部の加工
性、特にフランジ加工性を向上させることができ、しか
もMnを焼鈍中に充分に固溶させることにより、塗装焼
付処理後の強度を充分に高めることができるのである。
【0037】
【実施例】Mn1.05%、Mg1.13%、Fe0.
41%、Si0.23%、Cu0.18%、Cr0.0
2%、Ti0.03%、B0.0004%を含有し、残
部が実質的にAlよりなるJIS 3004相当のアル
ミニウム合金を常法に従ってDC鋳造し、得られた鋳塊
に590℃×10hrの均質化処理を行なった後、50
0℃にて熱間圧延を開始し、熱間圧延終了後、第1段焼
鈍、第2段焼鈍を行なってから最終冷間圧延を施して
0.33mm厚の冷延板を得た。ここで、熱間圧延にお
ける仕上げ板厚および終了温度、第1段焼鈍の条件、第
2段焼鈍の条件、最終冷間圧延の条件を、表1の条件N
o.1〜No.14に示すように種々変化させた。
【0038】得られた各冷延板(缶胴用薄板)につい
て、そのままの状態の板(元板)での耐力(元板耐力)
および塗装焼付処理に相当する200℃×20分の熱処
理を行なった状態での耐力(塗装焼付後耐力)を調べる
とともに、深絞り耳率およびDI缶成形後のDI缶胴特
性、元板の固溶Mn量を調べた。その結果を表2に示
す。なお深絞り耳率はポンチ径50mm、ブランク径9
0mm、クリアランス30%にてカップ深絞り試験を行
ない、耳率を調べた。この耳率が4%を越えれば製缶中
のトラブルを招きやすくなる。また耐力は、元板耐力よ
りも塗装焼付後耐力が重要であり、充分に薄肉化を図っ
ても缶強度を保つためには、塗装焼付後耐力280N/
mm2 以上が必要である。一方DI缶胴特性は、次のA
〜Dの4種類の評価を行なった。 A:しごき性評価として、ボデイメーカの第2アイアニ
ングダイスを外して苛酷なしごき成形を連続10000
缶行なったときの破断缶発生状況を調べた。 B:フランジ加工性評価として、DI成形、塗装焼付処
理後の缶胴縁部に対し4段ネッキング加工を行なった後
の口拡げ性を調べた。 C:シーミング加工性評価として、DI成形、塗装焼付
処理後、ネッキング加工、フランジ加工を行ない、缶蓋
を巻締めしたときのシーミング加工性を調べた。 D:缶胴外観評価として、DI成形後の缶胴について缶
胴壁の圧延方向に沿ったフローライン状の外観欠陥、お
よびDI加工方向に生じる縦筋の発生状況を調べた。
【0039】なおこれらのA〜Dの評価は、いずれも相
対評価とし、良好な場合に○印を、不良の場合に×印を
付した。さらに冷間圧延性について、圧延摩耗粉発生状
況を調べ、○〜×で評価した。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】表1、表2において、製造条件No.2お
よびNo.3はいずれもこの発明で規定する範囲内の条
件でDI缶胴用アルミニウム合金薄板を製造した例であ
るが、これらの場合にはいずれも元板のMn固溶量が
0.16%を越えていて、塗装焼付処理後の耐力が28
0N/mm2 以上と充分な高強度を示し、かつ深絞り耳
率も4%以下と小さく、さらにDI成形時におけるしご
き加工性に優れる同時に、DI成形、塗装焼付処理後の
缶胴縁部に対するフランジ加工性、シーミング加工性に
優れ、かつDI成形による缶胴外観品質も優れ、また冷
間圧延性も良好であった。
【0043】これに対し製造条件No.1は熱間圧延の
終了板厚が薄いため、最終板までの冷間圧下率を充分に
大きくすることができず、そのため4段ネッキング加工
後のフランジ加工性がやや劣るとともに、塗装焼付処理
後の強度も不充分であった。また製造条件No.4は、
熱間圧延の終了板厚が厚すぎるため、強度、フランジ成
形性は良好なものの、深絞り耳率が高く、また元板強度
も高過ぎるためDI成形性がやや劣化した。さらに製造
条件No.5、No.6は、いずれも従来の通常のプロ
セスを適用したものであるが、バッチ焼鈍だけ(No.
5)では固溶Mn量が少ないため所定の強度が得られ
ず、一方連続焼鈍だけ(No.6)では耳率が高くなっ
てしまった。一方No.7〜No.9は第1段焼鈍の条
件が不適切だった例である。このうちNo.7は、第1
段焼鈍の加熱速度が速過ぎた例であるが、この場合に
は、焼鈍時において耳率抑制に有効なキューブ方位の再
結晶粒が得られないため、耳率が高くなってしまった。
またNo.8は第1段焼鈍の温度が低過ぎた例である
が、この場合は焼鈍時に再結晶が起らず、耳率が高くな
ってしまった。一方No.9は、逆に第1段焼鈍の温度
が高過ぎた例であるが、この場合は焼鈍時に不均一な再
結晶が生じて耳率が抑制できなくなるとともに、表面酸
化皮膜が厚くなって冷間圧延性、DI缶外観の劣化を招
いた。No.10〜No.12は第2段焼鈍の条件が不
適切であった例である。このうちNo.10は第2段焼
鈍温度が低過ぎた例であるが、この場合は焼鈍中におけ
るMnの固溶が不充分なため、所定の強度が得られなか
った。No.11は第2段焼鈍温度が高過ぎた例である
が、この場合は表面酸化皮膜が厚くなり、冷間圧延性、
DI缶外観の劣化を引起こした。さらにNo.12は第
2段焼鈍時間が長過ぎた例であるが、この場合も表面酸
化皮膜が厚くなり、冷間圧延性、DI缶外観の劣化を引
起こした。またNo.13、No.14は熱間圧延終了
温度が不適切だった例である。そのうちNo.13は熱
間圧延終了温度が低過ぎた例であるが、この場合は熱間
圧延中に形成されるキューブ方位の芽が少なくなり、耳
率が高くなってしまった。一方No.14は熱間圧延終
了温度が高過ぎた例であるが、この場合は熱間圧延中に
不均一な再結晶が生じ、続く焼鈍時に耳率低減に有効な
キューブ方位の再結晶が生じなくなるともに、高温での
コイル巻取中にMnの析出が促進されて、固溶Mn量が
少なくなり、所定の強度が得られなかった。
【0044】
【発明の効果】この発明の成形加工用アルミニウム合金
板の製造方法によれば、その製造条件を適切に選定し、
特に熱間圧延条件(とりわけ熱間圧延終了条件)とその
後の焼鈍条件を適切に設定することによって、深絞り耳
率の低減に有効な方位の再結晶粒を優先的に成長させる
とともに、塗装焼付処理時における時効硬化に寄与する
元素、特にMnを固溶させてMn固溶量を0.16%を
越える量とすることができ、そのためDI成形時の深絞
り耳を低減して材料歩留りを向上させることができると
同時に、塗装焼付処理時における時効硬化を利用して塗
装焼付処理前後の強度低下を少なくすることができ、そ
れに伴なって、必要な缶胴強度を得るためにDI成形前
の元板の強度をさほど高めておく必要がなくなることか
ら、DI成形性も良好となり、さらには冷間圧延率を高
めても深絞り耳率を低く抑えることができるため、最終
冷間圧延率を85%以上に高めることによりDI成形に
おけるしごき加工での圧下率の増分を相対的に少なくし
て、DI成形後の缶胴縁部のネッキング加工、フランジ
ング加工、シーミング加工における成形性も良好とする
ことができる。
【0045】以上のようにこの発明の方法によれば、D
I缶胴として必要な高強度を有するとともにDI成形時
における深絞り耳率が低く、かつ成形時における成形性
と、その後の缶胴縁部に対するフランジング加工、ネッ
キング加工、シーミング加工における成形性との両者を
良好にすることができるなど、顕著な効果を得ることが
できる。
【0046】なおこの発明の方法により得られた成形加
工用アルミニウム合金板は、既に述べたところから明ら
かなようにDI缶胴用として最も適切であるが、その他
の成形加工用の用途にも使用し得ることはもちろんであ
る。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Al−Mn−Mg系アルミニウム合金を
    DC鋳造法により鋳造した後、得られた鋳塊に対して5
    30〜600℃の範囲内の温度で均質化処理を施し、さ
    らに熱間圧延を施すにあたって、熱間圧延終了温度が2
    50〜320℃の範囲内、上り板厚が2.5mmを越え
    3.5mm以下の範囲内となるように圧延し、得られた
    熱延板に対して、100℃/hr以下の加熱速度で昇温
    して330〜400℃の範囲内の温度で1〜10時間加
    熱する第1段焼鈍を施し、さらに450〜600℃で1
    0分以内加熱する第2段焼鈍を施し、その後85%以上
    の圧延率で冷間圧延を施すことにより、0.16wt%
    を越える固溶Mnを含有する最終板を得ることを特徴と
    する、成形加工用アルミニウム合金板の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記Al−Mn−Mg系アルミニウム合
    金が、必須合金成分としてMn0.5〜1.8%(重量
    %、以下同じ)、Mg0.5〜2.0%を含有するもの
    である、請求項1に記載の成形加工用アルミニウム合金
    板の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記Al−Mn−Mg系アルミニウム合
    金が、Mn0.5〜1.8%、Mg0.5〜2.0%、
    Fe0.1〜0.7%を含有し、かつTi0.005〜
    0.20%を単独でもしくはB0.0001〜0.05
    %と組合せて含有し、さらに必要に応じてSi0.05
    〜0.5%、Cu0.05〜0.5%、Cr0.05〜
    0.3%、Zn0.1〜0.5%のうちの1種以上を含
    有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるもので
    ある、請求項1に記載の成形加工用アルミニウム合金板
    の製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003342657A (ja) * 2002-03-20 2003-12-03 Kobe Steel Ltd アルミニウム系熱間圧延板及びそれを用いた缶胴用板材
EP1316623B1 (de) * 2001-11-28 2007-09-05 Hydro Aluminium Deutschland GmbH Verfahren zur Herstellung von Rollformprodukten aus Aluminiumlegierung
CN115094276A (zh) * 2022-06-30 2022-09-23 广东和胜工业铝材股份有限公司 一种铝合金及其制备方法和应用

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