JP4034904B2 - アルミニウム缶胴材用熱間圧延板およびそれを用いた缶胴用板材 - Google Patents

アルミニウム缶胴材用熱間圧延板およびそれを用いた缶胴用板材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明はDI加工(絞り−しごき加工)による2ピースアルミニウム缶用の缶胴材の製造に使用される熱間圧延板と、それを用いたアルミニウム缶胴用板材、すなわちDI缶胴向けのAl−Mg−Mn系アルミニウム合金からなる熱間圧延板および缶胴用板材に関し、特に深絞り耳が低くかつ外観品質に優れた缶胴材用熱間圧延板および缶胴用板材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に2ピースアルミニウム缶の製造工程としては、缶胴素材に対して深絞り加工およびしごき加工によるDI成形を施して缶胴形状とした後、所定のサイズにトリミングを施して脱脂・洗浄処理を行ない、さらに塗装および印刷を行なって焼付け(ベーキング)を行ない、その後、缶胴縁部に対してネッキング加工、フランジング加工を行ない、その後、別に成形した缶蓋(缶エンド)と合せてシーミング加工を行なって缶とするのが通常である。
【0003】
このようにして製造されるDI缶の素材(缶胴材)としては、従来からAl−Mg−Mn系合金であるJIS 3004合金の硬質板が広く用いられている。この3004合金は、しごき加工性に優れていて、強度を高めるために高圧延率で冷間圧延を施した場合でも比較的良好な成形性を示すところから、DI缶胴材として好適であるとされている。
【0004】
このようなDI缶胴用の3004合金硬質板の製造方法としては、DC鋳造法などによって鋳造後、鋳塊に対し均質化処理を施し、さらに熱間圧延および冷間圧延を施して所定の板厚とし、かつその過程における冷間圧延前あるいは冷間圧延中途において中間焼鈍を施す方法が一般的である。
【0005】
ところでDI缶胴については、主として材料コスト低減、軽量化の目的から、より薄肉化を図ることが強く望まれている。そしてこのように薄肉化を図るためには、薄肉化に伴なって生じる缶の座屈強度低下の問題を回避するため、材料の高強度化を図ることが重要である。さらにDI缶胴用材料については、上述のような薄肉化を図るための高強度化の要請ばかりではなく、DI成形時における耳率が低いことが強く望まれる。すなわち、DI成形時の耳率が低いことは、DI成形時の歩留りの向上と、缶胴の耳切れに起因する缶胴破断の防止の点から極めて重要である。そのほか、DI缶製造時におけるフランジ成形性(口拡げ性)、しごき性(缶切れ性)も必要である。特にこれらの要求特性のうちでも耳率はその制御が難しく、したがってこれらの諸特性のバランスの改善には、耳率の適切な制御が極めて重要な課題となっている。
【0006】
一方、最近では消費者の高級指向などに起因して、DI缶胴についてもその外観品質が重要視されるようになっており、そこで表面の外観品質が優れたDI缶胴材の開発が強く望まれるようになっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述のようなDI缶胴材に対して要求される諸性能のうち、耳率の低減に関しては、(100)[001]方位、すなわちいわゆるキューブ方位の再結晶粒が深絞り加工時の耳率低減に寄与することが知られており、そこでDI缶胴材の製造工程においても、熱間圧延後の中間焼鈍などの最終的な再結晶過程でキューブ方位の再結晶粒集合組織を生成させることが耳率低減に有効である。そしてそのためには、熱間圧延工程もしくはその後の冷却過程でも、キューブ方位の亜結晶粒もしくは再結晶粒を出来るだけ数多く形成しておくことが耳率低減に有利と考えられている。しかしながら、キューブ方位の亜結晶粒の成長速度は、他の方位の亜結晶粒の成長速度よりも速いことから、その後の中間焼鈍などにおいて完全再結晶させた再結晶粒が粗大となってしまう傾向を示す。そしてこのように粗大な再結晶粒が板表面に存在すれば、最終冷間圧延を施してもその影響を除去することは困難であって、DI加工後の缶胴に肌荒れやフローラインなどを生じさせて、缶の外観品質を低下させる原因となってしまう。
【0008】
したがって従来は、DI缶胴材について深絞り耳率の低減と外観品質の向上とを同時に達成することは困難とされていたのが実情である。
【0009】
この発明は以上の事情を背景としてなされたもので、深絞り耳率が確実かつ安定して低く、しかも外観品質も良好なDI缶胴材を得るに最適な熱間圧延板およびその熱間圧延板を用いたDI缶胴用板材を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するべく、本発明者等が鋭意実験・検討を重ねた結果、完全再結晶した状態でのDI缶胴用板材におけるキューブ方位密度を、板厚方向の各部位において適切に制御することによって、低耳率の確保と外観品質の向上とを同時に図り得ることを見出した。そしてまた、上述のように完全再結晶状態で板厚方向にキューブ方位密度を適切に制御するためには、熱間圧延板の状態で、板断面における加工組織の面積率およびキューブ方位の方位密度を適切に制御すると同時に板厚方向の圧延集合組織の方位密度を板厚方向の各部位で適切に制御する必要があることを見出し、この発明をなすに至ったのである。
【0011】
具体的には、請求項1の発明は、DI缶胴材用の熱間圧延板について規定したものであって、Mg0.5〜2.0%、Mn0.5〜2.0%、Fe0.1〜0.7%、Si0.05〜0.5%、Cu0.05〜0.5%を含有し、さらに必要に応じて0.005〜0.20%のTiを単独でもしくは0.0001〜0.05%のBと組合せて含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金からなるアルミニウム缶胴材用熱間圧延板であって、板の断面における圧延加工組織の面積率が80%以上であり、しかもキューブ方位の方位密度が板厚全域にわたりランダム方位の3倍以上であり、かつ板厚方向の中央部における圧延集合組織の方位密度が板表面における圧延集合組織の方位密度の2倍以上であることを特徴とするものである。
【0012】
また請求項2の発明も、DI缶胴材用の熱間圧延板を規定したものであって、Mg0.5〜2.0%、Mn0.5〜2.0%、Fe0.1〜0.7%、Si0.05〜0.5%、Cu0.05〜0.5%を含有し、かつCr0.05〜0.3%、Zn0.05〜0.5%のうちの1種または2種を含有し、さらに必要に応じて0.005〜0.20%のTiを単独でもしくは0.0001〜0.05%のBと組合せて含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金からなるアルミニウム缶胴材用熱間圧延板であって、板の断面における圧延加工組織の面積率が80%以上であり、しかもキューブ方位の方位密度が板厚全域にわたりランダム方位の3倍以上であり、かつ板厚方向の中央部における圧延集合組織の方位密度が板表面における圧延集合組織の方位密度の2倍以上であることを特徴とするものである。
【0013】
さらに請求項3の発明は、請求項1もしくは請求項2に記載された熱間圧延板を用いた缶胴材用板材について規定したものである。すなわち請求項3の発明のアルミニウム缶胴用板材は、請求項1もしくは請求項2の熱間圧延板を用い、その熱間圧延板の組織を完全再結晶させてなるアルミニウム缶胴用板材であって、キューブ方位の方位密度が、板表面から全板厚の10%の位置までの表層領域ではランダム方位の30倍以下であり、しかも板表面から10%の位置から板厚方向中央部までの中心領域ではランダム方位の15倍を越えるとともに前記表層領域におけるキューブ方位密度より高くなっていることを特徴とするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
先ずこの発明の缶胴材用熱間圧延板もしくは缶胴用板材において用いられるアルミニウム合金の成分組成の限定理由について説明する。
【0015】
Mg:
Mgの添加は、Mgそれ自体の固溶による強度向上に効果があり、また固溶したMgは転位との相互作用が大きいため加工硬化による強度向上が期待でき、さらにはSiとの共存によるMg2Siの時効析出による強度向上も期待でき、したがってMgは缶胴材として必要な強度を得るためには不可欠の元素である。但しMg量が0.5%未満では上述の効果が少なく、一方2.0%を越えれば、高強度は容易に得られるものの、DI加工時の変形抵抗が大きくなって絞り性や耐ゴーリング特性を含むしごき性を悪くする。したがってMg量は0.5〜2.0%の範囲内とした。
【0016】
Mn:
Mnは強度および成形性の向上に寄与する有効な元素である。特にこの発明で目的としている用途である缶胴材では、DI成形時にしごき加工が加えられるため、とりわけMnは重要となる。アルミニウム板のしごき加工においては通常エマルジョンタイプの潤滑剤が用いられているが、Mn系晶出物が少ない場合には同程度の強度を有していてもエマルジョンタイプ潤滑剤だけでは潤滑能が不足し、ゴーリングと称される擦り疵や焼付きなどの外観不良が発生するおそれがある。ゴーリングは晶出物の大きさ、量、種類に影響されることが知られており、その晶出物を形成するためにMnは不可欠な元素である。Mn量が0.5%未満ではMn系化合物による固体潤滑的な効果が得られず、一方Mn量が2.0%を越えればAl6Mnの初晶巨大金属間化合物が発生し、著しく成形性を損なう。そこでMn量は0.5〜2.0%の範囲内とした。
【0017】
Fe:
Feは、Mnの晶出や析出を促進して、アルミニウム基地中のMn固溶量やMn系金属間化合物の分散状態を制御するために必要な元素である。適切な化合物分散状態を得るためには、Mn添加量に応じてFeを添加することが必要である。Fe量が0.1%未満では適切な化合物分散状態を得ることが困難であり、一方Fe量が0.7%を越えれば、Mn添加に伴なって初晶巨大金属間化合物が発生しやすくなり、成形性を著しく損なう。そこでFe量の範囲は0.1〜0.7%とした。
【0018】
Si:
Siの添加は、Mg2Si系化合物の析出による時効硬化を通じて缶胴材の強度向上に寄与する。またSiは、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物を生成して、Mn系金属間化合物の分散状態を制御するために必要な元素である。Si量が0.05%未満では上記の効果が得られず、一方0.5%を越えれば時効硬化により材料が硬くなりすぎて成形性を阻害する。そこでSi量の範囲は0.05〜0.5%とした。
Cu:
Cuは、焼鈍時にアルミニウム基地中に溶体化させておき、塗装焼付処理時にAl−Cu−Mg系析出物として析出することによる析出硬化を利用した強度向上に寄与する。Cu量が0.05%未満ではその効果が得られず、一方Cuを0.5%を越えて添加した場合には、時効硬化は容易に得られるものの、硬くなりすぎて成形性を阻害し、また耐食性も劣化する。そこでCu量の範囲は0.05〜0.5%とした。
【0019】
Ti,B:
通常のアルミニウム合金においては、鋳塊結晶粒微細化のためにTi、あるいはTiおよびBを微量添加することが行なわれており、この発明においても、必要に応じて微量のTiを単独で、あるいはBと組合せて添加しても良い。但しTi量が0.005%未満ではその効果が得られず、0.20%を越えれば巨大なAl−Ti系金属間化合物が晶出して成形性を阻害するため、Tiを添加する場合のTi量は0.005〜0.20%の範囲内とした。またTiとともにBを添加すれば鋳塊結晶粒微細化の効果が向上するが、Tiと併せてBを添加する場合、B量が0.0001%未満ではその効果がなく、0.05%を越えればTi−B系の粗大粒子が混入して成形性を害することから、TiとともにBを添加する場合のB量は0.0001〜0.05%の範囲内とした。
【0020】
Cr,Zn
これらはいずれも強度向上に寄与する元素であり、必要に応じてこれらのうちから選ばれた1種または2種が添加される。これらの各元素についてさらに説明する。
【0022】
Cr;
Cr強度向上に効果的な元素であるが、0.05%未満ではその効果が少なく、0.3%を越えれば巨大晶出物生成によって成形性の低下を招くため、好ましくない。そこでCr量の範囲は0.05〜0.3%とした。
【0023】
Zn:
Znの添加はAl−Mg−Zn系粒子の時効析出による強度向上に寄与するが、0.05%未満ではその効果が得られず、0.5%を越えれば耐食性を劣化させる。そこでZn量の範囲は0.05〜0.5%とした。
【0024】
以上の各元素の残部はAlと不可避不純物とすれば良い。
【0025】
次にこの発明の熱間圧延板およびそれを用いたDI缶胴用板材の組織条件について詳細に説明する。
【0026】
熱間圧延板については、先ず第1に、キューブ方位密度が、板厚全域にわたってランダム方位の3倍以上でなければならない。すなわち、完全再結晶処理以前の熱間圧延板でも、熱間圧延時やその後の冷却過程での熱により、再結晶粒の前段階である亜結晶粒が生じているのが通常であり、また一部では再結晶まで進んでいることがある。一方、このような熱間圧延による加工および熱を受けて生成された亜結晶粒、再結晶粒は、いくつかの特定の優先方位を有するものの集合体、すなわち所謂集合組織となる。この集合組織の優先方位としては、キューブ(Cube)方位、ゴス(Goss)方位、あるいはBrass(Bs)方位、Cupper(Cu)方位、S方位などが代表的であるが、この発明の場合、集合組織として種々の優先方位の亜結晶粒(一部は再結晶粒)が生成された熱間圧延板として、特にキューブ方位の方位密度が、板厚全体にわたってランダム方位の3倍以上となっていなければならない。ここで、熱間圧延板の段階でキューブ方位密度がランダム方位の3倍以上となっていなければ、その後の中間焼鈍等の完全再結晶処理によってキューブ方位の再結晶粒が充分に形成されず、最終板において充分な低耳率を達成することが困難となる。なおここでランダム方位に対するキューブ方位密度の比は、X線回折を行なって、方位の配向のないランダム方位のサンプル(一般には粉末サンプル)に対するキューブ方位のX線回折強度比として求めることができる。
【0027】
また、熱間圧延板の第2の組織条件として、熱間圧延板の断面において、加工組織の面積率が80%以上存在することが必要である。すなわち、一般にアルミニウム等の金属材料に塑性加工を加えた場合は、ミクロ的に見て加工による変形が観察される領域(結晶粒およびその集合体)が形成され、その部分を加工組織と称しているが、この発明の場合、熱間圧延による変形が観察される加工組織の全領域が、板断面の面積率にして全体の80%以上を占めている必要がある。ここで、熱間圧延板の段階において板の断面における加工組織の面積率が80%未満では、キューブ方位の亜結晶粒を後の中間焼鈍等の完全再結晶処理において成長させてキューブ方位の再結晶粒組織を生成させるに寄与する圧延集合組織を、板厚方向中央部において充分に発達させることが困難となり、結果的にキューブ方位密度の高い完全再結晶粒組織を得ることが困難となって耳率低減が困難となる。なおここで加工組織の面積率は、例えば光学顕微鏡写真から画像解析装置を用いて求めることができる。
【0028】
さらに熱間圧延板の第3の組織条件として、圧延集合組織の方位密度に関して、板厚方向中央部における圧延集合組織の方位密度が板表面における圧延集合組織の方位密度の2倍以上であることが必要である。すなわち、既に述べたようにアルミニウム材料における圧延集合組織は、キューブ方位、ゴス方位、Bs方位、Cu方位、S方位など種々の優先方位の結晶粒(実際には亜結晶粒および一部は再結晶粒)によって構成されるが、この発明の場合、圧延集合組織の各方位の合計の方位密度が、板表面に対して2倍以上でなければならない。これは、逆に言えば、板表面の圧延集合組織の方位密度が板厚方向中央部の圧延集合組織の方位密度の1/2以下であることと同じである。このように板表面の圧延集合組織の方位密度を板厚方向中央部の1/2以下とすることによって、その後の中間焼鈍等の完全再結晶処理において板の表面付近(表層領域)ではキューブ方位の再結晶粒の粗大な成長を抑制する一方、板厚方向中央部ではキューブ方位の再結晶粒の成長を促進して、後述する完全再結晶後の缶胴用板材の組織条件を満たすことが可能となり、ひいては改めて説明するように表面の外観品質が良好でしかも低耳率のDI缶胴用板材を得ることができるのである。なおここで圧延集合組織の方位密度比は、キューブ方位の方位密度比と同様の方法によって求めることができる。
【0029】
以上のように熱間圧延板については、X線回折によるキューブ方位密度条件、板断面における加工組織面積率条件、および板表面と板厚方向中央部における圧延集合組織の方位密度比条件の3条件を満たすことが必要であり、これらの3条件を同時に満たすことによって、その後の中間焼鈍等の完全再結晶処理後の缶胴用板材として次に述べる条件を満たすことが可能となるのである。
【0030】
完全再結晶処理後の缶胴用板材の組織条件としては、キューブ方位の方位密度が、板表面から全板厚の10%の位置までの領域(表層領域)ではランダム方位の30倍以下であり、しかも全板厚の10%の位置から板厚方向中央部の領域(中心領域)ではランダム方位の15倍を越えるとともに表層領域におけるキューブ方位密度よりも高くなっていることが必要である。これらの条件は、低耳率を確保すると同時に、製缶時に肌荒れやフローライン等の生じるおそれの少ない外観品質が優れた缶胴材を得るために必要な条件である。
【0031】
ここで、板表面から全板厚の10%の位置までの表層領域のキューブ方位密度がランダム方位の30倍を越えれば、製缶時に肌荒れやフローラインが生じ、外観品質の低下を招くおそれがある。一方、全板厚の10%の位置から板厚方向中央部の中心領域におけるキューブ方位密度が、ランダム方位の15倍以下の場合、あるいは表層領域のキューブ方位密度より低い場合は、低耳率を達成することが困難となる。なお中心領域におけるキューブ方位密度は、ランダム方位の15倍を越えていれば良いが、特に確実かつ安定して低耳率を得るためにはランダム方位の30倍を越えていること、より好ましくは50倍を越えていることが好ましい。
【0032】
以上のような組織条件を満たす熱間圧延板、缶胴用板材を製造するための全体的な工程自体は従来と同様であれば良い。すなわち、DC鋳造法などによって得られたスラブ等の鋳塊に均質化処理を施し、次いで熱間圧延を行なって熱間圧延板とする。またさらに、缶胴用板材を得るためには、熱間圧延板に対して、直ちにあるいは第1次の冷間圧延を施した後、完全再結晶処理としてバッチ焼鈍もしくは連続焼鈍による中間焼鈍を施し、その後最終冷間圧延を行なって缶胴用板材として必要な板厚とする。さらに必要に応じて、DI成形性を向上させるため、再結晶温度よりも低い温度で最終焼鈍を施しても良い。
【0033】
このような製造工程中におけるプロセス条件は、要は前述のような組織条件を満たすように選択すれば良い。もちろん具体的な各プロセス条件は合金の成分組成や他のプロセス条件との兼ね合いで異なってくるから、一概には定められないが、通常は次のような条件が好ましい。
【0034】
すなわち、鋳塊に対する均質化処理を520〜630℃の範囲内の温度で1時間以上、好ましくは48時間以下で行なう。次いで熱間粗圧延を350〜580℃の範囲内で開始し、続いて熱間仕上圧延を行なうにあたって、その仕上圧延の各パスにおける圧延温度を、最終パスを除いて280〜350℃の範囲内とし、熱間仕上圧延の最終パスの圧延温度を200〜330℃となるようにして板厚1.0〜7.0mmに仕上げることが好ましい。なお熱間圧延終了直後の200〜330℃の範囲内の温度から室温までの平均冷却速度は100℃/時間以下とすることが好ましい。このようにして得られた熱間圧延板に対しては、1次冷間圧延として圧延率が2〜60%の冷間圧延を施し、その後連続焼鈍もしくはバッチ焼鈍によって中間焼鈍(完全再結晶処理)を施すことが好ましい。この中間焼鈍に連続焼鈍を適用する場合、その連続焼鈍は、1〜100℃/秒の範囲内の平均昇温速度で330〜620℃の範囲内の温度に加熱し、保持なしもしくは10分以下の保持の後、1〜100℃/秒の範囲内の平均冷却速度で冷却する条件とすることが好ましい。一方、1次冷間圧延後の中間焼鈍としてバッチ焼鈍を適用する場合、平均昇温速度0.1℃/秒以下で250〜500℃の範囲内の温度に加熱し、その範囲内の温度で0.5時間以上24時間以下保持し、平均冷却速度0.1℃/秒以下で冷却することが好ましい。
【0035】
このようにして連続焼鈍もしくはバッチ焼鈍による中間焼鈍を施した後の最終冷間圧延は、50%以上の圧延率で施すことが好ましい。
【0036】
なお最終冷間圧延後の板は、これを最終板としてそのままDI成形に供しても良いが、最終冷間圧延後の板に必要に応じて成形性向上のために80〜200℃の範囲内の温度で0.5〜24時間の最終焼鈍を行なっても良い。なお積極的に最終焼鈍を行なわない場合でも、最終冷間圧延を高速で行なうことにより発生する加工熱を利用して、最終焼鈍と同様な効果を得ることができる。
【0037】
【実施例】
本発明例として、表1に示す合金記号A〜Dの各合金について、常法に従ってDC鋳造法によりスラブに鋳造した後、520〜630℃で1時間以上の均質化処理を施した後、熱間圧延を施した。熱間圧延は、350〜580℃の範囲内の温度で熱間粗圧延を開始し、その後熱間仕上圧延を5パスで行ない、かつその仕上圧延の1〜4パス目までは圧延温度を280〜350℃、5パス目では圧延温度を200〜330℃となるように調整して、板厚2.0mmの熱間圧延板とした。さらに室温まで冷却した後の熱間圧延板に対し、圧延率10%の1次冷間圧延を施した後、中間焼鈍として連続焼鈍(昇温速度および冷却速度1〜100℃/秒、加熱到達温度330〜620℃、保持0〜10分)もしくはバッチ焼鈍(昇温速度および冷却速度0.1℃/秒以下、加熱温度250〜500℃、保持0.5〜24時間)を施し、その後、圧延率83%の最終冷間圧延を行なった。
【0038】
また比較例として、表1に示す合金記号E〜Gの各合金については、常法に従ってDC鋳造法によりスラブに鋳造した後、520〜630℃で1時間以上の均質化処理を施してから熱間圧延を行なった。熱間圧延は、450〜580℃の範囲内の温度で熱間粗圧延を開始し、その後熱間仕上圧延を5パスで行ない、かつその仕上圧延の1〜5パス目までは圧延温度360〜410℃で行ない、5パス目は260〜390℃の圧延温度で行なった。その後、前述の本発明例と同様に1次冷間圧延、中間焼鈍、最終冷間圧延を行なった。
【0039】
以上の本発明例、比較例において、熱間圧延後の熱間圧延板について、断面における加工組織の面積率、X線回折によるランダム方位に対するキューブ方位の方位密度比、および板表面における圧延集合組織に対する板厚方向中央部における圧延集合組織の方位密度比を調べた結果を表2に示す。また完全再結晶処理としての中間焼鈍を行なった後の板材について、ランダム方位に対する板表面から全板厚の10%の位置までの表層領域におけるキューブ方位の方位密度比および全板厚の10%の位置から板厚方向中央部までの中心領域におけるキューブ方位の方位密度比を調べた結果を表2に併せて示す。
【0040】
さらに、前述のようにして得られた最終冷間圧延後の各缶胴用板材について、DI成形を行なって耳率を調べるとともに、製缶後の缶の外観を調べた。その結果を表3に示す。なお耳率としては2.5%以下が合格と判定することができる。一方缶の外観評価はランク“1”〜“5”の5段階評価を行なった。この5段階評価においてはランクの数値が大きいほど良好であり“3”のランク以上で合格と評価した。
【0041】
【表1】
Figure 0004034904
【0042】
【表2】
Figure 0004034904
【0043】
【表3】
Figure 0004034904
【0044】
表1〜表3において、製造番号1〜4はいずれもこの発明の範囲内であり、これらの場合は耳率がいずれも2.5%以下と低く、かつ外観品質も良好であった。これに対し製造番号5の場合は、熱間圧延板の断面における加工組織の面積率が55%と低く、かつ中間焼鈍後の完全再結晶板における中心領域のキューブ方位の方位密度比が14と低く、この場合は外観品質は優れているものの、耳率が3.6%と高くなってしまった。また製造番号6はMg量がこの発明で規定する範囲よりも高い合金を用いた例であり、この場合、熱間圧延板の組織条件はこの発明で規定する範囲を満たしており、また中間焼鈍後の完全再結晶板における表層領域のキューブ方位密度はこの発明で規定する範囲内となっているが、中心領域のキューブ方位密度が低く、耳率が4.3%と高くなってしまった。さらに製造番号7は、熱間圧延板における板厚方向中央部の圧延集合組織の方位密度が板表面の圧延集合組織の方位密度の0.8倍と低く、この場合は中間焼鈍後の完全再結晶板における表層領域のキューブ方位密度が高過ぎるとともに中心領域のキューブ方位密度が低く、その結果耳率が2.9%と高いばかりでなく、表面の外観品質も劣ってしまった。
【0045】
【発明の効果】
この発明の熱間圧延板、およびそれを用いた缶胴用板材によれば、組織条件を適切に設定することによって、DI成形加工後の耳率を確実かつ安定して低くすることができると同時に、DI成形加工時の肌荒れやフローライン等の発生を防止して良好な外観品質を有する缶を得ることができる。

Claims (3)

  1. Mg0.5〜2.0%(重量%、以下同じ)、Mn0.5〜2.0%、Fe0.1〜0.7%、Si0.05〜0.5%、Cu0.05〜0.5%を含有し、さらに必要に応じて0.005〜0.20%のTiを単独でもしくは0.0001〜0.05%のBと組合せて含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金からなるアルミニウム缶胴材用熱間圧延板であって、板の断面における圧延加工組織の面積率が80%以上であり、しかもキューブ方位の方位密度が板厚全域にわたりランダム方位の3倍以上であり、かつ板厚方向の中央部における圧延集合組織の方位密度が板表面における圧延集合組織の方位密度の2倍以上であることを特徴とする、アルミニウム缶胴材用熱間圧延板。
  2. Mg0.5〜2.0%、Mn0.5〜2.0%、Fe0.1〜0.7%、Si0.05〜0.5%、Cu0.05〜0.5%を含有し、かつCr0.05〜0.3%、Zn0.05〜0.5%のうちの1種または2種を含有し、さらに必要に応じて0.005〜0.20%のTiを単独でもしくは0.0001〜0.05%のBと組合せて含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金からなるアルミニウム缶胴材用熱間圧延板であって、板の断面における圧延加工組織の面積率が80%以上であり、しかもキューブ方位の方位密度が板厚全域にわたりランダム方位の3倍以上であり、かつ板厚方向の中央部における圧延集合組織の方位密度が板表面における圧延集合組織の方位密度の2倍以上であることを特徴とする、アルミニウム缶胴材用熱間圧延板。
  3. 請求項1もしくは請求項2の熱間圧延板を用い、その熱間圧延板の組織を完全再結晶させてなるアルミニウム缶胴用板材であって、キューブ方位の方位密度が、板表面から全板厚の10%の位置までの表層領域ではランダム方位の30倍以下であり、しかも板表面から10%の位置から板厚方向中央部までの中心領域ではランダム方位の15倍を越えるとともに前記表層領域におけるキューブ方位密度より高くなっていることを特徴とする、アルミニウム缶胴用板材。
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